『支援者』としての人材ビジネス

【「支援者」としての人材ビジネス】
人材会社をグループ会社に持ち、障がい者仕様の貸
し農園「わーくはぴねす農園」を運営・管理するエス
プールプラス。後編の今回は同社のもう一つの主軸事
業である就労移行支援「障がい者就職塾」の取り組
人の障がい者が働いている千
「塾」の名称へのこだわり
労に向けたワンストップ型の機会創出にもなっている。
障がい者が、一般就労へ向けた座
る意識を高めてもらう目的で、塾
にしています。また、就労に対す
うちではあえて卒業式を行うよう
もらいたいという思いも込めて、
トップでの後方支援」も、同社の
がい者雇用促進のための「ワンス
そして職場定着という、企業の障
語るように、
教育訓練から雇用支援、
人ほどの
学での職業訓練を受けていた。入
取材当日、室内では
口正面に掲げられたボードの貼り
取り組みの大きな特徴であろう。
「就職塾」という名が付くことも
障がい者の就労移行支援事業で
ポート。卒業生の中にはそのまま
練生の一般就労へ向けた自立をサ
生活指導のための生活指導員が訓
職業指導員と就労指導員、そして
般就労を目指す。千葉県指定就労
訓練期間(1年延長可)内での一
就労移行支援事業では、2年の
事業採算面での「悩み」も
という名称にもこだわりました」
就職塾では、就業訓練のための
人取締役副社長(以下、中村氏)。
珍しいが、さらに卒業式まで行う
とは、エスプールプラスの中村勝
い者就職塾わくはぴ校 卒業証書
授与式」と書かれ、卒業式当日の
というのはかなりのレアケースだ
就業訓練の場でもある「わーくは
ろう。
していく。そうした意識を持って
金を払い、年金も払いながら自立
人として就職し、給料を得て、税
の「駆け込み需要」は、同社のケ
期。そのタイミングでの企業から
1は塾の卒業生です」と中村氏が
で就労している障がい者の3分の
「市原市のわーくはぴねす農園
で「事業としての採算性」におけ
付がその運営資金になるが、ここ
康保険団体連合会からの利用料給
障がい者の訓練期間中は国民健
人の一般就労が決
支援事業を行っているところで、
るケースも少なくない。
ぴねす農園」の参画企業に就職す
移行支援事業所である「障がい者 就職塾」
においてもそれは同様だ。
「卒業式はうちが独自に行って
訓練期間内に
いるものです。今後は一人の社会
る事業サイドとしての悩みが一つ
は、多くは特別支援学校を卒業し
けに来られるタイミングというの
通常、就労移行支援の訓練を受
労支援事業としての目的、役割と
の就職が決まっているという。就
の段階ですでに7人の一般企業へ
訓練生においても、取材時の5月
し、就職塾に入ってきたばかりの
今年3月に特別支援学校を卒業
大きいと感じます」と中村氏。
「特別支援学校からの期待の声も
した企業ニーズへの対応と同時に
にスポットを当ててきたが、そう
業における障がい者雇用の促進」
本稿では、
これまで、
同社の「企
高まる「学校からの期待」
ある。中村氏は、自社に限らず、
た後の4月なのです。それ以外の
しては称賛されるべき実績だが、
あります。
ースに限らずよくあるパターンで
人が定員の就労移行
タイミングで訓練生が集まること
事業として見れば、わずか2か月
実際に就職できるのは %ほど。
「特別支援学校の卒業生の中で、
はほとんどないため、6月や9月
%はいわゆる福祉支援機関に進
ならない時期が6月であり、さら
その達成状況の報告をしなければ
%)の対象企業にとって、行政に
がい者雇用の法定雇用率(2・0
るという。理由は他でもない。障
6月、9月などのタイミングであ
からの求人ニーズが集中するのは
実際、就職塾においても、企業
モラル・使命感も問われる分野
スが多いのです」
。
事業として成り立っている感じで
あくまでも農園事業とのセットで
のみの事業単体で見たら赤字です。
そして「当社の場合も、就職塾
使命感が問われる事業でもある。
ある意味で事業者としてのモラル、
害を懸念する。就労移行支援は、
います」と、その想定されうる弊
方が得策ということになってしま
せないで障がい者を抱えておいた
たら、最長3年間、企業に就労さ
業だけで収益を生み出そうと考え
中村氏も「もし就労移行支援事
見込めない。
来年の3月まではその補充はほぼ
も、ますますその出番を増やして
企業と学校をつなぐ架け橋として
キューピット役としてだけでなく、
活用しながら、障がい者と企業の
はぴねす農園」の自社スキームを
がい者就職塾」
、 そ し て「 わ ー く
きているのです」
。
ても、ここでは一般就労が実現で
語ができない知的障がい者であっ
ードルも下げられます。実際、発
労という形態であれば、就労のハ
いう現状があります。農園での就
後も就職には結びついていないと
むことになりますが、多くはその
エ ス プ ー ル プ ラ ス は 今 後、
「障
に9月は未達成企業に対しての行
いくことだろう――。
で7人の欠員発生である。しかも
20
す」と笑う。
ま収益の減少になってしまうケー
が決まると、その欠員分がそのま
などのタイミングで企業への就労
10
政指導の有無の判断がなされる時
80
をこう打ち明ける。
「例えば
農園内にある「障がい者就職塾 わくはぴ校」。特別支援学校の卒業生などが就職へ向けた訓練を受けている
紙 が 目 に 入 っ た。
「 第 3 回 障 が
記念写真等が多数貼られていた。
10
プラスが運営を行っている。
として、昨年6月からエスプール
千葉県指定の就労移行支援事業所
名称のプレハブ小屋の一室がある。
内には、
「障がい者就職塾」という
葉県市原市の
「わーくはぴねす農園」
80
まったという場合、一気に収入が
JR 五井駅前にある「障がい者就職塾 市原校」
訓練生と談笑する中村勝人氏
同じ就労移行支援事業を行ってい
みにスポットを当てる。農場での職業訓練は、一般就
あるからだ。
ワンストップ型の就労移行支援を実現
エスプールプラスの障がい者雇用支援 後編
半分になってしまうという悩みが
第四十回
る事業者共通の苦しい「胸の内」
社会貢献のキーワードから探る
派遣・紹介の
「もうひとつの役割」リポート 伊藤秀範
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2014. 8. 1/vol.337
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高齢者雇用・障がい者雇用・外国人雇用
育児女性雇用・フリーター雇用