最近のテレビ技術動向を見る 最近のテレビ技術動向を見る

最近のテレビ技術動向を見る
(CES2013 での状況)
映像技術ジャーナリスト
電気通信大学特任講師 石田 武久
はじめに
ワイド・大画面、薄く軽量のFPD に入れ替
らハリウッドを中心にデジタルシネマの展
わっている。テレビはリビングに置かれ家
開が始まり、今や 4K 仕様のカメラ、記録
2011 年3 月11 日、わが国は史上まれ
族揃ってみるだけではなく、キッチンや書
装置、編集装置やカラーコレクションとい
な巨大地震と未曾有の大津波に見舞われ、
斎、寝室にもおかれパーソナル化も進んで
った制作システム、記録・配信系、高精細モ
それに伴い福島原発事故が発生した。被災
いる。さらにスマートフォンやタブレット
ニターや上映用ディスプレイなど、ほとん
地はもちろん日本全体に計り知れない損傷
のような小型モバイル端末が急速に普及
どの機器・システムが開発されており、そ
を与え、その影響はいまだ癒えず、復旧、復
し、どこでもいつでも見られるようになっ
れらを使った4K コンテンツ制作や上映が
興の途上にある。
ている。今やテレビは放送局からの電波を
盛んに行われている。最近のNAB やIBC、
放送界では、昨年3 月、延期されていた被
受けるだけではなく、ネットワーク経由で
Inter BEE な ど 国 内 外 の 展 示 会 で は、4K
災3 県のデジタル移行がなされ、わが国の
ダウンロードし、番組や映画作品、各種情報
が最大のトピックスになっており、各種4K
テレビ放送は完全にデジタル化された。関
などを視たり、発信や交流もできる総合情
対応機器や4K コンテンツが数多く出展さ
東地区では、新たな名所にもなった東京ス
報端末になっている。
れている。
カイツリーから間もなくデジタル時代の電
8K
注2
は、NHK が次世代放送をめざし、
波が発射される。広帯域ネットワークが普
4K、
8K 映像の進展
及し、放送と通信の連携が進み、テレビメデ
多様化するテレビメディアのひとつが、
めているスーパーハイビジョンSHV で、
ィアは制作・放送する側もそれを受ける側
より精細度の高い 4K や 8K 超高精細映
画 素 数 が7680 ×4320 と 情 報 量 は ハ
も大きく変わりつつある。本稿ではデジタ
像で、
急速に進展を始めている。
イ ビ ジ ョ ン の16 倍 に な る。毎 秒 フ レ ー
ル時代のテレビ端末の動向について見てみ
4K
ム 数 は120/60F、順 次 走 査、ビ ッ ト 数 は
注1
については、
2000 年代半ば頃か
たい。
2000 年 頃 か ら 技 研 に て 研 究 開 発 を 進
10/12bit で、HDTV より広色域である。
8K 対応の機器については、既にNHK 技
変化する放送・映像メディア、
多様化するテレビ
研において、カメラ、記録装置、符号化技術、
伝送・配信技術、ディスプレイ、
22.2CH サ
テレビ放送は、デジタル移行に伴い精細
ラウンド音響系までほぼ開発がなされてお
度の低いSDTV から高解像度のHDTV(ハ
イビジョン:1920 ×1080)になり、高画
質・高音質化と共に多チャンネル化し、放
送と通信を連携する様々なサービスが可能
になった。それに伴いテレビの視方、利用の
仕方も変わり多様化しつつある。それに応
える技術的進歩も目覚しく、早くもポスト
HDTV を見越し様々な展開が始まってい
る。
テレビ端末は、小画面で精細度が低く、そ
の割りに大きく重い CRT から、高精細で
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FDI・2013・02
東京の新名所となったデジタル放送のシンボル
スカイツリー
4K レグザ(東芝、シーテック 2012)
り、それらを使った8K 作品も多数制作さ
り、超高精細映像・放送は今後大きく進展
や編集・制作システムが並び、
3D コンテン
れている。それらの成果は技研公開をはじ
されていく。このような状況を反映し、電子
ツがモニターや大画面ディスプレイに上映
め、NAB やIBC でも公開されており、国内
技術産業協会(JEITA)の賀詞交換会では
されていた。
外での認知度も高まりつつある。昨年夏の
「日本のテレビ産業復活の鍵は4K など大
NAB2010 で は オ ー プ ニ ン グ セ レ モ
ロンドンオリンピックの際には、現地で撮
画面、高精細技術である」と謳われた。また
ニーやコンテンツシアターで、
「 ハッブル
影、制作されたSHV 番組が英国内はもちろ
日本映画テレビ技術協会の賀詞交換会にお
望 遠 鏡 に よ る3D 宇 宙 映 像 」や ”Alice in
ん米国や日本へ生中継され、渋谷放送セン
いても、
4K など高精細映像のことが大き
Woderland”など数々の3D 作品が公開さ
ター、秋葉原ベルサール、福島放送局でパブ
な話題になっていた。さらにNHK は年頭の
れ、
NAB2011 ではキャメロン監督自身が
リックビューが行われ大好評だった。
会長会見で、2020 年開始を予定していた
登場し、
3D 制作にかける熱い思いを語り、
昨 年8 月 に は、4K お よ び8K の 規 格
SHV 試験放送を前倒しし、2016 年リオ
3D 版”Tytanic”が上映された。最近は話題
がITU-R( 国 際 電 気 通 信 連 合 )に てU
オリンピックを大きなターゲットにすると
性がやや低下したのか3D 関連の出展物や
HDTV(Ultra High Definition TV) と し
発表した。
イベントは減ってはいるが、ブームを超え
て、第1 段階が4K、第2 段階として8K が
これらの動きを国が支援すると宣言し
たというより目新しさを過ぎ新たなメディ
正式に国際標準として承認された。また昨
ており、今後、衛星、ネットなどを利用した
アとして定着しつつあると考えられる。最
年11 月には、総務省が主導しNHK、民放、
4K/8K 放送や配信ビジネスが展開されて
近の3D に関係するトピックスや技術動向
NTT、
KDDI、
大学、
メーカーなどによる「放
行くと思われる。
を上げてみたい。
送サービスの高度化に関する検討会」が発
数年前までの3D 方式は偏光眼鏡方式か
足し、ワーキンググループのテーマとして
定着するか3D テレビ
「4K/8K 超高精細放送・映像」が採択され
もうひとつの大きな映像メディアのテー
ったが、最近では眼鏡を着用せず裸眼で立
た。その早期実現を目指し、調査・ 研究、試
マが3D である。
2010 年、キャメロン監督
体像を見る方式も実用化され公開されてい
験放送の実施と普及推進などがオールジャ
の3D 映画”AVATOR”が大ヒットし、BS
る。裸眼式3D にも幾つかの方式があるが、
パンで進められることになった。
では3D 放送も始まり、CES2010 で「3D
それらの中で最近注目されているものにつ
このように国際的な標準化がなされ、さ
元 年 」が 標 榜 さ れ た。当 時 のNAB、Inter
いて紹介する。
らに国、学界、放送局、通信業界、メーカーが
BEE やシーテックでは、3D が最大のトピ
東芝の4K 対応裸眼3D レグザテレビは、
連携する推進体制がスタートしたことによ
ックスとなり、各社ブースには3D カメラ
画面サイズ55 インチ、画素数4K、
RGB 縦
84" 型4K テレビ(ソニー、
IBC2012)
8K SHV 公開(NHK 、
IBC2012)
シャッター方式の眼鏡を使うのが一般的だ
ロンドンオリンピックの際の SHV パブリックッ
ビュー ( 秋葉原にて )
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FDI・2013・02
Advanced 3D 放送(NHK-MT、Inter BEE2012)
NHK は年内の実用化を目標にデジタル
眼鏡なし3D テレビ(東芝、シーテック2011)
ロンドンオリンピックでの3D(パナソニック、IBC2012) 時代ならではの新しい放送サービスとして
型配置構造の液晶パネルで、表面に細密レ
た。
ンチキュラーシートが貼られ、
HD レベル
NHK メディアテクノロジーは、昨年の
る。テレビとスマートフォンやタブレット
で高品質3D 映像が表示できる。ドルビー
Inter BEE で新開発のAdvanced Stereo
端末を連携し、テレビ番組は大画面により
は独自の光波長分割方式の3D システムを
3D 映像を公開した。現行放送と互換性あ
みんなで楽しみながら視聴し、手元のモバ
開発しNAB2011 に出展しているが、さら
る高画質フルスペック・デュアルストリ
イル端末で個々の要求に合わせ情報を入手
に詳細は不明だがフィリップスと共同開発
ームの3D 放送方式で、
3D 対応テレビで
し、両者を連携させることで多様なサービ
した眼鏡なし3D 方式も開発し昨年のNAB
見れば3D 映像が鑑賞でき、非対応のテレ
スを実現するものである。放送と通信の両
やFPD 展で公開し注目を集めていた。
ビでは通常の 2D 映像として視聴できる。
チャンネルで配信される映像やデータなど
NICT(情報通信研究機構)は大画面によ
ARIB に規格化を提案中で、従来のサイド
のコンテンツを同期合成させ、語学の字幕
る裸眼式立体映像として、フルHD 対応の
バイサイド式 3D 放送に比べ画質も大幅に
スーパーやスポーツ中継で選手の動きを強
DILA プロジェクターアレイを多数台組み
向上する。現行HD 放送と両立性のある3D
調するなど番組をより面白く分かりやすく
合わせて立体像を表示する方式を開発しシ
放送として実現性が高く注目される技術で
することができる。
ーテックやNAB などで公開している。水平
ある。
昨年 4 月、デジタル移行後のV-High 帯
方向視差数は多く、眼鏡なしで視る位置を
「ハイブリッドキャスト」の開発を進めてい
を使う携帯端末向けマルチメディア放送”
変えると視点に応じて立体像の見え方が変
放送・通信連携テレビ
化する空間像形成方式で、
3D 映像品質は
もうひとつの放送メディアの大きな流れ
携しインタラクティブで、スポーツやライ
まあまあだが、視域角がやや狭く観視場所
が通信と連携するセカンドスクリーン向け
ブ中継、ゲームなど多種多様なコンテンツ
を外れると立体感が損なわれる。デジタル
サービスである。昨今、社会風潮として、ス
を放送・配信している。昨年のIBC でも公
サイネージなどの応用が考えられるが実用
マートフォンやタブレット端末で番組を視
開されていたが、順調に契約受信者数を伸
化までには色々課題もあるようだ。
たり情報のやり取りをするケースが若者だ
ばしており、最近のスマフォの普及を受け
パナソニックは昨年開催のロンドンオリ
けでなくシニア層にも急速に増えている。
年度内100 万契約を目指しているそうだ。
ンピックで、IOC と正式契約を結び、小型コ
広帯域ネットワークが普及し、放送の同報
マルチスクリーン向けサービス実現を
ンパクトな一体型2 眼式3D カメラを使い
性、高品質で高い信頼性と、個別要求に応え
目 指 し、活 動 し て い る IPDC(IP Data
開閉会式、陸上競技や体操、競泳などの3D
ることができる通信の特徴を共に活かし、
Casting)フォーラムは、昨年のInter BEE
映像を撮影し、英国内、イタリア、米国など
これまでとは違う多種多彩なサービスが展
で「 世 界 の セ カ ン ド ス ク リ ー ン 動 向 と
に配信し、各地で公開すると共にNBC では
開可能である。前述の「放送サービスの高
IPDC 展開の可能性」などをテーマにシン
3D 放送も行なわれた。それらの3D 映像
度化に関する検討会」のテーマのひとつに
ポジウムを開催すると共に番組やCM とタ
はIBC2012 でも公開され評判になってい
スマートテレビが掲げられている。
ブレット端末などを連携させるデモも公開
notTV”も始まっている。放送と通信を連
し大きな注目を集めていた。
実用化が近いハイブリッドキャスト
(NHK技研公開) スマフォ向け放送”
notTV”
(mmbi、
シーテック2011)
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FDI・2013・02
盛況のIPDC フォーラムのシンポジウム
Japan Display のブース状況(FPD 展 2012)
医療用 4K LCD モニター (FPD 展 )
どの影響を受け、日本経済はデフレ状況に
では「メイドインジャパンテレビ」の復
なり、あわせて韓国勢の低価格競争を受け、
活再生を果たせるだろうか。為替、人件費、
日本でテレビ放送が始まったのは、今か
テレビ業界の経営状況は急速に悪化した。
国の支援策の差異など考えたら、価格競争
ら丁度 60 年前の1953 年のことである。
各社は経営戦略の見直しのもと、研究開
では勝ち目はない。デジタル化によりテレ
当時のテレビ受像機は、大卒初任給の 30
発の見直しやリストラに追い込まれ、結果
ビは大きく変わろうとしている今こそ、品
倍近い 25 万円もし、庶民にとっては高嶺
的に韓国や台湾への人材・技術流出が進み、
質、付加価値面で勝負して行くしかないの
の花だった。
その後、
皇太子( 現天皇) ご成婚
自身の体力低下の一方でライバルを利する
ではなかろうか。
(1959)
、東京オリンピック(1964)中継
ことになり、彼我の力関係の逆転に繋がっ
今後も競争は厳しいけれど、高精細テレ
放送を経て、テレビは急速に普及した。日本
た。とりわけ韓国企業は政府の手厚い支援
ビや3D テレビ、スマフォやタブレット型
のテレビ産業は大きく成長し、やがて日本
策のもと、生産性と品質向上も成し遂げ、円
テレビなど、新たな映像メディアの中で日
製テレビは世界におけるシェアを大きくリ
高・ウォン安の為替相場にも助けられテレ
本の技術力を発揮していくことである。と
ードし、欧米系テレビ産業を駆逐し、日本の
ビの低価格化は一層進み、ブランドイメー
りわけ 4K や 8K 映像メディアは日本が
産業、
経済成長の原動力になっていった。
ジに安居していた日本テレビ業界は競争力
生み出したHDTV がベースになっており、
90 年代、ハイビジョン、デジタル化が視
を失い、気がついた時には世界のみならず
放送や映画だけでなく医療分野や産業用な
野に入った頃から、高精細度、ワイド・大画
日本国内においても、テレビのシェアは韓
ど幅広い分野での利用も想定される。今こ
面のFPD が普及しだし、ブラウン管テレビ
国企業に追い越されてしまった。
そメイドインジャパン再生、復活の好機で
を駆逐して行く。日本のテレビ業界はデジ
一方、欧州テレビ業界の老舗中の老舗で
あると考える。
タル特需を見込み、最新・最先端技術をつ
欧米系企業で唯一テレビ製造を続けていた
個別企業の経営環境が厳しい状況下、各
ぎ込み、生産ラインは拡張に次ぐ拡張で国
フィリップス(オランダ)も韓国勢の価格
社の得意分野を統合し新たなグループを作
内外の薄型テレビは圧倒的シェアを誇って
競争に追い込まれ近年テレビ事業の不振が
る動きも出ている。昨年、東芝、日立製作所、
いた。
続き、ついに昨年テレビ事業から撤退して
ソニーのディスプレイ部門が共同で設立し
し か し そ れ は 長 く は 続 か な か っ た。
いる。今や韓国製テレビ産業は質・量共に
た「ジャパンディスプレイ」は、中小型液晶
2000 年代には、同時多発テロ、リーマン
日本を追い越し世界のテレビ界をリードし
パネルをメインにモバイルユース用、車載
ショック、最近の欧州信用不安、円高基調な
ている状況になっている。
用LCD ラインナップ、高精細OLED、医療
日本のテレビ産業状況
LM-06
2 ヶ国語音声同時測定 / 5.1 サラウンド入力対応
1U ハーフサイズ ラウドネスメーターユニット
ver1.3 をリリース オーバーライト再計算モード / SDI タイムコード
≪オーバーライト再計算モード≫
プログラム全体
株式会社
フォービット
本 社 〒 196-004
東 京 都 昭 島 市 緑 町 1 - 1 1 - 1
入間事業所 〒 358-0014
埼 玉 県 入 間 市 宮 寺 2 7 2 0
営 業 部 TEL:042-935-0551(直通)
TEL:042-934-7720
FAX:042-934-5664
URL http//:www.fourbit.co.jp
部分差し替え
標準価格 ¥262,500(本体価格 ¥250,000)
部分計測
全体のラウドネスを再計算
■2ヶ国語音声同時測定
■トゥルーピーク表示
■ VU ドライブ機能による既存 VU 計でのモーメンタリー / ショートターム表示
■様々なシステム環境に対応した豊富な自動計測モード
※仕様、詳細データは弊社営業部迄お問い合わせ下さい。
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FDI・2013・02
大盛況のCES 会場
世界最大の 56" 4K 有機 EL テレビ(ソニー)
IGZO 技術を搭載の4K対応 32" 型業務用モニター
(シャープ)
用4K モニターなどにターゲットを絞って
ートフォンやタブレット関連技術だった。
イルブラビアエンジン2 と併せて鮮やかで
いる。それらの成果についてはパシフィコ
■ ソ ニ ー は4K テ レ ビ と し て、既 にInter
美しい映像が表現できる。さらに同機を専
横浜での昨FPD 展に出展されていた。
BEE で公開され商品化されている 84”型
用リモコンにかざすだけで、撮影した映像
に加え、低価格化し一般家庭にも入りやす
をブラビアの大画面に映し出すワンタッチ
CES に見るテレビ技術動向
い 65 型と 55 型の液晶テレビ・ブラビア
機能も拡充された。
日本のテレビ復活を占う格好の機会とし
を展示した。独自技術の超解像高画質回路
■シャープは、CEATEC 2012 Award を
て世界最大の家電ショー CES が今年、
1
(4K X-Reality PRO)を 搭 載 し、4K 映 像
受賞した独自技術IGZO を前面に出した展
月、ラスベガスで開催された。そこでのテレ
だけでなくHDTV からアップした映像や
示をしていた。IGZO とはインジゥム(In)、
ビ技術動向、
各企業状況を見てみよう。
高精細のデジタル写真も超高精細で表示す
ガリゥム(Ga)、亜鉛(Zn) で構成される酸化
CES(Consumer Electronics Show)
ることができる。またフルHD でBD 収録
物半導体で、これを採用した液晶パネルは
は、ドイツ・ベルリンにおけるIFA、日本の
された映画作品も4K で再生できるBD メ
従来のアモルファスシリコンに比べ、TFT
CEATEC と共に世界最大の家電・エレク
ディアプレイヤーや民生用4K カムコーダ
の小形・細線化が可能でパネルの精細度と
トロニクスショーである。今回45 回目を
も展示され、4K 映像を家庭で楽しむこと
光透過量を向上し低消費電力化(1/5 ~
迎え、世界 49 カ国から約3,000 社の企業
ができるようになる。
1/10)できる。今回この技術を採用した業
が最新の革新的な技術、製品を出展し、
15
また世界最大サイズの 4K 対応 56 型
務用32 型4K モニターをメインに、中小
万人超の来場者があった。これからの家電、
有機 EL テレビも参考出品した。有機EL は
型ディスプレイとして超薄型のノートPC
テレビ・情報産業の行く末を展望させるも
自発光式で高輝度、高コントラスト、広視野
用、タブレット端末を展示していた。同技術
のとして注目され、日本でも展示会の様子
で動画応答性が良く鮮明でボケの無い高
はクアルコム(米)、ソニーや富士通にも
や出展物の動向が放送や新聞でも盛んに報
画質が得られ、次世代テレビとして期待さ
提供されるそうだが、韓国に押されがちの
じられていた。
れている。この分野も商品化で韓国勢が一
ディスプレイ領域で、メイドインジャパン
日本の家電・テレビ業界は今厳しい経営
歩先んじており、日本勢が追撃している状
復活の鍵になるかどうか。またスマフォ用
状況にあるが、世界の先頭を走っている韓
況である。ソニーは独自のスーパートップ
3.4”型、タブレット用13.5”型の有機El デ
国に対し「メイドインジャパン」復活、再
エミッション方式と最先端の酸化物半導体
ィスプレイも展示していた。 生を目指し、各社とも最先端技術を投入し
TFT 技術を投入し、光利用効率が高く表示
そ の 他 に、同 社 ブ ラ ン ドAQUOS の
た製品を出展した。ソニー、パナソニック
ムラも少ない高画質の4K 映像と低消費電
など多くの企業がトップセールスで自社
力、
長寿命を実現したそうだ。
経営戦略を語り、目玉製品のPR に努めて
もうひとつの目玉はテレビと連携するス
ル制御と脳の光刺激認知機能を組み合わせ
いた。今大会の注目のテーマは超高精細度
マートフォンXperia で、約 5 インチのフ
た高画質化技術)PURIOS テレビとNHK
U-HDTV テレビ(4K/8K)
、有機EL、スマ
ル HD の Reality Display を採用し、モバ
技研公開やIBC でも公開された85 型8K
85”
型 8K テレビ(シャープ)
10
FDI・2013・02
印刷技術製造方式を採用の4K 有機EL テレビ
(パナソニック)
上 位 モ デ ル に な る4K 対 応60 型 のICC
(Integrated Cognitive Creation:パ ネ
経営戦略のひとつ、GM と共同発表(パナソニック)
液晶テレビも出展していた。
に自動車や航空分野など企業向けビジネス
を少しカーブさせ周辺部の歪みの軽減と視
■パナソニックも最近の大きなトピックス
を強化すると語った。GM やIBM と連携し、
やすさを向上したモデルと、従来同様の平
である4K 対応56”型有機EL テレビを参
車やホーム家電用ネットワークシステムを
面型モデルも展示していた。3 月には米国
考出品した。有機EL パネルの製造に同社独
開発し、これからのスマート社会構築に貢
市場で12000 ドルで発売すると報じてい
自の印刷技術を採用し、
RGB 発光素材を均
献して行くそうだ。
る。同じくサムスン電子も同サイズの有機
一に塗布する方式で材料ロスが少なく、生
■東芝は4K 対応テレビとして、84”型に
EL テレビを出展した。またスマフォ用に折
産工程がシンプルで各種画面サイズに対応
加え65”型と58”型の液晶テレビレグザを
り曲げ可能なプラスチックのTFT 基板採
でき、量産化しやすく経済性も優れている
出展した。独自の超解像技術レグザエンジ
用の有機EL プロトタイプも展示していた。
そうだ。またパネル生産はソニーと共同開
ンCEBO をベースに新たに1 チップ化し
一方、中国のハイセンスも 4K テレビを
発だそうで、日本勢の底力で先行する韓国
た高画質プロセッサーにより、
4K 映像に
出展していたが、中国勢の追撃も始まって
勢に反転攻勢して欲しいものだ。また別の
ふさわしい微細なテクスチャーや煌く輝き
いる。ところで従来ビルゲイツが基調講演
出展物として、ウインドーズ8 を搭載した
感を実現したそうだ。
65 型と58 型につい
をし、CES 常連で常に映像・情報メディア
20”型4K タブレットは昨CES に出展さ
てはインチあたり1 万円以下と他社製品よ
の未来図を提示してきたマイクロソフトだ
れた高画質IPS α液晶パネルを採用し、設
り安く、
今春には販売開始すると報じた。
が、なぜかこのところ出展していないのは
計業務用などをターゲットに年内に製品化
■世界的にテレビやスマフォのシェアをリ
どうしたのだろうか。
するそうだ。さらに去年のシーテックにも
ードしている韓国勢の勢いは強く、日本の
出展されていた電子ペンで画面に書き込め
先を行っている感がある。昨年のCES で大
るインタラクティブPDP スマートビエラ
型の有機EL テレビを参考出展したLG 電
注1)水平方向画素数が4096(フル4K;デジタルシ
ネマ規格)と3840(QFHD; 現行HDTV と親和
性高い)
の2 種類ある。
垂直方向画素数(有効走
査線数)
はいずれも2160。
も展示していた。
子は、今回、製品モデルの55”型有機EL テ
また基調講演で従来のテレビ重視路線か
レビを展示した。RGB にW(白)を加えた
ら同社の原点である家電へシフトし、さら
4 色ピクセル方式を採用し、画面両サイド
低価格の4K テレビレグザ(東芝)
曲面型有機EL テレビ(LG 電子)
注2)
水平垂直画素数7680 ×4320
Ishida Takehisa
石田 武久(学術博士)
フレキシブル有機EL ディスプレイをPR
(サムスン電子)
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FDI・2013・02