BUNさんと泉先生の廃棄物処理法逐条解説 「特別管理一般廃棄物」 BUNさん (『土日で入門 廃棄物処理法』の著者) 泉 先生 (廃棄物部門でご活躍の女性弁護士) <BUNさん> さて、曲がりなりにも「産業廃棄物」の定義を終わりました。 これで、一般廃棄物もわかったはずですよね。 どうしてって、法律の定義が「産業廃棄物以外の廃棄物が一般廃棄物」なんだから。 ところが、現実には、わからない存在がある。 それが、特別管理一般廃棄物。 一般廃棄物は具体的に定義していないのに、特別管理一般廃棄物は定義している。 これ実は概念的には難しいんです。 どうして難しいかと言うと、(普通の)廃棄物は「産業廃棄物以外の廃棄物が一般廃 棄物」なんだけど、 「特別管理産業廃棄物以外の特別管理廃棄物が特別管理一般廃棄物」 ではない。 なんか禅問答みたいでしょ。 でも、この規定の仕組みがわからないと、中途半端な理解になっちゃう。 と、言うのは「特別管理産業廃棄物以外の特別管理廃棄物が特別管理一般廃棄物」だと すれば、事業活動を伴って生じた特別管理廃棄物は特別管理産業廃棄物で、事業活動を 伴わないで生じた特別管理廃棄物が特別管理一般廃棄物となり、性状的には特管産廃も 特管一廃も同じ物になるはず。 これが違う。規定では産業廃棄物の中で管理に注意を要するものが特管産廃で、一般 廃棄物の中で管理に注意を要するものが特管一廃としているものだから、特管産廃とは なるが、特管一廃とはならない「物」 、特管一廃とはなるが特管産廃とはならない「物」 がある。 具体的に示した方がわかりやすいですね。 詳細は後述するとして、灯油が変質した「物」は特管産廃にはなりますが、特管一廃に はなりません。 逆に、「ばいじん」は必ず特管一廃になりますが、産廃の場合は、汚泥や廃酸と同じ ように「一定の濃度以上に有害物が入っていなければ」特管産廃にはなりません。 まぁ、この辺はおいおい説明することとして、取りあえず条文を見てみましょう。 法律(定義) 第二条 (略) 2 (略) 3 この法律において「特別管理一般廃棄物」とは、一般廃棄物のうち、爆発性、毒 性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を 有するものとして政令で定めるものをいう。 政令(特別管理一般廃棄物) (BUNさん流抜粋) 第一条 法第二条第三項の政令で定める一般廃棄物は、次のとおりとする。 一 次に掲げるものに含まれるポリ塩化ビフェニルを使用する部品 イ 廃エアコンディショナー ロ 廃テレビジョン受信機 ハ 廃電子レンジ 2∼8 (略) と、まぁ、このように「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る 被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」と規定していますから、この「性状」を 持つ物でなければ、特別管理一般廃棄物にはなりません。 ただ、注意しなければならないのは、この性状を有していても必ずしも特別管理一般 廃棄物になるということでもありません。 文章の後段に書いてあるとおり「政令で定め」ていない「物」はいくら「爆発性、毒 性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有」 していても、特管一廃にはならない、ということです。 ちなみに、法律では「爆発性」と規定していますが、爆発性を要因として規定されて いる特管一廃も特管産廃も今のところ一つもありません。 さて、その1号として規定されているのが、次の3つの電化製品に含まれるポリ塩化 ビフェニルを使用する部品です。 イ 廃エアコンディショナー ロ 廃テレビジョン受信機 ハ 廃電子レンジ PCB部品とは、かつて(ほとんどは昭和40年代まで)作られたテレビ、電子レン ジ、エアコンにPCBを使用したコンデンサーが使用されているものがあったようです。 これらは一般家庭から廃家電として排出される訳なので、事業活動が伴わない。だか ら一般廃棄物であり、また、PCBは有害だという位置付けでと特管一廃となっていま す。 どうも、当時、家電製品で「ポリ塩化ビフェニルを使用する部品」が使われていたの は、エアコン、テレビ、電子レンジの3品目のようで、したがって、洗濯機などはこれ には列記されていません。 さて、続けて、特管一廃の政令第1条第1項第2号以降です。 まずは、原文を見ていただきましょう。 政令(特別管理一般廃棄物) 第一条 二 法第二条第三項の政令で定める一般廃棄物は、次のとおりとする。 別表第一の一の項の中欄に掲げる施設において生じた同項の下欄に掲げる廃棄物 (第二条の四第六号、第七号及び第九号に掲げるものを除く。) 三 前号に掲げる廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適 合しないものに限るものとし、第二条の四第六号、第七号及び第九号に掲げるもの 正確には、廃棄物処理法政省令を見ていただくしかないのですが、多少の厳密さを犠 を除く。) 牲にして、BUNさん流で書き直すと、この条文は次のようになります。 政令(特別管理一般廃棄物) (BUNさん流書き直し) 第一条 特別管理一般廃棄物は、次のものだよ。 二 一般廃棄物の焼却施設(ばいじんと灰を分離できる等の一定の条件もあるけど) で発生する「ばいじん」 三 その「ばいじん」を埋立とか次のステップの処理をするために、手を加えた処理 後の「物体」 (その時点で「ばいじん」の形態をしていなくなっていても特管一廃だ よ。ただし、さすがに一定の基準をクリアできれば、特別管理として取り扱わなく てもいいよ。 ) まぁ、こんなところで、要は「一般廃棄物焼却施設から出てくる「ばいじん」は、ダ イオキシン類や鉛、カドミウムといったいわゆる「有害物」の溶出量、含有量等にかか わらず、特別管理一般廃棄物になるってことなんです。 そして、一旦そう決めておいて、当然、それをなんらかの形で「処理」しなくちゃ、 未来永劫「そのまま」で残ってしまう訳だけど、(何回か後で処理基準の話をすること になるかと思いますが)特別管理の状態では「処分」のしようがない。そこで、「性状 を変える」なんらかの「中間処理」をやる。しかし、中間処理をやっても、効果が十分 でない状態もあり得るわけで、その「不十分な状態の物」が、この3号な訳です。 条文として面白いのは括弧書きなんです。 (第二条の四第六号、第七号及び第九号に掲げるものを除く。) (環境省令で定める基準に適合しないものに限るものとし、第二条の四第六号、第七 号及び第九号に掲げるものを除く。) これですね。 ここは、是非とも法律の専門家の泉先生に解説をお願いしたいところです。 なぜかと言えば、この括弧書きで掲げている「物」は、条文を見ていただけば即わか るのですが、産業廃棄物なんです。 BUNさんが「面白い」と言うのは、この条文は法律第2条第3項を受けた形で規定 されている「特別管理一般廃棄物」の規定なんですよ。 法律では、第3項の前の第2項で「一般廃棄物とは産業廃棄物以外の廃棄物である」 と定義している。それを受けた形で作られている政令のはずなのに、なぜ、改めてこん な括弧書きが必要なのか? 「前提として、一般廃棄物のこととして規定しているんでしょ?どうして、わざわざ、 改めて「産業廃棄物を除く」と括弧書きで規定しなければならないのか?なにか意図は あるのか?もし、括弧書きがないと、この条文の作りでは、産廃も特別管理一般廃棄物 に含まれる、という解釈が生じてしまうのか?」 こんなところを是非、解説して欲しいんです。 <泉先生 解説> BUNさんの解釈は、条文の細かいところを考えすぎだと思います。 要するに、PCB含有廃棄物とダイオキシン類含有廃棄物と感染性廃棄物は、いくら 一般廃棄物だといっても、市町村の責任ではとても処理できないから、広域処理の枠に 入れるために、特管一廃というジャンルを作ったのではないかと思います。 もともと、産廃と一廃の区分は、市町村が対応できるようなものを一廃とするという 程度の合理性しかなかったので、よく考えてみると最初に一廃に入れたけれど、市町村 ではムリというものが当然出てきた。でも、市町村ではムリだから産廃に、というよう に、一旦一廃に入れた上で産廃にするという区分変更も、法律の建前から難しい。そこ で、それじゃ特管一廃を作っちゃえ、というわけで、後付で出来た制度だと思います。 有害廃棄物は、廃棄物の処理というよりも、無害化する中間処理が大切。他の廃棄物は、 減量・最終処分というのが基本的な考え方だけれど、有害廃棄物はそんなに単純ではな い。本当は、有害な一般廃棄物はもっとあると思いますが、社会問題になったPCBと ダイオキシン、また対応に困る感染性廃棄物だけ、とりあえず特管一廃で対応したとい うところではないでしょうか。現在の廃棄物処理法は、適正処理を基本と考えるべきな のに、一廃と産廃の区分を先に考えるから、かえって適正処理が困難な制度となること があると思います。
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