平成23年度 - 建築コスト管理システム研究所

建築コスト情報の標準化・統合化に関する調査研究(平成23年度)
参事
寺川
鏡
システム部長
細谷房夫
総括主席研究員
吉田藤子
総括主席研究員
尾薗明彦
主席研究員
岩松
準
主席研究員
山浦
昭
1 研究の目的
建築物の事業においては企画、設計、積算、施工、維持管理の各段階でさまざまなコスト関連
情報が使用されている。各段階で使用されるコスト関連情報はその目的が異なるため、通常、内容
も形態も異なっているが、それらの情報は相互に関係しているはずである。元来、建築コスト情報
は建物の発注者あるいは施工者の必要から発展したものであり、施設完成引渡以降の情報活用
は建物管理/利用者側の判断に任されていた。しかし、プロジェクトの企画から維持管理運営に
至るコスト情報の在り方を研究することは、多くの利用者に役立つ情報の標準化を促進し、さらに
は統合化等の可能性につながるものと考える。
建築コスト情報を標準化すると、例えば、①建物の企画・設計段階では部分別数量と単価で概
算工事費を算出しコスト管理を行う、 ②詳細積算段階では工種別コスト情報を使用して工事費
積算を行う、その結果を分析し部分別に編集することで概算時の資料としてフィードバックする、③
維持管理段階では②のコスト情報を使用してLCCや各改修工事費の概算を作成する、さらに資
産管理区分と整合した資産評価へと活用する、など一群の情報が幅広い分野で活用され進化す
る可能性が生まれてくる。
このように、コスト関連情報のシームレスで高度な利用により社会に貢献するのが本研究の目的
である。
なお、本研究は数年の期間をかけ、次のステップで行う予定としている。今年度は1、2、3番目
のそれぞれに取りかかった段階といえる。
1.各段階における建築コスト関連情報の実態把握(探索的な調査実施)
2.設計や積算の各段階におけるコスト情報の連携の仕組みに関する調査(国内、海外)
3.積算情報についての維持管理段階での活用方策の検討
4.コスト関連情報の統合化と高度活用、フィードバックの枠組みの検討
本研究は非常に幅の広い多岐の分野にわたるものであり、当研究所のこれまでの建築コスト情
報に関する研究の蓄積を十分活用するとともに、関係機関との情報交流や連携を通じて国内外の
最新の動きを捉えながら進めることとする。従って、研究の進展により得られた知見や研究テーマ
を取り巻く状況の変化に対応して研究の枠組みについても柔軟に見直すものとする。
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2 本年度の研究内容の概要
これまでの日本の建築の積算業務は、工事発注段階での正確な事前コスト把握に最大の価値
を置くものだったといってよい。すなわち、建築コスト情報のコアとなっているのが建設工事の発注
段階での積算業務である。そこでは、設計図書から数量を拾い、単価を掛けるという膨大な作業を
精密に行っている。この作業の際の数量拾いは基本的には部分別でおこない、値入れのためにそ
れを工種別に構成しなおしており、最終的には工種別での建築コスト情報の整理・把握が行われ
ている。そして、その作業の川上側には各段階に応じた精度を持つ部分別概算があり、企画から
積算までの建築コスト情報の統合化は本研究がカバーすべき重要な検討課題と認識される。これ
には最近のコンピュータの発達による BIM 活用の広がりも関係している。一方、川下側は維持管理
段階であり、積算で得られたデータの活用の可能性、例えば IFRS 1など企業の会計基準の変更の
動きの模索である。
今年度は川上側から川下側までの範囲の中での建築コスト情報の活用をテーマに取り上げて
調査研究を実施した。具体的には、川上側の検討ではある日本の建築積算ソフトウェアにおける
部分別・工種別の変換の実態把握を行った。また、川下側では日本の企業会計基準に影響を与
えつつある国際財務報告基準(IFRS)や、企業会計の良さを取り入れようとする公会計改革と財産
台帳整備に関する近年の動きについて調査した。最後に、調達方式が変化する中で企画段階か
ら建物の調達そしてライフサイクルコストまでをカバーする一連のシステムとして開発・整備され、日
本においても今後の参考になると考えられる、英国の RICS の新しい測定ルール「NRM」の調査を
行った。
なお、これらのテーマは基本的に独立したものである。これらを一覧し、概要的にその関係を示
したのが下の総括表である。以下、順番に説明を加えてみたい。
伝統的な積算技術とその変革
BIM 技術の進展と積算の関わり
建築の資産評価を取り巻く
社会状況変化の把握
RICS の NRM(新しい測定ルール)
企業会計基準(IFRS/IAS)
等の影響
NRM1 の抄訳作成
(年報別冊)
工種別・部分別の工事費内訳書標準
書式
建築積算ソフトウェアの中の
部分別コスト情報の扱い調査
先進諸外国の動向(建築コスト情報)
公会計改革と資産台帳整備
米国等の内訳書式(詳細未調査)
MasterFormat, UniFormat
建築コスト情報のあり方の検討
図1 研究の総括図(平成23年度)
1
International Financial Reporting Standards。国際会計基準(IAS)および解釈指針を含む。国際会計基準審議
会(IASB)が開発し公表している。
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2.1 建築生産における BIM と積算との関わり
BIM については、国土交通省発注の新宿労働総合庁舎の設計や工事が BIM 適用の公共建築
第1号という報道があるなどようやく公共建築でも採用され始めた。最近はとくに民間建築での実例
も数多くなり、BIM の記事を目にする機会は増えた。これは、コンピュータを使った3次元の“建物モ
デル”による設計や施工の話である。新宿労働総合庁舎の設計業務では BIM モデルを使い一部
の数量積算も行われた。手拾いとは違い、概算数量の算出が容易なことから設計段階での「コスト
管理がスムーズに進む効果も生まれた」(記事)という。また、必要な意思決 定が設計初期に行わ
れる効果も確認された(これを「フロント・ローディング」と呼ぶ)。
BIM は設計ばかりでなく、施工でも活用が進む。ゼネコンの設計・施工案件での適用事例がいく
つか報告されているが、たとえば、総合図作成に当たる構造と設備の干渉チェックや日影図等の
法規チェック図の作成、建物のエネルギー負荷計算等をはじめ、工事での工程シミュレーション、
デジタル3次元測量機(スキャナー)との併用で出来形管理にも適用できるという。まだ日本では研
究段階だが、海外では確認申請の審査でも使われていると聞く。そして、さらに使用 段階まで含む
建物ライフサイクル全般において、生産性向上(さまざまな無駄の排除)に寄与することが期待され
る技術である。
このような BIM が積算や見積りの実務にどう関わってくるのか。数量積算は最も実現が近い技術
で既往の3D-CAD でも対応しているが、これに単価情報が絡むと難易度は上がる。その理由として
考えられるのは次の諸点である。
①
コスト情報はもともと秘匿性が高く、発注者、設計者、施工者が共通で利用でき信頼に足る
情報がない。
②
BIM プログラムだけでは、積算実務者の豊富な経験に裏付けられたリスク管理に対抗でき
ない。
③
下請専門工事単位の工種別コスト情報は比較的に手に入るが、BIM で活用できる部分別
に対応したコスト情報の流通がない
④
部分別で内訳をつくったら工種別に比べ、書類が膨大になるためあえて部分別内訳書を
作成しない。
“部分別”の内訳のことはポイントだと考える。日本では英国を参考に1980年に官民の代表から
なる建築積算研究会が工種別内訳に引き続き、部分別の内訳書式を制定した。部分というのは字
義通り、建物を構成するパーツ(部分)を指す。基礎、躯体(床、壁、柱など)や内・外装などで認識
できる部分のことである。その単位でコスト内訳を捉えるのだから、企画・設計時のコスト把握に向
いた分類法といえる。ところが、積算や見積りの実務で“部分別”によって内訳を整理する例は上
述の理由でたいへん少ない。
BIM の世界では3D-CAD に、時間軸(すなわち手順の情報)を入れたものを4D、そしてコスト情
報を入れたものを5D と呼び、最終段階までのロードマップを描く 2 。しかし、3年前に実施したコスト
研米国調査や最近聞いた話でも、概算シミュレーション程度のことは可能でも、一定の精度が求め
られる積算の実務では、まだ BIM プログラムは扱われていないようである。
2
米国建築家協会ハンドブック(The Architect’s Handbook of Professional Practice)第 14 版(2008), p.420 参照。
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≪参考1・工種別及び部分別内訳書式の制定経緯≫
太平洋戦争後の混乱の中、法律第171号の1950(昭和25)年5月廃止の影響で、官側に厳格な
予定価格積算が求められるようになった事情 3 から急遽、建設省管理局営繕部長(当時)の要請に
より官民合同の研究会(工事費内訳明細書書式研究委員会)が「建設請負工事工事費内訳明細
書標準書式」(同年5月)を制定した。これは建設工業経営研究会(以下、経研)の前身組織である
日本建設工業會が発表していた「原價計算書記載基準案」に基づくものだったが、完全ではなか
った。こうした内訳書式を定めたのは、「発注者および受注者双方が納得する建築数量の積算ル
ール」が必要とされたからである。1955(昭和30)年10月に官民合同の「建築積算研究会」が発足
して本格的に研究に着手し、1958(昭和33)年には先の標準書式が今日、“工種別”と呼んでいる
ものに改訂された。これが日本で広く普及している工種別内訳書式の制定経緯である。
一方の部分別内訳書式は QS 職能が確立していた英国の影響を強く受けたようである。日本で
の部分別内訳書式の研究は建築学会建築経済委員会の中に1963(昭和38)年末に設けられたコ
ストプランニング部会(益田重華主査;設置期間はわずか7ヶ月ほど)及び経研の建築技術部会を
“震源地”として始まった。その際には、すでに1922年に初版が出版され、英国の建築積算基準と
呼ばれている SMM(Standard Method of Measurement of Building Works)の翻訳作業も行われた。
これが刺激となり、1967(昭和42)年頃を境に「(部分別)基準作成への気運が大きく動き出した」 4
(宮谷)。この研究には前述の官民合同の建築積算研究会も当初は関わったが、結局は経研の内
訳書式研究小委員会が中心となって原案を作成し、民中心の工事見積書標準書式作成連合委
員会が承認する形をとり、「五会 5 連合協定・建築工事部分別見積内訳書式」が完成・公表された
のが1968(昭和43)年6月のことであった。当時、制定に深く関わった経研の益田重華氏は、「原価
管理の新しい考え方への黎明である・・・注文者側と請負者側の接点としての見積の形式に対する
注文者側の要望に応えることが、建設業者の原価管理方式などの新しい方向への出発点になる
であろう」と述べている。
この部分別書式はその後、1970(昭和45)年4月から建築積算研究会 6 が検討し、約10年後の
1980(昭和55)年11月に“工種別”との整合性を図りつつ「建築積算研究会制定 建築工事内訳
書標準書式」として統合された。その後何度かの改訂が建築積算研究会 7で加えられたが、国の積
算基準の全省庁統一の必要等の事情から、1999(平成11)年以後はコスト研と日本建築積算協会
を事務局とする官民合同の「建築工事内訳書標準書式検討委員会 8 」がその改訂を担う形に変更
となり、今日に至っている。
参考文献:「建築コスト遊学 07:コストプランニングのための部分別数量書式」建築コスト研究 No.67, pp.44-48, 2009.10
3
詳細は「建築コスト遊学 02:法律 171 号と予定価格――官の積算の意味」建築コスト研究 No.61, pp.35-38, 2008.4.
宮谷重雄「“建築数量積算基準”の制定とその意義」建築雑誌 Vol.93,No.1142,1978.10,pp.29-31
5
五会とは、(社)建築業協会、(社)全国建設業協会、(社)日本建築家協会、(社)日本建築学会、(社)日本建築士会連合
会。部分別内訳書式の制定当初は官側が含まれていないことに留意。
6
昭和 45 年時点の建築積算研究会メンバーは、建設大臣官房官庁営繕部ほか公共発注者 12 機関、(社)日本建築家協会ほ
か社団法人 6 団体の全 20 団体が構成員であった。
7
平成 5 年時点の建築積算研究会メンバーは、建設大臣官房官庁営繕部、住宅・都市整備公団建築部、(社)新日本建築家
協会、(社)日本建築積算協会、建設工業経営研究会、ほか(全 21 団体)
4
8
最新の平成 15 年度版の検討委員会メンバーは、長倉康彦氏(都立大学名誉教授)、江口禎氏(武蔵工業大学教授)、日本
建築学会、日本建築家協会、日本建築士会連合会、日本建築士会事務所協会連合会、日本建築積算協会、建築業協会、
全国建設業協会、建設工業経営研究会、最高裁判所事務総局経理局、日本郵政公社ネットワーク企画部門施設計画部、文
部科学省大臣官房文教施設部、防衛施設庁建設部、都市基盤整備公団技術監理部、東京都財務局建築保全部、国土交通
省住宅局、国土交通省大臣官房官庁営繕部、国土交通省関東地方整備局営繕部、建築コスト管理システム研究所(2 氏、18
団体)となっている。
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図 五会連合会協定「建築工事部分別見積内訳書式」昭和43(1968)年6月より
表 現在の工種別及び部分別内訳書標準書式の概要比較
工種別内訳書標準書式
部分別内訳書標準書式
主として工種・材料を対象として工事費を算出し、
概ね工程の順序で記載する方式による積算内 訳書
の標準書式
(総額書)
種目別内訳書
科目別内訳書
中科目別内訳書
細目別内訳書
建 築 物 又 は構 造 物などの工 事 費 を部 分 又 は部 位でとら
え、これを分類し集積して工事費を算出する部分別方式に
よる積算内訳書の標準書式
(総額書)
種目別内訳書
大科目別内訳書
中科目別内訳書
小科目内訳書
細目別内訳書
(注)種目別内訳書までは共通。図の出典は『平成 15 年版建築工事内訳書標準書式・同解説』(発行:コスト研)
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≪参考2・改修工事内訳標準書式≫
改修工事の内訳書は、新築用の建築工事内訳書標準書を改修工事内容に再構成する形で作
成されてきた。1992(平成4)年に国土交通省官庁営繕部が建築改修工事共通仕様書を制定する
と、そこで示された工事種目を利用する事が多くなった。その後、公共建築を良質な社会資本スト
ックとして長期間にわたり国民の社会経済活動に有効に活用するため既存建築物の適切な維持
管理と機能向上のための修繕の必要性が高まったことから、公共建築に係わる基準類の統一化
等の動きと同じくして、2003(平成15)年12月、官民合同の「建築工事内訳書標準書式検討委員
会」で改修内訳書標準書式が制定された(「建築工事内訳書標準書式・同解説(平成15年版)」に
収録)。公共建築工事において、改修内訳書標準書式は、改修工事特記仕様書、公共建築改修
工事標準仕様書(建築工事編)と一体的に使用されることが多い。
一方、建物管理者(例として区分所有による共同住宅)の立場から改修工事を考えると、適正な
長期維持管理・修繕計画は費用負担に直結する極めて重要な課題である。国土交通省住宅局
市街地建築課マンション政策室は、2008(平成20)年6月、長期修繕計画標準書式を策定し、同
計画を利用して修繕積立金の額を設定するため2011(平成23年)4月にマンションの修繕積立金
に関するガイドラインを策定した。この解説は、建物の完成引渡以降に必要な維持管理・修繕費を
LCC の考え方を費用算出まで具体的に解説している点で注目したい。
建物を資産として長期間良好に維持・活用しようとする需要は今後更に高まることが予想される。
そのためには、建物所有者・管理者が長期修繕計画を企画し、時代に応じて最適化し続ける努力
が求められており、その為には建設時の各種情報(コスト情報を含む)を確実に入手することが重
要であり、当初情報を直接入手できない場合の代替え手法についても関心が高まるだろう。
推定修繕工事項目
対象部位等
Ⅰ 仮設
1仮設工事
①共通仮設
②直接仮設
Ⅱ 建物
2 屋根防水
屋上、塔屋、ルーフバルコニー
屋上、塔屋
屋根
庇天端、笠木天端、パラペット天端・アゴ、架台天端等
バルコニーの床(側溝、幅木を含む)
開放廊下・階段の床(側溝、幅木を含む)
外壁、屋根、床、手すり壁、軒天(上げ裏)、庇等 外壁、手すり壁等
開放廊下・階段、バルコニー等の軒天(上げ裏)部分
外壁・手すり壁等
外壁目地、建具周り、スリーブ周り、部材接合部等
(鋼製)開放廊下・階段、バルコニーの手すり
(鋼製)屋上フェンス、設備機器、立て樋・支持金物
(雨掛かり部分)
屋外鉄骨階段、自転車置場、遊具、フェンス
(鋼製)住戸玄関ドア
②鉄部塗装
(鋼製)共用部分ドア、メーターボックス扉,手すり
(非雨掛かり部分)
(アルミ製・ステンレス製等)サッシ、面格子、ドア
③非鉄部塗装
(ボード、樹脂、木製等)隔て板・エアコンスリーブ
住戸玄関ドア、共用部分ドア、自動ドア
6 建具・金物 ①建具関係
窓サッシ,面格子,網戸、シャッター
開放廊下・階段、バルコニーの手すり、防風スクリーン
②手すり
屋外鉄骨階段
③屋外鉄骨階段
④金物類(集合郵便受 集合郵便受、掲示板、宅配ロッカー等
笠木、架台、マンホール蓋、階段ノンスリップ
屋上フェンス等
⑤金物類(メータボック メーターボックスの扉、パイプスペースの扉等
管理員室、集会室、内部廊下、内部階段等の壁、床、天井
①共用内部
7 共用内部
エントランスホール、エレベーターホールの壁、床、天井
①屋上防水(保護)
②屋上防水(露出)
③傾斜屋根
④庇・笠木等防水
3 床防水
①バルコニー床防水
②開放廊下・階段等床防
4 外壁塗装等 ①コンクリート補修
②外壁塗装
③軒天塗装
④タイル張補修
⑤シーリング
5 鉄部塗装等 ①鉄部塗装
Ⅲ 設備
(以下省略)
図 改修書式による工事費の構成
図 長期修繕計画標準書式の修繕工事項目(一部)
(注)
『平成15年版建築工事内訳書標準書式・同解説』より
(注)国土交通省住宅局市街地建築課マンション政策室(H20.6)資料より
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2.2 建築積算ソフトウェアの中での部分別コスト情報の扱い
通常の建築積算ソフトは工種別書式によるアウトプットのみができるものが多い。だが、積算業務
の実態は、部屋別・部分別での図面からの数量拾い作業を基礎にしているから、実は部分別でコ
スト情報を取り扱っているともいえる。ところが、拾った部分別数量は、値入れ作業のためにわざわ
ざ工種別に集計し直している。この集計作業には大変な手間がかかっていた。数量積算基準が制
定された当時はコンピュータが一般には利用されていない事情があったため、一部の工種では部
分別に数量を算出するが、それを工種別に直す過程で、略算法または統計値を利用していたこと
も要因になっている。
ただ現在は、コンピュータのプログラムの中では、数量拾い作業で得た部屋別・部分別の情報
は保持しているから、価格情報を部分別に整理し直すことは基本的にはそう難しくはないはずであ
る。今年度の研究では、大手ゼネコン等でもかなり広く使われていると聞いたある建築積算ソフトウ
ェアに注目し、工種別と部分別の相互変換の仕組みなどについて、そのソフトウェアの開発・販売
を担う企業の担当者にヒアリング調査を実施し、その内容を聞いた。
このソフトの開発開始は20年くらい前から、部位部分別内訳によって施工上の数量管理が可能
なものとして開発したとのことであった。約10年前からゼネコン内部の原価管理の元となるデータと
して使用できるように改良した。さらに約5年前からはユーザーの要望により「部分工種別」に対応
できるようにした。部分別内訳は、紙に印刷すると大量になるのは欠点だが、コスト管理やデータの
蓄積はこのレベルで行う必要性が高いとのことである。ヒアリングの中では、部分別のうち、内部は
天井、壁、床という区分で共通の理解があるが、外部をどう分けるかについては統一的なものがな
いという指摘もあった。このソフトは大手ゼネコンのほか、デベロッパー、住宅メーカー等での多数
の導入実績がある。
仕上積算システ ム
(同社の別製品 )
図2 建築コスト情報の連係(ヒアリング調査を行ったソフトのパンフレットより引用。一部加工。)
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2.3 企業会計基準-IFRS の影響
建物は完成引渡後、有形固定資産として扱われる。ここでは、有形固定資産に関する企業会計
基準 9と貸借対照表・帳簿価額算出に関し必要となるコスト情報を取り上げる。
一般に、法人が所有する減価償却資産は、区分表示に応じて取得原価(金額)、耐用年数、残
存価額、償却方法、償却累計額などを計算し、財務諸表等を作成しなければならない。有形固定
資産の耐用年数については、物理的減価と機能的減価の双方を考慮して決定されねばならない、
との意見が示されている。 10
2005年より、日本の企業会計基準を制定する企業会計基準委員会(ASBJ)において、国際財
務報告基準(IFRS)とのコンバージェンス 11 が進められている。(2010(平成22)年3月期より金融庁
は日本企業による IFRS の任意適用を認めた。2012(平成24)年3月現在、IFRS の強制適用の是
非に関する金融庁の判断を延期した状態である)。経済のグローバリゼーションの流れを考慮する
と、大手上場企業や海外に進出する機運の高い一部中堅上場企業等では、IFRS を適用した財務
諸表を作成し公表することが当たり前となる時代が来るだろう。
IFRS は、当初認識後の資産測定において、資産項目の取得原価の総額に対し重要性のある
各構成部分については、個別に減価償却を行う必要があることを明確にした。構成要素、耐用年
数、資産除去などは企業の経験に基づく判断によるとしている。12
その場合、建物所有者は、建物の構成要素の取得原価、残存価額そして耐用年数(必要な場
合キャッシュフロー)は一連の有形固定資産情報として扱い、取得原価を「重要性のある構成部分」
に分割できる明細を入手することで、より企業会計の目的に適う結果が得られるだろう。
企業会計基準は、独立行政法人に対しても原則として適用される。企業会計基準の改正を受
けて、総務省は2010(平成22)年に関連する独立行政法人会計基準の改訂を行った。今後は、地
方公営企業会計制度についても見直しが進められることとなっている。
2.4 公会計改革と資産台帳整備
財政規律の保持と財政の透明性確保は常に重要な課題である。地方公共団体においては、地
方行政改革そして公共経営のアカウンタビリティ確保や行政内部のマネジメント強化等を目的 とし、
公会計に企業会計の考え方を取り入れ、発生主義による貸借対照表等の財務諸表を作成・公表
が進められてきた。
9
会社法第 431 条には「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」と記載されてい
る。計算に関する事項等は「会社計算規則」(平成 18 年 2 月 7 日 法務省令第 13 号)参照。
一般に公正妥当と認められた会計原則を GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)という。「各国の会計基準や解釈
指針、法律、税制、商習慣などによって正式な会計処理であると広く認められている方式のこと。米国会計基準は US-GAAP、
日本の企業会計原則と企業会計基準は J-GAAP などと呼ばれる。(NIKKEI 特集:IFRS NAVI 「国際会計基準」キーワードよ
り)」
金融商品取引法第 193 条については、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和 38 年 11 月 27 日大蔵
省令第 59 号、最終改正平成 24 年 3 月 26 日 内閣府令第 11 号)で「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」を説明
している。
10
「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」連続意見書第三 有形固定資産の減価償却について 第一
企業会計原則と減価償却 八 耐用年数の決定 (昭和 35.6 大蔵省企業会計審議会)
11
日本の企業会計基準に国際的なルールを入れ、それに合わせていこうとすることをコンバージェンスという。例として固定資
産の減損会計(2005.4 より適用)、資産除去債務会計(2010.4 より適用)など。
12
IAS 第 16 号「有形固定資産」第 43 項、44 項、57 項参照。IAS16 号は自己使用不動産類を対象とする基準である。
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東京都は2006年4月から単式簿記・現金主義会計に追加する形で、一般会計・特別会計(一部
例外あり)に対し複式簿記・発生主義会計を全面的に導入した。総務省は同年の「地方公共団体
における行政改革の更なる推進のための指針」(事務次官通知)で、全ての地方公共団体に対し、
2011年度(一部2009年度)までに発生主義会計・複式簿記の導入と、財務4表(貸借対照表(バラ
ンスシート、B/S)、行政コスト計算書(P/L)、資金収支計算書(CF)、純資産変動計算書)を整
備又は4表作成に必要な情報開示を行うよう要求した。
発生主義会計は、資産情報やコスト情報を提供し、財政の効率化・有効化を明らかにする。資
産・負債マネジメントの考え方は、世代間負担の公平性に配慮した長期的意志決定時に有効であ
る。(なお企業会計と異なり、公会計では提供したサービスの質・量という非財務情報も財務情報と
共に重要である。)
総務省は新たな財務報告の作成に必要な各種手引き類を整備した。資産評価についても行政
の実務上の作業(資産台帳の整備、借金や退職金等の引当金の取り扱い、減価償却費の「費用」
認識など)の見直しを行った。「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引き」では、発生主
義会計における資産台帳整備の重要性を説明し、資産評価基本ルール①公正価値の採用、②3
年毎の再評価(土地・インフラ対象外)、③開始時に再調達価額の利用 を打ち出している。そこで
は耐用年数の異なる資産は別個に把握し減価償却すること、例として本体と耐用年数が異なる付
属設備を区分して償却し、設備の入替を行った場合には取り除いた設備の除却と新規設備の追
加にも触れている。このことは、改修内容から修繕費、資本的支出、資産の除却の有無を判断・整
理するという、帳簿価格に反映する前までの一連の事務の必要性を示している。
今後は、家屋を部分別で評価する固定資産評価要領や、公正価値と再評価の考え方を示す
国際公会計基準についても注目したい。
2.5 建築積算の未来
IFRS が規定する取得以降の資産測定の原則では、構成要素、耐用年数、資産除去などは
個々の経営判断により決定するものとされているが、これは大沢(2010)などの日本の解説書で、
「建築物の物理的構成(コンポーネント)」、「コンポーネント・アカウンティング」等と表現 しているも
のである。通常、建物は異なる耐用年数や消費パターンをもつさまざまな部分で構成されている。
これらは耐用年数期間中に個別に取り替えられる。コンポーネントの区分の原則は、資産としての
認識と取替の場合に、認識が中止できる程度に各項目をできるだけ構成部分に分けることである。
新築時の資産認識のスタートは工事費内訳書であり、これが証拠になる。したがって、コンポーネ
ント化に対応するためには、工種別内訳では不十分で、“部分別”内訳が必要となる。
2012年3月に BELCA 編『IFRS 対応 建物の耐用年数ハンドブック』(中央経済社)が出版され
話題になっている。建物の主要部位・部材別に物理的耐用年数を集客力と絡め設定したもので、
ライフサイクルの面からこのルールに合致する基礎資料を目指したものといえる。
IFRS が上場レベルの企業から一般化すれば、これに関わる建築工事は部分別の内訳整理が
必須のアウトプットとなるであろう。2.4で述べたように、国や自治体の公物管理にもこの考え方は取
り入れられつつあり、いずれ公共建築物にも及ぶ話である。
後述するように、建物のイニシャル・コストを“部分別”で表現する方式は米国 ASTM 工業規格の
- 103 -
中に“UniFormat II”があり、英国では伝統的な方式を NRM(New Rules of Measurement)として体
系的に制定しなおしている。いずれも部分別の概念を取り入れることで、建物のライフサイクルの中
で一貫してコスト情報を取り扱える仕組みを備えている。日本の建築積算基準は、その運用方法を
含めて、上述のような状況変化に対応することが求められていると考えられる。
官民の積算関係者によって部分別内訳書標準書式が制定された30数年前とはちがい、今のパ
ソコンは劇的に進化している。設計図からの数量拾い作業はもともと部分別のはずだから、内訳書
を部分別で出すことは容易なはずである。すなわち、部分別内訳を作成したり、活用したりする技
術的な制約条件は遙かに小さくなっている。一方では、BIM や IFRS の適用が建築分野にも一般
化しつつある。このような状況変化に対応して、建築主に“部分別”での内訳書を提出することは、
積算担当者の社会的な役割といってよいほど重要なものになるのではないか。
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3 NRM—英国の新しい測定ルールの動向
3.1 英国の建築積算基準の系譜
2011年3月に実施した当研究所の英国積算事情調査において、積算職能の母体となっている
RICS が、NRM(New Rules of Measurement)という3部シリーズの制定/出版する動きを知った(調
査のとりまとめ詳細は昨年度研究年報に掲載)。
英国は QS(Quantity Surveyor)発祥の地であり、コストプランニングの考え方を生み出した国で
ある。1921年が初版の SMM(Standard Method of Measurement)という建築積算基準は、英国内は
もとより、その考え方は広く英国圏の国々に広まり、日本の積算基準にも影響を与えた。SMM は建
築数量(BQ:Bills of Quantities)の定義を与え、QS の仕事の標準化に寄与する業務基準である。
それは建設ビジネスの変化に合わせる形で数度の改訂を重ね、英国では 1988年に見直された
SMM7(第7版の意)が現在、工事発注段階の積算実務において広く使われている(なお、1998年
に部分改訂。なお、後述する NRM2に2013年1月以降は置き換わる予定)。また、第二次大戦の戦
後復興期にはじまった建築ブームを背景に、建築コストの概算の必要性が高まり、そこからコストプ
ランニングという考え方が生まれた。それを実現するのに必要な建築コスト情報を収集する内訳書
式として、SFCA(Standard Form of Cost Analysis)が1961年に定められた。これも QS が普通扱っ
ている業務基準の一つである。この書式で集められた建物の価格情報が、ヒストリカルデータとなり、
プロジェクト初期の概算などに活用されている。ほかにも改修工事やメンテナンス工事用のコスト情
報収集書式(POCA:Standard Form of Property Occupancy Cost Analysis)等もある。
3.2 NRMについて
RICS ではこのような伝統的なコスト情報の取扱いルールを作り直している。BIM との整合を図り、
建設プロジェクトの企画段階から建設・運用・廃棄の最終的な段階に至るまでを一貫して取り扱え
る新しい業務基準一組(The RICS New Rules of Measurement Suite)を2009年から順次制定中で
ある。NRM は次の3巻から構成されると発表されている。なお、NRM と整合を図ったコスト分析
(SFCA)の BCIS エレメント別標準書式の新版(NRM 版)は2012年4月発表された。
nrm3
(未刊)
図3 RICS の NRM 三部シリーズの表紙
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
NRM1:Order of cost estimating and cost planning for capital building works(2009年初版、
2012.4に第2版出版、2013年1月から有効。サブタイトル・内容の修正あり。)
建築工事資金のための当初目標原価および(実施設計までの)コストプランニングに関する
基準。直接工事費(建物のコンポーネントのコスト)と間接費だけでなく、企画・設計チーム報酬
や他の開発/プロジェクト費用等を含む建設プロジェクト全体のコストをカバーする内容である。

NRM2:Detailed measurement for buikding works(2012.4に初版、2013年1月から有効、現在
の建築積算基準である SMM7は同時に廃止される。SMM に代わる予定の積算基準。)
入札価格を算出する目的で、建築工事の詳細な測定と記述についての基本的なガイダンス
提供するもの。数量明細書 BQ(bills of quantities)や資産プロジェクトあるいはメンテナンス・
プロジェクト用の料率一覧表(schedule of rates)を示すもの。

NRM3:Order of cost estimating and cost planning for building maintenance works(2013年秋
出版予定)
建築メンテナンス工事の当初目標原価およびコストプランニングのルール。この巻は、メンテ
ナンスやライフサイクル取り替え工事まで取り入れた総事業費のコストプランの測定を可能にす
るもの。コンサルタント報酬やマーケティングコストなど非建設関連分野の総コストも考慮する。
NRM1は資本的支出を、NRM3は維持管理運営の支出を提供し、共に使用することで、資産
である建物の工事および保守作業のよいコストマネジメントの基礎を提供する。
(NRM Introduction より。NRM3の説明は、PFI など基本設計および建設前段階のコスト計画、
建築プロジェクトの建設前過程の詳細なプランへの対応も含むと思われる。)
図4 NRM“一組”(RICS の Ecobuid 2011ワークショップにおけるプレゼンテーション資料より)
(注)www.rics.org/site/download_feed.aspx
なお、本図は RICS の公式文書ではないことに留意。
この背景として、契約方式が進化し PFI やデザイン・アンド・ビルドといった調達方式が導入され
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たこと(RIBA アウトラインワークプラン2007では USE 段階が組み込まれ、こうした多様な契約方式に
対する業務の進め方が研究されている)や、2005年の EU 域内の上揚企業に対する IFRS に準拠し
た連結財務諸表の作成の義務付けが、新規建築プロジェクトに対する調達と資産マネジメント手
法に影響を及ぼしているものと考えられる。なお、英国の会計基準の多くは IFRS を基礎とするが修
正や追加も行われている。
本研究では NRM1の初版(2009年刊行)を入手し、その主要部分を研究担当者が数か月の期
間にわたり輪読した。そして、その成果を日本語の仮訳としてまとめた。詳細は本報告別冊 14 を参
照いただきたい。
NRM は IFRS(国際会計基準)での償却資産の評価における「コンポーネント・アカウンティング」
の考え方にも整合的なようである。その点の詳細は未検討で、次年度以降研究を深めたいと考え
ている。また、このような建物のライフサイクルの中でのコスト情報の取扱いという点に関しては、英
国のみならず、米国・カナダや欧州諸国でも非常によく似た業務基準を制定している例がある。有
名なのは米国・カナダの仕様書協会(CSI 及び CSC)や連邦レベルの公共発注機関である GSA や
米国国立研究所 NIST(National Institute of Standards and Technology:アメリカ国立標準技術研
究所)がその制定に絡むユニフォーマット(UniFormat)、マスターフォーマット(MasterFormat)とい
う標準内訳書式がある。前者は部分別内訳書式の一種であり、コンポーネントの概念を扱う。後者
の工種別内訳書式との連動性もある。このことについては、2009年秋に行ったコスト研米国調査の
報告で触れている(詳細は2009年度の研究年報にまとめた)。今年度の研究ではその最新事情を
フォローしていないが、NRM や IFRS との関係の追究等を含め、今後も引き続き注目し、調査・研究
する予定である。
3.3 NRMのコスト計画は何故エレメント別手法に集約されるのか
一般的に、ある複合的な要素からなる単体を評価し価格算出する場合、全体を何らかの手法で
部分に分解し、その一つ一つの金額を求めて合計する手法が考えられる。建築はそうしたものの
一つと考えられる。
NRM は企画段階の概算(当初目標原価)算出手法として床面積法、機能単位法、エレメント別
手法の3種類を説明し、正式のコストプラン段階はエレメン別手法のみを説明する。NRM のエレメン
ト別手法は、目標を構成要素の大分類、中分類、小分類、それ以上と順次細分化して内容を確定
することで、建築コストの精度を高める手法である(裏付けとして、コスト分析やベンチマークテストを
併用)。
価格の合理的な見積りを求める発注者にとって望ましい手法は、概算から詳細積算までルール
付けされた構成要素による細分化が可能で、かつ事案固有の特性に対し、構成要素単体あるい
は組合せ等により変化への追随性を持つものといえよう。床面積法または機能単位法は、構成要
素の細分化あるいは組合せに対し一定の限度がある。一方、エレメント別手法は単位の細分化に
対し必要とするレベルを設定する事が可能で、かつ、細分化すればするほど入札価格算出手法に
近づく。ここに、エレメント別手法の優位性がある。統計学と融合させ、BIMとの相互利用を促進し、
14
RICS が 2009 年に刊行した NRM1(初版)の次の部分の抄訳及び輪読者による解説を付した。序文、パート 1~4、付録(全)
のうち、抄訳した部分は、序文、パート 1~3(全訳)、パート 4 の冒頭部分 (pp.55-72)及び付録 F である。
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各構成要素について IT を使用した大量のデータ処理が可能となれば、さらに有利な情報を得るこ
とができるだろう。
コスト計画を支える関連資料の例としては、

発注者自身が保有するデータ

BCISのような公表された資料(単価作成の資料)

コストアナリシスとベンチマークテストなど(専門家向け解説本)

英国で広く活用されている SFCA 標準書式(今後は、SFCA の NRM 版)
などが挙げられる。
3.4 これらを含めて、何が new なのか
SMM7の目的は、a uniform basis for measuring building works and embodies the essentials of
good practice(建築工事を測定する一律的基準と優れた取組みの要点の具体化)の提供 15であっ
た。対する NRM は、建築プロジェクトの調達を「建物の計画から完成まで一貫した測定手法と測定
する項目を構造化する必要」から作成されている。建築工事の発注者あるいは建物所有者 の、ラ
イフサイクルを通した多様なニーズに対し、一貫したサポートを目標の中心に据えたことが、特徴で
あり新しさなのだ。
(今後発表される NRM3の内容を確認すべきではあるが)NRM1は、建設過程で必要とする概算
工事費算出の部分別手法のみならず、PFI 事業における事業費算出の一手法として、更に有形
固定資産評価における既存建築物の再調達価格(replacement cost)算出に関する会計上の見積
手法としても理解すべきであろう。
<参考文献>
公益社団法人ロングライフビル推進協会編『IFRS 対応 建物の耐用年数ハンドブック』中央経済社, 2012.3
大沢幸雄『IFRS コンポーネント・アカウンティングの実務』中央経済社, 2010.4
有限責任監査法人トーマツ編「トーマツ④会計セレクション 固定資産会計」清文社 2011.5
15
SMM7 General Rules(総則)のイントロダクション(1.1)より引用。
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