第2章 介護保険の現状と課題 - 紀宝町

第2章 介護保険の現状と課題
1.本広域の現状
[1] 高齢者数・高齢化率
本広域では、第 3 期計画の推計どおり、総人口の減少、高齢者
及び高齢化率(人口に占める高齢者割合)の増加が進んでおり、
中でも後期高齢者(75 歳以上)が増加しています。
県内の高齢化率(平成 20 年 3 月現在)の上位は県南地域に集中
しています。本広域は県内で 5 番目に高く、県平均(22.5%)より
約 10 ポイント高くなっています。
[総人口]
平成 16 年度末
平成 20 年 9 月
44,948 人
43,168 人(4.0%減)
[高齢者数・高齢化率]
平成 16 年度末
平成 20 年 9 月
13,455 人
(29.9%)
13,777 人(2.4%増)
(31.9%)
[前期高齢者と後期高齢者の割合]
平成 16 年度末
平成 20 年 9 月
前期 48%
前期 46%
後期 52%
後期 54%
7
図表3
三重県内の高齢化率(上位 5 位)
順位
保険者名
高齢化率(%)
第1位
南伊勢町
41.1
第2位
大紀町
37.4
第3位
紀北広域連合
34.3
第4位
大台町
33.6
第5位
紀南介護保険広域連合
32.3
三重県平均
*平成 20 年 3 月現在
22.5
出典:三重県介護保険関係資料集
平成 20 年 7 月
[2] ひとり暮らし高齢者
本広域では後期高齢者(75 歳以上)が増加している影響から、
ひとり暮らし高齢者割合は県平均(13.2%)より約 12 ポイント高
く、高齢者の 1/4(25.7%)はひとり暮らし高齢者となっています。
図表4
三重県内のひとり暮らし高齢者割合(上位 5 位)
順位
保険者名
割合(%)
第1位
紀南介護保険広域連合
25.7
第2位
紀北広域連合
21.3
第3位
大紀町
15.1
第4位
南伊勢町
14.7
第5位
津市、四日市市
14.2
三重県平均
*平成 20 年 3 月現在
13.2
出典:三重県介護保険関係資料集
8
平成 20 年 7 月
2.介護保険事業運営の現状
[1] 要介護(要支援)認定者
本広域で介護保険の対象となる要介護(要支援)認定者(以下、
「認定者」という。)は平成 17 年まで増加傾向にありましたが、
第 3 期からは一転して 2 年連続で減少しています。この主な要因
としては、平成 18 年度に設置された地域包括支援センターによる
適切な介護保険認定への指導が挙げられます。
しかし、認定率は県内で 2 番目に高く、県平均(17.5%)より
3 ポイント程度高く推移しています。これは要介護になるおそれの
高い後期高齢者割合が高いことが要因と考えられます。
要介護(要支援)認定率の推移
図表5
(人)
2,000
1,800
21.6
20.9
17.3
1,400
23.4
23.1
21.8
18.9
1,600
1,200
22.3
17.8
20.6
17.5
17.5
(%)
25.0
20.0
16.3
16.0
14.5
14.1
15.0
12.6
1,000
11.0
800
10.0
600
400
5.0
200
0
0.0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
認定者数 要介護1まで
認定者数 要介護2・3
認定者数 要介護4・5
認定率(実績値)
認定率(第3期計画値)
認定率(三重県実績値)
要介護1まで
認定者数 要介護2・3
要介護4・5
認定率(実績値)
認定率(第3期計画値)
認定率(三重県実績値)
2000
840
540
450
14.1
2001
979
665
465
16.0
2002
1,333
705
488
18.9
2003
1,579
691
532
20.9
2004
1,702
662
548
21.6
11.0
12.6
14.5
16.3
17.3
*平成 20 年 3 月現在
9
2005
1,750
677
569
22.3
22.3
17.8
2006
1,478
895
629
21.8
23.1
17.5
出典:三重県介護保険関係資料集
2007
1,311
939
591
20.6
23.4
17.5
平成 20 年 7 月
図表6
三重県内の認定率(上位 5 位)
順位
保険者名
認定率(%)
第1位
伊賀市
22.0
第2位
紀南介護保険広域連合
20.6
第3位
紀北広域連合
20.0
第4位
松阪市
19.9
第5位
大紀町
19.3
三重県平均
*平成 20 年 3 月現在
17.5
出典:三重県介護保険関係資料集
平成 20 年 7 月
[2] サービス利用者
平成 18~20 年度の年間サービス実利用者総数は 2,300 人あまり
です。平成 18 年度以降はやや減少傾向にあります。
居宅サービスで利用者の多いサービス(居宅介護支援(ケアプ
ラン)除く)は、訪問介護(ホームヘルプサービス)、福祉用具貸
与、通所介護(デイサービス)です。通所介護(デイサービス)
や短期入所(ショートステイ)などの利用は増加し、また、特定
施設入居者生活介護(養護老人ホームの外部サービス利用など)
の利用も人数は少ないものの、増えつつあります。一方、軽度の
認定者数減少の影響などから、居宅介護支援(ケアプラン)や訪
問介護(ホームヘルプサービス)などはやや減少しています。
地域密着型サービスは、認知症対応型共同生活介護が 4 か所(熊
野市 1、御浜町 2、紀宝 1)整備され、利用されています。
施設サービス(3 施設)の利用者数は約 500 人(全利用者数の約
22%)で従来から大きな変化はありません。
10
図表7
サービス別実利用者数(月平均)の推移(単位:人)
0
500
1,000
1,500
2,000
人
(1) 訪問介護
(2) 訪問入浴
(3) 訪問看護
(4) 訪問リハビリ
(5) 療養管理指導
(6) 通所介護
(7) 通所リハビリ
(8) 短期入所(生活)
(9) 短期入所(療養)
H18年度
(10) 特定施設入居
(11) 福祉用具貸与
H19年度
(12) 特定用具販売
(13)夜間訪問介護
H20年度
(14)認知症通所介護
(15)小規模多機能
(16)認知症GH
(17)地域特定入居
(18)地域特養
(19)住宅改修
(20)居宅介護支援
(21) 特養ホーム
(22) 老健施設
(23) 療養型施設
*平成 20 年度は 3~7 月審査分まで
11
資料:給付実績情報(CSV.11100000)
[3] 介護給付費
高齢者一人あたりの介護給付費は約 22.7 万円で、県内で最も高
く、県平均(19.2 万円)より 3.5 万円程度高いことがわかります。
(図表 8)
この要因としては、国や県平均と比べて認定率が高く、また、
居宅サービスを中心に全般的にサービスをよく利用していること
が挙げられます。
(図表 9)
三重県内の高齢者一人あたりの介護給付費(上位 5 位)
図表8
順位
保険者名
介護給付費(円)
第1位
紀南介護保険広域連合
227,260
第2位
津市
215,329
第3位
松阪市
213,567
第4位
多気町
212,706
第5位
玉城町
198,829
三重県平均
*平成 18 年度実績
191,821
出典:三重県介護保険関係資料集
12
平成 20 年 7 月
図表9
本広域の高齢者一人あたりの介護給付費(全国を1とした場合の指数)
訪問介護
訪問入浴
訪問看護
訪問リハ
居宅療養管理指導
通所介護
通所リハ
短期入所
短期療養(老健)
短期療養(療養)
福祉用具貸与
福祉用具購入
住宅改修
居宅介護支援
小計
特養
老健
療養
特定施設
GH
地域密着特定
地域密着特養
小計
夜間対応型訪問介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型
小計
紀南介護保険広域連合
三重県
合計
0.00
1.00
*平成 18 年度実績
出典:三重県介護保険関係資料集
13
2.00
平成 20 年 7 月
図表10
介護(予防)サービスの給付実績(年間)
サービス
単位
平成 19 年度(実績)
介護給付
予防給付
平成 20 年度(見込み)
介護給付
予防給付
(1)居宅サービス
回数
130,482
人数
8,115
5,580
8,506
5,463
回数
1,737
51
1,515
67
人数
536
13
464
16
回数
7,263
1,073
7,603
1,042
人数
1,493
285
1,566
251
日数
2,067
532
3,017
700
人数
544
127
814
140
人数
180
12
187
10
回数
45,743
人数
5,246
回数
10,524
人数
1,420
612
1,558
585
日数
39,499
550
44,971
485
人数
2,072
65
2,287
58
日数
3,873
121
4,148
103
人数
414
20
447
17
⑩特定施設入居者生活介護
人数
173
0
252
0
⑪福祉用具貸与
人数
5,781
1,058
6,011
1,027
⑫特定福祉用具販売
人数
190
85
198
119
人数
0
回数
74
0
62
0
人数
17
0
14
0
③小規模多機能型居宅介護
人数
0
0
0
0
④認知症対応型共同生活介護
人数
408
0
480
0
⑤地域密着型特定施設入居者生活介護
人数
0
0
⑥地域密着型介護老人福祉施設入所者生活
介護
人数
0
10
(3)住宅改修
人数
150
120
156
136
(4)居宅介護支援
人数
12,942
8,406
13,624
7,161
①介護老人福祉施設
人数
2,997
3,000
②介護老人保健施設
人数
2,460
2,460
③介護療養型医療施設
人数
522
528
①訪問介護
②訪問入浴介護
③訪問看護
④訪問リハビリテーション
⑤居宅療養管理指導
⑥通所介護
⑦通所リハビリテーション
⑧短期入所生活介護
⑨短期入所療養介護
131,094
48,713
2,893
5,576
2,531
11,568
(2)地域密着型サービス
①夜間対応型訪問介護
②認知症対応型通所介護
0
(5)介護保険施設サービス
資料:紀南介護保険広域連合
14
3.介護保険事業運営の課題
これからの介護保険事業運営の課題について、アンケート調査
などからまとめます。
※主なアンケート調査結果は「参考資料」に掲載しています。
課題 1 介護サービスの充実、良質なサービスの提供
課題 2 介護予防の意識向上と地域ケアの充実
課題1 介護サービスの充実、良質なサービスの提供
(1)未利用者対策
◎認定者の中で未利用者も多く、中でも要支援認定者に多くみられる。
○ 介護保険事業運営の観点からは、未利用者は少ないことが望
まれます。そのため、引き続き、必要な状態になった際に利
用するよう、介護保険制度の周知、気軽に相談できる体制の
充実が必要となります。
(2)利用者意識
◎事業者の情報を自ら積極的に入手する利用者は少ない。
(利用者の当事者意識が
低い可能性がある)
○ 利用者がケアマネジャーを信頼していると捉えることもで
きますが、利用者の自己決定を尊重するという観点から、
事業者からの積極的な情報提供とともに、本広域や市町にお
ける認定者への一層の意識啓発が必要となります。
15
(3)ケアマネジメント
◎ケアプランは利用者の希望どおりのプランとなっている。
○ 平成 17 年度調査結果とおおむね同様の傾向にあることから、
ケアマネジャー(介護支援専門員)との関係は良好で、かつ、
良質なサービスが供給されていると考えられます。
○ 現場のケアマネジャー(介護支援専門員)からは、医療機関
との連携に関する改善点が挙げられており、紀南病院の地域
連携室や紀南医師会を通じた連携強化が必要といえます。
また、サービス事業者には良質なサービスの維持・向上への
一層の取り組みが期待されます。
(4)サービス供給
◎介護保険サービスに対する満足度はおおむね高い。ただし、一定の不満もみられる。
○ 平成 17 年度調査結果と同様の傾向にあることから、全体的
には良質なサービスが供給されていると考えられます。今後
も介護サービス事業者においてサービス評価制度の定期的
な実施など、質の高いサービス供給に向けて一層の取り組み
が期待されます。
○ 介護サービス事業者からは、良質なサービスを供給するため、
地域や行政と一体となった取り組みを期待しています。
そのため、事業環境の維持・改善に向けた集落や自治会など
の地域内ネットワークづくりを検討する必要があります。
○ 施設入所を待っている要介護認定者への対応、療養病床の再
編成の動向も視野に入れると、地域密着型サービスの拡充も
必要となります。
16
課題2 介護予防の意識向上と地域ケアの充実
(5)介護予防の意識
◎介護予防事業の認知度は半数にも満たない。特定高齢者が挙げる今後利用するか
わからない大きな理由は「特に理由はない・なんとなく」
。
○ 介護予防の必要な特定高齢者が事業参加に消極的なこと、
あるいは家庭で予防の取り組みが持続できないことなどが
全国的な課題となっています。
○ 今後は、介護予防の意識向上や身近な地域での事業開催、
市町の健康づくり事業との連携などにより、介護予防体制の
充実強化に努める必要があります。
○ 地域包括支援センターや市町職員による実施にとどまらず、
ボランティアへの参加者の拡大、ボランティア団体の育成や
活動の活性化といった、高齢者も支える側として自ら活動す
るような、住民・地域と一体となった連携体制の充実を図る
必要があります。
(6)地域ケア
◎介護が必要になっても「自宅介護」の希望が高い。
○ 高齢者のひとり暮らし世帯が多く、また、介護世帯の多くも
“老老介護”であることを前提として、医療機関と連携した
介護者の心身の負担軽減への支援、介護者の状態を含めた介
護サービスの柔軟な供給、隣近所で見守る仕組みなど、在宅
介護を支える体制の充実に取り組む必要があります。
○ こうした地域ケアの中核を担う機関として地域包括支援セ
ンターが十分に機能を発揮するよう、地域包括支援センター
の体制強化、スタッフの技能向上、透明性の高い事業運営、
17
幅広い視点をもった活動の活性化が必要となります。
○ 地域においては消費者被害の未然防止をはじめ、孤立死の防
止や災害時の避難支援につながる見守り対象者のリストア
ップ、関係者間での情報共有と連携強化、地域活動の連携強
化、ボランティア活動の活性化など、高齢期の安心・安全な
暮らしを支える地域ネットワークの拡充が必要となります。
○ 医療体制については、夜間や急病時の救急体制に関する情報
提供、病院間連携の強化など、地域医療の充実に引き続き取
り組む必要があります。
○ 住民自身には、運動や口腔ケアの進め、栄養バランスのとれ
た食事、ストレス発散や快眠方法の周知など、生活習慣病予
防の取り組みを期待します。
18