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鉄筋コンクリート造柱の断面形状が損傷過程と
終局性能に及ぼす影響
FM技術部
金 東範
ており,試験体は円形断面,正方形断面,および長方形
1.はじめに
断面をモデル化したものである。各断面の試験体は断面
鉄筋コンクリート(以下RC)造柱の設計では中小地
積が等しい,直径300mmの円形,断面寸法=267×267
mmの正方形および237×300mmの長方形の模型柱とし
震に対して,その損傷性状が明確にされていない。
今後,建物の耐震設計が性能規定形へと移行していく
た。せん断破壊型のせん断スパン比は1.0,曲げ破壊型
に当たって,損傷性状を明確にする必要があり,これか
のせん断スパン比は1.5である。これらの試験体におい
らの設計では中小地震時にせん断ひび割れを許容し,そ
てせん断補強方法も変動要因とした上で,試験体の断面
の幅を制御することにより,一層の合理的な断面設計法
形状が損傷過程と終局性状に及ぼす影響を考察した。
が求められる。またRC円形柱の靭性評価,損傷評価に
(注) 試験体名 C - N61 - S
(1)
(2)
(3)
おいても,より合理的な方法が求められている。既往の
研究では円形柱のせん断性能評価を等価断面の正方形に
(1)Cは円形(CIRCLE)せん断破壊型試験体を表す。
Sは正方形(SQUARE)せん断破壊型試験体を表
置換して評価するのが妥当な方法とされてきた。
す。
すなわち,現在,設計時にRC円形柱のせん断性能を
Rは長方形(RECTANGLE)せん断破壊型試験体
評価しようとすると正方形に置換せざるを得ない。
を表す。
本研究では円形断面柱,正方形断面柱,および長方形
断面柱の耐震性能を比較し,より合理的な断面設計法を
(2)N61:Nは普通強度せん断補強筋を表す。
明確にすることを目的として実験を行った。なお,ここ
(2)N61:Hは高強度せん断補強筋を表す。
ではせん断ひび割れの経過や中小地震時の損傷を中心に
(2)N61:61はPw(せん断補強筋比)が0.61%を表す。
検討した。
(3)S はせん断破壊型を表す(主筋σy:800 MPa)。
Bは曲げ降伏型を表す(主筋σy:400 MPa)。
2.実験概要
*コンクリート圧縮強度σB:3.2 MPa
2.1 試験体
試験体を図1,試験体諸元一覧を表1に示す。本実験
2.2 使用材料
各断面のせん断シリーズはせん断破壊を先行させるた
ではRC造柱におけるせん断破壊と曲げ破壊を対象とし
せん断シリーズ(M/QD:1.0)
曲げシリーズ(M/QD:1.5)
900
750
900
2100
600
せん断補強筋
600
異形鉄筋
600
267
750
237
同一断面積で置換
267
単位:mm
円形
正方形
長方形
図1 試験体
狡 NTT Building Technology Institute 2004
1
表1 試験体諸元一覧
試験体
円形
正方形
長方形
D
(mm)
B
(mm)
300
300
C-N61-S
C-H21-S
C-N46-S
C-H13-S
C-H21-B
S-N69-S
S-H24-S
S-H14-S
S-H24-B
R-N77-S
R-H27-S
R-H16-S
R-H27-B
267
300
267
238
M/QD
主筋
1.00
12-D13
1.50
12-D13
1.12
12-D13
1.67
12-D13
1.00
12-D13
1.50
10-D13
Pw
(%)
0.61
0.21
0.46
0.13
0.21
0.69
0.24
0.14
0.24
0.77
0.27
0.16
0.27
せん断
補強筋
φ8.5@62
φ4.5@50
φ6.5@48
φ3.5@50
φ4.5@50
φ8.5@62
φ4.5@50
φ3.5@50
φ4.5@50
φ8.5@62
φ4.5@50
φ3.5@50
φ4.5@50
wσy
(MPa)
422
1,219
392
1,392
1,219
422
1,219
1,392
1,219
422
1,219
1,392
1,219
Pw・wσy
(MPa)
2.57
2.58
1.81
1.79
2.58
2.89
2.90
2.01
2.90
3.26
3.27
2.26
3.27
σ0 /σB
0.1
0.1
0.1
D:柱成 B:柱幅 M/QD:せん断スパン比 Pg:全主筋比(As/Ac) As:主筋全断面積 Ac:柱体全断面積 Pw:せん断補強筋比 wσy:補強筋降伏強度 N:軸力
σo:軸応力(N/Ac) σo/σB:軸力比 σB:コンクリート圧縮強度
め,主筋をすべて焼入れし,800MPa以上に降伏強度を
高めた。せん断補強筋にはφ8.5(普通強度)
,φ6.5(普
通強度)
,φ4.5(高強度)
,φ3.5(高強度)の鉄線を使
用した。普通強度せん断補強筋は400MPa台におさえて
焼きなまし,高強度せん断補強筋は1,300MPa程度に焼入
れをした鉄線を用いた。補強筋間隔については最終的に
普通強度せん断補強筋と高強度せん断補強筋でせん断補
強筋量を合わせるため,高強度せん断補強筋間隔50mm
を基準として普通強度せん断補強筋の間隔を調節した。
図2 加力装置
2.3 加力方法
加力装置を図2に示す。曲げ破壊型,せん断破壊型い
ずれも試験体中央部が反曲点になる逆対称加力形式であ
る。軸力は,水平加力中一定軸力になるように制御した。
曲げ降伏型の加力サイクルは変位制御とし,R=±
1 / 4 0 0 で 1 回 正 負 交 番 載 荷 ,そ の 後 は ± 1 / 2 0 0 ,±
1/100,±1/67,±1/50,±1/33,±1/25,±1/20で
各2回繰り返すことにした。せん断破壊型は片方向単調
加力形式で載荷した。最初は変位制御でせん断ひび割れ
写真1 測定画面
発生時(ほぼ部材角1/200)まで加力し,その後はせん
断ひび割れの経過を追うため,荷重制御で終局時まで
表2 実験結果一覧
10kNずつ漸増載荷を行った。
試験体
eQmax
eQmax
(kN) (kN) (kN) (kN) (kN) /cQsu1
cQsu1
cQsu2
cQbu
eQsc
eQmax
/cQbu
C-N61-S
235
265
426
210
371
1.58
0.87
C-H21-S
236
266
426
204
330
1.40
0.77
C-N46-S
221
239
426
197
310
1.40
0.73
せん断破壊型において,せん断ひび割れが入った時点
C-H13-S
221
237
426
183
280
1.27
0.66
から荷重制御を行い,10kN間隔で測定した。曲げひび割
C-H21-B
199
244
183
146
230
1.16
1.26
S-N69-S
235
265
455
200
320
1.36
0.70
S-H24-S
236
266
455
197
281
1.19
0.62
S-H14-S
221
237
455
175
280
1.27
0.62
た。各ひび割れは30mm間隔で測定し,ひび割れ長さ方
S-H24-B
199
244
196
145
213
1.07
1.09
R-N77-S
255
291
510
195
390
1.53
0.76
向に対して直行の幅として扱った。測定には25倍拡大の
R-H27-S
255
292
510
181
323
1.27
0.63
R-H16-S
240
259
510
180
281
1.17
0.55
R-H27-B
204
268
199
155
225
1.10
1.13
2.4 せん断ひび割れ幅
円形
れから斜めに進展したひび割れも測定範囲内(図6参照)
においてはせん断ひび割れとみなして検討の対象とし
モニタ一体形マイクロスコープを使用した(写真1)
。
3. 実験結果
実験結果一覧を表2に示す。
2
狡 NTT Building Technology Institute 2004
正方形
長方形
cQsu1:修正荒川式を用いたせん断強度計算値
cQsu2:靭性保証型設計指針より求めたせん断強度計算値1)
cQbu:e関数法を用いた曲げ解析による曲げ耐力計算値
eQsc:せん断ひび割れ荷重実験値
eQmax:最大耐力実験値
250
400
せん断力 Q(kN)
せん断力 Q(kN)
200
150
100
300
200
C-N46-S
C-H13-S
100
R-H16-S
C-H21-B
S-H14-S
S-H24-B
50
0
0
0.025
0.5
R-H27-B
部材角(rad)
0
0
0.01
0.03
0.04
0.05
0.06
400
部材角(rad)
せん断力 Q(kN)
図3 せん断力‐部材角関係(曲げシリーズ)
3.1 曲げシリーズ
曲げ降伏型のせん断力-部材角の関係を図3示す。
まず,曲げ降伏型の場合,円形は曲げ降伏後にせん断
300
200
C-H21-S
100
R-N46-S
破壊を,正方形,長方形はともに曲げ降伏後に付着割裂
S-H24-S
破壊した。曲げ変形性能の比較では円形柱で四角柱より
0
0
優れた変形性能が確認できた。また,長方形の方が若干,
0.025
0.5
部材角(rad)
正方形より履歴性状が安定しており,耐力的にも長方形
がより円形に近づいていることが分かった(写真2)
。
400
せん断力 Q(kN)
3.2 せん断シリーズ
3.2.1 破壊性状
せん断シリーズのせん断力部材角の関係(試験体を
Pw・wσy が3MPaと2MPaで分けて表示)を図4に示
300
200
す。また,全試験体のせん断力-Pw・wσy 関係を図5に
C-H61-S
100
示す。図6と写真3には各断面の部材角1/50でのひび割
R-N77-S
S-N69-S
れ状況を示している。
0
せん断破壊型についてはPw・wσy が3MPaの場合,
0
0.025
部材角1/50で最大耐力に達して1/33で急激に耐力が落ち
部材角(rad)
図4 せん断力‐部材角関係(せん断シリーズ)
ているが,2MPaの場合,部材角1/67で最大耐力に達し,
1/50で急激な耐力低下が見られた。ただし,高強度せん
Pw・wσy:2MPa範囲
500
断補強筋を用いた円形柱の場合,1/33まで徐々に耐力が
Pw・wσy:3MPa範囲
円形
向上して1/25で急激な耐力低下に至った。すべての試験
400
3.2.2 各断面の損傷過程の評価および比較
設計時において重要となるせん断応力σwと最大せん
断ひび割れ幅Wmaxの関係を明確にすることで,部材の
せん断強度 Q(kN)
体は腹部に発生したせん断ひび割れが開口してせん断破
壊に至った。
正方形
長方形
300
200
塗り潰し 普通強度せん断補強筋
100
塗り潰しなし 高強度せん断補強筋
損傷評価が可能になると思われる。
また,地震後には最大せん断ひび割れ幅が観察できる。
最大せん断ひび割れ幅から,地震時に負担したせん断力
が,せん断強度に対してどの程度か評価できるならば補
0.5
0
0
1
2
3
4
pw・wσy(MPa)
図5 せん断力強度‐Pw・wσy関係
狡 NTT Building Technology Institute 2004
3
写真2 曲げシリーズ試験体 破壊状況
写真3 せん断シリーズ試験体 破壊状況
本実験ではせん断ひび割れのみを対象にする。
設計時損傷評価方法
せん断応力σw, 最大せん断ひび割れ
幅Wmaxの関係を明確にする
単位:mm
C-N61-S
S-N69-S
中小地震後損傷評価
観察できる最大せん断ひび割れ幅から,
地震時に負担したせん断力が, せん断
強度に対してどの程度か評価できるな
らば補修を行う際に有効である。
R-N77-S
150
225
300
1)せん断応力σwと歪εの関係を評価する
2)歪とひび割れ幅の関係を仮定する
仮定式 1)τp=α
(Pw・σw)x+τsc
仮定式 2)ε=Wp/(D(柱成)
・sin 角度)
割れ角度の測定結果, 55
5
℃∼60℃のひび割れが90
4
%以上だったため, 評価領
円形
正方形
長方形
3
2
(注)
τp=限界損傷応力, α:近似曲線係数, τsc:せん断ひび割れ応力
ε
:歪み値, Wp:最大せん断ひび割れ幅
6
本実験の場合, せん断ひび
0
域の中で角度が55℃∼60℃,
幅が0.1mm以上のひび割
れ本数を数えた。
せん断応力 τ
(MPa)
せん断応力 τ
(MPa)
6
5 10 15 20 25
ひび割れ本数(本)
※せん断負担(ピーク時)せん断
ひび割れ幅と除荷時せん断ひび割れ幅
の関係は2:1程度(Wp=2Wo)
5
図7 損傷評価仮定式
4
塗り潰し
普通強度せん断補強筋
塗り潰しなし
高強度せん断補強筋
3
2
0
5 10 15 20 25
ひび割れ本数(本)
図6 ひび割れ評価領域
め,評価の範囲として決めた領域はせん断ひび割れのみ
を対象にするため,図6のように設定した。
評価領域での最大ひび割れはすべての試験体で領域の
中心線(試験体の中心)を通っており,そのひび割れを
損傷評価の対象にした。同じ応力時に円形より四角柱が,
修を行う際に有効である。ここでは,断面形状およびせ
長方形より正方形の方がひび割れ分散が激しく,数が多
ん断補強筋強度の異なる試験体に対して,せん断力とせ
くなっていることが確認できた。また,高強度せん断補
ん断力負担時のせん断ひび割れ幅の関係を評価する。す
強筋を使用した試験体の方が普通強度せん断補強筋の試
なわち,1)せん断応力σwと歪みの関係を評価する,
験体より若干,ひび割れ本数が多く見られた。図8の最
2)歪みとひび割れ幅の関係を仮定する(図7)
。
大ひび割れ幅と歪みの関係からは同じ歪みの時,円形よ
なお,せん断力負担時(ピーク時)せん断ひび割れ幅
と除荷時せん断ひび割れ幅の関係は2:1程度といわれ
ている2,3)。まず,各断面形状の損傷過程を評価するた
4
狡 NTT Building Technology Institute 2004
り四角の方で本数増加とともにひび割れ幅も開いていく
のが分かった。
また,仮定式 Wp=D・sinθ・ε の計算値と比べ,円
4
※ 仮定式 2)ε=Wp/(D(柱成)
・sin角度)の適用
Wmax=0.00019ε
=0.90
相関係数
相関係数=0.90
ε
Wp=D・sinθ・
0.7
0.7
Wp=D・sinθ・
ε
0.6
最大ひび割れ幅(mm)
最大ひび割れ幅(mm)
0.6
0.5
0.5
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
2,000
Wmax=0.00024ε
相関係数=0.62
0.2
CN61S
CH21S
CN46S
CH13S
0.1
0
0
0.8
SN69S
SH24S
SH14S
0.1
0
0
4,000
2,000
0.5
0.4
0.3
Wmax=0.00024ε
相関係数=0.62
0.2
RN77S
RH27S
RH16S
0.1
0
0
4,000
2,000
各断面の(τ-τsc)- Pw・σw 近似曲線
長方形柱
3
0.6
補強筋歪ε
(μ)
補強筋歪ε
(μ)
Wp=D・sinθ・
ε
τ-τsc(MPa)
0.7
0.8
最大ひび割れ幅(mm)
0.8
円形柱
正方形柱
2
1
0
0
1
2
図10 (τ−τsc)対Pw・σw近似曲線の比較
4,000
補強筋歪ε
(μ)
仮定式 1)τp=α
(Pw・σw)x+τsc
せん断ひび割れの抑制:円形柱>四角柱
仮定式 2)ε=Wp/(D(柱成)
・sin 角度)
※ せん断補強筋歪は損傷評価領域の中で最大値を取った
図8 仮定式 2)と実験値との比較
χ
※ 仮定式 1)τp=α
(Pw・σw)
+τsc の適用
0
1
2
3
pw・σw(MPa)
2
SN69S
SH24S
SH14S
0
1
2
3
pw・σw(MPa)
4
長方形
1
0
実/計:0.8
RN77S
RH27S
RH16S
0
3
pw・wσy
3.3MPa
1
0
3
pw・wσy
2.3MPa
pw・wσ y
2.6MPa
CN61S
CH21S
CN46S
CH13S
実/計
平均値:1.08
標準偏差:0.12
変動係数:11%
5
τ-τsc=2.1(pw・σw)0.24
相関係数=0.80
τ−τSC(MPa)
2
1
0
pw・wσy
2.0MPa
3
2
4
τ-τsc=1.8(pw・σw)0.24
相関係数=0.70
τ−τSC(MPa)
3
長 方 形
pw・wσ y
2.9MPa
τ-τsc=2.0(pw・σw)相関係数=0.70
pw y
pw・wσy
1.8MPa
τ−τSC(MPa)
正 方 形
4
実験値と計算値との相関
関係
1)測定された実験値Wp
から計算値歪εを求
める
2)その歪εから計算値
限界損傷応力τpを
求める
※τscは実験値を代入し
て計算
実/計:1.2
6
実験値(MPa)
円 形
4
3
pw・σw(MPa)
円形
1
2
3
pw・σw(MPa)
図9 仮定式 1)と実験値との比較
形の方が非常に安全側にあることが確認できた。図6の
領域でのせん断補強筋歪みと最大せん断ひび割れ幅
Wmaxの関係を図8に示す。補強筋歪みは評価領域の中
正方形
2
2
3
4
5
6
計算値(Mpa)
図11 損傷応力の実験値と計算値の比較
4.まとめ
4.1 各断面の終局性状
での最大値を取った。また,評価範囲でのせん断補強筋
各断面のせん断終局性状の比較で耐力的には円形と長
比とせん断補強筋応力の積Pw・σwとせん断応力の関係
方形が非常に近似値であることが確認できた。また,せ
を図9に示す。各図では近似曲線を示した。
ん断応力-Pw・wσyの関係からもこのような傾向が見ら
図10の近似曲線の比較から円形と長方形の破壊性状が
れ,円形柱の長方形置換が望ましいと考えられる。
非常に近づいているのが分かった。
以上のような実験結果から得たWmaxとτpの実験値を
4.2 各断面の終局性状
もとに図7の仮定式2)を利用して実験値Wmaxから歪
単位面積でのひび割れ形状の比較から四角柱の方が分
みを求める。その歪みから設計用限界損傷応力τpを求
散が非常に激しく,特に正方形柱の方がひび割れ幅拡大
めた。実験値最大ひび割れ幅Wmaxと歪みの関係は計算
を伴う耐力低下が非常に目立った。長方形の場合,ひび
値Wp=D・sinθ・ε より安全側であるため,仮定式で
割れ本数と幅ともに円形に比べて大きかったが,正方形
表現可能である。
と同一の本数と幅の場合でも耐力は大きい。
そこで,実験値と計算値との相関関係を見るため,仮
定式1)でα (Pw・σw) x は実験値の近似値を適用し,
また,τscは実験値を代入して計算を行った。図11に損
傷応力の実験値と計算値の比較を示す。
4.3 中小地震時の損傷評価
最大ひび割れ幅と補強筋歪みの関係は線形性を有し,
かなり大きなひび割れ幅まで良い相関があることから,
狡 NTT Building Technology Institute 2004
5
円形
長方形
写真4 デジタルカメラ画像
柱部材の損傷を表す指標として利用できると考えられ
る。損傷評価の仮定式で中小地震時に損傷を受けたRC
〔参考文献〕
1)日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物靭性保証型耐震
設計指針・解説,1999
造柱に対して,損傷後の補強・補修の基準となるひび割
れ幅から柱が受けた限界損傷応力を推測することが可能
2)福山洋,他:RC部材のせん断ひび割れに係わる損傷限
界の評価(その1 柱・梁部材の場合),日本建築学会
であると考えられる。設計時に柱部材が持っている靭性
2000年度大会(東北)学術講演梗概集(構造Ⅳ),No.
性能を明確にすることで損傷後の補強費用などを予め決
めることができる。
23007,pp.13-14,2000.9
3)酒井栄典,他:RC部材のせん断ひび割れに係わる損傷
限界の評価(その2 耐震壁の場合),日本建築学会
4.4 デジタルカメラを利用した画像処理による損傷評価
デジタルカメラを利用することによって,従来のカメ
2000年度大会(東北)学術講演梗概集(構造Ⅳ),No.
23008,pp.15-16,2000.9
ラより大幅に,ひび割れ検出能力を高められる。また,
一次元でしか評価できなかった部材のひび割れを二次元
の面として認識して,本数,長さ,角度等の測定が可能
であるため損傷評価には非常に効果的である(写真4)
。
キン
ドン ブン
金
東範
FM技術部
建物劣化診断,建築・設備コストに関する調査お
よびファシリティマネジメント・LCC・資産管理
に関するコンサルティングに従事。
韓国一級建築技師,非破壊検査技術者(超音波)。
日本建築学会,日本コンクリート工学協会会員
Synopsis
The Influence of Section Shape of Reinforced Concrete Column to Damage Process and Ultimate Performance
Dong Bum KIM
In the design stage of reinforced concrete construction (hereinafter referred to as RC construction), aspect of damage that may occur in
future during medium earthquakes is not clearly estimated. As earthquake-resistant design of buildings shifts to a performance specifying type
design, it becomes necessary to clearly foresee the probable future damage occurring in structure. It is also required that more rational performance evaluation system be established in the toughness and damage estimation of cylindrical shaped RC columns.
The purpose of the study introduced in this paper is to seek a design method for more rational section shapes of RC columns in consideration of the effects of the section shape on the damage developing process and the ultimate performance of the columns. Also introduced here
are the studies on the differences of damages during medium-sized earthquakes and those seen in the development of the shear crack widths
corresponding to the section shapes.
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狡 NTT Building Technology Institute 2004