院内がん登録実務初級修了者研修 - 島根大学医学部

平成24年度病院医学教育研究助成成果報告書
報告年月日:平成25年4月2日
研究・研修課題名
院内がん登録初級修了者研修
研究・研修組織名(所属)
院内がん登録委員会
研究・研修責任者名(所属)
鈴宮淳司(腫瘍センター)
共同研究・研修者名(所属)
浅田祥子、今岡妙子(医療サービス課)
目的及び方法、成果の内容
①
目
的
院内がん登録の実施は、がん診療拠点病院の指定要件であり、がん登録実務担当者が国立がん
研究センターがん対策情報センターが開催主体とする院内がん登録初級者研修会を受講するこ
とが必須要件とされている。今回、院内がん登録初級者研修を修了済みの2名が、主要 5 部位の
がんについて、UICC の TNM 分類などの病期分類などをコーディングでき、院内がん登録の標
準登録様式などに関して十分な知識を有するレベルの研修会に参加することにより、継続して知
識向上を図り、院内がん登録のさらなる推進を目的とする。今回は、「情報の後利用」と「標準
登録様式」についての研修である。
また、本院は都道府県がん診療連携拠点病院に認定されているため、
「島根県がん登録研修会」
を開催し、県内病院のがん登録実務担当者を対象とした研修会を開催し、情報提供を行うことが
要件とされているため、そのための知識の習得を行う。
② 方
法
国立がん研究センターがん対策情報センター主催の、下記に示す院内がん登録実務初級修了者
研修を受講し知識向上を図る。
研修会名 :院内方がん登録実務初級修了者研修
開催主体 :国立がん研究センターがん対策情報センター
実施時期 :9月20日、11月8日(各1日間)
開催場所 :国立がん研究センター国際交流会館
対象
:がん登録実務担当初級研修終了者
詳細
:院内がん登録情報の使い方―院内がん登録情報をどう集計するか―
:院内がん登録標準登録様式―その定義と意味―
③ 成
果
Ⅰ.研修会での国立がん研究センターがん対策情報センターからの報告と説明
<情報の後利用について>
国立がん研究センターがん対策情報センター発刊の『がん診療連携拠点病院院内がん登録 全国集
計報告書』とは、全国のがん診療連携拠点病院において実施されている院内がん登録データを国立が
ん研究センターに提出したデータを集計したものであり、
① がん腫、進行度、その治療の分布を把握し、国や都道府県のがん対策に役立てる。
② 各施設が全国と比較した自施設のがん診療状況を把握し、がん診療の方向性等を検討する。
ための基礎資料を還元することを目的としている。
1)国立がん研究センターがん対策情報センターでは本年度、2010 年診断症例の分析を行った。今回
が 4 回目の集計報告となるが、各施設の登録データの質が向上した結果、データの集計処理に要す
る時間が短縮され、本年 3 月の 2009 年集計に引き続き、同年内に 2010 年版の発行に至った。
2009 年報告と比較して、集計対象施設が 18 施設(4%)増加して 387 施設、それに伴い全登録数が
約 6.1 万例(11%)増加して集計対象は約 549,000 例となった。この数は日本全体の概算の罹患数の約
67%であり、わが国のがん診療において拠点病院が大きな役割を担っているといえる。
2009 年と同様に、性別、患者の診断時住所別、年齢別、症例区分別。来院経路別、発見経緯別を
集計した。都道府県や施設によって、診療している対象に特性があるが、それらの特徴は都道府県別
には 2009 年と 2010 年で大きな違いはなかったことから、都道府県単位では一定の品質のデータが
登録されるようになったと考えられる。都道府県別の集計値を参考にして施設別の違いについて、そ
れが施設の特徴を示す真の違いなのか、登録方法による違いなのか施設自らの評価に利用することが
できるであろう。2010 年報告書は 2009 年報告とほぼ同様の構成であるため、2009 年と 2010 年の
集計値の比較が容易である。たとえば、肺癌について、2009 年と 2010 年のデータを合わせて、腫
瘍の組織型別(扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、その他の明示された癌腫)の集計を特別に行い、それ
ぞれの組織型について病期別登録数と、病期別にみた治療方法の割合を掲載した。
2)全国集計の登録データの品質は向上しつつある。各施設においても数年分のがん登録データが収
集・蓄積されているので、全国集計提出後のデータの活用をしてほしい。国立がん研究センターによ
る、現地訪問調査からは報告書の作成や分析が行われている施設は少ない実態が覗えた。
<標準登録様式について>
病期分類が UICCTNM 分類 7 版に変更されるにあたり、現行の標準登録様式の解釈がいくつか追
加・変更があったため、下記の項目について重点的に定義や登録方法の説明があった。(詳細は標準
登録様式の 2012 年 1 月修正版を参照する)
・標準項目と必須項目の類似と相違点。また、標準登録項目とその定義について
・登録対象の例外の追加…UICCTNM 第7版に準拠するため、GIST については例外的に性状コー
ド/1についても登録の対象であることについて。
・院内がん登録における初回治療についての解釈の変更と留意点について。
① 2008 年 1 月 1 日診断症例から初回治療情報についての考え方が変更されている。
② 腫瘍にとっての初回治療と施設にとっての初診後の治療を区別して登録する。
③ 現時点での初回治療として登録すべき内容について。
・多重がんの定義について。
・予後調査、その他、オプション項目の登録について。
Ⅱ.島根大学の今後の取り組み
今後、全国集計と同じルールで自施設データの集計を行えば、国立がん研究センターがん情報サー
ビスの HP にある施設別のデータを使って全国との比較、県内の他拠点との比較、同じ属性の病院の
比較も可能である。がん登録データによる自施設の診療状況の把握、分析を試みることが、品質管理
にもつながる。
Ⅲ.今回の研修を受講しての成果
1)標準登録様式の理解が深まり、登録業務において発生していた疑問点の多くも解消した。
2)本院では毎年、院内がん登録のデータを、集計、分析し院内向けの報告書を作成し、HP にあげ
ているが、集計のルールや活用方法例は、今年度の院内がん登録報告書を作成する能力が向上した。
3)院内のがん登録実務担当者に対して報告会を行い、研修で得た情報・知識の共有を図る事が出来
た。
4)島根県内のがん登録実務者に対して開催する「島根県がん登録研修会」での講義に役立つ知識や
技術も習得できた。
<島根県がん登録研修会>
都道府県がん診療連携拠点病院として、「島根県がん登録研修会」を開催した。
7月25日 参加病院数 21 病院
参加人数 42 名
講義 「病理組織と形態コードについて」 病理部 原田祐治
乳がん・肺がんの登録について
実務担当者
副部長
12月8日 参加病院数 19 病院
参加人数 45 名
乳がん・肺がんの病期分類と演習
実務担当者
院内がん登録の活用について
実務担当者
*国立がん研究センター
院内がん登録実務初級研修受講証
受領済
【2012 年 9 月 20 日】