状態空間法を用いた欠損のある地震時系列のモデリング 東京大学 生産技術研究所 近江 崇宏 統計数理研究所 尾形 良彦 東京大学 生産技術研究所 平田 祥人 東京大学 生産技術研究所 合原 一幸 データの欠損は統計解析の結果に大きな影響を与えうるため、欠損の統計的な性質を 適切に解析に取り入れることが重要である。例えば地震の発生データに関しては、系 統的に規模の小さい地震が観測から漏れてしまうということが知られている。さらに、 大きな地震の直後には観測網の地震検出能力を超えるおびただしい数の余震が起こ るため、一時的に検出率が下がり、比較的大きな地震も観測から抜け落ちてしまうこ とがある。我々はこれまで、このような欠損のある非定常なデータを状態空間法を用 いて解析する手法を開発してきたが[1]、今回の講演では特に推定手法の理論的な側面 についての解説を行う。 我々の方法では、まず観測から漏れた地震を含め、実際に起こっていた地震のマグニ チュードはグーテンベルク・リヒター則に従うとする。すなわち、地震の発生頻度は マグニチュードの減少に対して指数的に増加する。そして各地震が検出される確率が、 そのマグニチュードの減少とともに下がることを、累積正規曲線(誤差関数)でモデ ル化する。本研究では、この関数自体が時間に依存して変化する非定常性を状態空間 法によって推定する。 時間が許せば、欠損を考慮した地震発生の統計モデリングや予測への応用についても 議論したい。 参考文献 [1]:T. Omi, Y. Ogata, Y. Hirata & K. Aihara, “Forecasting large aftershocks within one day after the main shock”, Scientific Reports (2013).
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