第7回

図2
アーリーエクステンション
テスト2
決して無理をしないことが大切で
す。そして3∼4カ月様子を見て
も症状が改善されない場合は、外
科的な手術が有効な治療法となり
ます。残念ながらリハビリによる
改善は非常に限られているので、
プレーや日常生活に支障をきたす
痛みが常に伴う場合は、早めに専
門医に相談することが大切です。
握手をするように手を持ち、
下向きに手首を折
り曲げます。
その状態で時計回り、
反時計回りと
手首を回転させてみてください。
テスト1・2で痛みやクリック音が起きる
場合、
TFCC損傷の可能性が考えられま
す。
手のひらを上に向け、
机などを持ち上げるよう
に力を入れてみてください。
第 回
TFCCの損傷
い、より悪化させ、最悪の場合は 選手などのプロの場合、激しい練
ゴルフができなくなってしまうこ 習量により繰り返しTFCCに負
とも少なくありません。そこで今 担がかかり、最終的に損傷につな
回は、このTFCC損傷に焦点を がるケースが多いですが、アマチ
当て、なぜこの怪我が重大な影響 ュアに多いのは最初の2つになり
を与えるのか、いかにして防ぐか、 ます。アクシデント的なことを防
などについてお話していきたいと ぐことは難しいですが、スイング
欠陥によるものはスイングを直す
思います。
ことで防ぐことが可能です。特に、
①TFCC損傷の影響
アドレス時の手首の角度がインパ
クトで大きく失われてしまうスイ
これは手首の怪我全般にも言え
ることですが、一つには手首の構 ングは怪我をもたらしやすくなっ
造が挙げられます。手首は手の複 ています。具体的にはアーリーエ
雑な動作を支えるためにとても複 クステンションが挙げられす︵図
︶
。ダウンスイングからインパ
雑な構造になっており、5センチ
四方にも満たないスペースに8個 クトにかけて体がボールに近づく
の小さな骨が配列され、それを支 ために上体を起こしてしまい、そ
える靭帯や軟骨組織が所狭しとひ の結果手首が下向きに折れ過ぎて
しめき合っています︵図1︶
。そ しまうことで負担をかけてしまう
の結果、手首を構成するこれらの 訳です。
組織が一つ損傷するだけで、普段 アーリーエクステンション以外
の動作ができなくなってしまうの にも、手首に必要以上に負担をか
です。また、1度怪我をしてしま けてしまうスイング欠陥がいくつ
うと回復が非常に困難・不可能な もあります。なかなか自己判断で
のも大きな理由として挙げられま スイング欠陥を認識し直すことは
す。筋トレなどによるリハビリ効 難しいので、プロに指導してもら
果、手術による治療効果も限られ い、スイングの問題点を直してい
くことが大切です。それによって
ています。
TFCC損傷も効果的に防ぐこと
ができます。
②防止方法
③自己判断と対処法
ダウンスイングからインパクト
にかけて体がボールに近づくた
めに上体を起こしてしまい、
手首
が下向きに折れすぎてしまう。
そ
の結果、
TFCCに負担をかけて
しまう。
テスト1
手首の構造とTFCC
2
実際にTFCC損傷かどうかを
厳密に診断するのは R
MIでも難
しいので、今回はTFCCの可能
性のありなしをテストする方法を
お教えします。
︵図 ︶のように
テストをしてみて、もし痛みやク
リック音が起きる場合はTFCC
損傷の可能性があります。その場
合、まず安静にして負担をかけな
いことが第一。腫れなどがおきる
場合は氷で冷やすことも有効で
す。損傷の度合い、箇所によって
は自然に治る可能性もあります。
図3
高田洋平 Biography
ゴルフを中心としたスポーツリハビリ
を学びたいと渡米。バージニア州のシェ
ナンドア大
(Shenandoah University)
に入
学し、ゴルフ部に所属。卒業後、コロンビ
ア大学でDoctor of Physical Therapy(理
学療法学博士号)を取得。コロンビア大
学 病 院 で 働 い た 後、現 在 ブ ロ ン ク ス の
Montefiore Medical Centerで外来リハビ
リ を 担 当。Board Certified Orthopedic
Clinical Specialist (OCS)。
ゴルフリハビリ
の資格:TPI(Titleist Performance Institute)
Medical Profession Level Ⅲプロバイダー、
Orthopedic Clinical Specialist
毎月第3木曜日連載!
古閑美保選手が今季限りで引退
を表明したというニュースがスポ
ーツ紙などをにぎわしています
ね。また、私も応援している有村
智恵選手が故障により、今期の試
合や練習の制限を強いられている
ようです。この2選手に共通する
のが左手首の怪我、特に三角線維
軟骨複合体︵TFCC︶損傷と伝
えられています。この怪我は、T
FCCという手首と前腕の間にあ
る軟骨組織に起きる損傷︵図1︶
のことで、実はアマチュアも含み
ゴルファーに多い怪我です。そし
てあまり一般には知られていない
ため、アマチュアゴルファーは単
に筋を違えたぐらいだろうと思
そこで防止がとても大切になり
ます。手首は体の力をクラブに伝
える最終箇所であり、他の場所と
違ってかばうことが難しくなって
います。ですので、他の怪我にも
増してより意識的にTFCC損傷
の原因となりうる行動を避けるこ
とが重要です。
損傷の原因は、アクシデント的
なもの︵例えば木の根を打ってし
まった、転んだ拍子に手を付いて
しまったなど︶
、スイング欠陥に
よって引き起こされるもの、繰り
返しの負荷によって引き起こされ
るものなどに分類されます。有村
3
7
図1