Page 1 Page 2 学位記番号 理 博 第2507号 学位授与の日付 平成ー4

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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Across-habitat movement of organisms and its effects on
consumer-resource interactions.( Abstract_要旨 )
Takimoto, Gaku
Kyoto University (京都大学)
2002-03-25
http://hdl.handle.net/2433/150036
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【1
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氏
名
たき
もと
がく
瀧
本
岳
学位(
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
理
学位授与の 日付
平 成 1
4 年 3 月 25 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
理 学 研 究 科 生 物 科 学 専 攻
学位論文題 目
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博
(理
学)
第 25
07 号
(
生物のハ ビタッ ト間移動 とその消費者一資源相互作用への影響)
(
主 査)
論 文調査 委 員
教 授 山 村 則 男
三
上
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)
文
内
教 授 占部 城 太 郎
容
の
要
教 授 今 福 道 夫
旨
生態学者 はこれまで食物網 をあるハ ビタッ ト内の閉鎖系 とみな して きた。 しか し近年の研究は,大部分の食物網 において
は消費者や資源のハ ビタッ ト間移動が顕著であることを示 している。 この論文では,数理モデルを用いて,消費者や資源の
ハ ビタッ ト間移動が消費者一資源間の相互作用 にどんな影響 を与 えるのか を研究 した。第 2章は,特 に消費者の個体発生上
のニ ッチシフ トに着 目して,消費者のハ ビタッ ト間移動の影響 を調べた。個体発生上のニ ッチシフ トが起 こるタイ ミングを
決定す るメカニズムが異 なる三つの数理モデルを比較することにより, タイ ミングの適応的な可塑性が消費者一資源相互作
用 に安定化効果 を持つ ことを示 した。第 3章 と第 4章では,資源のハ ビタッ ト間移動の影響 を調べた。第 3章では,消費者
の機能の反応 と数の反応 を通 じて,時間的に変動する系外資源の移入が系内資源 に及 ぼす間接効果 について研究 した。消費
者の個体群回転率が遅かった り系外資源の変動周期が短かった りすると,消費者の機能の反応 による正の間接効果が見 られ
る。 逆 に,消費者の個体群 回転率が早かった り系外資源の変動周期が長かった りする と,数の反応 の効果が機能の反応の効
果 を打 ち消 し,間接効果 は負 になることがわかった。第 4章では,季節的に変動す る系外資源の移入が消費者一資源間相互
作用 にもたらす安定化効果 について研究 した。数理モデルは,消費者,系内資源,系外資源の全てが季節的に変動す る北海
道の幌内川 における消費者一資源間相互作用 をモデル化 した ものを用いた。 この数理モデルは,系外資源の季節的な増加が
系内資源の少 な くなる夏 に起 こると,消費者一資源間相互作用 を安定化す ることを示 した。以上の研究の結果 は,概 して,
消費者や資源のハ ビタッ ト間移動 は消費者一資源間相互作用 に内在する生物 間フィー ドバ ックの不安定化効果 を弱め,相互
作用 を安定化することを示唆 している。 最後 に, これ らの消費者一資源相互作用の研究結果か ら可能 な,空間構造 を持つ食
物網理論の発展への応用 を議論 した。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
申請者 は,大部分の食物網 においては消費者や資源のハ ビタッ ト間移動が顕著であるとい う近年の研究 に基づ き,数理モ
デルを用いて,ハ ビタッ ト間移動が消費者一資源間の相互作用 に与 える影響 を明 らかにした。
まず,消費者の個体発生上のハ ビタッ トシフ トに着 目して,消費者のハ ビタッ ト間移動の影響 を調べ た。個体発生上のハ
ビタッ トシフ トが起 こるタイ ミングを決定す るメカニズムが異 なる三つの数理モデルを比較することにより, タイ ミングの
適応的な可塑性力増費者一資源相互作用 に安定化効果 を持つ ことを示 した。適応的可塑性の効果 を評価す るために,単純 な
3つのケース を比較するとい う論理構成 は, 申請者の数理モデル作成の能力の高 さを証明 している。
次 に,消費者の機能の反応 と数の反応 を通 じて,時間的に変動する系外資源の移入が系内資源 に及ぼす間接効果 について
研究 した。条件 により,その効果が正 にも負 にもなることを示 したが, これは数理モデルによる解析 の威力 を示す ことにな
った。 さらに,季節的に変動する系外資源の移入が消費者一資源間相互作用 にもた らす安定化効果 についての数理モデルは,
系外資源の季節的な増加が系内資源の少 な くなるときに起 こると,消費者一資源間相互作用 を安定化す ることを示 した。 こ
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のモデルは,消費者,系内資源,系外資源の全 てが季節的に変動する北海道の幌内川 における消費者一資源間相互作用 をモ
デル化 した もので,実際の系の特徴 を簡単 なモデルに効果的に表現す る能力が高 く評価 された。
申請者の以上の理論的研究 において,実際の現象か らモデルを構成すること,そのモデルを数学的お よび数値的に解 くこ
と,その結果の意味 を現実 に戻 して議論で きることのすべ てに高い能力があると認め られた。
本研究の学問上め意義 は大 きい と同時 に, 申請者の学術研究 に対す る熱意 と能力の高 さが推察で きた。 よって,本論文 は
博士 (
理学)の学位論文 に催す るもの と認め られた。なお,添付論文 に報告 されている研究業績 を中心 に,関連分野 に関す
る試問を行 った結果,適切 な解答がえられたので,合格 と認定 した。
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