実用化技術情報 キュウリのソルゴー囲い栽培は 土着天敵が定着しアブラムシ類の発生を抑制する 福島県農業総合センター 生産環境部作物保護科 部門名 野菜−キュウリ−病害虫防除 担当者 中村 淳・荒川昭弘 Ⅰ 新技術の解説 1 要旨 露地キュウリ栽培においてアブラムシ類(主要種:ワタアブラムシ)は、最も重要な害虫であり防除回数も多い。 アブラムシ類の密度低減を図るためには、土着天敵を有効に活用する必要がある。このため、キュウリほ場の 外周にソルゴーを栽植し、土着天敵を定着させることによるアブラムシ類の抑制効果を明らかにした。 (1) キュウリほ場をソルゴーで囲い込むことにより、キュウリのアブラムシ類の発生を抑制した(図1)。 (2) ソルゴーでは、土着天敵のえさとなるムギクビレアブラムシ、ヒエノアブラムシの発生が確認された。特に、 ムギクビレアブラムシはキュウリの害虫であるワタアブラムシよりも発生が早かった(図2)。また、ソルゴー 上では、ワタアブラムシを捕食する土着天敵のテントウムシ類やヒメハナカメムシ類がキュウリ上よりも早い 時期に確認された(表1)。 (3) キュウリ上で確認されたアブラムシ類の土着天敵は、テントウムシ類、ヒメハナカメムシ類、クサカゲロウ 類、ショクガタマバエなどであった(図3)。 (4) 以上のことから、キュウリ栽培ほ場をソルゴーで囲い込むことは、テントウムシ類やヒメハナカメムシ類など の土着天敵を定着させるのに有効であり、キュウリにおけるアブラムシ類の発生を抑制することができる。 2 期待される効果 キュウリの重要害虫であるアブラムシ類の発生を抑制することができる。特に、防除手段が限定される有機栽培 や特別栽培で有効である。 3 適用範囲 県内全域(露地キュウリ栽培地域) 4 普及上の留意点 (1) ソルゴーは、キュウリの定植前に一定の生育量を確保する必要があるため、キュウリを定植する20日程度 前に播種する(5月下旬定植の場合)。また、キュウリの定植畦から1.5m程度離して株間5∼10cmで播種 する。 (2) ソルゴーには多くの品種があり、生育特性も異なる。アブラムシ類の抑制効果を得るためには初期生育が 旺盛な品種を選定する。なお、農薬の飛散防止や防風効果も期待する場合は、生育が早く草丈が高くなる 品種を選定する。 (3) キュウリに殺虫剤を散布する場合には、土着天敵に影響の小さい薬剤を選択する。また、ソルゴーに対して は薬剤が直接かからないように処理する。 Ⅱ 具体的データ等 500 虫数/葉 400 ソルゴー無植栽区 ソルゴー植栽区 300 200 100 0 6/4 6/11 6/18 6/25 7/3 7/10 7/17 7/23 7/31 8/7 8/13 8/21 8/27 9/4 写真1 キュウリ葉上でアブラムシを 捕食するテントウムシ幼虫 10000 ムギクビレ(ソルゴー上) ︵ 虫 数 ワタ(キュウリ上) 100 10 ︶ 対 数 値 ヒエノ(ソルゴー上) 1000 9/3 8/27 8/20 8/13 8/6 7/30 7/23 7/16 7/9 7/2 6/25 6/18 6/11 1 写真2 キュウリ葉上のヒメハナカメムシ成虫 図2 キュウリおよびソルゴー上のアブラムシ類の発生推移 注)ムギクビレアブラムシ・ヒエノアブラムシはソルゴー10茎当たり虫数、 ワタアブラムシはキュウリ1葉当たり虫数 虫・卵数/50葉 200 クサカゲロウ卵 ハナカメムシ 成虫・幼虫 テントウムシ 成虫・幼虫 ショクガタマバエ アブラバチ マミー 160 120 80 40 0 6/4 6/18 7/2 7/16 7/30 8/13 8/27 図3 ソルゴー植栽区のキュウリにおける土着天敵の発生推移 写真3 キュウリのソルゴー囲い栽培状況 (2008年7月4日撮影) 表1 主な土着天敵の初見日 ソルゴー植栽区 ソルゴー無植栽区 キュウリ ソルゴー キュウリ テントウムシ類 成・幼虫 7月10日 6月25日 7月3日 ヒメハナカメムシ類 成・幼虫 7月10日 7月3日 7月10日 Ⅲ その他 1 執筆者 中村 淳 2 主な参考文献・資料 (1) 平成19、20年度福島県農業総合センター試験成績概要(2007、2008) クサカゲロウ類 卵 6月25日 7月10日 7月3日
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