超企業経営塾 人事制度その1 人事評価制度の設計

vol.18
お金と人とノウハウの
実践コンサルティング
超企業経営塾
企業人事戦略の課題 4
人事制度その1
人事評価制度の設計
●牧村康彦/経営コンサルティング部門、労務コンサルティング部門担当
(社会保険労務士・中小企業診断士・不動産鑑定士・行政書士・CFP)
◆ はじめに
② 主な業務の調査
今月は人事制度その1と題しまして、人事評価制度の設
職務分析表を並べます。各職務と勤続年数、職位別に横
計について触れていきたいと思います。人事評価制度は給
並びにし、具体的にその仕事がその部署のどういった役職
与制度、賞与制度、退職金制度、教育制度と様々な部分で
や職位に適正かを比較検討することになります。
関連しており、まさに人事制度の中核をなす制度です。
まず職位や役職で分け、それから一覧表に書き上げます。
人事評価と記載していますが、「人事考課」などと言わ
れるのが一般的です。
③ 一覧表の整理
ただ、考課の規程がポイントではなく、考課制度のコン
重複するものだけ選び、そのほか個人特有の業務は消去
テンツ部分である、評価項目が非常に重要なファクターに
法で消しこんでいきます。そうすると各部署の各職位、等
なってきます。
級に応じて職務内容が絞り込まれることになります。
ではどのように評価項目を決定していくのでしょうか。
たとえば参考をご覧下さい。
グレード1とグレード2という等級のみ記載したもので
◆ 評価制度の進め方
すが、先ずは職務の特性が表れてきますのでその職務の特
最近の評価制度は、「コンピテンシー」(成果をあげる行
性をとらえた職務基準表を作成することができます。
動特性)が主流です。
成果主義もこの範疇に入ると思われますが、以前は職能
■
等級資格制度上の職務遂行能力を評価する制度、さらには
職務基準書
求められる意欲基準
意欲要素
着 眼 点
具体的内容
発展型で「職務内容そのもの」の格付けを行い評価する制
度(職務評価)等と様々な制度の採用がみられ、企業は適
正な評価制度の実現を目指し、かつ社員の納得できる制度
を構築しようとやっきになっていた部分もあります。
では、具体的にどのように進めるべきかを解説します。
1グレード
2グレード
①困難があっても、自己の役割を
目標達成意欲
達成しようと努力していたか
②誤りや失敗に対して責任を回避
することはなかったか
担当業務目標を最後ま ③仕事に対して陰日向なく取り組
でやり抜こうとする意欲 んでいたか
○自分の仕事に対しては、
最後までやり被く姿勢がみら
れる
○業務量の多い日でも、スケ
ジュールに従い担当業務を
遂行する努力ができる
○担当業務の目標に対し、
最後まで前向きに取り組ん
でいる
○自社・自部門の方針をよく
理解し、担当業務を意欲的
に取組んでいる
新しい仕事への挑戦意 ①自ら進んで新しい仕事に取り組
んでいたか
欲
②仕事の改善に意欲的に取り組ん
新しい方向や仕事を求 でいたか
めて自ら、行動する 積極 ③平々凡々でその日暮らし的な態
度はなかったか
的な意欲
○自分から次の仕事の指示
を求めるなど、意欲的である
○新しい担当業務で分から
ないことは、進んで聞くか調
べている
○新しい仕事や、難しい仕
事に意欲的にチャレンジして
いる
○担当業務に対し、従来の
やり方だけで満足せず、新
たな視点で取り組んでいる
①物品や時間を大切にしていたか
②仕事のやり方に無駄はなかった
か
仕事の進め方にムダな ③それが本人の意識として定まり、
く 、物品・時間等を大切 態度として定着していたか
にする意欲
○会社の物は大切に使用す ○仕事のムダ、ムリ、ムラの排
除に心掛けている
るよう心掛けている
○常に時間の観念を持って
仕事をしている
効率化意欲
① 職務内容の分析
オーソドックスな方法は職務分析表を全社員に渡し、ど
このようなものもありますし、また各等級別、職務内容
ういった職務内容がその企業の各部にあるのかを分析し
別でもっと具体的に基準を作成する場合もあります。
ます。分析図は以下のようなかたちになります。
いずれにしてもこのような内容の基準作りをすることが
評価をする際、何が大切でどういったレベルに達しなけれ
ばならないのかを明確にすることが必要です。
部署 氏名 勤続年数 職位(役割、役職)
1日の業務
1週間の業務
1月の業務
1年の業務
そうでなければ評価が曖昧になってしまい、そんな評価
制度のもとで賃金や賞与、退職金が決定されてしまうのは
このような表を記載してもらうことで各部の業務内容
働く社員にとって不公平であり、到底納得のできない制度
が明確になります。
になってしまいます。
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人事制度その1
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◆成果を上げさせる評価基準書
人事評価制度の設計
【評定】
では、
『成果を上げる行動特性』に導く評価基準書をどの
ように作成すればよいのでしょうか。
水準に照らし合わせて、また方法・プロセスとも照らし
合わせ、達成状況を下記の段階で評定する
コンピテンシーは「よく出来るモデル」を中心に作成し
ていくことになります。
簡単に言うと、デキる人材(成果を上げている人材)か
SS・・110点以上
優秀で申し分ない
S ・・100点以上
特に困難(革新的)な目標であった
ら普段どういう業務を行っているのか、どういったやり方
で進めていっているのかを聞き、それをまとめて《業務手
が目標を大幅に上回った
A ・・90点以上
確実なプロセスを踏んで、質・量と
順の見本》を作成します。そして、その見本をもとにデキ
も目標を上回った
る人材のマネをさせることでさらに成果をあげる人材を
B ・・80点以上
目標を達成した
作り出す、という方法です。
C ・・70点以上
基準であった
D ・・65点以上
目標をかなり下回った
E ・・65点未満
がんばってほしい
◆ 定量評価と定性評価
ここで注意しなければならない点を整理しておきます。
数字評価と言われる部分で、明確に実数でわかる「定量評
(2年連続すると降格対象者)
こんな感じになります。
価」と性質的なもので数字では計りにくい「定性評価」が
ある点を留意しなればなりません。
次回も、続きを掲載してまいりたいと思います。
例えば、営業職のようにはっきりと数字(定量)ではか
どうぞお楽しみに!
れる素材をもっている部署などは、定量評価は適正と言え
ますが、総務や経理のような部署においては、簡単に数字
で評価できるものが素材としてあるとは言いがたく、適正
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ですので、定性的なものを評価の中心にしながらも平均
的な係数を用いることで定量評価を加えて評価するとい
う手法が取られています。
人事制度改革の手順
◆ 標語とは
年功制賃金はなぜダメなのか?
そして一般にこれらの数字評価を「評価シート」におき
かえると、「標語」が登場します。S評価、B評価、など
と言われるものです。
100 点満点の採点で 90 点以上はS評価、80 点以上はA
人事・賃金制度の改革提案
評価、70 点以上はB評価、などと記載して、その評価に
おいて最終標語をもとに、給与が決定されたり昇格が決定
されたりします。
参考までに、次のようなものがあります。
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