No.0808 2008年4月23日 心不全の診断に有用な検査薬を開発 ロシュとNT-proBNPをライセンス契約 三洋化成工業株式会社 (証券コード 4471) 三洋化成工業株式会社(本社:京都市東山区、社長:家永昌明)は、ロシュ(本社:スイス・バー ゼル、CEO:Franz.B.Humer)とヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグ メント(NT-proBNP)測定に関するライセンス契約を締結し、心室機能不全(心不全)の診 断・病態把握に有用な臨床検査薬『スフィアライト proBNP』を開発、このほど和光純薬工業 株式会社(本社:大阪市中央区、社長:池添太氏)を通じて本格販売を開始しましたので、報告申し あげます。 新製品『スフィアライト proBNP』は、当社独自の化学発光酵素免疫測定法を用いることで、 心不全の診断・病態把握に必要な高感度測定を可能にしています。当社では、肝炎ウイルスマーカー のHCV抗体や腫瘍マーカーなど約20項目の臨床検査薬をとりそろえ、 『スフィアライトシリーズ』 として大変ご好評をいただいています。 新製品は同シリーズの一つとして、 心臓分野への展開を行い、 当社検査薬ビジネスの拡充を図ります。 新製品『スフィアライト proBNP』で血液検体を測定するには、専用の全自動化学発光酵素 免疫分析装置『SphereLight Wako』 (販売元:和光純薬工業株式会社、製造販売元: アロカ株式会社)もしくは『SphereLight 180』 (製造販売元:オリンパス株式会社) を用います。いずれの装置でも、約20分で測定・結果報告することができますので、臨床検査部門 から求められる迅速測定を可能にしています。 【NT-proBNPとは】 NT-proBNPは主として心臓の心室から分泌される76個のアミノ酸から構成されています。 循環血液量の増加や心筋細胞へのストレスといった心臓への負担の増大によって、心室内に脳性ナ トリウム利尿ペプチド前駆体(proBNP)が産生されます。proBNPはタンパク分解酵素の 作用を受け、生理活性を有する脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と生理活性を有しないNT- proBNPに分解されます。 健常人のBNPとNT-proBNPの血中濃度は極めて低値ですが、急性および慢性心不全患者 では重症度に比例してそれぞれの血中濃度が上昇するので、心不全の診断に有用です。また、疲労、 動悸、呼吸困難、むくみといった心不全の自覚症状のない患者でも、これらをマーカーとして心不全 を早期発見することができるだけでなく、慢性心不全患者の重篤度のモニタリングにも有用なマーカ ーです。 これまで国内においては、心不全マーカーとしてBNPが用いられてきました。しかし、欧米では 採血後の検体の安定性がより高いといった観点からNT-proBNPが広く用いられています。N T-proBNPは、昨夏、厚生労働省による保険収載をきっかけに、国内でも非常に高い注目を集 めてきています。 【心不全診断マーカー『スフィアライト proBNP』開発の経緯】 食生活習慣の移り変わりや高齢化社会の到来によって、心不全患者の増加が問題となってきていま す。入院や治療が必要な心不全患者は増加傾向にあり、特に高齢者における心不全の発症率は、65 歳以上の高齢者1,000人当たり10人に近づいているとの報告があります。 こうした動向を受け、当社の検査薬ビジネスにおいても心臓分野の強化を図るべく、NT-pro BNPを開発したロシュとライセンスを締結し、検査薬の開発を始めました。ロシュの保有する抗ヒ トNT-proBNP抗体と、当社独自の化学発光酵素免疫測定技術とを組み合わせ、高感度かつ高 精度な検査薬『スフィアライト proBNP』を完成させることができました。今年3月に厚生労 働省から医薬品製造販売承認を取得し、4月に和光純薬工業株式会社を通じて販売を開始しておりま す。 ■新製品『スフィアライト proBNP』の特長 ①血清、血漿での測定が可能です。 BNPは指定の採血管を用いた血漿でしか測定できませんが、 『スフィアライト proBNP』は 血清、血漿での測定が可能です。他の検査項目と同じ採血管が使用でき、 『スフィアライトシリーズ』 の肝炎ウイルスマーカーのHCV抗体や腫瘍マーカーなど約20項目の各種臨床検査薬と同時に測定 ができます。 ②採血後の検体の安定性が良好です。 BNPは血中の分解酵素による影響を受けますが、NT-proBNPはこれらの影響を受けない ために、採血後の検体の安定性が良好です。 ③重症群ほど高値を示し、かつ、BNPに比べて高い上昇率を示します。 心不全の重症度を示すNYHA(New York Heart Association)分類 と相関性が見られます。NT-proBNP、BNPともに重症群ほど高値を示しますが、NT-p roBNPの方が高い上昇率を示します。予後の判定にも有用です。 ④早期の診断が可能です。 より軽度の心機能障害においても、血中NT-proBNP濃度が上昇する傾向が認められます。 心不全の早期診断と病態の把握に、より鋭敏なマーカーである可能性が示唆されています。 【新製品の販売計画】 新製品『スフィアライト proBNP』は、約1,500~2,000件の病院や検査センター、 および人間ドックなどの健康診断を実施している施設を販売ターゲットとしてまいります。2012 年度には5億円の売り上げを計画しています。 <本件に関するお問い合わせ先> 三洋化成工業株式会社 広報室 電話 075-541-4312 《参考資料》 【 『スフィアライトproBNP』の測定原理について】 『スフィアライトproBNP』の測定原理は、化学発光酵素免疫測定法に基づいています。 抗NT-proBNPポリクローナル抗体(ヒツジ)を結合させた抗体ビーズに、検体中のNT- proBNP抗原を反応させ、次いでペルオキシダーゼ結合抗NT-proBNPポリクローナル抗 体(ヒツジ)を反応させると、 「抗体ビーズ-抗原-酵素標識抗体」のサンドイッチ状の複合体が形成 されます。抗体ビーズに結合した酵素の量は抗原量に比例するので、その酵素活性を、化学発光試薬 (ルミノール溶液、過酸化水素液)を用いて測定することにより、あらかじめ濃度既知の標準NT- proBNPを用いて作成した検量線から検体中のNT-proBNP濃度を求めることができます。 【 『スフィアライトシリーズ』専用の全自動化学発光酵素免疫分析装置 『SphereLight Wako』 、 『SphereLight 180』について】 ■『SphereLight Wako』は、当社と和光純薬工業株式会社が共同開発した全自動化 学発光酵素免疫分析装置です。 ■『SphereLight 180』は、当社と和光純薬工業株式会社とオリンパス株式会社の3 社で共同開発した全自動化学発光酵素免疫分析装置です。 いずれも、当社独自の化学発光酵素免疫測定法を用いることで、装置に血液検体をセットしてから 結果報告まで約20分の迅速測定、 毎時180テストの測定処理能力といった性能を実現しています。 【 『スフィアライト proBNP』 】 【スフィアライトシリーズ一覧表】 製品名 検査対象項目 検査対象となる疾患 スフィアライト AFP AFP 肝臓ガン スフィアライト CEA CEA 消化器ガン スフィアライト CA19-9 CA19-9 すい臓ガン スフィアライト PSA PSA 前立腺肥大、前立腺ガン スフィアライト NSE NSE 肺ガン スフィアライト CA125 CA125 卵巣ガン スフィアライト ペプシノゲンⅠ ペプシノゲンⅠ 胃ガン・慢性萎縮性胃炎 スフィアライト ペプシノゲンⅡ ペプシノゲンⅡ 胃ガン・慢性萎縮性胃炎 スフィアライト ProGRP ProGRP 肺小細胞ガン スフィアライト T3 T3 甲状腺疾患 スフィアライト T4 T4 甲状腺疾患 スフィアライト FT3 FT3 甲状腺疾患 スフィアライト FT4 FT4 甲状腺疾患 スフィアライト LH LH 妊娠・不妊症 スフィアライト FSH FSH 妊娠・不妊症 スフィアライト プロラクチン プロラクチン 妊娠・不妊症 HCV抗体 C型肝炎ウイルス NT-proBNP 心不全 スフィアライト β2m β2m 腎臓疾患 スフィアライト フェリチン フェリチン 貧血、白血病 スフィアライト インシュリン インシュリン 糖尿病 スフィアライト Cペプチド Cペプチド 糖尿病 スフィアライト IgE IgE アレルギー性疾患 《ガン関連マーカー》 《甲状腺関連ホルモン》 《妊娠関連ホルモン》 《感染症》 スフィアライト HCV抗体 《心臓疾患》 スフィアライト proBNP 《その他各種疾患関連マーカー》
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