2001年4月 No.145 - 日本染色協会

2001年4月 No.145
東京事務所 〒102-0081 東京都千代田区四番町4番地
TEL 03
(3262)
7211 FAX 03
(3262)
7216
大阪事務所 〒530-0044 大阪市北区東天満1丁目6番6号
オーセンビル2階
TEL 06
(6358)
5515 FAX 06
(6358)
5520
解 説
水質汚濁法に関連する排水規制
地下水の水質汚濁に係わる規制
その4
水質汚濁に係わる環境基準、地下水の水質汚濁に係わ
る環境基準を総称して「水質環境基準」としている。
水質汚濁防止法に基づく排水基準の内、有害物質に
係わる排水基準については、昭和46年にカドミウム等
その後、人の健康に関する知見の集積、公共用水域及
の8項目について設定され、その後、昭和50年にはP
び地下水の検出状況の推移を踏まえ、平成11年2月、
CB、平成元年にはトリクロロエチレン及びテトラク
硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、ふっ素、ほう素の3項目
ロロエチレンの2項目、平成5年にはジクロロメタン
が公共用水域及び地下水の人の健康の保護に関する水
等の13項目が一挙に対象項目とに追加された。このよ
質環境基準に追加された。これに基づき前号に記載し
うに有害物質の排水基準については、その当時の汚濁
た3物質の排出基準が平成11年2月以降、内外の科学
実態等を踏まえて順次項目の追加を行い、排水規制を
的知見や発生源の実態の把握に基づき決定された。
強化してきたこと等を通じて、公共用水域の水質汚濁
ただし、地下浸透の排出基準は公共用水域への排出
に関する環境基準の維持・達成、公共用水域の水質汚
とは違った観点から論ずる必要があり、例えば硝酸
濁防止、ひいては国民の健康保護が図られてきた。
性・亜硝酸性窒素の地下浸透に係わる基準値(検出値)
はそれぞれ0.2mg/L以内とし、アンモニア性窒素では
地下浸透に係わる浸透物質濃度の考え方
0.7mg/L以下とされることが適当であり、この事は公
地下水に関しては、平成元年に水質汚濁法が改正さ
共用域への排出とは大幅に違った値であり、排水処理
れ、現在、有害物質に係わる排水基準項目と同じ項目
設備の不備による当該物質の漏出には多大の注意が必
について、有害物質を含む水の地下浸透規制が講じら
要である。特に染色整理業にあって、尿素の使用の顕
れている。また、平成8年に同法が改正され、有害物
著な事業所にあっては、定期的に近隣地下水の水質検
質に汚染された地下水の水質浄化のために必要な措置
査を講じる必要があろう。その為には、自社の用水を
が定められたところである。これ以後は公共用水域の
井戸に依存されている場合は、その用水の分析試料と
染色主要産地での下水道普及率
(図4─1)
100
79
80
下
水
道
普
及
率
︵
%
︶
60
40
54
80
79
59
53
46
42
42
55
53
53
36
35
20
8
0
群馬
新潟
富山
石川
福井
静岡
愛知
岐阜
滋賀
県 名
−1−
京都
大阪
和歌山
兵庫
岡山
広島
するのが最良であろう。河川水や工業用水を用水源と
機肥料として活用されたが。ヨーロッパ方式はその後、
されている場合は、サンプリング用のボーリングを行
好気性による活性汚泥法による処理がなされ、窒素・
い、表面から深度100m程度の間を10m毎で試料採取を
燐は河川経由で海に運ばれて破棄されてきた。
今日、西欧の主要都市の下水道普及率は100%であり、
行い、その土壌中に含まれる水質規制物質の中で、自
社の使用薬剤に関連した項目の濃度測定を一度行われ
日本では東京都が100%近くになっている。下水道の普
ることを推奨致します。
及率は、下水設備を利用している人口の割合であるか
ら、山間僻地を多く抱える地域ではその普及率の進展
下水道放流に対する今後の規制
が困難となるので、今日合併処理槽の設置が自治体の
前月号まで3回にわたり、本年4月から改訂される
補助のもとに進められている。しかるに、下水道の普
水質汚濁法の改定の理由及び変更点について解説を加
及にあわせ、家庭排水のみならず産業系の排水の流入
えてきた。水濁法と関連して下水道法及びその施行令
も、公共水域から下水道に切り替えることを余儀なく
の改訂も行われる予定である。
されつつある。しかし、現在の公共下水道施設は生分
現在全国の平均下水道普及率は60%(平成11年度末、
解成分(BOD)の除去のみが対象であり、水質汚濁
国土交通省ホームページより)であるが、都道府県に
法に定められている各種環境項目や、健康項目を除外
よりかなりのばらつきがある。代表的な染色関連地域
する設備は一部を除いて一切付加されていないために、
の普及率を図4─1に示す。本会会員企業も下水道放
下水道への産業系の排水の放流に当たっては、規制対
流が増加しており、今後の対応について解説を加える。
象物質を事業所で事前に除去した後に放流が義務づけ
られる。
水質汚濁法と下水道施行令の関連
高度処理の実態
ご承知の如く、国内の下水道は西洋文化の影響を受
け、パリやロンドンで行われていた方式が明治時代以
国土交通省のHPによると現在、窒素・リンを含め
後導入されたもので、それまではいわゆるくみ取り式
た高度処理が行われている割合は平成11年末には、全
であり、江戸の町では肥タゴが各家庭の必需品であり、
下水道の16%とのことである。今後、琵琶湖、霞ヶ浦
江戸の町の水路を使ってこれらの肥タゴは周辺の農村
等の指定湖沼や三大湾等の閉鎖性水域及び水道水源に
地帯の貴重な肥料となっていた。江戸の町をはじめと
重点をおいて高度処理の導入がうたわれている。
し、日本各地の城下町も似たり寄ったりであったと想
像される。ヨーロッパではコレラやチフスといった人
下水道放流事業所での留意事項
の排泄物による疫病の蔓延が歴史の中に登場し、有名
本施工法の改訂は平成11年12月のダイオキシン類特別
なパスツールがコレラ菌を発見し、その対策がとられ
対策措置法の施行に伴い改訂が加えられているが、今
るようになったのは、19世紀になってからで、これに
回の新規3物質も表4─2に新たに追加される結果と
よりパリを始めとしたヨーロッパ各地ののコレラは、
なるであろう。
その後大幅に発症の低下となっている。日本では江戸
表4─2においても産業系の排水が4分の1を越え
時代にこれら西欧のような疫病の大流行があったこと
る場合は、BOD、SS,窒素、燐の値を2分の1と
を、余り聞かないのは、基本的に菜食主義で、清涼な
する必要がある。現在は下水処理場からの全窒素排出
水が豊富であったことや清潔感を尊ぶ国民性としての
基準は水濁法の120mg/Lであるが、今回の総量規制
部分だけでなく、この肥タゴ方式が病原菌の拡散を防
での下水道処理場の規制は10∼40mg/Lの範囲とさ
止したと予想される。人の排泄物を水で洗い流すヨー
れており、従来の2つの放流基準値であった240(120)
ロッパの方式は、それらが河川を汚染し病原菌の拡散
mg/Lがより厳しい値となることが予想されるが、
を助長したと考えられる。しかも日本の肥タゴは農家
現在どのようになるのか、情報は未入である。
(完)
で嫌気性のメタン発酵がなされ、窒素・燐の豊富な有
−2−
水質規制フロー図(水質汚濁防止法)
水質汚濁防止法上の規制
下水道法上の規制
下水道を介さない場合
下 水 道
(下水道からの放流水の水質確保の観点)
水濁法特定施設の設置
(図4─2)
(下水道の施設・機能の保全の観点)
No
Yes
直罰規制の適用
特 定 施 設
Yes
水質汚濁防止法
No
下水道法第12条の2
下水道法第12条の10
カドミウム
シアン
有機燐
鉛
六価クロム
砒素
総水銀
アルキル水銀
PCB
ジクロロメタン
四塩化炭素
1.2-ジクロロエタン
1.1-ジクロロエチレン
シス-1.2-ジクロロエチレン
1.1.1-トリクロロエタン
1.1.2-トリクロロエタン
トリクロロエチレン
テトラクロロエチレン
1.3-ジクロロブロベン
チウラム
シマジン
チオベンカルブ
ベンゼン
セレン
フェノール
銅
亜鉛
溶解性鉄
溶解性マンガン
クロム
フッ素
0.1
1
1
0.1
0.5
0.1
0.0005
0
0.003
0.2
0.02
0.04
0.2
0.4
3
0.06
0.3
0.1
0.02
0.06
0.03
0.2
0.1
0.1
5
3
5
10
10
2
15
カドミウム
シアン
有機燐
鉛
六価クロム
砒素
総水銀
アルキル水銀
PCB
ジクロロメタン
四塩化炭素
1.2-ジクロロエタン
1.1-ジクロロエチレン
シス-1.2-ジクロロエチレン
1.1.1-トリクロロエタン
1.1.2-トリクロロエタン
トリクロロエチレン
テトラクロロエチレン
1.3-ジクロロブロベン
チウラム
シマジン
チオベンカルブ
ベンゼン
セレン
フェノール
銅
亜鉛
溶解性鉄
溶解性マンガン
クロム
フッ素
0.1
1
1
0.1
0.5
0.1
0.0005
0
0.003
0.2
0.02
0.04
0.2
0.4
3
0.06
0.3
0.1
0.02
0.06
0.03
0.2
0.1
0.1
5
3
5
10
10
2
15
n-ヘキサン(鉱)
n-ヘキサン(脂)
5
30
n-ヘキサン(鉱)
n-ヘキサン(脂)
pH
pH
BOD
SS
窒素
燐
大腸菌
COD
5.8∼8.6
(海域)5-9
160
200
120
16
3000
160
BOD
SS
窒素
燐
下水道法第12条
5
30
カドミウム
シアン
有機燐
鉛
六価クロム
砒素
総水銀
アルキル水銀
PCB
ジクロロメタン
四塩化炭素
1.2-ジクロロエタン
1.1-ジクロロエチレン
シス-1.2-ジクロロエチレン
1.1.1-トリクロロエタン
1.1.2-トリクロロエタン
トリクロロエチレン
テトラクロロエチレン
1.3-ジクロロブロベン
チウラム
シマジン
チオベンカルブ
ベンゼン
セレン
フェノール
銅
亜鉛
溶解性鉄
溶解性マンガン
クロム
フッ素
ダイオキシン類
n-ヘキサン(鉱)
n-ヘキサン(脂)
0.1
1
1
0.1
0.5
0.1
0.0005
0
0.003
0.2
0.02
0.04
0.2
0.4
3
0.06
0.3
0.1
0.02
0.06
0.03
0.2
0.1
0.1
5
3
5
10
10
2
15
10
5
30
n-ヘキサン(鉱)
n-ヘキサン(脂)
5
30
5-9
pH
5-9
pH
5-9
600
600
240
32
BOD
SS
窒素
燐
600
600
240
32
温度
45
下水道では
処理できな
いため水質
汚濁防止法
と同一基準
になってい
るもの
以下の項目
は下水道法
のみの規定
温度
沃素
45
220
終末処理場
(水濁法特定施設)
公共用水域
※ この他に条例上の規制が付加されることがある。
※ 単位は省略した。
(社)日本染色協会 森本 國宏
−3−
シリーズ 産地情報② 石川県染色工業協同組合
「キーインダストリー」としての 二十一世紀へ
1.変遷
界に至るまで国家予算(税金)の中から再生資金を
傾注する始末である。
当産地は、絹織物を発祥とし撚糸、織布、染色と
関連業態が形成され今日に至っている。即ち、絹に
よる羽二重、縮緬、綸子と長繊維を主体として晒し、
染めと和装にその重きを置き『加賀友禅』として発
展して行ったが、第二次大戦勃発と共にそれらが贅
翻って当産地も好況時の設備増強、大量の人員採
用に、市場減退に、と『バブル崩壊』でこれらの過
剰を引き起こし多くの企業は淘汰、消滅して行った。
当組合に於いても夫々大企業(上場企業)、中小企
業、浸染と捺染、或いは糸染めと温度差はあるが、
沢品と見なされ忽ちの内に疲弊して行き、その後こ
れらは人絹、化繊にとって変わる。
総じて多品種少量生産の止む無きに至っている。
この状況下「IT革命」と言われる中で当産地に
止まらず、どう対応して行くべきか日本染色協会全
昭和26年朝鮮戦争特需ブーム(ガチャ万の到来)
が起こり息を吹き返す事に成る。加えて昭和30年の
合成繊維の台頭により、又、国の施策と相俟って本
体のグローバル化したシステム構築が不可欠と思わ
れる。
勿論,各企業の自己責任と自助努力に於いて為さ
格的な輸出拡大と共に外貨獲得の花形産業としての
位置付けを確固たるものにする。特にポリエステル
織物は以前のシルクに匹敵するほどの品位を兼ね備
え、福井県産地と共に、他の追従を許さない程内外
のマーケットに受け入れられる事となり、そのシェ
れる事は論を待たない。
2.石川県染色工業協同組合の誕生
アを拡大して行った。
以後、対米繊維規制(縄を得るために糸を売っ
た!!――沖縄返還とのカラミ)、G5(プラザ合
意)に依る為替の変動、国内経済の減速をみたが続
く『平成景気』に支えられて行く。しかし、この
戦後、昭和27年6月県下染色加工業者で染色同業
界(任意団体)発足、その後GHQの命令により石川県
染色輸出織物組合が組織され設立した。組合事務局
は金沢市西町に事務所を置き、事務組織は常務理事
1名、事務員1名にて業務を開始し、昭和59年4月
『バブル』も平成3年には後退し始め、高騰した株
価、地価は大暴落を期たし、之に加担した銀行筋の
不良債権は拡大し、忽ちの内に『貸しシブリ』が始
石川県繊維会館設立参画に伴い金沢市戸水町イ70番
地に移転、平成12年5月繊維団体再編成により同じ
く戸水町イ65番地、石川県地場産業振興センター新
館2Fに移転し今日に至る。 現在の組合員は下記の
通り
まる、是により多くの倒産、整理、企業が出る。
国の施策は遅々として進まず、大手銀行、或は生
保の合従離反、ゼネコンの債権放棄、果ては流通業
会 社 名
株式会社 アイテックス
加越産業 株式会社
株式会社 キタセン
ケーエス染色 株式会社
小松精練 株式会社
株式会社 シコー
倉庫精練 株式会社
ハクサン染工 株式会社
平松産業 株式会社
代表者名
八木原 繁 之
安 部 克 彦
西 田 尚 平
野 田 茂 行
中 山 賢 一
大 島 弘 基
岩 崎 栄 信
山 本 信 雄
山 科 増 彦
平 松 伸 康
郵便番号
929-0217
922-0004
922-8688
929-0124
929-0124
929-0217
921-8530
929-0217
920-0356
929-0124
住 所
石川郡美川町湊カ377
加賀市大聖寺上福田町に77の4
加賀市大聖寺上福田町ロ131
能美郡根上町浜町ヌ168の13
能美郡根上町浜町ヌ167
石川郡美川町湊町井1の83
金沢市玉鉾町4丁目111
石川郡美川町字湊町丙16の1
金沢市専光寺町レ3の11
能美郡根上町浜町ヌ161の4
《準組合員》
北陸産業 株式会社
竹 田 光 明
929-0201
石川郡美川町鹿島町ぬ57
株式会社 トーカイケミカル
−4−
3.キーインダストリーとして
味合いから、昨年度は石川県が主体となり石川県繊
維協会がイタリア・コモとの提携を組み産地間の連
携を提言、日・伊両国のフアションに携わる若い学
物作りに掛けての加工技術は秀逸したものが有
り、他の追従を許さぬ技能力を持ちながら、この厳
しい状況下における『環境』に如何に打ち勝って行
くかは、いつに技術力の基盤強化と関連業界、企業
生の参加を促し、日・伊フアッションコンテストの
開催を実施、より消費者に近い物創りであるコンセ
プトに基づき当産地の素材、加工で好評裡に終って
いる。
間、学術、(「産」「官」「学」)との連携によるコラ
ボレーションの確立が急務であります。この様な意
これらが三位一体となり、消費者ニーズに合った
物『創り』に徹する事と適時、適量、適品、が今後
の生きる道と考えます。その道具として『IT』が有
り、情報システム化を促進し、新しいビジネスモデ
ルの構築にQRをも含め努力する事こそ重要な課題
と思考するものです。
開発、に各企業が行政機関が共に取り組んでいる最
中であります。
4.組合事務局
所在地:石川県金沢市戸水町イ65番地 石川県地場
産センター2F
電 話:076-267-2169
FAX:076-267-2169
理事長:中 山 賢 一 (小松精練株式会社
最後に染色加工業としての環境改善問題はこれま
た避けて通れるものではなく、今や地球規模におけ
る温暖化防止、水質汚濁、等々規制の枚挙に暇無く
この環境対策に大きな課題として背負って行かなけ
ればなりません。
代表取締役社長)
事務局長: 木 寛
職 員:南野 京子 以上2名
個々のファクターには未だ問題も山積しておりま
すが夫々に具体化した環境技術、システムの構築と
(石川県染色工業協同組合 木 寛)
−5−
染色キャンペーン
この度、日本染色協会は内外に染色業界の認知度アップと意気込みを示す
併せて全協会員社名をPR。その縮刷版を転載します。
−6−
「メッセージ」を繊研新聞紙上に掲載。
−7−
−8−
染色キャンペーン
繊研新聞社の特集企画、当協会
の取材協力により、「グローバル
時代のニッポン製造業=染色業明
日への挑戦」を15回シリーズで掲
載。産地の現状、開発力や行動力
のある企業群のレポート、提言な
ど示唆に富む内容を展開。本号で
は、各界有識者のご提言を中心と
した今シリーズの総括紙面を転載
します。
詳しくは繊研新聞紙面をご覧く
ださい。
(編集部)
繊研新聞 2001.3.29
−9−
染色整理業におけるPRTR法
言葉の定義
先般来ご承知のように、日本型PRTR制度が本年
4月から始まります、過日、日本協会からも直接会員
経団連のPRTRの定義は「工場、事業所毎に環境
および地方団体に、本制度の説明会開催通知を出させ
汚染物質の大気・水・土壌への排出量、場外への移動
て頂きましたので、説明会にご出席の方も多数おられ
量の報告を求め、集計するとともに、公表するという
ることでしょう。3月5日の石川県(金沢市)をスタ
もの」。今回の説明会資料では「有害性のある化学物質
ートに、最終は3月29日の長野市まで全国各地で1,500
の環境への排出量及び廃棄物に含まれての移動量を登
名程度で、単純計算では22,500名の聴衆が参加したこ
録し公表する仕組み」。となっており経団連の場合は製
ととなります。私も大阪の会場に3月6日に出かけま
品としての移動量も移動の範疇に入る定義であり、今
した、本業界関係の方々もチラホラみられ、立席での
回の法律による移動は、廃棄物に含まれての移動のみ
聴衆が出るほどの盛況でありました。聞くところによ
に限定しており、製品としての移動は「製造品として
ると申し込みの往復はがきを出したが、満員で入場許
の搬出等」となっている。つまり対象物質のマテリア
可が貰えなかった人々が多数おられたとのことであっ
ルバランスは関係なく、環境への排出量のみが対象と
た。
なっている。以下に当日配布されたマニュアルから重
要な言葉を抜き書きし、諸兄の参考とされたい。
この度の制度では、法律の骨格は国が一元的に制度
化するが、運用は地方自治体にその多くを委ねる形を
①移動:事業活動に伴って、対象物質を含む廃棄物が
とってスタートしたはずである。しかし、今回の説明
事業所外の場所に移されること。産業廃棄物として
会で聞きたい人にも十分な機会が与えられないのは些
廃棄物処理業者に処分を委ねることや、自社の別の
か問題であり、説明会そのものも質問は受け付けない
事業所に移して処分する場合などが該当する。自社
といったスタイルであって甚だ前途多難な様子である。
の商品等として別の場所に移される場合は、届け出
そもそも、今回の制度については、旧通産省の指導
対象の移動には該当しない。リサイクルを目的とし
による経団連のボランティア方式や旧環境庁のモニタ
て別の場所に移す場合も、それが廃棄物であれば含
ー方式が4年も前から実施されていながら、それらを
まれるが、対価を受けて別の業者に引き渡す場合は、
ベースにせずに、一から仕切り直しをしたことに大き
商品とみなされるため「移動」には該当しない。届
な問題をはらんでいる、つまり、かえって混乱を引き
け出の際には、「当該事業所の外への移動」のほか、
起こす結果となっている。対象物質の大幅な増加、M
対象物質を含む廃水を下水道に放流している場合に
SDS制度の遅速さ、施行令の未完成等と、その問題
「下水道への移動」として移動に分類し届け出を行う。
点を列記すれば枚挙にいとまがないくらいの酷さであ
②使用:対象物質(またはそれを含む原材料、資材等)
を事業所外から受入、その対象物質を含む製造品を
る。
地方自治体が主体であるから、自治体の窓口機関が
作ることや、塗装や洗浄の目的に使うこと。マニュ
設定され、疑義の質問や法令の実施への注意点の指導
アルでは、便宜的に対象物質(またはそれを含む原
があってもしかるべきではあるのに、それも全くとい
材料、資材等)を貯蔵タンクに搬入のみしている場
ってよいほどに体勢が出来ていないのが実状である。
合も使用とみなしている。
挙げ句の果て、各事業者は、その事業者の団体が関係
③製造:販売や事業所内での原料としての使用などを
者に十分な説明やマニュアルを作成して下さいとの逃
目的として、対象物質を化学反応や精製等により作
げ口上まで出る始末で、一体だれが主体性をもって本
り出すこと。マニュアルでは、副生成物であっても、
制度をスタートさせ根付かせるのか非常に心許ない船
事業者が能動的にその物質を生成させている場合に
はこれを製造量に含めて算出している。
出となっている。以下に今回の説明会および実際の運
④排出:事業活動に伴って、対象物質が環境中(大気、
用に至るまでに明確にする必要のある事項を数例あげ
水域、土壌)へ出て行くこと。届け出の際には「大
て説明を加える。
−10−
気への排出」「当該事業所における土壌への排出」の
なお、今回の説明会で配布された「PRTR排出量
ほか、同一事業所内の埋め立て地に廃棄物を処分す
等算出マニュアル(案)」に示された染色工程の例から
る場合に「当該事業所における埋め立て処分」とし
上記の言葉の定義と併せてご理解下さい。なお本マニ
て「排出」に分類し届け出を行う。
ュアルの作成には、染色関連者が加わらないで作成さ
⑤製造品としての搬出等:製造品を次の工程に移すこ
れているため、算出手順や算出例にかなり大きな誤り
とや別の事業者へ販売等することにより引き渡すこ
があり、本業界独自でマニュアルの作成を急ぐ必要が
と。
ある。
また、化学反応等により消失するものも算出
の際にはここに含めている。PRTRの届け出対象
外である。
PRTR排水量等算出マニュアル
(案)
より抜粋
繊維や衣服等に染料を染み込ませ染色したり、繊維を繊維処理剤に浸漬して繊維の質を変える(柔らかくする
など)、余分に付着した染料を洗い流すなどの工程です。
環境中への排出としては、揮発性の繊維処理剤の大気への揮発、染料などの排水への混入、染料などの廃剤と
しての移動があります。また、発生した排水を活性汚泥などの廃水処理施設で処理した際に発生する汚泥などの
移動があります。
【工程図の例】
製品・パーツ等の流れ
対象物質の流れ
(届出対象)
排ガス
(大気排出)
対象物質の流れ
(届出対象外)
括弧内の数字は、算出の順番
(6)
排ガス処理
(6)
廃活性炭等
(廃棄物)
除去量
染料・
繊維処
理剤
(1)
繊維・衣類
大気排出
(6) 排ガス
(排気口
経由)
(6)
(2)
染色・繊維処理
被染色物
(染色機、バス等)
漏れ等
次工程へ
排水
(3)
(5)
廃水処理
除去量
(5)
排水
(水域排出)
(5)
廃液
(廃棄物)
汚泥等
(廃棄物)
(社)日本染色協会 森本 國宏
−11−
るなど苦戦が続いた。
経営の危機管理
経営の危機管理
その後も加工数量は国内個人消費の低迷ならびに輸入
繊維製品の増大等の影響により、企業経営を圧迫した
ため各企業は再三に亘り、経費の削減、リストラ対策、
ー機械染色業の財務分析状況についてー
規模の縮小等の自助努力を強いられた。
しかし、この2年間は多少落ち着きを取り戻し、経常
利益率は2%台を維持しているものの依然として予断
本協会は昭和50年代より毎年当業界の経営状況につい
を許さない状況下にある。
て、業界全体として把握すべく全会員に対し、決算書
ならびに総製造原価明細書の提供を願いその分析を行
[生産性]
っている。
○従業員1人当たり年間生産高(万円)
この分析結果を基に経済産業省等の政府行政諸施策
売上高/従業員数
に役立たせるとともに各会員の今後の経営活動等の参
この1人当たり生産高は各企業の事業年度の売上高を
考指針とすべく分析している。
また、この分析は各社の事業年度の40%強の企業
従業員数で除したものであり、前述の利益率を反映し
が3月期決算であるものの、その他の企業は各月に広
て長繊維主体企業が平成3年の1人当たり年間生産高
く分布していることから、協会としては年末から年初
が2,778万円を記録したが、平成12年には2,289万円と約
にかけて各社より決算書を集め毎年2月に集計分析を
18%減少したのに対し、短繊維主体企業は平成4年に
行っている。
2,135万円を記録し、その後減少傾向を続けたものの、
平成12年にはほぼ同額の2,116万円となった。
これに伴い、集計分析結果は決算書等の提供協力企
こうした数字の結果は長繊維関係が年次ごとに著し
業に対し、財務状況等の分析結果を送付している。
以下は平成に入ってからの当業界全体の財務状況に
く生産高が減少しているのに対し、短繊維関係は1人
ついて、その主要項目を用いて業界の特色等を表した
当たり生産高は一部跛行状態にあるものの総体的に変
ものである。
化しておらず、リストラ、規模の縮小等が多数の企業
[収益性]
で実施され効果をあげていることがわかる。
○経常利益率(%)経常利益/売上高
当業界の長繊維、短繊維別の景況をあらわすものと
して、一番適切な利益率が、この経常利益率であるが、
この比率はその事業年度における企業経営にとって、
特別損益を差引く前の企業の利益状況を把握する上で
重要である。
[労働性]
○従業員1人当たり年平均人件費(万円)
労務費/従
業員数
これは言うまでもなく収益率を圧迫する要素として
染原材料費とともに最大のコストアップ要因となるの
が労務費である。
これをグラフで見ると長繊維主体企業は年々労務費
上記グラフを見るとわかる通り、バブル経済崩壊前
が平成10年まで上がり続けたが、平成11年、12年と人
の平成3年が全体としても6%台とピークの利益率を
件費は抑えられ縮小してきている。また、短繊維関係
示していたが、その後、6年頃より経常利益率はマイ
も年々上昇傾向にあったが、長繊維関係と同じように
ナスに転じ特に短繊維関係の捺染を中心に景気が悪化
平成11年、12年と減少してきている。
し、老舗の捺染工場が次々と廃業、倒産に追い込まれ
これは偏に企業収益があがらないため、企業経営の
−12−
立て直しと企業存続を図るべく春闘賃上げ交渉が低く
おさえられるとともに、一時金もこれまでにない低額
水準で推移したことに基因しているが、省エネルギー
等原材料費の抑制とともに水面上への利益確保に働い
2.自己資本利益率
(%)純利益/自己資本
企業の総資本のうち自己資本が経営活動の結果どれ
だけ純利益を上げたかを見るものである。
この利益率は比率が大きいほどよいわけだが、一方
では営業外の利益が多いか、営業外の損失が少ないか
たためと思われる。
によっても影響する。
年
長繊維ならびに短繊維主体ともバブル前は2桁の利
益率であったものが、その後、水面下になったりした
が、平成12年に入り脱出のきざしが見える。
[経営の安全性]
資本投下による利益率
1.自己資本率(%)自己資本/総資本
企業が借り入れる資本と自己調達している資本の割
合を示すものであり、一般的にこの比率が高いほど望
3.流動比率(%)流動資産/流動負債
短期(1年以内)の借入金とこれを返済するものに
必要な財源を比較する比率で、この比率が大きいほど
ましいとされている。
従って、比率が大きいほど期末における総資本のう
返済能力があり、経営の安全性が保たれていることを
ち自己資本額が多いことになり、また比率が小さけれ
表す。言わば企業の信用度を示すもので150%以上確保
ば自己資本額は小さい。
することが望ましいとされている。
このようなことから、自己資本の依存度は一般的に
期末における流動負債(支払手形、買掛金、短期借
35%以上とされており、長繊維主体は年次ごとを見る
入金)などの在高が少ないか、流動資産(期末預金、
とおしなべて上昇し、自己資本は35%以上となってお
受取手形、売掛金、商品など)の在高が多いかにより
り、自己資本が増加しているのが判る。これに対し、
変化する。
短繊維主体は平成4年の30.6%以外は自己資本比率は
低い。
こうした状況に対して、長繊維主体は平成4年以降
比較的安定していたが、平成8年から平成10年にかけ
市況の悪さを反映し100%以下となったがこの2年間は
安定している。
これに対し、短繊維主体も150%を超えることはなか
ったが、長繊維主体同様利益率の赤字もあって極力低
−13−
転率は低下した。
下したものの、ここにきて回復し、100%以上を確保し
この傾向は短繊維主体も同様の経緯を示している。
ている。
2.固定比率(%)固定資産/自己資本
[固定資産の運用]
1.固定資産回転率
(回)売上高/固定資産
建物、設備などの固定資産がどの程度自己資本でま
固定資産の売上高に対する効率を見るための固定資
かなわれているかを測る基準でこの判定は100%以内で
産回転率は固定資産の利用度を示すもので、回転率が
あるとされており、従って比率が小さいほどよいわけ
多いほど設備資産が十分に活用されていることになる。
である。
この中で長繊維主体は暦年100%以上を超えていた
従って比率が大きいほど売上げに対し、効率よく回
が、ここにきて、平成12年は100.1%と低下してきてい
転していることを表している。
る。
しかし、短繊維主体は毎年150%以上を記録しており、
固定資産が自己資本でまかなわれている。
こうして見ると長繊維主体は平成元年には3回以上
あったものが、年々減少し、ここにきて2回を割る状
況となっている。これは固定資産が加工数量の減少等、
景況の悪さを反映し収益状況が悪化したことにより回
(社)日本染色協会 長尾 彰
繊維関連予算案の概要について
平成13年度予算案が衆参議院委員会で可決されました。繊維関連団体予算案の重点は以下の通りで
す。
①繊維製品の輸入急増や消費不振等で極めて厳しい状況にある繊維産地の現状に鑑み、消費者起点
の発想に立って、製販一体となった中小企業等の協業等による産地活性化対策を協力に推進する
ため、地場産業等振興事業予算を、特に繊維産地対策を目的として、新たに3億円増額する。
②本年3月に策定された「繊維産業技術戦略」を踏まえ、新たに、産学官の連携による「高強度繊
維開発」のための大型技術開発プロジェクトを、平成13年度から平成19年度の7年度にわたって
継続的に実施する。初年度の平成13年度については、約2億円の新 規予算を確保する。
③「繊維産業貿易に関するタスクフォース」などの場で、繊維の需給についての実態把握能力を強
化すべきとの議論が高まっていることも踏まえ、アジア域内における繊維製品の流通消費実態調
査を行うため、新たに約1,000万円を繊維課予算として計上する。
−14−
平成13年経済産業省企業活動基本調査にご協力ください
経済産業省では、第8回目の「経済産業省企画活動基本調査」(指定統計第118号)を平成13年6月1日現在で実施
いたします。
この調査は、我が国企業における経済活動の実態を明らかにし、経済産業政策等各種行政施策の基礎資料を得るこ
とを目的としています。
調査の対象は、鉱業、製造業、商業、飲食店(その他の飲食店を除く。)、電気業、ガス業、クレジットカード業、
割賦金融業及びサービス業に属する事業所を有する従業者50人以上かつ資本金3,000万円以上の会社(合名会社、合資
会社、株式会社及び有限会社)であり、御報告いただく数値としては事業所単位でなく会社全体の数値であります。
調査の結果は、経済産業政策を策定するための基礎資料として有効に活用されるとともに、業界団体、民間企業に
おけるビジョン作成、経営戦略の策定に御利用いただけます。また、速報の公表は平成14年3月末を予定しており、
御報告いただいた会社に当省で作成した統計情報を還元いたします。
皆様から提出いただいた調査票については、統計法に基づき調査内容の秘密は厳守され、統計を作成するための使
われるものであって、徴税の資料などに用いることはありませんので、調査に対する御協力をお願いいたします。
■人事異動
経 済 産 業 省 人 事 異 動
◎平成13年3月19日付発令
(氏 名)
(新)
(旧)
小 林 憲 明
日 本 貿 易 振 興 会 に 出 向
(デュッセルドルフ・センター所長)
製造産業局繊維課長
◎平成13年4月1日付発令
蔵 元 進
製 造 産 業 局 繊 維 課 長
編集後記
愛知県産業労働部長
主 要 行 事
染色協会及び関連工業組合(平成13年3月)
3月初旬より繊研新聞に染色整理業へスポットを当
てた特集の連載を興味深くお読み頂いた方も多くおら
(社)日本染色協会
れたことでしょう。3月29日発行分(本号にコピーを掲
第6回編集委員会 3月15日 於 オーセンビル
載)には、本協会がスポンサーとなり、日頃余り表に出
第3回技術・環境対策委員会
3月23日 於 オーセンビル
ない染色整理業の存在をアピールするために、本協会
第18回業務改革委員会
3月27日 於 オーセンビル
並びに直接・間接社員のPRを致しました。社員名簿の
第1回不動産運営委員会 3月29日 於 日本染色会館
確認作業に各地の組合事務局に多大のご協力を頂きあ
第19回業務改革委員会
3月30日 於 オーセンビル
りがとうございました。暗いニュースが多い毎日でご
正副会長会議
3月30日 於 オーセンビル
ざいますが、皆様の社業の一助になればと事務局も頑
日本経編整染工業組合
張っております。ご批判、ご鞭撻をお願い致します。
第1回企画委員会 3月22日 於 オーセンビル
(e-mail adress: [email protected])
第4回調査情報委員会
社団法人日本染色協会 森本國宏
3月15日 於 オーセンビル
目 次
水質汚濁法に関連する排水規制(その4) ……………………………………………………………1
シリーズ 産地情報 ② 石川県染色工業協同組合 ……………………………………………………4
染色キャンペーン(社団法人 日本染色協会) ………………………………………………………6
染色キャンペーン 明日への挑戦 ………………………………………………………………………8
解説 染色整理業におけるPRTR法 ………………………………………………………………10
経営の危機管理 …………………………………………………………………………………………12
繊維関連予算案の概要について ………………………………………………………………………14
目次、編集後記、主要行事 ……………………………………………………………………………15
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着心地
高 機能
いいから
好きっ!
綿・合繊・ウール用薬剤
三洋化成は、高機能な繊維用薬剤を数多く開発し、
繊維の製造から仕上げ加工まで多彩なラインナップ
で、加工性の向上に貢献します。
グランアップUS-30
グランアップCS-90
キレート分散剤 セロポールPC-300
加工前歴に無関係な綿用柔軟剤 サファノールSUM-1
加工前歴に無関係な糸仕上剤 サ ン リ ー フCAN-1
合繊・ウール用精練剤
綿・綿混織物用精練剤
繊維加工産業部
東京103-5200-3462 大阪106-6203-3871 名古屋1052-581-8511 北関東1028-638-3261
湘南10463-24-9971 北陸1076-442-8900 浜 松1053-458-2888 京 滋1077-521-1175
中国1082-264-6743 四国10875-24-5771 西日本1092-714-3436
界面活性剤/ウレタン関連製品/親油系高分子薬剤/親水系高分子薬剤/特殊化学品
URL http://www.sanyo-chemical.co.jp/
※この冊子は、再生紙を使用しています。
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