Clontechniques 2008年早春号のご紹介

Clontechniques 2008年早春号のご紹介
Clontechniquesをご愛読いただきましてありがとうございます。2008年早春号では、レンチウイルス関連製品Lenti-Xシリーズ
をはじめ、Clontech社のウイルス発現システムの特集記事をご紹介しています。また、本号掲載の新製品はすべて通常価格の
30%オフでご提供いたします。
(2008年5月30日のご注文分まで。44∼45ページをご覧ください。)ぜひご利用ください。
Gene of Interest
特集1.レンチウイルス関連 Lenti-X TM シリーズ
5' LTR
TM
PCMV IE
RRE
Lenti-X HT Packaging System は画期的な高力
価を実現!
cPPT
相乗的なパフォーマンス
本パッケージングシステムの極めて高レベルのウイルス産生は、以
下に示す 3 つの相乗作用が鍵となっています(Figure 1;右図)。
1.Lenti-X HT Packaging Mix は複数のベクターを組み合わせ
た Clontech 独自のセットで、レンチウイルス産生に必要なすべて
の遺伝子を含有しており、高レベルの Gag-Pro、Tat、Rev、RT、
IN ならびに VSV-G タンパク質を発現します。これらのタンパク質
のいくつかは安全性を考慮して分断した遺伝子から発現されます。
また、プラスミドは最大のウイルス産生能が得られるよう、理想的
な比率に調製されています。
2.Lenti-X Packaging Mix には Clontech の Tet システムで使
用している Tet-Off トランス活性化因子
(tTA)を発現するベクター
が含まれており、テトラサイクリン応答プロモーターからウイルスタ
ンパク質を高レベルに発現誘導します。これにより最高レベルのウ
イルス力価を達成します。
3.最適化された Lentiphos HT 形質転換システムを用いることで、
Lenti-X HT Packaging Mix のプラスミドと目的のレンチウイルス
ベクターを、前例のない高い効率で 293T 細胞に導入できます。
これらの高度に調和した作用により、Lenti-X システムのレンチウ
イルスベクターから、また他の複製能欠損型レンチウイルスベクター
からも、複製能力のない安全なレンチウイルスを 293T 細胞で大
量産生可能です。
レンチウイルスの安全な大量産生
レンチウイルス発現系では、遺伝子分断パッケージング法により、
遺伝子組換えを介する自己複製型ウイルスの産生を防止していま
す。Lenti-X HT Packaging Mix は Clontech 社独自の発現エレ
メントで構成されており、組換え型レンチウイルス発現ベクターの
転写物が感染性ウイルス内へ効率的にパッケージングされます。
Packaging Mix が発現するタンパク質の遺伝子は異なるプラスミ
ド上に存在し、レンチウイルスベクターとの相同性を欠いているた
め、パッケージングされるベクター配列内への挿入または組換え
Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
PuroR
WPRE
3' LTR
tTA
Lenti-X HT
Packaging Mix
293T cells
1. Collect virus after 48 hr
2. Transduce host cells
Lenti-X HT Packaging System(8 ページ Figure 1)
が生じる可能性は極めて低くなっています。さらに安全性向上の
ために Gag-Pol 活性は分断した遺伝子から付与され、ウイルス複
製機能の標的細胞への移行が完全に妨げられています。したがっ
て、組換え型ウイルスを感染させた標的細胞は新しいウイルスを産
生するための複製機構を持つことはありません。
最高の力価と神経細胞への形質導入
これらのウイルス構成要素を 293T 細胞内で一過性に高レベル発
現させることにより、形質導入後 48 ∼ 72 時間で VSV-G エンベロー
プをもつシュードタイプのレンチウイルスを高力価で得ることができ
ます。上清は十分に高い力価を示し、標的細胞の感染のために濃
縮する必要がなくそのまま使用可能です。10μl のウイルス上清を
用いるだけで培養プレート中の HeLa 細胞のほとんどに形質導入
が可能です(Figure 2;下図)。本システムで産生したレンチウイ
ルスも特有の広い親和性を持っており、神経系由来の細胞への形
質導入が十分に可能です(Figure 3;次ページ)。
A
B
Clontech’s Lenti-X HT
75
Competitor’s packaging system
75
Untransduced
50
Transduced
Counts
● 既存のレンチウイルスシステムより 25 ∼ 50 倍高いウイルス力価を実現
● 48 時間以内に VSV-G エンベロープをもつウイルスを産生
● ウイルスゲノムを分割導入することで、複製能を欠く安全なレン
チウイルスを産生
● 培養上清 10μl で、標的細胞全体に感染可能
HIV-1 由来の組換え型レンチウイルスは、初代培養細胞、非分
裂 細胞、神経 細胞などを含むほとんどの哺乳類動物細胞に遺
伝子導入を実現する強力な多用途ベクターです。Clontech 社の
Lenti-X HT Packaging System を用いてレンチウイルス産生を行
うと画期的な高力価が得られ、Lenti-X システムのウイルスベクター
との組み合わせでは、市販のあらゆるレンチウイルスシステムの中
で最高の力価を実現し、濃縮なしで上清 1ml 当たり最大 5 × 10 8
感染単位(IFU)を達成します。
PPGK
MCS
Lentiphos HT
transfection
(8 ∼ 9 ページ)
Counts
Lenti-XTM HT Packaging System
Ψ
25
0
100
104
FL1-H
50
Untransduced
Transduced
25
0
100
104
FL1-H
Lenti-X HT Packaging System で調製した高感染能をもつ培養上清
(8 ページ Figure 2)
Lenti-X システムおよび他社レンチウイルスシステムを用いて、ZsGreen1
緑色蛍光タンパク質を発現する組換えレンチウイルスを作製しウイルス上
清の感染能を比較しました。
A :Lenti-Xシステムで産生したウイルス上清 10μl で HeLa 細胞に感染を行っ
た場合、ほとんどの細胞がウイルスに感染しました。
B : 他社システムで産生したウイルス上清 10μl では、ほとんど感染が見ら
れませんでした。
Clontechniques January 2008 1
A
B
どんな細胞へも高効率で遺伝子導入が可能なスタン
ダードレンチウイルス発現ベクター
Lenti-XTM Expression System
(13 ページ)
※本製品の購入には拡散防止措置に関する確認書が必要です。
Lenti-X レンチウイルスによる神経前駆細胞への形質導入
(9 ページ Figure 3)
ZsGreen1 を発現する組換えレンチウイルスを Lenti-X HT Packaging
System を用いて産生し、正常なヒトの神経前駆細胞への形質導入に使用
しました。位相差顕微鏡(A)および蛍光顕微鏡(B)下の 1 個の形質導
入細胞を示しています。
【ご注意】
研究開発等に係る遺伝子組換え生物等に関する文部科学省・環
境省令および各施設の遺伝子組換え実験に関する規則に従ってご
使用ください。
※ Lenti-X HT Packaging Mix のプラスミドはΨパッケージン
グシグナルを含まないため、ウイルス粒子に Packaging Mix
のプラスミド中の遺伝子が取り込まれることはありません。
本システムは VSV-G シュードタイプレンチウイルスの広い細胞宿主
域、高いウイルス力価、および導入遺伝子の優れた発現レベルを
実現する高度なレンチウイルス発現システムです。pLVX-Puro ベ
クターと Lenti-X HT Packaging System が含まれており、安全
で複製能のないレンチウイルスを極めて高い力価で産生できます。
Lenti-X シリーズの全てのレンチウイルス発現ベクターは、レンチウ
イルス特異的 LTR、パッケージング配列(Ψ)、cDNA を挿入する
マルチクローニングサイト(MCS)、ピューロマイシン耐性遺伝子
に加え、全般的なベクター機能を改善する WPRE 及び cPPT エ
レメントで構成されているため、ベクターの宿主ゲノムへの組み込
みが改善され、より効率的な形質導入を実現します。
Tet-On® Advanced、Tet-Off® Advanced システムの
レンチウイルス版が登場!
Lenti-X TM Tet-On ® Advanced and Tet-Off ® Advanced
Inducible Expression Systems
(10 ∼ 12 ページ)
最適化された形質転換用試薬(LentiphosTM HT)に
より傑出した形質転換効率と細胞生存率を実現!
Lipid-based
transfection
Lentiphos HT
Transfection Reagent for High-Titer Lentivirus (15 ページ)
Lentiphos HT は至適化されたリン酸カルシウムベースの形質転
換試薬で、簡単な操作で 10 cm 培養プレート内の最大 99%の
293T 細胞に形質転換が可能です。この極めて高いトランスフェク
ション効率と低毒性により、293T 細胞はあたかもウイルスを産生
する工場の様に働きます。
本文では、Lentiphos HT の高効率と優れた生存率を実証する
ため、Lentiphos HT および他社の脂質ベースのシステムを用い
て、293T 細 胞 に Lenti-X HT Packaging Mix と ZsGreen1 発
現レンチウイルスベクターを同時に形質転換した例を掲載してい
ます。Lentiphos HT による形質転換では、99%を超える細胞が
ZsGreen1 陽性細胞に転換され、極めて高いレンチウイルス力価
(> 5 × 10 8 IFU/ml)が得られました。また、脂質ベースの方法
よりも形質転換後の細胞の高い生存率が示されました。実際、当
初のトランスフェクション効率は両法共に高いものでしたが、脂質
ベースの場合、毒性が顕著であり、生存細胞数が低下して最終的
にはウイルス力価が低くなりました。Lentiphos HT で形質転換し
た 293T 細胞は高い生存率を維持し、実質的に培養中の全ての
細胞からウイルスを継続的に産生しています( Figure 1;下図)。
A
B
C
D
Lentiphos HT は 293T 細胞の生存率を維持し、より高力価のレンチ
※本製品の購入には拡散防止措置に関する確認書が必要です。
広い宿主域をもつレンチウイルスによる遺伝子発現調節システムです。
本システムのレンチウイルスベクターは、テトラサイクリン遺伝子誘導発
現系を広範囲の分裂細胞および非分裂細胞で利用できるように考案さ
れました。今まで形質導入やレトロウイルス感染などの標準的な導入技
術が利用できなかった神経細胞や幹細胞などにおいても、容易に遺伝
子誘導発現系を確立することが可能になります。
本システムは、2 種類のレンチウイルスベクターから構成されてい
ます。1つは Tet-On Advanced(rtTA-Advanced)または TetOff Advanced(tTA-Advanced)転写活性化因子を安定発現す
る調節ベクター、もう1つは目的遺伝子の発現を制御する応答発
現ベクター(pLentiX-Tight-Puro)です。さらに、ルシフェラー
ゼを発現する応答発現コントロールベクター、Lentiphos HT 及び
Lenti-X HT Packaging Mix も含まれています。
目的遺伝子のモニタリングに最適な蛍光タンパク質
搭載レンチウイルス発現ベクター
Fluorescent Lentiviral Expression Vectors
(14 ページ)
※本製品の購入には拡散防止措置に関する確認書が必要です。
Lenti-X Living Colors Vector は、遺伝子導入が困難な細胞内で蛍
光タグを付けた目的タンパク質を効果的に発現するために必要な特
性を全て備えています。目的遺伝子の N- または C- 末端に Clontech
社 の 単 量 体 蛍 光 タン パ ク 質(DsRed-Monomer; 赤 色、 ま た は
AcGFP1;緑色)を融合させて発現します。両蛍光タンパク質は他の
タンパク質との融合タンパク質として発現する際に高い性能を発揮でき
るように特別に改変されています。Lenti-X Living Colors Vector は
フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡などの複数の色を使用するアプ
リケーションに適しており、パッケージング細胞への形質転換および標
的細胞の感染のマーカーとしてもご使用になれます。形質転換が困難
な分裂細胞や非分裂細胞、ならびに培養細胞株や初代培養細胞への
目的遺伝子の効率的導入に必要な性能を十分に備えています。
ウイルス産生に貢献(15 ページ Figure 1)
2 Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
Clontechniques January 2008
A
B
可能です。Clontech 社ではレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウ
イルスの各種システムを取り揃えています。各システムの特徴と研究目
的から、実験に最適なシステムを選択してご利用ください(Table Ⅰ)。
Table I: Features of Clontech’s Viral Gene Delivery Systems
Lenti-X
Retro-X
Adeno-X
Cell Lines (Dividing)
+
+
+
Primary Cultures (Dividing)
+
+
Primary Cultures (Nondividing)
+
Target Cells
ヒト神経前駆細胞への DsRed-Monomer-Nuc および AcGFP1-Actin 発現
Neurons
+
レンチウイルスの同時、等量(MOI)感染例(14 ページ Figure 1)
Stem Cells
+
+
神経球をラミニン上で分化させ、DsRed-Monomer および AcGFP 1を融
Transgene Expression
合発現するウイルスを感染させました。アクチンと AcGFP1 の融合タンパ
Stable
+
+
ク質は細胞骨格をはっきりと可視化させています。また DsRed-Monomer
Transient
の核への局在が、それぞれの細胞の位置を明確に示しています。
【ご注意】
※製品の購入には拡散防止措置に関する確認書が必要です。
Lenti-X シリーズのレンチウイルスベクターは、プロウイルスにお
いて LTR のプロモーター活性を持つため、これらのベクターを用
いた遺伝子組換え実験は、遺伝子組換え生物等の使用等の規制
による生物多様性の確保に関する法律第 13 条に基づき、文部科
学大臣による拡散防止措置の確認が必要です。詳細は、平成 17
年 10 月 14 日 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会遺
伝子組換え技術等専門委員会によるポジションペーパー「Human
immunodeficiency virus 1 型(HIV-I)の増殖力等欠損株等の
解釈について」をご参照ください。
また、遺伝子組換え実験に関しましては下記のサイトをご覧ください。
「文部科学省 ライフサイエンスの広場>安全に関する取組>遺伝子組換え実験」
http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html#kumikae
+
+
+
+
1
+
Constitutive
+
+
+
Inducible
+
+
+
Bicistronic/Dual Expression
2
+
Expression Levels
++
++
Fluorescent Fusion Proteins
+
+
+++
Fluorescent Marker Virus
+
+
+
shRNA/RNAi
2
+
+
System Features
High Titers
++
++
+++
Safe, Replication-Incompetent
+
+
+
Broadly Tropic
+
+
+
Titration Kits
+
+
+
Purification Kits
+
Custom Services
+
Long-Term Stability/Storage
+
1:Stable in nondividing cells 2:To be released in 2008
ウイルス遺伝子発現システムの特徴 (16 ページ Table I)
Viral Expression Systems
ウイルスを用いた安全で高効率な遺伝子導入
リポソーム法など化学的な遺伝子導入法は、しばしば細胞への毒
性や導入遺伝子の不安定発現が問題となります。一方、組換えウ
イルスを用いた遺伝子導入法は細胞への侵入機構がよく理解され
た生物学的にも効率の高いプロセスで、より優れた遺伝子導入方
法といえます。単一のウイルスストックを繰り返し感染に用いるこ
とができ、より再現性の高い結果をもたらします。一般的にウイル
スシステムは、目的遺伝子を挿入した組換えウイルスベクターをパッ
ケージング細胞株へ導入することで、感染能を持つウイルス粒子
を産生します。採取したウイルスは必要に応じて精製し、力価を
求めた後に標的細胞への感染に用います。これらのウイルスベク
ターからは病原性や複製能に関わる遺伝子が除去してあり、感染
能を持つウイルス粒子の産生は、感染活性をトランスに供与する
特定のパッケージング細胞株でのみ行われます。したがってウイル
ス粒子中のウイルスゲノムは、目的遺伝子の感染能は保持します
が、標的細胞中での自己複製能を欠損しています。
Clontech offers a full spectrum of viral systems for
expressing your gene in any cell type (16 ∼ 18 ページ)
● レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスシステムから選択可能
● ハイレベルの構成発現および誘導発現が可能
● 蛍光タンパク質やセレクションマーカーを用いて、ウイルス産生
や導入遺伝子発現を追跡可能
● 迅速な力価測定キットやアデノウイルス精製キットなどの充実し
た関連製品が利用可能
Clontech 社の組換え型ウイルスによる遺伝子発現システムを用いれ
ば、実質的にほぼ全ての哺乳類細胞への目的遺伝子の導入と発現が
ウイルスシステムの利点: コピー数のコントロール
化学的な遺伝子導入法では標的細胞が凝集したプラスミド DNA
を取り込む場合が多く、導入されるプラスミドのコピー数の予測や
コントロールは不可能です。一方、ウイルスシステムを用いた場合、
標的細胞に導入する遺伝子コピー数は、感染に用いるウイルス粒
子の数を調節することで容易にコントロール可能です。ウイルスス
トックの力価を求めることでウイルス粒子含有量を正確に測定する
ことができ、ウイルス上清を希釈できるほど力価が十分に高けれ
ば、感染多重度(MOI: multiplicity of infection)を調節して特
定のコピー数のウイルスを標的細胞に導入できます。Clontech 社
なおご購入の際には、これらのベクターを使用するにあたり文部
科学大臣による拡散防止措置の確認を受けていることをご提示い
ただく確認書(Lenti-X シリーズ レンチウイルスベクター 拡散措
置に関する確認書)の添付が必要です。詳細は弊社ウェブサイト
をご参照ください。
Clontech 社 Lenti-X シリーズ レンチウイルスベクターに関するご案内
http://clontech.takara-bio.co.jp/whatsnew/info/info_LentiVector.shtml
Lenti-X シリーズレンチウイルスベクター 拡散防止措置に関する確認書
http://clontech.takara-bio.co.jp/info/comf/index.shtml
特集 2.Clontech ウイルス発現システムの紹介
Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
Clontechniques January 2008 3
のウイルスシステムはすべて高い力価が期待できるため、MOI の
調節が可能です。また、試薬によるプラスミド導入法では、しば
しば一つの位置に複数のコピーがタンデムに組み込まれ、導入遺
伝子の発現が阻害される可能性がありますが、レトロウイルスベク
ターは細胞ゲノムにランダムかつ独立して組み込まれるため、その
ような心配がありません。
非常に高いタイターを誇る Lenti-X System
レンチウイルスシステムは、非分裂細胞や幹細胞を含めたほぼ全て
の哺乳類細胞や、脳や肝臓、筋肉などの組織に対して、感染、形
質導入、持続した発現が可能なため、最も多用途に用いることが
できます。Clontech 社が提供する Lenti-X Expression Systems
や Lenti-X HT Packaging Systems では、非常に高力価で安全
な VSV-G シュードタイプレンチウイルスの産生が可能です。
優れた Lenti-X ベクター
Lenti-X ベクターは LTR とレンチウイルスの産生と複製に必要な
パッケージング配列だけでなく、導入遺伝子の発現増強や力価の
向上などベクター機能を全体的に向上させるエレメントを完備して
います。WPRE 配列は 293T 細胞でのパッケージングを促進して
高力価に寄与し、標的細胞中の mature mRNA の産生を促して
導入遺伝子の発現を強化します。cPPT エレメントは感染の際に
ウイルスゲノムの核への移行を促し、遺伝子導入効率を高めます。
Lenti-X System には CMV プロモーターによる構成的な発現ベ
クター、Tet-On/Off Advanced システムを用いた誘導性発現ベ
クター、目的組換えタンパク質を Living Colors 蛍光タンパク質と
融合させて発現するベクターが揃っています。力価測定には、新
発売の Lenti-X Titration Kit(19 ページ)が便利です。
組換えレトロウイルスを用いた遺伝子発現
MMLV ベースのレトロウイルスシステムは、目的遺伝子を標的細
胞に安定導入する効果的な方法の一つです。組換えレトロウイル
スは簡便に短期間で作製することができ、多くの培養細胞やいく
つかの分化した初代培養細胞でも、短時間で確実な安定発現細
胞の作製が可能です。Clontech 社の Retro-X Q System は、病
原性と複製能を欠いたレトロウイルスベースの遺伝子導入・発現シ
ステムであり、広範囲の分裂性哺乳類細胞での cDNA や shRNA
の発現を可能にします。
Retro-X Universal Packaging System は、すべての MMLV ベー
スのレトロウイルスベクターに使用でき、最大 3 × 10 7 IFU/ml の高
ウイルス力価を実現します。本システムに含まれる 4 つの env 遺伝
子ベクターから一つを選択し、レトロウイルスベクターとともにをコト
ランスフェクションするだけで、アンホトロピック、エコトロピック、デュ
アルトロピック、またはパントロピック(VSV-G)なレトロウイルスを
作製できます。また、異なる宿主指向性のウイルスを安定産生する
ことができる Retroviral Packaging Cell Line もご用意しています。
レトロウイルスの力価測定
MOI を明確にして標的細胞への感染を行い最も望ましい結果を得
るために、Retro-X qRT-PCR Titration Kit を用いて MMLVベー
スレトロウイルスストックのタイター測定を行ってください。本キッ
トは SYBR Green を用いた qRT-PCR により非常に短時間(約 4
時間)でウイルスゲノム力価を求めることができます。本キットを
用いれば、従来法では数日必要であった力価測定までの時間を劇
的に短縮することができ、ウイルスの回収から標的細胞への感染
までを同日中に実施できます。
4 Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
Retro-X Q System
目的遺伝子とセレクションマーカーを IRES(internal ribosome
entry site)配列を介して独立して共発現させるベクター、目的タ
ンパク質と蛍光タンパク質を融合発現させるベクターのほか、誘
導 性 発 現 の ため の Retro-X Tet-On/Off Advanced Inducible
Expression Systems、RNAi を介した構 成 的または 誘 導 性 遺
伝 子ノックダ ウンの た め の Knockout RNAi Ready pSIRENRetroQ Vectors やKnockout Tet RNAi Systems H and P など、
各種製品が揃っています。
組換えアデノウイルスを用いた発現
Clontech 社のアデノウイルスシステムには、標的細胞への遺伝子
導入と発現において多くの利点があります。ハイレベルな一過性
遺伝子発現とタンパク質産生が可能であり、高い安定性のアデノ
ウイルスを大量に作製できる上、広い範囲の細胞種への感染が
可能です。レトロウイルスと異なり物理的にも安定なアデノウイル
スは、長期間の凍結保存も可能です。古典的なバクテリアや 293
細 胞をベースとした 組 換え法に 比べ、Clontech 社の Adeno-X
System はより効率的な組換えアデノウイルス作製が 可能です。
Clontech 社独自の非常に効率の良い Creator クローニングを用
いる Adeno-X Expression Systems 2 では、組換えクローンの
スクリーニングから導入可能なアデノウイルス DNA の準備までを
3 日以内に行うことができ、小規模であればさらに 1 週間程度で
感染可能な組換えアデノウイルスを得ることができます。Adeno-X
ViraTrak Fluorescent Expression Systems 2 では、共発現す
る蛍光タンパク質をモニターし、パッケージング細胞への遺伝子
導入、標的細胞への感染など各ステップを簡便に至適化できま
す。遺伝子誘導発現システムの構築には、Adeno-X Tet-Off/On
Expression System をご使用ください。
ス ケ ー ル に あ わ せ た 精 製 キ ッ ト(Adeno-X Virus Maxi
Purification Kit ほか)を用いることで、高力価アデノウイルスの
作製が可能です。
抗体ベースアッセイを利用した Adeno-X Rapid Titer Kit を用い
れば、E1 欠損、または野生型アデノウイルスの力価を簡便かつ短
時間に求めることができます。力価測定はわずか 3、4 日で完了し、
従来のプラークアッセイと比較してはるかに迅速かつ簡便です。
注目の新製品
レンチウイルス・レトロウイルスを用いる遺伝子導入
実験を、迅速タイター測定キットが強力に加速!
New
Lenti-XTM qRT-PCR Titration Kit
(19 ∼ 21 ページ)
Retro-XTM qRT-PCR Titration Kit
● わずか 4 時間でレンチウイルス、レトロウイルスのタイターを測定
● すべての HIV-1 ベースのレンチウイルスと、MMLV ベースのレ
トロウイルスに使用可能
● 正確なタイターを得ることができるので安定した感染実験が可能
Lenti-X qRT-PCR Titration Kit、Retro-X qRT-PCR Titration
Kit は、SYBR Green I を用いた 1 ステップリアルタイム RT-PCR
法によりウイルス RNA ゲノムのコピー数(RNA タイター)を測定
するキットです。従来のタイター測定方法では 10 日間を要するとこ
ろを、わずか 4 時間でタイター測定が行えます。本キットを用いる
Clontechniques January 2008
安定した遺伝子導入を実現
ウイルスを用いた遺伝 子導入方法の優 位点として、MOI を調節
して感染を行うことで宿主 細胞に導入されるウイルスゲノム数を
調整し、遺伝子の発現レベルをコントロールできることがありま
す。MOI を調節するためにはウイルス溶液中の感 染 性ユニット
(Infectious Units: IFU)を知ることが非常に重要です。本キット
を用いて測定したウイルス溶液の RNA タイターと他の方法で測定
した IFU 値とは相関するので、copies / IFU 比を算出することが
でき、同じ方法で作製したウイルスであれば RNA タイターの値か
ら IFU を推定することができます。Table I(21 ページ)に RNA
タイターと他の方法で測定したタイターの相関を示しています。
ウイルス回収∼タイター測定∼感染を 1 日で実施
従来のタイター測定方法では、蛍光マーカーを用いたフローサイト
メトリーによる方法ですら 48 時間以内に正確なタイターを算出す
ることは困難です。また、タイター測定の間凍結保管していたウイ
ルス溶液を再融解することにより感染力の劣化が生じ、使用時に
は異なる MOI で感染させていた、という結果を招くことがありま
す。本キットを用いると、ウイルスを回収したその日のうちにタイター
を知り、意図した MOI で細胞への感染を行うことが可能です。
あらゆる方法で作製したウイルスに対応
RNA タイターの測定は、ウイルス作製方法の至適化や種々のウイ
ルスベクターの比較にも非常に有用です。ウイルスの作製にはウイ
ルス産生細胞から作製する方法と一過性に作製する方法があり、
さらに、数多くのウイルスベクターとパッケージング細胞があり、
それぞれに応じたタイター測定用細胞と感染方法が存在します。
本キットはあらゆる方法で作製したウイルスの RNA タイターを迅
速に比較することができ、安定した感染実験を可能にします。また、
ウイルスの精製や濃縮のモニタリングにも使用でき、ウイルス調製
方法や遺伝子発現の方針を決める際にも有用です。
RNA タイター測定方法の特徴
測定方法は非常に簡便で、少量のウイルス溶液からウイルス RNA を
精製し、DNase I で処理した後、希釈して 1 ステップリアルタイム
RT-PCR に供するだけです。
キットには 100 反応のリアルタイム RT-PCR を行うための試薬が含
まれ、Retro-X キットは MMLV ベースのレトロウイルスベクターに、
Lenti-X キットはすべての HIV-1 ベースのレンチウイルスベクターに使
用できます。搭載遺伝子やベクター構造に左右されることなく信頼性
の高いタイターを得ることができ、複数のウイルスタイターを同時に測
定することも可能です。なお、一過性に作製したウイルス溶液中に存
在するプラスミド DNA は、DNase I 処理工程で分解・除去されるため、
測定に影響を与えることはありません。
さらに本キットは再現性と信頼性に非常に優れ、キットに含まれる
RNA スタンダードを用いて測定することで測定内(intraassay)およ
び測定間(interassay)におけるばらつきが非常に小さくなり、異な
るタイター測定の間の一貫性が得られます。ウイルス溶液からの RNA
Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
抽出工程は再現性が高く、また SYBR Green I を用いた検出方法を
採用しているのでほとんどのリアルタイム PCR 装置で使用できます。
A
B
104
Fluorescence (dR)
104
Fluorescence (dR)
と、ウイルスの回収・タイター測定・感染の全工程を 1 日で行うこ
とが可能になります。また、すべての HIV-1 ベースのレンチウイル
スベクターと MMLV ベースのレトロウイルスベクター(MSCV は除
く)に使用可能です。ウイルス回収後、遺伝子導入までの時間が
劇的に短くなるため、感染性を劣化させることなく、測定した通り
のタイターで MOI(重複感染度:Multiplicity of infection)を調
節してその日のうちに細胞に感染させることができます。
10³
10³
10²
10²
0
5
10
15
20
25
Cycle No.
30
35
40
0
5
10
15
20
25
Cycle No.
30
35
40
qRT-PCR Titration Kit(A:Retro-X キット、B:Lenti-X キット)を用いて、
ウイルス上清のタイターをリアルタイム RT-PCR 法で測定(21 ページ Figure 5)
製品紹介
●ウイルス発現システム
メガスケール(∼ 1013 粒子)のアデノウイルス精製が
簡便になりました! シリンジポンプを用いて再現性
よく、高力価、高純度精製が可能です。
New
Mega-Scale Adnovirus Purification System
(22 ∼ 23 ページ)
アデノウイルス精製キット(Mega サイズ)を完全リニューアルしま
した。新キットでは、自動的にクロマトグラフィーを行なうための
シリンジポンプ装置の使用が必須です。ポンプを使用することで
従来よりも更に操作が簡便になり、再現性よくアデノウイルスを精
製できるようになりました。15 cm ディッシュ 25 枚スケールで培
養したアデノウイルス感染細胞の CPE(細胞変性効果)完了を確
認後、細胞ペレットからライセートを調製し、ろ過液をシリンジポ
ンプ装置にセットします。一方向弁システムのため、吸着、洗浄の
際にシリンジをはずす必要がありません。ポンプ使用により一定
の流速と圧力で 1 時間半以内に 1013 粒子のウイルスを精製可能で
す。本キットはウイルス回収率に優れ(23 ページ Figure 3)、塩
化セシウム(CsCl)勾配遠心法で精製したウイルスと同レベルの
力価と純度を示します。製品は、精製キットにポンプ装置付のタ
イプ(製品コード 631033)とポンプ装置なしのタイプ(製品コード
631032)の 2 種類をご用意しています。
※従来の Adeno-X Virus Mega Purification Kit(製品コード 631534)
は終売になりました。後継品として、上記新製品(製品コード 631032
または 631033)をご使用ください。
ポンプ装置付 Adeno-X Mega Purification Kit
(製品コード 631033)
(22 ページ Figure 1)
Clontechniques January 2008 5
●細胞生物学
幹細胞研究分野でのクロンテック製品の応用例
Clontech Products in Stem Cell Research
(24 ∼ 26 ページ)
今話題の幹細胞研究にも Clontech 社の製品が広く活用されてい
ます。ここでは近年発表された論文の中から、Clontech の主要な
製品を用いた 4 報をご紹介します。
現は血塊形成の抑制や血管の安定な維持に働くと考えられていま
す。間葉系幹細胞へアデノウイルスを用いて活性のある eNOS を
導入、過剰発現させ、さらに人工血管内に播種しました。eNOS
遺伝子の発現調節が可能な Tet システムをアデノウイルスへ併用す
ることで、eNOS の発現の有無が確かめられ、その有効性が裏
付けられました。
●タンパク質相互作用、発現&精製
▲
アポトーシスによる間葉系幹細胞内での細胞構造変化を蛍光
タンパク質 DsRed により可視化
Cha nges i n la m i na st r uct u re a re fol lowed by spat ia l
reorganization of heterochromatic regions in caspase- 8 activated human mesenchymal stem cells
Raz, V. et al.,(2006) J. Cell Sci., 119: 4247- 4256.
アポトーシスは生体内で細胞間の均衡維持にも重要な働きをして
います。間葉系幹細胞に Caspase-8 を発現させてアポトーシスを
引き起こし、細胞内構造の変化を蛍光タンパク質でモニターしま
した。ラミンやテロメア結合タンパク質と DsRed を融合し発現さ
せることで、Caspase-8 によるアポトーシスに伴う特有の核膜やテ
ロメアのダイナミックな構造変化を捉えることができました。
▲
ポリコームタンパク質 BMI1 と相互作用するターゲットを酵母
ツーハイブリッド法により同定
E4F1: a novel candidate factor for mediating BMI1 function
in primitive hematopoietic cells
Chagraoui,J. et al.,(2006)Genes Dev. 20: 2110 - 2120.
ポリコームタンパク質グループ(PcG)は、転写因子へ干渉するこ
とによりクロマチンの構造変化を引き起こします。PcG 遺伝子群
の一つ BMI1 遺伝子は、始原造血細胞では増殖や血球細胞への
分化に必須と考えられています。この BMI1 をベイトとして、胎児
肝臓由来 cDNA ライブラリーから酵母ツーハイブリッドスクリーニ
ングを行ない転写因子 E4F1 が得られました。さらなる解析から
E4F1 は BMI1 の機能調節を果たしていることが示唆されました。
▲
白血病の原因細胞に特異的に発現する細胞表面タンパク質の単離
CD96 is a leukemic stem cell-specific marker in human acute
myeloid leukemia
Hosen, N. et al.,(2007)PNAS, 104: 11008 - 11013.
急性骨髄性白血病の元になり分裂を続ける白血病幹細胞と他の
造血性幹細胞を区別できれば、有効な治療方法へとつながりま
す。本 報では、シグナル配 列を選択 的に同定する手法(signal
sequence trap PCR)に、SMART PCR 増幅を組み合わせ、急
性白血病細胞の膜表面タンパク質を網羅的に単離してその解析を
行いました。その中で、CD96 抗原遺伝子は急性白血病幹細胞
表面に特異的に発現していました。CD96 発現の有無で白血病幹
細胞と他の造血性幹細胞を区別することで、新たな治療方法への
手がかりになる可能性が示唆されました。
酵母 Two-hybrid 用ノーマライズドライブラリーに新
ラインナップ登場!広範囲の遺伝子をカバーしたユニ
バーサルライブラリーで効果的スクリーニングを! New
Pretransformed Normalized MatchmakerTM Libraries
(30 ∼ 32 ページ)
タンパク質相互作用研究の重要なツールである Matchmaker シ
ステムの形質 転 換済みノーマライズドライブラリーに、新たに
Human Universal cDNA Library と Mouse Universal cDNA
Library が加わりました。標準的な cDNA ライブラリーは各遺伝
子転写物の量比がそのまま反映されるため、遺伝子をスクリーニ
ングする際に高発現の遺伝子は多く得られ、低発現の遺伝子は
得られ難い傾向があります。本製品では cDNA ライブラリーのノー
マライゼーション法により、このような遺伝子の発現差を抑え、擬
陽性を減らし効率のよいスクリーニングを実現しました。実際に、
DNA マイクロアレイを用いた比較実験により、ノーマライゼーショ
ンの効果を確認しました(31 ページ Table Ⅱ)。
HTP に最適なタンパク質アレイ解析の決定版!
わずか 1 日で解析結果が得られます。
High-Throughput Protein Expression Analysis (33 ∼ 35 ページ)
抗体アレイ 500 は、ウェスタンブロッティングやその他のタンパク質
分析と比べて、簡便・迅速・高感度に幅広いタンパク質を分析可能
です。本アレイは、厳選された 512 種類のモノクローナル抗体から
構成され、シグナル伝達や細胞周期調節、遺伝子転写、アポトー
シス、腫瘍形成など広範な機能を示す多種多様な細胞質性、膜結
合性の細胞内タンパク質を検出します。標準的な解析では、2 種類
のサンプル(A、B)の一部を Cy3 および Cy5 で標識して混合(A/
Cy3+B/Cy5、A/Cy5+B/Cy3)し、2 枚の同一マイクロアレイを用
いて比較します(Figure 4;下図)。実験には特別な訓練や技術を
必要とせず、タンパク質抽出からマイクロアレイスキャンまでがわず
か 1 日で完了します。ウェスタンブロッティングの場合はサンプルの
変性が必要ですが、本製品では未変性タンパク質もサンプルとして
使用可能です。本文中では、実験例を交えて詳しく説明しています。
A
B
▲
アデノウイルスによる eNOS 遺伝子導入幹細胞の人工血管へ
の応用が、血管閉塞を防ぎ、心臓冠動脈疾患治療法に新たな可
能性をひらく
Synthetic vascular prosthesis impregnated with mesenchymal
stem cells overexpressing endothelial nitric oxide synthase
Kanki-Horimoto,S., et al.,(2006)Circulation, 114: I-327 - I-330.
eNOS 遺伝子は内皮型 NO(一酸化窒素)合成酵素で、その発
6 Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
Clontechniques January 2008
Seamless Protein Expression and Purification-An Integrated
Approach
(38 ∼ 41 ページ)
2
3
4
5
Ni²+-NTA
6
7
8
30 –
B
0.3
0.05
0
10
20
Time (min)
0.03
0.04
0.2
0.02
0.1
0.01
0
10
Contaminant peak coelutes
Elute
0.1
0.04
Wash
0.2
0.05
Load
0.3
A280
A475
Ni²+-NTA
TALON
20
Time (min)
30
0.03
A475 (AU)
Clontech 製品を組み合わせて、効率的なタンパク質
発現と精製プロトコールを開発
TALON
1
kDa
A475 (AU)
RNAi 技術はある特定の遺伝子の発現を抑える技術として脚光を
浴びており、ウイルス感染などの治療においても有望な方法と考
えられています。しかし、バイオインフォマティックスを駆使して
設計した RNAi 配列でも、実際の実験においては目的以外の遺
伝子に対して予期しない抑制効果を示すことが明らかとなってきま
した(RNAi の Off-Target 効果)。RNAi 治療法の開発のために
全ての RNAi 候補について Off-Target 効果の有無を確認するに
は、膨大な時間と経費がかかります。本稿では、HCV 治療に対
する RNAi 候補の Off-Target 効果を、Clontech 社の Premixed
WST-1 Cell Proliferation Reagent を使用して簡便かつ迅速にス
クリーニングする方法を紹介しています。本試薬は、生存能力の
ある細胞では膜透過性の WST-1 がミトコンドリアで Formazan
へ変換されることを利用し、その発色量を 96 well plate でモニ
ターすることにより生細胞を測定するものです。Off-Target 効果
により細胞増殖の停止や細胞死という現象がしばしば見られるた
め、本試薬は Off-Target 効果のスクリーニングに有効です。今回
のモデル系において、HCV に対する複数の RNAi 候補の中から
Off-Target 効果を示すものを除くことができました。
A
A280 (AU)
Utilizing the Premixed WST-1 Cell Proliferation Reagent to
Avoid Off-Target Effects of RNAi
(27 ∼ 29 ページ)
5 ml/min
RNAi の Off-Target 効果を Premixed WST-1 Cell
Proliferation Reagentを用いて簡単スクリーニング!
Load
テクニカルノート
まず、Advantge HD DNA Polymerase Mix により目的遺伝子
(AcGFP1)を PCR 増幅し、In-Fusion 2.0 CF Dry-Down PCR
Cloning Kit を用いて In-Fusion Ready BacPAK Vector に PCR
断片を挿入後、Fusion-Blue Competent Cells をトランスフォーム
しました。得られたコロニーをコロニー PCR でスクリーニングした
ところ、80%が陽性コロニーでした。次に NucleoBond Plasmid
Midi Kit に よりトラン スフェク ショング レ ード の pBacPAK
transfer vector DNA を調製した後、BacPAK6 DNA(Bsu 36 I
digest)とともに Sf21 昆虫細胞にトランスフェクションし、組換え
バキュロウイルスを産生しました。BaculoELISA Titer Kit により
ウイルス力価を測定し、最適化した感染条件で AcGFP1 の大量
発現を行いました(39 ページ Figure 2)。
バキュロウイルス発現システムで発現させた AcGFP1 の精製には
TALON Superflow を用いました。ポリヒスチジンタグに極めて
高い親和性を有する TALON 樹脂は非特異的な吸 着が少なく、
ヒスチジンタグ融合タンパク質を高純度に精製することが可能で
す。TALON Superflow は高流速かつマイルドな条件で溶出可能
なことから、比活性の高い目的タンパク質を迅速に精製できます。
Ni をリガンドとする市販のカラムと比較して、迅速、かつ高純度
で生物活性も高い精製が可能でした(Figure 3: 下図)。バキュロ
ウイルス発現系などポリヒスチジン配列を有する内在性タンパク質
が存在する発現系で発現させたヒスチジンタグ融合タンパク質の
精製に TALON レジンは特に有用です。
Contaminant peak is separated
Wash
1 ml/min
Elute
The BacPAKTM System-Simplicity Meets Great Results
(36 ∼ 37 ページ)
バキュロウイルスを用いた昆虫細胞でのタンパク質発現系は、生
物活性や免疫原性を有するタンパク質の取得に欠かせないツール
として広く利用されています。Clontech 社の BacPAK バキュロウ
イルス発現システムは、1 ∼ 500 mg/liter のタンパク質産生を誇
る系として頻繁に使用されています。その特長は、活性タンパク質
の高産生、高効率のウイルス作製、扱いやすい昆虫細胞の使用、
迅速な力価測定、6xHN タグ融合タンパク質の TALON 樹脂精
製、そして約 2 週間で目的の精製タンパク質を得られることです。
Clontech 社ではオールインワンのシステムから、In-Fusion テクノ
ロジーを用いたクローニングや TALON 樹脂による精製など豊富
なアクセサリーキットもご用意しています。
進化した BacPAK バキュロウイルス発現システムを是非お試しください。
稿では、バキュロウイルス発現システムを用いたタンパク質発現で
の実例をご紹介します。
A280 (AU)
BacPAK TM システムで簡便・迅速にタンパク質を大量
産生&精製!
0.02
0.01
40
TALON 樹脂と Ni 樹脂の比較 (40 ページ Figure 3)
6 × HN-AcGFP1 を発現した Sf21 細胞ペレット 100 mg の
抽出液から、TALON Superflow カラムおよび Ni 2+-NTA
Superflow カラムを用いて AcGFP1 の精製を行いました。
(A) レーン 1 & 5: 抽出液
2 & 6: フロースルー画分
3 & 7: 洗浄画分
4 & 8: 溶出画分
(B)各カラムのクロマトグラム
青:A280 nm 各フラクションの総タンパク質量を示す
緑:A475 nm 各フラクションの AcGFP1 量を示す
従来、大量の精製タンパク質を得るには多くの時間と経験を必要
としてきました。しかし、各種製品をうまく組み合わせることで、
より早くより簡便に目的タンパク質を取得することも可能です。本
Clontech Laboratories, Inc. • www.clontech.com
Clontechniques January 2008 7