Ⅰ−12 第36回土木学会関東支部技術研究発表会 回遊魚を対象とした個体ベースモデルの 遡上行動解析結果に及ぼす流況の違いの影響 新潟大学大学院自然科学研究科 新潟大学大学院自然科学研究科 新潟大学工学部建設学科 £ÝÞ ½º 学生員 正会員 正会員 ○梶原 宗光 紅露 一寛 阿部 和久 る.その結果,次の弱形式を得る. はじめに 近年,河川の横断構造物を建設する際には,河川回遊魚 の遡上・降下行動への影響を軽減する目的で,魚道を設置 ª · することが一般的となっている.魚道の設計においては, そのため,設計時に想定していた機能を発揮できないもの Û¡ Ò Ð ½ ª そこで本研究では,計算力学手法を援用し,魚体泳動解 · 析と流れ解析を連成して解析を行うことで,河川に最適な ª ª· ´Ûµ ª Ù · Ù ¡ ÖÙ Æ¡ ½ ª も存在しているのが実情であると思われる. Ø Ò Ð 設置前の複数案の比較・検討が難しく,過去のデータや経 験を基にして対象河川に適したものを選定することが多い. Ù · Ù ¡ ÖÙ Û¡ ´¿µ ¼ Ù · Ù ¡ ÖÙ ¯¡ ª Ö¡ Ø ª ÕÖ ¡ Ù ª ª Ö ¡ Ø ´ µ ¼ 魚道の設計手法を構築することを最終目標とする.今回は, ただし,Ò Ð は要素数,Û,Õ はそれぞれ流速,圧力の重み 文献 ½µ で提案した,河川回遊魚の ¿ 次元遡上泳動解析モ 関数である.また,È ØÖÓÚ¹ Ð Ö Ò 関数 Æ と ¯ は次のよ デルを対象に,回遊魚の遡上行動解析結果に及ぼす流況の 影響について,解析結果を通して検討し,本手法の有効性 や問題点を明らかにする. ¾º ¿ 次元流れ場の数値解析手法 本研究では,¿ 次元流れ場は非圧縮粘性流としてモデル 化し,ËÍÈ »ÈËÈ 安定化有限要素法 ¾µ により流れ解析 を行なった.流れの基礎方程式と境界条件は,ª を領域, , をそれぞれ流速,表面力が既知の部分境界として, 次式で与える. Ù · Ù ¡ ÖÙ Ø Ö¡ Ù Ù ¼ ¡ Ò · ÈËÈ ¾ Ù ¾ ½ Õ Ö ½ ¾ ¾ · ¾ ´ µ は要素長, は動粘性係数である. 式 ´¿µ,´ µ において,流速 Ù と圧力 Ô に対して各々独立 ´Å · ÅÆ µ を応 ´Ùµ · ¯´ ÙµÙ · 上式において,Å , ´Ùµ,à , あり,下添字 Æ ,¯ はそれぞれ ËÍÈ · ¯ Ô Æµ Ô ¼ ´ µ ¼ はそれぞれ係数行列で 項と ÈËÈ 項の寄与 ¾µ ´¾µ る離散化は,クランク・ニコルソン法 を用い陰的に処理 することとする. 安定化有限要素法 で離散化して解く.流速場と圧力場の数値振動を抑制可能 なように重み関数を選び,È ØÖÓÚ¹ Ù · ů ÙµµÙ Æ´ に関する行列であることを示している.なお,時間に関す ½ ´ÖÙ · ´ÖÙµÌ µ ¾ 本研究では,式 ´½µ を ËÍÈ »ÈËÈ Ù · ´ ´Ùµ · Ø · ÃÙ · ´ Ì なお,Ô は圧力, は粘性係数である. Ð Ö Ò 法で定式化す ¿º 河川回遊魚の遡上行動解析モデル 本研究では,文献 ½µ において提案した,河川回遊魚の 遡上行動を対象とした遡上行動解析モデルを用いる.この 解析モデルは,回遊魚の ½ 個体毎の遡上泳動行動の解析を ÝÛÓÖ ×:回遊魚,遡上行動,エージェント法行動選択,個体ベースモデル ¼¹¾½ ½ 新潟県新潟市西区五十嵐二の町 ¼ ¼ 番地 Ì Ä ¼¾ ´¾ ¾µ ¾ ¼¾ ´¾ ¾µ ¼¾½ 連絡先: ¾ ¯ ËÍÈ ここで, ´ÓÒ µ 力テンソルとして,次式で与える. ´Ùµ ´Ù ¡ ÖµÛ ¾ ¡Ø ÈËÈ ´½µ は密度,Ù は流速ベクトルである.構成方程式は ÔÁ · ¾ ËÍÈ ËÍÈ ¼ ´ Ò ªµ Ö¡ ここで,Ò は境界上の点での単位外向き法線ベクトル, Æ に有限要素近似を適用すると,次の常微分方程式を得る. ´ Ò ªµ ´ÓÒ µ うに定義される. Ⅰ−12 第36回土木学会関東支部技術研究発表会 可能とする個体ベースモデルとなっており,泳動行動の選 水温 物理刺激 (入力) 択には,マルチエージェント法を採用している. 光の強さ 速度勾配 流速 圧力 など ここで,本モデルにおける泳動行動選択までの流れを図 ½ に示す.まず,入力刺激として,魚体の泳動行動に影響 刺激受容のための 強度情報への変換 を及ぼす外的刺激を考える.その外的刺激は物理量で与え 状況認識 パターン 状況 A1 状況 A2 状況 A3 ・・ ・・ ・ 状況 An 泳動行動 パターン 行動 B1 行動 B2 行動 B3 ・・ ・・ ・ 行動 Bn られ,生体内で刺激受容のために刺激強度情報に変換され る.その情報を基にして状況認識・泳動行動パターンを判 断する.その後,各パターン毎に評価関数 Í ´Øµ を算出し, 評価関数値の相互比較 行動選択 その値を相互比較し最大となった行動パターンを採用し, 各個体の泳動速度ベクトル Ú を出力する. 泳動速度 ベクトル の決定(出力) ´½µ 泳動行動に影響を及ぼす外的刺激 図 実際の魚の泳動行動は,流れや光,音など様々な物理刺 激を受容することで決定される.しかし,泳動解析モデル ・・ ・・ ・ × ○ × × 泳動速度ベクトル ½ 泳動行動選択モデルの流れ なお,流速については,速度の大きさと流れの方向をそ の構築に当たって,魚が受容するすべての刺激を反映させ のまま生体刺激として用いることとする. ることは困難である.そのため,本研究では回遊魚の遡上 ´¿µ 行動を定性的に評価することとし,行動決定に寄与する物 種類を考 理刺激には流速,速度勾配,圧力,光強度の える. 前述した回遊魚の主要行動を表現するために,本研究で は次の 種類の状況認識パターンを設定する.状況判断の 有無は ¾ 値化関数 ´¾µ 生体刺激強度情報への変換 していない状態, 各個体の行動選択の要因となる外的刺激は,いずれも物 理量として与えられる.これらの刺激は,生体内で受容し 生体刺激強度情報に変換される. Á ´Øµ ÐÓ ½¼ Ë ´Øµ Ú Ü ¬¬ ¬¬ ¼ のときは状況を認識 ½ のときは状況を認識している状態 で与えるº ¯ ¬¬ ¬¬ で示し, として表現する.また,その判断基準となるパラメータを まず,速度勾配に関する刺激強度は次式で与えられる. Ë ´Øµ ˼ 状況認識パターンと判断基準 ¼ :遡上を認識している状態. 本手法では, ¼ ´ØÒ µ ½ とし回遊魚は常に遡上を認識 している状態にあるとする. ´ µ ¯ ここで,Ú は流速ベクトル成分,Ü は空間座標であり,˼ ½ :速度変化を知覚している状態. ¯ ¾ :壁面接近を知覚している状態. は刺激感知レベルを定める参照値である. ¯ ¿ :圧力変化を知覚している状態. ¯ :光の刺激を感知している状態. 一方,圧力についての刺激強度 ´Øµ は圧力水頭 Ô で 与え,光の刺激強度は,光強度 Ĵص を用いて速度勾配と なお, 同様に次式で定義する. ´ µ ´Øµ Ä ÐÓ ½¼ Ĵص Ä ´ µ なお,本研究では文献 µ を参考に,動物が外的刺激に 順応していく性質 ´順化µ を考慮するために,それぞれ速 度勾配,圧力,光強度の刺激に基づき,次式の順化刺激強 ´Øµ,Ä ´Øµ を導入する. Á ´ØÒ·½ µ Ä ´½ Ñ× µÁ ´ØÒ·½ µ · Ñ× Á ´ØÒ µ ´ØÒ·½ µ ´½ Ñ µ ´ØÒ·½ µ · Ñ ´ØÒ·½ µ ´½ ÑÐ µÄ´ØÒ·½ µ · ÑÐ Ä ´ØÒ µ ただし,Ñ× ,Ñ ,ÑÐ は ¼ Ñ ´ØÒ µ ´ µ ´½¼µ ´½½µ ½ となるようなパラメー タであり,それぞれ速度勾配,圧力,光強度の刺激への順 化度合いを制御している. 泳動行動パターンの設定 泳動行動パターンは,回遊魚の遡上における前述の主要 行動を表現できるように次の 種類とした.なお,泳動行 ここで,Ä は光強度の参照値である. 度 Á ´Øµ, ¼ ÓÖ ½ の判定基準は,文献 ½µ の手法を用いる. 動パターンは状況認識パターンと一対一に対応するように 定めている. ¯ ¼ :流速ベクトルと逆向きに泳動する. ¯ ½ :流速の小さい方向に泳動する. ¯ ¾ :流速の大きい方向に泳動する ´壁面回避行動µ. ¯ ¿ :順化水深を維持するように泳動する. ¯ :光強度の小さい方に向かって泳動する. なお,泳動速度ベクトルの定義は文献 ½µ を参照されたい. Ⅰ−12 第36回土木学会関東支部技術研究発表会 ´ µ 行動選択の方法 outlet 動物は,外部から多数の刺激情報を受け,受けた情報を y 15cm 基に数多くの行動の中から最適だと判断されたものを選択 15cm していると考えられる.しかし,状況判断から行動決定ま 15cm inlet 50cm x 0 究では回遊魚の意思決定機構を簡易化した文献 µ の方法 を用いて泳動行動を決定する. 図 ØÒ における行動選択確率 È ´ØÒ µ を,各 表 状況認識・泳動行動パターンに対応するように次式で定義 100cm ¾ 解析領域 ½ 泳動制御パラメータの設定値 ¼ する. ½ ¾ ¼º ¼ ¼º Ñ ½º¼ ¼º ¼º¾ Ù ¼º ¼º ½ ¼º ¼º ,Ñ ¼º ,Ñ ¼º ¼ È ´ØÒ µ ¼ ¼ ´½ Ñ µ ´ØÒ µ · Ñ È ´ØÒ ½ µ ´½¾µ ここに,Ѽ は記憶に関する重み係数である. 次に,行動選択に関する評価関数 Í ´ØÒ µ は,行動選択 時の優先順位が反映できるように,係数 Ù を用いて次式 で評価する. Í ´ØÒ µ È ´ØÒ µÙ ´½¿µ 15cm 50cm での過程を正確に考慮することは不可能であるため,本研 まず,時刻 Ø z Ñ × Ð º 解析結果 ´½µ 解析条件 ¿ ¼º¼ ¼º ¼º ¼º ¼º ¿ ¼º ¿ ¸Ë ¼º¼ ¸Ä ¼º ¼ 以下では,回遊魚の遡上行動を対象とした前述の解析モ デルに及ぼす,流況の違いの影響について検討する.解析 領域は,図 ¾ の領域とした.境界条件は,上面を ×Ð Ô とし, 各時刻において,評価関数を相互評価しその値が最大と 他の面は固定壁とした.また,流体解析は定常状態になる なった行動パターンを一つ選択する. まで計算を行った.また,光強度 Ĵص に関しては,領域 ´ µ 行動の例外規則 上面から光が差し込むものとして,次式で与えた. 回遊魚の遡上における主要行動を表現するために,次の Ĵص ¾ つの例外規則を付加する. ļ ÜÔ ¬Ö ´½ µ ´ µ 外敵回避行動に関する例外規則 前述したように,魚 ここに,ļ は光強度の参照値,¬ は水中の光の散乱によ は光の刺激を感知すると,鳥類等の外敵から避難するため る光強度の低減の度合いを表現する定数,Ö は領域上面か に光強度の小さい領域へ泳動することを優先する.そのた らの距離である. 個体数は ½ とし,初期の個体位置は流出口に近い位置 め,本手法では光の刺激を感知した場合,圧力変動回避に 関する記憶についての重み係数 Ñ を ¼ とすることで認 ´Ü 識・判断の記憶効果を消去させ,光強度の小さい領域への 置の違いの影響についても検討している.泳動を制御する 泳動を優先するようにする. パラメータは,回遊魚の主要行動を考慮して表 ½ に示す値 ´ ѵ¸Ý ¼´ ѵ¸Þ ´ ѵµ とし,以下では初期位 ´ µ 下降流を感知した際の例外規則 回遊魚が魚道を泳 に設定した.解析時間は ¡Ø ¼º½´×µ として ¼ 秒間行った. 動・通過しようとする場合,魚道の入り口が水面付近にあ るとき,そこまで上昇しなければならない.しかし,本手 なお,個体の泳動速度の大きさは,個体長を Ä として平均値 Ú ´ ѵ ¿ ¡ Ä ,標準偏差 Ä の正規分布に従う 法では光刺激の影響により底面から上昇することは考えら ように各時刻で与えることとした.泳動方向についても, れない.そこで,下降流を感知した際には上流方向への泳 本モデルで与える単位泳動方向ベクトル各成分を平均値と 動行動が優先され,光強度の大きな領域や圧力変動のある する正規分布に従うように変動させ,ゆらぎを与えた. 領域への回避行動が選択されないものとする. ´¾µ ´ µ 個体位置の更新 レイノルズ数の違いによる検討 まず,流況の違いが遡上行動解析結果に及ぼす影響を検 ØÒ における魚体位置 Ü ´ØÒ µ は,流れによる影 討するために,Ê 時刻 Ø 泳動解析を行った.解析結果を図 ¿ に示す.Ê 響を考慮し次式で与える. Ü ´ØÒ µ Ü ´ØÒ ½ µ · ´Ú · Ú · ÚÖ µ¡Ø ¾¸ ¾¼¼ の ¾ 通りの流れ場を対象として ´½ µ ここに,Ú は泳動速度ベクトル,Ú は流速ベクトル,ÚÖ ¾ の場合, 泳動開始初期段階では上流への泳動行動と光刺激の回避を 交互に繰り返す泳動行動となるが,流入口に接近するに従 い,流心を避けて大きく迂回するように泳動し,流入口ま は抵抗速度ベクトル ½µ である.ÚÖ は,流れが速い場合に で到達している.一方,Ê 魚が押し戻されることを表現するために導入している. 期位置)付近では上流への泳動行動が発現しているが,比 ¾¼¼ の場合には,流出口(初 Ⅰ−12 第36回土木学会関東支部技術研究発表会 較的早い段階から流心を避けて壁面および下面方向に泳動 z(m) 0.5 z(m) 0.5 outlet inlet していく.その後光刺激を回避するように移動しながら, 解析時間内では領域外へ出ることができなかった.レイノ outlet y(m) 0.5 inlet ルズ数が大きい場合,上面付近で流入口から流出口に直線 x(m) x(m) 的に流下する流れが卓越することで,領域内で大きな循環 流が生まれ,下面付近では表層とは逆方向の流れが生じて いる.本研究で採用した遡上泳動モデルでは,流速ベクト ルと逆方向に泳動する行動を基本行動としているため,個 0 0 ´ µ¿ 次元での泳動軌跡 ´ µÜ Þ 面での泳動軌跡 図 ¿ Ê ¾¸ ¾¼¼ での泳動軌跡(実線:Ê ¾¼¼¸ 点線:Ê ¾). 0 1.0 1 揺らぎあり z(m) 0.5 揺らぎなし z(m) 0.5 outlet inlet 体が下面付近に達すると流入口(魚の出口)の方向へ泳動 することができず,プール内に留まり続けたものと思われ outlet y(m) 0.5 inlet る.この点については今後改善が必要である. x(m) ´¿µ 各時刻での泳動行動のゆらぎの影響 図 ,図 は,それぞれ Ê 0 0 x(m) 揺らぎなし ´ µ¿ 次元での泳動軌跡 0 ¾¸ ¾¼¼ の流れにおいて, 1.0 図 各時刻での泳動速度と泳動方向のゆらぎを導入したことで, 泳動軌跡に生じた差異を示したものである.ゆらぎを導入 揺らぎあり z(m) 0.5 揺らぎなし z(m) 0.5 outlet inlet したことの影響は,流速分布の空間変動がより顕著とな る,Ê ¾¼¼ の場合の方が明瞭に観察されることが予想さ outlet y(m) 0.5 inlet れる.解析結果は,この予想に反しない結果となっている. 特に,Ê x(m) 0 0 x(m) ¾¼¼ の結果では,個体が流心近くに存在してい 図 流心をある程度回避した位置まで泳動すると,ゆらぎの有 最後に,個体の初期位置を Þ 設定した場合の泳動軌跡を図 ¼ ¸ ¼º ¿¸ ¼º¿ ´Ñµ に z(m) 0.5 y(m) 0.5 inlet y(m) 0.5 outlet inlet x(m) x(m) 0 を導入して解析を行っていることもあり,解析結果は前節 ¾ の場合に 0.5 outlet に示す.泳動行動のゆらぎ と同様の傾向を示していることがわかる.Ê 揺らぎなし 1.0 z(m) ´ µ 初期位置の影響 1 ´ µÜ Þ 面での泳動軌跡 揺らぎを与えた泳動軌跡(Ê ¾¼¼). 揺らぎあり ´ µ¿ 次元での泳動軌跡 0 る場合にはゆらぎの影響はわずかなものとなっているが, 無によって大きく異なる泳動経路をたどることがわかる. 1 ´ µÜ Þ 面での泳動軌跡 揺らぎを与えた泳動軌跡(Ê ¾). 揺らぎあり 図 ´ µ Ê ¾º 1.0 ´ µ Ê ¾¼¼º 0 1.0 泳動軌跡に及ぼす個体の初期位置の影響. は,速度分布の空間変動が小さいこともあり,初期位置を 変えて泳動させてもほぼ同様の経路を経て流入口付近まで 泳動している.ただし,流入口付近では結果が不安定とな り,流入口付近の壁面や底面付近を泳動するパターンも見 受けられた.そのため,今後は個体の大きさを考慮した物 理刺激の評価方法を導入するなどして,この点を改善する 予定である.一方,Ê ¾¼¼ の場合には,初期位置が変わ ることで泳動軌跡が大きく異なり,解析終了時の到達位置 も全く異なっていることがわかる.このことから,多数の 個体を遡上させ,遡上率等の数値評価を行う際には,個体 の大きさや泳動行動だけでなく,個体の初期位置もランダ ムに設定して解析を行う必要があることがわかった. º おわりに 本研究では,文献 ½µ の遡上解析モデルを対象に,異な る流況の下での泳動解析結果の違いについて検討した.そ の結果,遡上個体が泳動するプール内で大規模な循環流が 発生する場合,壁面や底面付近で流れの表層とは逆方向の 流れが生じるため,この領域に泳動してきた場合に上流方 向に泳動できないことが確認できた.このような領域では 流れに乗って上流方向に移動可能となるため,小さなエネ ルギーロスで遡上でき,遡上個体にとっては有利な行動選 択となると思われる.遡上行動の観察結果に関する既往の 報告では,このような領域を好んで遡上していることが指 摘されており µ ,今後の検討課題と考えている. ½µ 紅露一寛,梶原宗光,高橋飛鳥,阿部和久:回遊魚の遡上行 動を対象としたエージェント法行動選択に基づく個体ベース ÎÓк½¿,¾¼¼ . ¾µ モデル,計算工学講演会論文集, 日本計算工学会流れの有限要素法研究委員会編:続・有限要 素法による流れのシミュレーション,シュプリンガー・ジャ ¾¼¼ º ¿µ パン, 高嶋信博¸ 中村俊六 魚道内のアユの挙動に関する実験的研究¸ 第 ¾ 回水理講演会論文集¸ÔÔº¿ ¿¹¿ ¸½ º µ 林田寿文¸ 本田隆秀¸ 萱場祐一¸ 島谷幸宏 階段式魚道のプール ¸ 水理工学論文集¸ÎÓк ¸ÔÔº½½ ½¹ ½½内流況とウグイの遊泳行動 ¸¾¼¼¼º µ ÓÓ Û Ò¸Êº º¸ Æ ×ØРָºź¸ Ò Ö×ÓҸºº¸ Ï Ö¸ÄºÂº¸ ÄÓ٠׸ ºÈº ÓÖ ×Ø Ò ¿¹ ¬× ÑÓÚ Ñ ÒØ Ú¹ ÓÖ Ù× Ò ÙÐ Ö Ò¹Ä Ö Ò Ò¹ ÒØ Ñ Ø Ó ´ Ä Åµº ÓкÅÓ Ðº¸ÎÓк½ ¾¸ÔÔº½ ¹¾¾¿¸¾¼¼ º 参考文献
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