Keio Media Space Board for KMSF-CODE の - 慶應義塾大学 徳田

Keio Media Space Board for KMSF-CODE
の
設計,実装,評価
大越匡1 岩本健嗣1 中澤仁2 永田智大2 望月祐洋3 徳田英幸1 ;3
1 慶應義塾大学環境情報学部 2 慶應義塾大学総合政策学部
3 慶應義塾大学政策・メデ ィア研究科
Keio Media Space Family (KMSF) プロジェクトでは,複数の主体間での知的協調作業を
支援する KMSF 環境を構築している.本稿では分散協調オブジェクトに基づく KMSF-CODE
(Collaborative Object on Distributed Environment) アーキテクチャ上での Keio Media Space
Board の設計,実装及びその評価について述べる.
1
はじめに
2
小型化,高性能化,低価格化に伴う計算機
の普及,通信機器の発達や無線通信網の整備
などに伴う,インターネットをはじめとする
分散ネットワークの普及によって,場所や時
間に限定されないネットワークの利用が可能
となり,人間のさまざまな活動の場での計算
機の利用機会が増加している.
計算機,ネットワークは,多様な情報やサー
ビスへのアクセスの道具であると同時に,人
間同士のコミュニケーションの手段としても
活用されている.
計算機ネットワークの利点の一つは世界規
模の情報共有が可能となる点であるが,既存
のファイルシステムでの情報共有から,複数
の主体間での対話的な情報の交換の中で,よ
り動的かつ柔軟な情報の創造,共有を提供す
る環境が重要となってきている.
Keio Media Space Family (以下 KMSF) プ
ロジェクトでは,分散実時間マイクロカーネ
ル,実時間ネットワークプロトコル,統合メ
ディアサーバ,連続メディアベースなどの技術
を利用し,複数の主体間での知的協調作業を
支援する KMSF 環境 [1, 2] を構築している.
本稿では分散協調オブ ジェクト に基づく
KMSF-CODE アーキテクチャ[4] 上での Keio
Media Space Board の設計,実装及びその評
価について述べる.
Keio Media Space Board for KMSF-CODE: Design,
Implementation, and Evaluation
1 Takeshi IWAMOTO1 , Hitoshi
2
2
Tomohiro
NAGATA ,
Masahiro
3
1; 3
MOCHIZUKI , and Hideyuki TOKUDA
1 Faculty of Environmental Information, Keio UniverTadashi OKOSHI ,
NAKAZAWA ,
sity
2 Faculty of Policy
3 Graduate School
University
Management, Keio University
of Media and Governance, Keio
2.1
KMSF
での知的協調作業
KMSF
KMSF は,Keio Media Space Board (以下
KMSB) と Keio Media Space Navigator (以下
KMSN) を中心にこれらと協調動作するハード
ウェア,ソフトウェアから構成される統合環境
であり,人間の物理的共同作業空間と,仮想
的共同作業空間とをシームレスに統合し,複
数の主体からなるグループの知的協調活動を
支援することを目標としている.
KMSB は,ネットワーク上の仮想的な掲示
板またはホワイトボード として位置付けられ,
サーバとして情報の蓄積,提供,管理を行な
う.KMSN は,KMSB 上の情報を参照し,ユー
ザの知的活動を支援するためのナビゲータで
ある.
ユーザは KMSF 上の情報を,各個人の用い
る携帯端末からネットワークを通して任意に知
覚1 ,掲示,編集することができる.KMSF で
は,KMSB 上に情報を掲示する動作を post-it,
逆に KMSB から情報を取り出す動作を fetch-it
と呼ぶ.
2.2
既存のアーキテクチャ
既存のアーキテクチャとしては,受動型オ
ブジェクトモデルに基づく KMSF アーキテク
チャ[2] と,自律分散オブジェクトモデルに基
づく KMSF アーキテクチャ[3] が開発されて
いる.
受動型オブジェクトモデルに基づく KMSF
アーキテクチャは,クライアント・サーバモデ
ルによる KMSB, KMSN からなるアーキテク
チャで,テキストデータを中心としたメッセー
ジング環境である.画像,音声などのマルチ
メディアデータへの対応は行なわれていない.
1 文字や映像の情報の視覚での認識だけでなく,音声情
報などの聴覚での認識も含む.
一方,自律分散オブジェクトモデルに基づ
く KMSF アーキテクチャは,クライアント
・サーバモデルを用いず,計算機ごとに実行
される複数の Connection Manager の協調に
よって KMSF 環境を実現している.複数の
Connection Manager 間に恒常的なトラフィッ
クが発生し,多人数のコミュニティによる利用
では,ネットワークに恒常的な負荷が生じる.
2.3
KMSF-CODE アーキテクチャ
KMSF-CODE (Collaborative Object on
Distributed Environment) アーキテクチャは,
マルチメディアデータの取り扱い,テキスト・
画像などのメデ ィア情報やソフトウェア部品
であるコンポーネントの「オブジェクト 」と
しての一元的な処理,ナビゲータのマルチプ
ラットフォーム化によるヘテロジニアスな分
散ネットワーク上における利便性の向上と言っ
た点を重視して設計された,分散協調オブジェ
クトに基づく KMSF アーキテクチャである.
KMSF-CODE アーキテクチャでは,テキス
ト,画像,音声などのメディア情報を \ MediaCO (Media Collaborative Object)",各メディ
アの表示機能,編集機能その他のソフトウェ
ア部品を \Component-CO (Component Collaborative Object )",CO の任意の組合せを
\HO (Hyper Object)" と呼び,これらを総称
して \オブジェクト " と呼ぶ.
3
post-it
fetch-it
list-it
info-it
Application
Application
HOTp
HOTp
SocketAPI
SocketAPI
TCP/IP
TCP/IP
Kernel
Kernel
図 1: KMSN-KMSB 間の通信モデル
Hyper Object Transfer Protocol
Hyper Object Transfer Protocol (以下
HOTp) は,KMSF-CODE 上で,オブジェク
トやそれに付随する情報を転送するための通
信プロトコルである.KMSN-KMSB 間の通信
オブジェクトを投稿する動作
オブジェクトを取り出す動作
Object Storage 中のオブジェクトの
リスト情報を取り出す動作
オブジェクトの属性情報を取り出す動作
は,KMSN から KMSB への4つのメソッド,
post-it,fetch-it,list-it,info-it からなる.表
1に示す.
これらメソッド は,表 2 に示す6つのメッ
セージを組み合わせることによって実現される.
表 2: HOTp メッセージ
1. オブジェクトを投稿する
POST <ObjectName>[CRLF]
Content-Length: <ObjectSize>[CRLF]
<Object>
2. オブジェクトの送信要求をする
FETCH <ObjectName>[CRLF]
3.Object Storage 内のオブジェクトの
リストを要求する
LIST <ObjectStorage/Directory>[CRLF]
4. オブジェクトの情報を要求する
INFO <ObjectName>[CRLF]
5. 各要求に対する回答を送る
REPLY[CRLF]
Content-Length: <MessageSize>[CRLF]
<Message>
KMSF-CODE における通信機構
KMSF-CODE における KMSN-KMSB 間の
通信は,クライアント・サーバモデルに基づく,
TCP/IP プロトコルによるコネクション指向
の通信である.また,Hyper Object Transfer
Protocol を開発し,既存の World Wide Web
(WWW)[5] との互換性も高めている.
3.1
表 1: HOTp メソッド
6. 各要求に対するエラーを送る
ERROR[CRLF]
<ErrorMessage>[CRLF]
3.2
post-it
post-it は表 3 の通信手順で行なわれる.
KMSN から KMSB へ CO-SGML を内包した
HO-SGML ファイルが投稿される.KMSB は
それを解析,必要な CO データファイルの送
信要求を KMSN へ送る.KMSN は CO デー
タファイルを KMSB に投稿する.
手順
1
2
3
4
表 3: post-it
通信方向
メッセージ
KMSN → KMSB POST HO-SGMLFile
KMSN ← KMSB FETCH CO-DataFile
KMSN → KMSB POST CO-DataFile
手順 2∼3 の繰り返し
3.3
fetch-it
3.7
fetch-it は表 4 の通信手順で行なわれる.
KMSN から KMSB へオブジェクトの送信要
求が送られる.KMSB はそのオブジェクトの
SGML ファイルを KMSN へ送信する.KMSN
はそれを解析し,必要な CO データファイル
の送信要求を KMSB へ送る.KMSB は CO
データファイルを KMSN へ送信する.
表:4 fetch-it
通信方向
メッセージ
KMSN → KMSB FETCH ObjectName
KMSN ← KMSB REPLY Object
KMSN → KMSB FETCH CO-DataFile
KMSN ← KMSB REPLY CO-DataFile
手順 3∼4 の繰り返し
手順
1
2
3
4
5
3.4
list-it
は 表 5 の通信 手順 で行な われ る.
KMSN から KMSB へ,指定 Object Storage,
指定デ ィレクト リ中にあるオブジェクト リス
ト情報の送信要求が送られる.KMSB はリス
ト情報を KMSN へ送信する.
list-it
手順
1
2
3.5
表 5: list-it
通信方向
メッセージ
KMSN → KMSB LIST Storage/Dir
KMSN ← KMSB REPLY ListingInfo
info-it
は表 6 の通信手順で行なわれる.
KMSN から KMSB へ,指定オブジェクトに関
する属性情報の送信要求が送られる.KMSB
は属性情報を KMSN へ送信する.
info-it
手順
1
2
3.6
表 6: info-it
通信方向
メッセージ
KMSN → KMSB INFO ObjectName
KMSN ← KMSB REPLY ObjectInfo
単一コネクションによる転送の効率化
TCP/IP を利用する HTTP は,各ファイル
転送にそれぞれコネクションを確立する.
個のファイルからなる WWW ページをダウン
ロード するには, 個のコネクションを張る
必要がある.この方式は,通信の単純化とい
う利点はあるものの,TCP の Slow Start,ま
た全通信量における各プロトコルヘッダの割
合の増加によるオーバーヘッド などによって,
ネットワーク資源,サーバ資源の浪費を招き,
転送速度低下などの問題を引き起こしている
[7, 8].HOTp ではこの問題を考慮し,単一の
コネクションで複数のファイルを転送し,転
送終了後も一定時間はコネクションを維持す
る方式を採用している.通信が多少複雑にな
る点もあるが,無線 LAN など帯域の狭いネッ
トワークでの利用も想定される KMSF 環境に
おいては,望ましい通信方式と考えられる.
N
N
4
KMSB for KMSF-CODE
KMSB for KMSF-CODE は ,KMSFCODE アーキテクチャ上で,オブジェクトを
保存,管理し,KMSN に提供するサーバプロ
グラムである.
4.1
KMSB の構造
KMSB は,Connection Manager,Sesssion
Manager,Object Storage の 3 サブシステム
からなる構造である.
Connection Manager は KMSB 起動時より
KMSN からの接続要求を待つマスターサーバ
である.Session Manager は,起動時又は Connection Manager が KMSN からの接続を受理
した時に生成され,KMSN との通信を処理す
る.Object Storage は,各オブジェクトを保
存する空間である.
WWW・HTTP との互換性
知的協調作業を支援する環境としての
KMSF-CODE にとって,既存の World Wide
Web(以下 WWW) との透過性は重要である.
HOTp は,\POST",\FETCH" などを使用
する「 メソッド 方式」を採用することにより,
WWW の通信プロトコルである Hyper Text
Transfer Protocol (HTTP)[6] との互換性を高
めている.
表 7: HTTP と HOTp の通信方式の比較
Protocol
通信例
HTTP
GET /index.html
HOTp
FETCH /date/19960927181114.
SampeGifPicture.mco/
Connection
Manager
HO
Storage
Media-CO
Storage
Component-CO
Storage
Object Storage
Session Manager
.......
KMSB
WAN/LAN/WirelessLAN
KMSN
.......
KMSN
図 2: KMSB の構成
KMSN
4.2
KMSB の機能
KMSB の機能は,以下の 2 つである.
KMSN との通信処理機能
オブジェクトの保存/管理機能
4.2.1
KMSN との通信処理機能
Session Manager は,実際の KMSN-KMSB
の通信を処理する.
KMSF-CODE アーキテクチャにおいては,
すべてのオブジェクトは SGML ファイルとし
て構造化される [4].SGML ファイルには,オ
ブジェクトのタイトル,識別子,参照 URL,著
作権表示,コメント,Component-CO のパラ
メータ/ イベント処理情報などがタグとして記
述される.各 HO は単一の SGML ファイルか
ら構成され,各 Media-CO,Component-CO
は SGML ファイルと,テキスト・音声・画像な
どのデータファイルもしくはソフトウェア部
品である Java クラスファイルから構成される.
従って,Session Manager が KMSN-KMSB 間
の通信で扱うのは SGML ファイルもしくは CO
データファイルである.
表 8:
HO-SGML の記述構造
HO-SGML 全体
HO タイトル
<HO>
<TITLE>
<AUTHOR>
<COPYRIGHT>
<COMMENT>
<MCO>
<CCO>
<REF>
作者
著作権表示
コメント
Media-CO
Component-CO
CO-SGML の URL
表 9:
CO-SGML の共通記述構造
<MCO> Media-CO-SGML 全体
<CCO> Component-CO-SGML 全体
<TITLE> CO タイトル
<TYPE> MIME-Types
<AUTHOR>
<COPYRIGHT>
<COMMENT>
<REF>
表 10:
作者
著作権表示
コメント
データファイル・Java
クラスファイルの URL
Component-CO-SGML 独自の記述構造
<EVENT>
<METHOD>
<MESSAGE>
<MESSAGETO>
イベント処理
<EVENT>タグ
メソッド 名
送信メッセージ
メッセージ送信先
Session Manager は,KMSN から FETCH,
LIST,INFO 各メッセージを受信すると,それ
ぞれ指定されたファイル( SGML ファイルも
しくは CO データファイル),指定された Object Storage 中のリスト情報,指定されたオブ
ジェクトの属性情報を REPLY メッセージと
して KMSN に送信する.
一方,Session Manager は KMSN から POST
メッセージを受信すると,受信した HO-SGML
ファイルを解析し,CO-SGML ファイルを抽
出する.CO-SGML 中の<REF>タグの値から
KMSN に格納されている CO データファイル
の場所情報を得,KMSN から CO データファ
イルを FETCH する.FETCH した CO デー
タファイル,CO-SGML は<REF>タグの情報が
URL に変換された後,CO-Storage に保存さ
れる.
HO-SGML ファイルは,<CO>タグ中の<REF>
タグに記述されている CO の参照情報が URL
に変換された後,HO-Storage に保存される.
4.2.2
オブ ジェクト の保存/管理機能
HO,Media-CO,Component-CO の各オブ
ジェクト は,HO Storage,Media-CO Storage, Component-CO Storage 内の,MIME
Types[9] 別のデ ィレクトリにそれぞれ保存さ
れる.
オブジェクトは,KMSB 各 Storage 内に作
られる,オブジェクトタイトル及び POST 日
付時刻に基づいたユニークな名前のデ ィレク
トリに保存されるため,KMSB 内でのその一
意性が保証される.KMSB はそのホスト名と
ポート番号によって,ネットワーク内で一意
に識別される.よってオブジェクトは,URL
表記で記述することによりネットワーク内で
一意に識別可能となる.
root
date
(link)
19960812060012.HO-Sample1.ho
19960812060145.Sample1.mco
19960812062039.AIFFPlay.cco
Date Storage
hyperobject
HO Storage
media-co
MCO Storage
component-co
CCO Storage
......
HO-Sample1.ho.19960812060012
HO-Sample1.ho
SampleHyper.ho.19960920122043
SampleHyper.ho
SampleHyper.ho.19960921101054
SampleHyper.ho
audio
aiff
Sample1.mco.19960812060145
Sample1.mco
image
au
aiff1.mco.19960920122043
AiffData.aiff
text
wav
aiff2.mco.19960921101054
aiff
AIFFPlay.cco.19960812062039
image
audio
au
DefaultComponent
text
wav
aiff2.cco.19960921101055
AIFFPlay.cco
AIFFPlay.class
図 3: Object Storage
Component-CO Storage の各 MIME Types
ディレクトリには,\DefaultComponent" ディ
レクトリがあらかじめ作られ,KMSB が標準
とする,MIME Types 別 Media-CO 再生用
Component-CO が置かれる.
オブジェクトは,タイトル順に HO,MediaCO,Component-CO それぞれの Storage に保
存されると同時に,POST された順番に Date
Storage にリンクが張られる.よってこれらの
Storage と list-it を使うことにより,ユーザは
オブジェクトを種類別,MIME Types 別,名
前順,時系列で検索することが可能となる.
実装
5
実装は,IBM 社の ThinkPad 530Cs,Sun
Microsystems 社 の SPARCstation 2,Ultra 1,Ultra 2 上で行ない,RMK95[10] と
4.4BSDLites サーバ [11] 上で C 言語で,Solaris2.5.1+JavaVM 上で Java 言語 [12] で
行なった.RMK95 上のスレッド パッケージ
は cthread パッケージを,Solaris2.5.1 上の
JavaVM は JDK1.0.2 を使用した.具体的に
は以下の 3 種のモデルを実装した.
1. 動的マルチプロセスモデル
(RMK95+4.4BSDLites)
2. 動的マルチスレッド モデル
(RMK95+4.4BSDLites,Solaris2.5.1+JavaVM)
3. 静的マルチスレッド モデル
(RMK95+4.4BSDLites)
5.1
動的マルチプ ロセスモデル
マスタープロセス (Connection Manager) は
accept() システムコールで KMSN からの接
続を受け付ける度に,fork() システムコール
でスレーブプロセス (Session Manager) を生
成する.KMSN との通信はスレーブプロセス
が処理し,マスタープロセスは他の KMSN か
らの接続を待つ.
5.2
動的マルチスレッド モデル
マスタースレッド (Connection Manager) は
accept() システムコールで KMSN からの接
続を受け付ける度に,cthread_fork() 関数で
スレーブスレッド (Session Manager) を生成
する.KMSN との通信はスレーブスレッド が
処理し,マスタースレッド は他の KMSN から
6.1
環境条件
評価は以下の条件で行なった.
1. C 言 語 の 実 装 の 評 価 に は ,IBM 社
の ThinkPad530Cs (intelDX4 75MHz,
20MB) を使用し,RMK95 + 4.4BSDLites サーバ上で行なった.
2. Java 言語の実装の評価には,Sun Microsystems 社 の SPARCstation 2 を使
用し,Solaris2.5.1 + JDK1.0.2 上で行な
った.
3. post-it,fetch-it には 100bytes のファイル
を使用した.
4. 測定は各 1000 回行ない加重平均した.
5. 時間測定には RMK95 の Realtime Clock,
JavaVM の System.currentTimeMillis()
を使用し,1ms 単位まで測定した.
6.2
基本操作 (post-it) の性能評価
図 5 は実装別の post-it の性能を表す.\Slave
Create" はスレーブプ ロセス又はスレーブス
レッド 生成の所要時間,\String" は SGML 解
析などメモリ操作の所要時間を表す.UNIX 動
的マルチプロセスモデルと,Mach 動的マルチ
スレッド モデルを比較すると,ネットワーク,
デ ィスク性能はほとんど変わらないが,メモ
リ操作は約 560%,スレーブ生成は約 1200%の
性能向上を実現している.ただ処理全体にお
けるデ ィスク操作部分の割合が大きく,全体
として高速化は顕著ではない.
ÊòéñæÑåïâÞá
¥Ç¾Ó¾¦
の接続を待つ.
5.3
評価
6
Áæðè
静的マルチスレッド モデル
Ðñïæëä
マスタースレッド (Connection Manager) は
起動時に,あらかじめ設定した数のスレーブス
レッド (Session Manager) を生成する.KMSN
からの接続を受け付けると,マスタースレッド
はすでに生成済みのスレーブスレッドに KMSN
との通信処理を担当させる.
Ëâñôìïè
ÐéÞóâÀïâÞñâ
ÊòéñæÍïìàâðð¥À¦
ÊòéñæÑåïâÞᝥÀ¦
­
KMSB
Master
Process
Master
Thread
KMSB
Slave
Thread
KMSN
KMSN
6.3
Connect
Connect
KMSN
KMSN
KMSN
KMSN
KMSN
±­­
³­­
µ­­
®©­­­
®©¯­­
図 5: 各モデルの post-it 測定結果
Slave
Thread
Connect
¯­­
Ñæêâ¥êð¦
cthread
_fork()
fork()
Slave
Process
KMSB
Master
Thread
KMSN
KMSN
図 4: モデルによるサーバの処理方式
基本操作 (fetch-it) の性能評価
図 6 は実装 別の fetch-it の性能 を表す.
\Slave Create" はスレーブプロセス又はスレー
ブスレッド生成の所要時間,\String" は SGML
の解析などの メモリ操作の所要時間を表す.
UNIX 動的マルチプロセスモデルと,Mach 動
的マルチスレッド モデルを比較すると,ネット
ワーク,メモリ操作に所要の時間はほとんど変
化がない.一方,スレーブ生成では約 1200%,
ディスク操作では約 310%の高速化がみられる.
post-it と比較して全体の処理時間が短いため,
スレーブ生成部分の高速化が全体性能に大き
く影響し,fetch-it 全体で約 100%の高速化を
実現している.
に基づく設計,実装があげられる.その際,現
在の KMSF-CODE 上での通信プロトコルであ
る HOTp ではその通信方式ゆえに連続メデ ィ
アの取り扱いが難しいため,効率の良い連続
メデ ィアの転送を実現するために新しい通信
機構が必要となる.ネットワークの過負荷を防
ぐための,複数の KMSB の協調による連続メ
ディアデータのリレー送信などが考えられる.
謝辞
ÊòéñæÑåïâÞá
¥Ç¾Ó¾¦
Áæðè
Ðñïæëä
Ëâñôìïè
本プ ロジェクトを遂行するにあたり,協力
していただいた慶應義塾大学環境情報学部 徳
田・村井・楠本研究室の皆様に感謝いたします.
ÐéÞóâÀïâÞñâ
ÊòéñæÍïìàâðð
¥À¦
参考文献
ÊòéñæÑåïâÞᝥÀ¦
­
¯­
±­
Ñæêâ¥êð¦
³­
µ­
図 6: 各モデルの fetch-it 測定結果
6.4
評価結果の考察
以上の性能評価から考察されることは,ス
レーブ生成におけるスレッド 生成のプロセス
生成に対する高速性である.100Bytes のファ
イルの fetch-it のように所要時間の短い処理ほ
ど,スレッド 生成とプロセス生成のコストの
差が処理全体の所要時間に影響し,高速化が
顕著となる.逆に post-it の性能評価からも分
かる通り,所要時間の長い処理ではスレッド 生
成の高速性はあまり生かされない.post-it に
おいて,投稿された CO ごとにスレーブスレッ
ド を生成し,1 回の通信処理を複数のスレッド
で行なうなどの改良により,一層の高速化を
現在研究中である.
7
まとめ
本稿では KMSF-CODE アーキテクチャに
基づく KMSB の設計およびその機能,KMSB
- KMSN 間の通信機構について解説し,3 種の
モデルで実装,評価,および考察を行なった.
今後の課題としては,まず実時間マイクロ
カーネルアーキテクチャに適したサーバとし
ての再設計・実装があげられる.より高度な
マルチスレッド 構造による通信処理の高速化,
実時間スレッド の使用による連続メデ ィアの
処理などを設計・実装していく予定である.
また,KMSF-CODE アーキテクチャ上で
映像,音声などの連続メデ ィアを扱うための,
連続的な post-it,fetch-it である \continuous
post-it",\continuous fetch-it" の実時間処理
[1] 徳田,石川,望月,富田,川又,\Keio Media
Space Family プロジェクトにおけるシステム
アーキテクチャ",情処研報,Vol.95,No.59,
95-OS-69,(1995).
[2] 望月,富田,川又,石川,徳田,\Keio Media
Space Board と Keio Media Space Navigator
上のプロトタイプサーバの実装と評価",情処
研報,Vol.95,No.59,95-OS-69,(1995).
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文集, 5B-9 (1996).
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