in Medicine - 造影剤と画像診断情報サイト Radiology Interventional

ISSN 1345-1219
Volume4 No.3 December 2003
MRI
in Medicine
For Clinical Understanding &
Application
Selected Articles from
Journal of Magnetic Resonance Imaging
Magnetic Resonance in Medicine
日本語抄訳版
No.12 監修 高橋睦正 国際画像診断センター
編集 福田国彦 東京慈恵会医科大学放射線医学講座
Publishers Since 1807
The content of this publication contains summaries of articles from Journal of Magnetic Resonance Imaging and Magnetic Resonance in Medicine, published monthly for the International Society of Magnetic Resonance in Medicine
by Wiley-Liss, Inc., a Division of John Wiley & Sons, Inc., 605 Third Avenue, New York, N.Y. 10158-0012, U.S.A.
Copyright © 2001 Wiley-Liss, Inc. This material is published by Blackwell Japan, Blackwell Publishing K.K. with
the permission of the copyright holder, Wiley-Liss, Inc. Wiley-Liss, Inc. takes no responsibility for the accuracy of the
translation from the published English original and is not liable for any errors which may occur.
All rights reserved. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted, in any
form or by any means, electronic, mechanical, photocopying, recording or otherwise, without the prior permission of
the copyright owner. This material is supported by an educational grant from Nihon Schering K.K. for the purpose of
furthering medical education in Japan.
Japanese edition 2003
© Blackwell Japan, Blackwell Publishing K.K.
Tokyo Office: 3F, NK Bldg., 2-8-12 Iwamotocho, Chiyodaku, Tokyo 101-0032, Japan
Telephone: 81-3-3864-5273 Fax: 81-3-3864-5274
Internet site: http://www.blackwellpublishing.com Email:[email protected]
Printed and bound in Japan by Soei K.K. , Japan
Blackwell Japan
Group Vice-President: Michael Brunke
Editorial Assistant Manager: Reiko Uchida
Editorial Coordinator: Kimiko Mitani
Volume 4 No.3
MRI in Medicine
For Clinical Understanding & Application
日本語抄訳版
Contents
質の保証と安全の管理 .............................................................................................................................................................................. 3
Journal of Magnetic Resonance Imaging
高磁場 MR 装置内 14 ゲージ乳房生検のための遠隔システム ........................................................................................................... 4
A Manipulator System for 14-gauge Large Core Breast Biopsies Inside a High Field Whole Body MR Scanner
関節軟骨変性における初期変化指標としてのみかけの拡散係数 ........................................................................................................ 6
Investigation of Apparent Diffusion Constant as an Indicator of Early Degenerative Disease in Articular Cartilage
MRI ガイドによる咽頭後部へのアクセス .............................................................................................................................................. 8
MRI-Guided Access to the Retropharynx
多シークエンス MRI を用いた頸動脈プラークにおける不安定線維性被膜の診断 ........................................................................... 10
In vivo Accuracy of Multisequence MR Imaging for Identifying Unstable Fibrous Caps in Advanced Human Carotid Plaques
転移性肝腫瘍に対するレーザー凝固治療:
閉鎖型高磁場 MRI における MRI 対応灌流型マイクロカテーテルシステムの経皮的挿入.............................................................. 12
Laser-Induced Thermotherapy (LITT) of Liver Metastases: MR-Guided Percutaneous Insertion of
an MRI-Compatible Irrigated Microcatheter System Using a Closed High-Field Unit
静的な領域分析とニューラルネットワークによるガドリニウム造影 MR 画像における乳癌検出.................................................. 14
Breast Cancer Detection in Gadolinium-Enhanced MR Images by Static Region Descriptors and Neural Networks
最適化された Interleaved ‒ Spiral パルスシークエンスを用いた,正常および肺気腫患者における
過分極 3He 拡散高速 MRI ....................................................................................................................................................................... 16
Rapid Hyperpolarized 3He Diffusion MRI of Healthy and Emphysematous Human Lungs Using
an Optimized Interleaved-Spiral Pulse Sequence
Magnetic Resonance in Medicine
MRI 拡散テンソルを用いた神経線維路の分類と定量化....................................................................................................................... 18
Classification and Quantification of Neuronal Fiber Pathways Using Diffusion Tensor MRI
Factor Analysis を用いた 3 次元造影 MRI における動静脈の分離描出 ........................................................................................ 20
Separating Arterial and Venous Components from 3D Dynamic Contrast-Enhanced MRI Studies Using Factor Analysis
■編集後記 ................................................................................................................................................................................... 22
監 修
高 橋 睦 正
編集委員
大 友 邦
東京大学大学院医学系研究科放射線診断学
松 永 尚 文
山口大学医学部放射線医学講座
杉 村 和 朗
神戸大学大学院生体情報医学講座
宮 坂 和 男
北海道大学医学研究科病態情報学講座
国際画像診断センター
放射線医学分野
放射線医学分野
福 田 国 彦
東京慈恵会医科大学放射線医学講座
平 敷 淳 子
埼玉医科大学放射線医学教室
—1—
山 下 康 行
熊本大学医学部放射線医学講座
質の保証と安全の管理
東京慈恵会医科大学放射線医学講座
福 田 国 彦
今年もほんの 2 日間であるが RSNA に参加した。相変わらず MRI をはじめとする最先端医療技術の進歩には目を
見張るものがあるが,放射線診療の質と安全をいかに管理するかも大きなテーマである。
たまたま ACR のスタッフとの会合に参加させていただいたが,ここで話題になったトピックのひとつに RADPEER なるものがある。これは診療ガイドラインの一環として ACR が取り組んでいる画像診断医の質の管理を行う
試みで,医療保険会社からの要請も強いという。画像診断医の報告書に対して第三者的な評価を行うもので,ACR
に登録を行うと画像診断医の報告書をレビューアーが再読して 4 段階評価を行う。スコア 1 は診断が完全に一致
をみるもの,スコア 4 は頻繁に誤った報告が目立つものである。なんとも窮屈なことになりそうであるが,外科医
は手術件数やその内容などについてチェックされる時代である。画像診断医もこれからはそのようなことが要求さ
れるということか。内容は聞きかじりなので多少の誤りがあるかもしれない。興味のある方は,来年に創刊される
“Journal of the American College of Radiology(JACR)”を参照されたい。保険会社からの要請はともあれ,最善の画像診
断を提供する環境を放射線科医が整えていることを,社会にも他の診療科にもアッピールしていこうという ACR の
姿勢がうかがえる。
金曜日に学生の講義があるため,短い RSNA であったが水曜日の便でシカゴを発った。機上で昼食を終え,西海
岸に近づいた頃,パイロットから little problem が発生したとのアナウンスがあった。
「燃料が漏れているので成田
まで持たない。シアトルに一時着陸するが心配しないで下さい。
」1 時間後,再びパイロットのアナウンス,「サン
ノゼ空港を使うよう指示されたのでそちらに向かうことにします。大したことではないので心配しないで下さい。
」
しばらくして再び,「安全第一なのでサンノゼに一泊し,あす成田に向けて出発します。着陸にあたっては totally
normal landing を行うので心配はない。地上で安全のためになにか準備をしているかもしれないが驚かないように。
」
Normal landing を強調するアナウンスに機内では心持ちざわめきが起きる。着陸時にあらかじめ待機していた消防車
であろうか,赤いランプの車が何台か眼に入る。当日は 4 つのモーテルに分宿し,翌日早朝の出発となる。このよ
うな場合,宿泊代と食事代は航空会社で持つが電話代などは自分持ちである。また,クルーは労働基準法により総
入れ替えとなり別のクルーが乗り込むとのこと。
翌日は 5 時起床,6 時ピックアップ。空港では,搭乗券の再発券を受けるため長蛇の列となる。成田到着は金曜
日の 13 時とのこと。学生講義に間に合うか微妙である。搭乗時に「きのうと同じ飛行機?」と尋ねると,「きのうと
同じ飛行機だが,実は本当にちょっとしたトラブルだったのですぐに整備ができていたのです。全く問題ありませ
ん。
」ところが,きょうも昼食が終わった頃にパイロットのアナウンス。
「皆様にお知らせしなければならないこと
が起こりました。きのうのクルーが指摘していたことと同じことが起きています。サンノゼに戻ります。
」その後う
たた寝をしている間に,いつのまにか着陸先をサンノゼからロサンゼルスに変更したらしく,ロサンゼルス国際空
港に到着した。パイロットから「きょうは飛行機を調整できないので,申し訳ないがロサンゼルスでもう一泊して
いただく。あすの便などについては未だわからない。
」のアナウンスがある。再び,モーテルで一泊となる。結局,
同航空会社は翌日の飛行機を調達できず,他の航空会社の便を使うことになった。水曜日にシカゴを発ち,4 日を
かけて土曜日の夕方にようやく東京に帰ることができた。
当然,私の学生講義は休講,週明けには山積みされたルーチンワークに忙殺されることになった。乗り合わせた
アイオワ大学の大渕先生は金曜と土曜に新潟で開催される IVR 研究会に出席予定であったが,楽しみにしていた日
本への帰国をキャンセルして大学に戻られた。隣席の BarcoView というビューワー会社のベルギー人は,RSNA に
参加のあと,金曜日の 15 時から東京で行われる会議に出席し,土曜日の便で帰国の予定であったが,すべてキャン
セルして大西洋経由で帰国した。ビジネスチャンスを失ったかもしれない。
ハイテクの粋を集めた飛行機でも,整備する人間のチェックをすり抜ければ,このような支障をきたし飛行不能
になる。1 日目の故障はまだしも 2 日目の全く同じ故障には人災的要素が強い。先日,ペースメーカ装着患者に危
うく MRI を行いそうになったとの報告を受けたため,あらためて検査前チェック項目を依頼医師と現場とで確認す
ることを周知徹底した。医療事故が多発している中,今回の飛行機トラブルも他人事ではない。ハイテク化が進む
ほど,人による最終チェックは重要である。所詮,ハイテク環境は人間が創り上げたものである。
—3—
高磁場 MR 装置内 14 ゲージ乳房生検のための
遠隔システム
A Manipulator System for 14-gauge Large Core Breast Biopsies Inside a High Field Whole Body
MR Scanner
Stefan O.R. Pfleiderer*, Jürgen R. Reichenbach, Tarek Azhari, Christiane Marx, Ansgar Malich, Achim Schneider, et al.
*Institute of Diagnostic and Interventional Radiology, Friedrich-Schiler-University Jena, Jena, Germany
Journal of Magnetic Resonance Imaging 17:493-498 (2003)
抄訳 原田
緒 言
乳腺腫瘍の造影 MRI は高い感度を示す重要な画像検
査であるが,良・悪性の鑑別には様々な報告がみられ
る。乳腺腫瘍の病理診断は,一般的に術中迅速生検ある
いは生検,吸引によりなされる。術前に行われるステレ
オあるいは MR ガイドによる腫瘍内フックワイアー留
置は,組織採取においてより有用な方法である。MR ガ
イドによる針生検方法に関しては既にいくつかの報告が
あるが,高磁場 MRI 装置ではガントリーの構造から患
者へのアクセスが困難であり,インターベンションが不
可能となる。最近になり,新しいタイプの遠隔装置であ
る ROBITOM( Robotic system for Biopsy and Interventional
Therapy of Mammary lesion )が紹介された。このシステ
ムでは,優れた組織分解能をもつ MR 画像のもとに,
1.5 T の密閉された装置内でロボットテクニックを用い
た 14 ゲージ針による組織診( 14g-LCBB,14-gauge large
core breast biopsy )が可能になる。本研究の目的は,臨床
の場でこのプロトタイプ装置を用いた 14g-LCBB を試行
することにある。
対象と方法
このシステムの詳細は既に文献 14*に記載されており,
Figure1. に示すように MR 対応のプラスチック製,ピエ
ゾモーターにより X 軸,Y 軸方向にアームが動き,ア
ダプターの装着によって局所麻酔,皮膚切開やトロッ
カー挿入によるコアキシャル法で 14g-LCBB が可能であ
る。患者は伏臥位で,特別にデザインされた支持具によ
り乳房の固定・圧迫がなされる。使用した MRI 装置は
Gyroscan ACS Ⅱ 1.5 T であり,撮像にはボディコイルを
用いている。
患者
対象は書面で同意が得られている 14 例(平均 47.9 ±
13.1 歳)
,左:右= 7:7 である。腫瘍の組み入れ基準は,
造影 MRI の 120 秒で 80%以上の造影効果が得られるも
のとする。腫瘍の大きさは T1 強調像のサブトラクショ
ンで決定され,平均 18.6 ± 12 mm である。体位は伏臥
位であり,患者乳房は頭側で固定,尾側はスライディン
—4—
潤太(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
グする板で圧迫し,圧迫乳房の厚さは 25 mm 以内である。
まず,T1 強調像,GRE( gradient echo )法によるダ
イ ナ ミ ッ ク 造 影 MRI を 行 う。 ダ イ ナ ミ ッ ク MRI は
0.1 mmol/kg の細胞外液性 Gd 造影剤をボーラス注入し,
1 分ごとに 8 分まで撮像し,造影前とのサブトラクショ
ン画像を得て,病巣の位置確認を行う。その後,マーカー
から推測される GRE,TSE( turbo spin echo )の原画像か
ら x,y,z 軸を決定することで,容易に画像による観察
ができる( Figure 2. )
。マーカーから目標点までの距離を
x,y 軸方向で計算し,乳房固定器具の頭側に遠隔装置
のアームを事前に決定した位置に設定する。2 mL シリ
ンジで局所麻酔後,皮膚に小切開を加え,チタン合金製
13 ゲージトロッカー(Bard 社製)を z 軸方向に用手的に
目標点手前まで挿入,3 次元画像でトロッカーの位置確
認を行い,MR 対応 14 ゲージバイオプシーガン(modified
Magnum biopsy system, Bard 社製)をトロッカー内に挿入
し生検を行う。生検終了後,穿刺部位は約 10 分間用手
的に圧迫止血を行う。全所要時間は 50 ∼ 70 分である。
結 果
病巣は 14 例すべてでサブトラクション画像にて明瞭
に指摘でき,大きさの平均は 18.6 ± 12 mm であった。
画像にアーチファクトはなく,装置からの干渉もみられ
なかった。すべての症例でトロッカーは生検目標点手前
に穿刺できた。6 例で組織学的に乳癌と診断でき,その
うち 4 例で摘出標本と同等の組織が得られた。Tubular
carcinoma の 1 例で生検標本が線維性組織のため偽陰性
であった。また,IDC
(invasive ductal carcinoma)の 1 例で
は ADH( atypical ductal hyperplasia )の術前診断が得られ
た。7 例では生検組織は良性所見を示した。この遠隔シ
ステムを使用した MRI ガイドの生検は,すべての症例
で障害がなく,合併症もみられずに完遂できた。
考 察
ROBITOM は高磁場全身用 MRI で,遠隔システムを用
い乳腺腫瘍生検を行うプロトタイプ装置である。この装
置を利用することで,放射線科医は画像の歪みやアーチ
ファクトなしに遠隔操作で生検が可能であり,さらには
Figure 1. a: ROBITOM I located inside the magnet bore of a wholebody MRI-scanner. The MRI-compatible plastic rack and the extension
arm are seen. The distal end of the extension arm, which is facing the
patient, carries a tilting housing which is loaded with a 14g-LCBB device.
b: The schematic drawing (side view) shows the patient's support (1),
the rack of the manipulator (2), the extension arm (3), the tilting housing
(4), the trocar drive (5), the sterile sleeve (made of sterilizable material)
that stabilizes and guides the trocar (6), the trocar adapter (7), the trocar
(8), and the adapter for different instruments (9) carrying one of the
instruments (here: high-velocity biopsy-gun for 14g-LCBB) (10).
診断と低侵襲性治療を統合していく最初のステップとな
り得る。また,本論文は遠隔操作で実行可能な乳腺腫瘍
生検を行った最初の臨床報告であり,MRI 装置内で患者
をガントリーから出し入れすることなく実行可能となる。
この精密・正確な試みは,医療現場におけるロボット操
作を可能にしていく。 MRI ガイドによる問題点として,穿刺に伴い組織が移
動することがよく知られており,癌を過小評価した今回
の症例においても穿刺に伴う組織の移動は否定できない。
MRI ガイドによる組織診断の過去の報告において,癌を
見落とした例はみられないが,これは穿刺操作をガント
リーの外でより確実に行っているためと思われる。IDC
を診断できなかった症例では,穿刺によって組織が移動
した可能性がある。本装置の今後の改良点として,同時
2 画面,SNR を向上させるための IVR 用コイルの開発,
並びに凍結治療,ラジオ波焼灼治療,レーザー治療など
の MRI ガイド低襲性治療のための技術があげられる。
これら技術革新により,乳腺悪性腫瘍の診断,MRI
ガイド生検,MRI ガイド治療が,患者のために短い入
院期間で可能となると思われる。結論として,本研究
は,遠隔操作により高磁場装置内で MRI ガイドによる
14g-LCBB を可能とした。
Figure 2. a: The suspicious contrast-enhancing lesion is clearly
identified on the subtracted transverse MR image of the dynamic series
of the 46-year-old patient (patient 13) in the upper lateral quadrant of the
left breast. b: The spatial relationship between the lesion and the two
oil-markers (white arrows) was determined using the built-in evaluation
software of the scanner (white lines). c: After insertion, the trocar is
centrally located with its tip (while arrow) in front of the suspicious lesion,
as seen on the coronal three-dimensional gradient-echo image. Six
specimen cylinders were harvested. The histology of the biopsy revealed
an IDC that was confirmed after surgical excision.
*
—5—
文献 14)Kaiser WA, Fischer H, Vagner J, Selig M. Robotic system
for biopsy and therapy of breast lesions in a high-field
whole-body magnetic resonance tomography unit. Invest
Radiol 2000; 35: 513-519
COMMENTS
乳腺腫瘍の生検の多くは触診下,乳房撮影下,超音波
ガイド下に行われている。MRI は組織分解能が高く,乳
癌診断,乳癌広がり診断に応用されているが,高磁場装
置では狭いガントリー内での生検・治療は困難である。本
研究は,高磁場装置の密閉空間内で遠隔装置を用いて生
検を行うひとつの試みであり,将来において MRI ガイド
の低侵襲性治療の一助となるものと考えられる。
関節軟骨変性における初期変化指標としての
みかけの拡散係数
Investigation of Apparent Diffusion Constant as an Indicator of Early Degenerative Disease in
Articular Cartilage
Vladimír Mlynárik, Irene Sulzbacher, Michal Bitt ansk´y, Reinhard Fuiko, and Siegfried Trattnig*
*Department of Radiology, University of Vienna, Vienna, Austria.
Journal of Magnetic Resonance Imaging 17: 440-444 (2003)
抄訳 辰野 聡(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
緒 言
関節軟骨におけるプロテオグリカンと水濃度の変化が
変形性関節症の初期変化と考えられており,この初期
変化を MRI のさまざまなパラメータ( T1 緩和 ,T2 緩和,
MTC,Gd-DTPA 造影など)で捉える試みがなされてき
た。本研究では,みかけの拡散係数( apparent diffusion
constants,以下 ADC )が関節軟骨変性の初期変化の指標
となり得るか否かについて実験的に検討した。
過去の研究では,加齢による変性過程を経た関節軟骨
ではなく,関節軟骨に種々の酵素による化学処理を施す
ことでプロテオグリカンを抽出した標本を用いたため,
同じパラメータにおいても抽出法によって結果が異なる
場合があった。従って,本研究ではいかなる処置も施さ
ない状態の関節軟骨を用いた。
対象と方法
対象は,4 例の両側変形性関節症に対する人工膝関節
置換術で摘出された大腿骨遠位骨端外側顆非荷重部の関
節軟骨であり,肉眼的には正常の形態を呈していた。こ
の新鮮標本を 1 mM 濃度の細胞外液性 Gd 造影剤を溶解
した生理食塩液に 24 ∼ 48 時間浸透させた後,約 12 ×
15 × 250 mm 大の骨軟骨標本を計 8 個作製した。
使用した装置は静磁場強度 3 T で,撮像パラメータは,
IR-FSE 法においては TR/TE/TI = 4,000/14/15,60,160,
260,415,PGSE( pulse gardient spin echo )法では TR/
TE = 4,000/32 で,PGSE 法での運動検出傾斜磁場(MPG)
の印加時間は 5 msec,2 つの MPG の始まりから始まり
までの時間( diffusion time )は 15 msec,MPG の大きさは
5 ∼ 180 mT/m( b 値は 5,183,387,628,836 sec/mm2 )
である。それぞれ 11 スライスを加算回数 4 ∼ 6 回で撮
像し,T1 map と ADC map を計算し,6 個の標本からは
multiple echo 法( TR/TE = 4000/15 ∼ 90, 15 msec ごと)で
T2 map も得た。
これらの画像に一致する断層面で組織標本を,骨軟骨
標本 1 個につき 2 部位,計 16 組作成し,プロテオグリ
カンに特異的なサフラニン O で染色,得られた T1 map,
—6—
ADC map,T2 map と対比検討した。ただし標本作成の
過程で 2 個の標本が損傷し,最終的な検討対象は 14 部
位の関節軟骨となった。
結 果
検討された 14 部位のすべてで,陰イオンである GdDTPA2- はプロテオグリカンの減少部に集積したため T1
は短縮し,健常部と明瞭に識別できた。正常軟骨組織の
T1 値が 200 ∼ 300 msec であるのに対し,変性初期像を
呈した部位では T1 値は 140 ∼ 180 msec であった。これ
に対し,ADC map では 14 検体中 10 検体で ADC の増加
がみられたが,4 検体では ADC に変化はなかった。プ
ロテオグリカンの増減に対する変化率は T1 map で 61 ±
18 %であるのに対し,ADC map では 27 ± 6 %であった。
T2 緩和時間には一定の傾向はなかったが,magic angle
現象を無視できる条件では,プロテオグリカン減少部は
低信号を呈していた。
考 察
過 去 の 報 告 同 様, プ ロ テ オ グ リ カ ン 減 少 部 は GdDTPA が集積し,関節軟骨の退行性変化の画像検査とし
て血流を介した間接的 MR 関節造影の高い信頼性が示唆
された。しかし,実際の臨床で利用する上で,Gd-DTPA
負荷が必要であること,関節液から関節軟骨内に分布す
るための時間( 60 ∼ 120 分)が必要で,対象となる関節
軟骨の厚みによってもその時間が変化すること,などの
問題点があり,より侵襲性の低い検査法の導入が望まれ
る。この研究では,その候補としての ADC の有用性が
検討された。
ADC は Gd-DTPA に比べ,プロテオグリカンの減少に
対する感度はやや劣るが,静磁場強度に左右されない点
で優れる。ADC の増加は,プロテオグリカンの減少に
よってコラーゲン網に空間が広がり,水分子の移動が促
進されたためと推定される。しかし,Gd-DTPA の浸透
による T1 値の低下がみられたにもかかわらず,ADC の
増加が認められない検体も存在し,Gd-DTPA による T1
Figure 1. Histological section and parameter
maps of a cartilage-bone specimen showing
good correlation of ADC with the amount of
proteoglycans. a: Histological section stained
by safranin-O shows a blue-green superficial
zone of proteoglycan-depleted cartilage,
in contrast to a dark violet deep zone with
high concentration of proteglycans. b: The
dGEMRIC T 1 map showing the superfi cial
zone of lower T1 values (short arrow, 170-190
msec) compared to a deeper zone of higher
T1 (long arrow, 260-280 msec). c: The ADC
map showing the superficial zone of highter
ADC values (short arrow, 1.17 X 10-3 - 1.23 X
10-3 mm2/second) compared to a deeper zone
of lower ADC (long arrow, 0.98 X 10-3 - 1.02
X 10-3 mm2/second). d: The T2 map with the
highest T2 values in cartilage oriented under
the magic angle (long arrow, 50-70 msec) and
with the lowest T2 values in cartilage parallel
with the magnetic field (short arrow, 40-45
msec).
Figure 2. Histological section and parameter
maps of a cartilage-bone specimen showing
no correlation of ADC with the amount of
proteoglycans. a: Histological section stained
by safranin-O. The blue-green (hyperintense
in grayscale) superfi cial zone denotes
proteoglycan-depleted car tilage and the
violet (hypointense in grayscale) deep zone
is cartilage rich in proteoglycans. Tears inside
the specimen arose during preparation of
the histological section b: The dGEMRIC
T 1 map shows a superfi cial zone of lower
T1 (thin arrow, 140-160 msec) which is not
visible in the ADC map (c). The ADC map
gives normal ADC values (1.03 X 10-3 - 1.17
X 10-3 mm2/second) in the mechanically intact
cartilage (thin arrow) with slightly increased
ADC values in its lower part (short arrow, 1.18
X 10-3 - 1.23 X 10-3 mm2/second). d: The T2
map shows low T2 values (short arrow, 40-45
msec) in thte region of hyperintensity in the
ADC map; the rest of cartilage has T2 values
in the range from 55 to 75 msec. [Color figure
can be viewed in the online issue, which is
available at www. interscience.wiley.com.]
短縮に比べ,ADC の変化は相対的に少なかった。これ
は比較的短い diffusion time を採用したため,関節軟骨の
構造変化による ADC の変化のほかに,水分含量の大小
が ADC に影響を与えた可能性があったためと推定され
た。プロテオグリカンが減少しても軟骨の構造が保たれ
ている場合には,Gd-DTPA が集積し T1 が変化するが,
ADC の変化は少なく,プロテオグリカンの減少ととも
に軟骨の微細構造が変化した場合には,T1 が短縮する
と同時に ADC も増加するものと考えられた。
T2 map にはプロテオグリカンの量との相関はみられ
ず,T2 値は不均等に走行するコラーゲンマトリックス
におけるプロトン間の相互作用と magic angle 現象に影
響されているものと思われる。
結 論
Gd-DTPA 集積による T1 減少と ADC の増加は,変性
した関節軟骨における異なる構造変化を検出する方法と
して有望である。
—7—
COMMENTS
これまで変形性関節症の初期変化を画像で捉える方法
として,経静脈性 Gd-DTPA 関節造影や MTC 法が報告さ
れていたが,感度は高くないものの,ADC はこれらの方
法と相補的なパラメータとして検討すべきと思われる。臨
床応用には装置とソフトウエアの最適化が必要である。
MRI ガイドによる咽頭後部へのアクセス
MRI-Guided Access to the Retropharynx
Annie Lai*, Ellie Maghami, Alexandra Borges, Shahram Bonyadilou, John Curran, Elliot Abemayor, et al.
*Department of Radiological Sciences, School of Medicine, University of California-San Francisco, California, U.S.A.
Journal of Magnetic Resonance Imaging: 17: 317-322 (2003)
抄訳 尾尻 博也(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
緒 言
MRI ガイドによる穿刺吸引細胞診は鎖骨上窩,咀嚼筋
間隙,頸静脈孔,眼窩下管,側頭下窩,傍咽頭間隙,耳
下腺など,頭頸部各領域において有効性が報告されてい
る。また,同様にして上咽頭,傍咽頭間隙,頭蓋底領域
あるいは喉頭全摘後の気切孔周囲再発病変における組織
内レーザー治療に対しても MRI ガイドが有効に用いら
れている。今回の検討は,診断・治療を目的とする MR
ガイドによる咽頭後部へのアクセスに関する最初の記述
である。
対象と方法
対象は MRI ガイドによるアクセスのとられた 14 症例
(男性 10 例,女性 4 例,年齢は 21 ∼ 74 歳)における 15
手技。0.2 T のオープン型 MRI 装置( Siemens 社製)によ
り FOV = 25.6 cm,
スライス厚= 3.5 mm,
マトリックス=
256 × 256 で,SE( TR = 267 ∼ 1,000 msec,TE = 14 ∼
28 msec )および FE( TR = 173 ∼ 500 msec,TE = 10 ∼
20 msec,FA = 10 ∼ 90°)において,患者は仰臥位で撮
像。病変を確認後アクセスの軌道を同定。穿刺吸引細胞
診用同軸システムを用いる。まず,
下顎枝後縁後方に沿っ
た下顎後経路により,MRI 室において使用可能な 5 イン
チ,22 あるいは 18 ゲージの穿刺針を病変の 1 ∼ 5 cm 手
前まで挿入,その位置を室内モニターにより確認。続い
て 26 ゲージの穿刺針を病変部位まで挿入する。いくつ
かの断面により穿刺針尖端と病変の位置を確認後,シリ
ンジを装着し吸引細胞診を施行する。検体はすみやかに
Giemsa 染色あるいは Papinoculou 染色により病理医によ
り確認される。通常,患者の入室から検体採取までの時
間は 30 ∼ 45 分である。
1 例を除く全例で下顎後経路によるアプローチがとら
れた。その理由としては 1 )経口的,前方経路によるア
プローチと比較して口腔内細菌を深部に誘導する危険性
が低いこと,2)頸動・静脈を通過する危険性が低いこと,
3 )通常,同アプローチが最も軌道が短いことがあげら
れる。
結 果
全手技とも穿刺針は MRI ガイド下において正確に咽
—8—
頭後病変に到達し,早期,遅発性合併症は認められなかっ
た。穿刺細胞診の結果は真陽性 5 例,真陰性 5 例,4 例
は診断確定できず,偽陽性はみられなかった。14 例の
うち 10 例( 71%)で細胞診による診断が得られ,この内
訳は扁平上皮癌 4 例,粘表皮癌 1 例,残り 5 例は良性反
応性変化。14 例中 10 例が原発性頭頸部悪性腫瘍で,う
ち 6 例は穿刺細胞診による診断が可能であった。扁平上
皮癌では全 8 例のうち 4 例の診断が確定できなかった。
代表的症例;
真陽性症例(Figure 1.)
:71 歳女性。粘表皮癌により左軟
口蓋切除と放射線治療歴あり。右咽頭後部腫瘤出現。細
胞診において悪性細胞が証明される。
真陰性症例(Figure 2.)
:50 歳男性。繰り返す右頸部腫脹
と疼痛。MRI で咽頭後部に腫瘤を確認。細胞診で悪性細
胞を認めず。その後,経時的変化なし。
考 察
咽頭後間隙は,解剖学的に深頸筋膜中葉と深葉の翼状
筋膜との間で,咽頭,食道の後方に位置し頭蓋底から下
方は気管分岐レベルに及ぶ。
同間隙は疎な脂肪組織とリンパ節を含む。内・外側咽
頭後リンパ節のリンパ輸入領域は鼻腔後方,蝶形骨洞,
後篩骨洞,硬・軟口蓋,上咽頭,耳管,中耳,舌根,咽
頭後壁,輪状軟骨後部,食道である。上咽頭癌でのリン
パ節転移はまず咽頭後リンパ節に生じるとされ,ときに
上咽頭後壁の膨隆として認められるが,臨床的に触知困
難である。
扁平上皮癌患者においてリンパ節転移は重要な予後因
子であるため,画像における咽頭後リンパ節転移の早期
同定が求められる。CT が頸部リンパ節病変の画像診断
としてまず選択されるが,咽頭後リンパ節と周囲の血管
構造などとの区別においては MRI が優れる。MRI では
多断面における撮像が可能であり,組織コントラストに
優れ,被爆なく造影剤使用頻度も低いことから咽頭後リ
ンパ節評価では有用である。大きさの診断基準,中心壊
死,辺縁増強効果などの画像所見のみでは良性,悪性リ
ンパ節病変の鑑別はしばしば困難であり,組織診断が非
常に重要となる場合がある。
通常の病理検査では約 20%の潜在性微細転移は見落
とされる。生検結果と臨床像に隔たりがある場合,吸引
F i g u r e 2 . True-negative
cytology. A 50-year old male
with a large retropharyngeal
mass. a: The T2WI shows
a central high signal with a
thin wall, suggesting a cystic
nature. b: The postcontrast
T1WI confi r ms the cystic
nature of the mass. c: The
needle is placed in the lesion.
Cytology showed no evidence
of malignant cells.
間隙病変を対象とする。今回の検討では,1 例を除き下
顎後部アプローチがとられた。これは生検用同軸システ
ムを細菌叢のある口腔を通過することなく,病変前面ま
で容易に到達させることが可能なためである。ほとんど
の症例において下顎後部アプローチは咽頭後部病変まで
の最短経路である。ただし,顔面神経,下顎後動・静脈
損傷の危険性がある。
Figure 1. True-positive cytology. A 71 year-old female who had
undergone left palate resection for mucoepidermoid carcinoma
presented with a new right lateral retropharyngeal mass. a: The axial
T1W image shows the left palate defect and the node. b: The needle
is advanced under MR guidance to the lesion. c: The final placement
shows the needle in place for aspiration. d: The coronal T1WI confirms
the position of the needle in the node. Cytolog showed malignant cells.
結 論
生検の反復あるいは推定に基づく化学療法,放射線療法
が施行される。
ここ 10 年以上にわたり,触知可能な頭頸部病変にお
ける吸引生検の感度は,一般的な開放生検の結果と比較
して,感度は 90 ∼ 95%とされる。穿刺吸引細胞診では
傍咽頭間隙,傍食道領域,傍気管領域,甲状腺,唾液腺
などの触知不能病変に対して,CT や超音波などの画像
診断と組み合わせることで到達可能となる。超音波ガイ
ド下における吸引細胞診の感度は触知可能病変で 90 ∼
100%,触知不能病変で 73%とされる。CT ガイド下吸
引細胞診では 97%の感受性を示す。
最近では,MRI ガイドにより穿刺吸引細胞診の役割が
拡大してきている。MRI ガイド下アプローチの代表的 6
つの経路として 1)直接,2)頬骨下あるいは側頭下窩,3)
下顎後部,4 )乳突洞下,5 )経口的,6 )前方(下顎骨と
上顎骨との間)が報告されている。直接のアプローチは
顔面,頸部の表在性病変,頬骨下アプローチは側頭下窩,
傍上咽頭病変,下顎後部アプローチは傍中咽頭,耳下腺,
咀嚼筋間隙,咽頭後病変,経口的アプローチは咽頭後,
傍咽頭病変,前方アプローチは咽頭後,傍咽頭,咀嚼筋
—9—
咽頭後病変に対する MR ガイドによる侵襲性の低い下
顎後部アプローチは容易で,安全であり,大部分の症例
において開放生検や手術が不要なだけ十分に高い感度を
有することを示した。医療経済学的にも同手技は重要な
臨床的選択となりうる。
COMMENTS
今回報告された下顎後アプローチでは,主に上咽頭レ
ベルの咽頭後間隙が対象になると思われるが,上咽頭レ
ベルの同間隙を侵す病変としては,前方に隣接する上咽
頭由来の上咽頭癌(扁平上皮癌,悪性小唾液腺腫瘍)
,悪
性リンパ腫の浸潤,同間隙の両側方に位置する咽頭後リ
ンパ節病変などがあげられる。画像を用いた生検の誘導
としてはエックス線透視下,CT 誘導下,超音波誘導下な
どの方法もあげられるが,上咽頭レベルの上記のような
病変においては,高い組織コントラスト能を有する MRI
が画像診断として適しており,生検時の画像誘導におい
ても(機材などの問題を除けば)MRI は実践的であり,そ
の有用性は高いと判断される。
多シークエンス MRI を用いた頸動脈プラーク
における不安定線維性被膜の診断
In vivo Accuracy of Multisequence MR Imaging for Identifying Unstable Fibrous Caps in
Advanced Human Carotid Plaques
Lee M. Mitsumori, Thomas S. Hatsukami, Marina S. Ferguson, William S. Kerwin, Jianming Cai, and Chun Yuan*
*Department of Radiology, University of Washington, Washington, U.S.A.
Journal of Magnetic Resonance Imaging 17: 410-420 (2003)
抄訳 佐久間 亨(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
緒 言
脳梗塞や TIA などの急性虚血性疾患はプラークの破
綻に関連しており,このような臨床症状を引き起こすプ
ラークは,大きな壊死巣を取り囲むように脆弱な線維性
被膜がみられることが病理学的研究により解明され,
「不
安定プラーク」という概念が生み出されてきた。一方,
MRI は線維性被膜などプラークの内部性状を描出しうる
ことが示されてきた。T2 強調像によりプラーク内の線
維性成分と脂質成分の鑑別が可能であるとする報告がみ
られるが,不安定な線維性被膜の診断は T2 強調像のみ
による検討では不十分なものである(感度 12%,特異性
98%)
。線維性被膜の描出は 3D MRA の横断像を用いる
ことにより改善され,厚く破綻のない線維性被膜と脆弱
な線維性被膜との鑑別が可能となった。MRI においてこ
の不安定な線維性被膜が描出されることは TIA および
脳梗塞の既往と強く関与していることが報告されており
(オッズ比> 10 )
,症状をきたす以前に MRI が不安定プ
ラークを捉えうることを示唆している。線維性被膜の状
態とプラーク破綻の危険性とは関係が深いことを踏まえ,
当研究では非侵襲的な多シークエンスの MRI プロトコー
ルを用い,頸動脈プラークにおける不安定な線維性被膜
の診断能について検討した。
対象と方法
対象:連続 18 名の頸動脈内膜剥離術症例に対し,術
前 1 週間以内に MRI 検査を施行した。
MRI プロトコール:装置は 1.5 T GE Signa およびフェー
ズドアレイ・サーフェスコイルを用いた。術側の頸動脈
分岐部にスライス中心を置き,それぞれのスライスレベ
ルにおいて 4 種類の横断像を撮像した。撮像は 3D TOF,
T1 強調像( double inversion recovery 2D FSE )
,プロトン,
T2 強調像(Cardiac-gated shared echo FSE)である。細小ボ
クセルサイズは 0.25 × 0.25 × 2.0 mm3,検査時間は平均
40 分であった。18 症例の 101 部位,404 画像が得られた。
画像評価は以下の所見の有無に基づいた。1 )TOF 画像
上の血管壁近傍の帯状低信号の断裂あるいは不整,2)血
管内腔と血管壁内深部構造(石灰化,壊死巣,プラーク
内出血)との間の内膜組織の欠如,3)血管内腔表面の部
分的な不整像。いずれか 1 つ以上の所見が得られれば,
不安定な線維性被膜を示唆するとした。
病理学的処理と評価:手術材料はホルマリン固定後,
脱灰を行い,パラフィンに包埋した。総頸動脈は 1 mm
間隔,連続 15 枚の切片を作製,分岐部および内頸動脈
に関しては 0.5 mm 間隔で作製した。層状に並んだ平滑
筋細胞と結合織によりなる圧縮された内膜下組織を線維
性被膜と病理学的に定義し,潰瘍形成,裂隙形成,破壊
がみられるか,最も薄い部分が 0.25 mm 以下の場合これ
を不安定線維性被膜とした。
MRI と病理組織像との対比:固定に伴う収縮を考慮し,
分岐部からの相対的距離および形態学的特徴を参考に病
理組織と MRI 画像の位置を合わせた。
統計学的解析:病理組織所見をゴールドスタンダード
として感度・特異度を算出し,多シークエンス MRI の
不安定線維性被膜の描出能を検討した。計算にはすべて
SPSS for Windows(version 7.5.1)を使用した。
結 果
18 症例 101 部位のうち,画像劣化および病理組織標本
の歪みにより 10 部位を除外した。91 部位の画像所見で
は TOF 画像で確認される内腔に接する低信号帯の状態が,
病理所見における線維性被膜の状態と強く相関していた。
安定した線維性被膜は,比較的厚く保たれた低信号帯に
相当した。3D-TOF 上低信号として描出される血管壁の内
膜下領域は,T1 強調像では骨格筋と同程度,プロトンお
よび T2 強調像で認められる場合には不均一な信号強度と
して描出された。FSE(T1,T2,プロトン強調像)ではプ
ラーク内のほかの構成成分と線維性被膜を区別できない
ことが多かった。安定した線維性被膜と比較し,TOF 像
で低信号帯に不整や不連続性が認められるものは,破綻,
潰瘍形成あるいは非常に薄い被膜に相当した(Figure 3.)
。
T1,プロトン,T2 強調像では線維性被膜を必ずしも同定
できないが,91 部位のうち 17 部位(19%)においてこれ
らが線維性被膜の評価に有効であった。遅い血流あるい
は乱流を呈する場合 TOF 像では内腔に低信号域を生じ,
線維性被膜を示す低信号帯を不明瞭にしたり,偽病変を
—10—
生み出したりする。このような場合には,T1 あるいはプ
ロトン強調像の方が内腔境界面の描出に優れ,不安定被
膜に起因する内腔面の不整を確認しやすい。また,内膜
の石灰化は TOF 像において,不定形の低信号域として描
出され,線維性被膜と内腔との境界を不明瞭にする。こ
のような例では FSE 像を用いて,内膜石灰化と内腔との
間の線維組織の介在を確認することができる。
91 部位の頸動脈の評価において,19 部位に低信号帯
の不連続性や不整が認められた。5 部位においては内腔
とプラークとの間に線維性組織が確認されなかった。ま
た,7 部位において部分的な形態異常が認められた。こ
れら 31 部位の不安定な線維性被膜のうち,25 部位が組
織学的に確認された( Table 1 )
。この結果,感度 81%,
特異性 90%を得た。
疑陽性が 6 部位,偽陰性が 6 部位認められた。疑陽性
のうち 4 部位は,近位内頸動脈内もしくは高度狭窄病変
の遠位部における血流に伴うアーチファクトが原因で,
FSE 像でも解決できなかった。1 部位は内頸動脈が急峻
に後方へ走行していたため,血管壁に対し撮像断面が垂
直でなかったことに起因した。もう 1 部位は総頸動脈内
腔の volume averaging によって,より小さな近位内頸動
脈内腔にアーチファクトを生じたものと考えられた。偽
陰性の 2 部位は,動きに伴うアーチファクトが境界面を
不明瞭にしていたことに起因した。ほかの 2 部位は小さ
な潰瘍形成(断面積< 1.0 mm2 )
,1 部位は非常に短い被
膜の菲薄化( 2 mm )
,最後の 1 部位は明らかな MRI と病
理像との位置の違いによるものであった。
考 察
虚血症状を呈する前にプラークを検出することは臨床
上非常に重要なことである。動脈硬化の研究に現在様々
なモダリティが用いられているが,不安定プラークの性
状評価に信頼性があり,かつ繰り返し行える検査法はほ
とんどない。この点 MRI は非侵襲的で,1 mm 以下の解
像度が得られ,重症度を量的に評価し,繰り返し検査可
能という特徴をもつ。さらに,MRI はコントラストの異
なる画像収集が可能なことから組織分解能に優れており,
動脈硬化の研究において生体内・外ともに用いられてきた。
本研究では,Hatsukami 等による論文と同様に,線維性被
膜とほかの内膜構造との鑑別には TOF 像が最も有効であ
る結果を得た。しかし,血流に起因するアーチファクト
や内膜石灰化により TOF 像における低信号帯が不明瞭で
ある場合には,
FSE 像が有用であった。SE シークエンスは,
乱流に伴う位相の分散を低減し境界面の描出を改善する。
TOF 像における低信号帯は,線維性被膜内の基質蛋白
質の層状構造の結果起こる T2* 効果と考えられている。
血管内腔の高信号を呈する血液と 3D-TOF における T2*
感受性が,器質化した内膜組織,血管内腔およびより深
部の内膜構造との鑑別が可能なコントラストを生み出し
ている。線維性被膜内の膠原線維層の破綻や欠損は分子
運動のバリアの消失を意味し,内腔に接する低信号帯の
Figure 3. A discontinuity in the hypointense juxtaluminal band (arrowhead)
on the TOF image depicts an intimal flap related to a disrupted fibrous
cap found in a right CCA on the matched histology section. The 3D-TOF
image also demonstrates regions where the juxtaluminal band is indistinct
(arrow)–a feature that, in this case, histologically represents a thinned cap
separating a hemorrhagic necrotic core from the vessel lumen.
Table 1
Test Performance Table (2 ϫ 2) for the Noninvasive Identification
of Unstable Fibrous Caps by MR Imaging Compared
to a Histologic Standard
MR appearance of
the fibrous cap
Unstable
Stable
Column totals
Histologic state of
the fibrous cap
Unstable
Stable
25
6
31
6
54
60
Row totals
31
60
91
不連続性を生み出す。
一方,T2 強調像はプロトン強調像に類似する信号強度
を呈するが,第 2 エコーを用いた画像はしばしば不鮮明で
あり,また TE が長いことにより動きや磁化率効果に伴う
アーチファクトの影響を受けやすい。線維性被膜の描出に
おいてはプロトン強調像や T2 強調像の信頼性は低く,その
評価には TOF を含めることが重要であることが示唆された。
本研究は,多シークエンスを用いる MRI プロトコー
ルはプラーク性状の描出を容易にし,線維性被膜の状態
を正確に評価することができることを示している。さら
なる研究において再現性が確認されれば,この検査法は
繰り返し可能で,非侵襲的かつ定量的な方法として,プ
ラークの破綻のリスクあるいは安定化の評価において重
要な役割を果たすであろう。
—11—
COMMENTS
頸動脈プラークを包む線維性被膜の描出には 3D-TOF
が最も優れていることが再確認され,これに FSE T1 強調
像,プロトン強調像を加えることにより,3D-TOF 上問題
となる血流や内膜石灰化による影響が低減し,線維性被
膜の評価能が向上することが示された。現在,プラーク
の MRI 診断に関しては T2 強調像,プロトン強調像を用い
たプラーク内容の評価および,TOF による線維性被膜の
評価とが平行してなされており,冠動脈への応用も含め,
さらなる検討が望まれる。
転移性肝腫瘍に対するレーザー凝固治療:
閉鎖型高磁場 MRI における MRI 対応灌流型
マイクロカテーテルシステムの経皮的挿入
Laser-Induced Thermotherapy (LITT) of Liver Metastases: MR-Guided Percutaneous Insertion
of an MRI-Compatible Irrigated Microcatheter System Using a Closed High-Field Unit
Ralf Puls*, Christian Stroszczynski, Bunnar Gaffke, Norbert Hosten, Roland Felix, and Ulrich Speck
*Radiology Departments, Charite, Humboldt University of Berlin, Germany
Journal of Magnetic Resonance Imaging 17: 663-670 (2003)
抄訳 最上 拓児(東京慈恵会医科大学附属柏病院放射線科)
緒 言
転移性肝腫瘍に対するレーザー凝固治療( LITT )のモ
ニタリングには,CT や超音波などに比べ,MRI と MR
温度画像が非常に適している。
レーザーによる熱を十分に周囲組織に伝達するには,
レーザーファイバーとその周囲の組織が炭化することを
防ぐ必要があり,そのためには耐熱性のテフロンカテー
テルと水による冷却システムが使用される。市販されて
いる 9F の内腔冷却式のカテーテルシステムは,セルジ
ンガー法により 10.5F のシースを経皮的に穿刺して使用
するものである。
この研究の目的は,転移性肝腫瘍に対する局所治療を
行う際,新たに開発された直接穿刺可能な MRI 対応の
灌流型レーザーカテーテルシステム( 5.5F )の有用性と
安全性を評価することである。
対象と方法
技術的パラメーター
本システムは,先端が四辺形のチタン製の穿刺針(径
1.5 mm )と耐熱性テフロンの外筒(径 1.8 mm )により穿
刺を行い,深さのマーカーと接続ロックがついている
( Figure 1. )
。病変の深さにより,10 ∼ 18 cm の長さの
システムが使用可能である。MR ガイド下にこのシス
テムを病変部まで穿刺した後,穿刺針を抜去し,レー
ザーファイバーを挿入する。灌流システムは回転式の
止血弁のついた Y コネクター,8 m の長さの延長チュー
ブ,50 mL の シ リ ン ジ か ら な る。 シ リ ン ジ ポ ン プ と
neodymium: YAG レーザーは MRI 室の外に設置した。
In vitro での評価
ウシの肝臓を用いたin vitroの実験は48回行われた。
レー
ザー出力は 8 ∼ 17W で,凝固時間は 10 ∼ 20 分,生理食
塩水の灌流量は 0.25 ∼ 1.50 mL/m とし,最適な生理食塩
水の流量,最大レーザー出力および凝固時間を決定した。
凝固領域の体積は下記の楕円体の公式により計算した。
π *a*b*c / 6( a,b および c はそれぞれ横断,冠状断,
矢状断での最大径)
転移性肝腫瘍に対する MRI ガイド下 LITT
対象:病理組織学的に転移性肝腫瘍と証明された 28
例(男性 18 例,女性 10 例,年齢 45 ∼ 77 歳,平均 61 歳)
が対象となり,LITT が行われた。原発組織は直腸結腸
癌 19 例,乳癌 3 例,十二指腸癌 1 例,膵癌 2 例,悪性
黒色腫 1 例,脂肪肉腫 1 例,原発不明 1 例である。
適応基準:すべての症例は次の適応基準を満たすもの
である。病変は 4 個以下で,直径は 40 mm 以下である。
肝外に病変が存在しない。手術拒否症例である。文書に
よる同意書を得ている。
治療前評価:すべての症例で治療の 1 ∼ 14 日前に,
造影 MRI( T2 TSE, T1 GRE,造影前および後)を行い,
穿刺経路,病変周囲の肝の形態,病変の大きさの評価を
行った。病変の大きさは楕円体の体積として計算した。
治療手技:MR ガイド下穿刺と温度モニタリングは,
初期の15例は1.0 T,
その後は1.5 TのMRIを使用して行っ
た。術中は piritramide 22.5 mg の静注と 1% prilicain 20 mL
の皮下注射により,セデーションと局所麻酔が行われた。
多断層 T1 強調 FLASH 2D GRE シークエンス( 1.0 T:
TR= 165, TE= 5, FA= 75°; 1.5 T: GRE TR= 140, TE= 5,
FA = 70°)により病変の最終的な評価を行い,マイク
ロカテーテルシステムを経皮的に挿入した。腫瘍径に
より 1 ∼ 3 本のマイクロカテーテルシステムを使用し
た。その後レーザーファイバーを挿入し,灌流システム
に接続した。温度変化による信号低下は,温度感受性の
T1 強調 FLASH 2D GRE シークエンス( TR = 103, TE =
7, FA = 16°)によりモニタリングされた。生理食塩水
の流量は 0.75mL/m,レーザー出力は 15W,焼灼時間は
10 ∼ 20 分とした。
治療の評価:治療直後,16 例では 1M gadobutrol,10 例
では gadoteridol の静注による造影 MRI を撮像し,熱凝
固による血流欠損域の形態を評価した。この血流欠損域
は楕円体の体積として計算した。
全例で治療 24 時間後に,多断層 T1 強調 FLASH 2D
GRE シークエンス( 1.0 T: TR = 165, TE = 5, FA = 75°;
—12—
1.5 T: GRE, TR = 140, TE = 5, FA = 70°)により基準と
なる MRI を撮像し,壊死領域の大きさと形態を評価した。
結 果
In vitro の評価
生理食塩水の流量は 0.75/m,レーザー出力は 15W,焼
灼時間は 15 ∼ 20 分での焼灼が,炭化することなく効果
的な凝固域を得るのに適したものであった。15W 以上の
高出力では,生理食塩水の流量を増加させたり,焼灼時
間を短くしても,テフロンシースと肝組織の炭化が 12
例中 7 例でみられた。In vitro の 6 回の実験では(生理食
塩水の流量は 0.75/m,レーザー出力は 15W,焼灼時間
20 分)
,ウシ肝での凝固体積は 21.1 mL ∼ 26.8 mL(平均
23.9 ± 2.4mL)であった。
転移性肝腫瘍に対する MR ガイド下 LITT
28 例の治療前の評価で 54 病変(1 ∼ 4 病変/例,平均
2 病変)が確認され,腫瘍の体積は 1.8 ∼ 25.7 mL(平均
5.7 mL)であった。
合計で 44 回の治療手技(1 ∼ 3 治療手技/例)を行い,
腫瘤の体積により 1 ∼ 3 本
(平均 2 本)
のマイクロカテー
テルを穿刺した。穿刺の際は,2 ∼ 6 回(平均 3.8 回)の
撮像が必要であった。カテーテルの先端は腫瘤の遠位に
位置するようにし,2 本のカテーテルの距離は 1 cm 以
上離れるようにした。
レーザー出力は 16 ∼ 46 kJ(平均 35 kJ)で,治療は T1
強調像で温度変化による信号低下が周囲正常肝組織に達
するまで行われた。
治療後の造影 MRI で,治療域は全例で辺縁明瞭な低
信号域として描出され,その体積は 10.9 ∼ 34.7 mL(平
均 20.4 mL)であった。
残存腫瘍が 6 例で認められ,2 例で追加治療が行われ
た。合併症として少量の被膜下血腫が 5 例で認められた
が,保存的に治療された。1 例で胆管炎の症状がみられ
たが,1 週間の抗生剤治療により軽快した。全例で 3 か
月の経過観察が行われた。
考 察
新しく開発された本マイクロカテーテルシステムの使
用により,穿刺と治療のモニタリングを 1 つの画像診断
装置で行うことが可能となる。レーザーファイバーの挿
入には,CT や超音波に比べ,MRI の優れた組織コント
ラストと多方向からの撮像が優れている。
MRI ガイド下にカテーテルシステムを腫瘍へ挿入し,
MR 温度画像を得るには,適当なパルスシークエンスが
必要である。温度変化による信号低下は,周囲の正常肝
組織や肝内血管,胆道系などの隣接する構造を傷害する
ことなく,安全に効果的に治療を行う上で有用である。
今回のカテーテルシステムの使用により,十分な安全
マージンを確保して治療を行えば,有効な治療が可能で
ある。成功率は 89%であり,ラジオ波による転移性肝
腫瘍に対する報告とほぼ同等の成績であった。
Figure 1. Illustration of the microcatheter with titanium needle (a, top)
used for MR-guided insertion into metastasis. After replacement of the
titanium needle with the laser fiber, the cooling system is connected to the
end of the catheter with a y-valve (a bottom). Dimensions of the 9-French
internally-cooled laser catheter system (Somatex) with 10.5-French sheath
(b, top) compared with the 5.5-French microcatheter system (b, bottom).
セルジンガー法で穿刺を行う 9F の内腔冷却式のレー
ザーシステムでは,患者によって穿刺が困難なこともあ
る。一方,直接穿刺はセルジンガー法による穿刺よりも
短時間で穿刺可能である。
腫瘤が明瞭に描出されていれば,CT 透視下穿刺の方
が閉鎖型 MRI ガイド下穿刺に比べ,短時間で穿刺が可
能である。しかし,
その場合は CT ガイド下に穿刺を行っ
た後,MRI 室へ移動する必要があり,その後カテーテル
の位置調整も必要となる。それに比べると,我々の今回
のカテーテルシステムを MRI ガイド下に穿刺した場合,
30 分程度手技時間の短縮が得られる。
今回の MRI 対応の灌流型レーザーカテーテルシステ
ムを高磁場の閉鎖型 MRI ガイド下で穿刺することは,
手技時間の短縮,正確な穿刺と治療効果を得ることが可
能である。
—13—
COMMENTS
肝腫瘍に対する経皮的な局所治療は,ラジオ波,マイ
クロ波,レーザー,凍結など様々な方法により行われて
いる。こうした局所治療を安全に行うためには,穿刺を
確実に行い,治療域を画像により正確にモニタリングす
る必要がある。MRI は温度感受性画像を撮像することが
可能であり,現在広く行われている温熱による局所治療
ではその有用性が期待される。
本論文では,新たに開発された細径のレーザーカテー
テルシステムの使用により,重篤な合併症をきたすこと
なく,安全に治療が行われている。今後さらなる細径の
穿刺システムの開発と MRI の使用により,MRI ガイド下
局所治療の治療成績が向上していくことが期待される。
静的な領域分析とニューラルネットワークによる
ガドリニウム造影 MR 画像における乳癌検出
Breast Cancer Detection in Gadolinium-Enhanced MR Images by Static Region Descriptors and
Neural Networks
Angelina A. Tzacheva, Kayvan Najarian, and John P. Brockway*
*Computer Science Department, University of North Carolina-Charlotte, North Carolina, U.S.A.
Journal of Magnetic Resonance Imaging, 17: 337-342 (2003)
抄訳 戸崎 光宏(東京慈恵会医科大学附属第三病院放射線科)
対象と方法
緒 言
欧米で女性が最も罹患しやすい癌のひとつが乳癌であ
る。国立がん研究所の概算では,2000 年には約 182,800
例の新たな浸潤癌と 39,900 例の非浸潤癌が米国の女性
に発生すると予測された。マンモグラフィは,乳癌の早
期発見において最も効果的な検査方法であると認識され
ている。しかし,スクリーニング検査において約 30%
の乳腺病変が見逃されており,さらに要精査で生検が行
われた場合でも,陽性はわずか 10 ∼ 33%にすぎない。
MRI は乳癌の新たな診断法として有望視されている。
Kelcz らは,良悪性の鑑別のためにダイナミック信号
強度( SI )データを用いた定量的解析方法を提案した。
特徴抽出には病変の信号強度測定が含まれ,関心領域
( ROI )設定は造影された領域を手書きで行う。1 つのパ
ラメータ[ SI の標準化された傾き( M )]は悪性と高い相
関を示した。感度は 67%,特異度は 94%であった。
Lucht らは,ダイナミック T1 強調像における乳腺腫瘤
の信号時間曲線を分類して,ニューラルネットワークの
有用性を検討した。8 つのニューラルネットワーク分類
を用いて評価した結果,感度 85.4%,特異度 81.8%,精
度 84.3%であった。
Schnall らは,限局性濃染域を分類するために画像診断
学的な分析を試み,造影剤の血行動態と構造データを統
合した。入力データは,ROI とそこに一致する時間変化
であり,ROI 設定は視覚的に早期濃染(造影剤注入 0 ∼
90 秒後)を示す部位の大きさにより決定された。構造モ
デルに血行動態を組み合わせると 0.96%の感度になるが,
特異度は低い(0.46%)
。
これまで最も注目された研究は主にダイナミック検査
であり,Kelcz らによって提案された信号時間曲線モデ
ルが信頼されている。しかしながら,ダイナミック T1
強調像の欠点のひとつとして,実際には乳癌の信号時間
曲線に一致する正常組織(例:血管)であったなど,い
くつかの誤診が存在することがあげられる。このような
誤診を避けるために,我々は自動方法論を用いることで,
腫瘤のほかの特性が考えられることを提案する。
我々は静的な領域分析を用いて,乳腺の静的造影 MR
画像における病変の評価に対する新たな方法を考案した。
デジタル画像処理技術とニューラルネットワーク分類を
基礎として,乳腺実質に対して血管と悪性腫瘤を認識す
る。静的な領域分析には以下の項目が含まれる。1 )造
影後の静的画像の SI,2 )腫瘤辺縁の分析,3 )偏心率測
定を用いた腫瘤形態の評価,4 )腫瘤の大きさ,5 )テク
スチャ解析による腫瘤の粒度。このモデルはすべて自動
で行われる。
データ集積
データは 1.5 T PMRTOW GE Twin Speed LX Clinical
Imager( GE Medical System 社製)にて収集した。14 例の
患者において,4 例は悪性所見がなく,10 例は手術によ
る病理所見において悪性であった。良性症例のうち 3 例
は,造影効果を認めなかった。残り 1 例は,針生検にて
病理学的に良性の増殖性変化と診断された。悪性 10 例
において,5 例は針生検にて病理学的に診断された[浸
潤性乳管癌 2 病変,非浸潤性乳管癌( DCIS )4 病変]
。4
例は乳房切除術にて病理学的に診断された(浸潤性小葉
癌 2 例,浸潤性乳管癌 2 例)
。1 例は乳房部分切除にて
病理学的に診断され,浸潤性乳管癌であった。1 例にお
いては,浸潤性乳管癌と非浸潤性乳管癌の両方が針生検
にて診断された。
それぞれのデータには 3 ∼ 6 断面のシリーズが含ま
れ,1 シ リ ー ズ に は 21 ∼ 644 画 像 が 1.8 ∼ 7 mm の ス
ライス厚で保存された。30 cc の細胞外液性 Gd 造影剤
を 1.7 mL / sec で経静脈的に注入し,引き続き 40 cc の生
理食塩液を 0.5 mL / sec で注入した。撮像プロトコールは
以下のとおりである。位置決め横断像,脂肪抑制 T2 強
調矢状断像,T1 強調像,3Dspoiled gradient recall echo(3D
FSPGR)
,および 3D SSMT(3D spectral spatial assessment)
。
FOV = 20 × 20 cm,マトリックス= 512 × 512,スライ
ス厚= 1.8 ∼ 7 mm。データ収集には T1 強調ダイナミック
画像を用いた。高い SI をもとに自動的に ROI 設定が行わ
れ,悪性の可能性があると認識され,特徴抽出および分
—14—
類に用いられる。1 画像から複数の領域が抽出可能である。
特徴抽出
特徴抽出システムは,1 断面の MR 画像を入力し,続
いて静的な領域分析を行う。
処理には,信号閾値と 2 画像変換を用いて領域抽出を
行う。我々は 0 ∼ 255 のグレースケールで,特に 110 ∼
140 の閾値の幅がデータとして最もよいことを見出した。
Figure 1. と Figure 2. に,入力画像と領域抽出後の画像を
それぞれ示す。
処理が完了した後,すべての ROI が計算され,静的な
領域分析が行われる。
分類
この分類アルゴリズムは,特徴抽出システムにより得
られたデータを入力し,悪性所見陽性か陰性かの 2 つに
分類する。
分類アルゴリズムとして 10 組の feed-forward backpropagation のニューラルネットワークを用いた。それぞ
れのネットワークは,4 つの入力項目,4 つの隠された
回路,そして 1 つの出力回路をもつ。ニューラルネッ
トワークの学習,テスト,そして分類は MatLab Neural
Network Toolbox(The MathWorks 社製)で行った。
入力情報はランダムに混ぜられ 10 組に分けられる。10
組のニューラルネットワークは 9 組が学習され,残りの
1 組でテストされ,そして平均化される(cross validation)
。
それぞれのネットワークは 5 ∼ 10 回学習される。
また,Bayesian 決定理論についても学習とテストを施
行した。
結 果
データには,ランダムに配列した 348 個の ROI 情報が
含まれていた。感度 90%,
特異度 91%,
精度 91%であった。
しかし,10 組の中には感度 100%,特異度 100%,精度
100%のニューラルネットワークが存在した。また,1 つ
のネットワークは 7 つの偽陰性を示したが,これはおそ
らくデータがうまく混ざり合わなかったためと考える。
Bayesian 分類から得られた統計学的結果は,ニューラ
ルネットワークの結果とほとんど同等であった。Table 1
に示すように,感度,特異度,精度ともに 92%であった。
Figure 1. Set 1, series 4, slice
35, unilateral, T1 dynamic, sagittal,
TR = 6.8, TE = 1.5, slice thickness
= 2.6 mm, FOV = 20 X 20.
Figure 2. Image segmented
using the intensity threshold.
療に要する時間と費用を全体的に削減できる。
ダイナミック MRI の信号時間曲線モデルでは,浸潤
癌に相当する washout カーブを示すような偽陽性物質は
実際には血管であるが,本研究では,疑わしい領域に対
する偏心率測定を行うため,そのような失敗はないであ
ろう。血管は典型的な蛇行する構造を示す一方,悪性病
変の多くは,円形からのずれは数学的により小さい。こ
れにより,乳癌自動検出システムはさらに高い精度で可
能になると考えられる。
最終的に,2 つの異なった分類アルゴリズムを用いて,
特異度 90%,感度 91%,そして精度 91%の結果が得ら
れた。これまでのモデルに比べて精度を向上させること
が可能であった。
異なったタイプの悪性や良性症例など,より多くのク
ラス分類をすることでこの方法の性能が向上すると期待
される。今後さらなる研究が必要であるが,より多くの
データを収集することで,乳癌,乳腺実質,線維腺腫,
そして良性増殖性病変を識別する技術が向上するであろ
う。我々は,抽出された形態情報から DCIS や小葉癌など,
病変のより詳細な分類が可能になると考えている。
考 察
COMMENTS
本研究は予備的であるが,新しい方法とニューラル
ネットワーク分類を用いることで,MRI における完全な
乳癌自動検出システムを高い精度で完成させた。
この方法は静的な領域分析を基礎としており,疑わし
い領域から重要な特徴量(形,大きさ,境界の歪み,粒
度)を抽出する。これまで MRI を用いた乳癌検出で最も
評価された方法は,ダイナミック撮像と信号時間曲線を
用いた Kelcz らのモデルである。本研究は,造影後の 1
断面に含まれる情報で十分であり,静的画像処理モデル
はダイナミック画像解析に比べて非常に効率的である。
従って,このシステムは臨床医の時間の節約になり,医
—15—
欧米では,MRI を用いた乳癌自動検出システムが着目
されてきた。特に,造影される腫瘤の良悪性の鑑別には,
ダイナミック MRI の時間信号強度曲線の解析やパターン
認識が有用であると考えられてきた。しかしこの論文で
は,ダイナミック検査ではなく,静的な腫瘤の形態評価が
より有用であることを強調しており,静的な領域分析と
ニューラルネットワークを用いた新たな解析方法で,より
精度の高い自動検出システムを報告した。日本では MRI
の乳癌自動検出システムの発展性はより低いが,静的な
腫瘤の形態評価という点において,同様の解析方法がほ
かのモダリティに応用できる可能性は大いにあると思わ
れる。
最適化された Interleaved ‒ Spiral パルス
シークエンスを用いた,正常および肺気腫患者
における過分極 3He 拡散高速 MRI
Rapid Hyperpolarized 3He Diffusion MRI of Healthy and Emphysematous Human Lungs Using
an Optimized Interleaved-Spiral Pulse Sequence
Michael Salerno, Talissa A. Altes, James R. Brookeman, Eduard E. de Lange, and John P. Mugler III*
*Center for In-Vivo Hyperpolarized Gas MR Imaging, Department of Radiology, University of Virginia School of
Medicine, Virginia, U.S.A.
Journal of Magnetic Resonance Imaging, 17:581-588 (2003)
抄訳 三角 茂樹(東京都立荏原病院放射線科)
緒 言
3
過分極された He ガスは MRI の新しい造影物質であ
り,吸入により肺実質を可視化することができる。過分
極 3He を用いた肺の MRI 画像は,肺気腫,喘息,嚢胞
性線維症などの様々な疾患の診断に役立つと見込まれて
いる。既に,3He 分布画像の作成だけでなく,健常者や
気腫患者において,拡散強調画像の技術を用いた 3He の
apparent diffusion coefficient( ADC)定量化が行われている。
3
He の ADC 値は肺気腫患者で上昇していることが報告
されており,肺機能検査との相関が示されている。3He
拡散画像は肺気腫の評価に役立つ方法となりつつある。
3
He の ADC 測定における限界は,それぞれの ADC
map に必要なデータ収集に数秒かかり,通常の息止め時
間内に数スライスしか評価できないことであった。これ
は特に肺気腫などの呼吸機能制限のある患者で問題にな
る。また,病早期において肺実質障害は限局性であるた
め,全肺野の ADC 評価をバイアスなしで行うことは重
要である。本研究では,interleaved-spiral パルスシークエ
ンスを用いることによって 3He の高速 ADC 画像作成を
可能にし,全肺野の 1 ∼ 1.5 cm 連続断面が 10 秒以内に
得られることを目標とした。この方法は,
最近ダイナミッ
ク 3He 画像として報告されているように,off-resonance
アーチファクトを減少させるために,限局した回転の
スパイラルを用いたインターリーフ( interleaf )ごとに短
いデータサンプリングを行う技術である。さらに,( k )
space データの周期的な振幅変調によるアーチファクト
を最小化するために,それぞれのインターリーフ( k )
space データの周波数を,k-space の中心信号振幅により
標準化する振幅修正方法を用いた。健常ボランティアと
肺気腫患者において,一般的な 3He の ADC 測定法であ
るグラディエントエコー(GRE)法と比較した。
対象と方法
3
He 拡散測定は,7 名(男 2,女 5,22 ∼ 34 歳)の健常
ボランティアと 5 名(男 2,女 3,47 ∼ 78 歳)の肺気腫
患者を対象に行われた。3He 胸部 RF コイルにより 3He
の共鳴周波数 48MHz の高域周波の操作が可能なように
改良した 1.5 T 臨床装置が用いられた。30 ∼ 42%程度の
ルビジウム気化物質の過分極によって 3He を得た。
それぞれのパルスシークエンスには,0,1.6 sec/cm2
の b 値をもたらすような同一の拡散傾斜が用いられた。
GRE のパラメーターは,TR/TE = 10.9/6.5 msec,FA = 7°,
マトリックス= 96 × 128,FOV = 37.5 × 50 cm,スライ
ス厚= 15 mm,スライス間隔= 15 mm,スライス数= 5,
撮像時間= 10.5 秒であった。
Interleaved-spiral パルスシークエンスにおけるパラメー
ターは,TR/TE = 10.5/3.4 msec,FA = 16°,マトリック
ス= 128 × 128,FOV = 50 cm,スライス厚= 15 mm,ス
ライス間隔= 0 mm,スライス数= 11,インターリーフ=
24,撮像時間= 5.5 秒とした。
それぞれの 2 つのテクニックを直接比較できるように
スライス位置は決められ,視覚的に比較された。また,
定量的な評価のため,ADC map はピクセルごとに拡散
強調画像から計算され,ADC 値は次のように与えられる。
S H と S L はおのおの高あるいは低 b 値から得られる信
号であり,b H と b L はそれぞれ高および低 b 値である。
ADC 平均と SD 値はそれぞれの ADC map から計算され,
t 検定と Pearson 相関係数を用いて評価される。
結 果
Figure 2. は肺気腫患者から得られた ADC map である。
それぞれを比較して磁化率,ブラーリングや信号低下,
位置的な歪みによる画質低下がないことは明白である。
また,断面ごとにおける ADC 平均と SD は,それぞれ
—16—
Figure 2. Coronal 3He ADC maps from a patient with severe emphysema
acquired using (a) interleaved-spiral and (b) GRE pulse sequences. The
positions of every other section from the interleaved-spiral acquisition match
those from the GRE acquisition. The two pulse sequences yielded ADC maps
that are qualitatively and quantitatively similar. The color bar in (b) is in units of
cm2/second; the same color bar applies to both sets of images.
とつの利点としては,収集時間が短いために SNR の損
失を引き起こす T1 減衰が少ないことである。T1 減衰が
少ないために,それぞれの横断像で同等の SNR を得る
ことができるが,GRE 法では最後に得られる画像では
SNR の顕著な減衰を示す。問題点として,RF 励起数が
より少ないため,より大きい FA が最大の SNR をもたら
すために必要とされる。大きい FA は,ADC 値により大
きなバイアスをかける可能性がある。例えば,本研究で
使われているパラメーターでは,GRE においては FA =
7°が使われており,ADC 値に 0.005 cm2 のバイアスがか
かる結果となるが,16°を用いた interleaved-spiral パルス
シークエンスの結果としては,0.02 cm2/sec のバイアスが
かかる。このバイアスを改善させる可能性としては FA
を変化させることであるが,実際には一定の信号振幅を
得るのは困難である。この振幅修正は,T1 減衰と RF パ
ルスによる平均信号強度の変化のみを修正しているが,
それでもなお我々の実験は画質の改善に有用であった。
結 論
の方法間で統計上は顕著な違いを示さない。健常者にお
ける ADC の平均は,interleaved-spiral パルスシークエン
スと GRE においてそれぞれ 0.20 ± 0.03 cm2/sec と 0.21 ±
0.03 cm2/sec である。気腫患者においてはそれぞれ 0.50 ±
0.07 cm2/sec と 0.51 ± 0.06 cm2/sec であり,すばらしい相
関を示す。
考 察
Interleaved-spiral パルスシークエンスによる拡散強調画
像は,短い 1 回の呼吸で全肺野の連続した断面の ADC
map をすばやく手に入れることができ,また,通常の
GRE 法から得られるものと同等の ADC 値が得られ,肺
の微細構造の部位的な変化を推測するのに役立つ。さら
に,共鳴周波数が減少することにより,off-resonance アー
チファクトの増大なしにデータサンプル期間の相応の
増大が可能なため,0.5 T 以下の低磁場においてよりよ
い SNR を期待できる可能性がある。低磁場領域では 24
インターリーブより低く利用できることにより,我々の
SNR 解析が示すように,良好な SNR が期待される。問
題としては 3He の利便性に制約があり,高価であること
である。
我々は,最小限のデータサンプリング間隔をもつよ
うに FOV,マトリックス,インターリーフを決定した。
振幅変調によるアーチファクトを減少させるため,変調
補正を行った。このパルスシークエンスは,24 のイン
ターリーフと 3.4 msec のデータサンプリング間隔からな
り,磁化率アーチファクトが細小の画像を作る。このパ
ルスシークエンスによって作られる拡散強調画像は通常
の GRE 法の画質と同等であり,さらに 10 秒以下の短い
息止め時間で全肺野が撮像でき,連続的な 1.5 cm 横断像
を 6 秒,1 cm 横断像を 8 秒で得ることができる。もうひ
—17—
COMMENTS
Hyperpolarized 3He を用いて肺実質を描出する MRI 像
の報告が最近みられるが,本研究では interleaved-spiral パ
ルスシークエンスを利用して,全肺野でギャップなしの
画像が 1 呼吸で得られている。画像は興味深く,CT 等に
よる気道病変や肺胞構造の変化と比較して,様々な病態
を推測することを考えると面白い。しかしながら,3He の
利用には課題が多く残る。
MRI 拡散テンソルを用いた神経線維路の分類と
定量化
Classification and Quantification of Neuronal Fiber Pathways Using Diffusion Tensor MRI
Zhaohua Ding*, John C. Gore, and Adam W. Anderson
*Vanderbilt University Institute of Imaging Science, Tennessee, U.S.A.
Magnetic Resonance in Medicine, 49: 716-721 (2003)
抄訳 武内 弘明(JR 東京総合病院放射線科)
緒 言
生体内での神経線維路の定量性は,神経学的および臨
床的に重要である。MR による拡散テンソル画像は神経
線維の局所的な方向を確定できる。著者らが開発した新
しいアルゴリズムは,拡散テンソルを用いて生体内での
神経束の再構成,および多様な物理的,幾何学的特性の
定量化を可能にしている。このアルゴリズムの信頼性は
再現性テストにより検査され,物理的,幾何学的に矛盾
のない神経線維の評価が得られた。このことは,生体内
での神経線維の定量的研究に対する大きな可能性を提供
している。
対象と方法
拡散テンソルイメージ
1.5 T GE signa LX を用いて 3D 拡散テンソルデータを
得た。Motion artifact を最小限にし,検査時間を短縮する
ために EPI を用い,20 × 20 × 9 cm3 のボリュームデー
タを 64 × 64 × 18 ボクセルで採取した。6 種類の方向
の異なる MPG を印加したデータおよび MPG を印加し
ない撮像を行った。
神経線維路
神経線維路は 3D 拡散テンソルデータから再構成した。
*
その方法は森らの方法(文献 8)
と類似している。
神経線維の追跡は 1 組の線維の類似性測定から始ま
る。最初に corresponding segment の概念を説明する。
Corresponding segment は,ある線維 Fiber( Fi )の一部が,
もう 1 本の線維(Fj )の相当する部位と定義される。従っ
て,corresponding segment ratio は corresponding segment
1 組の線維全長に対する比率と定義される。
[2]
い距離にあるときに類似していると考えられる。2 つの
線維の長さは corresponding ratio( Rcs )によって測定され
る。形態の類似性と近似性は平均のユークリッド距離
( D )により同定される。それゆえ神経線維 Fi と Fj の類
似性は(Rcs )と D により定義される。
Sij = Rcs・exp ( − D/C).
[3]
C は D の係数である。
類似性は神経線維 F i が F j と同等であるとき 1.0 と定義
される。類似性は Rcs が減少するときや D が増加すると
きに小さくなる。Corresponding segment ratio と類似性の
定義を用いて以下のステップが神経線維に対して行われ
る。
1)For fiber F, find eight fibers whose seed points are the
neighbors of the seed point of F.
2)Calculate similarity S between F and each of the eight
neighboring fibers.
3)Threshold similarity such that any similarity value smaller
than T (0 ≦ T ≦ 1) is set to 0.
4)Find up to K neighboring fibers whose nonzero similarity to
F is greatest.
*
5)Group F with each of the fibers found in Ref.4.(文献 4)
上記のステップは,すべての神経線維が追跡されるま
で繰り返される。
神経線維束の定量化
神経線維路の集団は,解剖学的な神経束によって特徴
付けられる共同の性質をもつ。定量性の評価は,線維の
長さに沿った長軸方向と垂直方向の平均の拡散率という
物理的なパラメーターや,曲率や捩率という幾何学的な
パラメーターを含んでいる。これらの値は容易に測定で
きる。
結 果
Lcs は corresponding segment の長さであり,Li と Lj は神
経線維 F i と F j のそれぞれの長さである。Corresponding
segment ratio(Rcs )は 0 から 1 の値をとる。
2 本の線維は,同等の長さをもち,形態は類似し,近
Figure 5. は,神経線維路を解剖のイメージに重ね合わ
せたものである。これらの神経路は,健常ボランティア
の右内包に 2D 領域 の seed points をおいて再構成したも
のである。この神経路の長さは約 140 mm である。Figure 6.
—18—
Figure 5. Superposition of reconstructed fi ber pathways onto
anatomical images. These fiber pathways are reconstructed from seed
points in a region that includes the right internal capsule.
Figure 6. a: The set of fiber pathways shown in Fig. 5. b-d: Three fiber
bundles obtained from a with the bunding algorithm (T = 0.8, K = 3).
は,その神経線維路の詳細( a )と新しいアルゴリズムで
作製された 3 本の神経線維路(b-d)を示している。
アルゴリズムの再現性のテストのため,同じボラン
ティアから 2 組のデータを得た。Figure 5. は acquisitions
1,3,5,7 の average から作製され,acquisitions 2,4,6,
8 は再現性テストのために用いられた。よって画像デー
タのパラメーターは同一である。詳細はわずかに違うが,
再現性テストは Figure 5,6. とほぼ同じ結果が得られた。
物理的,幾何学的なパラメーターについても同様の再現
性テストが行われ,高い再現性が確かめられた。
ほかの神経線維追跡のアルゴリズムとは無関係である。
信頼できるデータを必要とするが,より強い神経線維追
跡のアルゴリズムは望ましい。
Simple path-following 法の欠点は,ノイズや partial
volume effect の影響を受けやすいことである。ノイズの
多い拡散テンソルデータや,分岐点・神経線維の交差部
では,信頼できる神経線維の再構成に明らかに限界があ
る。これらの問題は,最近ではノイズの多いデータを分
離,連続した拡散テンソルデータを構築して神経線維を
追跡することや,神経線維追跡方向を調節することで対
処されている。著者らは,神経線維追跡のアルゴリズム
がより洗練された方法となることを期待し,今後の研究
方法として上記の方法を組み込むことを考えている。
考 察
生体内における神経線維路の量的な解析の結果を本論
文で述べた。
著者らは,DTI を用いた神経線維路解析のアルゴリズ
ムを開発した。物理的,幾何学的な神経線維の特性の量
的な解析を行った。信頼性の検査は行われ物理的,幾何
学的な測定のずれは 10%以下であり,線維軸のずれは
およそ 1 mm であった。
本研究中に,典型的な 7 ∼ 10 本の大きな神経線維束
が右内包を通過しているのが確認された。そのうち最も
大きな 3 本の神経線維束は再現性検査のために解析され
た。大きな神経線維束は大脳皮質に向かって広がって
いっており,解剖学的な所見と強く一致した。
これらの結果を確認するため,著者らは神経線維路を
追跡するトレーサー分子を用いた動物実験を計画してい
る。
本論文では,神経線維を再構成するために simple pathfollowing 法が用いられたが,著者らのアルゴリズムは,
*
文献 4) Pierpaoli C, Jezzard PJ, Barnett A. Diffusion tensor
MR imaging of the human brain. Radiology 1996; 201:
637-648
*
文献 8) Mori S, Grain BJ, Chacko VP, van Zijl PGM. Threedimensional tracking of axonal projections in the brain
by magnetic resonance imaging. Ann Neurol 1999; 45:
265-269.
—19—
COMMENTS
拡散テンソルによる白質線維路の評価は,近年急速に
発達・普及してきている。優れた tractography によって表
現された線維路はまるで標本をみるようである。今後は
定量性を含めた信頼性の評価や,より多くの疾患への臨
床応用が期待される。そのためにも tractography 解析法の
進歩に期待してやまない。
Factor Analysis を用いた 3 次元造影 MRI に
おける動静脈の分離描出
Separating Arterial and Venous Components from 3D Dynamic Contrast-Enhanced MRI Studies
Using Factor Analysis
Anne L. Martel*, Doug Fraser, G. Steve Delay, Paul S. Morgan, and Alan R. Moody
*Department of Medical Physics, Queen’s Medical Centre, Nottingham, U.K.
Magnetic Resonance in Medicine 49: 928-933 (2003)
抄訳 畑 雄一(東京慈恵会医科大学附属青戸病院放射線科)
緒 言
動脈疾患に関する 3 次元造影 MRI の報告は枚挙にい
とまがないのに対し,静脈疾患に関する報告は極めて少
ない。これは動脈と静脈を分離識別することが困難であ
ることに原因がある。
後処理によって動静脈を識別する方法は二大別するこ
とができる。ひとつは統計的手法によって静脈を追跡
する方法である。利点は 1 回の撮像でも適用できる点に
あるが,多数の seed points を選択する必要がありコン
ピュータの負担も大きい。もうひとつはダイナミック法
によって動脈と静脈が増強される時間の差を利用するも
のである。
本研究では 1 回および 2 回サブトラクション法と,サ
ブトラクション法のひとつである因子解析(FADS)によ
る画像の信号雑音比( SNR )を比較すると同時に,動静
脈の分離識別能と静脈 MIP 画像の画質を検討した。
対象と方法
(1)対象
症候学的に深部静脈血栓症が疑われ,MR 静脈像が撮
像された 20 例である。
(2)1 回サブトラクション法
最も単純な方法で,動脈の最大増強画像から最初の画
像を減算することによって動脈像を,静脈の最大増強画
像から動脈の最大増強画像を減算することによって静脈
像を得る。
(3)2 回サブトラクション法
最後の 2 画像の加算画像から最初の 2 画像の加算画像
を減算し,動脈像と背景像を同時に消去する。
(4)FADS
因子解析はダイナミック画像が,時間的,空間的成分
を有する少数の生理学的因子の線形和で決定されるとい
う仮定の上に成り立っている。時間的成分が事前に知ら
れている(あるいは推定される)とき,空間的成分は行
列演算によって直接求められる。動脈,静脈,背景はそ
れぞれが固有の信号強度曲線(SIC)を有しており,これ
を因子曲線と呼び,すべての画素の SIC はこれらの因子
曲線の線形和であると仮定される。
因子曲線はモニター上で SIC を視認しながら,大動脈,
下大静脈の画素の中で最適な曲線が得られるものとして
選択する。背景の信号強度は検査を通じて一定であると
仮定する。すべての因子曲線は最大値が 1 となるように
標準化し,典型例を Figure 1. の左図に示す。因子曲線が
決定されたのち,行列演算により固有フィルターを求め
る(Figure 1. の右図)
。
(5)SNR 期待値の計算
因子画像における SNR の期待値を次式で得た。
SNR k ϭ
fk ● ek
␴͉e k͉
ここで ek は因子画像を得るのに用いた固有フィルター
であり,f k は因子曲線,σは雑音である。1 回法,2 回
サブトラクション法でも Figure 2. に示した曲線を固有
フィルターと考えることで,因子解析の方法がそのまま
適用できる。
(6)サブトラクション画像の評価
各画像は客観的,主観的に評価した。客観的な評価法と
しては,動脈,静脈それぞれの関心領域(ROI)におけるサ
ブトラクション画像と非サブトラクション画像の平均信号
比を│ e k │で除することによって相対的 SNR を求めた。
静脈像における動静脈の分離識別指標は次式によって
計算した。
分離識別指標=(静脈の平均信号強度)−(動脈の
平均信号強度)/(静脈の平均信号強度)
画質に関する主観的な評価法としては,サブトラク
ション後の静脈 MIP 像,静脈が最大増強効果を示す画
像の非サブトラクション MIP 画像を 2 名の診断医が視
覚的に比較した。画像をランダムに提示し,優れている
ものから順位付けし,また背景および動脈抑制の程度,
静脈描出能を 3 点法で採点した。
結 果
各サブトラクション法と相対的 SNR と分離識別指標
は Table 1 および 2 に示した。
MIP 像の例を Figure 5. に示した。視覚的にも FADS 法
—20—
Figure 5. Venous MIP images generated using (from left to right) the
unsubtracted data, single subtraction, double subtraction, and FADS.
Figure 1. On the left the estimated factor curves F are shown (arterial:
solid line, venous: dashed line, background: dotted line). On the right
are the first two rows of E calculated from F using Eq. [2a] (arterial: solid
line, venous: dashed line).
Table 1
Arterial Results
Arterial
Single
FADS
Expected relative SNR
Measured relative SNR
Separation index
0.7 Ϯ 0.1
0.60 Ϯ 0.04
0.8 Ϯ 0.3
0.6 Ϯ 0.1
0.6 Ϯ 0.2
0.9 Ϯ 0.2
Table 2
Venous Results
Figure 2. Filters for the venous component using single (left) and
double (right) subtraction techniques.
が最も優れており,2 名の読影者による順位の平均は,
FADS,2 回および 1 回サブトラクション,サブトラク
ション法でそれぞれ,1.44,1.92,2.95,3.69 であった。
画質指標も FADS(平均 2.3)
,2 回サブトラクション法
(平均 2.2)と比較し,1 回サブトラクション法(平均 1.4)
は有意に低かった。一例ではどのサブトラクション法も
有効ではなかったが,これは造影剤の通過が極めて高速
であったことが原因と考えられた。
考 察
FADS による静脈像の SNR は単純なサブトラクション
法と比較して有意に高かった。FADS は動静脈のそれぞ
れ 1 個の画素における SIC を観察することで実行可能で
あり,後処理が敏速な利点がある。検査後直ちに画質評
価を行い,画質が不十分であれば再検査を検討すること
も可能である。
今回用いた方法は,従来動脈像において静脈成分を抑
制する目的で用いられてきた固有画像フィルター法と基
本的には同様の手法である。我々は固有ベクトルを計算
せず,行列に変換し問題を単純化した。相関分析も同種
の方法であるが,求める血管像を強調し,ほかを抑制は
しない点で因子分析と異なる。動脈像では相関分析の特
長が生かされるが,静脈像に関して FADS が有用である。
今回は動静脈の因子曲線を手動的に決定し FADS を実
行した。手動的検出により操作者間の差は避けられず雑
音成分も増加するが,迅速性を優先して自動検出を避け
た。
Venous
Single
Double
FADS
Expected relative SNR
Measured relative SNR
Separation index
0.4 Ϯ 0.2
0.3 Ϯ 0.2
1.0 Ϯ 0.0
0.6 Ϯ 0.1
0.6 Ϯ 0.1
0.9 Ϯ 0.2
0.8 Ϯ 0.1
0.7 Ϯ 0.2
0.9 Ϯ 0.2
因子分析はある構成要素の画素がすべて同一の時間信
号曲線を示すという前提の上に成り立っている。しかし,
実際には血管に狭窄がある場合などでは SIC にばらつき
があり,動静脈の分離描出が不完全となる。画像を 4 分
割し独立して後処理する方法も提唱されているが,ばら
つきを完全に克服できるとは思われない。これに代わる
ものとして 1 次処理の後,別な因子曲線を選んで 2 次処
理を行い,その結果を 1 次処理画像に加える方法が考え
られる。
Blood pool 造影剤は血中滞留時間が長いため,撮像時
間を延長することにより SNR の向上が期待できる。こ
の場合は緒言で述べた統計的手法がよい適応となるが,
多数の seed points を選ばねばならないこと,また,動静
脈が互いに接している場合は有効でない欠点がある。こ
の場合にも FADS は seed points を前もって決定する補助
手段として利用が可能である。
—21—
COMMENTS
本論文は後処理のみで MRI venogram の画質向上を達成
しており,処理も迅速で負担の少ない方法であることは大
いに評価できる。しかし,本文中にもあるように,ダイナ
ミック法をもとに処理を行っている以上は時間信号曲線
における動静脈の時間識別能に依存せざるを得ず,血流
動態に異常がある場合の静脈描出能に問題を残している。
これに対する因子解析の改善案,あるいはほかの手法の
補助的役割の可能性も示唆されており,今後に期待したい。
編集後記
本誌 "MRI in Medicine" 上で抄訳を行ってい
る "Magnetic Resonance in Medicine","Journal of
Magnetic Resonance Imaging" の 2 学術雑誌を発
行している国際磁気共鳴医学会( ISMRM )の日
本での開催がいよいよ来年 5 月に迫ってきた。
2004 年 5 月 15 ∼ 24 日まで京都国際会議場で開
催される。日本での開催は日本,アジアの磁気
共鳴医学関係者が長い間熱望していたことでも
あり,組織委員会( 委員長・高橋睦正,副委員
長・平敷淳子 )では本学会の開催をアジアとヨー
ロッパ,アメリカとの掛け橋となるような国際
交流の場にしたいと現在,鋭意努力を重ねてい
る。本学会では世界の磁気共鳴医学の基礎研究
者と臨床関係者が集まり,最近の進歩,臨床応
用について情報交換を行うものであるが,特別
講演,全体会議,学会前の教育セッション,カ
テゴリカルコースなどのほかに約 2,000 題にの
ぼる学術発表が講演並びにポスター展示で実施
される。50 カ国以上の国から研究者,臨床医の
集まる文字通り世界最大の磁気共鳴に関する学
会と言えよう。本学会では放射線技師のための
SMRT も開催され,技術的な進歩の発展,情報
交換が行われる予定である。
我が国で ISMRM を開催するというこの機会
に多くの日本の磁気共鳴医学関係者が参集され
るよう,日本語によるセミナー,アジア・日本
の研究室紹介などを行うプログラムを計画して
いる。本学会で従来行われていなかった開会式
は日本情緒豊かな内容のものとし,その後でレ
セプションを開き,懇親を深めていただく予定
である。会員懇親会も開催し,日本文化の紹介
を行う傍ら,会員の交流が深まるよう計画して
いる。日本,アジアからの若手研究者の参加に
は登録料の援助を行う計画も立てている。
さて,本号では東京慈恵会医科大学の福田国
彦教授の編集で,同教室の若手研究者の先生方
に抄訳およびコメントをいただいた 9 編の論文
を取り上げている。いずれも磁気共鳴医学の最
新のトピックスであり,基礎的研究から臨床応
用へ発展しつつある領域に関する論文である。
特に MRI を用いた治療への応用のほか,拡散テ
ンソルによる神経経路の描出,関節軟骨変性の
早期描出,多シークエンス MRI を用いたプラー
クの描出,乳癌の自動診断など最近のトピック
スに属する興味ある論文を取り上げていただい
た。従来どおり読み応えのあるトピックスにつ
いて紹介していただいたと考えている。本号の
編集と抄訳・コメントの執筆に携わっていただ
いた福田教授はじめ教室の先生方に心から御礼
を申し上げたい。
(国際画像診断センター 高橋 睦正)
—22—
INTERNATIONAL SOCIETY FOR MAGNETIC RESONANCE IN MEDICINE
ISMRM第12回学会・展示会
2004年
5月15∼21日
京都国際会議場
2004 Lauterburレクチャー
「免疫抑制から狂牛病までー生命分子を用いた
in vitro NMRスペクトロスコピー」
カテゴリカルコース
メタボロミクスおよびプロテオミクスにおけるMRの影響
新しい造影剤による組織構造分析を超えたMRI
スクリーニングにおけるMR
現在と未来の癌治療の評価における画像診断の役割
MRIの限界を超える:信号の検出および増強に関する新しい概念
体幹部の機能的MRI:形態から機能まで
拡散テンソルイメージングおよび機能的MRIの理解:脳の構造と
機能の関係
エコーの管理
MRAの応用の確立と発展
筋骨格系MRIにおける新しい展望:最新技術によるMRIの最適化
パラレルイメージング2004
スペクトロスコピー:脳とその他の応用
新薬開発におけるイメージング
インターベンショナルMRI:最新技術と今後の発展
臨床に関する最新の話題
心血管MR:現在と未来
週末教育セッション
他の実践講座
Kurt Wüthrich
Eidgenössische Technische Hochschula, Zurich, Switzerland
総会
2日間コース:
脳の機能とfMRI
物理学者のためのMR物理学
1日間コース:
進化した体幹部のMRI
ニューロイメージング
RFの基礎訓練:RFのコイルデザイン,構造およびインターフェー
スの基本要素
MRスペクトロスコピー:基礎と臨床応用
MRスペクトロスコピー:最先端の方法と応用
心イメージング
トランスジェニックマウスモデルのMR(MR Omics)
筋骨格系MRI
詳細の問い合わせまたはパンフレットの請求は:
INTERNATIONAL SOCIETY FOR MAGNETIC RESONANCE IN
MEDICINE
2118 Milvia Street, Suite 2G1, Berkeley, California 94704 USA
Tel: +1 510 841 1899 Fax: +1 510 841 2340
E-mail: [email protected]
臨床医のためのMR物理学と技術
SMRT・ISMRM合同プレゼンテーション:MRのアーチファクト
とピットフォールの管理
日本語によるサマリーセッション:基礎科学のハイライトと新しい
臨床開発(全日程とも,基礎科学セッションおよび臨床科学セッ
ションのトピックおよびハイライトを日本語で要約します。)
このほか,2,000題以上の学術発表(講演・ポスター)が予定され
ています。
事前登録最終受付:2004年4月2日
ISMRMのウェブサイトwww.ismrm.orgもご覧ください。
ISSN 1345-1219
Volume4 No.3 December 2003
MRI
in Medicine
For Clinical Understanding &
Application
Selected Articles from
Journal of Magnetic Resonance Imaging
Magnetic Resonance in Medicine
日本語抄訳版
No.12 監修 高橋睦正 国際画像診断センター
編集 福田国彦 東京慈恵会医科大学放射線医学講座
Publishers Since 1807