SENSEおよびTurbo Spectroscopic imagingの特性 山形大学医学部附属病院 放射線部 ○藤村 雅彦 児玉 潤一郎 (Fujimura Masahiko) (Kodama Jyunichiro) 伊藤 由紀子 (Itou Yukiko) 石井 英夫 渡辺 道子 江口 陽一 (Ishii Hideo) (Watanabe Michiko) (Eguchi Youichi) (株)フィリップスエレクトロニクスジャパン 鈴木 由里子 奥秋 知幸 (Suzuki Yuriko) (Okuaki Tomoyuki) 【はじめに】 3T-MRの特徴にSNRの上昇とChemical shift(ケミカルシフト)の増大が上げられるが、この2点はMR Spectroscopy(以下、MRS)にとって有利となる特徴である。MRSでのMulti.voxelによる測定法として Chemical shift imaging(以下、CSI)があり、今回はそのCSIの撮像時間を短縮する手法であるSENSE-CSIお よびTurbo-CSIの特性を求め臨床的有用性について検討したので報告する。 【使用機器】 Achieva 3.0T Release.2 (PHILIPS) MR Spectroscopy用ファントム (GE) 【方法・検討項目】 撮 像 条 件 は CSI の SE 法 (Slice 励 起 ) を 使 用 、 TR2000,TE288,FOV240,Matrix23 × 23,NSA1 と し た 。 SENSE-CSI・Turbo-CSIそれぞれの特性を見るためにSENSE-CSIではSENSEを使用しない場合(no)と factor2,3,4。Turbo-CSIではTurboを使用しない場合(no)とfactor2,3,5と変化させてボランティア頭部・ファン トムを撮像した。また、撮像したそれぞれの 表1.SENSE-CSI:SNR(NAA) スペクトルより代謝物質のピークと factor SNR(NAA) % SNR(NAA)を比較。そして臨床的な有用性 SENSE no 155.1 100.0 NAA SENSE 2 120 77.4 Cho を検討した。 Cr SENSE 3 54.8 35.3 SENSE-CSI は イ メ ー ジ ン グ に 用 い る SENSE 4 40 25.8 a) SENSE no SENSE同様、k空間をアンダーサンプリング 17分08秒 することによって撮像時間を短縮しており、 Turbo-CSIでは1回の励起で複数のエコー を収集することによって撮像時間を短縮す る手法を用いている。 b) SENSE 2 c) SENSE 3 d) SENSE 4 【結果】 9分38秒 5分10秒 6分40秒 1) SENSE-CSI 図1. SENSE-CSI 代謝物質ピーク 図1.のa)~d)のスペクトルは1ピクセル のデータを示している。どのスペクトルも 表2.Turbo-CSI:SNR(NAA) factor SNR(NAA) % Cho,Cr,NAAのピークがSENSEを使用し Turbo no 155.1 100.0 ない場合の「SENSEno」とほぼ同様なピ NAA Turbo 2 118.2 76.2 Cho Cr ークを呈している。しかし、図1.-d)の Turbo 3 89.1 57.4 Turbo 5 71.2 45.9 「SENSE4」では撮像時間5分10秒と3分 a) Turbo no の1程度まで短縮できているが、基線か 17分08秒 らわかるようにSNRが低下しているため Lac付近を見るときは注意が必要である。 ま た 、 表 1 . の SNR の 比 較 を み る と 「SENSE3 ・SENSE4」でのSNRの低下 b) Turbo 2 c) Turbo 3 d) Turbo 5 が目立ち、「SENSE2」では時間短縮の 8分36秒 5分46秒 3分48秒 図2. Turbo-CSI 代謝物質ピーク わりにSNRの低下が小さいことがわか る。 2) Turbo-CSI 表3.Turbo-CSI:NAA/Cr,Cho/Cr SENSE-CSIと同様に図2.のa)~d)のスペクトルは1ピクセ NAA/Cr Cho/Cr ルのデータを示している。Turbo factorを増やしてもTurbo Turbo no:TE288 2.8 0.96 を使用しない場合の「Turbo no」(図2.a)と同様で良好なピー Turbo 2:TE288,576 2.75 0.88 クを呈している。表2.のSNRをみると「Turbo3・Turbo5」の場 Turbo 3:TE288,576,864 2.64 0.84 合でも50%程度のSNRを有することがわかる。Turbo-CSIで は factor に 応 じ て 、 異 な る 表4.SENSE+Turbo-CSI:SNR factor SNR(NAA) ( AA) % TE(Turbo2 の 場 合 は TE288,576 、 SENSE no NAA Cr Cho 155.1 100.0 Turbo3はTE288,576,864)で収集さ Turbo no SENSE 2 れたデータが充填されピーク比が 111.8 72.1 Turbo 2 SENSE 2 変わる可能性がある。しかし、表3. 72.2 46.6 Turbo 3 a) SENSE no/Turbo no 「 NAA/Cr,Cho/Cr 」 の ピ ー ク 比 に SENSE 4 35.2 22.7 Turbo 3 17分08秒 大きな差が見られないのは、T2補 正が再構成時に施されているため である。 3) SENSE-CSIとTurbo-CSIの併用 b) SENSE 2/Turbo 2 c) SENSE 2/Turbo 3 d) SENSE 4/Turbo 3 図 3. の a) ~ d) は SENSE-CSI と 4分52秒 3分18秒 1分54秒 Turbo-CSIを併用した場合のスペ 図3. SENSE+Turbo-CSI 代謝物質ピーク クトルである。併用ということもあっ て撮像時間は大幅な短縮になって いる。しかし、全体的に基線の乱 れ が 目 立 ち 特 に 図 3.d) の 「SENSE4・Turbo3」のスペクトルで はLac.と間違えるほどのピークの 乱れがある。表4.のSNRからでもわ かるが「SENSE4・Turbo3」の場合の SNRの低下は著しい。そこで当院 b) Turbo 3: 5分46秒 a) SENSE 2/Turbo 3: 3分18秒 図4. 症例 anaplastic ependymoma では、撮像時間とSNRを考慮して 「SENSE2・Turbo3」の撮像時間3分18秒のシーケンスを採用している。 【症例】 図4.はanaplastic ependymomaの症例である。a)はSENSE2・Turbo3で3分18秒の撮像で、b)はTurboのみ の使用、5分46秒で撮像したCSIである。どちらも代謝物質ピークを良好に示している。また、上段中央の画 像はNAAの代謝マップ、上段右側の画像はLacの代謝マップである。これらの代謝マップも良好に表示さ れている。そして、各ピクセルのピークと代謝マップを観察することにより、腫瘍の進展範囲の評価資料とし て利用している。 【まとめ】 SENSE-CSIはSNRの低下はあるが代謝物質のピークに大きな差はみられず、Turbo-CSIではSNRの低 下も小さく、両者とも撮像時間の短縮に有効であった。また、Turbo-CSIは、T2補正が施されているため Turbo factor を変えても、代謝物質のピークに大きな差は現われなかった。SENSE-CSIとTurbo-CSIの組 み合わせでは、SNRの低下を考慮しSENSE2, Turbo3(撮像時間3:18)程度が良好であった。代謝マップや ピクセルごとのピークで腫瘍の進展範囲などを容易で正確に評価できるようになり臨床的有用性は高いと いえる。3.0TではSENSE-CSIとTurbo-CSI組み合わせることで、短時間で行えるためルーチン検査としても 十分可能であった。 【参考文献】 1) Dydaku et al: Sensitivity-enchoded spectroscopic imaging. Magn Reson Med 46(4):713,2001 2) 鈴木由里子ほか: SENSE-TSIの臨床応用の可能性. INNERVISION 9(1) 70-71,2006 3) Dydak U et al: Parallel spectroscopic imaging with spin-echo trains. Magn Reson Med 50(1):196,2003 4) MRI「超」講義 第2版(荒木力 監訳),株式会社 メディカル・サイエンス・インターナショナル,2003
© Copyright 2024 ExpyDoc