創刊!JFA公認指導者 対象の専門誌 創刊!JFA - JFA Community

Technical
news
Vol.1
創刊!JFA公認指導者
対象の専門誌
2003ナショナルトレセンU-14報告
U-23日本代表、アジア予選に向けた準備
再現、JFA「リフレッシュ研修会」
財団法人 日本サッカー協会
Technical news
Vol.1
特集①
変化を感じよう!
変化に対応しよう!
!
2003ナショナルトレセン
U-14
2
特集②
© Jリーグフォト
(株)
U-23日本代表
アテネオリンピック出場
アジア最終予選に向けた
準備
45
日本代表チーム
ジーコ監督、カンタレリGKコーチインタビュー
10
U-19日本代表チーム
2005年FIFAワールドユース選手権に向けて
14
U-14世代の活性化を目指して
トレセン改革
18
U-16日本代表チーム
2004年、高校1年生早生まれセレクション報告
20
24
2003年度公認指導者
(リフレッシュ)
研修会より GKコーチング
○表紙:写真提供、Jリーグフォト㈱
セットプレーの守備「PKへの対応」
28
珠玉のひとこと その2
JFA高校サッカー・テクニカルスタディ
GKプロジェクト活動報告
報告:日本女子サッカー、強化・普及への取り組み
フィジカル、測定のすすめ
公認キッズリーダー、インストラクター養成
年代別指導指針①
審判員と指導者、ともに手を取り合って・・・ 第2回
技術委員会刊行物・販売案内
17
22
32
35
38
40
42
44
56
○発行人:田嶋幸三
○監 修:財団法人日本サッカー協会技術委員会
○発行所:財団法人日本サッカー協会
○制 作:財団法人日本サッカー協会技術委員会テクニカルハウス
○制作協力:エルグランツ(株)
○印刷・製本:サンメッセ(株)
※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。
1
2003ナショ ナルトレセンU-14
240人の選手たちがJヴィレッジに集 まる
© AGC/JFA news
14歳以下の選手たちを対象にした「2003ナショナルトレセンU-14」が2004年3月にJヴィレッジ
で開催された。
2003年度から選手参加資格を“学年”ではなく「1月1日」という誕生日区切りに変更、1989年1月
1日以降とし、さらに参加者数を164人から240人に拡大、2回に分けての開催となった。
足達勇輔(JFAナショナルトレセンコーチ/JAPANサッカーカレッジ)
テーマ選定について
今回の2003ナショナルトレセンU-14のテーマ選定
は、ナショナルトレセンと同じようにサッカーの本質か
ら逆算されたものであり、日本全体の大きな課題となっ
ている「ゴール前」を意識したものである。
「ゴール」というサッカーの目的地を常に意識させる
ことにより、選手にサッカーをシンプルに考えさせたい
という狙いもあった。ゴールがそこにあるから課題が明
確になり、ゴールがあるからこそ、そこに駆け引きが生
まれてくる。
指導者が「教え込む」という危険な行為から、選手自
身が観て、判断して、感じて、プレーするように仕向け
るようにオーガナイズを考えた。また、選手の感性を最
大限に引き出し、どのような状況にも臨機応変に対応で
きる選手の育成にもトライした。
選手が、プレーの中でゴールへの近道を感じて攻める、
危険を感じて守る、と言う本質=「感性」を引き出して
行くことを目標に『変化を感じよう!変化に対応しよ
う!
!』とした。
© AGC/JFA news
© AGC/JFA news
『変化を感じよう!変化に対応しよう!
!』
観て判断することの大切さをベースに、味方・相手・
スペース等の変化に合わせたプレーを選択できるように
なるために、今年度のテーマは「変化を感じよう! 変化
に対応しよう!
!」とした。「感じる」ということは、特に
意識をしなくても判断できるということである。
トレーニングの中では必ず「ゴール」を設定し、そこ
には攻守ともに「ゴールを奪う」「ゴールを守る」という
「サッカーの本質」を忘れてはならないというメッセージ
を込めている。ゴールがあるからこそ課題が明確になり、
ゴールがあるからこそ、そこに駆け引きが生まれてくる。
いろいろと教え込むよりも、選手がプレーの中でゴール
への近道を感じて攻める、危険を感じて守る、という本
質=「感性」を引き出していきたい。
フィールドプレーヤー
コンタクト
スキル
守備
しかけ
ポゼッション
開催概要(抜粋)
スケジュール
期間
NATIONAL
TRAINING
CENTER
1
コース
2004年3月20日(土)13:30 ∼ 3月24日(水)12:00 4泊5日
2
コース
2004年3月25日(木)13:30 ∼ 3月29日(月)12:00 4泊5日
1日目
2日目
場所
3日目
Jヴィレッジ(福島県)
13:30
集合
14:30 ∼ 16:00
トレーニング(地域別)
8:45 ∼ 10:45
トレーニング(グループ別)
14:00 ∼ 15:45
トレーニング(グループ別)
19:00 ∼ 19:20
レクチャー
9:00 ∼ 10:45
19:00 ∼ 19:20
選手参加資格
4日目
①JFA加盟登録選手(外国籍選手でもその選手の参加が他の
選手にプラスと考えられる場合、参加を承認する)
②1989(昭和64・平成元)年1月1日以降出生の者
③日常的にトレセンで活動している者
5日目
トレーニング(グループ別)
レクチャー
9:00 ∼ 11:00
ゲーム(グループ別)
14:00 ∼ 16:00
ゲーム(グループ別)
8:50 ∼ 10:50
10:50 ∼ 11:00
ゲーム(地域別)
閉会式
2
コース
選手数
U-14
U-13
8(1)
8(1)
コース
選手数
U-14
U-13
関東②
32
16(2)
16(2)
北海道
16
東 北
16
8(1)
8(1)
北信越
16
8(1)
8(1)
関東①
32
16(2)
16(2)
東 海
32
16(2)
16(2)
関 西
32
16(2)
16(2)
中 国
16
8(1)
8(1)
九 州
32
16(2)
16(2)
四 国
16
8(1)
8(1)
計
128
64(8)
64(8)
計
112
56(7)
56(7)
※( )内数字はGKの参加数
2
どのテーマにおいても、ファーストタッチ、サポート、パス
の質、タイミングなどはベースとなるキーファクターとして徹
底させたい。
選手の自立といった観点から、自分で判断して行動すること
を促すために、ナショナルトレセンU-16で取り組んだ「与え
過ぎない」ということにもトライする。トレーニングだけでな
く、トレセン期間中のすべての活動において、選手自身が工夫
し、自主的に行動でき、自己責任が発生するような時間、雰囲
気をつくっていく。また、身体面、精神面の成長の違いを考慮
し、より適切な環境を与えていくために、あえて13歳、14歳
を分けてグループをつくった。
オン・ザ・ピッチ(On The Pitch)およびオフ・ザ・ピッチ
(Off The Pitch)ともに、「個の育成」に重点を置き、取り組ん
でいく。
ゴールキーパー
●各地域からの参加選手数と年齢別内訳
1
コンタクトスキルは、どの年代でも課題とされているもので
あるが、単なる身体と身体のぶつかり合いではなく、いつコン
タクトが必要なのか、どのように相手選手とコンタクトしてい
くのか、コンタクトをどのように利用していくのか、コンタク
トしながら何を観るのか、などを選手に考えさせたい。
守備では、1対1 → 前を向いた相手に対しての対応 → オフ
(Off)のポジショニングからの1対1へと段階を経て理解させ、
3対3のグループでの守備ではその個人戦術をいかす場面をつ
くりだす。
しかけでは、2対1 → 3対2の数的優位の状況を設定し、DF
の変化を観て、プレーを選択する判断に働きかけたい。
ポゼッションも各年代で常に課題になるものである。DFの
対応によりポジションを替えていく判断について、「ギャップ
の共有」(出し手と受け手が同じギャップを互いに意識するこ
と)をキーワードに、ポゼッションを支えるポジショニングを
理解させていく。
● Aggressive Goalkeeping
積極的かつ攻撃的なゴールキーピング
リーダーシップ
● Good Position
GKの姿勢(いつでもどこへでも動き出せる体勢とそのタイミング)
状況に応じた良いポジション
● DF Communication & Combination
どうしたらいいのか、どうしてほしいのかを伝える
決断と声(自分がプレー or 味方がプレー)
「観る」
状況把握・予測
プレーを決定するためのベースになる
ものであり、一瞬一瞬で変わる状況を
どのように観て、判断を下すかである。
観ることができていれば、次のプレー
の予測ができやすく、判断を決定する
うえで非常に有利である。
3
フィールドプレーヤー
トレーニングに関して
これらのテーマは、U-16日本代表、JFA
1.パス&コントロール
2.コンタクトスキル
3.守備
4.しかけ
5.ポゼッション
し、バランスを崩す理由を意識させると、
エリートプログラム、U-14日本選抜、世
身構えてコンタクトを受けてからボールに
界との差の中から選定されたものである。
タッチするといった工夫が見られるように
パス&コントロールはテーマとして扱わ
なってきた(図2参照)
。
ゴールキーパー
1.シュートストップ
2.ブレイクアウェイ
3.クロス
図3
ニングで意識させた(図4参照)
。
ポゼッションのセッションでは、4対2
トタッチ、コミュニケーション、パスの質
ベースになる止める、蹴る(観ること=ボ
守備のセッションでは、シュートコース
についてトレーニングし、オーバーナンバ
ールから目を離し、視線を切り替えるトレ
を意識させながらポジショニングの原則を
ー(6対6+2フリーマン)の形でポゼッシ
ーニング)を毎日のトレーニングの中で求
オーガナイズから感じさせた。原則を説明
ョンを行い、ボール保持者とサポートのポ
めていった。「良い習慣」の身についてい
するのではなく、選手の工夫を引き出す際
ジションを整理していった。
る選手が少なく、観るものを増やしていく
に有効な「発問」をとり入れながら、最善
どの世代でも課題となるポゼッションで
と(味方、ボール、相手、スペース…)と
の方法を引き出すことにトライした(図3
あるが、ボールが来る前までにすべきこと
たんに肝心の止める、蹴る技術がおろそか
参照)
。
がなかなか整理できていないことが多く見
になってしまった。
受けられた。そのために戦術的な判断がで
毎日のトレーニングに織り込んだ三角パ
しかけのセッションでは、ゴール前の
ス・W三角パスも、日ごとに課題を克服し
状況でいかに相手ディフェンスの変化を
ていく選手を観て、改めて日ごろからベー
観ながらプレーを選択できるかをトレー
しかし、毎回のトレーニングで取り組ん
シックな「観る」トレーニングを行ってい
ニングした。2対1∼3対2という数的優位
できた、三角パス、W三角パスの成果が、
く必要性を感じた(図1参照)
。
の状況下で、的確なプレーの選択を、ボ
ボールの移動中に観るということについて
ール保持者とサポートする選手の両面か
少しずつ出て来たように感じた。
きずに、行き当たりばったりのプレーをす
コンタクトスキルのセッションでは、ボ
ら考えさせた。また、ゴールキーパーを
意図的にゴールマウスからはずようなし
というベースに対して各地域、チームに戻
ランスを崩さないように上手に相手とコン
かけも、ボール保持者のゴールへの意識
ってからもますます取り組み、プレッシャ
タクトしながらプレーしていくことを求め
付けのために行った。
ー下でも素速く、正しく、かつ柔軟に変化
三角パス(図1参照)でトレーニングし
に対応できる判断ができるよう、毎日のト
扱っていてバランスを崩す(片方の足で立
たタイミング、パスの精度、コミュニケー
レーニングでこだわって取り組んでいって
っているため)選手を多く見かけた。しか
ションなどのキーファクターもこのトレー
もらいたい。
図2
∼2対1+GK
2003NTC U-14トレーニング紹介
∼2対2ラインゲ−ム
図5
4
2003NTC U-14トレーニング紹介
すべてのセッションの根底にある「観る」
たが、コンタクトされる瞬間にもボールを
2003NTC U-14トレーニング紹介
図4
る選手が目立った(図5参照)
。
ール、相手、スペース、味方を観ながらバ
∼三角パス
∼3対3(+GK)
のシンプルなトレーニングの中でファース
れていないが、指導する側からはすべての
図1
2003NTC U-14トレーニング紹介
2003NTC U-14トレーニング紹介
∼6対6+2フリーマン
5
レクチャー・ミーティングについて
変更点について
期間中いくつかのレクチャーと毎日のミ
白鳥中学校)より「2003JFAエリートプロ
1989年生まれと1990年生まれの選手を
同じであったように大きな発見、急激に伸
フ・ザ・ピッチでも、選手の自立を促す、
ーティングを行った。須藤茂光ナショナル
グラム報告」について、筆者より「AFC
集めてのトレセンであったが、今回はグ
びる選手、特徴のある選手が今後、多く出
自己責任を持たせるといった観点から、時
トレセンチーフコーチより「フェアプレー」
U-14Festival報告」についてレクチャーが
ルーピングを各年齢別にした。この年代
てくることを確信している。
間、トレーニングピッチ、食事時間、食事
について、アディダス社より「正しい用具
行われた(本誌24ページ参照)
。
は身体面、精神面において1歳の差が大き
ピッチサイズもこの年代に合わせてサイ
場所など各自で確認すればすむことに関し
の選び方」について、大塚製薬社から「ス
また、毎日のトレーニングについてグル
いため、年齢別でグルーピングした方が
ズを縦85m×横60mに縮小して行った。こ
ては、あえてスタッフからインフォメーシ
ポーツ選手の栄養」について、島田信幸
ープごとにミーティングとストレッチング
今回のトレーニングの狙いであるレベル
の試みは初めてであったが、先に行われた
ョンせずに自ら確認するようにした。
JFAエリートプログラムコーチ(鈴鹿市立
を行った。
に合わせての指導がしやすいであろうと
AFC U-14Festivalでもサイズこそ違うが試
の判断で行った。この点については、各
みられていたことである。狙いとしては、
は心配をよそに思ったより、自分たちで
グループとも上手くレベリングされてい
スペースを狭くすることにより、早い判断
時間を工夫したり確認したりして行動で
て指導しやすかった。
に働きかけることである。狙いどおり判断
きていた。
© AGC/JFA news
指導スタッフについて
1つのグループがJFAナショナルトレセ
ンコーチ、地域指導者3名(コーチ、GKコ
初の試みで混乱が予想されたが、実際
今まで1コースで開催されていたナショ
の遅い選手(オフの準備が悪い選手)は、
スケジュールの面でも、今までのトレ
ナルトレセンU-14を2コースに分けて行っ
ミスが多くなり課題が浮き彫りになった。
センとの大きな変更点はないが、ナショ
るために各グループで充実したトレーニン
てから今回のナショナルトレセンの内容を
た。この狙いは、参加選手を増やして従
このピッチサイズ変更の取り組みは、各地
ナルトレセンU-16同様に3日目午後のトレ
グを展開していた。
伝達する時のためにも非常に有意義な研修
来の選手に加えてより特徴のある選手、
域でもすぐに取り組めるものの一つとし
ーニングを完全休養に充てた。これは、
になったことと思う。
ーチ、生活担当)、で構成されるチームと
トレーニングのイニシアティブは、JFA
漏れていた可能性のある選手を発掘する
て、是非、参考にしていってもらいたい。
選手の疲労、けがの予防、4日目のゲーム
いう認識で臨んだ。各グループとも指導ス
ナショナルトレセンコーチがとったが、地
今後も地域指導者、JFAナショナルトレ
ためである(参加人数は、レベルの高い
オフ・ザ・ピッチでは、「選手に与えす
に良いコンディションで臨ませることを
タッフのトレーニング前の入念な打ち合わ
域から参加した指導者には前日のシミュレ
センコーチ、JFAそして選手とともに内容
地域から多くの選手を選出し約2倍の人数
ぎない」ことにトライした。従来、すべて
目的としたものである。選手は、リフレ
せから役割分担までを行い、選手の指導に
ーションに参加してもらい、トレーニング
の充実したナショナルトレセンを持てるよ
を参加させた)
。
の段取りを大人が行っていたが、これもあ
ッシュした時間を過ごしたようである。
あたった。また、各グループともプロセス
の細部にわたる内容に理解を深めてもらっ
うに努力していきたい。
この点については、枠が広がるとレベル
る部分、選手の判断する機会を奪っている
また、この時間を利用して地域の指導者
はそれぞれの色があったが、目的を達成す
た。地域指導者は、それぞれの地域に帰っ
が下がることが懸念されたが、逆に少しず
のではないかという反省点から試みた。オ
とJFAスタッフとの懇親をより一層深める
つ特徴のある選手が発掘されてきているよ
ン・ザ・ピッチでもトライし、自ら考え、
目的で親善ゲームを行い、楽しい時間を
うである。ナショナルトレセンU-16でも
問題を解決していける選手の育成を、オ
過ごすことができた。
選手選考について
まとめ
参加した選手の選考に関しては、JFAか
のようにナショナルトレセンに来てからけ
ンスが高ければ選考する、ヘディングの競
ら各地域に対して選考試合形式での選手選
がのために活動できない選手を選考しない
り合いに力を発揮するが、足元のプレーに
考ではなく、日頃のトレセン活動の中から
ですむであろうからこの点については、是
課題が残るなどの選手も可能性があれば是
選手の可能性を含めて選考するように要望
非、今後各地域で改善していってもらいた
非、選考の対象に考えていってもらいたい。
た点については、特に大きな問題、混乱
している。
い。
将来の可能性を見据えて特徴のある選手の
は起きなかった。逆にピッチサイズ、シ
発掘にも今後とも力を注いでいきたいと考
ンプルなオーガナイズ、選手枠の拡大、
えている。
オフ・ザ・ピッチでの取り組み、年齢別
しかし、実際は選考された選手の中にけ
また、この年代で完璧な選手、人間はい
がを抱えていた選手も含まれていた。継続
ないであろうから、多少やんちゃで手を焼
したトレセン活動からの選考であれば、こ
く選手でもオン・ザ・ピッチのパフォーマ
今回のトレセンにおいて新たに変更し
グルーピングなど、どれをとっても今後
も継続して取り組んでいかなければなら
ないことと確信できた。
今後も「Players First」でナショナルト
トレセンまでの準備
レセンをより充実させていくために、さ
まざまなアイディアへの取り組みや改革
今回のナショナルトレセンテーマ、スケ
このような流れから各グループでのトレ
ジュール、トレーニングメニューを創りあ
ーニングは、トレーニングメニューこそ同
げていく過程でワーキンググループでディ
じものを行うが、指導に関しては、各グル
スカッションを重ねていく中で確認したこ
ープ内で担当のコーチが、選手のレベルに
とは、“教え込む”のではなく、選手にで
合わせてコントロールしていくことにトラ
きるだけ考えさせて、感じさせて、対応さ
イした。つまり、求めているスキルがまだ
せていくことであった。結局は、選手が創
身についていない場合は、次のステップに
造的にプレーするためには「選手の感性」
進まないことを確認した。
をディスカッションを重ねながらより良
い方向へ進めていきたいと考えている。
が一番大切だからである。
© AGC/JFA news
© AGC/JFA news
2003ナショナルトレセンU-14・トレーニングシミュレーションより
6
7
GK TRAINING
ゴールキーパー・トレーニング
佐々木理(GKプロジェクト/柏レイソル)
全般的な評価
GKのテーマ
© AGC/JFA news
Aggressive Goalkeeping
01
積極的かつ攻撃的なゴールキーピング、リーダーシップ
Good Position
02
GKの姿勢(いつでもどこへでも動ける体勢とそのタイミング)
状況に応じたポジショニング
まず、選手全体のレベルが間違いなく向
選手が見られた。また、落下地点の予測の
いては、まずポゼッションやビルドアップ
上しており、特にU-14に関しては個々の
問題で、落下地点に対して最短のコースで
へ参加する意識をもっと持つことが必要で
レベル差はあるとして、各選手がある程度
アプローチできない選手が見られた。この
あり、それに伴って、どこにサポートし
のレベルを身につけていた。このことは、
ことは、多少は年代の問題もあり、トレー
(ポジショニング)
、どこにもらうのか(コ
所属チームや地域トレセンにおける日頃の
ニングで改善していけると考えている。実
ミュニケーション)をGKが観て判断し、
指導の成果であるだろう。
際のゲームの中では、状況に応じたポジシ
意図をもってプレーできるようにしていく
しかし、多少、“トレーニング慣れ”と
ョニングという面で、今後、微修正できる
必要性を強く感じた。ポゼッションの場合、
いうことも感じられ、GKのトレーニング
ようにトレーニングを積んでいく必要があ
DFと重なる場合も度々見られ、GK、DF
ではできるが、フィールドプレーヤーとの
るだろう。
ともにGKを含めてポゼッションするとい
トレーニングでは発揮できないということ
も見られた。
DF Communication & Combination
03
以下に各トレーニングでの主な現象を挙
味方選手にどうして欲しいのかを伝える
特に決断と声(自分がプレー or 味方がプレー)
げていく。
シュートストップでは、GKの姿勢の問
題が多く、構える意識はあるが、動きやす
これらのテーマを行うために、
「観る(状況把握・予測)
」ということがベースとなる
GKのトレーニングについて
トレセンを通じて、テーマを掲げ、目指
・GKの基本要素(GKの構え、GKの基
すべきGK像を選手に意識させた上でトレ
本技術、ポジショニング、etc.)を徹底
ーニングに取り組んだ。トレーニングの目
する
標(目的)は、U-14という年代であると
いうことから、以下のように設定した。
加えて、手でボールを保持した場合も含
きれない場合が見られた。まず、出る、出
め、どこにフィードしていくのかの判断が
ないの決断を徹底させることが重要であ
悪く、ゲームの流れを切るケースが多く見
り、ヘディングシュートに対してのポジシ
られた。フィードの際の優先順位を理解す
ョニングを理解し、実践できるようにして
ること、そして、状況をよく観ることを日
いく必要がある。
頃から習慣化させていくことが重要である。
い構えではないという選手が多く見られ
状況把握ということについては、各選手
ゲームでは、ブレイクアウェイやクロス
た。具体的には、構えに関してスタンスが
がある程度の意識はもっていたが、タッチ
の状況下で積極的にやろうとする選手が多
広かったり、どちらかの足に体重が乗って
ライン際でドリブルされたときにゴール前
く見られた。このことは、各選手がGKのテ
しまう選手、手の甲をボールに向けていた
を観ることのできる選手が少なかった。
ーマを意識して取り組んでいた成果である
り、脚の付け根に手を置く選手が見られた。
U-13については、空間認知(落下地点
と思われる。その中で、より正確に状況を
いつでもどこへでも動ける姿勢(開始姿勢)
の予測)についての問題があったが、年代
把握することができれば、予測、そしてポ
ということを選手たちに理解させ、身につ
の問題であると言えるので、今後、トレー
ジショニングなどの準備が良くなり、プレ
けさせていくことが重要であろう。
ニングを継続して改善を図っていくことが
ーの判断も向上してくるものと思われる。
ブレイクアウェイでは、まず技術面につ
重要であろう。
その他の課題としては、指示の内容がア
いて、シューター(ボール)が近距離のと
フィールドプレーについて、まず、パス
ローリングダウン、etc.)、ポジショニン
き、いつでもどこへでも動ける姿勢(開始
やボールコントロールといった技術面はそ
して、簡潔、かつ明確な指示を出せるよう、
グといったGKの基本要素を、ブレイクア
姿勢)をとれない選手、アプローチの後の
れほど質が高くないと言え、また、ボール
ゲームの中で徐々に修正していく必要があ
ウェイでは、GKの基本要素に加え、フロ
構えるタイミングが遅れる選手が見られ
の移動中に観るということを習慣にしてい
るだろう。
これらの目標に関し
ントダイビングの技術、1対1の対応、ブ
た。ブレイクアウェイのトレーニングを行
く必要がある。ゲームの中での関わりにつ
ては、一貫指導計画に
レイクアウェイの状況下でのポジショニン
ったことにより、その状況下での積極的な
リスク・マネージメント(危機管理)の
おけるこの年代の目標
グなどを、クロスではジャンピングの技術、
プレーは多く見られるようになったが、実
指示を出せる選手は少なかった。また、
であり、かつ普遍的な
クロスの状況下での対応(ポジショニング、
際のゲームでは、我慢できずに先に倒れて
ボールが自分のゴールに近づいてくる
ものであるため、今回
etc.)などをポイントにしてトレーニング
しまう選手、足で飛び込んでしまう選手、
と、指示が少なくなる選手が見られた。
のトレーニング内容も
を行っていった。また、「フィールドプレ
スタートポジションがゴールに近い選手な
このことは、その状況下で観れていない
ここ数年のナショナル
ー」のトレーニングは、2日目午後のトレ
どが見られた。
ということに通じると言える。テーマに
トレセンU-14で行って
ーニングのウォーミングアップ(各ピッチ)
きたGKトレーニングの
で行った。
できるようにしていく
内容と大きく変わった
ものはない。
8
シュートストップでは、GKの構え、GK
う意識を向上させていく必要がある。
については、ヘディングシュートに対応し
の基本技術(キャッチング、ステッピング、
・それらの基本要素を試合の状況下で発揮
© AGC/JFA news
った試合の状況を設定したものである。
また、クロスに対して出ない場合の対応
また、指示に関しては、まだまだ内容
バウトな選手が多かった。その状況に対応
具体的な状況としては、特に攻撃時の
も挙げたが、観ること(状況把握)が判
(質、量)が不十分であると言え、特に、
断のベースとなるのでゲームの中で「い
トレーニングテーマはU-14、U-13とも
ファーストディフェンダーに対しての指示
つ、どこを、何を観るのか」を選手に理
に同じであったが、段階的指導ということ
(1対1+GKの状況下、etc.)について課題
解させ、習慣化させていく必要性を強く
3回のトレーニングセ
を目的にトレーニング内容に若干の変化を
ッションのトレーニン
つけた。U-14では、基本要素を試合の状
クロスについては、U-14では全体的な
また、ゲームのさまざまな状況におい
グテーマは、
「シュート
況下で発揮できることを最大の目標とした
レベルアップが見られた。全般的な課題と
て、GK自身に対してどのような役割があ
ストップ」
「ブレイクア
が、U-13ではその基本要素(基本技術、
して、技術面の課題としては、ボールをと
ウェイ」
「クロス」とい
etc.)の習得を最大の目標とした。
らえる位置(頭の斜め上方)が安定しない
が見られた。
感じた。
るのかを理解させていくことも不可欠で
© AGC/JFA news
あろう。
9
インタビュー
日本代表チーム、
ジーコ監督
○聞き手 布啓一郎(U-16日本代表監督)
○取材日 2004年3月9日
Interview with
ZICO
© Jリーグフォト
(株)
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
−−−いよいよ、FIFAワールドカップ・
ヨーロッパで活動している選手がキャンプ
ドイツ大会予選の年になりました。アジ
に参加できなかったことが、連携面の確認
ア予選に向けての準備を中心にうかがい
では難しい面がありました。ただし、ディ
−−−トレーニングでもシュートトレー
ます。まず、1月26日からの始動キャンプ
フェンスラインに関しては同じメンバーで
ニングを多く行っていますが、得点を確
についての目的は、どのようなものでし
行えたので、守備ラインの連携はしっかり
実に奪うためにはどうするべきか、ジー
たか?
行うことができました。
コ監督はどのようにお考えですか?
とに関しての課題がありました。
」
難しいことは分かっていますが、2週間
「今回の始動については、国内のリーグに
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(株)
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
日本代表チーム、
1年半にわたる
ドイツに向けた
戦いがはじまる
2004年 日本代表チーム活動スケジュール
2月 (3日∼12日)
7日
12日
(13日∼18日)
10
は予選を闘うメンバーでキャンプを行いた
かったです。
」
18日
3月 (23日∼28日)
トレーニング・キャンプ 【鹿嶋市ほか】
vs マレーシア代表
vsイラク代表
4:0(3:0)
2:0(0:0)
トレーニング・キャンプ 【さいたま市ほか】
vs オマーン代表
1:0(0:0)
トレーニング・キャンプ 【成田市】
28日
移動(シンガポールへ)
31日
vs シンガポール代表
2:1(1:0)
※下線部が、2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選
「シュートに関しては、ボールをゴールに
置きにいくことが大切です。ゴールキーパ
ーの守れないところに正確にキックしてい
ニングとなったため、普通なら各クラブで
行うことである身体づくりから始めること
−−−トレーニングゲームを2ゲーム組み
くためには、フォームをしっかりすること
になったのが、通常と異なる始動となりま
ましたが、これらの2ゲームについての狙
が必要になります。そのためには、ヘディ
した。
いを聞かせてください。
ングも含めて繰り返してトレーニングして
いくことが大切です。代表チームでトレー
しかし、選手たちはオフの期間も各自が
1月 (26日∼2月1日) トレーニング・キャンプ 【宮崎市】
2月18日からスタートした、2006FIFAワールドカップ・ドイ
ツ大会/アジア地区第一次予選。1月、日本代表は第1戦目オマー
ン戦に向けて、国内で活動する選手たちを招集して始動した。
この始動から第1戦目を迎えるまでの準備期間の活動について、
JFAナショナルコーチングスタッフである布啓一郎氏と加藤好男
氏が、ジーコ監督とカンタレリGKコーチにインタビューを試みた。
所属する選手全員がオフ明けからのトレー
自覚を持って過ごしており、キャンプでの
「まず、1ゲーム目のマレーシア戦は、ゲ
ニングをしても、それは一時期でしかあり
トレーニング内容も含め、大変満足できる
ーム感覚を取り戻すことに重点を置いて行
ません。自分が必要だと思ったら、継続し
結果になりました。実際、トレーニングマ
いました。その面で、力量的にはそれほど
て行っていくべきです。自分自身が現役だ
ッチとFIFAワールドカップ予選第1戦のオ
力があるチームではなく、少し格下となる
ったときも、良いと思ったことは自信を持
マーン戦(2月18日)においても、けがも
チームを選んでゲームを行いました。第2
って行ってきました。
なく、またフィジカル的に劣ることは全く
戦は、オマーン戦のシミュレーションを考
そして、それはゲームのためのトレー
ありませんでした。オフの過ごし方に対し
えて、オマーンと同等の力と考えられるイ
ニングでなくてはなりません。1日に必要
ての選手の自覚と、キャンプにおけるフィ
ラクとの試合を行いました。
以上の時間を使って行う必要はなく、繰
ジカル的な達成度には大変満足しています
(詳細は26ページ参照)
。
」
マレーシア戦は、ゲーム感覚を取り戻す
目的はしっかりと達成することができまし
り返して行っていくことが重要だと考え
ています。
た。イラク戦はオマーン戦を想定して行っ
FIFAワールドカップ予選のオマーン戦
−−−この間、ボールトレーニングが多
たわけですが、イラクは個の力があり、チ
でのロスタイムで久保(横浜FM)が決め
くはできませんでしたが、そのことに対
ームとしても非常にしっかりしたチームで
たように、あの状況の中で冷静にやるべき
してチームの連携面から見てどうでした
した。日本代表は前半コンビネーションが
プレーを判断して確実に得点するために、
か?
かみ合わないところが出ましたが、後半は
毎日の繰り返しが必要になります。
」
徐々に修正ができてきて、闘い方が安定し
「身体づくりから行ったこともありますが、
てきました。しかし、確実に得点を奪うこ
−−−いよいよ予選が始まりました。第1
11
一の収穫と考えます。どのような大会でも、
に合わせて計画を立てることができます。
そのため、GKトレーニングにゴムチュ
ちます。私はもっと両手を使ってプレー
初戦は難しい闘いになります。そして、本
日本はそのあたりも難しさがあり、トレー
ーブを使用して、ボールをつかみに行くト
をすることを推奨しています。片手での
大会よりも予選のほうが、お互いを知って
ニングのために時間をとることができない
レーニングを行いました。今回は1本のゴ
プレーは不安定であるし、パワーあるシ
いるので難しいものです。アジアの他グル
ことが連携面での難しさになっています。
ムチューブを使用したトレーニングでした
ュートへの対応では負けてしまうことに
ープの予選でも、明らかに力量差がある対
しかし、初戦を終えて確実に勝ち点をと
が、本来であれば2本のゴムチューブを使
もなります。
戦以外は、点差は多くはついていません。
ることができたことで、選手たちは緊張感
って、両方向へ負荷がかかるトレーニング
まして、前回のFIFAワールドカップは自
もほぐれ、これからチームとしてもどんど
を行いたかったのです。
」
国開催のため、選手たちは予選の経験がな
ん良くなってくると思われます。日本の選
かったことを考えると、勝ち点3がとれた
手は能力が高く、協力していくことができ
ことは、多くのプラスをもたらしました。
るので、これからのゲームはもっと良いゲ
例えば、このゲームで勝ったことで、相
ゴムチューブを使ったトレーニングやメ
ディシンボールを使ったトレーニングで
も、私はこのことを強調しました。
」
−−−実際の方法を教えてください。
−−−今後、予選はアウェーへと続いて
「ゴールポストの下方向でゴムチューブを
ームができると思っています。
」
結び、GKの腰付近とつないで、ポスト逆
手は次のゲームでは勝ちに来なくてはなら
いきますが、今後のGKトレーニングにつ
いてお聞かせください。
なくなり、前に出て来なくてはならなくな
−−−ありがとうございました。日本中
方向へのボールをダイビングキャッチする
ったことも一つと考えられます。課題とし
のサポーターが、ジーコ監督が日本を
と、横方向と上方向に対して負荷がかかり
「まずは、日本代表のGKのプレーパフォー
ては、日本は個の力は確実に伸びているも
FIFAワールドカップ本大会に出場させて
ます。同様に、バー付近へつなげれば、左
マンスを視察して調査すること。その中で
のの、ヨーロッパ組をキャンプに招集する
くれることを信じています。これからの
右および下方向に対して負荷がかかること
長所、短所を再確認しながらトレーニング
戦は厳しいゲームになりましたが、オマ
ことが困難なので、連携面での難しさがあ
予選も厳しいゲームが続くと思われます
になります。こうしたトレーニングをボー
を考えていきます。この予選に向けて、私
ーン戦についての収穫と課題をお願いし
る、という点です。ブラジルでも同じよう
が、是非、アジアを突破して本大会へと
ルを使って実際の動きの中で行い、そのチ
と日本代表のGKたちはともにトレーニン
ます。
な課題はありますが、ブラジルの場合はほ
駒を進めてください。
ューブを取り外すと力強さと速さが得られ
グを積んできました。その中で、私のトレ
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2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vs
オマーン代表より
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2004年3月、日本代表トレーニングキャンプより
る。本来であれば、足首に1∼2kg程度の
ーニングに慣れてきたことで、今後さらに
ョンはまちまちで、里内フィジカルコーチ
重りをつけて行うと、さらに効果がありま
スムーズに流れていき、パフォーマンス向
の下、フィールドプレーヤーと同様のトレ
す。
」
上へと結びつくでしょう。厳しい試合が続
とんどの代表選手たちがヨーロッパをベー
「勝ち点3をとることができたことが、第
スに活動しているので、ヨーロッパの状況
くと思いますが、今後ともチームと同様、
ーニングを行って、シーズン期の体力回復
2006FIFAワールドカップ・ドイツ/アジア地区第一次予選 vsシンガポール代表より
また、GKトレーニングにおいても、3人
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インタビュー
日本代表チーム、
カンタレリ・GKコーチ
が三者三様、体格、フィジカル的要素、プ
ルのコンディション、パフォーマンスへ整
えていくことを最大の課題としました。
その中でもっとも苦労したのは、限られ
Interview with
CANTARELE
12
どうもありがとうございました。
い。サイズ(体格)も向上してきているし、
今後ますます良くなるでしょう。
しかし、あくまでも私見ですが、下半身
個別の欠点克服をテーマとするトレーニン
の力強さ、ジャンプ力やパワーなどはまだ
グを組み込めるかどうかです。これが非常
まだ改善の余地があります。ブラジルでは
に難しかったです。2週間といった合宿は
砂地のトレーニングが大変多く、若年層か
長いようで短い。体力回復、強化から試合
ら行われています。
ので、単純に追い込むだけではダメです。
」
−−−予選突破に向けて、私たち日本人
指導者ともども頑張りましょう。今日は
「ここ最近の日本のGKの成長は大変著し
今回のキャンプでは、メディシンボール
を持たせて8分間走り、フリーランニング
で8分間走るなどの種目を行いました。ま
−−−合宿の中でゴムチューブを使った
た、メディシンボールを使ったキャッチン
トレーニングを行っていました。目的、
グトレーニングも行いました。
」
方法、効果についてお聞きしたいのです
が。
−−−フィジカル面以外に関してはどう
でしょうか?
「私は以前より、日本のGKがパワー不足で
「宮崎合宿に際して、昨年より選手の試合
あると感じています。これはもちろんGK
視察を繰り返し、選考選手の長所、短所を
に限ったものではなく、フィールドプレー
ングやディフレクティングが不安定です。
−−−早速ですが、アジア予選の準備に
私なりに分析してきました。ゴールキーパ
ヤーも同様であると思います。主に、下半
自分の両サイドへ飛んでくるボールに対
ついておうかがいします。
ー(GK)選手たちの集合時のコンディシ
身の強化が必須であると感じていました。
して、すぐ片手でプレーをするGKが目立
厳しくも難しい試合でした。
」
予選開幕戦勝利おめでとうございます。
「どうもありがとうございます。たいへん
か?
たGKトレーニングの中で、個々に対する
へ向けた調整までも考えなければならない
良くなっていきたいと思っています。
」
GKと比べてフィジカル面で劣っています
レーの特徴が異なる中で、3人を同じレベ
○聞き手 加藤好男(JFAナショナルコーチングスタッフ)
○取材日 2004年3月9日
−−−2006FIFAワールドカップ・アジア
および強化を図りました。
−−−日本のGKは、南米、ブラジルの
「ダイビングの時の両手を使ったキャッチ
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2004年3月、日本代表トレーニングキャンプより
13
U-19日本代表
AFC U-20サッカー選手権
から2005年FIFAワールド
ユース選手権に向けて
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1985年1月1日以降生まれの選手たちで編成されるU-19日本代表。
このチームは6大会連続のFIFAワールドユース選手権出場(オランダ)を目指し、昨年4月より活動を
開始、10月にはそのアジア地区予選となる「AFC U-20サッカー選手権」の1次予選を圧倒的な力で勝
ち抜き、本大会(9月24日∼10月8日/マレーシア)に向けた強化に取り組んでいる。
大熊清(U-19日本代表監督)
このチームの当面の目標は、マレーシア
際試合で闘うものを築き上げていかなけれ
っていく(サイドチェンジなどの判断も大
で開催されるAFC U-20サッカー選手権に
ばならない。国際試合では、ピッチ内外で
切)プレーを要求していきたい。
おいて、2005年FIFAワールドユース選手
のいろいろな状況を克服できる心・技・体
そして、第四に選手のストロングポイン
権オランダ大会への出場権を獲得すること
が必要であり、今のままでは国際試合に常
ト(長所または特徴)を見極めて伸ばし、
である(上位4チームに出場権)
。さらに、
勝する力を備えている状況ではない。
ウィークポイント(短所など)は少しでも
この年代は2008年北京オリンピックの中
心になる可能性の高い選手たちであり、今
後、多くの厳しい国際試合での経験を積ん
チーム強化、選手育成の5つの
ポイント
14
思っている。例えば「ヘディングに特徴あ
るが、フィジカルが弱い選手」に対しては、
ヘディングのさらなる強化、そしてフィジ
これからさらに向上させたいことは、
カルに対しても測定すること、個別のメニ
第一に国際試合でのサッカーは『ボール
ューを与えることで、本人の意識も含めて
は奪いに行くものだ』ということ、そし
向上させなければならないと考えている。
てそれをピッチで表現させることである。
各選手の素質・特徴そしてメンタルなども
国際試合では相手のミスを待っていたら、
違うが、その個性を大切しながら、さらに
攻撃につながるようなボールの奪い方は
個を強化するためには、我々指導者が個別
できない。これが、個人そしてチームに
性の指導というものをもっと大切にするこ
浸透しなければ、今日、世界の攻撃で重
とが必要だと感じている。
要視されている「ダイレクトプレー」に
第五には『指示の声』を大切なスキルと
つながるようなボール奪取はできないと
して選手に習得させていきたい。現段階で
いっても過言ではない(日本の育成年代
は満足に到っていないが、辛抱強く言い続
【目 的】
○2005年FIFAワールドユース選手権オランダ大会・アジア予選
(AFC U-20サッカー選手権マレーシア)に向けてのチーム強化
○新たな選手発掘・強化
○チームコンセプトの徹底
○戦える選手の育成
○積極的にボールを奪う・攻守の切り替えの速いサッカーの確立
○選手のポジションの適性把握
○声(指示の声)の徹底
【総 括】
今回、日程上の問題などで参加できなかったメンバーはいたが、
選手層を厚くするという側面、アウェーの厳しい環境で試合をで
きたことでは非常に価値ある遠征であった。
しかし、今までとFWのメンバーが変わったことで、チームと
してボールはキープできるが、前線の起点やゴール前の迫力が極
端に少なくなったことは今後の課題であると感じた。今後、さら
に多くの選手に厳しい経験を積ませることの大切さを痛感させら
れた遠征であった。
また、この遠征は相手チームを知るという意味でも良い機会に
なった。中国・韓国もアテネオリンピック予選などで数人欠けて
いるようであったが、選手自身が肌で各国のサッカーを感じ取っ
たことは今後に非常に大きいと感じた。中国はこの年代は北京オ
リンピックの中心になる可能性が高い選手たちで、80人近くリス
トアップをしてあるということであり、チームとしても、選手
個々もかなり力があり、怖い存在になると感じた。さらに、この
チームを北京オリンピックまでに長い期間、ヨーロッパに遠征さ
せることも考えているとのことであった。
戦術については、全体の守備の意識は浸透してきたが、インタ
ーセプトも少ないし、攻撃への切り替えがまだ遅い。また、足元
でボールを受ける選手がまだまだ多く、もっともっとポジション
に関係なく、ボールも選手もゴールに向うプレーの徹底を図って
いきたい。そして、指示の声も含め選手同士での要求も高める必
要があると感じた。
【成 果】
○新たな選手のポテンシャルを把握でき、強化を図ることができ
た(海外遠征が初めての選手が数人いた)
○厳しさが出てきて、個々が闘える選手になってきた
○アウェーの厳しい環境で集中した試合ができた(中国戦は1万
人以上の観客が入った)
○全員の守備の意識は高まってきた
○クロスの対応は良かった
では、まだまだお互いのミスでマイボー
けていかなければならない。
【課 題】
○存在感あるFWの不足
○ゲーム体力(ボール際の粘り・後半に運動量が低下)
○ボールを奪う力がない
○守備から攻撃への切り替え(サポートの速さ・角度など)
○ボール保持者を越える動きや、裏に出る動きが少ない
○ボールは回るが攻撃が遅いし、ゴールへの意識が薄い(中盤の
選手がゴール前に行く場面が少ない)
2008 Stars International Youth Tournament
2004年2月19日∼23日/中国・武漢市など
R
中国
韓国
U-19中国代表
4
U-19韓国代表
1
-
3
これらのベースを大切に、プレッシャ
2
U-19日本代表
0
-
0
0
- 1
第二に『良いボールの奪い方』をするた
ーの中で通用する基本技術(キック・コ
3
U-19湖北省選抜
1
-
2
1
-
めにも、全選手に攻守の意識・切り替えを
ントロール・ヘディング・スライディン
浸透させ、そして『登録のポジションでは
グ・判断・ポジションなど)をチャレン
なく3ゾーンでやるべきプレー』を強く要
ジさせながら向上を図り、勝利と育成と
求していきたいと考えている。
いう目標に立ち向かっていきたい。そし
第三に個々のボールキープ力を向上させ
て、国際試合で必要な『厳しさ』もチー
ることが、チームとして攻守に安定した試
ムに浸透させ、『戦えるチーム』を育てて
合をするためには必要である。そして、良
いきたいと考えている。
い判断をもとにボール・人がゴールに向か
3
-
日本
1
ルになることが多い)
。
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(株)
2004年2月15日∼24日
向上させるよう選手とともに努力したいと
でいくことが非常に重要になってくる。
これらを踏まえ、個人・チームとして国
報告①:中国遠征
2008年北京オリンピックに参加する年代を対象にした大会
1
0
湖北
勝点
得点
失点
差
0
-
0
2
-
1
7
5
2
3
1
-
0
0
-
1
3
2
4
-2
1
-
0
4
1
1
0
0
-
1
3
2
3
-1
1
Report
15
珠玉のひとこと
その
2
ロビン・ラッセル(イングランドサッカー協会・テクニカルコーディネーター)
報告②:U-19韓国代表戦
2004年3月23日/国立競技場
この年代での韓国との対戦は3試合目であったが(過去、1分1
敗)、韓国は第1戦目以降監督が交代し、戦術・選手もかなり変わ
ってきた印象を受けた。
韓国の戦術に関しては、アウェーということもあったのか、守
備は考えていたより前線からボールを奪いに来なかった。しかし、
中盤での守備・ディフェンスラインの高さ・厳しさはあったし、
奪った後のFWの⑩朴主永を中心としたカウンターの威力があっ
た。また、韓国伝統のロングボールを多用し前線の⑩朴主永のキ
ープ力を生かした攻撃が特徴であった。中盤の構成力は際立って
良いという感じは受けなかったが、守備についてはがんばる選手
が多いように感じた。さらに、平均身長で4cmも日本を上回る
高さを生かした攻撃も多く、センターバックも高さがあり、日本
がそれらの高さに対して、攻守の局面で後手を踏む場面が目に付
いた。
この試合で選手に求めたことは、まずは国際試合に大切な闘う
気持ちであり、それを具体的にピッチで表現するよう求めた。そ
して、ゴール前の入り方での工夫、サイドチェンジの判断、単純
なミスをしないことなど、「判断の早さと冷静さ」も必要だという
ことを伝えた。
具体的な指示では、試合の入り方については5分∼10分はやや
長いボールを多用し、前線からプレスをかけて行くこと、単純な
ミスに気をつけることなどを指示したが、失点は後半10分であり、
チームとして再度、徹底が必要だと感じた。
守備については、積極的にボールを奪い、そしてダイレクトプ
レーにつなげることを指示した。チームとしてボールを積極的に
奪いにいく意識は高くなったが、まだまだ厳しさが足りず、チー
ムとして良いボールの奪い方も少なく、攻撃になったときのスピ
ード・迫力に欠け、人を越えていくような動きが少なかった。ま
た、攻撃にかかったときにバックパス・横パスが多く、自分でボ
ールを運ぶ・パスする・崩す・ゴールに向かうという意識が少な
かった。
例えば、ボールを奪った後の攻撃参加の判断・意識・速さなど
も欠けていたし、自分で出すべきパスを味方に預ける場面も目に
付いた。これらのことについては、緊張やミスを恐れていたこと
が原因のように感じたが、今後、チーム向上のためにさらにアグ
レッシブに、そしてチャレンジさせていくことが大切だと痛切に
感じた。
攻撃については、ダイレクトプレーと同時にボールを早く効果
的に動かすことを求めたが、引いた相手に対して横パスが多く、
相手に守備を整える時間を与えていた。また、パスを出した後の
走る距離・角度・質にもまだまだ課題があると感じた。
リスタートでも後半、相手が疲労してきたときに、ショートコ
ーナーなど相手の隙をつけるような場面があったにもかかわらず、
いつも同じリズムで工夫がなかったことは、今後も追及しなけれ
ばならない大切なことだと考えている。
今後、チームとして追求すべきこととしては、中盤でサイドチ
ェンジはできていたが、そこからの攻撃のスピードアップとゴー
ル前の迫力・工夫を向上させることが必要であり、またポジショ
ンにかかわらず、リスクを負って攻撃することの必要性を感じた。
また、個人・チームとしてボールを奪う意識は向上してきたが、
さらに厳しさや連続性も鍛えていきたい。さらに、攻守にわたる
高さという側面も再考する必要性を感じた。
試合の中で自己主張が足りないため、ボールが回ってこなかっ
たり、攻撃が遅れたり、マークがずれたりという場面が多く、選
手個人の高いレベルでの経験・自立も必要不可欠であり、今後さ
らにレベルの高い厳しい環境・要求を与え、今まで以上にチーム
に逞しさと厳しさを加えていきたい。
「間違いを起こさない人間は、
それほど一生懸命に
取り組んでいないということだ」
Robin
Russell
「第2回フットボールカンファレンス」
(2001年1月)の講師とし
てサッカーの母国イングランドより招いた、イングランドサッカ
大変な苦労を強いられたことが想像されるが、現在のイングラ
セル氏がその講演の中で、上記のマーク・H・マコーマック氏
ンド代表チームのタレントたち、各クラブのユース育成制度の充
(世界的スポーツコンサルティング会社・IMGの創業者)の言葉
実、プレミアリーグの隆盛、それを取り巻くビジネスの大きさな
を引用した。
イングランドサッカーが低迷していた1970年代∼80年代を振り
返りながら、
「自分たちの中だけで答えを見つけようとせずに、他
イしていきたい」と、他者から学び、チャレンジすることの重要
えてしまう。
2002年FIFAワールドカップ終了後、川淵三郎が日本サッカー協
会会長(キャプテン)に就任した。就任以来「まず、やってみよ
う。失敗してもかまわない。はじめることで問題点も明確になる」
と、
“チャレンジする”ことを強く言いつづけている。2003年度の
人口が減りつづけ、1985年には最低数を記録した。
さまざまなユース育成改革に続き、2004年4月のJFA公認指導者登
選手数だけではなく、代表チームも1974年と1978年のFIFAワー
ない。2回つづけての予選敗退は、12年間世界大会から遠ざかるこ
16
かったら、今のイングランドサッカーはどうなっていたのかと考
ドカップ優勝後の1968年以降、イングランドにおける選手の登録
ルドカップはともに予選で敗退し、本大会への出場を果たしてい
2
どを考えたとき、逆にもしあのタイミングでチャレンジしていな
の人がどのようにしているかのをとり入れながら、一生懸命トラ
低迷の象徴は、サッカー選手の数に表れた。1966年FIFAワール
Report
サッカーの母国というプライドを脱ぎ捨てること、チャレンジ
する際のリスク、エネルギーの大きさ・・・。
ー協会(The FA)のテクニカルコーディネーター、ロビン・ラッ
性を語った。
U-19日本代表 0:1(0:0) U-19韓国代表
© JFA技術部
とを意味する。
「その反省を踏まえ、
『ゲームを取り締まる』という態度から、
『カ
スタマー(サッカーをする人々)サービスを重視した姿勢』に、
録制度スタートも、日本サッカー協会にとって大きなチャレンジ
である。
数年後、
「あのときにさまざまな改革に着手しなかったら、今の
日本サッカーはここまで発展してなかった・・・」と皆様に評価
していただけるよう、そして、日本全体のサッカーの向上につな
がるよう全力で取り組みたい。
つまり『トップダウン』から『ボトムからのサポート』に切り替
えたのです。1980年代半ば以降、ユース育成においてはフランス
サッカー連盟やノルウェーサッカー協会からも学び、グラスルー
ツにおいては、アメリカのNBA(全米バスケットボール協会)
指導者の皆様、間違いや失敗を恐れず何かにチャレンジしてい
ますか?
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やNFL(全米フットボール連盟)なども参考に幅広い視点から
大きなチャレンジを試みました」と。
関口潔(JFA技術部)
17