41018 日本建築学会大会学術講演梗概集 (東北) 2009年 8 月 既存の窓面を対象にした遮熱化技術とその性能に関する調査研究 その 3 遮熱化技術の 2007 年度調査 正 会 員 ○ 藤 本 哲 夫 * 1 正 会 員 武 田 仁 * 3 正 会 員 森 川 泰 成 * 5 窓用日射遮蔽フィルム 窓用コーティング材 窓用後付複層ガラス 分光特性 光学特性値 1 . はじめに 本報その 1 1) では既存の窓面を対象とした遮熱化技 術として市販されている建築窓ガラス用フィルムの光 学的性能を調査している。本報その 2 2 ) ではサンプルを 統計的に分類し、さらに市販されているガラスとの比 較を行っている。 2 0 0 7 年度、環境省は環境技術実証モデル事業ヒート アイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷 低減技術)の一環として、前年度に引き続き日射遮蔽 フィルムと新たに窓用コーティング材、後付複層ガラ スのサンプルを収集し、光学特性値等の実証試験を 行った。そこで本報その 3 では、その試験結果の一部 について報告する。 2 . 調査概要 光学特性値及び熱物性値の測定項目は紫外線透過 正 会 員 伊 藤 大 輔 * 2 正 会 員 近 藤 靖 史 * 4 正 会 員 足 永 靖 信 * 6 率、可視光透過率、日射透過率、可視光反射率、日射 反射率、修正放射率、遮へい係数、日射熱取得率、熱 貫流率である。窓用日射遮蔽フィルムと窓用コーティ ング材については JIS A5759 注 1)3) 、窓用後付複層ガラス については JIS R3106 4) に準拠し測定した。ただし熱貫 流率についてはいずれも JIS R3107 5) の方法を用いて算 出している。使用した測定器は本報その 1 と同様であ る 1 ) 。尚、窓用日射遮蔽フィルムと 窓 用 コーティング 材については促進耐候試験として、サンシャインウェ ザーメータによる 2 0 0 時間の暴露試験を行っている。 対象とした製品は、窓用日射遮蔽フィルム 2 3 製品、 窓用コーティング材 7 製品、窓用後付複層ガラス 2 製 品、計 3 2 製品である。図 1 に後付複層ガラスの構成を 示す。 試験体数は窓用日射遮蔽フィルムと窓用後付複層ガ 表 1 測定結果(促 進 耐 侯 試 験 前 ) 種類 フィルム コーティング 材 複層 ガラス サンプル 番号 f1 f2 f3 f4 f5 f6 f7 f8 f9 f10 f11 f12 f13 f14 f15 f16 f17 f18 f19 f20 f21 f22 f23 c1 c2 c3 c4 c5 c6 c7 s1 s2 色 クリアー(淡ブルー) クリアー(淡ブルー) グリーン ダークグリーン クリア グリーンメタリック クリア シルバー ブロンズシルバー ハーフミラー ブロンズ シルバー 半シルバー反射 シルバー反射 スモーク ブロンズ ブロンズ スカイブルー メタリック(ハーフミラー) 淡青色 淡スモーク シルバー グリーン クリアー 薄い黄緑色 クリア(薄い紫色) 透明 淡グリーン 薄ブルー 透明 - 透過率[%] 紫外線 可視光 6.5 69.4 7.3 78.3 0.7 69.6 0.3 54.8 0.9 84.8 0.0 20.9 0.1 86.5 0.2 16.9 0.1 16.9 0.1 17.9 0.2 18.6 0.4 15.3 0.0 55.8 0.3 21.0 0.1 15.1 0.1 18.3 0.7 18.6 6.7 82.8 0.0 18.5 1.2 68.8 0.1 55.2 0.5 21.5 0.5 56.1 2.1 72.4 3.0 77.6 5.5 86.9 0.2 77.1 2.5 59.9 50.9 82.4 2.8 84.7 63.2 82.1 日射 47.9 59.3 38.7 29.2 63.2 21.4 65.5 13.0 15.6 13.7 12.0 11.8 45.5 16.5 14.3 16.0 11.6 56.2 14.1 47.1 49.8 15.0 28.0 50.8 45.9 68.7 55.6 26.8 70.0 69.2 34.6 75.4 Investigation on performance of solar shading techniques for existing windows Part3. Investigation on solar shading techniques in 2007 反射率[%] 可視光 日射 7.3 6.2 7.9 6.7 8.4 26.7 7.7 22.9 9.1 7.7 30.5 32.6 9.4 7.8 59.1 55.2 15.2 20.4 58.4 58.4 36.4 44.8 59.4 53.2 18.5 18.4 52.6 49.2 14.7 22.2 18.1 23.5 34.7 43.2 7.4 6.0 56.8 56.5 21.2 36.1 11.4 10.1 40.6 45.9 6.7 5.3 7.2 6.0 7.1 5.5 8.5 7.1 7.7 6.3 6.1 5.1 7.6 6.8 7.9 6.8 14.3 30.4 14.7 13.3 修正放射率 遮へい係数 [-] [-] 0.870 0.73 0.870 0.81 0.545 0.56 0.579 0.50 0.769 0.83 0.734 0.43 0.769 0.85 0.707 0.26 0.743 0.42 0.734 0.27 0.614 0.29 0.605 0.26 0.743 0.65 0.656 0.31 0.734 0.40 0.743 0.41 0.639 0.29 0.887 0.79 0.672 0.28 0.716 0.60 0.870 0.72 0.309 0.28 0.803 0.57 0.862 0.75 0.862 0.71 0.853 0.88 0.853 0.78 0.853 0.57 0.862 0.89 0.862 0.88 0.46 0.91 日射熱 取得率[-] 0.64 0.71 0.49 0.44 0.73 0.38 0.75 0.23 0.37 0.24 0.26 0.23 0.57 0.27 0.35 0.36 0.26 0.70 0.25 0.53 0.63 0.25 0.50 0.66 0.62 0.77 0.69 0.50 0.78 0.78 0.40 0.80 熱貫流率 [W/(m2・K)] 6.0 6.0 5.2 5.3 5.8 5.9 5.8 5.6 5.7 5.9 5.4 5.3 5.7 5.5 5.7 5.7 5.4 6.1 5.9 5.9 6.0 4.4 5.9 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 6.0 3.8 3.4 FUJIMOTO Tetsuo, ITOH Daisuke, TAKEDA Hitoshi, KONDOH Yasushi, MORIKAWA Yasushige, ASHIE Yasunobu ―35― s1 Low-e 膜 ガラス (3mm) 既存の 窓ガラス 中空層 (6mm) s2 ガラス 既存の (3mm) 窓 ガ ラ ス ティング材、窓用後付複合ガラスのサンプルを収集 し、調査を行った。各サンプルの光学特性値等を示し た。 ガラス (3mm) 中空層 (2mm) 図 1 後付複層 ガラスの 構成 分光反射率、 分光反射率、 分光反射率、 分光反射率、 分光反射率、 分光透過率 [%] 分光透過率 [%] 分光透過率 [%] 分光透過率 [%] 分光透過率 [%] 分光反射率、 分光透過率 [%] ラスは 1 体とした。窓用コーティング材は、施工誤差 を考え促進耐侯試験前は 3 体、促進耐候試験後は 2 体 とし、解析にはその平均値を用いた。 3 . 測定結果 測定結果を表 1 、図 2 に示す。日射遮蔽フィルムの可 視光透過率は 15.1 ∼ 86.5%、日射透過率は 11.6 ∼ 65.5%、 6.7 ∼ 59.4%、日射反射率は 5.3 ∼ 58.4% であり、本報そ の 1 と概ね同様であった。コーティング材はそれぞれ 59.9 ∼ 86.9%、26.8 ∼ 70%、6.1 ∼ 8.5%、5.1 ∼ 7.1% であっ た。複合ガラスは、その構成によって光学特性値の特 徴が異なっている。その 1 と同様、耐候性試験前後の 相違はいずれも小さい。 4. まとめ 市販されている建築窓ガラス用フィルム、窓用コー 注 注 1)JIS A5759 3) は 2008 年 6 月に改正されている。日射透過率及 び日射反射率 を 計算 するための 重 価 係 数が 変更 されており 、本 報そ の 1 では 改正前、本報 その 3 では 改正後の 重 価 係 数を 用い ている。その 1 のサ ン プ ル に つ い て改正前後 の 重 価 係 数で 日射 透過率、日射反射率を 算 出し た結 果 、その 差は 最大 でそれぞれ 2 . 8 、1 . 2 % であった。また、促進耐侯試験に関しても改正され て い る が 、本報 で は 改正前 に 従 い 2 0 0 時間 と し て い る。 謝辞 本研究の実施にあたり、環境省環境技術実証モデル事業 ヒートアイランド対策技術ワーキンググループ(佐土原聡座 長)から 分光計測 データ を提 供 して 頂い た 。記し て感 謝の 意 を 表す。 参考文献 1 ) 藤本哲夫、伊藤大輔、武田仁、近藤靖史、森川泰成、足永靖 信:既存 の窓 面を 対 象とした 遮熱化技術 とその 性能 に 関す る調 査研究 その 1 日射遮蔽フィルム の性 能 調 査、日本建築学会学 術講演梗概集 D-2 、pp.261-262 、2008.9 2) 伊藤大輔、藤本哲 夫、武田仁、近藤靖史 、森川泰成 、足永靖信:既存 の窓 面を 対 象とした遮熱化技術とその性能に関する調査研究 日射遮蔽 フィルムの光学的性能の分析、日本建築学会学術講演梗概集 D-2、pp.263-264、2008.9 3)JIS A5759:2008 建築窓ガラス用フィ ルム、日本規格協会、2008 4)JIS R3106:1996 板ガラス類の透 過率・反射率・放射率・日射熱取得率 の 試験方法 、日本規格協 会、1998 5)JIS R3107:1998 板ガラス類の熱抵抗及び建築にお ける 熱貫流率 の 算定方法 、日本規格協会 、1 9 9 8 100 f1 f2 f3 f4 f5 f6 80 60 40 20 0 100 f7 f8 f9 f10 f11 f12 80 60 40 20 0 100 f13 f14 f15 f16 f17 f18 80 60 40 20 0 100 f19 f21 f22 f23 c1 f20 80 60 40 20 0 100 c2 c3 c4 c5 c6 c7 80 60 40 20 0 300 800 1300 1800 2300 300 800 1300 1800 2300 300 800 1300 1800 2300 300 800 1300 1800 2300 100 s1 s2 波長 [nm] 波長 [nm] 波長 [nm] 波長 [nm] 80 60 40 透過率(耐候性試験前) 透過率(耐候性試験後) 20 0 反射率(耐候性試験前) 反射率(耐候性試験後) 300 800 1300 1800 2300 300 800 1300 1800 2300 波長 [nm] 波長 [nm] 図 2 サンプルの分光反射率および分光透過率 *1 *2 *3 *4 *5 *6 財団法人建材試験センター中央試験所 独立行政法人建築研究所 専門研究員・博士( 工学) 東京理科大学 教授・工博 東京都市大学 教授・博士( 工学) 大成建設 技術センター 工博 独立行政法人建築研究所 上席研究員・工博 *1 Japan Testing Center for Construction Materials, Central Laboratory Research Specialist, Building Research Institute, Dr. Eng. Prof., Dept of Architecture, Tokyo University of Science, Dr. Eng. *4 Prof., Tokyo City University, Dr.Eng. *5 Taisei Corporation, Technology Center, Dr. Eng. *6 Chief Research Engineer, Building Research Institute, Dr. Eng. *2 *3 ―36―
© Copyright 2024 ExpyDoc