2004年12月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第 3 巻 第 1 3 号( 通 巻 3 8 1 号 )
2004.12
● 地域イノベーションシステムと地域経済復活の道
● リレーションシップバンキング再考
−米国の中小企業向け貸付テクノロジー−
● 環 境 変 化へ の適 応が求められる中 小 小 売 業
−既存事業の見直し・底上げから新分野への進出へ−
● 長江デルタ経済圏の現況
● 日本中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
●「浜松地域経済研究会」研究成果報告会を開催
● 2004年信金中金月報(第3巻)総索引
● 統計
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」「中小企業金融」「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご参
照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学商学部教授(信金中金総合研究所長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:落合、稲葉)
Tel : 03(3563)7541 / Fax : 03
(3563)7551
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
特別寄稿論文
2004年12月号 目次
地域イノベーションシステムと地域経済復活の道
横浜国立大学 大学院環境情報研究院教授
研 究
リレーションシップバンキング再考
2
三井逸友
青木 武
26
松尾良太
54
丹羽弘之
75
総合研究所
87
総合研究所
106
−米国の中小企業向け貸付テクノロジー−
環境変化への適応が求められる中小小売業
−既存事業の見直し・底上げから新分野への進出へ−
調 査
長江デルタ経済圏の現況
信金中金だより
日本中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
「浜松地域経済研究会」研究成果報告会を開催
信金中央金庫総合研究所活動状況(10月)
107
統 計
2004年信金中金月報(第3巻)総索引
109
信用金庫統計、金融機関業態別統計
113
2004
12
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
地域イノベーションシステムと地域経済復活の道
横浜国立大学 大学院環境情報研究院教授
三井 逸友
(キーワード)地域イノベーションシステム、RIS地域イノベーション戦略、クラスター、
パートナーシップ、RDA地方開発庁、都市再生、学習地域
(要 旨)
地域経済の困難が増し、その展望が見えにくくなっている今日、地域と産業をめぐる議論は
国際的にむしろ活発になっており、その延長上には「クラスター」論や「地域イノベーション
システム(regional innovation system、RIS)」論がある。
ヨーロッパでは90年代から、こうした議論を応用するかたちでのRIS地域イノベーション戦
略の立案と実行が、知識主導経済の時代でのEUの地域政策の一環として推進されてきた。そ
して英国のスコットランドやウェストミッドランズに見られるように、RISは地域の経済戦略
として展開を遂げており、産業活性化や新産業創造にとどまらず、地域問題、社会問題、雇用
問題、都市問題などへの総合的な取組みを、政府系の地方開発機関、自治体、産業界、地域住
民などのパートナーシップで推進していく体制ができてきている。
これにより、衰退の一途だった旧産業都市がよみがえってきている。そしてその決め手は
「学習地域」であり、ヒトの創造性の発揮とヒトのコミュニティの活性化にある。
2
信金中金月報 2004.12
construction of market)の理論を展開した。以
1.地域経済の困難と高まる地域再評
価論
降、一方では産地的集積の今日的機能が注目
低迷を続ける日本経済にあって、とりわけ
バリューチェーンの影響をえて、地域をベー
深刻な経済困難を抱える地域の広がりは顕著
スとした産学官連携、新技術利用と新産業創
なものがある。また、地域の中小企業にグロ
造といった動きが世界的にも活発となってき
ーバル化の及ぼす影響に対しては容易に対応
ている。他方では、地域に「埋め込まれた」
の道筋が見えてこない。このように日本の中
(注)
4
、人的ネットワー
諸環境と諸関係、
「風土」
小企業と「産地」への明るい展望が乏しい今
クと知識創造(注)5、「学習地域」の概念(注)6など
日、世界的には「地域と産業」、「地域と企業
が新たな注目を集め、「ソーシャルキャピタ
間システム」をめぐる議論が花盛りであり、対
(注)7
の新語が市場原理的な発想に対置され
ル」
照的な状況を迎えている(注)1。そのシンボルと
るようになってきた。こうした議論により、地
なっているのはM.ポーター以来の「産業クラ
域内のフェーストゥフェースの接触と関係が
スター論」である(注)2が、これに前後するかた
高める「暗黙知」の獲得と生産・移転を重視
ちで、様々な議論がわき起こり、影響を及ぼ
する主張(注)8もあれば、他方で閉ざされた地域
しあっている。
システムの壁が累積的な知識習得を呪縛化し、
され、さらにはポーター流のクラスター論と
とりわけ1980年代以降の地域の産業集積な
硬直化した状態を脱却できない限界を挙げる
いし「産地」という存在への注目は、M.ピオ
主張もある。これを打破するには、集団的学
リとC.セーブルの「ポストフォーディズムと
習機会での外部からの移転促進(フロリダ、キ
柔軟な専門化」論を嚆矢とすることができる。
ーブルら)や、過去の経路依存を克服した知
彼らやイタリアの研究者たちは「第三のイタ
識ベースの高度化(注)9、あるいは内発的な技術
リア」をはじめとする「産業地域」
(industrial
能力・イノベーション能力と集団的学習との
district)への注目と実証研究に立脚し(注)3、90
不可分性を前提とする、産地の学習地域化(ア
年代以降の制度論、進化論的な社会経済論の
(注)10
といった新たな発想も求められ
シェムら)
先駆けである「市場の社会的構築」(social
る(注)11。
(注)1.従来の経済立地論的な考え方と今日の地域論の違いについては、三井[2004]
2.Porter [1998](竹内訳[1999]). なお、「クラスター論」の性格とこれにもとづくわが国での政策展開動向に関しては、
三井[2002]
3.Piore & Sabel [1984]
4.Camagni [1991]
5.Saxenian [1994](大前訳[1995])
6.Florida [1995]
7.Putnam [1993](河田訳[2001])
、内閣府国民生活局編[2003]
、等
8.Malmberg & Maskell [1997], Maskell [2001]
9.Braczyk, Cooke & Heindenreich [1998; 2004]
10.Asheim & et. al. [2003]
11.これは高橋美樹氏の述べる「ロックイン」の打破の必要の主張とも共通する。高橋[1997、2000]
。しかし、個別企業の動
員活用できる経営資源の範囲や組織の「慣性」の問題と、地域という場における企業や個々人という経済主体の活動への
「制約」という理解は、本来整合的ではないことも否定できない。「地域」に「ロックイン」があるのか、本来的に問われる
ところである。
特別寄稿論文
3
ここに登場しているのは、
「地域イノベーシ
限界を指摘する見地からのものでもある(注)12
ョンシステム」(regional innovation system、
が、他面では上記のような今日的な地域経済
RIS)の概念である。つまり、今日の地域的な
論、地域産業政策論の産物でもある。したが
経済システムとこれを取り巻く環境的制度的
ってコークが指摘するように、地域イノベー
ないしは社会的条件というものは、
「知識主導
ションシステムという枠組みには「企業家的」
経済への移行」という大前提のもとでの創造
自生的なシステムERISもあれば、
「制度化され
的な活動を推進するものでなければならず、問
た」システムIRISもある(注)13。そこには議論の
題の中心はイノベーションの可能性におかれ
混乱が当然生じており、一義的な地域イノベ
る。これを裏返せば、今日的な経済立地と集
ーションシステム概念の規定を設けること自
積の利益というものは単なる物理的空間的距
体が困難である。上記のような今日の論調が
離の優位性や分業と専門化、外部経済の発揮
導いている視点と方法が、同時に政策的な含
のみではもはやあり得ず、人的能力および知
意のあわただしい応用をもたらし、
「地域イノ
的創造の場としての地域でなければならない
ベーションを推進する政策」が戦略的体系的
ということになる。言い換えれば、ヒトと社
に世界各地域で実行に移されていることを直
会的諸関係のうちに地域の優位性が見いださ
視し、その論理と方法、政策展開と実態、結
れなくてはならないのである。また現実にも、
果を客観的に理解する必要がある。同時にま
情報はもとより、モノやカネは容易にボーダ
た、その結果否応なくクローズアップされて
レス化してきているが、ヒトはそう簡単には
きた今日の地域的産業組織と企業構成、それ
いかない。ヒトはそれぞれの生活と生活の場
らのしくみと行動をあらためてとらえなおし、
があり、そしてそこに形成されているコミュ
そしてその背景に浮かび上がっている社会的
ニティ性と文化性のうちで生きている。ヒト
文化的コンテクストと人間存在、それらの構
を地域という場から切り離すこと自体が困難
成する「地域社会」を現実のものとして解明
なのである。
し、いま進められている政策の及ぼす作用反
このようにして90年代には「地域イノベー
作用のうちで、そのありようを立体的にとら
ションシステム」という概念が注目されるに
えていく必要がある。そして問題は単に経済
至った。これは一面では、きわめて政策主導
の活性化にとどまるのではなく、そこに生活
的な「国家的イノベーションシステム」
する住民社会、生活の質の向上と都市・地域
(national innovation system)に対置され、その
の再生(regeneration)とも強く関連している
(注)
12.Acs [2000]
13.Braczyk, Cooke & Heindenreich [2004], pp.3-5. コークはさらに、理念としてのRISと現実との乖離を指摘し、ガバナンスとし
てのグラスルーツRIS、ネットワークRIS、「管理された」(dirigiste)RIS、という三区分を挙げ、またビジネスイノベーショ
ンとしての「地域主義的」(localist)RIS、「双方向的」RIS、「グローバル化された」RISという三区分を挙げる。言い換えれ
ば、実は地域イノベーションシステムというものを一義的に性格づけることが困難であるということになろう。産業のロー
カリティとコミュニティの復権を展望し、また欧州委員会第十二総局の依頼で、欧州各地での地域イノベーションシステム
の比較調査(REGISプロジェクト)を担当したコークにして、このような総括が導かれるのである。アシェムも多様な理解
と議論の混在を認めている。Acs [2000], Asheim & et. al. [2003] pp.40-46.
4
信金中金月報 2004.12
ことを重視する必要がある。
このような観点から、経済不振や産業衰退
地域、Objective 2 産業衰退地域などが指定を
受けている(注)14。
に悩んできた欧州の産業都市で、地域イノベ
特徴的なことは、近年は地域政策、産業政
ーションを強く意識し、EUという超国家レベ
策、企業政策の連携実施という方向が具体的
ル、各国政府レベル、地方自治体レベル、さ
に推進されてきている事実である(注)15。その背
らに地域の住民レベルからも多層的に取り組
景には80年代後半からの中小企業政策の拡大
まれてきた地域再開発と経済活性化、産業再
強化、90年代以降の「産業競争力政策」のク
生ないし新産業創造、都市の再生への動き、そ
ローズアップという流れも作用している。こ
してこれらの間に結ばれてきた「連携」
うした三位一体的な方向性およびローカルパ
(partnership)の意義を実例のうちから検討し
ていくのが、本稿の課題である。
ートナーシップ重視の姿勢を顕著に示すもの
が、90年代中頃から不況地域や低開発地域で
の新技術新産業発展をめざして、各地域です
2.欧州における地域と政策
すめられたRIS地域イノベーション戦略(注)16、
(1)欧州統合と地域政策・産業政策・企業政策
そしてそれに触発された各地域での総合的な
EC・EUの政策においては、かねてより地域
経済戦略・産業戦略立案と実施である。いま
政策が重要な柱をなしてきた。地域間の格差
や地域問題への対応はこのような段階を迎え
を是正し、域内の住民は等しく経済的繁栄と欧
ていることに注目する必要があろう。
州市民の権利を享受できることをめざすとい
う理念は欧州統合の強力な求心力をなしてき
(2)地域政策改革とRIS地域イノベーション戦略
た。その源泉としては、最近においても5年間
欧州統合が深化し、加盟国が増えていく中で
で約1,500億ユーロの予算を割り当てられてい
従来のEU地域政策は何度か手直しを受けてき
る、ERDF地域開発基金、ESF社会基金などの
た。そのひとつが1993年の改革であるが(注)17、
構造基金Structural Funds、ECからEUへの進
ERDF改革に関する1993年理事会決定新規則第
展に伴い4か国を対象とした結束基金Cohesion
10条に基づき実施される行動の一環・第4項
Fundなどが充てられている。これらの基金は、
「地域レベルの経済発展のためのイノベーショ
遅れた地域・経済的に困難な地域を直接対象
ン」は、RTT多地域間技術移転プロジェクト
とする補助金として交付され、1人あたりGDP
(のちにはRITTS地域イノベーションインフラ・
がEU平均の75%以下であるObjective 1 低開発
技術移転戦略)の実施と、地域経済と産業の
(注)14.2000年からは構造政策の対象地域は、Objective 1 低開発地域(一人あたりGDPが、EU平均の75%以下のregions)の開発
および構造調整、Objective 2 構造的諸問題に直面する地域(areas)の経済的社会的転換、Objective 3 教育・訓練、雇用に
関する国の政策および制度の改造並びに近代化、の3課題に統合された。
15.EU政策における地域政策・産業政策・
(中小)企業政策の関連の深まりについては、三井[1995、2000、2001/02、2002]
。
EUの地域政策と中小企業の関係の深さについて詳しくは、三浦[2001]
16.もちろん地域イノベーション戦略と地域イノベーションシステムは同義ではない。しかし後述のように、前者は後者の形
成と効果の発揮のための戦略的・政策的アプローチと見なされているのである。
17.93年の改革に関して詳しくは、辻[2003]
特別寄稿論文
5
現状と将来を展望し、地域内でのイノベーシ
より、欧州規模の展開を活用可能という課題
ョン活動と企業のイノベーションの活性化、産
が求められる。RISの立案を通じて地域からの
学官連携の推進を目的とする戦略立案を図る
イノベーションの可能性を高めるとともに、イ
ことを定めている。実際には資金準備や支援
ノベーション成果の普及やパートナーシップ
機関のネットワーキング、創業支援、スピン
の発展、広範な参加と政治的行政的な支援体
オフ支援、人材育成などの内容の計画と戦略
制の整備、地域政策諸施策との連携がその重
を立てるもので、各地からの応募の評価選定
要な成果として期待される(注)20。そうした発展
にもとづき、97∼99年の間に21のパイロット
性と総合性、協働性を重視しているところに
プロジェクトが実施され、90年代後半以降で
RISの特徴がある(注)21。
は100か所以上で実施された(注)18。21世紀に入
RISの対象となったのは、スペインカスティ
っては実施プロジェクトであるRIS+に発展を
ーリャ・ラマンチャ、ギリシャテッサリ、オ
遂げている(注)19。
ランダリンブルフ、イタリアトスカーナ、オ
RISにおけるイノベーションという概念は
ーストリアニーダーエスタライヒ、ドイツハ
様々なかたち、規模、レベルのものを含んで
レ・ライプチヒ・デッサウ、アイルランドシ
いる。その特徴は公的部門と民間部門の協力
ャノン、英国ヨークシャー・ハンバー、ウェ
で、地域のイノベーションシステムを確立強
ールズ、西スコットランド、ウェストミッド
化し、諸資源を効果的に結合活用し、それに
ランズ等である。
よって地域内の企業のイノベーティブな能力
RIS、RIS+の実施により、具体的なイノベー
を高めるということにある。RISに参加した地
ションのための計画立案が進んだだけではな
域には、公的部門・民間部門のパートナーシ
く、及ぼしているインパクトは幅広いと欧州
ップ、他地域での政策行動に移転可能な特徴、
委員会地域政策総局のレポート(注)22は指摘す
地域間協力や政策のベンチマーキングなどに
る。地方行政当局、地域の企業等がイノベー
(注)
18.RISに先行して、ウェールズ、リンブルフ、ロレーヌなど8か所でのRTP地域技術計画が1994年に実施されている。Newsletter,
[1997]
19.DG Regional Policy European Commission [2002]. RIS+は正確にはRegional Innovation Strategy implementation phaseのことで、
RISの立案をさらに進め、実施段階を支援する施策となるが、すべてのRISがRIS+に移行したわけではない。現在はRIS立案へ
のEU構造基金からの支援は基本的に終了している。
20.European Commission [2000]
21.RISの立案の中でも重要な役割を期待されているのが1984年から設けられた各地のBIC(Business Innovation Centre)である。
BICはEU地域政策の援助地域を対象として、ERDFを財源にDGXVI地域政策担当第16総局(現在はDG Regio地域政策総局)
のもとに設置された。公私連携を特徴とし、今日では加盟国以外も含めて約150のセンターがあり、EBNネットワークを形成
している。事業の目的としては、起業家発掘、新事業支援、新技術普及、研究開発事業参加推進をかかげているが、現実に
は創業支援機関の色彩が濃い存在であり、独自の金融なども担っている。European Commission [2001a]. なお、創業支援機関
としての活発な活動はアイルランド共和国ダブリンやシャノンなどで特徴的である。88年に設立されたダブリンのBICはEU
および政府の支援で都市部での「内発企業」創業を推進する役割を担い、独自のベンチャーファンドやインキュベーション
施設も持ち、年間20件ほどの新企業を育てている。特に生存率の向上を重視し、多くの起業希望者をふるいにかけ、確実な
ものを選んでいくとともに、徹底した事業計画の練り上げ、総合的な起業家教育をすすめている。また、近年は大学や教育
機関、自治体との連携を重視し、研究開発成果の事業化にも対応してきている。一方シャノンのBIC(イノベーションセン
ター)はサイエンスパークに立地していることもあって、成長可能性のあるハイテク型の事業化を重視し、これをHPSUハイ
ポテンシャルスタートアップと位置づけている。これらに対し、「ベンチャーデベロップメントプロセス」と称する、施設、
資金を含む総合的段階的な支援を実施して、成果をあげてきている。詳しくは、中小企業総合事業団調査・国際部編[2003]
22.DG Regional Policy European Commission [2002]
6
信金中金月報 2004.12
ション推進のための政策立案と行動への機運
た(注)23。このなかには、イノベーション推進の
を高めている、構造基金活用の具体的な方向
ための事業への30万から300万ユーロの補助金
のうちにイノベーション推進の位置づけが明
供給、公私部門協力と中小企業の参加、私的
確となってきている、公的・民間資金の効果
部門の資金提供の期待といったことも記され
的な活用がすすんでいるといった関連の効果
ている。これに応募してきた各地域からは、企
が確認される。もちろんイノベーションへの
業グループからのイノベーション実施計画、中
取組みにあたっては、クラスタープロジェク
小企業の情報コミュニケーション技術利用、サ
トやネットワーキングが各地ですすみ、これ
プライチェーンの統合などが示されていると
らをまとめる機関も設けられ、ネットワーク
いう(注)24。
の普遍的な効果、形式知暗黙知いずれもの経
欧州においてはこうしたRISの立案と実践が
済機会への応用普及、地域のイノベーション
すすむなかで、新たにポーター流の「クラス
をカタライズするシナジー発揮のための個人
ター論」が登場し、これと重なってきたので
間や諸機関の間の連携が展開しているとされ
ある(注)25。もちろん、地域イノベーションシス
る。さらに研究開発機関と地域の中小企業と
テムと地域クラスターとは同一の概念ではな
の連携の進展、地域イノベーションシステム
い。前者には企業と、知識開発・普及を業務
の内的結束の形成、各地域間の経験交流によ
とする機関との間の協力が主な内容となる。後
ってイノベーション支援諸手段の向上も図ら
者はあくまで「同一の地理的領域内における、
れている。今後は知識と無形の資産をいっそ
同一産業部門および周辺産業部門内での相互
う重視し、新たな政策手段の開発、企業家精
に依存した企業群の集中」を示すものである。
神を推進し、個々の企業に補助金を与えるの
単純には地域イノベーションシステムは地域
ではない真のビジネスサービスの向上と、市
クラスターと支援機関が組み合わさったもの
場参入の障壁除去をはかる必要があると結論
であり、関連支援産業を含めた地域の産業ク
づけられている。
ラスターに属する企業群、支援を提供する知
さらに翌年には、欧州委員会が公式のコミ
識機関、これらの活動主体間の相互作用によ
ュニケーションで上記の内容を確認し、地域
って構成されるということになる(注)26。一方で
政策においてRISの内容を全面的に実施すべく、
は欧州委員会地域総局のガイドにおいては、ク
政策的支援を各地域に対しおこなうと表明し
ラスターとは「多くは異業種間の工業企業お
(注)
23.European Commission [2001b]
24.European Commission [2002](中小企業総合研究機構訳編[2003]pp. 178-179)
25.厳密に言えば、OECDやEUの諸施策にあってはポーターの直接の影響よりも、M.J.エンライトやP.コークの記述の方が影
響を示している。クラスターの範囲や個別性確認の困難、一方でのクラスター政策のありようの多義性があるため、リンク
性・相互依存性や生産的ネットワークの性格に重きを置いた位置づけをしている。OECD [1999], European Commission [2002]
(中小企業総合研究機構[2002]
)等。さらにEU「白書」にあっては、ストーパーの議論から、ポーター流のクラスター論に
対し、相互信頼と産業的気風を重視する「産地」派(Asheimら)、企業間取引費用や柔軟な専門労働市場を重視する「カリ
フォルニア学派」
(Scottら)、知識習得過程の地域固着性を重視する「北欧学派」
(LundvallやJohnsonら)を対置している。
26.European Commission [2002](中小企業総合研究機構[2002]pp. 108-109)
特別寄稿論文
7
よび(または)サービス企業の集まりで、サ
拠点でもあり、鉄鋼業や造船業、機械工業の
プライチェーンなどを通じて連携し、同じ市
発展が著しかった。しかし英国重工業の衰退、
場条件の下にある。長期にわたって形成されて
交通の変化などによって地域の経済不振は20
(注)27
とし、ポーター以上に企業
きた企業集積」
世紀半ば以降顕著であり、スコットランドの
の集積と連携に重きを置いている。また、時に
行政機能がエジンバラに置かれたこともあっ
は「科学主導型(science-based)クラスター」
て、深刻な地盤沈下に陥った。1980年代半ば
(注)28
とも
と「伝統型(traditional)クラスター」
には、旧産炭地域であり工業地帯であったウ
区分される。そのように、RISとクラスター概
ェールズ南部、イングランド北東部、同北西
念をめぐっても理解は一様ではない。しかし、
部などと並んで、20%前後もの失業率を記録
各地域のレベルにおいては、以下でも見るよ
していた。このような「問題地域」の一つで
うに、クラスターアプローチにもとづくRIS地
あったのである。そしてこの地域はEU構造基
域イノベーション戦略の展開発展という流れ
金のObjective 2 援助地域に指定されている。
が着々とすすみつつあるのである。
西スコットランドのRISは1997年から98年に
かけて立案された。これは「西スコットラン
3.英国での地域問題と地域産業戦略
<1>―ストラスクライド地域とグラス
ゴー市の場合(注)29
ドを欧州でもっともイノベーティブな地域に
する」という目標を掲げ、
「イノベーティブカ
ルチャー」の視点を強調し、企業のイノベー
(1)スコットランドグラスゴーでの産業戦略
ション能力の強化とともに、高等教育機関等
の展開
との産学連携を重視している。そしてこの構
スコットランド南西部、グラスゴー市を中
想の下に、下記のSEや政府スコットランド省、
心とする地域はストラスクライド地方とも呼
地域の自治体、商工会議所、大学・教育機関
ばれ、地方行政を二層化した1975年から一時
等を巻き込んだRISチームを作り、イノベーシ
期は1州(Strathclyde Region)を構成してい
ョンカルチャープロジェクトを5地域で実施、
た。クライド川に沿い、古くからスコットラ
EUの資金を用いて地域企業の参加を促してき
ンドの中心として都市化の進んだ地域で、商
ている(注)30。
業都市であるとともに、水力動力や近くの炭
1982年に置かれたSDAスコットランド開発
田を背景に産業革命の担い手となった一大産
庁(注)31、のちのSEスコットランド企業庁は主
業地域でもあった。また海運、水運交通の大
に直接投資促進・企業誘致を行ってきた。
(注)
27.DG Regional Policy/DG Enterprise [1999]
28.European Commission [2002](中小企業総合研究機構訳編[2003]p. 139)
)
29.以下の記述は、特記したもののほか、筆者が加わった中小企業総合事業団の2002年11月調査、ならびに科研費基盤研究(B)
(1)による2003年9月調査(スコットランド)
、委任経理金による2004年9月調査(ウェストミッドランズ)における各インタ
ビューと現地訪問、資料収集に主にもとづくものである。中小企業総合事業団調査・交流部[2003]、三井編[2004]
30.Strathclyde European Partnershipでの説明(2002年11月)による。
31.正確には、SDAは1975年法で設置されたのであり、1980年法で再編されたとすべきものである。Lever & Moore [1986] pp.107108.
8
信金中金月報 2004.12
SDA/SEの働きかけによって米日系などの多く
が置かれ、分権的な運営がはかられるように
の電機・電子、情報系企業が立地し、スコッ
なった。
トランドは「シリコングレン」と化した。そ
れによって多くの雇用機会が生まれ、地域の
(2)SEGとJES共同経済戦略、クラスターア
経済の振興に貢献をしたことは間違いない。ま
プローチ
た、SDA/SEとして90年代前半まで、電機・電
グラスゴーにあっては、SEのグラスゴー
子工業などのサプライヤ中小企業の能力向上
LECsにあたるScottish Enterprise Glasgow
と多国籍企業との取引関係強化を意図し、SDI
(SEG)に約135人が勤務し、年間6,200万ポン
サプライヤ開発イニシアチブなどを展開して、
ドの予算を動かしている。SEGの理事会には
ローカルサプライヤベースの発展に熱心に取
市議会、グラスゴー大学、スコットランド労
り組んでいた(注)32。
働組合会議、スコットランド電力、地元企業
90年代からはSEは「企業誘致」より「内発
など幅広い関係者が参加し、地域産業界およ
的発展」を重視し、自立的に成長発展できる
び自治体との関係がつよまっていることを示
地域の産業の形成振興に力を入れ、スコット
している。従来対立的であったグラスゴー市
ランド内の各地域ごとにSE自身の運営体制と
とSEG企業庁グラスゴー支庁とは共同し、
「JES
役割分担を分けていくようになった。加えて
(注)33
を1999年にまと
グラスゴー共同経済戦略」
ブレア政権のスコットランド自治法により1999
めた。JESはRISの経験を踏まえながら、その
年にスコットランド議会が置かれ、自治政府
名の通り関係諸方面の知恵と力を借り、多く
が誕生すると、SEは自治政府の施策実働部隊
の調査や議論を重ね、連携下に立案されたこ
という位置づけに移行し、自治政府の予算と
とが特徴である。JESはSWOT分析によりグラ
監督下に活動することになった。SEの組織も
スゴー経済の到達点と強み、問題点を分析し、
改変され、企業誘致を専門とするScottish
現在が大きな転換点であることを指摘し、今
Development International スコットランド国
後の戦略目標を明らかにしている。それは、1)
際開発庁(Locate in Scotland、グラスゴーが
持続可能な経済成長、2)雇用の創出、3)社
本部)、Scottish Enterprise スコットランド企
会的排除(social exclusion)との戦い、4)競
業庁、Highlands and Islands Enterprise スコ
争力ある人材の開発、5)グラスゴーの全国
ットランド高地・離島企業庁の三組織となり、
的・国際的競争力の強化という5つの目標であ
SEおよびHIEのもとにはそれぞれ、12と10の
る。これにもとづき、優先順位をつけながら、
地域企業局Local Enterprise Companies(LECs)
各課題ごとに具体的な行動と政策展開を関係
(注)
32.そうした動向に関して詳しくは、三井[1995]
、同編[1999]
、参照。なお、1993年までに433の外資系企業の工場が新規立
地し、このうち1/4は電子・電機系、ほぼ同数が機械系の業種とされる。出資元の構成では北米系企業が49%、残りは欧州系
が主、日本など極東系も10%となる。Scottish Enterprise資料による。
33.Glasgow’s Renewed Prosperity a Joint Economic Strategy for Galsgow [1999]
特別寄稿論文
9
諸機関・団体等の責務として詳細に示してい
を担っているのが、SEGなどと連携した大学
る。また、戦略実践の中での成果を示す指標と
とサイエンスパークの動きである。80年代以
して、GDP成長率年3%、失業率の12.8%から
来の保守党政権による教育予算抑制と大学の
9%までの削減、企業数の年2%の増加などの
「自立化」「多様化」「自前の財源確保」要請、
具体的な数値をあげているのも特徴的である。
教育機関同士の競争強化は、大学の姿勢を変
JESにおいては、イノベーティブないしクリ
えさせてきた。そうしたなかで、グラスゴー
エイティブな環境と企業づくり、キーインダ
に所在するストラスクライド大学(1964年設
ストリーの発展、内発的企業・中小企業の支
立)の経験は先進的である。同大学は政府の
援と発展といった課題を、地域再開発やイン
大学予算削減への対処、研究成果の事業化推
フラ整備、地域問題対策、雇用促進、教育と
進、SDAの活動との連携を意図し、また地元
訓練などの課題と結びつけて具体的にとりあ
経済界とのつながりを意識し、1984年に大学
げている。特に、ナショナルサイエンスセン
研究・コンサルティングオフィス(Research
ター建設(注)34、パシフィックキーなどの河畔再
& Consultancy Office)を設立した。そして産学
開発、メディアセンター建設、学習センター
連携と企業経営に豊富な経験を持つH.トムソ
建設(32か所に建設し、知的労働能力の向上
ン氏が20年近く所長をつとめた。現在は25人
をめざす、カレドニアン大学が支援)
、M74道
のスタッフを擁する大機関で、外部研究資金
路拡伸、運河再開発、あとで触れるサイエン
の導入、知的財産管理とライセンシングなど
スパーク拡大建設などの開発事業と関連づけ
も担当するが、主には学内の研究者らの事業
ている。キーインダストリーの設定について
化、スピンアウトへの支援を担っている。
は必ずしも明示的ではないが、こうした環境
Business Ventures Groupを副学長を交えて組織
条件や地域開発、また産業集積の利点を前提
し、資金面・経営面、外部の出資者などとの
として、域外からの投資促進を含め、金融・
マッチングなどを含め、総合的な支援を個々
ビジネスサービス、技術関連型製造業、ソフ
のケースごとにおこない、相当の成功を収め
トウェアとICT、クリエイティブ産業・芸術と
てきた。事業化のオファーに対し、その技術
メディア、建設、健康と児童介護、観光・ホ
などを慎重に検討し、事業計画を作らせ、外
スピタリティ・レジャー、小売という8つの産
部の専門家も交えて審査し、OKが出たら総合
業が成長期待型として主にあげられている。
的な支援と知的財産のライセンス供与、関係
契約締結を実施する。資金面では大学自体の
(3)新産業創造と大学の事業化・起業推進
こうした地域での新産業創造に重要な役割
出資もおこなっている。経営面では大学内のハ
ンターセンター(MOTなど14のコースを持つ)
(注)34.サイエンスセンターは、Millennium ProjectとEU地域開発基金の援助によって2000年に建設された、科学振興と教育、啓
蒙、さらに研究機関等との連携をめざした総合学習と展示施設で、パシフィックキーに建てられ、クライド河畔のウォータ
ーフロント再開発の一環でもある。下記のバーミンガムのMillennium Pointも類似の施設である。
10
信金中金月報 2004.12
に置かれたビジネスコースを積極利用し、経営
業化のルートを積極的に開発している(注)36。ま
学部関係者の助言や指導もおこなわれる(注)35。
たSEと協力し、1983年に大学ケルビンキャン
大学が1990年に設立したストラスクライド大
パス内にWSSP西スコットランドサイエンスパ
学インキュベータ株式会社が運営するインキ
ークを設置した。このころは各大学が競ってサ
ュベーション施設も積極活用され、多くのス
イエンスパークを設けた時期でもある。WSSP
ピンアウト企業がここからスタートしている。
はSEが建設・所有・管理する施設で、必ずし
以下で見るように、40社近くのストラスクラ
も大学は深く関わっていないが、61エーカーの
イド大学発スピンアウト企業には数々の成功
土地にICT、電子、バイオテクノロジー、医療
例があり、それによって大学も配当、特許ラ
保健関係などの企業27社・のべ900人がいる。
イセンシング料(総額で3,600万ポンド)
、株や
WSSPに入居している企業には、上記のストラ
特許の売却益を稼いでいる。学内の研究者だ
スクライド大学からのスピンアウトも多い。
けではなく、学生の起業への関心を高め、開
WSSPの運営には、両大学が共同で設立した産
業希望にも積極的に応じ、指導や研修を提供
学連携、知的財産管理、BICとの連携をめざす
している。スコットランドの大学自体が近年、
Targeting Technology Ltd. 社も加わっている。
大学間の連携で、ファンド設立、産学連携、イ
このような大学等の積極的な姿勢、長期に
ンキュベーションの推進とともに学生らの起
わたる技術移転と事業化推進、起業支援、さ
業支援を進めている。
らにサイエンスパークやインキュベータ整備
500年以上の伝統を誇るグラスゴー大学も
によって、西スコットランドにおけるクラス
3,500人の研究者を抱え、世界の最高水準のバ
タープロジェクトも実行段階を迎えている。
イオケミカル、薬学、医科学、心理学等の研
2002年にはJESの見直しと並行し、全スコット
究成果を誇っており、事業化へのシーズは山
ランド内のパイロットクラスターとして、バイ
積している。そこで、研究・教育・事業化は
オテクノロジー、食品、半導体があげられ、さ
等価で大学を支え合っているという見地から、
らに「ニューウェーブ」として、光電子工学、
産学連携と事業化支援のための独自のResearch
クリエイティブ産業、観光、林産資源石油・
& Enterprise オフィスを研究助成室に設け、外
ガスのエネルギー産業関係がターゲットとさ
部の研究資金の獲得とともに、委託研究、ライ
れた(注)37。2003年からは、SEの役割明確化と
センシング、スピンアウトなどの技術移転と事
クラスターアプローチの強化がはかられ(注)38、
(注)35.事例でも見るように、研究者は必ずしも企業経営にたけているとは限らず、外部の人材を経営トップに招く例も少なくな
い。大学としても外部の経営専門家の紹介や、場合によっては重役の推薦をおこなっている。
36.ただし、グラスゴー大学のR&Eオフィスは03年に改編された。
37.SEとしては、「クラスター」を顧客、サプライヤ、支援組織などとのネットワークおよび連携によって発揮される経済競
争力の優位性と位置づけ、産業集積や研究集積、市場の将来性などから、競争優位をもたらしうる産業を検討している。
Scottish Enterprise GlasgowのK. Kane経済戦略パートナーシップ部門長の資料による(2002年11月)
。
38.従来、SEは各地域ごとに分権化する傾向にあったが、スコットランド自治政府が発足し、「A smart, successful Scotland」
といった経済プログラムのもとでSEを動かしていくのに伴い、地域支庁の再編とScottish Enterprise National Networkのもと
への統合の強化が図られた。
特別寄稿論文
11
大学、研究機関との連携強化、ブリッジ機関
産業クラスターの新たな発展が意識されてい
としての「中間技術研究所」設置(2002)〈3
ることも興味深い。サプライヤベースの力に
つのバーチャル研究所(産学プロジェクト)の
注目しているためでもある。
設立 ライフサイエンス(ダンディー)
、新エ
バイオテクノロジーに関しては、すでに90
ネルギー(アバディーン)
、テクノロジー・メ
年代半ばから事業化が進展し、42社のバイオ
ディア(グラスゴー)〉、技術開発のソース収
サイエンス中核企業が生まれ、4,000人の雇用
集(世界規模)、ベストプラクティスの検出、
を創出、近年の1年半の間だけで4,500万ポンド
ロードマップづくり、IPRの価値保護が取り組
の民間新投資がなされている。ソフトウェア
まれた。グラスゴー地域に関しては、ナショ
産業に関しては、600社の企業と3,500人のソフ
ナル(スコットランド)レベルとグラスゴー
ト技術者が生まれ、2億5,000万ポンドの売り上
レベルとの調整、グラスゴー独自の政策点検
げを実現、その多くは輸出されている。光電
評価と課題の検討・戦略化、人的資源、コミ
子工学では、30社740人が働き、世界的に注目
ュニティ問題を軸としたローカルパートナー
される企業が現れている。これらの立地に、
シップの強化もすすめられている。
WSSPや今後建設されるサイエンスパークが大
グラスゴーの場合、歴史的地理的環境条件
いに貢献するものと、SEGでは期待している。
や地域開発状況、産業集積の利点を前提とし
グラスゴーにおいて特徴的なのは、大学か
て、域外からの投資を含め、キーインダスト
らのスピンアウト・新起業が相当数生まれ、そ
リーとしては金融・ビジネスサービス、技術
れなりの成果をあげていること、これに対す
関連型製造業、ソフトウェアとICT、クリエイ
る大学やSEGなどの支援の効果が見られ、一
ティブ産業・芸術とメディア、建設、健康と
方では前述のように大学などに相当のリター
児童介護、観光・ホスピタリティ・レジャー、
ンをもたらし、事業化の成果の取得が可能に
小売という8つの産業が成長期待型として主に
なっていることである。他方では、ハイテク
あげられてきた。イノベーション性の強い、ソ
分野の開発成果の事業化製品化により、域内
フトウェア、光電子工学、バイオテクノロジ
でのサプライヤベースの活用、発注拡大とい
ーはグラスゴー周辺での「テクノロジー戦略」
った波及効果を生んでいることである(注)39。80
の対象として、大学・研究機関、サイエンス
年代からの外資企業誘致と域内サプライヤの
パークなどを巻き込むかたちで事業化が推進
能力向上、取引関係拡大とサプライヤベース
されている。大学の積極的な姿勢と経験蓄積
の強化というSEなどの政策が、こうした面で
に照らしても、その環境は世界的水準で整っ
成果をもたらしていると見ることもできよう。
てきているものと言える。また、食品や観光
ただしまた、大学等で優れた研究開発成果を
など、ハイテクに限らず、在来的と思われる
あげ、起業してその事業化を自ら担ってきた
(注)
39.この起業事例については、三井[2004]で個々紹介した。
12
信金中金月報 2004.12
「科学者企業家」が成功を収めている例は少な
Dudley、Sandwell、Solihull、Walsallの各市
い。むしろさまざまな曲折と試行錯誤ののち、
(ブラックカントリーを称す)
と、
Warwickshire、
外部から経営の専門家を招き、主な経営をゆ
Worcestershire、Shropshire、Staffordshire、
だねるというかたちがかなり見られる。そう
Herefordshireの各州からなる地域であり、英
した人材を集めやすい、関係を築きやすいこ
国第二位の規模である100万大都市バーミンガ
とも、グラスゴーなどの特徴でもあろう。
ム、工業都市コベントリー(人口30万人)を
中心に、自動車道路M5とM6に沿い、総面積
4.英国での地域問題と地域産業戦略
<2>―ウェストミッドランズ地域とバ
ーミンガム市の場合
2
約13,000km 、人口約530万人をかかえる広大
な地域を示すことになる。
この地方は広い農村部を擁するとともに、周
(1)AWMとウェストミッドランズの産業振
辺の炭田や鉄鉱山、運河等の水運交通の便な
興・都市再生
どにより産業革命の中心地をなし、鉄鋼業、金
イングランド中部のウェストミッドランズ
属工業、窯業、宝飾品、のちには繊維、自動
はかつて「ブラックカントリー」とも呼ばれ、
車、電機、化学、航空機工業などが栄え、人
産業革命以来の英国工業の中心地の一つであ
口集中をもたらした。第二次大戦期には軍需
った。従来この地域の厳密な区分はなかった
工業の中心地として激しい爆撃を受け、大き
が、一時期バーミンガムとその周辺が
な痛手を被った。戦後、英国産業の中心地と
Warwickshireから分離され、一つの州として
しての地位を守ってきたものの、次第に衰退
Westmidlandsを称した。その後バーミンガム
の一途をたどり、失業問題、複雑な人種構成
と周辺都市がメトロポリタンカウンティを構
による社会問題などが深刻化し(注)40、80年代以
成した時期もあったが、サッチャー政権によ
来その復活が英国経済全体の課題となってき
ってこれは廃止された。97年選挙で政権復帰
た。自動車メーカーRover(一時期はBMW傘
した労働党ブレア政権は地方分権化と地域開
下)、英国Ford、Peugeot(元英国クライスラ
発政策を重視し、98年に地方開発庁法を立法
ー)
、Jaguar(現在は米国Fordの子会社)など
化、翌年に8つのRDA(Regional Development
の巨大企業の工場が集まるため、産業の国際
Agency)をイングランド各地方においた。そ
的再編成や企業合理化のあおりを被る地域で
の一つの担当地域として新たにウェストミッ
もあった(注)41。
ドランズという呼称が登場することになった。
ウェストミッドランズは従来より、EU構造
これは中心のBirmingham市、メトロポリタン
基金のObjective 2 およびObjective 5b 指定を
エリアを構成するCoventry、Wolverhampton、
受けてきた。労働人口230万人を擁するこの地
(注)
40.1980∼83年の間だけで、この地方の雇用は16%も減少した。Hausner & et al. [1987] p.220.
41.ウェストミッドランズにおける産業衰退と自動車多国籍企業の関係について、小林世治[2003]第6章
特別寄稿論文
13
域で、英国経済の不振・空洞化とともに一時
ランズの各自治体は1998年に地方評議会を結
は12.1%の失業率を記録し、産業衰退地域の色
成し、各自治体議員代表らが集まってWest
彩は濃かった。地域の再活性化の必要は繰り
Midlands Regional Assembly(以下、WMRA
返し叫ばれ、各種施策や機関設立の「実験の
と略)を称している(注)45(これとは別に、各自
(注)42
とも評されながらも、しくみの混乱も
地」
治体は行政としての協議会WMLGAを持って
あって容易に成果を見なかったのである。80
いる)。これには自治体議員(69名)のほか、
年代には税制面や規制面での優遇措置を伴う
MEP欧州議会議員(8名)や大学関係を含む産
エンタープライズゾーンを設けるなどの政府
業界(16名)
、さらに地域のボランタリー組織、
や自治体の誘致政策により、日本からの工場
労働組合、環境団体、各宗教などの関係者(18
進出もすすみ、コベントリーやテルフォード
名)も参加している。このようなかたちで、地
周辺に電機・電子、機械系の企業が相当数立
元からのWMRAの設置、中央政府予算による
地したが、近年は撤退も目立っている(注)43。こ
AWMの設置という二つの主体が揃い、両者の
のほか、この地はイングランド中部の交通の
連携で広域的な地域政策への取組みの体制が
要衝でもあり、多くの自動車道路が交わると
整ったのである。
ともに、バーミンガム空港および隣接するNEC
後述のアストン大学サイエンスパーク内に
国立国際展示場(1975年竣工)の存在は重要
本部ビルを構えたAWMは総員210人、年間2億
な利便、アトラクションでもある。
2千万ポンド(2002/03年)もの大きな予算と
RDAは「持続可能な経済発展を通じ、イン
広範な権限を持っている。1998年法によって
グランド各地方を変革する」という目標のも
定められた上記のミッションに加え、AWMと
とに、6つのミッションを託されている。地域
しては地域を代弁し、資金を集め、地域の存
の経済発展と再生、企業の効率と投資、競争
在とイメージを高める「地域のチャンピオン」
、
力の向上、雇用の推進、スキルの発展と応用
各組織間の連携を促進する「地域のコーディ
の推進、持続可能な発展の達成への貢献であ
ネータ」
、資金供給並びに経済戦略の立案と各
る(注)44。ウェストミッドランズに置かれたRDA
プログラムの間のシナジーをはかり、学習・
はAdvantage West Midlandsと称し(以下AWM
熟練会議やSBS中小企業サービスと地域の企
と略)
、この地方の総合的な開発と経済振興の
業の間のマッチング、運用を推進する「地域
政策立案と実施に取り組むことになった。こ
のカタリスト」という3つの役割を示している。
れに対応し、分権化に備え、ウェストミッド
組織としては機動性を旨とし、プロジェクト
(注)
42.Hausner [1987] p.236.
43.英国に工場進出した日本の自動車メーカーはいずれもウェストミッドランズを避け、日産はサンダーランド(北東部タイ
ンアンドウェア)、ホンダはスウィンドン(ウィルシャー)、トヨタはダービーシャー(イーストミッドランズ)といった、
自動車工業の集積にかかわりの乏しい地域を選んでいる。
44.RDAは、Small Business Service-RDA-Business Linkという中小企業政策の実施体制の一環も担っている。詳しくは、三井
[2004]
45.WMRAは以前にはWest Midlands Regional Chamber(WMRC)と称していた。
14
信金中金月報 2004.12
ごとのチーム方式を組み、ハードな開発事業
や建設よりはソフトな企業間連携、経営改善、
(2)ウェストミッドランズ経済戦略の立案実施
ウェストミッドランズでのRIS立案は当時の
教育学習、情報提供や意見交換等にその活動
政府ウェストミッドランド支庁、各自治体、商
の中心がある。SEなどとは若干違い、企業誘
工会議所(注)47、大学等の参加で1996年に実施さ
致や産業用地開発、インフラ整備といった明
れた。ここでもイノベーティブな企業の増加、
白具体的な使命を持つものではなく、また産
企業や大学、支援機関等のイノベーション連
業化都市化の進んだ地域として、実際の地域
携の推進、クラスターアプローチでのネット
整備や建設、教育などの事業は既存自治体や
ワーク形成、イノベーティブカルチャー向上
教育機関などが担ってきているだけに、AWM
が主な課題であるが、高度にイノベーティブ
の担うべき役割には抽象的かつ不確定な要素
な産業・企業の創出とともに、既存の伝統的
がありうる。そのためまた、諸機関諸方面を
な産業のうちでも新技術や新スキルの応用を
結びつけ、クラスター戦略推進の中心となる
推進するという「デュアルアプローチ」をと
可能性も大きいと見ることもできよう。
っていることが特徴となっている。そして、製
AWMと諸方面との連携はつねに重要課題で
あり、AWM理事会(政府国務担当相の任命)
にも自治体や、労組、地元経済界など地域の
造業のデザイン開発やICT利用、新素材利用な
どを重視している(注)48。
1999年10月、AWMが発足するに伴い、
諸関係者多数が名を連ねている。しかし、
WMRAや各自治体等の関係者、大学・教育機
WMRAとAWMは互いに独立性を守ることを原
関関係者などを幅広く集め、WMESウェスト
則にしており、チェック機能を果たしあって
ミッドランズ経済戦略があらためてまとめら
いる。WMRAは2003年には地域計画機関の地
れた。これは、
「持続可能な未来」をスローガ
位を取得し、AWMの「地域経済戦略」新版作
ンに、1.幅広いダイナミックなビジネスベー
成に直接かかわった(注)46。WMRAとして独自
スの構築、2.学習とスキルの奨励、3.成長
の戦略立案と実施体制を確保し、課題毎のパ
への条件形成、4.コミュニティの再活性化と
ートナーシップを設けていくとともに、AWM
いう4つの柱を掲げている(注)49。
などの施策の実効性に関する精査評価プロジ
第一の柱はハイテククラスターやICT活用に
ェクトも開始している。また、AWMスタッフ
よる、イノベーションを通じた地域企業の競
の多くは民間など諸方面から集められており、
争力の発揮、機械工業の新デザイン応用やク
中央政府に直結する機関ではあるが、「役所」
リエイティブ産業等での発展、域外からの投
の雰囲気は薄い。
資、サプライチェーンの強化などを通じた、未
(注)
46.WMRA [2003]
47.バーミンガム商工会議所は2001年にBusiness Linkと一体化している。
48.European Commission [2000]; DG Regional Policy European Commission [2002]. WMESはRISの延長上にあると位置づけられて
いる。
49.AWM [1999]
特別寄稿論文
15
来の需要に見合う既存および新産業の発展に
AWMが主体となって実行していくことを示し
よって構成される。第二の柱は今後10年に企
ているのである。
業の直面する挑戦にこたえうる高熟練労働力
ウェストミッドランズではまたAWMのスタ
の育成、e -ラーンニングなどを駆使した生涯教
ートにあわせ、産業クラスターの分析と戦略
育と能力向上の推進を主な内容とし、教育機
立案が大規模に実施された。DTIの調査研究に
関や企業などでの目標が示されている。第三
より、この地方の産業構造の特徴が検討され、
の柱では、域内外の交通手段の改善、住宅改
SIC標準産業分類ベースで以下の9つの業種が
善、RPG地域計画指針の見直し等による適切
この地域の現行産業クラスターとして示され
な土地利用といった内容が含まれる。第四の
た。ゴム・タイヤ、プラスチック、自動車、金
柱では、RZ再開発(再生)地域など貧困と社
属加工業、産業機器、セラミックス、農業と
会的排除に直面した地域への資源投下による
農産物、環境関連、アンティークである。こ
経済的およびコミュニティ的活動への人々の
れらの抽出については、統計的基準と分類に
参加推進、新思考を活用した公・私・ボラン
依存しすぎている(注)50、既存主要業種を確認し
タリー・コミュニティ各セクターの連携推進
たのみでクラスター性を踏まえていないとい
による地域の全面的な発展、すべての人々の
う批判もあるが、この地方の今後の産業振興
福祉向上といった課題が挙げられる。このよ
のために共有さるべき基本的な認識を示した
うに、WMESはきわめて幅広い課題を包含し、
ものであった。そしてWMESの実行にあわせ、
これを諸方面のパートナーシップのもとで
新たな産業クラスターとして、既存新規あわ
図表 WMESウェストミッドランズ経済戦略における3つの戦略対象の関係
Needs Meets
Opportunities
70%
AWM
Funding
CLUSTERS
REGENERATION
ZONES
Technology
Transfer & New Firms International
Competitiveness
HIGH
TECHNOLOGY
CORRIDORS
Modernisation & Diversification
(出所)AWM の資料(2002)
(注)
50.この準拠データには、3人以下規模企業も自営業も含まれていない欠陥があるとも指摘されている。
16
信金中金月報 2004.12
せ10の業種があげられた(注)51。「既存」産業と
ハイテク企業の発展に向けた対象地域として
しては輸送用機器技術、建設関連技術、食品・
設定されたもので、大学などの存在によって
飲料、観光・レジャー、高付加価値消費財、
ハイテク、高付加価値企業誘致や発展のポテ
「成長過程」として専門職業サービス、ICT情
ンシャルを持っていること、自動車工業への
報通信技術、環境技術、
「創生期・覚醒期」と
依存度が高く、サプライヤ企業が多く立地し
して教育・娯楽関連インタラクティブメディ
ていることが特徴である。c)クラスターは、
ア、医療技術である。
AWMの追求してきたターゲットセクター振興
2001年には60項目の「Agenda for Action行
の新たな発展である(注)52。クラスターの展開を
動課題」がAWMおよびWMRAによって発表さ
うながすために、既存の構造の段階的発展を
れ、10年間で総額約777億ポンドの予算措置を
期する、クラスター発展の多様なかたちを前
含め、政府の公式承認を受けた。予算の約30%
提に、部門別政策からクラスター的視点への
が中央政府から、2/3近くが各自治体から支出
広がりを図ることが求められる。
される。この行動課題では、a)RZ再開発地
このようなWMESの実施は21世紀を迎えて
域、b)ハイテクコリドー推進、c)クラスタ
本格化したが、WMESの新版がAWMを中心に
ー形成発展という3つの主題を、ウェストミッ
2004年にまとめられた(注)53。この新WMESは
ドランズの地域構成と地域開発に結びつける
2004年から2010年を対象期間とし、行動計画
かたちで、面的に連関させている。クラスタ
も含み、その前半、2005年度までに1,000億ポ
ー形成発展が全域的な課題であるとすれば、a)
ンドの公的財源を充てることになっている。こ
再開発問題の対象地域はバーミンガムメトロ
のうち経済開発と再生にあてられる中心予算
ポリタンエリアのインナーシティゾーンや、西
は200億ポンド、AWM自身の予算は10億ポン
部周辺地域に広がっており、6地域、計190万
ド、SBS関係やEU援助地域関係が10億ポンド
人の人口と深刻な失業問題を抱えている。こ
となっている。
れらの地域に対し、AWMが重点的に資金を投
新しいWMESの基本的なスタンスや目標、
下し、対象地域の公私各部門やボランティア
施策の構成は変わりないが、以下のような点
運動などが参加した「パートナーシップ委員
が特徴的である。第三の柱・成長基盤づくり
会」と連携をし、各地域のニーズに応じた多
で、交通網・インフラ等整備がいっそう強調
面的な活動を展開する計画である。
されている。第二の柱・学習とスキルの地域
b)ハイテクコリドーは、特定クラスターと
で、スキルギャップをとりあげるとともに、
(注)
51.以下、AWC/ WMRC [2001]、による。
52.AWMの「クラスター」の位置づけは、産業分類のみではなく、また特定技術や最終製品にかかわる企業群に限らず、サプ
ライチェーンリンケージや専門教育機関、金融、研究、職業訓練インフラなどに及ぶ、製造からサービスの多様な業種企業
群の集合であり、地域内における企業同士のリンケージないし共同性と確認される。しかしこれが「ハイテク」と区別され
たことは、WMES策定時とのズレを示して興味深い。
53.AWM [2004]
特別寄稿論文
17
enterprise cultureを明記している。第四の柱・
一方でウェストミッドランズRISの新版も同
コミュニティの再生では「社会的排除」
(social
時に発表された(注)55。これはRIS、RIS+の続編
exclusion)の表現がなくなり、犯罪防止・治
という性格を持つが、もはやEU構造基金の支
安の向上やsocial enterpriseの奨励が強調され
援はない。そして実質的にはAWMの地域イノ
ている。そして、住民参加の観点とともに「地
ベーション分野での指針という性格になって
域イメージの向上・売り込み」が重視される。
いる。これは2002年における見直しを経たも
また、NHS国民保健サービスの果たしうる役
ので、民間参加の強化とサプライサイドを重
割に言及されており、この地域での雇用や調
視した戦略であり、かつ「明日の市場」を展
達の規模、地域再生への貢献が期待されるも
望して新技術・知識経済の必要性を前提とす
のと位置づけられる。
るという点で、より「未来志向」的になって
さらに、新戦略においては3つの主題の間の
いる。そして知的資産・資金・インキュベー
空間的な関係のみならず、戦略的な連携性と
タ・用地・設備等の「資源開発」、高等教育、
シナジー性も強調される。クラスターとハイ
研究開発、企業間知識移転等の「知識開発」、
テクコリドーの間では、後者が前者のうちの
企業の経営力向上、企業家精神推進、学生キ
萌芽的クラスターの事業機会となること、ハ
ャリア指導、専門サービスの質の向上等の「企
イテクコリドーは再開発地域に直接の貢献を
業開発」
、エンドユーザーへのかかわり(提供
なすこと、クラスターと再開発地域の間では
サービスの向上)といった各課題が示されて
後者が前者の地域的展開を含むこと、という
いる。
位置づけである。
こうした新たな政策立案のうえに、ウェス
新WMESは数値目標を明確に示した。各
トミッドランズでのビジネスクラスターも新
ビジネスクラスターの生産性上昇率目標、
たな段階を迎えた。13のクラスタープロジェ
雇用構成の変化、失業率の低下目標、no
クトそれぞれに関し3年計画を作成、取組みの
qualifications(卒業資格なし)成人減少の目
方向、方法、実施体制、予算措置などを明文
標、各ハイテクコリドーの雇用や粗付加価値
化してきている。この立案と実行については、
増加目標などである。また、
「持続性」へのア
Enterprise Board、Innovation and Technology
セスメントを導入し、政府のとりあげる持続
Council、Regional Skills Partnershipといった
可能な成長(注)54の4つの視点を取り入れた「four
諸連携組織、大学や高等教育機関、産業団体、
quadrants」モデルを用いて、経済性、環境性、
企業等が参加し、これらの代表によってチェ
社会性、自然資源性の各進捗状況とその影響、
アグループを構成するとともに、民間企業の
持続性を評価している。
出身者によるCOGを設け、クラスターアプロ
(注)54.ブレア政権は1999年5月に、「英国の持続可能な発展のための戦略」
(A strategy for sustainable development for the United
Kingdom)を発表し、経済発展と社会性・環境性の両立を重視する視点を打ち出した。
55.AWM [2004]
18
信金中金月報 2004.12
ーチが市場ニーズ主導、民間企業主導となる
Growth Fundという基金設置のほか、イベン
ことを担保しようとしている。そうしたなか
トや意見交換が主である。
で、既存産業に対する地域産業政策の色彩が
濃くなっている一方で、レール製造業に具体
(3)大学の事業化・産学連携と地域貢献活動
的な事業プランが出てきている、建設業クラ
ウェストミッドランズには大学や高等教育
スターに地元小企業などが基礎工事分野で参
機関の数も多い。大学は17もあり、計27万人
加し、新素材メーカーも加わるなどの発展が
近くが学んでいる。これらの大学等に関連し
見られるものの、まだサクセスストーリーは
て、サイエンスパークが建設されたのもこの
少ない。またハイテクコリドーについては特
地 域 の 特 徴 で あ る 。 Aston Science Park、
にM5道路沿いでの医療工学分野の展開が当面
Birmingham Research Park、Coventry University
期待されているが、その起爆剤としてはNHS
Technology Park、Staffordshire Technology
医療センターの建設(Rover工場跡地)、バー
Park、University of Warwick Science Park、
ミンガム大学医学部病院の新展開などの可能
Wolverhampton Science Parkの6つが、UKSPA
性に依存しており、必ずしも地域の意思決定
英国サイエンスパーク協会のメンバーとなっ
と資源で推進可能なものと構想されていない。
ているサイエンスパークである。このうちバ
そうした意味で、新産業創造や既存産業の活性
ーミンガムの中心部にあるアストンサイエン
化としてのWMESとクラスターアプローチは
スパークはバーミンガム市の協力でアストン
ここでは本格的に始動しているとは言い難い。
大学(1895年設立、工業系応用科学が特徴)が
AWM自身はその成果として(注)56、2001∼02
1983年に建設し、EU地域政策の機関BICおよ
年の一年間で、2,873社を援助、406の新規開業
び関連施設を中心におき、またVenture Unitイ
を迎え、18,130人の雇用を創造、新たな職業資
ンキュベーション施設を設けてイノベーティ
格取得者を9,004人生み、外部の民間資金1億
ブな新企業創業を積極的に推進するとともに、
8,800万ポンドを誘致等と誇っている。さらに
のべ35万平方フィートの事業スペースを提供
2002∼03年での成果では、9,335社を援助、創
し、AWMのオフィス建物もこのなかに所在し
業ないし誘致企業数が170社、雇用の創出ない
ており、UKSPAの本部もある。サイエンスパ
し確保が13,416人、学習機会の提供が17,647人
ーク自体には約100社が立地する(注)57。
分、コミュニティないしボランタリーグルー
アストンサイエンスパークに隣接して、2000
プとして支援した事業が4,804と示している。
年にはMillennium Pointビルディングが建てら
ただし、クラスターやハイテクコリドー関係
れた。これは空き工場用地を利用し、WMES
ではまだ目に見える成果は乏しく、Advantage
にもとづく科学教育推進と地域学習のために
(注)
56.AWM [2002], [2003]
57.Aston Science Parkの広報資料による。
特別寄稿論文
19
設けられた大規模な公開施設で、
「国営宝くじ」
シングや民間からの研究委託、事業化への開
(National Lottery)の収益分配金があてられて
発とコンサルティングなどを実施している。こ
いる。内部には3-D・I-Maxシアターや科学体
れにより年間に400万ポンドの収入を得、多く
験施設などのほかに、オフィススペースもあ
の特許を提供するとともに、これまでに37社
り、バーミンガム市のクリエイティブ/メデ
のスピンアウトを実現してきている。またウ
ィア産業支援のための施設Birmingham
ォリック大学のウォリックベンチャーと共同
Interactionsも入居している。また、バーミン
でマーシアファンド(Mercia Fund)を1999年
ガム市内の第三の大学、UCEセントラルイン
に設立し、大学からのスピンアウト企業への
グランド大学(元バーミンガムシティポリテ
資金供給を行っている(注)58(Merciaはイングラ
クニック)のIT、コンピュータ、メディア教
ンド中部古王国の名称である)
。また、バーミ
育研究のためのテクノロジーイノベーション
ンガム大学の公共政策学部がRISの実施に伴う
センターもおかれている。UCEは技能分野の
RICO地域イノベーション・競争力調査所
教育の伝統とともに、各学部自体をカンパニ
(Regional Innovation and Competitiveness
ー化し、産学連携、事業化推進や地域学習、生
Observatory)の設置を引き受け、AWMと連
涯学習に熱心な大学として知られており、ア
携してRISおよびWMESの進展状況をモニター
ストン大学とともにバーミンガム市中心部の
し、プロジェクト実施を支援する機能を担っ
有力な知的インフラを形成している。
ている。
バーミンガム市郊外に広大なキャンパスを
さらにコベントリー市中心に位置するコベ
持つバーミンガム大学は、1900年創立で学生
ントリー大学は、歴史の古い専門学校が合同
総数2万人、研究スタッフ約2,000人を擁する、
して1970年に設立されたランチェスターポリ
この地域を代表する総合大学であるが、リサ
テクニックが前身であるが、元来から産業都
ーチパークの設置に加え、1986年設立のBRDL
市の大学という性格が濃く、特に自動車産業
バーミンガム研究開発会社を持つなど、研究
との結びつきが深い。ここにあってはコベン
成果の事業化や移転にも積極的に乗り出し、ま
トリー市との連携でテクノロジーパークを建
た民間企業との連携やコンサルティングにも
設するにあたり、CUE Ltd. コベントリー大学
力を入れている。BRDLには約20人のスタッフ
株式会社(Coventry University Enterprise Ltd.)
が従事しており、学内のRESリサーチ・エン
を1992年に設立した。CUE Ltd.は当初からテ
タープライズサービス、また起業家教育を行
クノロジーパークの運営のみならず多様な事
うビジネススクール内のアントレプレナーシ
業活動を展開し、コンサルティング、委託研
ップセンターと協力し、知的財産のライセン
究、事業化、貿易事業、社会教育・企業内教
(注)
58.University of Birmingham [2003]. さらにこの2大学のほか7大学を加え、2001年にマーシア企業研究所が設立された。これは
政府およびEUの支援による科学企業センターの一つで、企業家教育、技術移転、事業化モジュール開発、創業指導などを行
う支援機関である。Mercia Insitute of Enterprise [2002]
20
信金中金月報 2004.12
育、起業家育成、インキュベーション(パー
や少数民族の起業支援に系統的に取り組んで
ク内の施設におかれたテクノセンターはBICに
いる。
位置づけられている)
、さらにはイベントマネ
大学の対外的な活動は産学連携や事業化、起
ジメントや会議場貸出など実に多岐にわたっ
業支援などにとどまらない。バーミンガム大
ている。その相手としては、「BT、ジャガー
学において特徴的なのは、研究、教育、事業
から零細企業まで」
、あらゆるサービスと大学
化と並んで地域連携が主要なミッションとな
との連携機会を提供しているのである。これ
っていることである。同大学のビジョン第二
に伴いEUや政府、RDAレベルなどのさまざま
項は「本学は自らのスキルと知識を用い、そ
な施策の担当機関をCUE Ltd.は引き受け、多
の国際的名声を生かして、社会的文化的安寧
額の予算を動かし、総勢120人を擁する大組織
を推進し、また経済成長と再生化を支援する
となっている。代表的には2003年に発足した
ことにより、バーミンガムとウエストミッド
欧州規模のSAIL産学連携強化プロジェクトネ
(注)61
と記し、地域貢献をき
ランズに奉仕する」
ットワーク(注)59の担当受託機関となり、さまざ
わめて重視している。この見地にもとづき、前
まなイベントやツアーを実施してきている。
記のRESに地域連携の部門を置き、コミュニ
CUE Ltd.はこれらの事業によって大学の収入
ティプログラムをたて、学生の地域内ボラン
に毎年度250万ポンドを貢献している。
ティア活動支援から、地域での教育・学習活
CUE Ltd.の活動から起業した例は200社以上
動、さらに地域問題への研究プロジェクト実
にのぼると報告されており(注)60、中でもコベン
施や地域連携での問題解決調査・立案・実施
トリー大学の2人の学生が考案した新しい家庭
などにわたり積極的に対処している。先の
用煙探知機ファイアエンジェルは同社の支援
RICOの設置、クラスタープロジェクトへの主
で事業化に成功し、市場に受け入れられ、新
導的な参加もそうした大学の政策の一環でも
企業Sprue Aegis社として急成長を遂げている。
ある。
このサクセスストーリーはウェストミッドラ
このような大学の姿勢の理由には、地域連
ンズの注目の的となっている。その一方でコ
携活動がEUの構造基金、特に社会基金の補助
ベントリー大学としては、自動車工業や機械
金交付につながるものが多く、政府の支援も
金属工業などへのかかわりを重視していく必
含め、大学の収入源であることも否定できな
要もある。そのために、新デザインや新素材・
い。それのみならず、同大学の創立者が地元
新技術の応用を研究開発する部門を強化して
の企業家であり、長年にわたって地域密着的
きている。また、地域の特性を考慮し、女性
な姿勢を特徴としてきたこと、近年の域内人
(注)59.SAILネットワークの前身のSAILプログラムは2001年に始まっている。SAILはEUの「イノベーションと中小企業の参加推
進プログラム」にもとづき、RISの考え方を用い、イノベーティブな地域間の連携と産学連携、情報・知識の移転普及を推進
する目的をもち、EU域外も含めて14の地域が参加している。SAIL [2003]
60.Coventry University Enterprise Ltd. [2004]
61.Birmingham University [2002]
特別寄稿論文
21
口の多様化を大学のあり方に反映していく必
要が高まっていることもある。
地での地域産業戦略実践が多々見られる。
b)SEやRDAのような強力な主体・中核機関
バーミンガム大学の公共政策学部CURS都
の存在と財源・権限の集中が功を奏してい
市・地域研究センターは市郊外の公営住宅団
る。ただしそれは決して独走ではなく、自
地Castle Valeでの都市再生・居住環境整備の
治体等との密接な連携と共同作業のもとで
事業への関与、地域での教育活動を続けてき
すすんでいる。
た。Castle Valeは80年代非常に困難な問題地
c)地域の諸方面との連携・パートナーシップ
域化していたが、政府出資のHAT住宅行動財
の発揮があらゆる面で重視されている。た
団への所有権移管と全面的な改築、住民主体
だしその位置づけはあまりに多義的でもあ
の管理組織CVCHAの設立と多様な活動展開に
り(注)62、万能の特効薬のように扱われている
より、見違えるような良好な住宅地に変貌を
ことは問題もある。
遂げ、住民参加と各方面のパートナーシップ
d)地域・産業・企業・雇用・教育・生活・福
による都市再生の非常な成功例と見なされて
祉などにわたる総合的横断的な経済戦略提
いる。このような地域コミュニティの活性化
起が特徴で、決して狭い意味での産業振興
と住民主体の運動、自治体や民間企業等との
や経済活性化のみの取組みではない。元来
連携がこの地での経済戦略と産業活性化の今
地域政策の中から展開されたRISの性格を反
ひとつの目標でありまた原動力であることを
映しており、具体的な政策・プロジェクト立
見落としてはならない。
案と推進が諸方面にわたってすすんでいる。
e)各戦略設定やプロジェクトにおいても、
「科
5.まとめ
学主導」やハイテクに限定されない幅広い
このように、欧州や英国における事態がす
戦略産業がとりあげられ、また既存産業へ
ぐれて成果をあげていると断定するには早す
の配慮も多い。ウェストミッドランズの場
ぎるし、もちろん多くの矛盾や弱点を伴って
合など、ハイテクコリドーと区別されるビ
いることも否定できない。それでもなお、以
ジネスクラスターはむしろ既存産業の活性
下のようなことを教訓として導けるだろう。
化策であると見た方がよい。そこに新たな
a)知識主導型経済を前提とした、RIS地域イ
知識と技術を投入し、ステップアップと活
ノベーション戦略から「クラスター」政策
性化を図っていくのがRISの考え方であると
への展開と傾倒が顕著にすすんでおり、各
も言える。ただし、ここに見た各地域では
(注)62.言いかえれば、パートナーシップのうちには、政府と地方自治体、あるいは政府機関であるRDAと自治体や地域の諸主体
との関係、広域的な地域での各自治体等の間の関係、自治体等公的部門と民間部門との関係、とりわけ民間デベロッパーや
建設業との関係、さらに自治体等と地域住民、あるいはコミュニティ組織やボランタリー組織との関係などがみな含まれて
しまっている。産学連携というニュアンスもある。ちなみに、Comprehensive Community Programme(1974)をはじめ、コ
ミュニティレベルからの都市の再生(urban regeneration)と住民参加、パートナーシップ推進という考え方と政策自体は決
して新しいものではない。Lawless [1981]
22
信金中金月報 2004.12
製造業の将来への現実的な期待は実際には
別の「専門家」としての企業家、ひいては
乏しく、知識創造型のメディア・文化産業
これを供給できる企業家インフラが必要に
や情報産業、さらにビジネスサービス等へ
なっている。
の傾斜がつよい。
l)クラスタープロジェクト等を支える中小企
f)大学等の積極活用がとりくまれ、起業イン
業の参加、企業間連携が顕著にすすんでい
フラ整備とともに教育と研究・事業化の連
るとは言い難い。英国等ではそうした経験
携と十分な経験蓄積が多年に及んでいる。そ
があまりに乏しいのかも知れない。
こからのスピンアウト企業も多々ある。
m)研究開発や事業化のための資金不足、ハ
g)「社会的排除」などの地域問題・社会問題
イテク企業の金融難が各地で指摘されなが
と地域開発政策との連携・一体的取組みが
ら(注)63、EUや中央政府の予算、補助金の投
広まっている。経済・社会・環境・文化と
入が重視され、あるいは民間デベロッパー
いった諸要素にかかわる課題を総合的にと
や大手企業の投資誘導が依然重要な存在で
りあげてきている。
あり、地域の金融メカニズムが位置づけられ
h)わけても「学習地域」の視点が重視され、
ていない(注)64。中小企業向けの資金供給メカ
教育とスキル形成・人材育成、人的資本重
ニズムを支えるべき中小企業政策との連携
視という姿勢が共通のものになっている。そ
もはっきりしていない。一方ではグラスゴー
れは経済戦略とともに地域の社会問題や雇
での大学発企業の成長等に関し、民間ベンチ
用問題改善の鍵でもあり、コミュニティの
ャーキャピタルの積極的な関与も見られる。
活性化と分権化を担う住民主体の形成にも
n)地域問題、生活環境改善や生活の質向上は、
つながる。
地域学習や技能形成、知識創造と雇用機会
i)大学や教育機関が地域との連携を重視し、
拡大の面では連関しているが、直接的短期
「地域学習」や都市再生への支援を具体的に
的には経済戦略の全般的なスタンスや重点、
展開してきている。
優先順位との矛盾も生じうる。そのへんを
どう解決し、住民個々や各コミュニティの
その一方では、以下のような限界なり困難
要求と整合させていくのか、必ずしも明確
なりも見いだされる。
ではない。自治体とRDAなどとのパートナ
k)大学からの起業等にあっては、企業経営の
ーシップや分権化策だけでコンセンサスを
専門性があらためて求められ、研究者とは
得ていけるのか、はっきりはしていない。
(注)
63.DG Regional Policy European Commission [2002](中小企業総合研究機構訳編[2002]第6部)
64.本来RISの立案にあたっては、金融界からの参加が予定され、資金供給の方法が第一の検討課題としてあげられている。そ
もそもRISにおける「イノベーション」の概念自体が幅広く、公私各部門の協力による諸資源の効果的結合であり、経営上、
事業上、技術上、金融上の各要素(managerial, commercial, technical and financial factors)を含むものと位置づけられている
のである。DG Regional Policy [2000]. 前出の2001年コミュニケーションも私的部門の資金提供を期待している。European
Commission [2001b]. 現実にはこれが公的資金の活用に傾いているのは否定できない。
特別寄稿論文
23
これに対し日本では、知識主導社会化と東
後の新産業創造、クラスター活性化への貢献
アジア規模経済圏の実質化を展望しながらも、
の体制を築いてきている(注)66。域内でのヒト・
やはり「ものづくり」を基盤とする産業再生
モノに限らず、カネの循環を積極的に推進で
と活性化、発展方向を重視する必要があるだ
きる基盤のあることはもっと重視されてよい。
ろう。そうした意味での技術技能の蓄積、企
しかしまた、政策面行政面での縦割りや縄張
業間分業と連携システムの経験には依然多大
りを超え、地域政策・産業政策・企業政策・
なものがある。
「ハイテク」のみに傾斜する必
教育政策・雇用労働政策などの総合的戦略的
要もない(注)65。また、地域社会の衰退と「学習
な推進、幅広い課題を包括する地域戦略づく
地域」機能の回復の必要は高いものの、多く
り、諸方面および住民参加でのパートナーシ
の大学・教育機関や研究機関、公設試などの
ップ推進などは今後欠かせない視点でもある。
存在が大きな可能性を秘めている。さらに、信
そうした見地にあらためてたってこそ、地域
金などの地域金融機関の多年にわたる地域経
経済復活の可能性も開かれるだろう。
済とのかかわりがあり、地域の産業再生や今
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三井逸友編『地域インキュべーションと企業間ネットワーク推進の総合的研究 研究成果報告書』
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特別寄稿論文
25
リレーションシップバンキング再考
−米国の中小企業向け貸付テクノロジー−
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
青木 武
(キーワード)米国金融機関、リレーションシップバンキング、トランザクショナルバンキング、
コベナンツ、クレジットスコアリング
(視 点)
日本における「リレーションシップバンキング」の議論は、1980∼90年代のバブル期の反省
もあって、「過度に不動産担保に依存しない貸付」といった側面が奨励され過ぎているように
思われる。米国のリレーションシップバンキングは、「顧客との長期間にわたる関係に基づき
行う銀行業務」のことであり、必ずしも担保や保証の有無と結び付けて考えられているもので
はない。本稿では、米国におけるリレーションシップバンキングおよびその対極にあると見な
されているトランザクショナルバンキングを中小企業向け貸付を通して比較することにより、
今後の日本の中小企業向け貸付へのヒントを考察することとしたい。
(要 旨)
●
中小企業向け貸付テクノロジー(手法)の分類でいうと、トランザクショナル型としては、
財務諸表・コベナンツ型、アセット・ベース型、クレジットスコアリング型がある。一方、
リレーションシップ型は狭義にはキャラクター貸付のことを指す場合が多い。
●
米国では、トランザクショナル型は大銀行、リレーションシップ型は小銀行に適したビジネ
スモデルと言えるが、実際には零細銀行以外は両型を併用している場合が少なくない。
●
リレーションシップと担保の問題は本来まったく別の問題であり、担保および個人保証徴求
の重要性は日米とも変わりはない。
●
信用金庫においては、顧客層や顧客ニーズ、融資内容等VS金融機関の収益性・効率性とい
う観点から、顧客属性に応じたアプローチ方法の検討も含めて、リレーションシップバンキ
ング、トランザクショナルバンキングを上手く使い分けていく必要があるだろう。
26
信金中金月報 2004.12
さらに、資産サイドについては、いかにし
1.トランザクショナル型とリレーシ
ョンシップ型バンキングの概要
米国では、この10∼20年間、大銀行がもと
て中小企業向け貸付を効率的に、大量に行う
か、という大銀行的な観点から完成したのが
中小企業向けクレジットスコアリングである。
もと取引先としてきた大企業の直接金融化が
このような発想を元に出来上がった大銀行
進み、間接金融が主体の商業銀行はビジネス
的なコミュニティバンキングがトランザクシ
チャンスを失ってきた。さらに、大銀行が得
ョナル型のバンキングだといえる。
意としてきたトレーディング業務や発展途上
一方、小規模のコミュニティバンクは顧客
国向けの国際業務は収益のブレ、つまりリス
との長期的な関係に基づいた従来型のリレー
クが大きいという問題があった。
ションシップバンキングを続けている。
一方、古典的なコミュニティバンキングに
本稿では、米国の主に中小企業向け貸付に
目を向けると、かなり小規模なコミュニティ
おけるリレーションシップバンキングについ
バンクですら十分な収益を上げ続けている。
て、トランザクショナル型と対比することに
このため、現在では大銀行にとっても、コ
より改めて考察してみることとしたい。
ミュニティバンキングは魅力的なビジネスに
見えてきている。
(1)定義
米国のコミュニティバンキングの基本は、特
多様性を尊ぶ米国では、日本のように画一
に要求払い預金という低金利の預金を集め、中
的な定義を好むことは少なく、結果として「リ
小企業向けに貸付を行うことである。それを
レーションシップバンキング(または貸付)」
大銀行型のビジネスモデルにあてはめると、数
と言っても、必ずしも明確な定義があるわけ
多くの支店を設置したうえで規模を活かして
ではなく、言う人によって内容が異なると言
全国的にTVコマーシャルなどで広告を行うこ
っても良い程であるが、本稿においては次の
とにより、まずは要求払い預金を集めること
ような定義を目安としたい。
になる。このように、顧客からのアクセス拠
点を増やすと同時に、資金を投じてマーケテ
①リレーションシップバンキング(または貸付)
ィング活動を行うことは規模を活かす上で有
の学術的定義
効な戦略であり、これは銀行に限らず、シャ
米国金融学界の第一人者であるバーガー博
ンプーや食料品などの消費財メーカーなど大
士およびウデル教授の共著(Berger & Udell
きな会社であればすでに皆行ってきたことで
〔2002〕
、以下「B&U」という。
)によると、リ
ある。
レーションシップ貸付とは、
「銀行等が顧客で
(注)
1.本稿作成は、監督当局および米銀関係者等の多くのご協力がなければなしえなかったものである。この場をお借りして深く
感謝申し上げたい。
研 究
27
ある企業、そのオーナー経営者、およびその
いずれにしても、日本で考えられているよ
コミュニティとの長期間にわたる接触の中で
うな、
「担保・保証」に依存する、しない、と
様々な面から情報を入手し、その情報を元に
いう概念とは全く別の問題である。
企業への与信判断を行う貸付」であり、日本
の金融審議会のリレバン報告書の定義はこの
「貸付」を「バンキング」に置き換えたものに
近い。
③トランザクションバンキング(または貸付)
の学術的定義
先述のB&Uによると、財務諸比率やクレジ
ットスコアのような「ハード情報」に基づき
②リレーションシップバンキング(または貸
付)の実務的定義
与信判断を行う貸付をトランザクションベー
スの貸付と定義している。
銀行実務の世界では、リレーションシップ
バンキングと言った場合は、かなり広義にと
④トランザクションバンキング(または貸付)
らえられており、顧客との関係を深めること
の実務的定義
を重視したバンキングを漠然と指すことも多
トランザクションとはすなわち取引、典型
く、特に優良顧客に対して預金だけでなく投
的には売買のことであるので、証券業務のよ
信や保険、またはローン商品も売り込むこと
うな売買を基本とした銀行業務のスタイルを
により、顧客と銀行とのリレーションシップ
含めてトランザクショナルバンキングと呼ぶ
(関係)を多様化・複雑化させ、結果的に顧客
こともある。例えば、同じ住宅ローンでも、顧
が他の銀行等に移ることを億劫に思わせるよ
客とフェイストゥフェイスで面談を行い、銀
うな囲い込み戦略のことを指すことも多い。
行が1件1件個別に審査を行い実行し、その後
また、クレジットスコアリング等によらな
も銀行において管理回収を行うのがリレーシ
い従来型の中小企業向け貸付は実務的には「キ
ョンシップ型であるのに対し、インターネッ
ャラクター貸付」と呼ばれることも多い。キ
トを使って効率的に住宅ローンを集め、実行
ャラクター貸付とは、会社の財務諸表などの
後は回収権を含めて2次市場に売却し、売却益
数値とあわせて、またはそれ以上に、その経
を得るのがトランザクショナル型の住宅ロー
営者が信用できるかどうか、という銀行側の
ンビジネスと言える。ただし本稿のトランザ
定性的・主観的な判断に基づき行われる貸付
クショナル型は、中小企業向け貸付に限定し、
(これは主観的だから悪い、ということではな
財務諸表型、アセット・ベース型およびクレ
く、米国では確立されたバンキングモデル)の
ジットスコアリング型の貸付手法を中心に議
ことである。本稿ではより狭義のリレーショ
論する。
ンシップ貸付であるこのキャラクター貸付を
中心に議論する。
28
信金中金月報 2004.12
(2)トランザクショナル型の中小企業向け貸
付テクノロジー
【コベナンツを実務において利用する基準】
一方、実務的に言うと、与信額100万ドル
B&Uによると、トランザクショナル型の中
(約1.1億円(注)2)以上であれば、銀行等は少な
小企業向け貸付テクノロジー(手法)には、①
くとも公認会計士のレビューを求めることが
財務諸表型、②アセット・ベース貸付型およ
普通であり、よってこのコベナンツを用いる
び③クレジットスコアリング型がある。それ
場合も出てくる。また、中小企業でも例えば
ぞれについて、概要を説明すると、以下のと
50年以上の歴史のある会社で、信用と評判は
おりである。
申し分ない会社であれば、規模が多少小さく
てもこの手法の対象となることは十分にあり
①財務諸表・コベナンツ型
えるだろう(注)3。
企業の財務諸表データを元に諸比率等を計
この手法では財務諸表の数字をベースに審
算し、それに基づき貸付の審査または事後管
査を行うため、財務諸表さえ正確であれば、客
理を行う手法である。
観的に与信判断することが可能であるため、さ
【米国では中堅企業向け貸出に利用】
ほど人手もかからず、比較的低コストといえ
つまり日本でも古くから行われてきた方法
る。また、財務諸比率は定量的・客観的なデ
であるが、米国式の場合は特に中小というよ
ータであることから、財務諸比率がよい企業
りは中堅企業に対する、財務制限条項(コベ
への貸付であれば、大きな組織の中での稟議
ナンツ)を重視した貸付のことを指すことが
決済や融資委員会でも通りやすいともいえる。
多い。なぜ中堅企業か、というと、せっかく
さらに、中堅企業以上に向いた手法というこ
コベナンツを設定しても、肝心の財務諸比率
とは、比較的大きな銀行に向いた手法と言え
の元になっている財務諸表の数字が信頼でき
る(注)4。
なければ意味がないからである。
よって、米国では公認会計士が監査してい
②アセット・ベース貸付型
ないような中小企業向け融資に関しては、コ
アセット・ベース貸付は、その名のとおり
ベナンツは利用されないか、利用されても必
債務者の資産、特に売掛金、在庫、機器など
ずしも重要視されていない。例えば、中小企
の動産を担保とした貸付である。
業向け貸付の保証を行う中小企業庁(SBA)
銀行の貸付というよりは、ノンバンクのフ
も、保証の審査に際してコベナンツは設定し
ァクタリングのイメージに近いとも言える。売
ていない。
掛金の現金化という意味では、形態は異なる
(注)
2.本稿では、$1=¥110換算している。
3.中堅企業と中小企業の境目は銀行によってかなり異なるが、本稿では、与信額で100万ドル(1.1億円)を超えるような先は
中堅企業と見ている。
4.銀行の中間的な規模が総資産約100億円強の米国の銀行にとっては、1先に約1億円を超えるような貸出を行うような銀行は
大きい、という意味であり、中間的な規模が約1,800億円の日本の信用金庫の多くは、米国で言えば「比較的大きな銀行」と
いえる。
研 究
29
が、金融機能としては日本の手形割引に比較
大企業であり、IBMの売掛金を担保に取れるの
的近いとも言える。
であれば、貸付もしやすい、ということになる。
【一般的な担保付運転資金貸付とアセット・ベ
ース貸付の違い】
【アセット・ベース貸付の対象企業】
担保が前提ということは、アセット・ベー
それでは、一般の運転資金貸付で売掛金や
ス貸付の対象となる企業は、一般的に言えば
在庫を担保にする場合と、アセット・ベース
ハイリスクの企業である。ただし、これは信
貸付の違いは何かというと、一般の運転資金
用力がないということを必ずしも意味するわ
貸付の場合はあくまで返済財源は債務者であ
けではなく、高成長を遂げている比較的若い
る企業のキャッシュフローまたは利益であり、
企業なども対象となる。
担保は万一回収できなかった場合の2次的な返
【アセット・ベース貸付は高コストの貸付手法】
済財源である。一方、アセット・ベース貸付
担保価値をベースにするため、担保価値の
においては、企業の利益よりも担保の価値が
頻繁なモニタリングが重要となり、比較的高
優先的な返済財源となる、つまり担保の価値
コストの貸付手法である。実務的には債務者
に応じた貸付である(注)5。
の資金繰り状況を管理するためのコンピュー
【中小企業の情報不透明リスクを回避】
タやテクノロジーを駆使する部分と人海戦術
銀行等から見た中小企業のリスクは、情報
をベースとした事務センター的な機能が必要
が不透明であることである。上場企業のよう
であることから、大銀行または大手ノンバン
に企業の情報に透明性があり、財務諸表に信
クが得意とする手法といえる。
頼が置けるのであれば①の財務諸表ベースの
貸付を行えばよいが、多くの中小企業は必ず
しもそうではない。
このため、中小企業の利益を返済財源とす
るには不安が大きい場合は、より確実な担保
【バブル期の不動産担保貸付も…】
1980年代のテキサスやバブル期の日本で行
われたような不動産担保貸付は、不動産の価
値をベースとしたアセット・ベース貸付と言
えないこともない。
の価値をベースに貸付を行うことにより、中
中小企業の事業や財務内容が不透明である
小企業の情報不透明リスクをある程度回避す
ことを考えると、永遠に価値が上がり続ける
ることは可能である。
と思われていた不動産担保の価値に依存した
例えば、売掛金を担保にする場合は、債務者
自身ではなく、債務者から見た債務者、つまり
貸付を行ったことも、当時としてはやむを得
なかった点もあるかもしれない。
顧客の顧客の信用力がポイントとなる。銀行か
ただし、現在の米国でアセット・ベース貸
ら見た債務者が中小企業であっても、その製品
付といえば主に売掛金を担保とした貸付であ
の販売先が例えばIBMのような信用力の高い
り、価格変動の激しい不動産担保をベースと
(注)
5.Logan〔1988〕
30
信金中金月報 2004.12
しているわけではない。
住宅ローンの審査で利用され、現在ではフェ
ア・アイザック社(Fair Isaac and Corporation :
③クレジットスコアリング型
FICO)のモデルが主流となっている(個人向
クレジットスコアリング型は、トランザク
けFICOスコアリングの概要についてはP.53
ショナル型バンキングの典型とも言えるだろ
「(参考)米国の個人の信用履歴クレジットス
う。トランザクショナル型バンキングの真髄
コアについて」参照)
。ひとことで言えば、個
は、業務1件あたりの労力を少なくして、より
人の情報を数値化してコンピュータのプログ
少ない人員と単位コストで、より多くの取引
ラムにインプットするとその債務者の信用力
を成立させることにある。
を示す点数が出てくる、という仕組みである。
リレーションシップ型の貸付をローンオフ
具体的には、民間のクレジット・ビューロ
ィサー(融資担当役席者)が1件1件時間をか
ーと呼ばれる個人の信用履歴等の信用情報を
けて審査を行う、いわば町の仕立屋によるテ
管理する業者が大手としては3社あり、各社は、
ーラーメイドのスーツに例えると、クレジッ
信用情報をもとにFICOスコアリングモデルに
トスコアリングに代表されるトランザクショ
より各個人の信用情報を点数化している。
ナル型の貸付は、大規模な工場での大量生産
型のスーツ製造システムである。
各金融機関は、クレジット・ビューローの
いずれか、または全社から信用履歴および債
つまり、製造業の分野では約200年前の産業
務者のクレジットスコアを入手し、消費者ロ
革命の際に行われたことが、中小企業向け貸
ーンや住宅ローンを審査する際の重要な材料
付の世界ではここ10年ほどの間に行われるよ
とするのが普通である。現在では、個人に対
うになってきた、とも言える。大量生産によ
して貸付を行う際に、債務者個人の信用情報
り単位コストを下げる一方で、取引量を拡大
およびクレジットスコアの入手を行わない、と
させることが可能となる。
いうことはほとんどあり得ない、といえるほ
クレジットスコアリングは、債務者のこれま
での信用履歴や現在の債務残高をベースに信
用力を点数化したものであり、個人を対象にし
ど普及している(注)6。
【中小企業対象のクレジットスコアリングモデ
ルの開発】
たものと中小企業を対象としたものがある。
クレジットスコアリングを審査に使うとい
【個人対象のクレジットスコアリングがそもそ
うことは、過去の傾向が将来も続き、また同
もの始まり】
じような特性を持つ人間は同じような行動を
個人対象のクレジットスコアリングは、1960
取ることを前提としている。ただし、対象デ
∼1970年代に発展し、主にクレジットカードや
ータ量を大きくすればそうした前提が成り立
(注)
6.Allen, L, DeLong, G., & Saunders, A〔2004〕によると、1997年時点ですでに97%の銀行等は個人向けクレジットスコアリング
を利用し、70%の銀行等は中小企業向けクレジットスコアリングを使用している。
研 究
31
ちやすい個人と異なり、中小企業は財務デー
統計によりある程度回避することが可能とな
タが必ずしも信頼できないこと、業種による
っていることである。
違いがあること、また1社1社ごとの違いも大
きいことから、中小企業の信用力をスコア化
することは困難であると考えられていた。
また、担当者やその日の気分により同じ融
資に異なる判断が下される懸念もない。
さらに、スコアの点数により融資の可否を
しかしながら、1990年代の前半に、ロバー
自動的に決められるため、明らかに実行可能
ト・モリス・アソシエーションという会社が、
な先および明らかに却下する先に時間をかけ
中小企業の信用力は、その中小企業そのもの
る必要がない。
の信用力というよりは、創業者であるオーナ
銀行としては経営資源(予算、融資担当者
ー社長個人の信用力に大きく依存しているこ
の時間)をより難しい案件、実行可否が微妙
とを発見した。
な先、または高額の貸付案件の審査等に振り
同社はその発見を前提にFICOに対し、中小
向けることができる。限られた経営資源のな
企業向けクレジットスコアリングの開発を依
かで、まさに、貸出トランザクション(取引)
頼した(注)7。FICOはその開発に見事に成功し、
の量を増加させることが可能となる。
現在では中小企業向けクレジットスコアリング
FICOによると、量だけでなく貸出ポートフ
においても、同社は中心的存在となっている。
ォリオの質も向上するとしている。また、貸
【クレジットスコアリングの実務における活用】
出実行後のモニタリングにおいても、スコア
大銀行では、10万ドル∼25万ドル(約1∼
が良く延滞もない先は事実上放置しておけば
3,000万円弱)までの中小企業向け貸付であれ
よく、スコアの悪い先を重点的に監視し、メ
ば、従来型の1件1件審査する方法からクレジ
リハリをきかせることが可能となる。
ットスコアリングによる審査に切り替えてい
る場合が多い。
【中小企業向けクレジットスコアリングについ
て懸念される点】
中小銀行においても、FICOにアウトソーシ
一方、懸念される点は、優良な中小企業で
ングすることにより、クレジットスコアリン
あってもスコアリングモデルの条件に合わな
グを利用する動きは広がっている。
ければ融資が却下される場合があること、
【中小企業向けクレジットスコアリングを活用
するメリット】
FICOへの過度な集中によるシステミックリス
クも否定できないこと(注)8である。
中小企業向けクレジットスコアリングの長
また、個人のクレジットスコアリングと比
所は、低コストかつ迅速であること、ならび
較すると歴史が浅いため、データベースの収
に中小企業特有の情報不透明リスクを確率・
集期間が短く、大きな不景気の期間が含まれ
(注)
7.Allen, L, DeLong, G., & Saunders, A〔2004〕
8.同社によると、米国の中小企業貸付大手25社のうち22社は何らかの形でFICOのサービスを利用しているとのこと。
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ていない点を懸念視する米銀関係者もいる(た
生した手法であるため、クレジットカードの
だし、現在のところ、モデルが不正確である
ような小額の経費支出や運転資金融資にはあ
といった大きな問題は聞いていない。
)。
る程度対応できるが、設備資金貸付や高額の
さらに、貸付金の返済原資となるのは、企
貸付に柔軟に対応することは困難であり、や
業の将来のキャッシュフローなのに、クレジ
はり中小企業にとってはコミュニティバンク
ットスコアリングは過去のデータをもとにモ
によるフェイストゥフェイスの貸付を中心と
デルを作っている点を疑問視するバンカーも
しつつ、それを補完するのが大銀行のクレジ
いる。
ットスコアリング貸付になるだろう、とする
【大銀行のクレジットスコアリング普及はコミ
ュニティバンクにとって脅威か?】
シカゴ連邦準備銀行のデヤング博士の意見も
ある。
このクレジットスコアリングの普及により、
これについてもう少し詳しく記述すると、例
大銀行が積極的に中小企業向け貸付に進出し、
えば個人が起業する場合、外部資金調達手段
低コストすなわち低金利により良質の顧客を
としてまず使うのは個人のクレジットカード
小規模なコミュニティバンクから奪ってしま
であり、次にはビジネス用クレジットカード
うのではないか、という点は米国の銀行界で
である(注)9。個人もビジネス用も銀行にとって
も懸念されることもある。
のクレジットカード発行審査プロセスには大
しかしながら、現在ではコミュニティバン
きな違いはなく、いずれもクレジットスコア
クにとっては、大銀行のクレジットスコアリ
リング方式によりこれまでの債務者の信用履
ング貸付はそれほどの脅威であるとは感じら
歴等を元に点数化してカード発行の可否を判
れていない。
断する。
多くの中小企業が必要としているのは遠く
大銀行の中小企業向け貸付というのは、実
で機械的に処理される融資審査ではなく、身
はこのビジネス用クレジットカードとさほど
近で柔軟に対応してくれるコミュニティバン
変わらない。審査は機械的なクレジットスコ
クである、ということも事実であり、クレジ
アリングに基づいており、資金使途も運転資
ットスコアリングでは機械的にはねられてし
金中心である。
まう優良顧客も少なくない、ということも言
えるだろう。
一方、中小企業の資金ニーズの中には、経
費や運転資金のように各企業共通の画一的な
さらに、より説得力のある議論として、中
部分もあるが、企業ごとに異なる点も少なく
小企業向けクレジットスコアリングは個人向
ない。つまり、中小企業者から見ると、大銀
けクレジットカード審査と類似の手法から発
行の中小企業向け貸付というのは、所詮、ク
(注)
9.米国のクレジットカードは、利用者が一括払いをしない場合は残額を借入れたことになり、機能的には日本の消費者金融に
近い役割を果たしている。
研 究
33
レジットカードのような2次的な位置づけにす
って、現実的にはキャラクター貸付を行える
ぎず、中小企業向け融資の本流を担うのはコ
ための銀行の規模には限界があるとも考えら
ミュニティバンクのリレーションシップ型の
れている(B&U)。
キャラクター貸付であることは今後も変わら
ないだろう、という見方である。
こうしたことから、キャラクター貸付は情
報の伝達が容易な小規模のコミュニティバン
クに向いた貸付手法であり、筆者自身のこれ
(3)リレーションシップ型の中小企業向け貸
までの取材を基にあえて規模による分類をす
付テクノロジー
ると、目安の線を引くと、キャラクター貸付
キャラクター貸付とは、銀行と顧客が同じ
を中心とした純粋なリレーションシップ貸付
コミュニティにおいてフェイストゥフェイス
のみを行う銀行の規模は総資産で500億円程度
で接していることにより、銀行が顧客の定性
までであり、それ以上の規模の銀行には何ら
的な「ソフト情報」を入手し、与信判断を行
かのトランザクショナル型の要素が多少なり
う、というビジネスモデルである(注)10。
とも入ってくることが多いようである。
例えば、
「あの顧客は20年前からこの町で部
品メーカーを経営しており、地元や顧客から
の評判もよい」といった情報を基に貸付の審
2.トランザクショナル型とリレーシ
ョンシップ型バンキングの実践
査を行うことになる。中小企業ゆえ財務諸表
次に、多くの米銀等への約1年間の取材に基
は必ずしも信頼できないため、企業の情報だ
づき、実際に米銀がどのようにそれぞれの型
けでなく、オーナー経営者個人の資質および
のバンキングを行っているのかを紹介する。
これまでの信用力、つまりキャラクターが特
に重要となる。
【キャラクター貸付はコミュニティバンクに向
いた貸付手法】
(1)財務諸表・コベナンツ型
ここでは、財務諸表比率、特にどのような
コベナンツ(財務制限条項)が実際に米銀で
こうした定性的な「ソフト情報」は財務諸
使われているのかを中心に解説する。ただし先
比率などの定量的な「ハード情報」と異なり、
述のとおり、コベナンツは中小というよりは中
大きな組織では伝わりにくい。営業店の融資
堅企業向け貸付によく使用される手法である。
担当者、営業店長、本部審査担当者、審査部
長、そして融資委員会と組織内の階層を経る
①デット・エクイティ・レシオ
(負債/自己資本)
に従い、
「あの社長は評判がよい」といったソ
最もよく使われるコベナンツの一つである。
フト情報を正確に伝えることは困難となる。よ
負債と自己資本のバランスを見る、という意
(注)10.そのキャラクター貸付の特徴等については、本稿の前編ともいえる「米国のリレーションシップバンキング−米国金融機
関の中小企業向け貸付の理論と実践−」
『New York通信』第15-1号(青木〔2003〕
)に詳しいので、そちらを参照していただき
たい。
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味では銀行の自己資本比率と同様の趣旨を持
合いも強い。また、優良先に対しては、銀行
つ比率であるが、一般事業会社の場合は、負
等の債権管理上の理由だけでなく、営業上の
債を自己資本で割るデット・エクイティ・レ
理由からも、他の金融機関から借入れをさせ
シオが利用されるのが普通である。目安は4以
ないように①、②のようなコベナンツを設定
上となるとかなりのハイリスクと言えるが、業
している、ということも考えられる。
(米国で
種により、2.5や3.5でもハイリスクとなる場合
は、特に中小企業では1行取引が多く、日本の
もある。一般的には、1∼1.5までであれば問題
ように、メイン、サブ、3番手…と、取引銀行
ないので、中堅企業の場合は例えば1.3として
を複数持つことは必ずしも一般的ではない)
。
コベナンツを設定する。
自己資本を守るためのコベナンツの例はこ
の他にもあり、例えば当期利益を上回る配当
②自己資本の額
を行うと自己資本が減るため制限される。実
貸付金の返済原資となる自己資本を維持さ
際には、配当は当期利益の50%までのように
せることは、貸し手である銀行にとっては重
設定される。また、経営者の給与に制限を加
要である。この意味では、①のデット・エク
える場合もある。
イティ・レシオと同じ趣旨を持ったコベナン
ツである。ただし、特に貸付金額が大きい場
③デット・サービスカバレッジ(営業利益/年
合などは、銀行等は債務者に対して今後3年間
間の借入元利金返済額計)
などの財務計画を提出させることが普通であ
①と並んで最も一般的なコベナンツの一つ。
り、その財務計画に基づき、返済原資が確保
アセット・ベース貸付でない限り、借入金の
されるよう、自己資本の額を財務計画どおり
返済は一般的に企業の利益から行われるため、
に維持することをコベナンツとする場合が多
企業の営業利益は借入金元利返済額より大き
い。例えば、今の自己資本が1億円で、3年後
くなければならない、という至極もっともな
には1.5億円になる計画であれば、それがコベ
コベナンツである。
ナンツとなる。
なお、これは①、②に共通して言えること
だが、起業家というのは洋の東西を問わず、拡
例えば、
デット・サービスカバレッジ
(DSCR)
が一般的な1.25倍の場合は、
売上高
$100,000
大志向が強く、借入れを行い事業を拡大した
売上原価
$40,000
がるものである。一方、多角経営が成功しな
販売費・一般管理費
$20,000
い場合が多いことも洋の東西を問わない。こ
営業利益
$40,000
営業利益/DSCR
$32,000
(=$40,000/1.25)
毎月の支払額
$2,667
(=$32,000/12)
のため、①、②のように今後の追加の負債を
制限する趣旨のコベナンツを設定することに
より、まずは本業に専念させる、という意味
研 究
35
よって、期間5年、固定金利年率5%(月利
った企業の場合は四半期ごとになる。コベナ
5%/12か月=0.41667%)、毎月元利均等払い
ンツ違反の対応は違反の深刻さの度合いによ
の場合は$141,326までは貸付可能、というこ
って異なる。また、銀行側の設定ミスや、銀
とになる。
行と顧客との意思疎通が足りなかった場合も
ある。こうした場合は大きな問題にはならず、
1
1− ―――――――
1.0041667 5×12
――――――――――― ×$2,667=$141,326
0.0041667
(
)
コベナンツを修正することもある。ただし、違
反が続いたり、違反の仕方に特定のパターン
が見られるようになると要注意である。例え
ば、その中堅銀行では18か月間見て違反が続
④流動性比率(流動性資産/流動性負債)
くようであれば、その企業とは取引きを中止
日本で使われているものと同じであり、比
する。こうした面からすると、コベナンツは
較的短期の支払能力を維持させるためのコベ
不良債権発生を未然に防止する早期警戒措置
ナンツである。ただし、水準は米国では日本
としての役割を果たしているとも言えよう。
よりもやや高く、目安は1.7程度である。この
一方、銀行の規模が小さくなり、また顧客
他に、流動性資産から在庫を除いた当座比率
企業の規模が小さくなるほど、コベナンツは
が用いられることもある。
モニタリングの際の目安に過ぎなくなり、コ
ベナンツ違反だからといってすぐにペナルテ
⑤資本支出
ィがあるわけでもない。一般的には、コミュ
不動産や機械などの固定資産への投資を行
ニティバンクの場合は、コベナンツ違反があ
うと、会計上は減価償却により数年度間でコ
った場合は債務者の企業とよく相談して、何
ストを分散することになるが、実際のキャッ
が問題かを探り、コベナンツを変えるべきな
シュフロー上は一度に大きな支出となり、企
のか、などを顧客と一緒になって検討するこ
業の財務体質を大きく変えてしまうおそれが
とが一般的であり、単に違反だから貸出金の
ある。このため、資本集約的な業種の場合は、
全額返済を求める、ということにはならない。
今後の資本支出の額を制限するコベナンツが
設定されることもある。
(2)アセット・ベース型
アセット・ベース型といっても、一般の銀
⑥コベナンツのモニタリングおよび違反した
行が行う場合は、ノンバンクが行っているよ
場合の対応
うな狭義のアセット・ベース貸付というより
ある中堅銀行の事例では、コベナンツの遵
は、売掛金や在庫が担保または見合いにはな
守状況のチェックは、原則として1年に1∼2回
っているものの、主要な財源としては、担保
であるが、問題企業として要注意リストに入
そのものというよりはやはり企業のキャッシ
36
信金中金月報 2004.12
ュフローとなる場合が多い。
【ノンバンク等のアセット・ベース貸付】
売掛債権の債務者(つまり顧客の顧客)の
信用力が重要であり、例えばIBMのような優
比較的ハイリスクの中小企業を対象とした
良大企業であれば掛目は高くてもよいが、流
狭義のアセット・ベース貸付においては担保
通業の場合はアメリカのデパートは返品を普
が債権回収の源であるため、特に売掛金担保
通に行うため、掛目は低くする。中小企業な
貸付を行うノンバンク等は債務者企業の財務
らなおさらリスクが高いため、掛目は低い。そ
諸表も債務者自身の信用力も見ない。彼らに
の会社のこれまでの取引経歴はどうか、必要
とって重要なのは担保である売掛債権、つま
なら信用保険が付与されているかなども重要
り債務者から見た債務者(顧客の顧客)の信
となっている。
用力である。
【銀行のアセット・ベース貸付】
一方、銀行が行っているアセット・ベース
【在庫を担保とする場合】
在庫を担保にすることは「在庫が転売可能
かどうか」が問題となるため、さらに難しく、
貸付ではそうした狭義のアセット・ベース貸
在庫よりも売掛金が担保としては好まれる。在
付のような高いリスクはとらないことが普通
庫の場合はせいぜい掛目50%までであり、実
である。
際には30∼40%が普通である。在庫にもいろ
いずれにしても、売掛金や在庫の担保評価
いろあり、純粋に顧客に販売するための在庫
とモニタリングがアセット・ベース貸付のポ
ならよいが、投機目的で在庫を持っている場
イントとなる。ある中堅銀行の事例でいうと、
合もあり、そうした場合は注意を要する。
売掛債権担保融資については、100万ドル(1.1
億円)を超える融資であれば、公認会計士
(CPA)のレビューを求めている。
請求書や売掛金や口座、在庫などはCPAに
チェックさせ、不正がなく心配がない、とな
れば貸付を実行する。
【売掛債権を担保とする場合】
(3)クレジット・スコアリング型
①概要
【銀行規模によるクレジットスコアリング利用
方法の違い】
具体的なクレジットスコアリングの利用方
法は銀行によって異なる。
売掛金は返品などもあるので、100%額面ど
大銀行では10万∼25万ドル(1∼3,000万円
おりには回収不可能である。こうしたことも
弱)までの中小企業向け貸付には、クレジッ
あり、売掛金の掛目は70∼85%に設定してい
トスコアリングのみで融資審査を行い、それ
る。担保とする売掛金は米国内の90日以内の
以上の大口案件となれば、従来どおりの方法
ものに限定している。また、特定の顧客に売
で1件1件財務諸表をベースに審査を行うのが
掛金が集中しすぎている会社の場合はリスク
一般的である。
が高いので、担保掛目を低くする。
小型のコミュニティバンク(おおむね総資産
研 究
37
500億円未満)
であれば、
クレジットスコアリン
当座預金口座の預金残高、会社の信用情報お
グを使わず、もっぱらリレーションシップ型の
よび負債/自己資本比率等の財務諸比率など
キャラクター貸付が中心となる場合が多い(注)11。
をスコア化していると考えられる。
中型(おおむね総資産500億円)以上のコミ
つまり、オーナー経営者個人の信用力が高
ュニティバンクであれば、クレジットスコア
ければ、中小企業自身の社歴が短いスタート
リングのみで融資判断はしなくても、クレジ
アップ起業であっても、融資を受けられる可
ットスコアリングと従来型のキャラクター貸
能性はある。その反対に、会社としての業績
付を併用している銀行もある。
がよくても、オーナー経営者自身の信用力に問
【スコアリングモデル構築の方法も様々】
債務者のデータをスコアに変換するための
題があれば、スコアが低くなる可能性がある。
もっとも、FICOによると、同社の中小企業向
プログラムであるスコアリングモデルは、パ
けクレジットスコアリングサービス
(SSBC5.0)
イオニア企業であるフェア・アンド・アイザ
では、20種類ものモデルを駆使してスコアを
ック社(FICO)等の外部業者にアウトソーシ
算出しており、対象企業により使用するモデ
ングすることもあれば、自行内でデータを蓄
ルも異なる、とのことであるので、必ずしも
積してモデルを作っている銀行もあり、様々
このように単純ではない。
である。
【外部業者へのアウトソーシングによるモデル
開発(FICOのモデルの場合)】
なお、FICOのSSBC5.0では、中小企業のス
コアが出るだけでなく、例えば20:1、のように
デフォルト確率が出る。これは、その貸付と
FICOのモデルは、先述のとおり、主に中小
同じ信用リスクの貸付を21件実行した場合は、
企業のオーナー経営者個人の信用履歴をスコ
1件は60日以上の延滞となることが予想される、
ア化した個人のクレジットスコアの算出項目
という意味である(延滞なので、全額回収で
をベースにしている。
きないという意味ではない。)。このため、信
モデルの内容は公表されていないが、あえ
て推測すれば、スコア計算根拠の約7割は個人
に関すること、つまり借入れを行う中小企業
の主要なオーナー経営者およびそれに次ぐ者
の個人の過去のクレジットカード等の債務の
用リスクに応じた金利設定やリスク管理も可
能となる。
【自行開発によるモデル開発】
モデルを自行開発している場合は各行が様々
な考えに基づきモデル開発を行っている。
返済状況、負債の残高、年収等の個人に関す
中西部のある中堅銀行では、中小企業向け
る項目であり、残りの約3割は会社に関するこ
貸付のクレジットスコアリングシステムを自
と、具体的にはその企業の社歴の長さ、法人
行内で18年前から開発している。項目として
(注)11.ただし、これは、中小企業向けのクレジットスコアを使っていない、という意味であり、オーナー経営者個人の信用履歴
や個人クレジットスコアを信用業者から取り寄せることは小さなコミュニティバンクであっても行っているのが普通
38
信金中金月報 2004.12
は、企業のキャッシュフローが最もウェイト
ところが、クレジットスコアリングの普及
が重く、次いでその企業全体の債務の大きさ
により、大銀行はそれぞれ独自の手法により
も重視している。FICOのモデルのように経営
中小企業向け貸付の審査を行ったり、担保方
者のキャラクター(個人の信用履歴など)や
針を定めたりするようになった。実行後のモ
担保はもちろん大事だが、キャッシュフロー
ニタリングにおいても、従来型のSBAでは毎
や企業全体の債務の大きさほどのウェイトは
年の財務諸表の徴求が必要となるが、貸付金
おいていない。担保が弱い場合は、3∼5年間、
額10万ドル(約1,100万円)までの貸付であれ
しっかりとしたキャッシュフローの実績があ
ば、クレジットスコアリングの確率統計に委
り、キャラクターも信頼できる場合は融資を
ね、財務諸表の徴求すら行わない銀行も珍し
行う場合もある。ただし、利益が安定してい
くない(つまり、小口中小企業向け貸付全体
ることが前提であり、年によって利益が上が
をポートフォリオとしてみれば、その一部は
ったり下がったりする場合は融資しない、と
貸倒れになるだろうと最初から想定しており、
のことである。
その想定に基づいた金利設定もしているので、
ある大銀行では、中小企業オーナー経営者
小口融資を1件1件モニタリングする必要はな
個人のクレジットスコアと、行内で開発した
い、という個人向け消費者ローンと同様の考
中小企業のクレジットスコアを組み合わせて
え)。
利用している。横軸が個人のスコア、縦軸が
中小企業のスコアとなった組み合わせの表が
SBAはこうした流れに対応し、エクスプレ
ス制度保証を導入した。
あり、両スコアとも良好なゾーンは緑(貸付
エクスプレス制度においては、まず銀行は同
実行)、両スコアとも低ければ赤(却下)、そ
制度の対象となるための認定をSBAから受け
のボーダーラインの場合は、黄色(中小企業
る必要があるが、認定後は自行のクレジットス
庁(SBA)等の保証が付けば可能)となって
コアリングに応じて融資の可否を決定し、SBA
いる。
の保証を付けることができるようになった。
【クレジットスコアリングの中小企業庁(SBA)
の保証業務への影響】
ただし、エクスプレス制度ではSBA側のグ
リップが弱くなるので、従来型のように銀行
中小企業向け貸付におけるクレジットスコ
の損失の約8割を保証するのではなく、5割ま
アリングの普及は、そのSBAにも影響を与え
でと限定的とし、貸付金額も25万ドル(3,000
ている。
万円弱)を上限としている。
例えば、中小企業に債務保証を行うSBAの
それでも、銀行側からみれば、効率的に審
従来型の制度では、貸付を行う銀行がSBAの
査を行った上で半分でも保証がつくことには
定める審査・担保方針に従った場合に、債務
メリットが大きく、SBA側からしてもより効
保証を行ってきた。
率的に中小企業へ資金が流れればそれでよい
研 究
39
ので、現在ではこのエクスプレス制度は、SBA
を下回る金利を提示したり、どの顧客にも
における現在の主力制度となっている。
優遇金利を提供することは稀である(ただ
し、他行からの借替え促進キャンペーンの
②具体例
ため、当初6か月のみプライムレート以下、
ある大手米銀の中小企業向け貸付の仕組み
は図表のとおりとなっている。
ということはありうる)
。
・クレジットラインにおける実行後モニタリ
・クレジットスコアリングを利用する場合の
ング制度として、コンピュータ管理の早期
貸出金利は、債務者企業のスコアに応じて、
警戒システムを導入し、倒産確率的なモニ
行内の収益管理部門と相談の上、中小企業
タリングを行っている。
貸付担当部門で決定している。
これにより、銀行としては会社の信用力
スコアがよい企業にはプライム+150BP
が大きく低下する前に対応を考えることが
程の低金利、悪い企業には例えばプライム+
600BPなどの高金利で貸出す銀行もあるが、
できる。
・さらに、この銀行では行動スコアリングと
ハイリスクを取りたくないこの銀行はスコ
呼ばれるFICOのモニタリングサービスを利
アの足切りラインを高くして、ハイリスク
用している。これは貸出審査の時のものと
貸出を行わないようにしている。
は別のサービスであり、毎四半期ごとにデー
基本的な金利は本部で決定するが、競合
タを更新してスコアを算出しなおしている。
や顧客優遇等の理由から、ある程度は地区
・10万ドル(1,100万円)以上の運転資金貸付
担当の責任者に金利優遇の権限を与えてい
の場合は、従来型のモニタリング手法をと
る。ただし、これは例えばプライムレート+
る。つまり、財務諸表データを更新し、パソ
150BPを基本とした場合に、100BPまでの優
コンで比率を計算してモニタリングを行う。
遇権限を与えるということであり、収益管
・担保としては、UCCファイリング(企業の
理に厳しい米銀の場合は、プライムレート
動産を一括して担保設定する制度。詳細は
図表
与信金額
55∼550万円
550∼1,100万円
クレジットスコア
レバレッジ比率
デット・サービス比率
審査方法
クレジットスコアのみ
セールス方法
主にダイレクトメールおよびコールセンターによる
マスマーケティング
個人保証
1,100万∼1.1億円
従来型の財務分析
支店営業担当の面接
支店の営業担当者
20%以上の株主・経営者の個人保証が必要
担保
UCCファイリングによる動産担保(モニタリングなし)
UCCファイリング、不動産担
保、有価証券担保
モニタリング
延滞管理(システム・日時)
早期警戒システム
クレジットスコア見直し(四半期ごと)
同左および毎年の従来型の
レビュー
40
信金中金月報 2004.12
後述)は必ず徴求し、それは5年ごとに更新
ング貸付を無担保で行っているようである
する必要があるので、忘れずに更新する。ま
が、中小企業に対する無担保融資は現実的
た、主要な担保の価値は年に1回評価しなお
にはリスクが高いと言わざるを得ない。
している。
・ただし、長期的にはこうした米国のような
制度が日本にも整備されれば、中小企業か
③クレジットスコアリングについての日本の
信用金庫への教訓
・日本の信金においても、500万の融資案件と
ら見れば資金調達が容易となり、金融機関
側からみればコスト削減かつ取引量拡大に
つながると思われる。
1億円の融資案件が同じような手間がかかっ
・日本の金融機関においても融資審査担当者
ているのであれば、これはやはり非効率で
を多く育成しているようであるが、こうし
ある。1,000万円以下の貸付は、将来的には
たクレジットスコアが本格導入されると、必
クレジットスコアリングに移行するという
ずしも多くの審査担当者を必要としなくな
選択肢も考えられる。
る(米国でも多くのローンオフィサーは失
・課題としては、日本にはFICOに当たる業者
業してコミュニティバンクに流れた者も多
もなければ、個人の信用履歴を管理するデ
くあった。)。もし米国と同じ道を日本もた
ータベースも不十分、という点である。日
どるのであれば、今後の多くの金融機関職
本の場合は、信販・消費者金融系のネット
員に必要なものは、審査能力よりもむしろ
ワークが3系統程度あるが、いずれもブラッ
営業能力である可能性もある。
ク情報中心であり、良い顧客がどれだけ良
・一方、比較的金額の大きい貸付、特に1億円
いかを判断することはできない。つまり、米
以上の貸付であれば、従来型の貸付を行っ
国式のように優良顧客だからといってモニ
ているのは米国も同じである。また、顧客
タリングを軽微に済ませたり、貸出金利を
とのリレーションシップが重要になり、コ
優遇したりすることができない点が課題と
ミュニティバンクが得意とするところでも
なるだろう。
ある。つまり、日本の信用金庫のような比
・また、事後モニタリングも早期警戒システ
較的大型のコミュニティバンクの将来を考
ムやクレジットスコアの再計算などのオフ
えると、小規模なローンは中央集権型のク
サイトモニタリングの仕組みを作ることが
レジットスコアリングを利用し、中∼高額
不可欠である。
のローンは引き続きリレーションシップを
・さらに、担保についても、低コストで簡単
重視するなど、顧客層や融資内容によって
に動産担保を一括して徴求できるUCCファ
トランザクショナル型とリレーションシッ
イリングの仕組みが日本にはない。よって、
プ型をうまく使い分ける必要が出てくると
現在日本の大手銀行はクレジットスコアリ
予想される。
研 究
41
(4)トランザクショナル型と比較してみたリ
宣伝を行い、コンピュータによるデータベー
レーションシップ型
ス技術を駆使して潜在顧客データを分析し、既
米国の学界関係者が言うところの「リレー
存顧客と共通する属性を持つような顧客をリ
ションシップ貸付」では、顧客との長期間の
ストアップしてダイレクトメールを送付し、反
リレーションシップに基づき、経営者のキャ
応してきた顧客に対してセールスを行う、とい
ラクターを中心とした「ソフト情報」を基に
った大企業であれば銀行以外の業種でもよく
キャラクター貸付を行う、ということになる
行われるマーケティング手法を実施している。
が、今ひとつ抽象的でわかりにくい。
ダイレクトメールに借入申込書を同封し、返
そこで、米国のリレーションシップバンキ
送されてきた借入申込書をクレジットスコア
ングについて、これまで述べてきたトランザ
リングで処理することは、大銀行の得意なト
クショナル型と比較しながら、中小企業向け
ランザクショナル型の貸付である。
貸付のプロセスごとに検証してみることとし
b.飛び込み
たい。
ただし、コミュニティバンクにおいても、業
①セールス・案件確保
者のデータベースをもとに独自の潜在顧客リ
米国でも以前は、銀行から営業に行かなく
ストを作成し、ダイレクトメールを送付して
ても顧客が銀行に来店して融資申込みを行っ
反応のあった先に1件1件新規先を訪問するこ
ていたが、今は銀行間競争が激しいため、銀
とは行われており、効果がある場合もある
行から顧客先へ行かないと貸出は伸びないの
(『New York通信』第15-1号におけるアドバン
が普通である。
また、以前よりも顧客とのリレーションシ
ス銀行の例を参照)
。
もっとも、飛び込みが成功する可能性は必
ップが重視され、銀行が貸出だけでなく総合
ずしも高いとはいえない、とする銀行もある。
取引を目指すようになったこともあり、現在
別の大銀行の話として、行内のマーケティン
では米銀でも顧客企業を訪問することはごく
ググループのリストに基づき行うが25先に電
普通に行われている。
話をして、アポがとれるのはせいぜい1つ、成
新規顧客開拓の方法は、大銀行の得意なマ
スマーケティング、コミュニティバンクも行
う飛び込み営業、銀行の規模にかかわらず好
まれる既存顧客などからの紹介がある。
約に至るのはせいぜい100先に1つと言うバン
カーもいる。
ただし、銀行から見て取引をしたい顧客に
常に何らかのコネクションがあることも考え
にくく、現実的には、新規先リストを効率的
a.マスマーケティング
大銀行の場合は、テレビや新聞広告などで
42
信金中金月報 2004.12
に絞り込み、成約期待率を高くした状況で、飛
び込み営業をせざるを得ない状況にあること
は、米国では規模の大小を問わず多くの銀行
に言えることである。
d.その他
あるテキサスのコミュニティバンクのセー
ルスプログラムを紹介しよう。同行のセール
c.紹介・人脈・人材引抜き
スプログラムは一言で言えば、40人のリレー
銀行の規模にかかわらず、既存顧客、弁護
ションシップバンカー(融資渉外役席者)は
士、会計士からの紹介は好まれる方法である。
毎週3回顧客を訪問し、このうち1先は新規先
成約となる可能性も高く、また優良顧客と取
でなければならない、というものである。こ
引できる可能性が高い。
れは電話ではなく訪問であり、食事などを顧
特に、多くの米銀バンカーが口をそろえて
客と一緒に取ることでもよいが、あくまで人
効果があると言うのは公認会計士からの紹介
対人のミーティングでなければならない。こ
である。公認会計士は、企業の財務内容を見
れは同行頭取が以前勤めていたIBMと同じや
ているため、どの企業の業績が良いかをよく
り方である。
知っている。優良顧客を公認会計士からの紹
なお、同行の職員数は約150人であり、40人
介で得る銀行は米銀に多く、さらに公認会計
のリレーションシップバンカーのうち3分の2
士はその企業のモニタリングもしてくれる。優
は男性であるが、最も成績のよい2名は女性、
れた会計士事務所との良好な関係はそうした2
とのことである。セールスコンテストを行い、
つの意味で重要となっている。
成績優秀者には1,500∼2,500ドル(20∼30万円
このように、銀行としても多くの紹介を受
程度)のボーナスを支給することもある。
けるためには、人的ネットワークを広げるこ
同行頭取は、こうした一連のセールスプロ
とが重要となっていることもあり、コミュニ
グラムがなければ、総資産は1億ドルは少なか
ティバンカーは地元の商工会議所その他の活
っただろう、と語っている。
動に熱心である。
また、米国の場合は人材の流動性が高い。特
に銀行の合併・買収があると人材が流出しや
すい。
②財務諸表の不確実性の問題
監査済みの財務諸表を提出できる中堅企業
とは異なり、中小、零細企業の多くは、財務
また、大銀行のクレジットスコアリングの
諸表があったとしても信頼に足るとは言い難
導入により解雇された融資担当者がコミュニ
い。米銀のリレーションシップバンキングで
ティバンクに流出することも珍しくない。
はこの問題をどのように解決し、中小企業の
優秀な営業マンが他行に流出すると、顧客
信用力を判断しているのであろうか。
も流出することが多い。もちろん、引き抜く
側の銀行も顧客が一緒に来てくれることを期
待して引き抜いているとも言える。
a.決済口座における資金繰りのモニタリング
洗練されたコンピュータシステムを持つ大
研 究
43
手米銀では、顧客のキャッシュマネジメント、
c.納税申告書との突合せ
つまり資金繰りをモニタリングすることによ
現実的には、多くの銀行によりこの手法が
り、取引に異常がないかどうか常日頃からコ
採られていると思われる。中小企業への貸付
ンピュータシステムにより管理をしている場
において、企業は税務当局に対する納税申告
合も考えられる。
書のコピーを銀行に提出し、銀行側は、税務
ただし、そもそもキャッシュマネジメント
を行う対象となるような企業は中小というよ
申告書と財務諸表とを突き合わせて確認する
ことになる。
りは中堅以上の比較的大規模な企業である。
もちろん、税務会計と財務会計は米国におい
また、中小規模のコミュニティバンクにお
ても異なる部分はあるが、中小企業レベルにお
いて企業の資金繰り管理をシステム的に管理
いて大きく異なることは少ない。また、大きく
しているのが普通であるとも言い難い。
異なる場合は企業に問い合わせ、その理由が合
さらに、決済口座を他の銀行にも持たれて
理的であればよい、ということになるだろう。
しまうとこのモニタリング手法は使用できず、
多くの米銀においてもこれができれば理想、く
らいの状況であるといえよう。
d.的確な質問
財務諸表を見て、不審な点があれば、銀行
の審査担当者が顧客企業に質問をすることに
b.監査を求める
与信金額が大きくなれば、公認会計士の監
査、少なくともレビューを求めることは当然
なる。経験豊富で優れたローンオフィサーで
あれば、財務諸表の数字のトリックを見抜く
ことは十分可能である。
のことであり、ある中堅銀行では、与信額が
顧客に対して財務諸表やキャッシュフロー
100万ドル(約1.1億円)以上なら公認会計士に
に関して鋭い質問を行う。その受け答えなど
よるレビュー、500万ドル(約5.5億円)以上な
で、信用できるかどうかはかなりの精度で判
ら監査を求めている。
断できるのが普通であり、このプロセスがリ
もっとも、公認会計士にもいろいろあり、中
には必ずしも信頼性が高くない会計士がいる
こともある。
レーションシップバンキングで重要なポイン
トとなっている。
また、それを実行できる優秀なローンオフ
ただし、公認会計士の社会は必ずしも広く
ィサーを確保できるがどうかが特にコミュニ
はなく、評判の悪い会計士はすぐにわかるの
ティバンクにとっては生命線となっている。
が銀行業界では普通であり、その場合は信頼
つまり、銀行のブランド名だけで顧客が集
できる会計士の監査を再度受けることを求め
まり、なおかつ審査はクレジットスコアリン
る場合もありうる。
グで自動化されている大銀行と比較して、コ
ミュニティバンクの場合は自ら営業を行い、か
44
信金中金月報 2004.12
つ企業の目利きを行えるローンオフィサー、と
いう人材の質がより重要となっている。
a.担保
アセット・ベース貸付でない限り、貸付の
返済原資は企業のキャッシュフローであり、担
e.地元での評判
中小企業であれば、財務諸表が信頼できる
保ではない、ということはどの銀行でも力説
するところである。
かどうかは、その企業およびその経営者が信
米国でも、特に1980年代後半∼1990年代前
頼できるかどうかに依存しているといえる。
半にかけて、テキサス、北東部およびカリフ
優れたコミュニティバンカーは、取引先企
ォルニアで不動産バブルが崩壊し、甘い担保
業の地元での評判、特に取引先の顧客、サプ
評価が原因の一つとなって多くの銀行が破綻
ライヤーからの評判や会計士・弁護士界の評
したことは多くのバンカーの教訓となってお
判に常に敏感である。
り、不動産に依存した貸付の恐ろしさは身に
しみて理解されていると言って良い。
f.優良企業と取引すること
ただし、これは担保を徴求しない、という
現実問題として、銀行というのは銀行員が
意味ではない。万一の際のために担保を徴求
支店に座っていて、金を借りに来る客だけに
することは当然視されており、まずは会社関
金を貸していては、貸出金の大部分は焦げ付
係の動産、不動産、それで十分でなければ、オ
いてしまうだろう、というバンカーもいる。つ
ーナー社長の住宅を担保として徴求すること
まり、優良顧客というのは銀行の方から探し
もごく普通に行われている。
に行くものであり、待っていて店に来てくれ
ここで注意する必要があるのは、米国には
るわけではない。最初から信頼できそうな企
UCCファイリング制度、または通称ブランケ
業を金融機関側で選定して、取引ができるよ
ット・リー(エ)ンといって、比較的簡単に
うに努力するのであれば、財務諸表の信頼性
企業の動産を一括して担保として登記・公示
の懸念も少ないと言える。
する制度があるため、売掛金や在庫を担保と
して設定しやすいという制度的な特徴もある。
③担保・保証
これにより、万一の際には銀行は優先債権
本稿の前編でもある「米国のリレーション
者の地位を確保できる一方、債務者から見れ
シップバンキング−米国金融機関の中小企業
ば、不動産担保を持たないサービス業や比較
向け貸付の理論と実践−」
『New York通信』第
的新しい企業でも売掛金などを担保として提
15-1号(2003.6.25)にもあるとおり、米国の銀
供できるので、融資を受けやすいというメリ
行は中小企業に対して貸付を行う際に担保や
ットがある。
個人保証を徴求することが一般的であり、無
担保・無保証のケースは稀である。
米国の中小企業向け貸付で、UCCファイリ
ングすら行わない、つまり完全に無担保のケ
研 究
45
ースは稀、と言って良いであろう。
オーナー経営者の個人保証条項は、借入申
米国の銀行では、銀行の規模により担保に
込書に最初から印刷されている場合が多い。個
ついての考え方も異なっており、銀行が規模
人保証は債権保全上の意味と同等かそれ以上
的に成長していくに従いまた変わってくると
に、オーナー経営者等と会社とを運命共同体
も言える。
にさせることにより、真剣な経営をさせると
コミュニティバンクは不動産担保を中心と
し、比較的小規模の不動産融資や不動産を担
保とした設備資金への融資を行う。
中堅銀行になると売掛金等の動産担保を積
極的に利用して運転資金融資を行う傾向が強
くなる。
大銀行になると、取引先の規模が大きくな
れば無担保の場合も増えてくるだろう。
いう意味合いが強い。
一方、日本のようにオーナー経営者の親戚
などの第三者保証を徴求することは米国では
違法ではないにしても稀である。
債務者の債務不履行の際に保証人に支払い
を請求しても保証否認されることが珍しくな
い。よって銀行としては保証人を訴訟するこ
ととなるが、この際、直接的に会社と利害関
係を持たない第三者に対する保証請求は裁判
b.個人保証
所が支持しないことが普通である。
大銀行、小銀行を問わず、中小企業向け貸
銀行としては徴求しても無駄なことがわか
付においては個人保証を徴求することが普通
っているため、当初から第三者保証は徴求し
である。
ないこととなる。
中小企業庁(SBA)の保証を付ける際のル
ールでも、中小企業の20%以上のオーナーお
④実行後の管理
よび経営者は個人保証を求められる(個人事
a.モニタリング
業の場合は、債務者は無限責任となるため、債
務者自身が保証人となることはない。
)。
トランザクショナル型のバンキング、特に
クレジットスコアリング方式では、貸出金ポ
つまり、日本で言われる「米国の中小企業
ートフォリオの一部においてはデフォルトが
では社長が会社の債務の個人保証を行わない
発生することを確率統計的に織り込み、貸出
ため、万一事業で失敗しても再起が可能であ
実行時にはデフォルト損失をカバーできるよ
る」ということは一般論としては正しくない。
うな金利を設定する。また、銀行によっては、
もっとも、個人で保証できる程度はたかが
スコアの定期的な見直しや、倒産確率分析に
知れているので、個人保証を徴求していない、
基づいたオフサイトモニタリングを行ってい
とする銀行がゼロというわけではない(ただ
ることから、従来型の訪問ベースのモニタリ
し、筆者のこれまでの米銀約20行の取材では1
ングは行わず、せいぜい年に1度、決算書類・
行のみ。)。
財務諸表の送付を義務付ける程度である。
46
信金中金月報 2004.12
一方、フェイストゥフェイスのキャラクタ
コンピュータシステムに依存するモニタリ
ー貸付の場合は、定期的な企業訪問を行うこ
ングが中心のクレジットスコア型に対し、労
とが普通である。貸付先が正常先であれば、そ
働集約型の財務諸表・コベナンツ型やリレー
の顧客の営業上の重要性により訪問頻度は異
ションシップ型においては、ローンオフィサ
なってくるが、重要なら4半期に1度かそれ以
ー個人のバンカーとしての能力に依存する点
上、通常先は半年に1度、少なくとも年に1度
が大きい。
は訪問する、というのが一般的なコミュニテ
このため、経営者レベルで考えるべきこと
ィバンクの顧客訪問頻度である。この訪問の
はどのようにモニタリングを行うチームを編
趣旨は、営業上の理由、たとえば投資商品の
成し、営業・審査担当者を配置するかが重要
クロスセリングや、オーナー経営者自身の住
となる。
宅ローンニーズへの対応などの取引深耕目的
ニューヨークのある中堅銀行では、重要な
のほかに、業況管理、つまり既往貸付のモニ
顧客10∼15先は技能レベルの高い上級のマネ
タリング上の理由も含まれる。
ージャーに担当させている一方、年商5億円規
もちろん電話ベースのコミュニケーション
模の会社が最初に1億円借りてその後増えも減
はさらに頻繁に行われている。概して言えばモ
りもしないような場合は、ロータッチアカウ
ニタリングの頻度もケースバイケースだが、貸
ントといって単に維持するだけなので、集約
出金額の大きさによるといってよいであろう。
させて下位レベルのマネージャーに担当させ
モニタリングする内容は多岐にわたる。毎
ている。
年の訪問で経営者に会って業界の動向、課題、
顧客の流出の有無、キャッシュフローの動向
b.人事
などについてヒアリングを行う。もちろん、不
リレーションシップバンキングを行ってい
動産担保の調査も年に1回は行うのが普通であ
るコミュニティバンクは小規模で支店の数も
り、有効期間が5年のUCCファイリングであれ
職員の数も少ないため、転勤も少ない。融資
ば、担保設定の更新も必要となる。
担当役席者は同じ企業を何年も担当すること
財務諸表・コベナンツ型の貸付のモニタリ
も珍しくない。このため、企業としては馴染
ングにおいて、事業計画をチェックする場合、
みのバンカーに気軽に相談することが可能と
例えば50%成長をもくろむ企業に対しては、そ
なる。
れが20%成長になったらどうなるか、などの
また、小さな銀行であれば頭取などの上席
センシティビティ分析を行う。また、いつも
者に気軽に会いやすい。中小企業がコミュニ
は2%成長の会社が10%成長する場合も、なん
ティバンクを好む最大の理由の一つである。競
らかのリスクをとっている場合があるので要
合他行との最大の差別化の鍵は、しばしばバ
注意である。
ンカーの質であり、人材の重要性が高い。
研 究
47
一方、トランザクショナル型、特にクレジ
ットスコアリング型の場合は、債務者から見
でなければならない、とする中西部のコミュ
ニティバンカーもいた。
ると遠く離れたセンターで審査や事務処理が
また、コミュニティバンクの場合は債務者
行われているため、担当者との関係は極めて
だけを見るのではなく、その債務者のコミュ
希薄である。さらに、企業はバンカーの質と
ニティにおける評判を常に気にしている。何
いうよりは価格や利便性、また銀行のブラン
か懸念事項があった場合、早期に対応すれば
ドネームで銀行を選ぶため、いかに人件費を
問題が解決することも考えられ、解決しない
抑えて効率的に事務処理を行えるか、が鍵と
までも傷は浅くなるといえるだろう。
なるだろう。
【業績悪化の企業に対しては?】
100年の歴史を持つ優良企業でも、9.11テロ
⑤問題債権への対応
事件のようなアクシデントもあるので、短期
今や建前論のようにも聞こえてしまうが、不
的に赤字となるような場合もある。そうした
良債権をまず作らないことがリレーションシ
場合、すぐに業績が回復する場合もあるし、自
ップバンキングの基本といえる。
己資本を再調達してやり直す会社もある。業
特に、小さなコミュニティバンクの場合は、
績が悪くなったからといって常に銀行が融資
大きな取引先が5社も同時にデフォルトとなれ
をやめて関係を切るわけではない。ただし、関
ば、銀行自体が破綻・ペイオフ対象となる、と
係を切らなければならない会社もある。すべ
いうのが米国の現状である。よって、小型の
てケースバイケースである、とするニューヨ
コミュニティバンクほど不良債権には敏感で
ークの銀行もある。
あるといえる。
【不良債権を作らない方法】
不良債権を作らない方法は、クレジットス
【問題債権の管理】
ある大型コミュニティバンクでは、問題債
権を要注意リストに載せて管理している。
コアリングの場合は先述のとおり、スコアの
ローンオフィサーは、自分のポートフォリ
更新や早期警戒システムの導入となるが、リ
オのうち問題のある債務者を申告して銀行の
レーションシップ型の場合はやはり営業を兼
要注意リストに載せることにペナルティはな
ねて顧客を訪問し、業況を絶えず探っておき、
い。むしろ、自分で申告せずに審査部の指摘
業況の変化を見逃すことがないような状態に
で載せた場合はペナルティとなる。
しておくことである。
リレーションシップというのは、単にフレ
現場の融資担当者レベルでは、毎月要注意
リストのレビューを行っている。
ンドリーということではない。オープンなコ
取締役会レベルでは四半期に一度要注意リ
ミュニケーションを行い、パフォーマンスを
ストの融資のレビューの委員会を行う。また、
重視し、銀行というものは株主のためにタフ
必要に応じて、要注意リストの債務者に対する
48
信金中金月報 2004.12
行動計画であるアクションリストを作成する。
手と一緒に考え、解決策を考えることが大事。
なお、この銀行では行内の債務者格付けを
例えば、融資の条件を変える。金利を低くし
本部の審査部が決定している。現場のローン
たり、支払いスケジュールを変えたりするこ
オフィサーは格付けに対して言い分がある場
とを考える。単に、返せとは言わない。ただ
合は融資委員会で意見を述べることはできる。
し、決断しなければならないときは決断する。
ただし、この場合でも99%は審査部のアナリ
回収見込みがない場合は、もはや融資を更新
ストが正しく、現場の融資担当者は自分の顧
できないと伝える。
」
客の格付けを高くしたがる傾向がある、との
ことである。
【財務諸表・コベナンツ型貸付の不良化】
財務諸表・コベナンツ型の貸付の場合、先
述のとおり、重大なコベナンツ違反がパター
3.考察
【中小企業向け貸付の課題】
中小企業向け貸付の最大の課題は、情報の
不透明性である。
ンとして現れる状況が18か月続いた場合、関
透明性があり、市場で債券やCP発行による
係を切る、とする中堅銀行もある。まだ他の
直接金融が可能な大企業であれば、そもそも
銀行なら貸してくれるような状況で関係を絶
銀行を必要としない。
つことが銀行にとっても顧客にとっても重要
であるとその銀行では考えている。
【不良債権発生時の行動】
銀行が必要な理由は、一般の投資家では判
断がつかない不透明な情報の処理を行うこと
ができるからであり、情報処理能力が銀行と
資産の質を高くするためには、原則として
しての能力の優劣を決めてきたとも言える。そ
は不良化する可能性の高い融資を早く見つけ
こで銀行の仕事には、不透明な中小企業の情
て対応すべきである。
報を可能な限り透明にする能力と、それでも
テキサスの金融危機をサバイバルしたコミ
ュニティバンクの経営者は次のように語って
くれた。
「債務者が不良貸付先となってしまっ
まだ不透明な情報に基づき与信判断を行える
能力のいずれもが求められてきた。
【不透明な情報を極力透明にする方法】
た場合、まず一緒に解決策を考える。当行に
不透明な情報を極力透明にする方法には…
できることを考える。例えば、政府中小企業
①監査済みの財務諸表を分析して企業価値を
庁(SBA)保証付きのローンにしたり、ほか
推定する。
の銀行、アセット・ベース貸付を行うファク
②中小企業自体の価値を推定することは諦め、
タリングやリースカンパニーなどのノンバン
価値が明らかな担保に基づく貸付を行う。
クを紹介する。単に、顧客が延滞したから関
③母集団となるデータから確率・統計に基づ
係をすっぱり切るわけではない。それが評判
きサンプルとしての企業価値を推定する。
に繋がる。場合によっては、銀行側で、借り
④債務者との長期の信頼関係に基づき定性的
研 究
49
な情報を収集した上で企業価値を推定する。
業自体の価値を推定することは諦め、価値が
…という4つの方法がある。①∼③に基づくの
明らかな担保に基づく貸付を行う道に走るこ
がトランザクショナル型貸付であり、④に基
ととなった。
づくのがリレーションシップ型の貸付である。
しかしながら、当時は価値が明らかだと思
トランザクショナル型では価値を定量化し
っていた不動産の価値は、実際には不確実で
た上で数値として推定できるのに対し、リレ
あったことがその後に判明したものの、その
ーションシップ型は価値を数値化できない点
ときはすでに手遅れ、という事態となってし
に大きな違いがある。
まった。
数値化できるトランザクショナル型であれ
このため、原点に回帰し、①∼④(②は不
ば大銀行が大量に処理することが可能である
動産担保を除く)を改めて検討しよう、という
が、数値化できない定性的なリレーションシ
動きを日本ではリレーションシップバンキン
ップ型であれば、債務者と密接な関係を持つ
グの見直しと呼んでいるように見受けられる。
以外に価値を推定する方法がなく、結果的に
一方、米国では④のみをリレーションシッ
地元密着型の小規模金融機関にしか行えない
貸付となる。
【それでも不透明さは残る】
プバンキングとみなしている。
【米国におけるリレーションシップバンキング】
米国のリレーションシップバンキングは特
ただし、可能な限り透明化を図っても、そ
に目新しいバンキングモデルではない。債務
れでもまだ中小企業の情報は不透明である。し
者に密着し、また債務者のいるコミュニティ
かも将来の正確な予測は誰にもできない。一
に密着して関連した情報を収集し、債務者の
方、銀行は情報が不透明だからといって、判
信用力を判断する、という古典的ともいえる
断から逃れることはできない。
手法であり、日本でも以前から行われてきた
このため、最終的には銀行経営者による、不
方法と大きく異なることはない。
透明な情報に基づき与信判断を行える能力が
①∼③のトランザクショナル型と比較する
銀行の成否を決めることとなるが、もちろん
と、リレーションシップ型、特にキャラクタ
それは容易なことではない。
ー貸付には情報の不透明感がまだ残り、経営
よって銀行経営者としては極力①∼④を駆
使して情報の透明化を図ることにより、最終
的な判断の負担を軽くしようとする。
【日米のリレーションシップバンキングの意味
合いの違い】
こうした動機付けのもと、1980年代の米国
テキサスや、バブル期の日本では、②中小企
50
信金中金月報 2004.12
者による最終的な判断の負担が重いと言える
かもしれない。
ただし、そこから逃げずに、あえて判断を
行う、という意識が米国のリレーションシッ
プは強いように見受けられる。
よって、担保や保証はもちろん徴求するが、
それらに過度に依存することはなく、依存す
るのは自行の定性的な情報の処理能力と経営
ことを勘案すると、中小企業向けクレジットス
者の判断力となる。
コアリングの開発については、日本の中小企業
【日本のリレーションシップバンキングへの示唆】
向け貸付にとって急務であるとも考えられる。
日本におけるリレーションシップバンキン
モニタリングに関しては、監督当局が行う
グの見直しのなかで、トランザクショナルバ
銀行のモニタリングと銀行が行う企業のモニ
ンキング的要素が盛り込まれているのは、融
タリングには共通点が多い。
資に係る収益確保のため、あるいは効率性の
例えば、預金保険機構から見れば、問題銀
向上を図る観点から、米国等の事例を取り入
行は早期に発見して早期に手を打つことが1980
れているといった背景があると考えられる。
年代の金融破綻の最大の教訓であり、それが
信用金庫においては、特定の顧客層や顧客
現在導入されている早期是正措置の導入やオ
ニーズに特化して金融業務を展開しているわ
フサイトモニタリングシステムの発達に繋が
けではなく、中堅、中小、個人と幅広く金融
っているが、これは銀行からみた中小企業向
業務を行っていることを前提とすると、顧客
け貸付にもいえるだろう。
層や顧客ニーズ、融資内容等VS金融機関の収
つまり、早期是正措置的な財務制限条項(コ
益性・効率性という観点から、顧客属性に応
ベナンツ)を厳格に設定し、取引先企業が対
じたアプローチ方法の検討も含めて、リレー
象となった場合は、早急に必要な措置をとれ
ションシップバンキング、トランザクショナ
る状況にしておくことは重要である。
ルバンキングを上手く使い分けることが必要
であると考える。
こうしたなか、日本の信用金庫の規模が米
また、監督当局のオフサイトモニタリング
制度のような、倒産確率の把握を行う破綻予
知システムの導入も効果があると考えられる。
国のコミュニティバンクよりもかなり大きい
研 究
51
〈取材等協力先〉
アドバンス銀行
ブルーバレー銀行
ニューヨーク銀行
ビューシー銀行
シティバンク
シチズン銀行(ワクサハチエ)
コメリカ銀行(ロングビーチ)
コミュニティ・キャピタル銀行
デニソン・ステイト銀行
フェア・アイザック社
シカゴ連邦準備銀行デヤング博士
ファースト・バンク・アンド・トラスト
フリート銀行
JPモルガン・チェースマンハッタン銀行
ニューヨーク・ビジネス・デベロップメント・コーポレーション
ノースダラス銀行
ノースフォーク銀行
レイベ銀行
RSI銀行
中小企業庁(SBA)
シリコンバレー銀行
ショア銀行
サミット銀行
ウェブシティ銀行
ビレッジ銀行
〈参考文献〉
Allen, L, DeLong, G., & Saunders, A, “Issues in the Credit Risk Modeling of Retail Markets,” Journal of Banking & Finance 28, 2004,
pp. 727-752
Berger, A., N., & Udell, G. F., “Small Business Credit Availability and Relationship Lending : The Importance of Bank Organizational
Structure,” Economic Journal, 2002
Hofstede, G., Cultures and Organizations : Software of the Mind, McGraw Hill, UK, 1997
Logan, J.B., “Asset Based Lending,” The Banker’s Handbook Third Edition, Baughn, W. H. et al edit, Dow Jones Irwin, Illinois, 1988
青木 武「米国のリレーションシップバンキング―米国金融機関の中小企業向け貸付の理論と実践―」
『New York通信』第
15-1号(2003年6月25日)
52
信金中金月報 2004.12
(参考)米国の個人の信用履歴・クレジットスコアについて
借金の残高が多いとスコアは低くなる。
1.個人向け信用履歴およびクレジッ
トスコア(個人FICOスコア)
米国で、クレジットカードおよび住宅ローン
のような個人の融資与信判断用の信用履歴を
③信用履歴の長さ15%
最低6か月必要。
④最近の借入れ申込の頻度など10%
⑤債務の種類や口座数10%
管理している主な業者は、Experian、Equifax、
TransUnionの三社である。銀行やクレジット
(2)個人FICOスコアに反映されない事項
カードの発行会社は、通常、この三社のいず
人種、宗教、国籍、性別、婚姻状況につい
れか(または全社)から申請者の信用履歴お
ては、法令により勘案してはいけない事項と
よびそれを点数化した個人FICOスコアを入手
なっている。また、FICOは年齢、住所も勘案
している。この3社は、フェア・アイザック社
していない。さらに、収入、職業、役職、勤
が開発したクレジットスコアリングモデルを
務年数、などは、銀行等の貸手が考慮すべき事
用いて個人FICOスコアを算出している。
項として、FICOスコアには反映されていない。
2.個人FICOスコアの概要
3.その他
(1)個人FICOスコアに反映される事項
個人FICOスコアは下記の5種類のデータに
ブラック(マイナス)情報のみを見る日本
の信用情報機関と異なり、FICOスコアは、プ
より算出される。なお、数字(%)はそれぞ
ラス情報とマイナス情報の両方を用いている。
れの重要度の目安であり、債務者により異な
個人FICOスコアは300∼850点であり、足切
る場合がある。
り点は貸手により異なる。なお、個人FICOス
①返済履歴35%
コアは、債務を期限内に返済すること、債務
借金を期限どおりに返済しなければスコア
残高を減らすこと、等により債務者側の努力
は低くなる。
で点数を上げることが可能となっている。
②債務残高30%
(出所)フェア・アイザック社(FICO)ウェブサイト(http://www.myfico.com/)
研 究
53
環境変化への適応が求められる中小小売業
−既存事業の見直し・底上げから新分野への進出へ−
信金中央金庫 総合研究所副主任研究員
松尾 良太
(キーワード)中小小売業、環境変化、変化適応、新分野進出、顧客ニーズ、コミュニケー
ション
(視 点)
近年の小売業は、規制緩和による店舗の大型化や営業時間の延長、大手小売業による出店攻
勢、消費の多様化などといった長期的な環境変化のなかで過当競争ともいえる状況下にある。
とりわけ大手小売業と比べて体力に劣る中小小売業の経営は一層厳しい環境下にあるといって
も過言ではない。
とはいえ、こうしたなかでも業況の良い中小小売業が存在しているのもまた事実である。こ
れら業況の良い中小小売業は、既存事業の底上げを図る一方で、経営環境の変化に適応するた
めに、新しい事業分野に進出することで経営の安定と業績の向上を図っているケースが多い。
本稿では小売業における経営環境の変化と中小小売業の現状を概観した上で、中小小売業が既
存事業の見直し・底上げから一歩踏み込んだ新分野進出へと取り組む際の留意点等を述べていく。
(要 旨)
●
中小小売業は全般に厳しい事業環境下におかれているが、個々の中小小売業者の業況につい
ては、外部環境の影響もさることながら、むしろ個々の事業者における商品構成や販売方
法、顧客サービスなどに起因する“何か”に大きく影響を受けているものと考えられる。
●
今後も厳しい事業環境下で生き残りを図らねばならない中小小売業者は、過去の成功体験に
とらわれず、いま一度小売業の原点ともいえる「顧客の視点」に立ち返り、顧客とのコミュ
ニケーションを通じて潜在ニーズを察知するなど、環境変化に積極果敢に対応し続けていく
必要があろう。
●
そのうえで、中小小売業は、その強みである“近隣性”や“親近性”、さらには“対面性”
などを活かす形で既存事業の見直し・底上げを行うに留まらず、的確な環境変化適応のも
と、一歩踏み込んだ新分野進出を模索してみることも重要になっていくと考える。
54
信金中金月報 2004.12
図表1 大店立地法に基づく新設店の届出件数
1.長期的な環境変化の中で厳
しい状況下にある中小小売業
(件)
900
800
782件
700
(1)中小小売業をとりまく長期的な
環境変化
中小小売業は長期的な経営環境の
600
400
100
0
いる。環境変化の主な要因は、①保
護的施策(参入規制等)の緩和・撤
廃、②競争力の強い大手小売業態の
449件
300
200
変化により、厳しい状況に置かれて
638件
500
193件
2000
2001
2002
2003 (年度)
(備考)1.大店立地法では売場面積1,000m2以上の店舗の出店に際し都道府県、
政令指定都市への届出が必要とされている。
2.経済産業省『大規模小売店舗立地法 第5条第1項(新設)の届出
件数』より信金中金総合研究所作成
台頭、③消費者ニーズの多様化、などである。
で大型店の出店や営業時間等の規制は事実上
これらの環境変化により、わが国における小
緩和されてきている。ちなみに、03年度の大
売業の圧倒的多数を占めていた中小小売業の
店立地法に基づく新設店舗届出件数は、大店
存立基盤は大きく揺らぎ、その経営状態は総
立地法施行以来最高水準の782件にも及んでお
じて厳しい状況にあると考えられる。
り、届出件数は増加の一途をたどっている(図
表1)。今後も大型店の出店は高水準が続くと
①保護的施策(参入規制等)の緩和・撤廃
近年の法規制の緩和・撤廃により小売業の
事業環境は大きく変化してきた。例えば、2000
みられるなど、規制緩和の潮流の中で中小小
売店の経営環境は基本的に今後も厳しい状況
が続くものと予想される。
年5月の大規模小売店舗法(以下、
「大店法」と
いう。)の撤廃と、同年6月の大規模小売店舗
立地法(以下、「大店立地法」という。)の施
②競争力の強い大手小売業態の台頭
競争力の強い大手小売業態の相次ぐ台頭も、
行もそのひとつとしてあげられよう。従前の
中小小売業者の事業環境を大きく変えた要因
大店法は「中小小売業の事業機会確保」とい
のひとつとなってきたと考えられる。
う色彩が強く、大型小売店舗の新たな出店に
例えば、郊外住宅の増加やモータリゼーシ
より、近隣の中小小売業の事業機会が失われ
ョンの進展によるライフスタイルの変化に対
る懸念がある場合、大型店舗の出店に対し厳
応する形で大手スーパーや大型専門店等が郊
しく規制を行うことで、事実上、中小小売業
外やロードサイドといった場所への出店を加
にとっては保護的施策としての色彩を帯びて
速させた結果、商業立地がここ15∼20年の間
いた。それに対し、大店立地法は「地域環境
に大きく変化してきたことがあげられる(図
保全」や「消費者利益」を主な目的としてス
表2)
。
タートした経緯もあり、その後の運用のなか
もともと小売業は立地産業であり、人が多
研 究
55
く集まる場所に出店することが繁盛
図表2 総合スーパーの立地状況
駅周辺型
する条件の一つとされている。この
ことから、かつての商業立地の中心
市街地型
1975年
∼1984年
住宅地背景型
42.6
ロードサイド型
20.6
その他
18.8
16.5 1.4
は、駅周辺など消費者が多く集まる
場所であった。しかし、近年の商業
1985年
∼1994年
立地の中心は“多く集まる場所”か
31.8
19.2
19.8
27.4
1.7
らその商業施設の集客力そのものに
1995年
∼2002年
より“多く集めることが可能な場所”
18.4
10.4
18.7
48.2
4.3
(%)
0
へと変化しており、その傾向は年々
20
40
60
80
100
(備考)1.経済産業省『商業統計(2002年)』より信金中金総合研究所作成
2.1975年以降に開設された既存総合スーパーの開設年別立地状況
加速していると考えられる。
例えば、イオンの関連会社でショッピング
舗の出店により来街者が増加した」と答えた
センター事業を手がけているイオンモール㈱
商店街の方が、
「大型店舗の出店がなく来街者
では、工場跡地での大規模ショッピングセン
が増えた」と答えた商店街よりも圧倒的に多
ター開発をここへきて積極的に進めている状
いこと、あるいは「大型店舗の退店した商店
況にある(図表3)。こうした都市近郊の工場
街」は「退店していない商店街」よりも来街
2
跡地や農村地域への売り場面積数万m レベル
者が減ったという状況もあることには、あらた
の大型ショッピングモールの出店の動きは、商
めて留意しておく必要があるだろう(図表4)
。
業立地の変化を加速させ、多店舗展開や立地
すなわち、中小小売業にとって近隣の大型店
移転が事実上困難な中小小売業の事業環境は
舗は、必ずしも脅威といった存在ばかりでは
総じて厳しさを増している。
なく、むしろ共存共栄を図るべき存在となっ
しかし、その一方で、最近では土地価格の
ているケースも少なくないとみられる。いず
下落と人口の都市回帰により、有力スーパー
れにしても、大手小売業者の立地戦略の動向
等による都市部への出店回帰といった現象も
によって、中小小売業者の事業環境が大きく
一部にみられるようになってきている。こう
変わってきたことはいうまでもないであろう。
したなか、中心市街地の商店街では「大型店
次に、立地環境以外の面に着目すると、こ
図表3 イオングループの工場跡地等への出店状況
従前の所有者
現在の状況
オープン年月日
店舗規模
鐘紡グループ
イオン鈴鹿ショッピングセンター
1996年11月29日
6万6,554m
2
㈱クラレ
イオン倉敷ショッピングセンター
1999年 9 月21日
7万1,706m
2
日清紡績㈱
イオン岡崎ショッピングセンター
2000年 9 月22日
6万9,118m
2
敷島紡績㈱
イオン高知ショッピングセンター
2000年12月23日
5万4,190m
2
住友金属鉱山㈱・住友林業㈱(社宅跡地)
イオン新居浜ショッピングセンター
2001年 6 月30日
5万0,215m
2
いすゞ自動車㈱
イオン大和ショッピングセンター
2001年12月 1 日
3万3,153m
2
(備考)イオンモール㈱ホームページ「工場跡地等提供企業と開発実績」より信金中金総合研究所作成
56
信金中金月報 2004.12
こ20年ほどの間におけるコンビニエンススト
図表4 大規模店舗の出店の有無と来街者数が
増加したとする商店街の割合
アやドラッグストア、リサイクルショップあ
(%)
25
るいはカタログ販売やインターネット販売な
どの無店舗販売業といった、新興の小売業態
15
の台頭にもめざましいものがあった。
10
0
で出現したコンビニエンスストアは、
「店舗コ
などをパッケージ化してフランチャイズ展開
を図り、74年といわれる第1号店の出現以来、
5.7
5
例えば、
「近くて便利」といったコンセプト
ンセプト」
「販売ノウハウ」
「科学的管理手法」
20.5
20
出店あり
出店なし
(備考)1.中小企業庁『中小企業白書(2004年版)』より信金
中金総合研究所作成
2.「出店あり」とは、過去3年以内に商店街の中に大規
模店舗が出店した商店街を指す。
3.「出店なし」とは、過去3年以内に商店街の中に大規
模店舗が出店しなかった商店街を指す。
いまや日本全国に4万店舗以上の店舗数を擁す
とする新業態の台頭によって大きな影響を受
るまでの一大勢力となっており、中小小売業
けてきたのである。
者にとって身近な競合店となっているケース
③消費者ニーズの多様化
もめずらしくないとみられる。
また、カタログ販売やインターネット販売
わが国の消費者ニーズは、消費の成熟化と
といった無店舗販売業の市場拡大も、中小小
併せて多様化が進展している。総務省「家計
売業者の事業環境に少なからぬ影響を及ぼし
調査」によると、家計消費全体が基本的に伸
ていると思われる。すなわち、70年頃にテレ
び悩むなかで、その支出の内訳は、食費、被
ビショッピングなどから本格的に始まったと
服・履物などへの支出(=店舗売上につなが
いわれる無店舗販売は、セシールや千趣会など
りやすい支出)が減少傾向にある一方で、保
といった新興企業がけん引する形ですでに小
健医療、教養娯楽、交通・通信など“サービ
売マーケットで一定の地位を確立している。最
ス”の支出(=店舗売上につながりにくい支
近では、
インターネットショッピング
の市場拡大はめざましいものがある。
図表5 インターネット販売市場規模
(億円)
45,000
経済産業省の資料によると、わが国
40,000
のインターネット販売の市場規模は、
35,000
98年第一回調査よ 4兆4,240億
り約69倍市場規模
が拡大している
30,000
98年の645億円から03年の4兆4,240億
25,000
円まで急拡大している(図表5)。
20,000
2兆6,850億
1兆4,840億
15,000
以上述べてきたように、中小小売
業をとりまく事業環境は、競合店と
5,000
0
いう“リアル”の店舗のみならず、
インターネット等のチャネルを主軸
8,240億
10,000
3,360億
645億
1998
1999
2000
2001
2002
2003(年)
(備考)経済産業省、電子商取引推進協議会、㈱NTTデータ経営研究所より
信金中金総合研究所作成
研 究
57
出)が伸長している(図表6)。したがって、
なお、これを従業者規模別にみると、19名
店舗における“物販”を基本とする旧来タイ
以下の小規模事業所が99年比7.9%減、20人∼
プの中小小売店は、ますます苦戦を強いられ
49人の中規模事業所が同2.2%減と、ともに減
るような環境下にある。
少となっている一方で、50名以上の大規模事
以上のように、中小小売業は長期的にこう
業所では逆に同5.9%の増加になっている(図
した経営環境の変化に直面してきたわけであ
表8)。これはすなわち、小規模零細事業所が
るが、これらは、既存の取扱いアイテムや経
数の上で圧倒的多数を占めるという業界構造
営スタイルではもはや対応困難とみられるケ
の一角が崩れ、大型店による寡占化が急ピッ
ースも多いだけに、旧来の発想を超えた対応
チで進展してきていることの証といえる。
が求められているのが現実となっている。
なお、減少している事業所の業種を商業統
計上の括りでみると、
「飲食料品小売業」が最
(2)減少著しい小規模事業所
も多く減少しており、次に「衣服・身の回り
長期的な環境変化を受けて、小売業の事業
品小売業」となっている。一方、
「ドラッグス
所数も長期的に減少傾向をたどっている。経
トア」、「ホームセンター」、「コンビニエンス
済産業省の『商業統計表(2002年)
』によると、
ストア」など新興のチェーン店企業の躍進が
わが国の小売業の事業所数は82年の約172万事
著しい業種・業態においては逆に事業所数が
業所をピークに減少を続け、02年は約130万事
増加している。特に、ドラッグストアは99年
業所と、この20年間でピーク時の約2割にあた
と比較しても、店舗数で34%、販売額で66%、
る42万事業所強の減少となった(図表7)。
売場面積で75%と大きく増加している。
図表6 消費支出に占める割合の推移(10大消費品目)
(%)
30.0
1988年
1993年
1998年
家具・
家事用品
被服及び 保健医療
履物
2003年
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
食料
住居
光熱・
水道
交通・
通信
教育
(備考)1.総務省『家計調査』(二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く))
2.その他の消費支出には、たばこや理美容サービス等の諸雑費、交際費、仕送り金等を含む。
3.中小企業庁『中小企業白書(2004年版)』より信金中金総合研究所作成
58
信金中金月報 2004.12
教養娯楽
その他の
消費支出
図表7 小売業の事業所数等の推移
図表8 規模別事業所数推移表
事業所数(事業所)、
販売額(千万円)
2,000,000
従業者数(人)
9,000,000
1,800,000
8,000,000
7,000,000
6,000,000
(事業所)
1,800,000
(%)
200
1,600,000
180
1,400,000
160
1,600,000
1,200,000
1,400,000
1,000,000
1,200,000
800,000
140
120
100
5,000,000
1,000,000
4,000,000
800,000
80
600,000
200,000
3,000,000
600,000
2,000,000
0
400,000
1,000,000
200,000
0
0
1976 79
82
85
従業者数(左軸)
88
91
94
97
99 2002(年)
販売額(右軸)
事業所数(右軸)
(備考)経済産業省『商業統計表』より信金中金総合研究所作成
60
大規模事業所数(右軸)
中規模事業所数(右軸)
小規模事業所数(右軸)
小売事業所数(左軸)
400,000
1991
1994
1997
40
20
1999
2002(年)
0
(備考)1.経済産業省『商業統計表』より信金中金総合研究所
作成
2.規模別事業所数は91年を100とし各調査時の趨勢値
を算出
3.商業統計調査は、52年から76年までは2年ごとに、
94年までは3年ごとに、97年以降は5年ごとに調査を実
施し、その中間年(調査の2年後)に簡易な調査を実
施している。
このように、現在の小売業はかつての中心
的存在であった、旧来タイプの小規模事業所、
つまり“まちの商店”が減少の一途をたどる
一方で、大型化の著しい総合スーパーや新興
2.厳しい経営環境のなかでも業況の
良い中小小売業は存在する
(1)相対的に厳しい状況が続く中小小売業の
のコンビニエンスストア、ドラッグストア、ホ
景況感
ームセンターといった専門店チェーンなどが
中小小売業の業況は、他の業種と比べても
代わって台頭しているという状況が年を追う
非常に厳しい状態にある。当研究所が全国の
ごとに鮮明化しつつある(図表9)。
信用金庫の協力を得てとりまとめている「全
国中小企業景気動向調査」によれば、中小小
図表9 規模別事業所数の推移表
(単位:事業所)
小規模小売事業所
中規模小売事業所
大規模小売事業所
合 計
1991年
1,550,037
33,052
8,134
1,591,223
1994年
1,447,896
42,000
10,052
1,499,948
1997年
1,365,214
43,316
11,166
1,419,696
1999年
1,340,925
51,883
14,076
1,406,884
2002年
1,234,431
50,712
14,914
1,300,057
2 人以下
3 人∼ 4 人
5 人∼ 9 人
10人∼19人
合 計
1991年
847,185
416,940
214,007
71,905
1,550,037
1994年
764,772
370,944
222,552
89,628
1,447,896
1997年
708,999
350,306
212,446
93,463
1,365,214
1999年
685,010
317,169
226,807
111,939
1,340,925
2002年
603,426
297,583
218,667
114,755
1,234,431
(備考)1.経済産業省『商業統計表』より信金中金総合研究所作成
2.小規模事業所19人以下 中規模事業所20人以上49人以下 大規模事業所50人以上
研 究
59
売業の業況判断D.I.(D.I.とは、業況が「良い」
っているが、全業種中で「売上の停滞・減少」
とする企業が全体に占める構成比から、
「悪い」
を経営問題としている割合は中小小売業が最
とする企業の構成比を差し引いたもの)は、他
も多く、こうした点からも中小小売業がとり
の業種と同様、バブル崩壊から現在に至るま
わけ厳しい状況にあることがわかるであろう。
で10年以上もの間マイナスの状態(
「悪い」と
さらに資金繰り面でみても中小小売業は相
回答した企業の割合の方が「良い」と回答し
対的に非常に厳しい状態となっている。すな
た企業の割合を上回っている状態)が続いて
わち、資金繰り判断D.I.をみると、中小小売業
いる。
は全業種中で常に最も厳しい水準にある(図
なお、直近の04年7∼9月期の調査では、中
表11)
。しかし資金繰りが厳しい状態であるに
小企業全体の業況が改善基調にあるなかで、中
もかかわらず借入を実施した中小小売業の割
小小売業も同様に改善基調にはあるものの、6
合は25.4%(04年7∼9月期)と他業種と比べさ
業種中で業況判断D.I.の水準が最も厳しい状況
ほど多くない。これは、小売業が基本的に現
にあり、中小小売業の経営環境が相対的にも
金商売であるために、季節商品の仕入れなど
厳しい状態にあることがうかがえる(図表10)
。
といった大量仕入れ以外で運転資金の需要が
こうしたなか、中小小売業者が認識している
少ないのに加えて、店舗の取得や改装などを
自社の経営課題として最も多くあげられてい
除けば設備資金の需要が他業種に比べ少ない
るのが「売上の停滞・減少」で、次いで「同
ためと考えられる。中小小売業はもともと家
業者間との競争」
「大型店との競争激化」とな
族労働を中心とした生業性の強い業種である
図表10 業況判断D.I.の推移(01年1∼3月期から04年7∼9月期、n=14,272)
(D.I.値)
0
△5
△10
△15
不動産業
(n=945)
△20
△25
△30
製造業
(n=5,080)
全業種
(n=14,272)
△35
サービス業
(n=1,657)
卸売業
(n=1,957)
建設業
(n=1,921)
小売業
(n=2,712)
△40
△45
△50
△55
△60
(備考)1.信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」のデータをもとに作成
2.業況判断D.I.とは業況が「良い」とする企業が全体に占める構成比から「悪い」を差し引いたもの。
60
信金中金月報 2004.12
図表11 資金繰り判断D.I.の推移(01年1∼3月期から04年7∼9月期、n=14,272)
(D.I.値)
0
△5
△10
△15
卸売業
(n=1,957)
△20
全業種
(n=14,272)
サービス業
(n=1,657)
建設業
(n=1,921)
不動産業
(n=945)
製造業
(n=5,080)
△25
小売業
(n=2,712)
△30
△35
△40
△45
(備考)1.信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」のデータをもとに作成
2.資金繰り判断D.I.とは資金繰りが「良い」とする企業が全体にある構成比から「悪い」を差し引いたもの。
ことから、
「日々の生活が可能な売上が確保で
月期)をみると、自社の業況について「良い」
きれば良い」といった経営スタンスにあるケ
もしくは「やや良い」と回答している中小小
ースも多いとみられる。したがって、資金繰
売業は、331先(全体の12.2%)存在している。
りが厳しくとも借入をせずに個人資産などか
これは、中小小売業者が全体としては規制緩
らの補填により経営を継続できてしまってい
和や過当競争などといった厳しい経営環境に
るケースも実は少なくないものと推察される。
おかれているものの、個別にみれば顧客に支
持され続けることで結果的に業況が「良い」中
(2)こうした厳しい経営環境下でも業況の良
い中小小売業は存在する
小小売業も実在していることの証にほかなら
ない。
これまで述べてきたように、中小小売業は
なお、自社の業況について「良い」もしく
全般に極めて厳しい状況下にあることはもは
は「やや良い」と回答している中小小売業を
や疑いをはさむ余地のないところであろう。と
業種別にみると、
「飲食料品小売業(90社)
」や
はいえ、このような厳しい経営環境の中にお
「衣服・身回品小売業(43社)」が上位を占め
いても、業況の「良い」中小小売業が全体の
ている。反対に、自社の業況が「悪い」もし
中で少数派ではあるものの存在しているのも
くは「やや悪い」と答えている中小小売業
また事実である。
例えば前出の当研究所の「全国中小企業景
気動向調査」の直近の集計データ(04年7∼9
(1,178社)の業種をみても「飲食料品小売業
(297社)」や「衣服・身回品小売業(347社)」
が上位を占めていた。このように、同じ業種・
研 究
61
業態でも業況の良い企業もあれば業況の悪い
れていくことになりそうだ。
企業も存在しているということは、中小小売
3.既存事業の底上げ・見直しから一
歩踏み込んだ新分野への進出へ
業に関わる外部環境による影響もさることな
がら、むしろ個々の事業者における商品構成
(1)環境変化適応のなかで重要性が高まる新
や販売方法、顧客サービスなどに起因する“何
分野進出の模索
か”があるのではないかと推察される。
実際、業況が良いと回答している中小小売
一般に中小小売業者は、いわゆる経営資源
業の多くは、日々変化を遂げる外部環境に適
(ヒト、モノ、カネ、情報)に相応の制約(限
応すべく、既存事業の見直しや底上げ、ある
界)があるため、既存事業の見直しや底上げ
いはその延長線上で新しい事業分野への進出
を大きく超越して、新分野へ展開していくこ
等、何らかの具体的なアクションを起こして
とは容易ではなく、また現実的な対応とはい
いることが、当研究所のヒアリング調査等から
えないであろう。
しかし、既存事業がすでに成熟期(あるい
も、ある程度確認することができた(図表12)
。
中小小売業をとりまく外部環境は今後も一
は衰退期)にあるようなケースでは、既存事
段と厳しさを増していくとみられるが、こう
業の枠組みにとらわれすぎていては、外部環
したなかで個々の中小小売業者にとっては、外
境変化のスピードに取り残され、ひいては企
部環境の変化を的確に見極めながら、自社に
業の存続さえ危ぶまれる状況になりかねない
最も適した形での既存事業の見直しや底上げ、
のもまた現実といえよう。
したがって、今後の中小小売業者が厳しさ
あるいは新しい事業分野への進出等を模索し、
の増す環境変化への適応を模索していく過程
実践していくことの必要性がますます求めら
図表12 小売業の業況に関する回答状況(04年7∼9月期、n=2,712)
(単位:件)
良 い
やや良い
普 通
やや悪い
悪 い
37
294
1,203
921
257
企業例
所在地
ポイント
補聴器販売
神奈川県
アフターサービスに注力することで固定客を増加
リサイクル家電販売
鹿児島県
フランチャイズに加盟し業況好調
石油・ガソリン販売
愛知県
セルフ店舗に転換することで経営の効率化が図れている。
書籍販売店
静岡県
大型ショッピングセンターに出店することで売上の増加
酒類販売
北海道
宅配業者と提携し地酒の販売を行い売上増加
運動用具販売
神奈川県
直接海外のメーカーから商品仕入れすることで仕入単価の圧縮
(備考)「全国中小企業景気動向調査」の調査対象企業に対するヒアリング調査等をもとに信金中金総合研究所作成
62
信金中金月報 2004.12
では、短期的には既存事業の見直しや底上げ
薬舗」という個人経営の薬店に過ぎなかった。
も重要ではあるが、中長期的な観点からは、既
その後、同社では事業環境変化に適応する形
存事業の発展形として新しい分野への進出も
でさまざまな業態開発を繰り返すことにより、
ある程度視野に入れることで、幅広い見地か
今日の同社における主力店舗の原型ともいえ
ら企業の存続と経営基盤の強化を図っていく
る都市型店舗(ドラッグストア)という革新
ことが可能となっていくものと判断される。
的な新業態を開発し、今日に至るまでの事業
ただ実際には、中小小売業者の場合、環境
拡大の基盤を構築していったのである。同社
変化が自店の経営に悪影響を及ぼしつつある
では、その後も新規参入業者の増加や価格競
ことを認識できていたとしても、現実にはそ
争激化などの環境変化に適応していくために、
の環境変化に適応できず、座視しているケー
郊外型店舗の開発、調剤薬局の展開、プライ
スが多いのではないだろうか。
ベートブランド(PB)商品の開発による製造
しかし、すでに今日繁栄を遂げている大手
小売企業の発展過程に着目すれば、創業当時
(いうまでもなく中小企業だった)から今日ま
小売業(SPA)への展開などを精力的に進め、
トップ企業の地位を不動のものとしつつ今日
に至ることができたわけである。
で時代の変化に積極果敢に対応し続けてきた
これは、中小小売業者が経営環境の変化に
ことが、今日の大手小売企業としての地位を
適応すべく、既存事業の底上げや新業態の開
確立してきた“原動力”となっていたことを
発に挑んだことの延長線として新分野への進
うかがい知ることができる(図表13)。
出までも成功させたひとつの先進事例である
例えば、ドラッグストア最大手のマツモト
が、他業種と比べ総じて経営環境が厳しい中
キヨシといえども、1932年の創業時は「松本
小小売業者にとって、これらは決して別世界
図表13 大手小売業による業態等の革新の例
企業名
イトーヨーカ堂
現事業
総合スーパー
創業時の業種と変革
洋品店(1920年創業)から大量販売方式のスーパーマーケットへ
イオン
総合スーパー
衣料品販売店(1926年創業、株式会社岡田屋呉服店)から総合スー
パーへ
マツモトキヨシ
ドラッグストア
医薬品等の小売(1932年創業、個人経営松本薬舗)からドラッグス
トアへ
いなげや
食品スーパー
食料品販売業(1948年創業、株式会社稲毛屋)からセルフ販売業方
式のスーパーマーケットへ
ケーズデンキ
家電量販店
一般電気器具販売、電灯工事請負業(1955年創業、有限会社加藤電
気商会)から家電量販店へ
コメリ
ホームセンター
食料品販売(1952年創業、米殻商米利商店)からホームセンター事
業へ
セシール
大丸
カタログ通信販売
百貨店
衣料品の配置販売(1972年創業)から通信販売業へ
呉服店(1717年創業)から百貨店へ
ジーンズメイト
カジュアル衣料専門店
衣料品製造販売業(1960年創業)からジーンズ小売業、衣料品小売
業へ
(備考)各種ホームページなどを参考に信金中金総合研究所作成
研 究
63
の話ではないであろう。しかしながら、最低
①潜在的な顧客ニーズの把握
限必要なプロセスを踏まずに一足飛びに新分
中小小売事業者が既存事業の見直し、底上
野に進出しても成功する可能性は低いと考え
げから一歩踏み込んだ新分野進出を検討する
られることはいうまでもない。そこで以下で
場合、限られた経営資源の中で闇雲に新しい
は、既存事業の見直しや底上げからもう一歩
事業へ進出するようではかえって事業の方向
踏み込んだ新分野への進出を模索しようとす
性を見失い、経営が困難に陥る可能性も考え
る場合の留意点をまとめてみたい。
られる。したがって、経営の安定と発展を指向
するうえでの最適な新事業分野を見出してい
(2)最適な新事業分野を見出していくために
くためには、月並みではあるが「顧客の視点」
一般に中小小売業者が中長期的な観点から
にいま一度立ち返り、既存事業の範疇では対応
新しい事業分野への進出を模索することによ
することの難しい潜在的な顧客ニーズを察知
り、自社にとって最適な新事業分野を見出し
していくことがまずは重要なポイントとなる。
ていくためには、①潜在的な顧客ニーズの把
ちなみに、後述の事例の項で紹介する中小
握、②自社をとりまく外部環境と自社の内部
小売企業の多くは、商売の原点ともいえる「顧
環境の把握、③コンセプトの明確化、④マー
客の視点」から潜在的なニーズをいち早く察
ケティングミックス、といった手順をとる必
知し、そこに活路を見出す形で新分野進出を
要があると考えられる(図表14)。
実践していった点で共通している。その察知
図表14 新分野進出を模索していくうえでの
一般的な手順
方法はさまざまであるが、顧客のライフスタ
イルを推察し、そこに“感動”や“喜び”と
いった充足感を与えつつ、自社にとっても利
顧客ニーズの把握
益を得ることが可能となる商品やサービスを
既存顧客との会話や購買動向、商圏内の人口
外部環境、内部環境の分析把握
動態、メディア等の情報などから模索してい
るものと認識された。なかでも重要視されて
いたのが、既存顧客との店頭でのコミュニケ
新分野事業のコンセプトの明確化
ーションのなかから潜在的なニーズを察知す
ることであったが、これは大型小売店よりもむ
マーケティングミックス
しろ中小小売店の得意とする分野であるだけ
に、中小小売店では顧客の潜在的ニーズを察知
することを意識しつつ、積極的に顧客とのコミ
自社にとって最適な新分野進出の絞込み
(備考)信金中金総合研究所作成
64
信金中金月報 2004.12
ュニケーションを図る必要性があると考える。
②自社をとりまく外部環境と自社の内部環境
の把握(SWOT分析)
思われるもの(脅威)かを分析し把握する。
一方、内部環境分析とは、小売業経営にお
顧客ニーズをある程度察知したうえで、既
ける「ヒト、モノ、カネ、情報」といった自
存事業の見直しと併せて新分野進出を検討し
社の経営資源をあらためて分析してみること
ていくためには、中小小売業者としての自社
である。具体的には経営者や従業員の人数、商
の経営状態を客観的に認識することが必要で
品知識、販売能力などといったヒト、販売商
あり、外部環境としての機会と脅威、内部環
品の品質や価格、店舗などといったモノ、資
境としての自社の強みと弱み、といった切口
金や財務状況などといったカネ、市場動向や
から分析し把握しておく必要があるものと考
顧客ニーズなどの情報収集能力などといった
えられる(図表15)。
情報などがこれにあたる。
ここでいう外部環境の分析とは、小売業経
これら内外の環境を自社の強みと弱みに分
営における「経済環境、立地環境、競争環境、
けて分析し把握していくことで経営環境を正
顧客環境」などといった自社をとりまくさま
しくとらえ、既存事業の見直し、底上げとそ
ざまな外部環境をあらためて分析してみるこ
の延長線上にある新分野進出を視野に入れる
とである。具体的には、マクロレベルの経済
ための素材の発見に努め、自社にとって有効
動向や法規制、人口動態といった経済環境、駅
となりうる新しい事業分野の基本的な戦略の
前や郊外、住宅密集地といった立地環境、商
方向性を導き出してみるのである(図表16)
。
圏内における競合店の動向といった競争環境、
消費者動向や消費者ニーズといった顧客環境
③コンセプトの明確化
などがこれにあたる。これらの外部環境が自
新分野の事業目標とするコンセプトづくり
社にとってプラスの影響を与えると思われる
に際しては、新分野進出の基本的な理念や売
もの(機会)か、あるいは悪影響を与えると
上・利益目標といった形で経営姿勢や方向性
図表15 自社を取巻く外部環境と内部環境の
把握(SWOT分析)
図表16 革新分野の戦略マトリックス
商品・サービス
内部環境
強み
弱み
事業機会を得るために、 事業機会を得るために、
機 自社の強みを活かす。 自社の弱みを克服する。
会
外
部
環
境
自社に迫る脅威を克服 弱みを克服し防御を行
脅 するために、自社の強 う(または進出断念)
威 みを活かす。
か、もしくは撤退を検
討する。
(備考)信金中金総合研究所作成
既
存
顧
客
顧
客
新
規
顧
客
既存商品・サービス
新商品・サービス
《浸透戦略》
既存の顧客に対し、既存の商品を
販売していく。例えば、商品レイ
アウトの変更やPOPを活用した商
品アピールなどがある。
《新商品・サービス販売戦略》
既存の顧客に対して、新しい商品
の販売やサービスを提供するこ
と。例えば、アフターサービスを
始めることなどがある。
既存事業の見直し、底上げ
新事業分野への進出
《新市場開拓戦略》
既存の商品で新しい顧客を開拓す
る。例えば、立地の移転や営業時
間を変更することで新しい顧客を
開拓するなどがある。
《多角化戦略》
新しい商品やサービスで新規顧客
を開拓する。例えば、自社のコア
コンピタンスを活用しつつ異業態
などに取り組むことなどがある。
新事業分野への進出
新事業分野への進出
(備考)信金中金総合研究所作成
研 究
65
を明確にしておくことが重要となる。すなわ
図表17 マーケティングミックスの4Pの要素
ち、どのような顧客に対してどのような「新
商品・製品 (Product) 価格 (Price)
差別化が図れ、独自性や優位性を持つことが
・商品ラインナップ
・品質デザイン
・ブランド名
・パッケージング
・保証
・アフターサービス
・標準価格(定価)
・割引
・アロウワンス
・支払期限
・信用取引条件
できるのか、などといったことを経営資源を
流通・場所 (Place)
販売促進 (Promotion)
しい価値」を提供していくつもりなのか、ま
た「新しい価値」によって競合する他社との
・チャネル
・流通範囲
・品揃え
・店舗立地
・輸送
ふまえて検討すると同時に、結果としてその
事業が自社にとってどの程度の売上や利益に
・広告
・人的販売
・ダイレクトマーケティング
・セールスプロモーション
・パブリック・リレーションズ
貢献するのかも検討し明確にしておくことは
(備考)信金中金総合研究所作成
極めて重要なプロセスといえる。
から一歩踏み込んで新分野進出を本格的に実
④マーケティングミックス
践に移していくためには、様々な側面からア
小売業におけるマーケティングミックスと
プローチをしていく必要がある。
は、顧客に対して商品・サービスを具体的に
具体的には、どのような商品(Product)
、い
どのように販売するのかという方法を検討し
くらの価格(Price)、どこで販売(Place)、どの
実行していくことである。既存事業の底上げ
ような販売方法(Promotion)といった4つの
図表18 中小小売業における新分野進出の類型表
中小小売業における新分野進出の類型
商品
総合商品型
販売
カテゴリー特化型 オリジナル商品型
販売方法型
店舗型
価格訴求型
異業種・異業態型
新たに商品を取り揃
えることで総合店化
に取り組む。
特定のカテゴリーの
品揃えを強化するこ
とで専門店化に取り
組む。
取扱商品の加工や製
造委託によるオリジ
ナル製品の販売に取
り組む。
新しい商品提供方法
(販売方法)に取り
組む。
商品レイアウトや店
舗改装といった店舗
形態の変革や移転な
どに取り組む。
単なる値引販売では
なく、商品の仕入れ
方法の工夫などによ
り販売価格の変革に
取り組む。
コアコンピタンスと
いった既存事業のノ
ウハウをヒントに新
たな業態を創出。あ
るいはまったく違う
異業態へ取り組む。
商品を総合的に取り
揃えることでワンス
トップショッピング
が可能となる。関連
商品を取り揃えるこ
とで同業との差別化
が図れる。
特定カテゴリーに商
品を絞り込むことで
豊富な品揃えが可
能。高度な商品知識
を有することがで
き、顧客嗜好の強い
品揃えで商圏の拡大
となる。
既存の取扱商品を加
工することで商品の
付加価値を高められ
る。オリジナルブラ
ンドや自社製品の製
造販売に取り組むこ
とで利益率の向上も
可能
独自の提案型セール
スで商品の付加価値
を高める。営業時間
の延長や時間にしば
られない販売が可能
となる。商圏の飛躍
的な拡大が可能とな
る。
店舗数を増加させた
り、店舗を移転する
ことで新しい商圏を
得ることが可能とな
る。また商品レイア
ウトを変更すること
で既存顧客に対し店
舗イメージを変更す
ることが可能
常時一定のプライス
ラインにより値引販
売などといったリス
クを軽減し販売効率
を高めることが可能
となる。また、顧客
に対し値頃感を超越
した「感動」を与え
ることも可能
できるだけ既存事業
のノウハウを活用す
るのがポイント。既
存事業との相乗効果
が得られる場合と、
異業種へ取り組むこ
とで新しい顧客の獲
得が可能となる。
・八百屋から総合食
料品スーパー
・靴屋で衣服の販売
・スポーツ用品店で
健康食品の販売
・地酒に特化した酒
店
・ワイシャツとネク
タイに特化した紳
士服店
・マグロに特化した
鮮魚店
・食料品店で惣菜を
販売
・紳士服店でオーダ
ーメ−ドスーツの
販売
・野菜の分量販売
・製造小売業(SPA)
への進出
・インターネット販
売
・商品の宅配サービ
ス
・野菜の産地直送商
品の販売
・ショッピングモー
ルなどへの出店
・支店の出店
・セルフサービス店
舗の出店
・すべて同額の商品
を販売する紳士服
店
・一定金額以内の商
品を販売する雑貨
店
・製造小売業(SPA)
への進出
・鮮魚店が飲食店
・薬局が老人介護事
業
・酒店がコンビニエ
ンスストア
革新分野
特徴
例
(備考)信金中金総合研究所作成
66
業種
信金中金月報 2004.12
構成要素、いわゆる「マーケティングミックス
15)
、戦略マトリックス
(図表16)との関係につ
の4P」を有機的に結びつけ、これを十分にふま
いて可能な限り【
えたうえで既存事業の抜本的な見直しにつな
たので、本文と併せて参照していただきたい。
】等の形で文中に示してみ
げていくことで、新分野を決定し、いよいよ実
践に移していくことになるのである(図表17)
。
(1)いちはやく訪問介護事業に進出した医薬
品小売店
(3)中小小売業における新分野進出の類型
新分野進出を検討する際、大手小売業と比
有限会社ダイワ(埼玉県川口市、従業員規模
約14名、年商約1.5億円)
較して経営資源に制約のある中小小売業では、
・既存事業…医薬品小売、薬剤調剤
自社のコアコンピタンス(既存事業における
・新分野進出事業…訪問介護
ノウハウ等、自社の強みと認識されるもの)を
・現在の事業内容…医薬品小売、薬剤調剤、訪
最大限に活かせる分野への進出が望ましいこ
問介護事業
とはいうまでもない。そこで本稿では、新分
野進出を検討するに際して革新すべき分野と
(新分野進出への取組み)
して商品分野、販売分野、業種分野と言った3
当社は埼玉県川口市の住宅街に立地する医
つの切り口を提示し、さらにこれを図表18に
薬品小売店で、業歴は40年以上にも及ぶなど、
示す7つのパターンに分類し、それぞれの特徴
地域に根ざした薬局として長く親しまれてき
や具体例等についてとりまとめてみた。前出
た【強み】。ただ当社では常に医薬品小売業と
で示した新分野進出の手順と合わせて検討の
しての先行きに危機感を抱きつつ【脅威】、経
材料のひとつとしていただきたい。
営の安定を目的とした新しい事業をたえず模
索し続けてきた。こうしたなか、2000年より
4.事例紹介
以下では中小小売業における新分野進出等
への取組事例として、中小小売業6社を紹介す
介護保険制度がスタートすることを新分野進
出の好機ととらえ【機会】、地域の中でいちは
やく訪問介護事業へと進出した。
る。小売業をとりまく環境が大きく変化し、中
小小売業にとって厳しい経営環境であること
は前に述べてきた。しかし、紹介する企業に
おいては、その環境変化に適応するために、的
確に顧客ニーズをとらえ事業機会を見出すこ
とで、積極的に新分野進出を図ってきた姿は
参考になろう。
なお、前項で示してきたSWOT分析(図表
有限会社ダイワ
研 究
67
(成功要因)
・現在の事業内容…家電販売業、
Eコマース事業
1998年に社長自ら介護支援専門員の資格を
取得するなど、早い段階から介護事業への進
(新分野進出への取組み)
出の準備を進めていった。また新事業開始時
当社は東京都八王子市郊外の国道沿いに立
に同事業を営んでいる競合が近隣にはなかっ
地する家電販売店である。業歴も創業当初の
たことに加え、もともと当社が地域に根ざし
醤油製造販売から入れれば90年(家電販売50
た薬局であったことから、来店客や地域住民
年)以上と長く、地域密着型の家電販売店と
より介護についての相談を受けやすかった状
して相応の地位を確立していた【強み】。しか
況もあり、いちはやく顧客ニーズを察知する
し、低価格を武器に大量出店を加速する大手
ことができていた【強み】。こうしたことから、
家電量販店の攻勢に脅威を感じ【脅威】、既存
訪問介護事業においても早い段階で固定客を
の事業に加えて何らかの対抗手段に打って出
持つことができ、さらにこれに付随して被介
る必要性を感じていた。こうしたなかで、ア
護者への医薬品等の販売機会も増えるなど、既
メリカで開催されたインターネットに関する
存事業との相乗効果にもつながった。
展示会「Inter World Fall 1998」に社長自ら参加
したことなどをきっかけに、今後、日本にお
【戦略マトリックスとの関係】
新しいサービスノウハウ(介護ノウハウ)を
いてもパソコンの普及とともにインターネッ
トショッピングが普及していくと考え【機会】、
確立してから、まず既存顧客に展開、次いで
1998年よりEコマース事業へいち早く進出し
新規顧客を獲得。
た。現在、Eコマース事業の売上は年商の3割
既存商品・サービス
新商品・サービス
以上を占めるまで拡大を遂げる一方、店頭販
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
売も従前同様に対応しているため、一部で相
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
乗効果も生まれつつある。
多角化戦略
(2)海外動向をいち早く察知しEコマース事業
に進出した家電販売店
株式会社ムラウチ(東京都八王子市、従業員
規模約140名、年商約162億円)
・既存事業…家電販売業
・新分野進出事業…Eコマース事業(インター
ネット販売業)
68
信金中金月報 2004.12
株式会社ムラウチ
(成功要因)
・新分野進出事業…飲食業
社長自らがパソコンに精通していたことも
・現在の事業内容…鮮魚店、飲食業
あり【強み】、早い段階で当社のホームページ
は立ち上がっていた。店頭販売やホームペー
(新分野進出への取組み)
ジの利用者の要望、パソコンの普及状況から
当社は東京都港区の麻布十番商店街に立地
顧客の購買行動が変化していくであろうこと
する老舗鮮魚店である。当社では近隣の食品
を肌で感じるなか、Eコマース事業へいち早く
スーパーとの競争激化や、商圏内での核家族
進出したこともあり、当社のサイトに対する
化の著しい進展に起因するとみられる販売不
顧客の認知度は総じて高く、顧客とのゆるぎ
振を打開すべく【脅威】、日ごろから対応策を
ない信頼関係を築けたことが現在でも競争優
模索していた。特に核家族化による夫婦共働
位となっている。また同社では商品の「目利
き世帯の増加は、魚調理をしない家庭の増加
き」
、つまり売れ筋商品を的確に見極められる
につながっていると想定されたことなどから、
能力のある従業員がEコマース事業に当初から
旧来の店舗販売とそれに付随した宅配事業の
“実物(店頭販売)
参画していたことや【強み】、
みでは今後も厳しい状況から脱却できないと
ニーズは永遠”という認識を持ち続け既存の
判断し、隣接の空き店舗を活用できる機会に
店頭販売も従前同様きちんと対応し続けたこ
遭遇したことを契機として【機会】、97年に「美
となども成功要因としてあげられよう。
味しい魚を食べさせるお店」といったコンセ
プトをもつ飲食業へと進出した。
【戦略マトリックスとの関係】
既存のノウハウ(ホームページの運営管理
等)を活かし、既存商品で新規顧客を獲得。
(成功要因)
社長の「目利き力」で毎日築地市場から新
既存商品・サービス
新商品・サービス
鮮で美味しい魚を仕入れ、持ち前の加工ノウ
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
ハウから魚の旨みを活かした料理を提供する
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
多角化戦略
(3)隣接の空き店舗を活用して飲食業へ進出
した老舗鮮魚店
魚可津(東京都港区、従業員規模約20人、年
商約2.5億円)
・既存事業…鮮魚店
魚可津
研 究
69
ことも可能であった【強み】。また、鮮魚店の
の住宅街に立地する食料品スーパーである。も
店頭在庫を飲食店でも活用できることで販売
ともと八百屋として1967年に創業した当社で
ロスを軽減できトータルでの販売効率を向上
あるが、自分の納得のいく商品を提供したい
することができた。隣接する店舗に出店して
との考えから既存事業の見直しや底上げを繰
いた飲食店が偶然にも退店したことを積極的
り返し、今日では生鮮食料品に圧倒的な強み
にビジネスチャンスととらえ、鮮魚店の隣に
を有する地域の食料品スーパー「Uマート」の
立地する魚メニュー中心の飲食店としての“相
基盤を築いていった。こうしたなか、大手チ
乗効果”が発揮されている。息子(後継者)を
ェーン店や地元チェーン店がすでに多数存在
含む若い従業員も入社するなど相応の人員を
していた持ち帰り寿司に“本物志向”がない
確保できていることも成功要因といえるであ
ことに着目し【機会】、既存事業の底上げ・見
ろう【強み】。
直しから一歩踏み込んだ形の新事業分野であ
る本物志向の寿司を製造、販売していくこと
【戦略マトリックスとの関係】
を検討し、
「本物のお寿司屋さんの味をご家庭
既存の販売ノウハウ(魚仕入と加工)を活か
へ」というコンセプトで、それまでスーパー
し、新しいサービスを確立し新規顧客を獲得。
の店頭販売に留まっていた寿司の持ち帰り事
既存商品・サービス
新商品・サービス
業を「東海道写楽」の店名で88年より展開し
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
た。現在は市内10か所に「東海道写楽」を多
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
多角化戦略
店舗展開中で、新事業は年商の3分の1を稼ぎ
出すまでに躍進した。
(成功要因)
(4)持ち帰り寿司店の多店舗展開に進出した
食料品スーパー
食料品スーパーで長年培ってきた調達力を
活かし【強み】、進出当時における既存の持ち
株式会社ユーマート(静岡県静岡市、従業員
規模約331名、年商約42億円)
・既存事業…食料品スーパー
・新分野進出事業…持ち帰り寿司
・現在の事業内容…食料品スーパー、持ち帰
り寿司
(新分野進出への取組み)
当社は、静岡県の旧・清水市(現・静岡市)
70
信金中金月報 2004.12
株式会社ユーマート
帰り寿司店に欠けていた“本物志向”を取入
する食材卸売業である。1951年に食堂として
れ、これが顧客の支持につながった。また、店
創業し、目まぐるしく変化していく周辺の環
舗名である「東海道写楽」が商品イメージと
境に常に適応しながら業態の革新を続け、割
うまくマッチし、地域住民に親しみを持って
烹旅館、喫茶店、洋風レストラン、結婚式場
受け入れられてきたことも結果的に同業他社
などといった事業を順次手がけながら現在に
との差別化につながった。また、独自の仕入
至っている。中でも70年代半ばごろより喫茶
れルートを開拓し構築できたことや【強み】既
「喫茶
店経営全般が斜陽化するなかで【脅威】、
存事業(食料品スーパー)の成功体験にとら
店向けの冷凍食品があれば経営効率が図れる
われず、常に業態の革新をし続けたことが、新
のではないか」と痛感し【機会】、取引先であ
しい収益性を生み出す結果につながった。
ったUCCコーヒーと提携し、喫茶店向け食材
卸売業の分野へ進出したことが、今日の当社
【戦略マトリックスとの関係】
躍進の原動力となっている。
新しいサービス分野(持ち帰り寿司)を確
(成功要因)
立し新規顧客を獲得。
既存商品・サービス
新商品・サービス
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
多角化戦略
自社の喫茶店経営の経験 【強み】などから、
外食用食材卸売業のニーズは今後も広がって
いくものと感じていた。また、経営者として
のそれまでの実績【強み】が主要な取引先(仕
入れ)であったUCCコーヒーとの提携につな
がったことも当社にとっては新分野で躍進を
(5)事業経験を活かし業務用の食材卸売業へ
進出した飲食店
株式会社兵庫フーヅサプライインターナショ
とげる大きなきっかけとなったと考えられる。
当社では常に環境変化への適応を模索し続け
ており、現在では多角化経営を進めつつ地域
ナル(兵庫県加古川市、グループ従業員規模
約300名、グループ年商約50億円)
・既存事業…飲食業、酒類小売業
・新分野進出事業…食材卸売業
・現在の事業内容…飲食業、食材卸売業、酒
類販売業、など6社
(新分野進出への取組み)
当社は兵庫県加古川市の卸売団地内に立地
株式会社兵庫フーヅサプライインターナショナル
研 究
71
経済の一翼を担う中核企業の一角を占めるま
でに至っている。
(新分野進出への取組み)
当社は東京都武蔵村山市の幹線道路沿いに
立地するカー用品等の販売店である。1981年
【戦略マトリックスとの関係】
の創業以来、車好きの若い世代をターゲット
新しいサービスノウハウ(食材卸売業)を
に装飾用パーツなどのカー用品を販売してい
UCCと提携することで確立してから、新しい
た。しかし、大型専門店の躍進などによる価
市場を獲得。
格競争激化を受けて【脅威】、既成商品にはな
既存商品・サービス
新商品・サービス
い顧客ニーズにあった商品、他社には真似の
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
できない商品を製造販売したいと考え、97年
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
多角化戦略
よりオリジナルエアロパーツ「KEN STYLE」
を立ち上げ自社ブランド品として販売、若い
世代を中心に圧倒的な支持を得るに及んだ。当
社では、道路交通法改正の動き【機会】なども
(6)エアロパーツのトップ企業としての地位
を確立したカー用品販売店
的確にとらえながら対応を進めていった結果、
当社のエアロパーツは現在ではトヨタや日産
株式会社ビーエム(東京都武蔵村山市、従業
などの大手自動車メーカーと提携するまでに
員規模約34名、年商約15億円)
至り、大手自動車メーカーのホームページや
・既存事業…自動車外装部品等販売取付け業
カタログにも起用され、商品は日本全国にあ
・新分野進出事業…自動車エアロパーツの製
るディーラーで販売されるまでに至っている。
造販売
・現在の事業内容…自動車外装部品販売取付
け業、自動車エアロパーツの製造販売
(成功要因)
創業当初より、大型専門店が得意とする既
成商品の低価格販売ではなく、オリジナル商
品の販売を模索していたことで、店頭での顧
客との日常会話が潜在的な顧客ニーズの発掘
につながり、他社に先駆けてオリジナルエア
ロパーツの本格展開を実現することができた
と考えられる。また、日ごろより情報収集に
努め、道路交通法改正という転機をビジネス
チャンスとして巧みに取り込めたことも当社
の成功要因のひとつといえよう【強み】。
株式会社ビーエム
72
信金中金月報 2004.12
【戦略マトリックスとの関係】
ことはなかろう。つまり、顧客の潜在的なニ
新しい販売ノウハウ(エアロパーツの製造
ーズを察知し、それに応じた商品や価格、ま
販売)を確立してから、まず既存の顧客(ア
たはサービスなど(例えば“近隣性”と“対
フター中心)へ展開、次いで新規顧客(新車
面性”を活かした商品の宅配サービスなど)
購入者中心)を獲得。
を、できるだけ自社の強みを活かすようなス
既存商品・サービス
新商品・サービス
既
存
顧
客
浸透戦略
新商品・サービス
販売戦略
新
規
顧
客
新市場開拓戦略
多角化戦略
タイルで提供していく経営努力が必要なので
はないだろうか。
本稿において事例の項で紹介してきた、新
分野進出等へ取り組んだ中小小売業に共通し
ていたことのひとつに「危機感」があった。過
去の成功体験にとらわれることなく、経営環
境変化や自社の経営状態に対して常に具体的
おわりに
に危機が何であるかを認識し、顧客をはじめ、
本稿では、中小小売業において環境変化に
仕入先、マスメディア、取引金融機関などか
適応する必要性と取り組む際の留意点などを
ら情報収集を行うことを心がけ、その中から
述べてきた。なぜならば、小売業は環境変化
ビジネスチャンスを見出すことで、既存事業
適応産業ともいわれているからである。
の底上げから一歩踏み込んだ形で新分野進出
中小小売業の事業環境をいま一度ふり返っ
等を遂げてきたのである。
てみると、環境変化が進むなかで今後も自家
中小小売店にとって非常に厳しい経営環境
用車でのアクセスを前提とした郊外型の大型
であるが、一方において、中小小売店は地域
店舗が増加していくことは十分に予想される。
社会にとって今後も必要不可欠な存在である
しかし、その一方で高齢化社会が進展してい
と考えられる。したがって、それぞれの中小
くことで、広大な売り場面積を有する超大型
小売店には、自店にとって悪影響を及ぼすよ
ショッピングセンターが高齢者の購買行動に
うな外部環境の変化をただ嘆き、座視するば
負担となる可能性もある。そのときに、
“近隣
かりではなく、
「このままでよいのか」と絶え
性”や“親近性”
、さらには“対面性”などで
ず自問自答し、常に具体的に危機が何である
大手小売業態に勝ると考えられる中小小売業
かを認識しつつ、
「今後も生き残っていく」と
が、顧客ニーズに沿う商品やサービスを的確
いった強い信念のもと、既存事業の底上げか
に提供できなければ、たとえ近くて便利な店
ら一歩踏み込んだ新分野進出に挑もうとする
舗であってもそれだけでは顧客に支持される
経営姿勢と経営努力を求めたい。
研 究
73
〈参考文献〉
岩崎邦彦著『スモールビジネス・マーケティング』
(2004年5月)
㈱グロービス『MBAマーケティング』(1998年12月)
中小企業庁『中小企業白書』
(2004年版)
同友館『中小企業の新しい戦略・傾向』
(1997年11月)
日本経済新聞社『流通経済の手引2004』(2003年10月)
日本実業出版社『マーチャンダイジングがわかる事典』
(2002年8月)
有斐閣アルマ『マーケティング戦略』
(2004年3月)
和田茂穂著『現代の流通産業』
(1998年7月)
74
信金中金月報 2004.12
長江デルタ経済圏の現況
信金中央金庫 上海駐在員事務所所長
丹羽 弘之
(要 旨)
2004年9月10日に開設した上海駐在員事務所より上海を中心とした「長江デルタ経済圏の現
況」と題し上海市、江蘇省、浙江省の1市2省の現況について報告する。
●
「長江デルタ経済圏」は上海市、江蘇省、浙江省の1市2省から成り、「珠江デルタ経済圏」、
「渤海経済圏」と並ぶ中国最大の経済圏の1つである。
●
2003年度の統計によれば、同経済圏を構成する1市2省の面積は210,741km2、人口は13,797万
人とそれぞれ中国全体の2%、11%に過ぎない。
●
しかしながら、過去10年以上にわたり年率10%以上の経済成長を遂げ、中国の経済成長の牽
引車となっている。GDPは28,107億元と中国全体の24%を占めているほか、外国からの直接
投資は539億ドル(契約ベース)に達し、中国全体の46%を占めるに至っている。
●
各省市とも引き続き外国からの直接投資を梃子に経済成長とともに産業構造の高度化を目指
している。
●
上海市、江蘇省、浙江省内には合わせて1,800か所以上の開発区が存在したが、昨年来進め
られている開発区の統廃合により、すでに8割弱が解消されている。今後、長江デルタ経済
圏に工場進出する場合は、中央政府の基準を満たす国家級・省級開発区を中心に検討を進め
ることになろう。
調 査
75
1.面積・地理・人口・気候等
図表1 長江デルタ経済圏中心部地図
江蘇省
上海
昆山
浦東
浦東国際空港
上海市
松江
嘉興
浙江省
金山
平湖
杭州湾大橋
(建設中)
筧橋空港
慈渓
蕭山空港
(出所)嘉興市経済技術開発区ホームページ
図表2 各省市の面積・地理・人口・気候等比較表
項 目
面 積
上海市
2
6,341km
江蘇省
浙江省
(参考)東京都
2
2
2,102.4km
102,600km
(東京都と埼玉県の合計に (北海道の1.2倍)
101,800km
2
(北海道の1.1倍)
相当)
地 理
・北緯31度付近(鹿児島県
と同緯度)
・長江の河口にあり東は東
・北緯30∼35度
・北緯27∼31度
北緯36度付
・東は東シナ海、南は上海
・東は東シナ海、南は福建
近
市・浙江省、西は安徽省、
省、西は安徽省・江西
シナ海、南は浙江省、北
北は山東省に接する。
省、北は上海市・江蘇省
と西は江蘇省に接する。
・省内は長江デルタ等の平
・全体に平坦で平均海抜は
約4m
原が主体
・省都南京は上海市から約
290km
76
信金中金月報 2004.12
に接する。
・7割が山地・丘陵
・省都杭州は上海市から約
190km
項 目
気 候
上海市
江蘇省
浙江省
(参考)東京都
・亜熱帯モンスーン気候に
・南部は亜熱帯モンスーン
・亜熱帯モンスーン気候に
年平均気温
属し四季がはっきりして
気候、北部は温帯湿潤気
属し、四季がはっきりし
いる。
候に属し四季がはっきり
ている。
している。
・夏は高温多湿、冬は寒さ
が厳しく乾燥する。
・夏は高温・多雨、冬は低
・年平均気温は15∼17℃
1,711万人
(2003年末) (戸籍人口は1,342万人)
温・多湿
・年平均気温は15∼18℃
・年平均気温17℃
常住人口
15.9℃
7,406万人
4,680万人
(全国第5位)
1,205万人
(全国第11位)
(2000年
国勢調査)
人口密度
(常住人口
/km2)
2,699人/km2
722人/km2
466人/km2
5,514人/km2
第2位の北京市(867人)の
3大直轄市(上海・天津・
3大直轄市、江蘇省、河南
3倍以上の人口密度
北京)に次ぎ省では一番稠
省に続き第6位
密
日本との友
横浜市、大阪府、大阪市
愛知県、福岡県
静岡県、福井県、栃木県
好都市関係
(備考)『中国統計年鑑 2004年版』、『上海統計年鑑 2004年版』、江蘇省政府ホームページ、浙江省政府ホームページ、東京都公式ホ
ームページ、友好都市関係は『中国情報ハンドブック 2004年版』にもとづき作成
期の成長率は前年同期比14.8%(中国全体値は
2.経済成長の状況
9.7%)で、この10年で最高の成長を達成した。
長江デルタ地域1市2省では過去10年以上に
工業生産の好調に加え、本格的に回復したサ
わたり年率10%以上の経済成長を遂げ、中国
ービス業が牽引した。1人当たりGDPも2002年
の経済成長の牽引車となっている。2003年の
に4万元を突破した後、2003年には前年比6,072
GDP合計額は28,107億元と中国全体の24%を
元増の46,718元となった。1人当たりGDPは省
占めている。
レベルでは全国一であるが都市レベルで比較
すると深 、広州、蘇州に続き第4位である。
(1)上海市
上海市の2003年の経済成長率は、前年度
(2)江蘇省
(10.8%)を上回る11.8%を達成し、中国全体
江蘇省の2003年の経済成長率は13.5%(前年
の成長率9.3%を大きく上回った。2004年上半
度11.6%)となり、GDP総額は広東省に次い
調 査
77
で全国第2位にランクされている。2004年上半
(3)浙江省
期の成長率は前年同期比15.1%と引き続き高い
浙江省の2003年の経済成長率は14.0%(前年
伸び率となっている。1人当たりGDP16,809元
度12.3%)となり、GDP総額は広東省、江蘇
は上海市、北京市、天津市、浙江省、広東省
省、山東省に続き全国第4位となった。2004年
に続き第6位である。
上半期の成長率は前年同期比15.5%に達した。
1人当たりGDPは第4位で広東省、江蘇省、山
東省を上回る豊かな地域である。
図表3 各省市のGDPの状況(2003年)および特徴
中国全土
浙江省
江蘇省
上海市
項 目
GDP
6,251億元
12,461億元
9,395億元
117,252億元
GDP成長率
11.8%
13.5%
14.0%
9.3%
1人当たりGDP
46,718元
16,809元
20,147元
9,101元
第10次5か年計画
・年率9∼11%成長
・年率9∼10%成長
・年率9%成長
・年率7%成長
・2005年1人当たり
・2005年1人当たり
・2005年1人当たり
・2005年1人当たり
GDP54,000元を目
GDP17,750元を目
GDP21,700元を目
GDP9,400元を目
指す。
指す。
指す。
指す。
(2001∼2005年目標)
特 徴
・GDPが92年以降
・同左
・GDPが93年以降
12年連続の二桁成
13年連続の二桁成
長を遂げた。
長を遂げた。
・外資系企業の大量
・技術水準の高い国
・工業化の進展によ
進出・投資により
有企業と郷鎮企業
り着実に発展し、
過去12年間に
をリード役に発
過去12年間に
GDPは3倍強に拡
展、外資の集積も
GDPは6.9倍に拡
大
進み、過去12年間
大し、79年の全国
にGDPは5.8倍に
第12位から2003年
拡大した。2003年
には4位に上昇
・2003年GDPは全
国7位
のGDPは全国第2
位(第1位は広東
省)
(備考)1.上海市の 1 人当たり GDP は戸籍人口ベース。常住人口をベースに算出すると 36,533 元となる。江蘇省、浙江省の 1 人
当たり GDP は常住人口ベース
2.『中国統計年鑑 2004 年版』、『上海統計年鑑 2004 年版』、各省市政府ホームページ等にもとづき作成
78
信金中金月報 2004.12
図表4 各省市の実質GDP成長率の推移
(%)
14
上海市
江蘇省
浙江省
中国全体
12
10
8
6
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003 (年度)
(備考)『中国統計年鑑2004年版』、『上海統計年鑑2004年版』、『江蘇統計年鑑2003年版』、『浙江統計年鑑2003年版』にもとづき作成
(2)江蘇省
3.産業構造
(1)上海市
1980年代にGDPの約3割を占めた第1次産業は
2003年には初めて10%を下回り8.9%となった。
2000年にはGDPに占める第1次産業の割合が
第2次産業は1980年以降50%前後で推移してい
2%を初めて下回り1.8%となった。2003年には
る。
1980年台には20%以下であった第3次産業は
第1次産業の割合はさらに低下し1.5%となっ
伸びが著しく、2003年には36.6%を占めている。
た。1980年には第2次産業がGDPの75%以上を
占めていた。しかしながら、第3次産業が第2
(3)浙江省
次産業を上回るペースで急成長したため、第3
1980年にGDPの36.0%を占めていた第1次産
次産業の占める割合が徐々に拡大し、1999年
業は2002年に8.8%と初めて10%を下まわり、
には第2次産業を上回り、2002年には50%を超
2003年にはさらに低下し7.7%となった。第2次
えた。うちトップは金融・保険である。2003
産業は1980年にすでにGDPの46.8%を占めて
年は第3次産業の成長がSARSの影響等で伸び
おり、その後徐々に割合を高め1993年には初
悩んだため、再び第2次産業の割合が50%を超
めて50%を超え2003年には52.5%に至った。最
え第3次産業を上回った。
も伸びが著しいのは第3次産業である。1980年
にはGDPの17.2%であったが、2003年には39.7%
まで上昇している。
調 査
79
図表5 各省市GDPの産業別割合(2003年)
(単位:%)
産業別
上海市
江蘇省
浙江省
第1次
1.5
8.9
7.7
第2次
50.1
54.5
52.6
第3次
48.4
36.6
39.7
(備考)『中国統計年鑑 2004 年版』にもとづき作成
図表6 各省市の産業構造の特徴
上海市
・第1次産業の占める割合が極端に低く都市型の産業構造
・国有企業、重工業を主体とした産業構造を工業部門のリストラと外資
導入による輸出振興により高度化を進めている。
・2003年には外資系企業が工業総生産高の約6割を生産し、輸出総額の7
割を輸出している。
・「産業構造の高度化」を目標に6大基幹産業(情報、金融、商業貿易、
自動車、プラント設備、不動産)、4大新興産業(バイオ・医薬、新
素材、環境保護、物流)、基礎産業(石油化学、鉄鋼)に注力
江蘇省
・工業と農業のバランスが取れており優等生的な省の1つ
・電子、紡績、食品加工、機械、石油化学、建材の6大産業が工業総生
産額の80%以上を占める。
・南京、蘇州、無錫が3大工業都市、常州、南通、鎮江、揚州と続く。
・国有企業の比率が低く、郷鎮(集団所有)企業・民営企業の比率が高い。
・外資系企業の進出も著しく2003年の輸出総額の7割が外資系企業によ
るものである。
浙江省
・第1次産業の比率が低く、第2次産業の比率は江蘇省と並び全国でもっ
とも高い水準
・第3次産業の比率が上昇している。
・主力業種は軽工業(繊維・食品)の外、機械・電子、化学、建材等
・主力工業都市は杭州(繊維、機械、電子、食品)、寧波(石油化学、
冶金、建材)
・国有企業の比率が低く民営・中小企業の比率が高い。
・外資系企業の進出が伸びてきているものの、輸出総額に占める割合は
3割と他の2省市に比較すると低い。
80
信金中金月報 2004.12
1,000万ドル以上の投資案件の割合は前年同期
4.外国からの直接投資状況
の68.6%とから79.3%に上昇しており外国投資
長江デルタ地域1市2省の外国投資は2000年
の大型化が進んでいる。
までは中国全体の約3分の1のシェアで推移し
ていたが、2001年には約40%に上昇し2003年
(2)江蘇省
には539億ドル(契約ベース)に達し、中国全
体の46%を占めるに至っている。
江蘇省への外国投資は、2000年以降急増し
ている。2000年に100億ドルを超えた外国投資
契約額は2001年に前年比42%、2002年に同30%、
(1)上海市
2003年には同57%の伸びを示し308億ドルに達
上海市への外国投資は、2000年以降増加基
している(全省市で1位)。外国投資実行額も
調に転じ2003年実績は、契約件数で前年比43%
2003年に前年比0.4%増の106億ドルとなり、広
増、契約金額で同0.5%増、実行額で同28%増
東省(78億元)を抜き全省市1位となり、中国
と引き続き好調であった。うち独資(100%外
国内市場開拓を目指し長江デルタに集積する
資)企業への投資は、件数が3,367件(投資契
外資企業がさらなる企業集積を呼ぶ流れとな
約総件数の78%)
、契約額が78億ドル(投資契
っている。2004年上半期の契約件数は4,048件、
約総額の71%)を占めている。
契約額は207億ドル、実行額は109億ドルで各々
うち日本企業の投資は1999年以降増加傾向
前年同期比17%、49%、47%増加している。
にあり、2003年の契約件数は前年比69%増、契
江蘇省内では上海市に近い蘇南地域(蘇州
約額は20%増となった。日本企業の投資は2000
市、無錫市等)への投資が同省の投資の約90%
年以降小規模の案件が増加している。2004年
を占めている。中でも蘇州工業園区と蘇州国
上半期の契約件数は2,297件で前年同期比7.6%
家高新区を擁する蘇州市への外国投資が突出
減であるが、契約額は61億ドルと前年同期比
している。2003年には外国投資契約額が125億
1.3%増、実行額は38億ドルで同15%増とやや
ドルと省全体の4割を占めた。外国投資実行額
伸び悩みながらも増加傾向を維持している。
が68億ドルは、上海市を初めて超え国内全都
図表7 各省市の直接投資状況(2003年)
(単位:件、億ドル)
上海市
江蘇省
項 目
浙江省
うち日本
契約件数
4,321
788
7,301
4,442
契 約 額
111
13
308
121
実 行 額
55
11
106
50
(備考)各省市直接投資実行額は『中国統計年鑑 2004 年版』、その他の計数は『上海統計年鑑 2004
年版』、各省市政府ホームページ等にもとづき作成
調 査
81
図表8 各省市直接投資新規契約件数の推移
(件数)
9,000
上海市
江蘇省
浙江省
広東省
7,000
5,000
3,000
1,000
2000
2001
2002
2003
(年度)
(備考)『上海統計年鑑 2004 年版』、『江蘇統計年鑑 2003 年版』、『浙江統計年鑑 2003 年版』、『広東統計年鑑 2003 年版』、各省市政府
ホームページ等にもとづき作成
図表9 各省市直接投資新規契約額の推移
(億ドル)
350
300
上海市
江蘇省
浙江省
広東省
250
200
150
100
50
0
2000
2001
2002
2003
(年度)
(備考)『上海統計年鑑 2004 年版』、『江蘇統計年鑑 2003 年版』、『浙江統計年鑑 2003 年版』、『広東統計年鑑 2003 年版』、各省市政府
ホームページ等にもとづき作成
82
信金中金月報 2004.12
市で1位となっている。2004年上半期の外国投
年も各々32%、79%、62%と引き続き高い伸
資実行額は45億ドルと前年同期比29%増加し
び率となっている。2004年度上半期の契約件
て、2位の上海市との差が広がっている。
数は1,949件、契約金額は187億ドル、実行額は
30億ドルで各々前年同期比2.4%減、42%増、
(3)浙江省
40%増と件数は若干減少しているものの、金
浙江省への外国投資は2001年から急増して
いる。2001年は契約件数で前年同期比41%、契
額面では引き続き伸張しており上海同様外国
投資の大型化の傾向が見られる。
約額で同100%、実行額で同37%と急増し、2003
図表10 各省市の外資導入戦略と拡大策
上海市
江蘇省
浙江省
・2010年までに国際金融・
・長江沿岸都市(蘇州、無
・上海に近いという交通の
貿易の中心となる国際都
錫、常州、南京、鎮江、
便、江蘇省より土地や労
市を目指す。
揚州、泰州、南通等)
賃が安いというメリッ
・「産業構造の高度化」を
は、中国政府のハイテク
ト、自然条件のよさを積
外資利用で牽引しようと
産業振興政策の中でハイ
極的にアピールし、日
している。
テク産業ベルト地帯とし
本、ドイツ、米国、台湾
・特に①ハイテク産業、②
て位置づけられている。
からの投資に特に期待し
研究開発分野、③経営統
・フルセットの産業集積と
括企業等、高付加価値産
長江の水運、南京‐上海
・中国一の米の生産省であ
業の進出を奨励している。
間の高速道路等の物流基
り、有名な稲作研究所の
・誘致方法としては①特色
盤を活かし、長江南岸を
存在もあることから、農
ある投資環境の優れた開
ハイテク産業地帯として
業、特にバイオ・医薬品
発区の整備、②優秀な外
①IT産業、②新素材産
等の投資も奨励している。
資を優先的に選別するこ
業、③重化学工業の外資
とが挙げられている。
導入を図っている。
ている。
・従来、杭州市と寧波市に
集中していた直接投資
・開発区整備のため、「1
を、道路整備等により便
+3+9」戦略(備考)が
利になった、より投資コ
取られている。
ストの安い地域(嘉興
市、湖州市、紹興市)等
に外資導入を拡大しよう
としている。
(備考)「1」は浦東新区、
「3」は漕河 新興技術開発区、閔行経済開発区、上海化学工業区、
「9」は郊
外区県の市級の工業区を指す。
調 査
83
図表11 各省市の直接投資上の魅力
上海市
江蘇省
・中国で最も経済開発が進
・中国の成長センターであ
み、資本・技術・人材・
る長江デルタに位置し、
情報量における優位性を
インフラも急速に改善し
持つ。
つつある。
・銀行を始めとする外資系
・内需および物流の中心で
金融機関が集中し国内最
ある上海市に隣接してお
大の金融センターである。
り、日本にも近い。
・中国各地との交通の要衝
・上記のような地理的優位
であり、物流(航空・海
性を有しながら、用地取
運・陸運)の中心である。
得等の諸費用が相対的に
・購買力のある富裕層・中
同左
安い。
間層の形成が進み、将来
・教育レベルが高く人材が
の大消費市場への期待が
豊富で、人件費も上海よ
大きい。
り安い。
・長江デルタ地域への部品
・開発区の姿勢が積極的
産業・裾野産業の集積と
で、様々な要望に柔軟に
品質・技術力向上に伴う
対応してくれる。
現地調達が可能となりつ
つある。
・近代的な大都市の機能を
浙江省
・日本企業を対象とした開
発区があり、日本語によ
るきめ細かなサービスを
備えており、日本人駐在
受けることができる。
員の生活面での不安が少
・蘇州新区・工業園区、無
・国有企業の比率が低く、
錫新区のように住民の生
市場意識・企業家精神に
活環境まで配慮した都市
富む民営企業家が多い。
が形成されており、居住
・物流面で中国有数の港湾
ない。
環境も良好である。
・日系企業が多数進出して
施設を北侖港(寧波)が
ある。
おり、大企業を頂点とし
た産業集積がさらに関連
産業を呼び込む集積効果
が見られる。
整頓を進めている。政府が適法とする開発区
5.開発区の状況
は、原則として国が批准した国家級開発区、省
中央政府は無秩序な開発を抑制し、農地を
および上海市等の直轄市が認可した省級開発
乱開発から守るために、昨年来開発区の整理
区の2種類に限られ、中央政府の基準を満たさ
84
信金中金月報 2004.12
ない省級以下(市、県、区、鎮など)の開発
後、農業用地の転用が再開されるにしても、転
区は違法となり統廃合または解消の対象とさ
用手続きは厳格化されるものと予想されるた
れている。上海市、江蘇省、浙江省の1市2省
め、開発区以外で工場建設用地を取得するの
にはこれまで1,800か所を超える開発区が存在
は容易ではないと思われる。このため、長江
したが、うち8割弱がすでに解消されている。
デルタ経済圏に工場進出する場合は、上海か
また、2004年4月以降、農業用地の工業用地
ら200km圏内に立地する国家級・省級開発区
への転用手続きが一時的に凍結されているこ
(本稿末尾のリスト参照)を中心に検討を進め
とから、工業用地取得は困難な状況にある。今
ることになろう。
図表12 開発区の統廃合の状況
(単位:件)
上海市
統廃合前
江蘇省
浙江省
176
933
758
97
△ 740
△ 624
79
193
134
8
12
8
経済技術開発区
4
5
4
高新技術開発区
2
4
1
保税区その他
2
3
3
9
76
51
減少数
統廃合後
うち国家級開発区
うち省級(市級)開発区
△
(備考)1.国家級開発区に輸出加工区は含まない。上海市(直轄市)は市級開発区
2.上海市政府、江蘇省政府、浙江省政府公表データにもとづき作成
〈参考文献〉
国際協力銀行 中堅・中小企業支援室『中国投資環境シリーズ(上海市、江蘇省、浙江省編)2003年5月改訂版』国際協
力銀行(2003年5月)
蒼蒼社編集部『上海経済圏情報』㈱蒼蒼社(2003年11月)
21世紀総研『中国情報ハンドブック2004年版』㈱蒼蒼社(2004年7月)
調 査
85
長江デルタ地区の主要な国家級・省(市)級開発区
所在地
市・区
県級市
浦東新区
上
海
市
2
ランク
金橋輸出加工区
金橋輸出加工区(南区)
国家級
国家級
張江高科技園区
外高橋保税区
国家級
国家級
高新技術開発区
保税区
92年
90年
陸家嘴金融貿易区
虹橋経済技術開発区
国家級
国家級
金融貿易区
経済技術開発区
90年
83年
漕河 新興技術開発区
上海漕河 輸出加工区
閔行経済技術開発区
上海市 庄工業区
上海市松江工業区
国家級
国家級
国家級
市級
市級
経済技術開発区
輸出加工区
経済技術開発区
工業園区
工業園区
88年
03年
83年
95年
92年
宝山区
金山区
上海松江輸出加工区A区
上海松江輸出加工区B区
上海市青浦工業園区
上海青浦輸出加工区
上海復華高新技術園区
上海市嘉定工業区
浦東康橋工業区
上海市工業綜合開発区
上海閔行輸出加工区
上海宝山城市工業園区
上海金山嘴工業区
国家級
国家級
市級
国家級
国家級
市級
市級
市級
国家級
市級
市級
輸出加工区
輸出加工区
工業園区
輸出加工区
高新技術開発区
工業園区
工業園区
工業園区
輸出加工区
工業園区
工業園区
00年
03年
95年
03年
94年
92年
94年
95年
03年
95年
94年
蘇州市
蘇州工業園区
国家級
経済技術開発区
94年
蘇州工業園区輸出加工区
蘇州高新技術開発区
国家級
国家級
輸出加工区
高新技術開発区
00年
90年
蘇州高新区輸出加工区
蘇州高新区滸墅関分区
国家級
国家級
輸出加工区
高新技術開発区
03年
92年
蘇州呉中経済開発区
蘇州相城経済開発区
省級
省級
経済開発区
経済開発区
92年
01年
昆山市
昆山経済技術開発区
国家級
経済技術開発区
85年
呉江市
太倉市
昆山輸出加工区
呉江経済開発区
太倉経済開発区
太倉港港口開発区
国家級
省級
省級
省級
輸出加工区
経済開発区
経済開発区
経済開発区
00年
93年
91年
92年
常熟経済技術開発区
省級
江蘇省常熟東南経済開発区 省級
張家港市 張家港保税区
国家級
経済開発区
経済開発区
保税区
92年
03年
92年
経済開発区
高新技術開発区
93年
92年
恵山経済技術開発区
省級
江蘇省無錫 園経済開発区 省級
経済開発区
経済開発区
02年
92年
杭州市
錫山経済開発区
江陰経済開発区
南通経済技術開発区
南通輸出加工区
杭州経済技術開発区
省級
省級
国家級
国家級
国家級
経済開発区
経済開発区
経済技術開発区
輸出加工区
経済技術開発区
92年
91年
84年
02年
93年
寧波市
杭州輸出加工区
蕭山経済技術開発区
杭州高新技術開発区
寧波経済技術開発区
国家級
国家級
国家級
国家級
輸出加工区
経済技術開発区
高新技術開発区
経済技術開発区
01年
93年
90年
84年
寧波保税区
寧波輸出加工区
嘉興経済開発区
平湖経済開発区
乍浦経済開発区
嘉興輸出加工区
国家級
国家級
省級
省級
省級
国家級
保税区
輸出加工区
経済開発区
経済開発区
経済開発区
輸出加工区
92年
02年
92年
98年
93年
03年
徐匯区
閔行区
松江区
青浦区
嘉定区
南匯区
奉賢区
常熟市
張家港経済開発区
無錫高新技術開発区
無錫市
江陰市
南通市
浙
江
省
設立年
区 分
経済技術開発区
輸出加工区
長寧区
江
蘇
省
名 称
嘉興市
平湖市
省級
国家級
90年
01年
面積(km )
特 徴
計画 開発済
27.0 25.0 上海中心部18km、浦東空港11km、上海港11km
2.8
1.6 浦東空港10km、虹橋空港38km、税関監督管
理下の特殊地域
25.0 17.0 上海中心部13km、浦東空港21km、虹橋空港25km
10.0
6.4 上海中心部25km、中国初の保税区
(貿易・出口加工・物流倉庫業)
ホテル等が集中する金融貿易ビジネス地区
28.0 28.0 金融機関、
0.7
0.7 展覧会場・オフィス・商業施設が集中、虹橋
空港5.5km
6.0
上海中心部11km、虹橋空港7km
0.9
漕河 開発区16km、同開発区浦江科技園区内
3.5
3.5 上海中心部30km、虹橋空港28km
上海中心部18km、浦東空港35km、虹橋空港12km
18.0
20.6
9.0 上海中心部30km、浦東空港42km、虹橋空港
20km、上海港50km
3.0
3.0 松江工業区内
3.0
1.3 松江新城、大学城に隣接
56.2
浦東空港60km、虹橋空港17km、上海港45km
3.0
青浦工業園区内
5.3
1.2 上海中心部32km、虹橋空港25km
24.8
8.4 浦東空港75km、虹橋空港75km、上海港25km
上海中心部15km、浦東空港12km、虹橋空港22km
26.9
20.8 13.0 浦東空港46km、虹橋空港29km、上海港50km
3.0
2.0 上海市工業綜合開発区内
5.4
浦東空港50km、虹橋空港15km
22.8
上海化学工業区に近接、上海中心部72km、
虹橋空港58km
2
70.0
行政区域230km 、人口23万人、虹橋空港80km、
張家港口90km
2.9
蘇州工業園区内
2
行政区域258km (02年に周辺の虎丘区等を吸
収し拡大)浦東空港140km、虹橋空港86km、
上海港100km
2.7
1.2 蘇州高新技術開発区内
25.8 15.0 旧蘇州滸墅関経済開発区(省級)、現在は蘇州
高新区の分区
100.0
7.8 浦東空港140km、虹橋空港83km、上海港100km
11.7
蘇州駅5km、上海中心部80km、浦東空港130
km、虹橋空港85km
115.0 35.0 浦東空港92km、虹橋空港42km、上海港・
張家港港60km
2.9
昆山経済技術開発区内
80.0 21.0 蘇州中心部9km、虹橋空港85km
45.0 12.0 虹橋空港40km、太倉港18km
80.0
8.0 上海中心部40km、虹橋空港50km、蘇州工業
園区50km
50.0
浦東空港140km、虹橋空港90km
50.0
上海80km、蘇州39km、無錫40km、常熟港15km
4.1
江蘇省唯一の保税区、上海173km、 州113km、
無錫58km
6.2
張家港保税区15km
141.0 40.0 浦東空港173km、虹橋空港103km、上海港128
km、張家港港48km
30.4 15.0 浦東空港150km、虹橋空港120km、上海港130km
11.6
1.3 浦東空港190km、虹橋空港140km、上海港150
km、張家港港60km
29.0
無錫駅5km、張家港港・江陰港40km
25.0
6.5 上海150km、蘇州80km、無錫25km、江陰港(区内)
147.0 20.0 浦東空港150km、虹橋空港100km
3.0
0.8 南通経済技術開発区内
104.7 34.0 市中心部13km、杭州空港15km、上海140km、
寧波140km
2.9
杭州経済技術開発区内
30.0
杭州中心部15km、杭州空港10km、上海150km
98.2
杭州空港30km、上海150km
29.6
上海300km(杭州湾大橋完成後130km)、杭州
150km、北侖港(区内)
2.3
寧波経済技術開発区内
3.0
保税区に隣接、統一管理を実施
65.0
浦東空港120km、虹橋空港90km、嘉興港40km
60.0 27.5 浦東空港100km、虹橋空港76km、嘉興港14km
嘉興港区内、上海95km、杭州110km、蘇州115km
21.8
3.0
嘉興港区内
(備考)上海市、江蘇省、浙江省各政府および開発区が公表する資料にもとづき作成
86
信金中金月報 2004.12
日本中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
信金中央金庫
総合研究所
本抄録は、2004年10月9日(土)から10日(日)にかけて関東学院大学で開催された日本中小
企業学会第24回全国大会における、国際交流セッション「中小企業における知的財産戦略」
(信
金中央金庫協賛)の講演内容をまとめたものである。
当セッションでは、青山学院大学 港徹雄教授(日本中小企業学会会長)がコーディネーター
となり、鈴木総業株式会社顧問の中西幹育氏、三好内外国特許事務所会長の三好秀和氏、英国
ブルネル大学教授のケイス・ディクソン氏の3名による講演が行われた。以下では、同セッショ
ンに参加した当研究所研究員の品田が取りまとめた、講演内容を紹介する。
21世紀の中小企業がとるべき経営戦略
鈴木総業株式会社 顧問
中西 幹育氏
当社鈴木総業は、自分が入社した当時の年商は約6
ような商品やサービスに結び付けられなければ、事
億円であったが、その後次々と独創的な技術を活用
業として成功はしない。人々の欲求は時間とともに
した製品を基に新規事業を立ち上げ、現在は年商約
変化していくため、企業側もそれに合わせた柔軟な
120億円規模にまで成長した。当社の特徴は、技術開
対応が求められる。
発力とそれを生かす経営戦略により、単に売上だけ
ここで注意するべきことがある。大企業は、現在
ではなく利益を追求する高付加価値経営を実現して
の需要のみならず将来の需要を掘り起こし、市場そ
いることである。当社の新事業の成功要因を分析す
のものを変えてしまうことも可能であるが、これに
ると、21世紀に中小企業がとるべき基本的な経営戦
対して中小企業は、将来現れるであろう需要を見据
略が見えてくるのではないかと考えている。
えて研究開発をしなければならない点である。
市場ニーズを的確に把握するには、データベース
1.社会の動向を的確に把握する
いかに優れた技術でも、顧客から受け入れられる
を基に詳細に分析することももちろん大事であるが、
それ以上に、まずは大所高所からアナログ的思考で
信金中金だより
87
社会全体の動向を把握することが重要である。川岸
意分野を伸ばしつつ、不得意分野や自社にないもの
から見た川の流れは右から左かもしれないが、高い
については他社との共同開発や相互補完を行う、
「共
ところから見て初めて、西から東に流れていることが
生」や「共創」も視野に入れるべきである。
わかる。たとえば現在のコンドラチェフ循環は、欧米
他社と連携する場合、技術開発力が不可欠なのは
は下降局面だが、東南アジア諸国は上昇局面である。
当然だが、他にもいくつか留意すべき点がある。た
こうした大きな動きを把握した上で、次にデジタ
とえば後のトラブル防止のため、あらかじめ事業が
ル的思考によって、日常的な訓練や勉強の積重ねで
成功した場合のイメージを想定しておき、各社の役
培った判断力や経験を基礎に、収集した情報を詳細
割分担や成果配分に関する取決めを事前に行ってお
かつ論理的に分析を行う。つまり両者をバランスよ
くことなどが必要である。
く行うことが大切である。
ベース・テクノロジーの研究は、大学や研究機関
等でなければ難しい場合が多い。ところがベース・
2.情報収集と潜在的な市場ニーズの
掘起こし
テクノロジーだけで売れる商品ができるわけではな
自社の経営資源を明確に見極め、それを最大限に
クツ(新製品の技術革新)
、インベンション(発明上
活用することは、経営者の重要な役割のひとつである
の技術革新)など、ベース・テクノロジーを商品化
が、21世紀の企業経営において重要な経営資源には、
に結びつけるためのアプリケーション部分、いわゆ
人、物、金に、情報と時間が加わると考えている。
るブリッジ・テクノロジーの技術開発が不可欠であ
独創的な技術開発を行うには、情報収集が不可欠
である。よく「情報が集まらない。
」という話を聞く
いため、プロセス(生産工程上の技術革新)
、プロダ
る。まさにこの部分こそが中小企業の特徴を生かせ
る分野といえる。
が、本当に欲しい情報は、自ら情報を発信しなけれ
このように、
「一社単独型」から「複数社相互補完
ば決して集まってこない。相手に有益と思われる情
型」へと開発スタイルを転換すること、すなわち異
報を自分から積極的に提供し続ければ、次第に相手
分野の多種多様な技術要素を複合化・融合化し、一
からも必要な情報を得られるようになり、そこから
見不可能と思える技術の壁を乗り越える開発手法が
信頼関係が生まれ、自然にヒューマン・ネットワー
クが構築できる。
「ハイブリッド・テクノロジー」である。
技術開発を行う際に、たとえば世界市場を狙うと
潜在的なユーザーニーズは、現場に頻繁に足を運
いった高い目標も必要である。中小企業が世界を狙
び、ユーザーの生の声を聞くことで始めて発掘でき
うとなると、他社との競争も熾烈で限界もあるが、独
るものである。日々の努力の積重ねで次第に独自の
自の技術ノウハウをコアに世界的規模のシェアを握
勘や直観力が身についていくといえる。
る「独自技術型」
、あるいは特許を組み合わせて他社
との共創も積極的に実行する「ハイブリッド型」と
3.研究開発とハイブリッド・テクノ
ロジー
R&Dには最低でも数年は必要だが、最近は特に世
いった戦略によれば、達成は十分可能である。
「出る
杭は打たれる。
」というが、一気に大きく出る戦略を
とれば、打つ方は「打ちにくい」のである。
の中の動きが早く、顧客ニーズに迅速に対応するに
はスピードとタイミングが重要となる。不得意分野
4.知財戦略の重要性を認識する
を自社で補いつつ、研究開発から事業化までをすべ
企業が成長し発展していくためには、今後ますま
て一社単独で行っていたのでは到底間に合わない。得
す特許戦略は重要になる。21世紀は知財を重視しな
88
信金中金月報 2004.12
い企業は生き残れないといっても過言ではない。そ
小企業では会社の存続自体が危うくなるような莫大
の場合のポイントは、自社の技術防衛と、他社所有
な賠償金額を請求されるケースも増えている。
の技術侵害の防止である。
新規事業を始める場合や開発した技術を特許出願
自社の技術を特許化しておけば、大手企業ともイ
する際は、優位性や独自性ある技術であるかといっ
コールパートナーとして付き合うことができる。一
た目利きや評価が極めて重要であり、パテント調査
回特許化したらそこで安心してしまわずに、基本特
や周辺技術調査、既存技術調査を慎重に行うべきで
許以降段階を踏んで次々と関連特許を出願すれば、長
ある。特許広報などの特許資料はわかりにくいため
期間にわたって技術を活用できることに加え、その
読みづらいが、読みこなすと、関連技術や周辺技術
間は他社による進出を阻むことができる。したがっ
に関する基礎知識が身につくと同時に、他人の思考
てひとつの事業に関しては、最低でも30件は出願す
パターンがわかってくるため、非常に有益である。
るべきである。
大企業が不得意な分野を見つけるには、大学との
5.中小企業の未来
TLOにより技術開発を行い、どのような事業への応
開発を行っていくなかで、中小企業は、ある時点
用が可能かパテントマップを作成するとよい。大抵
では失敗しても、次の段階もしくは異なった分野で
は、何か見つかるものである。
どうにか役立たないか、という志向を常に持ってい
また、他社所有の特許を侵害しないよう、今まで
る。今後とも失敗をおそれず柔軟性を持って事業に
以上に注意を払う必要がある。他社の特許侵害にか
取り組んでいけば、中小企業であっても、世界に羽
かる最近の裁判を見ると、実際の損害額に加えて機
ばたくことも可能であると自信を持っている。
会損失なども損害賠償金額の算定基礎に算入され、中
信金中金だより
89
オンリーワン企業を実現する知的財産
三好内外国特許事務所 会長
三好 秀和氏
青色ダイオードに関する200億円判決以来、知的財
知価社会に転換する大きなチャンスであったかもし
産権についての関心が著しく高まっていることを感
れない。アメリカを見ると、あの時期にコンサルタ
じる。ここでは、まず、現在政策として行われてい
ントやシンクタンクといった知的産業が著しく伸び
る知的財産戦略についてその背景を述べた後、共通
ている。
演題である「中小企業の知的財産戦略」について述
べることとする。
日本の国際競争力低下を端的に示しているのがIMD
(国際経営開発研究所)が毎年発表している「国際競
争力世界ランキング」である。日本は、90年から93
1.日本の競争力低下
日本の産業競争力が著しく落ち込んでいるといわ
れている。理由はいくつか考えられるが、ここでは3
年までの4年間連続して1位をとった後、一貫して順
位を落とし、2002年には先進国49か国中30位にまで
後退してしまっている。
つほどあげる。1つ目は、バブル崩壊後における経済
の長期低迷である。日本の国際的な産業競争力が落
2.日米政府の知財戦略
ち込んでいるから経済が落ち込んでいるのか、それ
このように競争力が数年で大きく落ち込むような
とも経済が落ち込んでいるから産業競争力が伸び悩
状況は、1970年代から80年代におけるアメリカと酷
んでいるのかについてはここでは言及しないが、とり
似している。アメリカがこの最悪の状況から復活す
あえず、悪循環に入っていることだけは確かである。
ることができた最大の要因は、レーガン政権時に、知
2つ目に、産業構造の激変のために、多くの制度が
的財産活動を強く刺激するような政策が打ち出され
機能不全に陥っていることがあげられる。特許制度
たことによる。具体的には80年に制定されたバイ・
も、製造業中心であった19∼20世紀当時の技術開発
ドール法と、85年に出されたヤング・レポートであ
保護の考え方をいまだに踏襲したものであり、情報
る。前者は、国が資金を出した研究開発を民間に帰
化社会となった現在においても、マイナーチェンジ
属させることを認めるものであり、後者は、特許・
で済ませようとしている。さまざまな点でなかなか
知的財産を重視しその価値を高めることを提言する
新しいシステムになりきっていないことも、競争力
ものであった。今日キーワードとなっている、産学
低下の一因であろう。
連携、PLO、大学発ベンチャーなどがアメリカで次々
3つ目に、知価社会への転換の遅れを指摘したい。
と成長していったのは、この時からである。当時の
30年ほど前に日本は、オイルショックやニクソンシ
バイオベンチャー、ITベンチャーなどが新しい産業
ョックによって非常に厳しい状況に追い込まれた。あ
を形成し、雇用を生み出していった成果が、現在の
の円高や原油価格高騰の波を、日本は、QC活動や
アメリカにつながっている。
TQC活動といった現場努力で乗り切ることができた。
しかしながら今から考えると、そのときこそ日本が
90
信金中金月報 2004.12
小泉政権下における、知的財産戦略会議の開催
(2002年2月)をはじめとして、知的財産戦略大綱の
決定(2002年7月)、知的財産基本法の公布(2002年
いるだけの部品メーカーは、車メーカーから毎年2割
12月)、知的財産戦略本部の設置(2003年3月)まで
3割の値下げを要求されるため、海外への工場移転な
の一連の政策の流れは、当時のアメリカのように知
どの手を打っても、最終的には経営が成り立たなく
的財産重視政策を採用し、企業の知的創造活動をサ
なってしまう。一方、研究開発型に転換し、他社に
ポートすることで、競争力を回復しようとする試み
ない自社独自の技術を知的財産権化し、車メーカー
である。
に逆に提案することができる企業は、昔の系列外の
企業の知的創造を簡素化すると、次の3つのステー
ジの繰返しであるといえる。まずは研究開発活動を
企業や海外からも仕事を持ってくることができる。株
価を見てもそのあたりは如実に表れている。
行う、次に発明・創造といった成果を出す、最後に
研究開発型企業に転換していく過程で、自社のコ
成果を特許権化する。そして特許権から得たキャッ
ア技術を特許として守っていく姿勢を身につけなけ
シュフローを使い、新たな研究開発を行う。この循
ればならない。いかに独創的で良い技術を持ってい
環が新しい産業を生み出していく過程が、知的創造
たとしても、権利化していないと、すぐ真似をされ
サイクルと呼ぶべきものである。
たり、もしくは大企業が圧倒的な力で追いついてし
ここまでが、現在の日本における、知的財産をめ
まう。企業の規模が小さければ小さいほど、特許制
ぐる議論の背景である。政策を1つ1つ実行していき、
度を活用して、独占化していかなければならない。
知的創造サイクルが循環するようになれば、日本の
競争力は必ず復活するであろう。
しかしながら中小企業が特許を取得し、研究開発
型企業になるにあたっては、以下の問題が立ちふさ
がる。まず、技術の高度化により、開発する際のコ
3.中小企業の現状と課題
ストが高額化しており、また先端技術の開発そのも
中小企業は、発注元から品質・価格・スピードの
のが困難になってきている。2番目に、大企業と比べ
すべての面で競わされ、最終的には価格競争となっ
て人材が不足している。3番目に、商品化が見込める
てしまう。景気回復の遅れ、海外からの模造品・海
ような有望な特許は、すでに大企業が特許網として
賊版などが、価格低下圧力をさらに助長する。この
全体をおさえてしまっているため、いまさら少しば
行き着く先はビジネスの先細り、廃業、倒産である。
かり特許をとったところで、新たに市場に入り込む
だからこそ、中小企業は、研究開発型企業への転換
ことができない。これら研究開発に当たってのハー
を進めていくしかない。独創的な技術・アイデアを
ドルをどう解決していくか、というのが今後の課題
開発し、それを知的財産化することで他社の競合を
である。
排除することによって、価格競争ではなく、開発創
造活動の競争に持っていくことが必要である。いろ
いろなビジネスをしている大企業とは違い、中小企
業は、ナンバーワン企業ではなくオンリーワン企業
にならなければならない。
4.大企業に対抗するための知的財産
戦略
特許の数で大企業と争うのは不可能であることか
ら、特許の質、すなわち商品開発にどうしても必要
車の部品メーカーを例にとってみると、現在、車
とされる「関節特許」をおさえることが大事である。
メーカーとの系列関係は崩壊し、競争が激化してい
それによって、大企業とクロスライセンスするなど、
る。この中で、研究開発型企業か否かによって、は
中小企業にとって選択肢の幅が広がる。
っきりと二極化してきたのではないか。車メーカー
大企業からの技術移転も、今後中小企業にとって
から言われた仕様のままで言われたとおりに作って
大きなビジネスチャンスとなる。大企業全体の76%
信金中金だより
91
で事業化にいたらなかった研究開発があり、このう
強い分野、できる分野から手をつけていくべきであ
ちの68%は、自社で休眠特許となっているからであ
ろう。今後注視すべき動きとして、産学連携、先行
る。研究開発結果を事業化しない理由のトップは、大
技術調査の簡素化、信託業法の改正などをあげる。
企業にとって相対的に市場規模が小さく、大きな利
産学連携に関して、2年前に中小企業を対象として
益が見込めないことである。事業化しなかった研究
アンケートをとったところ、経営者側の質問に対し
開発に投資、時間、人材を浪費してしまった結果、日
て学者側が積極的に対応してくれないという理由で、
本は、他国と比べて研究開発投資の効率性の低下が
ほとんどが否定的な回答であった。しかしながら今
著しい。このような休眠技術を中小企業が譲り受け、
は、大学側も生残りの切り札として産学連携を頼み
あるいは指導を受けることによって、事業化できる
にしている。現在の技術変化の速さを考えると、自
のではないか。現在提唱されている、技術移転機構
社で間に合わない技術を大学に委託するというのも
のようなものを利用すれば可能であろう。
有効な選択肢となるであろう。
また、大企業との特許の共同出願はしてはならな
先行技術の調査も、無駄な開発の防止、次の発明
い。不動産等とは違い、特許は半分持っているだけ
のアイデア取得などの観点から、重要である。特に
でそのすべてを利用することができる。利用できる
技術が高度化した現在、調査によって自社の技術水
技術が同じなら、中小企業は、規模の経済性を生か
準の向上が可能である。情報技術の進展により、調
せる大企業には到底かなわない。中小企業はそうい
査のコストは大幅に下がっているため、ぜひ活用す
った面での意識がまだまだ浸透していないため、注
るべきである。
意しなければならない。
信託業法の改正が今度の国会で成立する。ポイン
トとしては2つあり、信託の範囲の拡大、新規参入が
5.今後に向けて
これまで述べたあらゆる問題を一朝一夕に解決す
ることは不可能であり、1つずつできることから取り
組んでいく姿勢が大事である。1つ1つの研究開発は、
可能になったことである。知的財産信託を利用すれ
ば、高い技術を保有しているベンチャーや中小企業
の資金調達が多様化する可能性がある。
このほかにも、中小企業やベンチャー支援策はど
それぞれ点として孤立しているものではなく、相互
んどん進んでいるので、ホームページなどで情報を
に結ばれた線として流れているものである。自社の
取得していくことが必要であろう。
92
信金中金月報 2004.12
革新的中小企業における知的財産管理
英国ブルネル大学 教授
ケイス・ディクソン氏
中小企業、イノベーション、知的財産権の3つが、
以上あげた理由により、中小企業は、特許法に代
市場で相互に緊張関係をもちながら存在している状
表されるフォーマルな知的財産権保護よりも、イン
況について報告する。
フォーマルな知的財産権保護を好む傾向にある。
中小企業は、競争的な優位を維持するためにイノ
たとえば開発・発見した情報について、中小企業
ベーションを行い、知的財産権を保護する。興味深
は、特許をとらず秘密にすることにより、情報を管
いことにその方法は、フォーマルなものとインフォ
理するという方法をよく採る。従業員や取引先に対
ーマルなものとの2つに大きく分かれるのである。
して、秘密保持の約束をすることで情報を管理する
知的財産権の中でも、特に特許について注目した
のである。
い。特許というのは発明を法的に認め、その発明者
中小企業は、知的財産を守るためにかかるコスト
に対して、発明したものを一時的に独占利用する権
とそこから得られる利益を比較して、コストのほう
利を与えるものである。その代わり開発者は、新し
が高いとなれば、フォーマルな情報保護の方法を選
く開発した技術の情報を公開しなければいけない。ま
ばずにインフォーマルな保護の方法を選ぶ。製品の
た、独占的に使用できるという権利を侵害した者が
ライフサイクルが短い場合には、特に開発・発明の
いた場合には、その者に対して制裁を与えることが
利益を利用するスピードを早くしなければならず、特
できる。
許を出願する際に要する時間を待っていられないの
で、インフォーマルな形を採るようになる。あるい
1.知的財産を保護するための方策
特許法は、長い歴史を持つもののまだ完全ではな
は、技術を複雑な形にして、なかなか模倣されない
形にするケースも見られる。
い。その上、特許の申請が非常に増加しているため、
また、企業間、関係者間相互に信頼関係や、知的
そのシステムは官僚的になり、非効率な面が出ている。
財産権を保護してくれるようなネットワーク、協会
特に中小企業にとっては、特許取得に伴うコスト
のようなものがあれば、その仕組みを利用すること
と、権利侵害に対して自らの権利を守るためにモニ
で、自分たちの知的財産を保護することもできる。
ターをしなければならないコストが非常に大きな負
以上のことから、中小企業にとって、インフォー
担となる。海外で権利侵害が行われた場合はなおさ
マルな知的財産保護の方法というものが、自らの知
らである。その上、大企業は、主要な発明の周りに
的財産権を保護するために非常に重要であることが
いろいろと細かい出願をすることで、中小企業が入
わかる。次に、この点について述べる。
る余地をなくしてしまうという行動をしばしばとる。
こちらはより重大な問題といえる。
また、国によって、特許法のコンプライアンスが大
きく異なることから生じる問題も厄介なものである。
2.知的財産保護に関する中小企業の
行動
実際には中小企業は、フォーマルかインフォーマ
信金中金だより
93
ルかどちらか一方のみを選択するわけではなく、フ
ー経営者である。また、調査対象企業のうち約半数
ォーマルな知的財産保護の方法とインフォーマルな
は、従業員10名以下の小規模企業である。
方法とを、両方うまくバランスさせ、使い分けてい
中小企業は、知的財産を保護するためにさまざま
る。英国の中小企業を対象に実施した3つの異なる調
なインフォーマルな手段を用いる。具体的には、他
査から得られた結果によって、そのことを示す。
企業や雇用者との間の信頼関係、開発が先行したこ
とによる先行者利益の活用、ノウハウの秘匿、ニッ
(1)特許情報の利用状況
チ市場の支配などである。
まず、中小企業における特許情報の利用状況およ
一方、技術力が高く革新的な中小企業を中心に、何
びその方法について調査した(注)1。特許制度が発明を
らかのフォーマルな形で知的財産を持っている企業
保護すると同時に、一般に普及させる効果を持って
も多く、全体の87%に及ぶ。しかしながらその主流
いることを踏まえ、その公開された情報をいかに中
は、他企業や雇用者に対する秘密保持契約や、ライ
小企業は利用しているか、という点に着目した(注)2。
センス合意といった非公開的色彩の強い知的財産で
調査では、2つの質問を行った。1つ目は、情報を
あり、特許のような公開性の強い知的財産を保有し
獲得する方法としてどのようなものを利用するか、と
ている割合は、同26%と低い。
いう質問である。結果としては、情報獲得の手段と
これらの結果として、中小企業はどちらかという
して主に用いられているのは自社の研究開発、専門
と、知的財産保護の方法についてはフォーマルより
書や業界紙、友人などであり、特許情報を利用する
も、インフォーマルを好むということがわかる。ま
中小企業の割合は非常に低いということが判明した。
た、いろいろな知的財産保護の方法がある中で、ど
2つ目の質問は、外部の情報源としてどのようなも
のようなものを選べば良いかということに関して、中
のを重視しているか、というものである。多くの場
小企業は非常に選択的であるということがいえる。知
合中小企業は、顧客、供給者、競争相手を情報源と
的財産保護のコストと利益を比べて、前者のほうが
しており、1つ目の質問と同様、特許情報というもの
明らかに低いと考えられるときに知的財産の保護を
を重視していない。
するのが、中小企業のやり方といえる。
以上の結果から、最初の調査からは、中小企業は
まず、中小企業の場合、知的財産の侵害があった
情報源として特許制度というものをあまり重要視し
場合、保護する権利を行使するコストや、保護が失
ていない、ということがいえる。
敗してしまった場合のリスクを考慮に入れて、知的
財産保護を含め企業戦略全体を決定する。時には特
(2)知的財産保護の方法
許保護より、さらなるイノベーションのために資金
最初の調査結果を踏まえて2番目に、中小企業がど
のようにインフォーマルな知的財産保護の方法を採
(注)
3
を投入することもある。
また、イノベーションの法的な保護の効果につい
。調査対象は、
てどのように考えているか、という質問をしたとこ
コンピュータ関連サービス、グラフィックデザイン、
ろ、電話回答をした中小企業の12%が、法的な知的財
電子、機械の各産業に属する中小企業400社のオーナ
産保護の仕組みがイノベーションを促進していると
っているかについての調査を行った
(注)
1.調査の詳細については、Macdonald and Lefang “Information and Innovation : Surveys of Innovating and Patenting Small Farms”, mimeo,
Sheffield University Management School, Sheffield, UK (1997)を参照。なお、元出典はBlackburn (2003) , Intellectual Property and
Innovation Management in Small Firms, Routledge, London.
2.調査対象は、同講演からは不明
3.調査の詳細については、Blackburn (2003) を参照
94
信金中金月報 2004.12
回答する一方、76%は、効果はないと回答している。
果として、法廷に紛争が持ち込まれるコピー問題は、
全体から見れば10%以下となっている。
(3)著作権保護に対する考え方
しかし同時に、70%以上の企業が、現在の知的財
3番目に、繊維産業の中小企業における、デザイン
産の制度に満足している、といった調査結果が出た。
の著作権保護に対する考え方について調査した。調
これはある意味驚くべきことであろう。というのは、
査方法は、イギリス、イタリア、アメリカの3か国に
おそらくほとんどの中小企業が現在主流であるイン
おけるデザイナーへのインタビューと、イギリスの
フォーマルな解決の方法に満足しているか、もしく
(注)
4
中小企業132社への電話アンケートである
。
イギリスにおいては、著作物を作成すると同時に
は、裏返して言うならフォーマルな著作権保護の方
法にはあまり期待していないためと考えられる。
著作権が保護される。しかしながらその保護はあま
ところが問題は、権利侵害が国境をまたいで発生
り強いものではなく、どちらかといえば、アメリカ
しうることである。たとえば、外国でコピーが発生
のほうが著作権はより強力に守られている。
したとき、法的な保護手段によってもなかなかうま
繊維産業というのは、非常に小さな企業が集まっ
くいかない、ということになると、事態はかなり深
ている産業であり、加えて、フリーランスのデザイ
刻になる。実際、コピー全体の3分の1は海外市場で
ナーなども非常に複雑、かつインフォーマルに結び
発見されている。
ついている産業である。また、デザイナーが過去の
デザインを模倣することによって学ぶ傾向があり、そ
3.結論
うしたことから、合法か違法かよくわからないもの
3つの調査の研究成果は以上である。
の、コピーをすることに関してあまり意識がなく、イ
結論として、中小企業は、フォーマルな形での知
ミテーションが当たり前だ、といった一種独特の文
的財産保護のシステムに対してあまり信頼をおいて
化がある。
いない、ということを最初に指摘したい。
調査の結果として第一に、コピーは非常に地域限
また中小企業は、どちらかというとインフォーマ
定的、言い換えるならばもともとの著作権を保有す
ルな方法での保護に関心があり、インフォーマルな
る企業の地元で見られるケースが多い、ということ
ものとフォーマルなものとのバランスをとって、自
を指摘しておく。
らの知的財産を保護しようとする傾向がみられる。
次に、調査対象企業全体のおよそ60%が、自社の
前述したように中小企業は、絶えず知的財産を保
著作物がコピーされているか否かを監視しており実
護してもらうことにかかるコストと、それから知的
際に見つけた例も多い一方、残りの40%は気にもし
財産を保護してもらうことによる利益を比較してど
ないし、模倣されることなど当たり前である、とさ
う行動するか決める。このことを考慮すると、現在
え考えている。
のイギリスにおいては利益よりコストのほうが高い
さらに、もしコピーを見つけたとしても、それを
と考えて差し支えないであろう。この仮定が正しい
法的に追及する(訴訟する)ケースは半分以下であ
とすれば、フォーマルな知的財産保護への参加とい
る。さらにその上、訴訟を起こしても、結果として
うのは低いままにとどまってしまうため、コストと
は法廷の外で和解する、といったインフォーマルな
利益のバランスを変え、利益がコストを上回るよう
方法で終わりにする、というのがほとんどである。結
にする必要がある。
(注)
4.調査の詳細については、Blackburn (2003) を参照
信金中金だより
95
利益がコストを上回るようにするための具体策と
し、限られた公的資金を投入するべきではないか、と
しては、①法に詳しい人がこれまで以上に中小企業
いう考えも成り立つ。というのも、今まで示した研
にアドバイスをする、②国際的な問題を中心に法的
究成果からは、中小企業は、知的財産保護の強化よ
な規制を強化する、といったことがあげられよう。ま
りもイノベーションの促進を望んでいる、というこ
た、権利侵害に対しては、罰則を強化するといった
とは明らかだからである。
ことも考えられるであろう。アメリカの著作権侵害
しかしながら、その場合はバランスを考慮しなけ
に関する法的な規制は大変厳しいことも、知的財産
ればならない。イノベーションを志向する中小企業
保護のあるべき道の一例を示唆している。
が、自身の努力によって得られる利益が保護される
もう一面では、革新的なイノベーションを志向す
ことが、より広範な経済的な利益をも生み出すとい
る中小企業がフォーマルな知的財産保護に無関心で
うことを認識し、イノベーションに対する投資に自
あることに照らせば、政策担当者は、知的財産保護
信を持つことが望ましい状態であろう。
よりはむしろイノベーションを促進するために注力
※ケイス・ディクソン氏の講演については、配布資料の「Intellectual Property Management in Innovative Small Firms」
を併せて掲載する。
96
信金中金月報 2004.12
INTELLECTUAL PROPERTY MANAGEMENT
IN
INNOVATIVE SMALL FIRMS
by
Professor Keith Dickson,
Brunel Business School
Brunel University
Uxbridge, UB8 3PH,
United Kingdom
Introduction
This paper offers an introductory overview of three key and inter-related business phenomena – small firms,
innovation and intellectual property management – that have important repercussions for economic
development. The discussion will draw predominantly on the findings of a series of academic research
projects, funded by the UK Government, that were collectively presented in Intellectual Property and
Innovation Management in Small Firms (Blackburn, 2003).
For any national economy, the drive to improve production efficiency through innovative business practices
and technological developments is essential for improving living standards for all those within that
economy. Furthermore, for any advanced industrial economy that is well integrated into the global
marketplace, such as Japan or the UK, the continuous upgrading of products and processes is vital for
maintaining international competitiveness. Thus, at both national and international levels, it is repeatedly
and widely argued by many commentators that innovation is essential to the competitive performance of
firms and the growth of economies, just as Schumpeter famously expressed it many years ago, “innovation
is the engine of capitalism” (Schumpeter, 1939).
Such innovative activity and competitive performance is obviously not limited to large firms only, for most
economies, developed or otherwise, are populated by many innovative small firms also. Indeed, in most
industrialised countries, well over 90% of all enterprises can be categorized as small or medium-sized
enterprises (SMEs), which are normally defined as those firms with less than 250 employees. Over a wide
variety of industrial and business sectors, SMEs have long been recognised as important sources of
innovative products and services (Freeman, 1971).
Since innovation is deemed so crucial then the protection of that innovation, especially the intellectual
property (IP) embedded within it, must also be imperative. Almost all countries formally recognise this
imperative via various national laws and international agreements, even if the adherence to these laws and
agreements is somewhat variable. Such legal frameworks, generally referred to as intellectual property
rights (IPR), are designed to protect innovative effort and, in the case of patents, to encourage the diffusion
of the new technological knowledge embodied in any innovation in order to stimulate further technological
developments. But the establishment and maintenance of IPR is not free and the cost of protection is often
seen as a serious barrier for small firms trying to protect their innovative output. Thus the continuing
tension between these three inter-related business phenomena – small firms trying to be innovative to
survive and grow whilst also endeavouring to protect their intellectual capital invested in that innovative
activity.
信金中金だより
97
This paper is structured as follows. A simple review of IPR is offered, especially as it relates to SMEs.
Then three separate research projects are summarised, dealing in turn with the exploitation of patent
information by UK SMEs, a survey of IP management amongst UK SMEs, and a study of copyright
protection strategies amongst small textiles firms in several countries. Finally a summary reflects on the
implications for SME owners and relevant policy-makers
Intellectual Property Rights: Definitions
Intellectual capital comprises the knowledge, skills and other intangible assets that businesses can convert
into usable innovative resources to generate a competitive advantage (Teece, 2000). Thus innovation can be
termed the commercial exploitation of intellectual capital in some novel manner. Much of a person’s or
firm’s intellectual capital can be legally protected as intellectual property - for example, inventions, design
images, engineering drawings, software code, musical compositions, literary works, etc.
Intellectual property rights (IPR) is the legal term associated with what people create when they think, ie
their creative ideas. New ideas are of central importance to the process of innovation, and the law tries to
enable people to exploit what they have created by giving them certain exclusive rights to their intellectual
capital. Obviously, those new ideas that have commercial potential may be the source of much profit and
commercial advantage, so consequently may well attract copies and infringements which the law tries to
prevent. Therefore, IPR entail legal sanctions, under both national and international laws, against such
copying or infringement. Such rights might require formal registration at the relevant national or
international authorities, may arise automatically without registration, or may be created through
contractual relations with other organizations.
IPR embrace a variety of different legal concepts including, most notably, patents, copyright, and
trademarks. Patents offer temporary commercial monopolies to inventors in return for the details of the
invention (usually a 3 dimensional artefact) being made publicly available. New products developments in
electronics, pharmaceuticals and cars would be obvious examples of patentable innovations. Copyright
provides legal protection against copying of a variety of forms of (usually 2 dimensional) creative work
such as textile designs, software codes, and literary works. The two IPR areas of patents and copyright are
the focus of this paper since they represent the major forms of protection that most innovative small firms
look towards for the protection of their intellectual capital.
Being the most predominant form of IPR, patents deserve a little more attention here. Patents are intended
to protect and reward inventors - protect them against those who might attempt to steal their ideas and to
reward them for publishing their ideas so that these ideas might diffuse more rapidly (ie to the general
benefit of the economy). Thus, there is a ‘trade off’ between the patentee and the State. Annual payment of
fee maintained protection for limited period and also encouraged rapid exploitation. But as the patent
system has developed over centuries (and certainly grown rapidly in the 20th century to almost
unmanageable proportions), certain practices have also developed that may discourage its use by small
innovative firms. The patent system, both nationally and internationally, is certainly bureaucratic as a result
of increasing applications and complexity of technological developments. But worse still for small firms is
the behaviour of large innovating firms who abuse the patent system for their benefit (Dunforth, 1987) by for
example, patent ‘blitzing’ (making numerous, often incremental applications around one key innovation),
or by deliberate obfuscation of the technical information written in the patent application, thus limiting its
dissemination potential.
Yet laws on intellectual property do attempt to protect innovators (who may well be small firm
entrepreneurs as well) so that they may gain maximum advantage from their creative efforts. But
98
信金中金月報 2004.12
intellectual property laws, both nationally and internationally, are not watertight nor always honoured and
so there exists many legal disputes over alleged infringements. Firms, both large and small, may therefore
try to reinforce their legal rights with other commercial, or informal, activities to also protect their IPR.
Formal and Informal Methods of IP Protection
Research on IP management has tended to focus on the formal methods of protection. But before we
examine some of that research, it must be noted that there are more informal, [or even non-legal!] activities
that may be preferred by small firms because of associated costs, time and effort.
Formal practices entail the deliberate creation of legal rights. This category can be subdivided into two:
those rights requiring registration by the inventor/innovator (patents, registered designs, registered trade
and service marks) and those rights created through other means such as contract or arise automatically
(such as copyright).
There are several reasons why innovations may not be protected using formal IPR, each with distinct
implications for policymakers wanting to promote greater use of such rights among SMEs. First, business
owners may not be aware that particular innovations can be protected using IPR! The policy implication
here, clearly, is to raise business owners’ awareness of their rights.
Secondly, business owners may be aware of the IPR framework but decide not to protect innovations
formally as intellectual property. This informal approach to protection may be adopted for a number of
reasons.
- They may, for example, prefer to keep innovations secret rather than attempting to protect them
with patents, as this would require disclosure. Confidentiality agreements with employees and
collaborating firms are further mechanisms used to restrict wider access to new knowledge.
- Alternatively, business owners may feel the benefits of intellectual property rights do not
outweigh the costs and risks associated with their acquisition and enforcement. These business
owners may prefer instead to allocate their limited resources to further development and
commercial exploitation of innovations rather than to their protection. Here, policymakers
could reduce the costs associated with the acquisition and enforcement of intellectual property
rights to influence business owners’ calculations concerning take up of the rights.
- Reliance on technological complexity embodied in the innovation to inhibit copying. For
example, building specialist know-how into products to restrict the possibility of reverse
engineering.
- Speed of exploitation of the innovation. Since IPR registration may take some time, certain,
short-lived innovations, eg toys, fashion designs, etc may have run their commercial life before
any enforcement of IPR could be useful.
- Joining or using an organisation whose purpose is to protect the interests of intellectual property
owners, such as ACID1 or FAST2.
Thus, such informal practices are heavily dependent on degrees of secrecy, confidentiality, speed and cost.
What these practices have in common is they do not directly entail the creation of legal rights. Instead, the
management of intellectual property is embedded in other activities, including HRM practices. This does
not, however, mean legal sanctions are irrelevant to the use of informal practices. Trade secrets, for
example, may enjoy protection under the law of breach of confidence. However, such informal methods
may only provide a temporary advantage.
Clearly, formal and informal practices are not mutually exclusive. Small business owners can, and do, use a
1
2
Anti-Copying in Design
Federation Against Software Theft
信金中金だより
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mix of informal practices and legal methods to protect their knowledge and the innovations it generates.
Research Findings on IPR and SMEs
Three different research projects are reported here, each examining different IPR aspects of the challenges
facing SMEs in their battle to innovate and protect their investments.
1. Use of Patent Information by Innovative SMEs
There are two dimensions to the patent system - the protection of one’s intellectual creative effort and the
dissemination of new knowledge. As noted earlier, the patent system is based on a ‘trade off’ between the
State and the patentee. In return for a temporary commercial monopoly for the exploitation of that
innovation, patentees agree to disclose their patent information to the public so that wider diffusion of new
knowledge might occur. Of course the public includes their competitors who may well be interested in
knowing the technical details of that innovation and even be tempted to copy the IP. There is no doubt that
patents can be a valuable source of technical information as they are often the only source of such details.
The use of this particular source of information is well established amongst certain sectors, most notably
pharmaceutical and electronics, to help ascertain the details of their competitors’ developments. But such
firms are invariably large and, as Macdonald and Lefang show in their research3, innovative small firms are
much less likely to indulge in this activity.
Their surveys identified two groups of ‘innovative’ small firms – those that had patented an innovation and
those that had not. Amongst a series of questions they asked, two key ones will suffice for this review.
Firstly, sources both groups were also asked to list the most important methods of acquiring the relevant
information and the findings are presented in table 1 below. The evidence is clear - the use of patent
information is low down on the list. Secondly, both group was asked to list the sources of external
information that were most important to their innovative needs and the results are shown in table 2 below.
What is again clear from this table is that patent information rates very low in the list of important external
sources.
From all their findings, Macdonald and Lefang’s conclusions are quite stark "The patent system generally makes no contribution of any importance to the innovation of SMEs.
Though the vast majority of the surveyed firms consider themselves to be innovative, very few
indeed attached any value to the patent system either as a source of information or as a means of
protection."
[Macdonald & Lefang, 1997, p.2]
2. IP Management in SMEs
In Blackburn and Kitching’s research4, a sample of 400 SME owner-managers, from four sectors (computer
services, graphic design, electronics, and mechanical engineering), were surveyed by telephone, and/or
interviewed, about their IP protection practices. About half their sample were micro-sized firms, ie less than
10 employees. From the data received, the firms were also categorized as ‘highly innovative’, ‘moderately
innovative and ‘non-innovative’.
From their findings a few key points can be made. Firstly, small business owners adopt a wide range of
practices to protect their innovations, as can be seen in tables 3 and 4 below. Secondly, informal protection
practices were preferred to formal legal methods, though ‘highly innovative’ small enterprises were more
likely to use formal rights. Interestingly almost all innovative firms claim some participation in formal IPR,
though actual level of patent and other registrations are not as high. Thirdly, small firms were extremely
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信金中金月報 2004.12
selective in the adoption of IPR. The data suggests that SMEs were extremely selective in their adoption of
intellectual property rights requiring registration. Most tended to obtain such rights only under very specific
conditions: where they anticipated high commercial benefits from the exploitation of innovations; where
they believed that formal intellectual property rights offered superior protection to informal methods; and
where they possessed the necessary resource IPR in terms of money, time and effort were often perceived
by small business owners as prohibitively high. SMEs sought to adopt registrable rights only where they
perceived the potential benefits as outweighing the potential costs. But the benefits of such rights depend
on there being a sufficient market to protect. Where the business served a small or niche market, rather
than a mass market, respondents often had little incentive to invest valuable resources obtaining IPR.
But the research found that the key factors in the decision not to adopt formal IPR concerned the financial
cost of enforcement and the risk of failure. Many respondents, even those in ‘highly innovative’ enterprises,
felt that without sufficient resources to pursue lengthy litigation probably against larger, much wealthier,
organisations, the value of IPR was limited. Owner-managers also reported doubts about whether IPR
could provide effective protection. Concern about financial costs combined with the risk of failed litigation
persuaded many respondents to be wary of the supposed benefits of registration.
The results presented demonstrate that most owner-managers perceived the law as largely irrelevant to their
innovation. Only 16% of telephone sample respondents felt that the law encouraged product development
whilst 72% reported that the law had no effect on their product development. Nor were ‘highly innovative’
SMEs more likely to view the impact of the legal framework in a more positive light, as can be seen in
Table 5. Given this lack of respect for IP laws, it is curious that as many innovative SMEs used formal IPR
protection as they claimed.
3. Copyright Protection amongst Small Textiles Design Firms
Coles, Dickson and Woods examined 5 the global problem of illegal copying of textile designs for
furnishing fabrics and identified both significant factors that led to this situation and the protection
strategies used by small textiles firms to minimize copying. Their research included interviews of textile
designers in 3 countries (UK, Italy and the USA) and a telephone survey of 132 small design firms in the
UK.
Designs are automatically protected in many countries by copyright laws and in the UK this IPR exists for
25 years from first marketing of the design. But such laws are not watertight as proof of deliberate
infringement is needed and certain elements of the design (eg, colour) are not covered. Thus prosecution of
alleged infringers is not smooth and the legal sanctions, even if the prosecution is successful, are not always
very punitive and may not even recompense the infringed firm sufficiently. Conditions and culture within
the textiles industry compound the growing problem, with a highly fragmented structure of very small
design studios and freelancers, highly informal business practices, products with short life cycles, and the
training of designers based heavily on imitation of past masters. So those design firms trying to establish
themselves through investment in creative designs are continually frustrated by cheap, often illegal
imitations.
The research confirmed a widely held belief that infringement of copyright is endemic and increasing in the
global textiles industry. Nearly 40% of the sample had found an illegal copy of one of their designs in the
UK in the previous 3 years and over a third had found copies in overseas markets. But another 40% have
not even looked for copies! Thus over 60% of firms checking for copies found them in their home market!
The most common reasons why the small design firms did not even bother looking was cited as resource
allocation, ie the cost and effort required to monitor the market, and their perceived impotence in the face
of weak law, especially in overseas markets.
For those firms that bothered to check and did find copies, only about half of them pursued the case further,
5
As described in Blackburn, 2003, Chapter 4.
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101
the rest doing nothing to challenge the possible infringer. The majority of pursued cases (just over 50%)
were resolved without going to a formal court case, either by amicable settlement between the two parties
without even recourse to lawyers (remember this is a very informal industry with much social networking,
as well as there being many instances of unintentional infringement). The next most common conclusion
was through formal, lawyer mediated negotiation, ie ‘out-of-court’ settlement. Actual cases leading to a
court case only occurred in a small minority (less than10%) of incidents. Whatever the process, the final
outcome appeared to satisfy over 70% of firms, which seems a curious state of affairs given the high levels
of infringement and the tortuous and uncertain legal process. Yet more telling perhaps is the very low levels
of participation in this legal process by the very small design studios and the self-employed freelance
designers.
The global situation was fairly similar with high levels of alleged infringements, perhaps more blatant in
the copying and concentrated in certain markets, but the pursuit of cases and the success of any formal
actions was much lower for obvious cost reasons or because application of different national laws inhibited
any concerted action. Not surprisingly, much fewer firms were satisfied with the outcome of overseas
infringement cases. The situation for small design firms in the USA was perhaps the brightest, because of
strong laws and genuine punitive costs being awarded by courts in successful cases. But again the level of
participation by small firms in the legal process was low.
Conclusions and Policy Implications
It is clear that any examination and assessment of the IPR framework must acknowledge the situation for
innovative SMEs not just because they represent a significant proportion of economic activity but also
because, as the above research has indicated, their participation and satisfaction with the legal processes
relating to IPR is far from satisfactory.
Several policy implications are apparent here. Certainly small firms need to be made more aware of their
rights and this will always be an on-going demand for IPR publicity given that there will always be new
firms entering the market or existing firms beginning to innovate for the first time. Much of the problem
obviously stems from SMEs’ size (and hence resource issues) but also from their relative isolation from
other firms and from relevant agencies that may be able to help.
For small innovating firms, there will always be desire to strike a balance between formal and informal
methods of protecting their IPR and indeed the research shows that many informal practices contribute to
firms’ confidence in their IP being secure. Inter-firm trust plays a key role here, so that small firms can
depend on interacting with other firms, particularly much larger or overseas firms, without being vulnerable
to IPR transgressions.
So long as small firms perceive the costs of formal protection outweighing the benefits, then their
participation within the legal framework will continue to be poor and thus SMEs’ satisfaction with and
respect for IP law will remain low. That balance between costs and benefits needs to change. Firms may
reduce the costs by avoiding formal IPR methods at their own peril. Perhaps more attention needs to be
paid to the benefits, either by improving access to IP processes (eg, information resources, legal advice), by
strengthening actual protection via stronger laws (both national and international), or by increasing the
penalties of illegal actions such as copying. The example of high punitive charges in copyright
infringement cases the USA is salutary in this regard.
In the light of the indifference shown by small innovating firms to formal IPR, perhaps the more realistic
challenge to policy makers will be to target their scarce public resources to stimulating innovation rather
than IP protection. After all, SMEs themselves appear the favour that priority. But there must be an
appropriate balance so that small innovating firms can feel confident to invest in innovation knowing that
they will be reasonably rewarded and protected for their efforts that ultimately generates wider economic
benefits also.
102
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References:
Blackburn R. (Ed.) (2003), Intellectual Property and Innovation Management in Small Firms, Routledge,
London.
Dickson K. & Coles A-M., (1998), Design Protection and Copyright Issues for Small Textile firms, Design
Studies, vol 18(2):203-216.
Dunforth R., (1987), "The Suppression of Technology", Administrative Science Quarterly, 32: 512-525.
Macdonald S., and Lefang B., (1997), “Information for Innovation: Surveys of Innovating and Patenting
Small Firms”, mimeo, Sheffield University Management School, Sheffield, UK.
Schumpeter J., (1934), Theory of Economic Development, Havard University Press.
Teece D., (2000) Managing Intellectual Capital, Oxford University Press, Oxford.
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104
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「浜松地域経済研究会」研究成果報告会を開催
信金中央金庫
総合研究所
2004年10月21日、
「浜松地域経済研究会」の
1,000社に対するアンケート調査から、
「浜松地
研究成果報告会が浜松商工会議所会館(マイ
域の発展の源泉であった“やらまいか(とに
カホール)で開催された。
かくやってみようの意味)精神”が失われつ
浜松地域経済研究会は、浜松信用金庫、浜
つある」ことが読み取れると指摘したのち、浜
(財)浜松地域テク
松市役所、浜松商工会議所、
松地域の持続的な発展のために、行政部門や
ノポリス推進機構、浜松大学、静岡大学、信
地域金融機関が、
「既存中小企業のイノベーシ
金中央金庫をメンバーとする産学官連携の研
ョン支援、起業家の育成・創業支援、民間版
究会であり、2003年6月に発足して以来、地域
産業クラスターサポート金融会議の設立」な
活性化の方向性を見出すために精力的に活動
どに努めることが重要であると提言した。
してきた。
当報告会では、浜松信用金庫業務部の間淵
当日は、浜松地域の中小企業経営者など約
200名が参加し、盛況のうちに終了した。
公彦係長、信金中金総合研究所の長山宗広主
なお、報告内容の詳細については、
『産業ク
任研究員、奥津智彦主任研究員の3名が研究内
ラスターと地域活性化−地域・中小企業・金
容について報告した。
融のイノベーション』
(同友館刊)を参照され
まず、奥津主任研究員が、独自に作成した
たい。全国の書店または同友館ホームページ
浜松市の産業連関表と、これを用いた経済波
(http://www.doyukan.co.jp/)でお求めいただ
及効果の試算結果について説明し、
「空洞化の
ける。
進行などにより、浜松の主力である自動車産
業の生産額が減少すれば、地域経済への影響
が極めて大きい」ことを定量的に示した。
続いて、間淵係長が、浜松地域の大手企業
(スズキ㈱、ヤマハ㈱など)のトップに対する
インタビューの結果を踏まえ、
「労働集約的な
仕事が海外へシフトし、雇用の空洞化が一段
と進むおそれがある」ことに言及した。
最後に、長山主任研究員が、中小製造業約
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当日の模様
信金中央金庫総合研究所活動状況(10月)
1.レポート等の発行
発行日
04.10.1
04.10.6
04.10.6
04.10.13
04.10.13
04.10.13
04.10.15
04.10.20
レポート分類
通巻
タ
イ
ト
ル
内外金利・為替見通し 16-7 ―
内外経済・金融動向
16-6 市町村の社会・経済構造からみた都道府県の特性
―各市町村が担う機能・役割の特性から地域社会・経済を分析―
産業企業情報
16-6 環境変化への適応が求められる中小小売業
―既存事業の見直し・底上げから新分野への進出へ―
アジア業務相談室情報 16-4 信用金庫取引先における海外進出と人材育成
―人材育成に係る公的支援制度の活用―
貿易投資相談ニュース 114 ―
内外経済・金融動向
16-7 原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望―地政学的
リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう可能性が大きい―
中小企業景況レポート 117 7∼9月期業況も改善基調を維持
(特別調査:地域金融機関等に期待すること)
金融調査情報
16-7
リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の
経営課題―新しい経営環境に対応しながら継続する課題に取り
組むべき―
執筆者
斎藤大紀
峯岸直輝
松尾良太
篠崎幸弘
―
黒岩達也
―
間下聡
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
04.9.30
04.10.2
種類
タ イ ト ル
講演 わが国中小企業金融に関する一示唆
―中小地域金融機関の立場から―
講座 産業クラスターの理論(1)
講座・講演会・番組名称 場所・放送局
中小企業政策研究会
経済産業研究所
企業金融分科会
ベンチャービジネスと 専修大学
地域活性化
04.10.4
講演
リレーションシップバンキングの機 おかやま信用金庫
能強化に向けて―収益力確保のひと 部店長会議
つとして、
「伸びる産業」に注目を―
おかやま信用金庫 澤山弘
04.10.5
講演
リレーションシップバンキングの機 備北信用金庫
能強化に向けて―収益力確保のひと 常勤役員会
つとして、
「伸びる産業」に注目を―
備北信用金庫
澤山弘
04.10.6
講演
浜松信用金庫
佐藤克己
04.10.7
04.10.8
04.10.9
放送
放送
講座
①上海におけるマーケティングについて
②中国進出について
第117回中小企業景気動向調査
第117回中小企業景気動向調査
産業クラスターの理論(2)
ラジオNIKKEI
ラジオNIKKEI
専修大学
藤津勝一
藤津勝一
長山宗広
04.10.14
講演
亀有信用金庫
間下聡
04.10.15
講演
04.10.15
講演
04.10.18
講座
04.10.18
講座
04.10.19
04.10.21
講演
講演
中国投資にかかる個別
相談について
朝イチマーケッツ
ファイナンシャルボックス
ベンチャービジネスと
地域活性化
個人情報保護法の概要
個人情報保護法に係る
勉強会
地域振興支援業務について
地域振興支援業務につ
いて
最近の経済・金融情勢と地域経済に こうのう経営者研修会
ついて
中小金融と郵政民営化
信金中央金庫寄付講座
わが国金融資本市場の概要
6.派生商品市場
中小企業の経営改善支援について
①浜松地域の経済分析
②浜松地域の大手企業分析
③産業集積地域からクラスターへ
④光電子産業クラスターの実態と
発展可能性
金融制度論
講 師 等
澤山弘
長山宗広
奈良中央信用金庫 笠原博
興能信用金庫
斎藤大紀
慶應義塾大学
内閣府経済社会総合
研究所 高橋洋一氏
澤山弘
神奈川大学
リレバン研修会
東京東信用金庫
「浜松地域経済研究会」 浜松信用金庫
研究成果報告会
藤津勝一
長山宗広、奥津智彦
信金中金だより
107
実施日
04.10.22
04.10.25
種類
タ イ ト ル
講演 本中金総合研究所の地域振興支援業
務の紹介
講座 産業クラスターの事例研究:
浜松地域の光電子クラスター
講座 法律家の見た直接金融と間接金融
04.10.25
講座
04.10.23
04.10.26
講座・講演会・番組名称 場所・放送局
高松信用金庫営業店長 高松信用金庫
会議
ベンチャービジネスと 専修大学
地域活性化
信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
日本の経済発展と金融業界の盛衰
金融制度論
神奈川大学
1.戦後に至るまでの金融制度史
講演 第4回中小企業の経営改善支援の実際 中小企業の経営改善支 東京営業第1部
援にかかる情報交換会
講 師 等
笠原博
長山宗広
日野正晴法律事務所
日野正晴氏
澤山弘
藤津勝一、長山宗広
3.原稿掲載
発行日
04.9.10
04.10.10
タ
イ
ト
ル
掲 載 誌
最新中国事情①「中国の『紅い資本家』たち」 信用金庫9月号
最新中国事情②「国民の身体的健康は国家の 信用金庫10月号
威信」
発
行
全国信用金庫協会
全国信用金庫協会
執筆者
黒岩達也
黒岩達也
※本誌11月号本欄「2.講座・講演・放送等の実施」「3.原稿掲載」で記載漏れがありましたので、併せて掲載いたします。
108
信金中金月報 2004.12
2004年信金中金月報
(第3巻)総索引
新春鼎談
1月号(通巻369号)
■
新時代の地域金融機関と地域金融研究
中央大学 総合政策学部教授
慶應義塾大学 経済学部教授
司会・信金中央金庫総合研究所 所長
堀内昭義
吉野直行
藤野次雄
特 集「リレーションシップバンキング機能の発揮に向けて」
11月号(通巻380号)
巻頭言 特集にあたって
信金中央金庫総合研究所 所長 藤野次雄
リレーションシップバンキング論−理論的背景と日本の最近の動向−
成城大学 経済学部教授 村本 孜
■ 市町村の社会・経済構造からみた都道府県の地域特性−各市町村が担う機能・役割の特性から地域社会・経済を分析−
峯岸直輝
■ リレーションシップバンキング対応強化の「ガイド」としての中小企業白書−地域金融機関はその利用価値を再認識すべき−
平野雅史
■ リレーションシップバンキングの機能強化と今後の信用金庫の経営課題
間下 聡
■
■
特別寄稿論文
8月号(通巻377号)
■
信用金庫の経営効率性
大阪大学 大学院経済学研究科教授、
「信金中金月報論文募集」編集委員
筒井義郎
9月号(通巻378号)
■
リレーションシップバンキングへの協同組織金融論からの接近−メンバーシップバンキング概念を中心として−
日本大学 商学部助教授 長谷川勉
12月号(通巻381号)
■
地域イノベーションシステムと地域経済復活の道
横浜国立大学 大学院環境情報研究院教授
三井逸友
研 究
1月号(通巻369号)
デフレの現状と展望−デフレ脱却、量的緩和の解除は早くとも05年度下期−
角田 匠
「経済のサービス化」を踏まえた創業・新事業支援を−「伸びる産業」であるサービス業を、ひとつの重点分野に−
澤山 弘
■ 金型産業の現状と今後の方向−問われる国際競争力と企業の対応−
平井昌夫
■ タウンマネージメント組織の現状と信用金庫の役割
瀬戸仁志
■
■
2月号(通巻370号)
人民元の切り上げと日本経済・企業への影響−当面、中国は変動幅の拡大と資本取引規制の緩和などで対応−
黒岩達也
■ 創業実現のカギを握る「創業決断」
−「やりたいこと」を決断のインセンティブに進化させる手立てが不可欠−
鉢嶺 実
■ 新BIS規制の概要と中小企業金融への影響−内部格付手法の方が、中小企業向け貸出に有利となる見込み−
間下 聡
■ 中小トラック運送業の動向−排気ガスの規制強化など環境変化への対応策−
伊藤 隆
■
総索引
109
3月号(通巻371号)
地域間のヒト・モノの相互依存関係からみた空洞化の現状−人口移動、地域間産業連関表による実証分析−
峯岸直輝
■ 地方銀行の効率性分析−確率的フロンティア生産関数による実証分析−
藤野次雄
■ リラクゼーションビジネスの広がり−小規模マッサージサロンの事業化のポイント−
増本 稔
■
3月増刊号(通巻372号)
■
■
協同組織金融機関のコーポレート・ガバナンスに関する一考察
米国における金融危機と地域金融機関のサバイバル
廣住 亮
青木 武
4月号(通巻373号)
■
地域振興計画の立案手順−信用金庫による地域振興支援の一例として−
笠原 博
5月号(通巻374号)
地域再生とPPP(Public Private Partnerships)
「伸びる産業」として注目に値する高齢者介護事業
■
日本政策投資銀行 北海道支店企画調査課長
■
佐野修久
澤山 弘
6月号(通巻375号)
FTA(自由貿易協定)構想と日本経済への影響−市場開放の進展などにより、日本の大多数の産業にとってメリット大−
黒岩達也
■ 地元企業主体によるPFI事業参画へのポイント
瀬戸仁志
■ 下請型製造業の国内での生き残りのポイント−先進的中小金属加工業の経営革新事例から−
平井昌夫
■
7月号(通巻376号)
中小・零細企業でも財務体質の改善が進展−ただ、大企業に比べると損益分岐点比率が高く、収益の安定性が課題−
峯岸直輝
■ リレーションシップ重視の流れを中小企業が資金調達円滑化につなげていくために−キーワードは
“情報開示”
−
鉢嶺 実
■ 一層の活用が期待される中小企業支援センター−支援事業の概要と有効活用事例−
平井昌夫
■
8月号(通巻377号)
求職意欲喪失者を考慮した失業率は6%程度で高止まり−雇用情勢の本格回復は2005年度以降−
角田 匠
米国金融機関の地域開発・貢献活動(前編)
青木 武
■ 信用金庫経営における、地域産業連関分析の有効性−産業連関表の概要と活用方法−
奥津智彦
■ 小規模市町村での地域振興のあり方−小規模の強みを活かして住民参加の場づくりと行政への働きかけから始める−
笠原 博
■
■
9月号(通巻378号)
■
■
米国金融機関の地域開発・貢献活動(後編)
地域の企業再生ファンドの実態−信用金庫にとっての活用ポイント−
青木 武
長山宗広、山田隆広
10月号(通巻379号)
地方財政と三位一体改革−中長期的には地方交付税制度の抜本的な見直しが焦点−
米国の田舎におけるコミュニティバンキング
■ 業況改善が続く中小精密機械製造業の現状−業況好転の背景と好調企業の取組事例−
■ 預金者行動からみた金融機関の情報開示
■
■
荒井宏文
青木 武
平井昌夫
廣住 亮
12月号(通巻381号)
■
■
リレーションシップバンキング再考−米国の中小企業向け貸付テクノロジー−
環境変化への適応が求められる中小小売業−既存事業の見直し・底上げから新分野への進出へ−
110
信金中金月報 2004.12
青木 武
松尾良太
調 査
1月号(通巻369号)
■
経済見通し
実質成長率は03年度2.3%、04年度1.9%と予測−輸出・生産の持ち直しで、景気は踊り場から回復軌道に復帰−
角田 匠
2月号(通巻370号)
■
■
タイの投資環境−タイ自動車産業の現況−
第114回全国中小企業景気動向調査 10∼12月期業況は改善基調続く 特別調査−平成16年の経営見通し
真下正博
総合研究所
3月号(通巻371号)
■
中国環渤海地域の投資環境−大連市の現況−
篠崎幸弘
4月号(通巻373号)
日本経済の中期展望−04∼08年度の年平均実質成長率は1.9%と予測−
信用金庫のインターネットバンキングの現状と課題−
■ 中国環渤海地域の投資環境−青島市の現況−
■
角田 匠
■
㈱しんきん情報システムセンター 西嶋尚史
篠崎幸弘
5月号(通巻374号)
輸出主導の景気回復下で、地域間格差は一段と拡大−2003年の回顧と課題−
荒井宏文
第5回 信用金庫取引先海外進出状況調査結果
総合研究所 アジア業務相談室
■ 第115回全国中小企業景気動向調査
1∼3月期業況も引き続き改善基調 特別調査−中小企業の雇用と設備投資の動向について
総合研究所
■
■
6月号(通巻375号)
■
中国環渤海地域(山東省)の投資環境−煙台市の現況−
篠崎幸弘
7月号(通巻376号)
■
経済見通し
実質成長率は04年度2.9%、05年度2.5%と予測−輸出と設備投資をけん引役に景気回復が続く−
角田 匠
8月号(通巻377号)
■
第116回全国中小企業景気動向調査 4∼6月期業況は依然マイナス水準ながらも改善基調が鮮明化 特別調査−インターネットの利用について
総合研究所
9月号(通巻378号)
日本経済に大きな影響を与える米中経済の行方−米国経済は巡航速度での成長持続、中国経済はソフトランディングへ−
黒岩達也、丸山 順
■ 中国華南地域の投資環境−珠海市の現況−
荒谷正信
■
10月号(通巻379号)
■
経済見通し
実質成長率は04年度3.4%、
05年度2.5%と予測−輸出の増勢は鈍化するが、05年度も景気回復が続く−
角田 匠
11月号(通巻380号)
原油を中心とした商品市況高騰の背景と今後の展望−地政学的リスクが薄れれば、原油相場は安定へ向かう可能性が大きい−
黒岩達也
■ 第117回全国中小企業景気動向調査
7∼9月期業況も改善基調を維持 特別調査−地域金融機関等に期待すること
総合研究所
■
12月号(通巻381号)
■ 長江デルタ経済圏の現況
丹羽弘之
総索引
111
解 説
5月号(通巻374号)
■ 個人情報保護法の全面施行と民間事業者の義務−信用金庫など金融機関も顧客情報管理の一層の強化を−
間下 聡
7月号(通巻376号)
■ 中小企業再建支援における財務手法の利用上の留意点−それぞれのメリット・デメリットを踏まえて最良の手法を利用すべき−
間下 聡
10月号(通巻379号)
■ 知的財産権担保融資の概要
谷地向ゆかり
信金中金だより
2月号(通巻370号)
電子手形サービスの取引開始について−静岡県内で第一号の電子手形取引を実施−
中小企業経営改善支援実務研修を実施
■ 「図解 中国ビジネスQ&A」を刊行
■ 中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
■
■
総合企画部
総合研究所
総合研究所
総合研究所
10月号(通巻379号)
■
信用金庫職員を対象とした平成16年度中小企業経営改善支援実務研修の開催
総合研究所
11月号(通巻380号)
上海駐在員事務所を開設
『産業クラスターと地域活性化』を刊行
■
■
総合企画部
総合研究所
12月号(通巻381号)
■
■
日本中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
「浜松地域経済研究会」研究成果報告会を開催
112
信金中金月報 2004.12
総合研究所
総合研究所
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況 ………113
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ……115
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …116
(4)信用金庫の預金者別預金 ………117
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …118
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……119
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 …120
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 …………………121
(2)業態別貸出金 ……………………122
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔―〕該当計数なし 〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能 〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字 〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の4
県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.
(1)信用金庫の主要勘定概況(2004年9月末)
○預 金
9月の全国信用金庫の預金は、月中591億円、0.0%減と、前年同月(2,844億円、0.2%減)と同様に減少した。
① 要求払預金は、年金振込金の流出がみられたものの、貸出実行資金の滞留や協力預金の受入れ等から、月
中1,641億円、0.4%増と、前年同月(1,131億円、0.3%減)の減少から増加となった。
② 定期性預金は、公金預金の流出や、個人向け国債等他商品へのシフト等から、月中2,424億円、0.3%減と、
前年同月(2,505億円、0.3%減)と同様に減少した。
③ 外貨預金等は、月中191億円、4.0%増加した。
なお、2004年9月末の預金の前年同月比増減率は、1.5%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中5,757億円、0.9%増と、前年同月(1,369億円、0.2%増)と同様に増加した。
① 割引手形は、季節的要因による受取・持込手形の増加等から、月中177億円、0.8%増と、前年同月(2,340
億円、9.5%減)の減少から増加となった。
② 貸付金は、住宅ローンの実行、経常運転資金および期末決済資金需要の増加等から、月中5,579億円、0.9%
増と、前年同月(3,709億円、0.6%増)と同様に増加した。
なお、2004年9月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.5%減となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中5,305億円、1.0%減と、前年同月(4,255億円、0.8%減)と同様に減少した。
主な内訳をみると、預け金は、月中2,561億円、1.2%減となった。
金融機関貸付等は、買現先勘定が減少したものの、コールローンが増加したことから、月中636億円、131.9%
増となった。
有価証券は、株式(85億円増)や地方債(71億円増)が増加したものの、社債(1,174億円減)、国債(1,073
億円減)、外国証券(620億円減)等が減少したことから、月中2,874億円、1.0%減となった。
統 計
113
信用金庫の主要勘定増減状況(2004年9月末)
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
区
分
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
資
コ ー ル ロ ー ン
買 現 先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金 銭 の 信 託
産 商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
項
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
貸 付 有 価 証 券
目
小
計 貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預 金 ・ 積 金
(月
中
平
残)
要 求 払 預 金
当
座
預
金
負
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
債
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定 期 性 預 金
項
定
期
預
金
定
期
積
金
外 貨 預 金 等
目
実
質
預
金
譲 渡 性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
現
員
勘
定
増 減 額
1,515,837
(
168,164 )
20,614,366
△
(△
16,654,520 )
(
41,000 )
111,916
0
0
111,916
0
△
0
343,973
△
320,249
12,176
△
27,791,759
△
7,609,770
△
2,967,559
299
11,114,667
△
535,823
80
△
651,938
△
4,848,559
△
63,060
0
50,710,279
△
62,210,593
(
61,600,288 )
2,083,285
60,127,307
7,385,418
49,582,011
3,159,877
107,046,694
△
(△
106,343,038 )
34,054,391
2,455,657
29,185,608
△
1,311,122
△
213,011
851,384
△
37,606
72,501,209
△
65,363,987
△
7,137,221
△
491,093
106,878,529
△
109,965
△
498,892
△
58.0
(
(
(
(
(
会
会
員
勘
定
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資 本 準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利 益 準 備 金
特 別 積 立 金
前 期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
△
5,663,090
581,908
43,590
0
30,977
0
358,533
4,329,796
119,292
4,879
194,697
2
588
0
0
△
△
△
増 減 率
187
1,530
0
0
0
0
0
1,393
1
4,366
4,901
0
209
0
0
△
0.0
0.2
0.0
―
0.0
―
0.0
△
0.0
0.0
851.0
△
2.4
0.0
―
―
―
信金中金月報 2004.12
2.3
3.6
147.8
―
122.9
△ 100.0
△
0.3
1.3
18.2
805.1
△
5.7
―
―
―
―
年
月中増減額
8,257
0.5
0.0
(
( △ 12.6 )
(△
34,120 )
25.4 )
256,137
△
1.2
6.9
△
( △ 14.2 )
(
(△
2,764,798 )
2.0 )
(
( △ 51.9 )
(△
0)
0.0 )
63,658
131.9
△ 21.4
0
―
―
△
0
―
△ 100.0
74,657
200.3
18.3
10,999
△ 100.0
―
△
0
―
△ 100.0
61,378
△ 15.1
△ 24.8
△
3,783
1.1
23.0
△
1,327
△
9.8
△ 55.2
△
287,433
△
1.0
2.5
107,374
△
1.3
4.5
7,172
0.2
13.1
0
0.0
―
△
117,455
△
1.0
△
1.7
△
8,503
1.6
19.2
△
137
△ 63.1
△ 81.3
△
17,243
△
2.5
9.0
△
62,052
△
1.2
1.5
1,153
1.8
0.4
0
―
―
530,577
△
1.0
3.9
△
575,724
0.9
△
0.5
(
(△
(
142,937 )
0.2 )
0.7 )
17,731
0.8
△
6.3
△
557,993
0.9
△
0.3
170,384
2.3
△
7.6
263,435
0.5
1.1
124,174
4.0
△
4.4
59,138
△
0.0
1.5
△
(△
(
(△
201,757 )
0.1 )
1.6 )
164,159
0.4
5.5
△
256,138
11.6
7.6
△
115,994
△
0.3
6.2
△
6,019
△
0.4
△
1.6
△
66,545
45.4
△
7.3
38,441
△
4.3
△
6.7
1,931
5.4
5.5
△
242,409
△
0.3
△
0.1
△
204,928
△
0.3
0.3
△
37,481
△
0.5
△
4.8
△
19,112
4.0
△
4.2
93,258
△
0.0
1.6
△
10,753
△
8.9
20.0
15,872
△
3.0
△
6.7
△
(備考)預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。)
114
前年同月比
増 減 率
前
△
△
△
△
△
同
70,987
(△
68,914 )
593,062
△
(△
2,491,487 )
(△
8,000 )
45,437
10,000
△
38,900
28,536
11,999
△
0
93,577
△
8,989
△
1,502
△
155,190
308,555
20,011
999
△
154,757
△
5,578
△
206
△
14,761
△
2,520
404
0
425,517
△
136,940
(
109,128 )
234,002
△
370,943
134,460
101,927
134,555
284,479
△
(△
192,878 )
113,160
△
61,992
△
461,435
△
3,290
△
74,069
340,576
1,087
△
250,567
△
233,578
△
16,988
△
79,246
215,565
△
2,405
42,588
△
2,484
1,142
0
0
0
0
143
4,018
442
1,130
239
0
86
0
0
月
前年同月比
増 減 率
4.9
△
6.5
( △ 25.5 )
26.3 )
2.9
△
2.3
(△
13.2 )
6.1 )
(
8.5 )
6.7 )
46.8
△ 24.5
100.0
―
―
26.2
43.2
△ 40.1
100.0
―
0.0
―
16.9
19.6
3.3
△ 22.3
5.2
43.7
0.5
12.9
4.4
34.0
0.7
4.9
100.0
―
1.3
8.8
1.2
△ 14.6
32.4
△ 81.9
2.4
△ 26.7
0.0
12.1
0.6
6.5
―
△ 100.0
0.8
5.4
0.2
△
0.6
(△
0.1 )
0.2 )
9.5
△
7.9
0.6
△
0.3
1.7
△
7.5
0.2
1.2
4.2
△
5.0
0.2
2.1
(
0.1 )
2.7 )
0.3
4.6
2.6
2.4
1.6
5.6
0.2
△
3.9
47.5
△ 14.4
59.5
△
0.2
2.9
△
0.6
0.3
1.2
0.3
1.9
0.2
△
4.6
18.2
△
8.1
0.2
2.2
2.6
202.8
7.3
56.9
月中増減率
△
△
△
△
△
0.0
0.2
0.0
―
0.0
0.0
0.0
0.0
0.4
―
0.1
―
―
―
―
△
△
△
△
△
1.5
5.2
*
―
246.3
―
1.2
2.7
10.7
―
2.4
―
―
―
―
1.
(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数
店
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
本 店
支 店
(信用金庫数)
386
8,004
371
7,842
349
7,781
326
7,673
326
7,655
321
7,595
315
7,529
314
7,514
314
7,513
309
7,508
307
7,502
306
7,471
306
7,466
306
7,460
306
7,452
304
7,438
304
7,427
304
7,398
p
303
舗
(単位:店、人)
数
常
出張所
合 計
248
267
270
264
258
258
262
265
266
267
266
282
283
282
281
274
271
273
8,638
8,480
8,400
8,263
8,239
8,174
8,106
8,093
8,093
8,084
8,075
8,059
8,055
8,048
8,039
8,016
8,002
7,975
7,944
会 員 数
常勤役員
8,876,360
8,941,138
8,981,084
9,001,391
9,032,713
9,058,720
9,067,020
9,073,614
9,083,334
9,086,064
9,093,543
9,091,805
9,099,916
9,106,748
9,112,262
9,113,379
9,116,103
9,121,880
9,124,839
2,900
2,804
2,734
2,557
2,508
2,488
2,463
2,459
2,455
2,426
2,414
2,396
2,392
2,387
2,385
2,380
2,379
2,373
勤
男 子
98,124
94,112
91,451
87,922
88,196
87,065
86,761
86,522
86,194
85,865
85,489
84,345
85,575
85,307
84,696
84,388
84,150
83,744
役
職
職
員
女 子
43,781
41,004
38,851
37,086
38,559
37,429
37,204
37,095
36,622
36,380
36,149
35,051
36,926
36,720
36,381
36,040
35,762
35,395
員
数
計
141,905
135,116
130,302
125,008
126,755
124,494
123,965
123,617
122,816
122,245
121,638
119,396
122,501
122,027
121,077
120,428
119,912
119,139
合
計
144,805
137,920
133,036
127,565
129,263
126,982
126,428
126,076
125,271
124,671
124,052
121,792
124,893
124,414
123,462
122,808
122,291
121,512
120,986
信用金庫の合併等
年 月 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月22日
2003年 7 月22日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年11月 4 日
2004年 1 月13日
2004年 1 月19日
2004年 1 月19日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月16日
2004年 3 月22日
2004年 7 月12日
2004年 7 月20日
2004年10月12日
芝
一宮
東京東
赤穂
秋田
富山
福岡ひびき
能登
王子
直江津
北伊勢
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
彦根
大阪
異
東調布
愛北
小岩
伊那
五城目
射水
新北九州
共栄
太陽
高田
上野
さぬき
川内
(高浜信組)
福光
豊浦
近江八幡
南大阪
動
金
庫
名
津島
門司
築上
荒川
日興
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
大阪
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
303
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
統 計
115
1.
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,054,744
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
1,072,481
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
0.7
1.8
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
要求払
214,497
230,205
297,903
312,842
325,170
322,502
322,398
327,046
336,074
324,452
331,166
328,610
336,762
334,117
341,198
337,982
338,902
340,543
344,680
前年同月比
増 減 率
4.1
7.3
29.4
5.0
3.5
4.6
5.0
5.4
4.8
6.7
6.6
5.0
4.5
4.4
4.9
6.5
4.7
5.5
6.9
定期性
797,284
801,008
723,681
716,192
724,946
726,178
723,891
723,409
727,873
727,359
725,787
720,951
721,817
722,676
724,892
727,453
727,436
725,012
723,529
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.8
8,539 △ 9.2
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 1.0
6,500 △ 1.7
1.1
4,627
0.1
1.2
5,127 △ 8.1
1.2
4,489 △ 13.4
1.1
4,703 △ 11.4
0.7
4,152 △ 13.0
0.7
4,137 △ 14.6
0.8
4,056 △ 11.1
0.6
5,614 △ 13.6
0.5
4,500 △ 3.3
0.4
4,551 △ 4.5
△ 0.0
4,866
5.1
△ 0.1
4,227 △ 5.8
△ 0.1
4,719
8.8
△ 0.1
4,910 △ 4.2
△ 0.0
4,270 △ 4.8
実質預金
1,016,862
1,033,760
1,024,192
1,032,788
1,053,240
1,051,883
1,049,323
1,052,500
1,065,180
1,053,362
1,058,358
1,052,971
1,061,047
1,059,865
1,069,538
1,067,069
1,069,717
1,068,785
1,070,047
前年同月比
増 減 率
1.4
1.6
△ 0.9
0.8
1.9
2.2
2.2
2.3
2.0
2.3
2.4
1.9
1.7
1.7
1.5
1.7
1.4
1.6
1.9
譲渡性預金
122
105
114
244
650
915
1,005
1,084
766
965
855
789
716
824
938
977
1,207
1,099
1,148
前年同月比
増 減 率
△ 36.7
△ 13.3
7.9
113.7
189.0
202.8
177.5
230.4
138.1
225.6
162.7
223.1
86.9
62.4
44.1
51.0
35.3
20.0
14.2
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
地区別預金
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
(単位:億円、%)
北海道
51,708
53,392
54,596
55,302
56,473
55,749
55,624
56,645
57,719
55,985
56,167
56,194
56,928
56,622
57,357
57,005
57,133
56,869
57,031
近 畿
206,301
207,950
201,814
201,600
204,930
205,386
204,412
205,232
207,067
205,239
206,117
205,213
206,682
206,367
208,296
208,205
208,434
208,501
208,700
前年同月比
増 減 率
2.5
3.2
2.2
1.2
1.5
0.8
1.6
1.9
1.5
2.3
2.0
1.6
1.4
1.6
1.5
2.1
1.7
2.0
2.5
前年同月比
増 減 率
0.7
0.7
△ 2.9
△ 0.1
1.5
2.0
2.0
2.2
1.7
2.3
2.5
1.7
2.0
1.6
1.6
1.8
1.5
1.5
2.0
東 北
38,831
39,684
39,036
39,462
40,347
40,145
40,170
40,281
40,851
40,355
40,619
39,896
40,591
40,242
40,639
40,517
40,590
40,438
40,721
中 国
49,526
49,578
49,651
50,175
51,036
50,844
50,300
50,480
51,138
50,337
50,618
50,456
50,743
50,569
51,106
51,030
51,049
50,911
50,989
前年同月比
増 減 率
1.7
2.1
△ 1.6
1.0
0.9
1.1
1.2
1.3
1.2
1.7
1.8
1.0
1.0
0.7
0.7
0.9
0.6
0.7
1.3
前年同月比
増 減 率
0.8
0.1
0.1
1.0
1.9
1.8
1.5
1.6
0.9
1.1
1.3
0.5
0.7
0.4
0.1
0.6
0.0
0.1
1.3
東 京
192,017
194,416
190,125
193,270
196,425
196,553
196,386
197,385
199,155
197,620
198,294
196,903
198,198
198,014
199,329
199,319
199,038
199,504
200,269
四 国
17,198
17,773
18,064
18,206
18,483
18,491
18,438
18,494
18,769
18,634
18,730
18,625
18,722
18,699
18,887
18,946
18,952
18,954
18,996
前年同月比
増 減 率
0.3
1.2
△ 2.2
0.8
2.2
2.4
2.7
2.8
2.5
3.1
2.9
1.8
1.9
1.4
1.4
1.8
0.8
1.5
1.9
前年同月比
増 減 率
2.0
3.3
1.6
0.7
1.9
2.0
2.2
2.2
2.3
2.8
2.9
2.3
2.2
2.0
2.1
2.5
2.2
2.5
3.0
関 東
197,800
199,809
198,309
197,820
201,691
201,450
201,355
201,837
204,715
202,305
203,450
201,888
203,399
203,184
205,068
204,725
205,230
204,838
205,454
九州北部
17,411
17,940
17,916
17,984
18,597
18,452
18,455
18,486
18,766
18,558
18,645
18,298
18,652
18,577
18,751
18,728
18,745
18,665
18,815
前年同月比
増 減 率
0.9
1.0
△ 0.7
0.4
2.3
1.8
2.0
2.0
1.8
2.2
2.3
2.0
1.7
1.7
1.6
1.9
1.5
1.6
2.0
前年同月比
増 減 率
2.5
3.0
△ 0.1
0.3
2.2
2.0
2.3
2.2
1.7
2.8
2.6
1.7
1.2
1.0
0.8
1.4
0.7
1.1
1.9
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
116
信金中金月報 2004.12
北 陸
30,732
31,560
31,829
32,313
32,818
32,778
32,774
32,796
33,108
32,812
32,992
32,710
32,996
32,912
33,249
33,132
33,199
33,031
33,040
南九州
24,139
24,392
23,556
23,746
24,269
24,306
24,119
24,230
24,855
24,312
24,226
24,219
24,320
24,331
24,541
24,539
24,587
24,525
24,613
前年同月比
増 減 率
1.6
2.6
0.8
1.5
1.2
2.3
2.4
2.1
1.5
2.6
2.7
1.2
1.2
0.7
1.3
1.1
0.6
0.7
0.8
前年同月比
増 減 率
1.2
1.0
△ 3.4
0.8
1.9
2.1
1.9
1.9
1.7
2.5
2.4
1.9
1.2
1.2
1.1
1.6
1.2
0.9
2.0
東 海
193,122
200,034
201,901
204,281
208,291
208,248
207,358
207,916
210,580
208,431
209,789
209,402
210,488
210,500
212,288
212,039
212,642
212,782
212,426
全国計
1,020,320
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,054,744
1,053,808
1,050,779
1,055,159
1,068,100
1,055,949
1,061,010
1,055,175
1,063,080
1,061,345
1,070,958
1,069,663
1,071,058
1,070,466
1,072,481
前年同月比
増 減 率
3.4
3.5
0.9
1.1
2.9
3.1
2.7
2.9
2.3
2.5
2.6
2.5
1.9
2.2
1.9
2.0
1.9
2.1
2.4
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
0.7
1.8
2.1
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
2.0
1.
(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
1,019,963
1,037,617
1,027,696
1,047,491
1,035,334
1,054,739
1,053,806
1,050,777
1,055,157
1,068,098
1,055,947
1,061,009
1,054,774
1,063,078
1,061,344
1,070,956
1,069,662
1,071,056
1,070,465
年 月 末
一般法人預金
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
年 月 末
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
03. 9
10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
201,155
200,268
182,602
182,904
173,622
174,582
176,942
173,553
179,661
183,661
177,071
176,720
175,486
177,528
175,508
175,929
178,942
173,257
178,803
要求払
3,433
3,569
12,046
12,262
11,804
14,234
11,960
11,363
11,290
9,971
9,673
9,677
9,986
11,937
14,002
12,748
10,885
13,104
11,646
個人預金
前年同月比
増 減 率
1.4
1.7
△ 0.9
△ 1.2
0.7
1.8
2.2
2.2
2.3
1.9
2.4
2.5
1.8
1.7
1.6
1.5
1.8
1.3
1.5
768,266
792,296
802,012
821,867
820,195
832,512
833,099
836,650
835,115
846,003
842,122
847,639
842,751
846,867
842,430
851,169
850,365
853,612
850,091
前年同月比
増 減 率
△ 1.0
△ 0.4
△ 8.8
△ 7.4
△ 4.9
△ 2.8
△ 0.1
△ 0.0
0.2
0.4
3.4
3.5
1.0
0.2
△ 2.0
0.7
3.6
△ 1.6
1.0
要求払
前年同月比
増 減 率
10.7
3.9
237.4
361.3
△ 2.0
△ 4.0
△ 17.0
△ 15.3
△ 15.7
△ 18.6
△ 25.1
△ 25.8
△ 15.4
△ 8.1
10.4
△ 10.4
△ 20.0
13.2
△ 2.6
定期性
62,619
69,649
85,538
92,675
84,315
85,598
88,331
85,307
91,736
96,030
89,515
89,178
88,339
90,064
88,453
89,321
92,393
86,828
92,214
20,770
20,719
10,738
13,047
10,366
15,932
13,747
13,323
13,145
12,817
12,672
11,901
10,623
11,578
13,524
15,534
15,821
15,578
14,227
前年同月比
増 減 率
2.0
3.1
1.2
0.6
2.2
2.8
3.3
3.3
3.3
2.9
3.0
3.0
2.7
2.5
2.3
2.2
2.2
1.9
2.0
要求払
前年同月比
増 減 率
△ 0.2
11.2
22.8
27.2
△ 1.4
△ 1.2
3.0
3.3
3.4
3.6
10.3
10.2
4.7
2.9
△ 1.2
4.3
10.2
△ 0.9
4.3
定期性
141,879
153,271
195,149
211,302
211,169
221,079
217,690
222,508
220,874
226,794
222,961
229,245
226,091
231,178
227,575
235,714
232,606
235,435
233,048
138,202
130,298
96,760
89,865
88,922
88,622
88,215
87,859
87,551
87,249
87,182
87,185
86,830
87,112
86,700
86,241
86,191
86,060
86,230
前年同月比
増 減 率
6.2
8.0
27.3
22.3
8.2
5.9
7.2
7.3
7.7
7.3
7.9
7.9
7.0
6.3
5.9
6.6
7.6
6.2
7.0
定期性
626,134
638,772
606,630
610,303
608,742
611,104
614,990
613,669
613,754
618,654
618,597
617,817
616,073
615,079
614,269
614,853
617,135
617,523
616,392
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
1.1
238
119.2
2.0
240
0.5
△ 5.0
220
△ 8.3
△ 5.1
250
16.2
0.3
273
24.1
1.8
318
39.5
1.9
407
61.7
1.9
462
87.3
1.7
476
93.9
1.3
544
117.4
1.3
552
112.9
1.3
566
112.6
1.2
576
111.0
1.0
600
120.4
0.9
575
89.8
0.6
591
85.7
0.3
612
81.2
0.2
643
85.8
0.2
641
57.3
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 1.4
323
8.9
△ 5.7
309
△ 4.1
△ 25.7
293
△ 5.0
△ 27.8
354
9.0
△ 8.1
376
28.2
△ 4.4
353
△ 7.1
△ 3.2
386
11.3
△ 3.1
377
8.2
△ 2.9
365
4.2
△ 2.9
373
5.2
△ 2.8
365
△ 0.5
△ 2.3
347
△ 3.2
△ 2.3
349
△ 7.3
△ 2.4
343
△ 4.0
△ 2.7
346
△ 5.6
△ 2.6
358
1.4
△ 2.5
348
△ 1.6
△ 2.4
360
△ 1.0
△ 2.2
350
△ 9.2
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
10.3
456
27.2
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200
△ 67.1
△ 47.0
37
△ 70.7
△ 3.4
118
△ 41.2
7.1
208
98.3
△ 0.7
51
35.2
0.9
16
105.5
0.5
201
342.4
△ 1.7
57
54.1
△ 0.0
12
△ 63.9
△ 0.6
93
167.0
2.4
298
152.7
2.2
56
*
3.6
19
△ 74.8
△ 2.4
371
77.8
△ 1.8
11
△ 27.5
△ 0.2
154
319.2
3.4
190
266.5
金融機関預金
25,857
20,141
20,084
17,361
19,217
17,259
17,995
15,861
15,733
15,577
14,386
14,969
15,579
15,100
15,851
15,195
13,628
15,341
15,497
公金預金
24,663
24,903
22,990
25,350
22,292
30,379
25,763
24,706
24,640
22,850
22,361
21,675
20,951
23,576
27,549
28,657
26,721
28,839
26,068
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 4.8
14
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 7.9
1
△ 4.3
1
3.7
1
△ 6.5
1
△ 7.8
1
△ 5.4
1
△ 10.2
0
△ 11.9
0
△ 11.6
0
△ 18.9
0
△ 12.7
0
△ 1.2
0
△ 11.9
0
△ 19.0
0
△ 1.3
0
△ 13.8
0
前年同月比
増 減 率
10.6
0.9
△ 7.6
△ 7.5
△ 3.0
1.9
△ 8.9
△ 7.2
△ 7.1
△ 9.8
△ 12.8
△ 13.5
△ 6.0
△ 3.1
6.7
△ 5.6
△ 10.1
5.9
1.1
譲渡性預金
122
105
114
321
244
650
915
1,005
1,084
766
965
855
789
715
824
938
977
1,207
1,099
(備考)日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による(3)預金種類別預金、地区別預金の預金計とは一
致しない。
統 計
117
1.
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
687,159
661,879
639,805
626,342
619,691
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
31,785
33,932
28,762
24,051
23,054
22,238
22,256
24,592
26,093
25,388
24,828
22,388
21,870
21,730
21,682
23,697
20,655
20,832
22,705
貸付金
前年同月比
増 減 率
△ 4.9
6.7
△ 15.2
△ 16.3
△ 15.7
△ 7.9
△ 7.7
△ 7.7
△ 7.2
1.0
1.8
△ 6.9
△ 5.7
△ 14.7
△ 5.9
4.1
△ 15.9
△ 6.3
2.0
655,373
627,946
611,043
602,291
596,636
603,192
601,182
602,259
606,919
602,249
601,538
599,975
595,249
592,638
593,638
596,017
595,693
601,273
598,981
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 4.1
△ 2.6
△ 1.4
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.3
手形貸付
107,804
97,975
90,943
84,739
78,219
79,940
79,025
78,708
80,066
78,310
78,116
77,758
74,314
71,686
71,481
71,932
72,150
73,854
72,570
前年同月比
増 減 率
△ 8.7
△ 9.1
△ 7.1
△ 6.8
△ 6.6
△ 7.5
△ 7.3
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.7
△ 8.1
△ 8.2
△ 8.4
△ 8.5
△ 8.6
△ 8.3
△ 8.2
△ 7.6
△ 8.1
証書貸付
509,049
493,986
485,532
484,045
486,415
490,191
490,176
491,561
495,078
492,647
492,181
490,499
490,369
490,291
491,932
494,014
493,185
495,820
496,224
前年同月比
増 減 率
△ 2.2
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.3
0.6
1.2
1.3
1.3
1.0
1.3
1.4
1.3
1.2
0.9
1.1
1.2
0.8
1.1
1.2
地区別貸出金
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
38,520
35,984
34,567
33,506
32,001
33,060
31,980
31,988
31,774
31,291
31,239
31,717
30,564
30,660
30,223
30,069
30,357
31,598
30,186
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 6.5
△ 3.9
△ 3.0
△ 3.1
△ 5.0
△ 5.1
△ 4.4
△ 4.5
△ 5.9
△ 6.0
△ 5.3
△ 5.9
△ 4.5
△ 5.5
△ 6.1
△ 4.2
△ 4.4
△ 5.6
(単位:億円、%)
北海道
30,197
29,377
29,521
29,628
28,255
29,083
29,346
29,451
30,095
29,461
29,472
29,855
29,152
28,526
28,524
28,792
28,845
29,485
29,731
近 畿
144,784
136,814
130,271
124,418
123,725
124,171
123,680
124,553
125,340
124,471
124,035
122,626
122,063
121,745
121,845
122,789
121,660
122,425
122,441
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 2.7
0.4
0.3
0.4
0.3
1.1
1.1
0.7
1.7
1.7
0.7
1.1
0.5
0.9
1.4
0.3
1.3
1.3
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 5.5
△ 4.7
△ 4.4
△ 2.5
△ 1.6
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 2.0
△ 1.5
△ 0.8
△ 2.1
△ 1.4
△ 1.0
東 北
25,091
24,875
24,520
24,413
23,735
23,944
23,930
23,993
24,136
23,941
23,952
23,865
23,539
23,274
23,242
23,350
23,303
23,543
23,531
中 国
33,451
31,863
30,826
30,140
29,641
29,978
29,740
29,797
30,114
29,880
29,904
29,815
29,442
29,347
29,412
29,567
29,492
29,702
29,577
前年同月比
増 減 率
△ 1.2
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.4
△ 0.9
△ 1.3
△ 1.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.2
△ 1.2
△ 2.2
△ 2.0
△ 2.3
△ 2.0
△ 1.9
△ 2.3
△ 1.6
△ 1.6
前年同月比
増 減 率
△ 4.4
△ 4.7
△ 3.2
△ 2.2
△ 1.7
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.3
△ 1.8
△ 1.0
△ 1.0
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.5
東 京
135,174
131,381
125,915
124,445
124,278
124,861
124,624
125,315
126,390
125,432
124,884
123,525
123,320
122,917
123,115
124,253
123,066
123,743
123,851
四 国
11,098
11,060
10,974
10,823
10,788
10,867
10,808
10,856
10,893
10,838
10,799
10,800
10,676
10,653
10,628
10,664
10,673
10,774
10,748
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.6
△ 1.4
△ 0.9
△ 0.2
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.6
前年同月比
増 減 率
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.3
0.3
0.4
0.4
0.4
△ 0.0
0.2
0.0
△ 0.2
△ 0.6
△ 1.3
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.8
△ 0.5
関 東
133,558
125,418
120,357
116,756
115,768
116,985
116,639
117,227
118,457
117,704
117,604
116,513
115,727
115,322
115,517
116,136
115,785
117,045
116,937
九州北部
12,030
11,797
11,551
11,575
11,389
11,434
11,416
11,478
11,553
11,453
11,469
11,406
11,283
11,177
11,184
11,261
11,197
11,311
11,345
前年同月比
増 減 率
△ 3.7
△ 6.0
△ 4.0
△ 1.9
△ 1.1
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.3
0.1
0.2
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.5
△ 0.2
0.0
△ 0.6
0.0
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 1.7
△ 1.9
△ 2.0
0.2
0.0
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.5
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.4
△ 1.2
△ 2.4
△ 1.7
△ 1.2
△ 2.3
△ 1.0
△ 0.6
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.東京・関東地区の2002年6月以降の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
118
当座貸越
信金中金月報 2004.12
北 陸
20,387
20,088
19,287
19,061
18,720
18,847
18,773
18,879
19,077
18,939
18,942
18,768
18,690
18,530
18,580
18,722
18,666
18,703
18,680
南九州
16,971
16,530
15,972
15,489
15,232
15,498
15,505
15,594
15,788
15,584
15,560
15,470
15,240
15,239
15,336
15,412
15,473
15,586
15,616
前年同月比
増 減 率
△ 2.0
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.1
△ 1.4
△ 0.8
△ 1.0
△ 1.1
△ 1.7
△ 0.7
△ 0.4
△ 1.5
△ 0.7
△ 1.4
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
前年同月比
増 減 率
△ 3.1
△ 2.5
△ 3.3
△ 3.0
△ 1.1
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.0
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.4
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.1
0.6
0.7
0.6
0.5
0.7
東 海
123,154
121,487
119,553
118,573
117,141
118,739
117,963
118,694
120,157
118,923
118,736
118,715
116,999
116,643
116,943
117,776
117,196
118,796
118,238
全国計
687,159
661,879
639,805
626,342
619,691
625,431
623,438
626,852
633,013
627,637
626,366
622,364
617,120
614,368
615,321
619,714
616,348
622,105
621,686
前年同月比
増 減 率
△ 2.1
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.8
△ 0.3
0.2
0.1
0.1
△ 0.2
0.1
0.1
0.1
△ 0.3
△ 0.8
△ 0.1
0.3
△ 0.6
0.0
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 1.2
△ 0.6
△ 0.5
△ 0.5
△ 0.7
△ 0.2
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.6
△ 1.1
△ 0.7
△ 0.2
△ 1.2
△ 0.5
△ 0.2
1.
(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
企業向け計
年 月 末
製造業
建設業
2000. 3
687,157
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.6
100.0
480,319
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 4.5
69.8
106,973
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
15.5
01. 3
661,876
△ 3.6
100.0
459,367
△
4.3
69.4
102,550
△ 4.1
15.4
78,299
△
5.4
11.8
02. 3
639,803
△ 3.3
100.0
435,084
△
5.2
68.0
94,053
△ 8.2
14.7
71,366
△
8.8
11.1
02.12
03. 3
638,092
626,340
△ 2.6
△ 2.1
100.0
100.0
430,011
415,696
△
△
4.9
4.4
67.3 b
66.3
91,584
86,168
△ 7.6
△ 7.9
14.3
13.7
67,981
65,371
△ 9.2
△ 8.4
10.6
10.4
6
9
12
04. 3
6
9
619,689
625,429
633,012
622,492
615,319
622,104
△
△
△
△
△
△
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
410,032
412,646
418,470
405,917
400,204
405,256
△
△
△
△
△
△
3.2
2.4
2.6
2.3
2.3
1.7
66.1
65.9
66.1
65.2
65.0
65.1
84,676
84,541
86,344
82,052
80,845
81,511
△
△
△
△
△
△
13.6
13.5
13.6
13.1
13.1
13.1
62,121
63,252
64,107
61,905
59,001
60,444
△
△
△
△
△
△
10.0
10.1
10.1
9.9
9.5
9.7
年 月 末
卸売業
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
9
12
04. 3
6
9
年 月 末
40,922
39,320
36,758
36,235
34,255
33,818
34,004
34,927
33,063
32,441
32,689
04. 3
6
9
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.0
3.9
6.5
6.2
6.8
5.5
3.9
3.6
3.4
4.0
3.8
5.9
5.9
5.7
5.6
5.4
5.4
5.4
5.5
5.3
5.2
5.2
小売業
49,905
46,557
42,824
40,983
39,648
38,977
38,752
38,757
37,365
36,586
36,632
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
5.5
6.7
8.0
8.2
7.4
6.4
6.0
5.4
5.7
6.1
5.4
7.2
7.0
6.6
6.4
6.3
6.2
6.1
6.1
6.0
5.9
5.8
b
飲食店
16,654
15,622
14,524
14,008
13,653
13,415
13,300
13,145
12,723
12,526
12,456
7.1
5.5
5.1
4.7
4.5
3.5
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
3.9
6.1
7.0
7.1
5.9
5.7
5.7
6.1
6.8
6.6
6.3
2.4
2.3
2.2
2.1
2.1
2.1
2.1
2.0
2.0
2.0
2.0
不動産業
73,187
71,861
74,989
77,439
78,217
79,366
80,787
81,889
82,419
83,358
85,104
7.3
6.3
5.6
5.3
5.0
4.4
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
1.1
1.8
4.3
2.8
4.3
5.9
5.9
5.7
5.3
5.0
5.3
10.6
10.8
11.7
12.1
12.4
12.8
12.9
12.9
13.2
13.5
13.6
個 人
地方公共団体
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
2000. 3
01. 3
02. 3
02.12
03. 3
6
9
12
1.2
0.6
0.7
0.6
0.7
0.5
82,844
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 5.5
12.0
前年同月比
構成比
増 減 率
前年同月比
構成比
増 減 率
83,373
80,128
77,123
△ 2.7
△ 3.8
△ 3.7
12.1
12.1
12.0
11,695
11,762
13,527
2.5
0.5
15.0
1.7
1.7
2.1
195,143
190,747
191,192
76,674
86,254
85,633
85,831
86,476
△ 4.0
―
―
―
―
12.0
13.7
13.8
13.7
13.6
13,426
15,680
13,637
13,957
14,630
23.5
15.9
10.8
8.8
8.9
2.1
2.5
2.2
2.2
2.3
84,192
83,353
83,992
△ 2.3
△ 2.6
△ 2.1
13.5
13.5
13.5
16,933
15,293
15,615
7.9
12.1
11.8
2.7
2.4
2.5
△
△
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
1.5
2.2
0.2
28.3
28.8
29.8
121,253
123,501
127,347
5.0
1.8
3.1
17.6
18.6
19.9
194,655
194,964
196,020
198,825
199,911
1.4
1.9
2.6
2.6
2.7
30.5
31.1
31.6
31.7
31.5
133,267
134,672
136,530
139,484
142,207
4.6
5.7
5.9
6.5
6.7
20.8
21.5
22.0
22.3
22.4
199,641
199,822
201,232
2.3
1.9
1.2
32.0
32.4
32.3
141,966
143,772
144,922
5.4
5.3
3.8
22.8
23.3
23.2
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による(5)科目別貸出金、地区別貸出金の貸出金計と
は一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービ
ス業」は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
統 計
119
1.
(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
年 月 末
2000.
01.
02.
03.
3
3
3
3
6
9
03.10
11
12
04. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 p
現 金
14,277
14,238
19,391
17,492
15,863
15,148
13,522
14,936
18,842
15,566
14,080
16,040
15,783
15,772
15,385
15,848
15,075
15,158
14,069
金融機関
預 け 金
買入金銭
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
うち信金中金預け金
債
権
預 け 金
ロ ー ン 取引支払保証金
146,973(
8.5)
1,373
129,402( 12.8) 24,425
5,900
―
4,182
183,867( 25.1)
2,553
166,783( 28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5)
3,004
2,104
―
2,084
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0)
2,654
1,654
1,000
3,274
208,191(△ 0.5)
853
195,676(△ 0.8)
1,205
905
99
6,188
192,727(△ 2.3)
853
163,256(△ 6.1)
1,424
945
89
4,579
194,467(△ 1.4)
880
184,147(△ 0.8)
613
443
89
4,789
195,734(△ 0.7)
775
185,067(△ 0.4)
662
511
80
4,536
199,978(
0.2)
605
189,285(
1.0)
582
449
63
4,555
196,366(
1.9)
550
186,157(
2.2)
744
597
87
4,229
206,613(
4.0)
550
195,765(
4.1)
745
595
90
4,020
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6)
2,175
1,575
0
3,095
206,247(△ 0.6)
700
195,116(△ 0.5)
734
634
0
3,679
206,666(
2.0)
510
195,228(
1.9)
699
609
0
3,900
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
200,710(△ 0.0)
410
186,621(△ 1.8)
549
449
0
4,238
208,705(
5.0)
410
194,193(
3.2)
482
372
0
4,053
206,143(
6.9)
410
166,545(
2.0)
1,119
1,119
0
3,439
211,157(
8.5)
380
193,205(
4.9)
542
432
0
3,697
金銭の
信 託
4,725
4,057
3,103
2,463
2,673
2,601
3,332
3,318
3,297
3,262
3,257
2,729
3,085
3,090
3,089
3,167
3,164
3,202
3,238
535
198
188
197
263
272
255
223
208
197
168
159
175
147
152
150
135
121
112
有価証券
国
198,272(
221,566(
236,169(
248,064(
258,273(
270,957(
269,930(
269,250(
267,560(
267,647(
265,686(
268,761(
272,413(
273,624(
281,796(
283,389(
280,791(
277,917(
278,075(
投資信託
15,654
14,226
8,034
5,176
6,149
5,976
6,003
6,146
6,106
5,842
6,033
5,650
5,856
6,199
6,315
6,631
6,691
6,519
6,787
9.8)
11.7)
6.5)
5.0)
11.6)
12.9)
12.6)
12.1)
10.9)
9.2)
7.8)
8.3)
9.3)
8.2)
9.1)
8.0)
4.2)
2.5)
3.0)
外国証券
34,184(
36,743(
39,660(
41,917(
45,895(
47,723(
47,916(
48,223(
48,380(
48,153(
47,939(
46,121(
47,416(
47,777(
48,751(
48,992(
49,106(
48,485(
49,090(
37,723(
50,807(
58,911(
62,730(
62,868(
72,767(
71,365(
69,919(
68,790(
69,463(
68,346(
73,655(
74,183(
73,268(
78,190(
79,303(
77,171(
76,097(
74,316(
債
地方債
41.0)
34.6)
15.9)
6.4)
27.7)
34.0)
37.6)
34.2)
32.0)
25.5)
18.2)
17.4)
21.6)
20.8)
24.3)
21.6)
10.7)
4.5)
4.1)
18,507
20,554
24,778
24,914
25,476
26,233
26,288
26,116
26,237
26,550
26,480
26,755
27,427
28,306
29,244
29,426
29,603
29,675
30,000
社
債
86,672(△
92,497(
99,328(
108,534(
112,671(
113,131(
113,106(
113,566(
112,821(
112,450(
111,599(
110,483(
112,166(
112,462(
113,591(
113,222(
112,321(△
111,146(△
111,813(△
公社公団債
5.4) 13,679
6.7) 15,595
7.3) 21,166
9.2) 27,267
12.0) 30,091
8.8) 32,126
6.6) 32,526
6.6) 33,066
5.0) 33,364
3.4) 33,538
3.0) 33,597
1.7) 33,875
2.3) 35,282
0.7) 35,947
0.8) 37,211
0.2) 37,412
2.0) 37,170
1.7) 37,083
1.1) 37,430
余資運用 信金中金
その他の 貸
付 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 有価証券 (A)
16.0)
―
5
393,392
147,096
7.4)
346
5
439,243
166,783
7.9)
442
0
445,987
159,156
5.6)
565
0
468,216
159,131
8.5)
619
0
492,659
195,676
12.1)
627
0
487,710
163,256
12.1)
632
0
486,910
184,147
12.0)
634
0
488,662
185,067
11.7)
630
0
495,024
189,285
11.5)
616
0
488,014
186,157
11.6)
622
0
494,572
195,765
10.0)
643
0
489,360
154,855
10.4)
606
0
502,119
195,116
7.6)
612
0
503,901
195,228
6.2)
619
0
512,578
193,808
3.7)
625
0
508,054
186,621
2.9)
619
0
512,408
194,193
1.5)
630
0
507,102
166,545
2.4)
631
0
510,893
193,205
金融債
29,579
31,849
34,374
37,894
37,722
36,287
35,526
35,479
35,081
34,922
34,644
34,274
34,556
34,358
34,586
34,368
33,987
33,661
33,582
預貸率 (A)
/預金
67.3
63.7
62.2
60.4
58.7
59.2
59.2
59.3
59.2
59.3
58.9
58.9
58.0
57.8
57.4
57.8
57.4
58.0
57.9
38.5
42.3
43.3
45.2
46.6
46.2
46.2
46.2
46.3
46.1
46.5
46.3
47.2
47.4
47.8
47.4
47.7
47.3
47.5
その他
43,412
45,052
43,787
43,372
44,858
44,717
45,053
45,019
44,376
43,990
43,357
42,334
42,327
42,155
41,793
41,441
41,163
40,401
40,800
株 式
信金中金月報 2004.12
5,467
6,325
4,987
4,206
4,581
4,492
4,610
4,640
4,587
4,565
4,660
5,449
4,752
4,993
5,079
5,182
5,273
5,358
5,429
貸付信託
57
58
24
17
10
4
4
4
4
3
3
2
2
2
2
2
2
0
0
預証率 (B)
/預金(B)/(A)
19.4
21.3
22.9
23.9
24.4
25.6
25.6
25.4
25.0
25.3
25.0
25.4
25.6
25.7
26.2
26.4
26.1
25.9
25.9
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
120
商品有価
証
券
14.4
16.0
15.4
15.3
18.5
15.4
17.5
17.5
17.7
17.6
18.4
14.6
18.3
18.3
18.0
17.4
18.1
15.5
17.9
37.3
37.9
35.6
33.9
39.7
33.4
37.8
37.8
38.2
38.1
39.5
31.6
38.8
38.7
37.8
36.7
37.8
32.8
37.8
2.
(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
国内銀行
前年同月比
増 減 率
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
大手銀行
(債券、信託
を含む) 前年同月比
増 減 率
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
2000. 3
1,020,320
1.4
6,639,673
1.0
4,298,016
1.7
2,433,587
0.8
2,090,975
0.4
1,742,961
1.5
01. 3
1,038,043
1.7
6,641,871
0.0
4,288,153
△ 0.2
2,466,900
1.3
2,102,820
0.5
1,785,742
2.4
02. 3
1,028,198
0.9
6,790,535
2.2
4,416,792
2.9
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
1,813,848
1.5
03. 3
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487
△ 0.0
6
1,054,744
1.8
6,644,211
△
1.5
4,239,210
△ 2.7
2,753,332
2.5
2,365,201
1.3
1,850,150
1.1
9
1,053,808
2.1
6,641,341
△
0.8
4,271,387
△ 1.6
2,770,950
3.7
2,385,332
3.5
1,816,601
1.4
03.10
1,050,779
2.2
6,580,434
△
0.9
4,241,987
△ 1.7
2,733,683
2.8
2,353,812
2.8
1,792,664
1.5
11
1,055,159
2.3
6,653,866
△
0.8
4,288,017
△ 1.7
2,767,642
2.3
2,385,727
2.3
1,816,427
1.6
1.0
△
12
1,068,100
1.9
6,673,286
△
0.4
4,289,361
△ 0.8
2,757,888
3.4
2,368,299
3.2
1,825,041
04. 1
1,055,949
2.4
6,651,254
△
0.4
4,302,101
△ 1.2
2,760,911
2.6
2,378,636
2.9
1,799,432
1.6
2
1,061,010
2.5
6,687,936
△
0.5
4,326,416
△ 1.4
2,773,222
1.6
2,389,622
1.7
1,809,568
1.8
3
1,055,175
1.8
6,798,238
△
0.0
4,420,297
△ 0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
0.6
4
1,063,080
1.7
6,810,122
2.3
4,427,542
3.6
2,825,196
1.5
2,443,326
1.7
1,829,132
△ 0.1
5
1,061,345
1.6
6,834,449
2.6
4,448,122
4.0
2,850,634
2.4
2,469,833
2.8
1,833,797
0.0
6
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677
△ 0.0
7
1,069,663
1.8
6,799,707
2.4
4,411,376
3.4
2,807,968
1.7
2,420,989
2.0
1,832,415
0.4
8
1,071,058
1.3
6,775,417
1.8
4,394,076
2.9
2,801,325
1.1
2,413,968
1.2
1,827,581
△ 0.2
9
1,070,466
1.5
10
p 1,072,481
2.0
年 月 末
第二地銀
信用組合
前年同月比
増 減 率
労働金庫
前年同月比
増 減 率
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
598,696
△
5.1
191,966
△
4.9
111,791
4.4
702,555
1.8
2,599,702
2.9
11,266,007
01. 3
567,976
△
5.1
180,588
△
5.9
117,212
4.8
720,944
2.6
2,499,336
△ 3.8
11,197,994
02. 3
559,895
△
1.4
153,541
△ 14.9
125,200
6.8
735,373
2.0
2,393,418
△ 4.2
11,226,265
0.2
03. 3
561,426
0.2
148,362
△
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465
△ 2.5
11,191,160
△ 0.3
6
554,851
△
1.2
150,940
△
9
553,353
△
1.8
151,772
3.3
1.4
△
0.6
0.6
136,476
2.6
757,417
1.6
2,323,381
△ 2.8
11,067,169
△ 1.2
1.9
135,179
3.3
752,178
1.8
2,300,064
△ 2.7
11,034,342
△ 0.6
03.10
545,783
△
1.8
151,407
2.1
134,787
3.1
756,441
1.9
2,301,184
△ 2.7
10,975,032
△
11
549,422
△
2.1
151,575
2.2
134,809
3.4
757,171
2.0
2,290,355
△ 2.6
11,042,935
△ 0.6
0.7
△ 0.3
12
558,884
△
2.2
153,408
2.3
137,941
2.9
766,812
1.9
2,300,362
△ 2.4
11,099,909
04. 1
549,721
△
1.6
152,296
2.7
137,193
3.1
760,884
2.1
2,294,158
△ 2.5
11,051,734
△ 0.3
2
551,952
△
1.5
152,828
2.9
137,276
3.3
763,654
2.1
2,295,114
△ 2.3
11,097,818
△ 0.4
3
552,400
△
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820
△ 2.5
11,175,236
△ 0.1
4
553,448
0.4
153,126
2.3
137,973
2.9
763,175
1.9
p 2,272,153
△ 2.5
p11,199,629
1.2
5
552,530
0.5
152,967
2.1
137,533
3.0
763,045
1.9
p 2,257,389
△ 2.6
p11,206,728
1.3
6
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
p 2,261,257
△ 2.6
p11,219,869
1.3
7
555,916
0.9
154,249
2.3
140,296
3.0
771,625
2.2
p 2,247,216
△ 2.8
p11,182,756
1.2
8
553,760
0.2
154,457
1.8
139,624
2.7
773,108
2.1
p 2,241,378
△ 3.1
p11,155,042
0.7
138,731
2.6
p 2,216,109
△ 3.6
p 2,214,131
△ 3.7
9
10
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
121
2.
(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
信用金庫
年 月 末
大手銀行
前年同月比
増 減 率
地方銀行
前年同月比
増 減 率
都市銀行
前年同月比
増 減 率
第二地銀
前年同月比
増 減 率
信用組合
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
687,159
△
3.4
2,788,233
△
1.0
2,151,274
1.9
1,340,878
△ 3.0
505,738
△ 4.0
142,433
△ 7.6
01. 3
661,879
△
3.6
2,746,303
△
1.5
2,133,507
△ 0.8
1,357,418
1.2
465,931
△ 7.8
133,612
△ 6.1
02. 3
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△ 4.5
1,359,864
0.1
444,432
△ 4.6
119,082
△ 10.8
03. 3
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
1.8
1,352,514
△ 0.5
429,130
△ 3.4
91,512
△ 23.1
6
619,691
△
1.2
2,379,564
△
6.6
2,006,581
△ 7.4
1,330,607
△ 0.1
413,407
△ 5.1
90,545
△ 13.6
9
625,431
△
0.6
2,375,563
△
4.5
1,993,783
△ 5.2
1,345,276
0.6
416,370
△ 4.3
91,511
△ 5.1
03.10
623,438
△
0.5
2,336,226
△
6.4
1,962,538
△ 7.1
1,335,550
0.4
414,822
△ 4.3
91,409
△ 4.9
11
626,852
△
0.5
2,356,647
△
6.2
1,985,128
△ 6.8
1,340,065
0.2
417,592
△ 4.1
91,770
△ 4.7
△ 0.7
12
633,013
△
0.7
2,361,749
△
6.2
1,991,686
△ 6.7
1,352,962
△ 0.1
423,823
△ 4.0
92,384
04. 1
627,637
△
0.2
2,341,942
△
6.1
1,971,502
△ 6.7
1,346,007
0.3
420,122
△ 3.6
91,927
△ 0.3
2
626,366
△
0.2
2,330,705
△
5.6
1,951,514
△ 6.6
1,347,901
0.4
419,680
△ 3.5
91,897
△ 0.3
3
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△ 5.4
1,352,081
△ 0.0
420,236
△ 2.0
91,234
△ 0.3
4
617,120
△
0.6
2,292,763
△
4.6
1,912,736
△ 5.9
1,337,101
△ 0.0
414,732
0.2
90,688
△ 0.2
5
614,368
△
1.1
2,287,430
△
4.1
1,913,218
△ 5.1
1,325,597
△ 0.6
412,920
△ 0.1
90,416
△ 0.4
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△ 4.7
1,324,230
△ 0.4
413,043
△ 0.0
90,456
△ 0.0
7
619,714
△
0.2
2,283,623
△
2.6
1,915,566
△ 2.9
1,331,384
△ 0.2
415,252
0.1
90,910
0.0
8
616,348
△
1.2
2,288,310
△
3.0
1,920,610
△ 3.3
1,320,041
△ 1.4
412,277
△ 0.8
90,721
△ 0.4
622,105
△
0.5
621,686
△
0.2
前年同月比
増 減 率
うち中小
企業向け
前年同月比
増 減 率
9
10
年 月 末
p
労働金庫
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
うち住宅
金融公庫
合 計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
増 減 率
2000. 3
73,830
4.0
220,863
0.2
1,729,489
8.0
297,448
4.3
745,413
3.3
7,488,623
0.0
01. 3
76,213
3.2
220,078
△
0.3
1,731,885
0.1
293,556
△ 1.3
759,220
1.8
7,393,319
△ 1.2
02. 3
81,054
6.3
217,357
△
1.2
1,693,486
△ 2.2
288,025
△ 1.8
726,516
△ 4.3
7,156,880
△ 3.1
03. 3
87,266
7.6
215,147
△
1.0
1,617,238
△ 4.5
279,743
△ 2.8
671,999
△ 7.5
6,870,363
△ 4.0
6
87,930
8.3
213,430
△
0.7
1,606,884
△ 4.6
278,349
△ 2.4
659,966
△ 8.1
6,742,058
△ 4.1
9
89,637
8.3
214,601
△
0.4
1,569,865
△ 5.2
277,987
△ 1.6
634,452
△ 9.5
6,728,254
△ 3.0
03.10
90,443
8.1
214,696
△
0.1
1,560,756
△ 5.3
275,448
△ 1.4
629,594
△ 9.7
6,667,340
△ 3.8
11
91,205
7.7
214,889
0.0
1,559,932
△ 5.2
277,480
△ 1.3
626,931
△ 9.7
6,698,952
△ 3.7
12
91,749
7.7
213,529
0.0
1,556,901
△ 5.3
279,855
△ 1.6
622,745
△ 9.8
6,726,110
△ 3.7
04. 1
91,394
7.6
212,930
0.1
1,546,860
△ 5.1
276,757
△ 1.1
618,112
△ 9.7
6,678,819
△ 3.5
2
91,794
6.8
213,253
△
0.0
1,538,354
△ 5.1
275,699
△ 1.3
612,729
△ 9.7
6,659,950
△ 3.3
3
92,664
6.1
214,871
△
0.1
1,531,569
△ 5.2
274,726
△ 1.7
605,947
△ 9.8
6,669,640
△ 2.9
4
92,589
5.7
214,398
0.1
1,524,592
△ 5.2
272,383
△ 1.8
601,913
△ 9.8
6,583,983
△ 2.8
5
92,590
5.5
214,406
0.2
1,527,198
△ 5.4
270,630
△ 2.4
601,093
△ 9.8
6,564,925
△ 2.9
6
92,663
5.3
214,190
0.3
1,522,584
△ 5.2
272,745
△ 2.0
595,953
△ 9.6
6,553,079
△ 2.8
7
92,746
5.1
214,457
0.2
1,518,198
△ 4.7
277,180
0.0
589,569
△ 9.4
6,566,284
△ 2.0
8
93,061
4.7
214,776
0.1
1,508,032
△ 4.7
274,463
△ 0.7
583,785
△ 9.0
6,543,566
△ 2.5
9
93,555
4.3
277,060
△ 0.3
578,784
△ 8.7
10
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
122
信金中金月報 2004.12
ホームページのリニューアルのご案内
当研究所ホームページをリニューアルしました。
従来トップページのみに表示されていたメニュ
ーを下層のページにも表示し、使いやすくしたほ
か、「ご意見ご要望窓口」を設置して、ご利用者
からのメールを受け付けることとしました。
内容も、従来からの各種レポート、信金中金月
報等の掲載や当研究所業務の概要、講演内容、活
動記録などの紹介に加え、「信金統計」英語版
Statistics of Shinkin Banks やサイトマップを掲載
しました。
このホームページのリニューアルにより、地域
金融、中小企業金融、協同組織金融等の当研究所
の研究調査活動の成果物が、これまで以上にご利
用しやすくなりました。
URL は
http://www.scbri.jp/
です。
ISSN 1346−9479
2004年( 平 成16年 )
12月1日 発行
2004年12月号 第3巻 第13号( 通 巻381号 )
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒1 0 4−0031 東京都中央区京橋3−8−1
T E L 0 3( 3 5 6 3 )7 5 4 1 F A X 0 3( 3 5 6 3 )7 5 5 1
<本誌の無断転用、転載を禁じます>