T - JAさっぽろ

どうなる?わたしたちの暮らし
TPPを考える
「TPP」という言葉が盛んにメディアで取り上げ
られるようになったのは、昨年十月の臨時国会冒頭
において、菅首相が唐突に「TPP参加検討」を表
明したことに端を発しています。
PPとは、すべての関税を廃止し、貿易の完全
T
自由化を目指す協定のことで、平成二十三年六月、
つまりあと三ヶ月後には、参加か否かの結論が政府
から出される予定になっています。
「貿易の完全自由化」
。
貿易という言葉から、TPPには農業や工業ばか
りが関連しているような印象を受けますが、実はそ
うではないことを皆さんはご存知ですか。
今回の特集では、TPPがわたしたちの暮らしに
どのような影響を及ぼすのかを、考えてみたいと思
います。
JA SAPPORO NIJI — NO TAIJYU ● 1
どうなる?わたしたちの暮らし
TPPを考える
WTOも認めている協定
WTO
(世界貿易機関)
平等に貿易をするための機関
(環太平洋連携協定)
(自由貿易協定)
整 を 図 り、 自 国 で 生 産 さ れ る 製 品 が、
輸入品に押されるのを防いでいます。
当 然、 輸 出 の 場 合 は そ の 逆 で、 日
本 か ら 輸 出 し て い る 品 目 の 中 に も、
られています。
外」として関税をかけることが認め
が、国同士の約束の中で、一部に「例
関税をかけない自由貿易が基本です
ん で 貿 易 を し て い ま す。 E P A で は、
シアなど十三カ国とEPA協定を結
現 在、 日 本 は W T O に 加 盟 し、 さ
らにシンガポールやメキシコ、マレー
ら さ れ、 衰 退 し て し ま う こ と が 理 由
上 が っ て い る の は、 今 ま で 関 税 に よ
れ に 対 し、 至 る と こ ろ で 反 対 の 声 が
く し て し ま お う と い う も の で す。 そ
現 在、 日 本 政 府 が 参 加 を 検 討 し て
い る T P P は、 こ の 関 税 を 完 全 に 無
できるのです。
け ら れ な け れ ば、 利 益 の 増 大 が 期 待
TPPに参加することで、
今までの貿易と
何が変わるの?
相手国との話し合いで関税をかけら
関 税 は、 自 国 で 生 産 さ れ た 製 品 と
安 価 で 輸 入 さ れ た 品 々 と の 価 格 に、
なのでしょうか?
れ て い る も の が あ り、 も し 関 税 が か
大きな開きが出ないよう設定される
・コンニャク
・米
・落花生
・でんぷん
・小豆
・バター
・砂糖
・大麦
・小麦
・脱脂粉乳
1706%
778%
737%
583%
403%
360%
305%
256%
252%
218%
り守られてきたものが価格競争にさ
も の で す。 例 え ば 左 下 表 の よ う に 日
どうやらそれだけではないようで
す。
2 ● JASAPPORONIJI — NOTAIJYU
本 は、 米 や バ タ ー、 砂 糖 な ど の 品 目
日本が輸入品に大きな関税を
かけている農産物
TPP
FTA
品目ごとの関税率を決めるのは WTO。関
税を平等に減らす方向で話し合っています
が、各国の立場や意見が違うので、なかな
か決められません。そこでできたのが…
に大きな関税をかけて販売価格の調
関税の撤廃により、消費者
はこれらの品目(輸入品)
を安価に手にいられるよう
になるけれど…?
ティーピーピー
エフティーエー
現在 153 カ国が加盟し、共通のルー
ルに沿って貿易を行なっています。
EPA で認めていた関税の
例外を認めず、あらゆる分
野において関税ゼロの自由
貿易を行なうために、太平
洋を囲む国の間で結ぶ協定
「モノ」の貿易について貿
易の自由化を図るために結
ぶ協定
ダブルティーオー
WTO 加盟国のなかの、いくつかの国・地域が貿易の
自由化を図るために結ぶ協定
イーピーエー
EPA
(経済連携協定)
TPPって
そもそも何?
「モノ」の貿易だけではなく、
「投資」などの分野も含めて関税をかけない
貿易の自由化を取り決める協定。しかし参加しているほとんどの国が、互
いに 1 割程度の品目は例外として、関税をかけてもよいと考えています。
「この国のかたち」
さえも
変えてしまうほど、
大きな問題
PP参加検討の意向
昨年十月にT
が 表 明 さ れ、 そ の 内 容 が 不 明 確 な ま
ま、 複 数 の 閣 僚 か ら 参 加 に 積 極 的 な
発 言 が 相 次 ぎ、 わ た し た ち 農 業 関 係
団体は大変危機感を募らせています。
J A北 海 道 中 央 会 で は 参 加 検 討 が
表明された翌月、昨年十一月に、漁協・
森 林 組 合 と 共 に「「 こ の 国 の か た ち 」
を問う」と題したTPP参加反対総
決 起 大 会 を 開 催 し ま し た。「「 こ の 国
のかたち」を問う」というタイトルは、
TPPと医療?
公的保険制度崩壊の
危機も想定されている
皆さんは農業や漁業の関係者だけ
で は な く、 医 師 会 も T P P 参 加 を 問
題視していることをご存知でしょう
か。 日 本 が T P P に 参 加 す る こ と に
な れ ば、 医 療 に も 海 外 の 企 業 な ど が
参入することになります。
PP参加国のなかのひと
例えばT
つ で あ る ア メ リ カ は、 公 的 保 険 制 度
が な い 国 で す。 国 民 は 自 ら の 意 思 で
民 間 保 険 に 加 入 し、 診 療 に か か る 費
用 を 賄 う こ と に な っ て い ま す が、 保
立 っ て い ま す よ ね。 で す か ら、 安 価
関連した職に就いている人で成り
農 業 や 漁 業 の 従 事 者、 そ し て そ れ に
る 問 題 で す。 北 海 道 の 多 く の 町 は、
北 海 道 の 一 次 産 業 に つ い て 言 え ば、
そ れ は も う、 地 域 の 存 続 に も か か わ
す。
と い う 思 い か ら、 付 け ら れ た も の で
あることを道民の皆さんに伝えたい
えも変えてしまうほど大きな問題で
ことを想定し、「この国のかたち」 さ
らゆる場面に影響を及ぼすであろう
話 で は な く、 わ た し た ち の 生 活 の あ
ような一次産業だけに影響を及ぼす
し て い る 作 物 の ひ と つ で す。 T P P
高 い 関 税 を か け て、 輸 入 を ブ ロ ッ ク
料 を 作 っ て い ま す が、 砂 糖 は 日 本 が
ど の 甘 味 資 源 作 物、 つ ま り 砂 糖 の 原
道 東 で は 玉 葱 の ほ か に も、 ビ ー ト な
る 道 東 方 面 で 多 く 作 ら れ て い ま す。
内 で は、 広 大 な 耕 作 面 積 が 確 保 で き
道、 全 国 へ と 広 ま っ て い き、 現 在 道
近郊で盛んに作られていたものが全
の 作 付 発 祥 の 地 で あ り、 札 幌 と そ の
す よ ね。 も と も と 玉 葱 は、 札 幌 が そ
し…例えば札幌は玉葱が基幹作物で
い ら っ し ゃ る か も し れ ま せ ん。 し か
の影響を受けないと考えている方が
ご自身の作られている品目はTPP
話するしかないのが現状なのです。
「想定される」 という仮定のうえでお
皆 さ ん に こ う し て お 話 す る に し て も、
し た ち に き ち ん と 伝 え ら れ て い な い。
れ ま す が、 そ の 情 報 が 政 府 か ら わ た
影響を及ぼすであろうことが想定さ
わたしたちの生活のあらゆる場面に
ど の 話 に 戻 り ま す が、 T P P 参 加 は
し て い る わ け で は あ り ま せ ん。 先 ほ
し か し わ た し た ち は、 農 業 だ け の
ことを考えてこの問題に警鐘を鳴ら
起こり得るのではないでしょうか。
ね。 こ う い う こ と が、 様 々 な 品 目 に
の玉葱生産者は困ってしまいますよ
道 東 の 玉 葱 生 産 量 が 増 え る と、 札 幌
今 度 は 玉 葱 を 作 る か も し れ ま せ ん。
で し ょ う か ら、 公 的 保 険 を 使 え な い
資本の民間保険会社も進出してくる
か も し れ ま せ ん。 同 時 に、 ア メ リ カ
次々と自由診療を行なうようになる
院 も そ れ に 追 随 し て 営 利 主 義 に 走 り、
ら、 ど う な る で し ょ う か。 日 本 の 病
さ て、 こ の ア メ リ カ の、 自 由 診 療
を行なう病院が日本に進出してきた
らないという人もいるのが現実です。
な け れ ば な り ま せ ん。 そ の た め、 な
を 受 け る に は、 高 額 な 費 用 を 負 担 し
で、 保 険 に 加 入 し て い な い 人 が 治 療
自由に決めることのできる自由診療
す。 診 療 に か か る 費 用 は、 病 院 側 が
険に加入していない国民も多くいま
な輸入品の増加により一次産業が立
参 加 に よ り 関 税 が 撤 廃 さ れ、 海 外 か
の保険料を支払わない人が増えるこ
保 険 が 日 本 の 主 流 に な り、 公 的 保 険
診 療 が 増 え る と、 ア メ リ カ 型 の 民 間
か に は 体 調 が 悪 く て も、 病 院 に か か
ち 行 か な く な れ ば、 多 く の 人 が 職 を
ら安い砂糖が大量に入ってきたら…
柴田 倫宏さん
失うことになるでしょう。
JA北海道中央会
基本農政対策室 課長
今 ま で 砂 糖 を 作 っ て い た 人 が 転 作 し、
TPPへの参加は、わたしたちの生活の
あらゆる場面に影響を及ぼすでしょう。
しかしその情報は、政府からわたしたちに
きちんと伝えられているでしょうか。
入江 千春さん
農 業 を さ れ て い る 方 の な か に も、
TPP参加というのが農業や漁業の
JA北海道中央会
基本農政対策室 室長
JA SAPPORO NIJI — NO TAIJYU ● 3
どうなる?わたしたちの暮らし
TPPを考える
24もある!TPP交渉の対象となる分野
SPS
(中小企業、競争、
開発、規制関連協力)
サービス
TBT
(金融)
は 長 寿 大 国、 健 康 大 国 で は な く な る
問 題 点 が 現 実 に な る と、 も は や 日 本
ま す。 T P P 参 加 に よ り、 そ れ ら の
医 師 会 で は ほ か に も、 日 本 人 医 師
の海外流出などの問題点をあげてい
が懸念されているのです。
れるものではなくなってしまうこと
日 本 の 医 療 は、 誰 も が 平 等 に 受 け ら
て 公 的 保 険 制 度 が 崩 壊 し て し ま う と、
な る か も し れ ま せ ん。 こ の よ う に し
そ う い う 人 は、 掛 金 を 納 め ら れ な く
担 に な っ て い る 人 が い る の で す か ら、
で さ え、 公 的 保 険 の 掛 金 が 生 活 の 負
公 的 保 険 の 加 入 者 が 減 る と、 そ の
分 だ け、 掛 金 が 上 が り ま す よ ね。 今
とが予測されます。
め て い る。 し か し 今 も 日 本 は 海 外 か
て い ま す し、 消 費 者 も 安 全 安 心 を 求
国 は「 食 の 安 全 安 心 」 を 守 ろ う と し
こ と は ご 存 知 の 通 り だ と 思 い ま す。
基 準 値 も、 日 本 が 海 外 に 比 べ 厳 し い
時 に は、 安 全 な 部 位 だ け を 輸 入 す る
にアメリカでBSE問題が発生した
い る と 思 い ま す。 日 本 で は、 数 年 前
多くの方が日ごろから、「食の安全
安心」を気にかけながら生活されて
のです。
で し ょ う か。 そ れ が、 大 き な 問 題 な
の 影 響 を 検 討 す る こ と が、 可 能 な の
で、 こ れ ら す べ て の 分 野 に お い て そ
お い て も、 示 さ れ て い な い の で す。
と い う 規 制 を か け ま し た し、 農 薬 の
果 た し て、 残 り わ ず か な 時 間 の な か
でしょう。
ら、 そ れ ら の 基 準 の 見 直 し を 迫 ら れ
て い る 状 態 で す。 T P P に 参 加 す る
と、 そ の 要 求 は よ り 強 い も の に な る
で し ょ う。 そ し て、 安 全 安 心 が 脅 か
されるのは「食」だけではありません。
ます(上表参照)。 前述の医療の問題
実はTPP交渉の対象となる分野
は、「農業」 を含めて二十四にも亘り
ないでしょうか。
「職」 が今以上に不安定になるのでは
外 国 人 が 移 住 し て き た ら、 日 本 人 の
実は二十四もある!
TPP交渉の
対象となる分野
は、 い く つ か あ る 「 サ ー ビ ス 」 の 分
「労 働」 の 分 野 の 解 禁 に よ り、 多 く の
野 の ど こ か に 分 類 さ れ る よ う で す が、
わ た し た ち は、 決 し て 貿 易 の 自 由
化に反対しているわけではありませ
て い く べ き だ と 思 い ま す し、 T P P
ん。 し か し、 今 ま で 国 が 守 っ て き た
が、 二 十 四 に も 亘 る と い う 話 自 体 が、
への参加により国がどう変わってい
それもはっきり示されているわけで
本年二月に入ってようやく開示され
く の か と い う 大 き な 問 題 を、 も っ と
重要品目については、これからも守っ
た も の で、 そ の 具 体 的 な 内 容 に つ い
ゆ っ く り 時 間 を か け て、 検 討 す べ き
加により貿易交渉の対象となる分野
て は、 結 論 が 出 さ れ る で あ ろ う 六 月
だと考えているのです。
は あ り ま せ ん。 そ も そ も、 T P P 参
まであと三ヶ月ほどしかない現在に
4 ● JA SAPPORO NIJI — NO TAIJYU
横断的事項特別部会
労 働
(農業)
知的財産権
(検疫、及びそれ
(繊維・衣料品)
に付随する措置)
市場アクセス
競争政策
(貿易上の
技術的障害)
市場アクセス
協 力
サービス
環 境
(一時入国)
紛争解決
サービス
投 資
(工業)
政府調達
市場アクセス
貿易円滑化
(電気通信)
制度的事項
サービス
サービス
貿易保護
(クロスボーダー) (e-commerce)
原産地規則
首席交渉官
協議
TPP に関連する分野として主に話題に上るのは、「市場アクセス(工業)」と「市場アクセス(農業)」です。しかし、それ
以外にも多くの分野が TPP に関連しています。上記のような一覧が政府から公開されたのは、本年 2 月のこと。そして例
えば…「制度的事項」や「環境」という分野の名称だけを見ても、具体的にそれがわたしたちの生活にどう影響してくるのか、
わかりませんよね。その具体的な内容の情報が、現段階では政府から示されていないのです。あと 3 ヶ月のうちに、これら
のすべての分野について、わたしたちの生活への影響を示し、そして理解を得ることが、果たして可能でしょうか。
その約束 、
どうなっ ち ゃ う の ?
ていますが、同年十月のTPP参
加検討を受け農林水産省が作成
し た「 国 境 措 置 撤 廃 に よ る 農 産
「TPP参加」に
対する今後の
JAグループの活動は
国産農作物の大幅な減少により、
物 生 産 等 へ の 影 響 試 算 」 で は、
昨年三月、新たな「食料・農業・
農村基本計画」が閣議決定され
J A グ ル ー プ で は、 昨 年 十 一 月 に 開 催
さ れ た T P P 反 対 総 決 起 大 会 よ り、 重 要
う え で、 時 間 を か け て 国 民 の 合 意 を 図 る
食料自給率は十四%にまで低下
ま た、 地 球 温 暖 化 問 題 に つ い
て は ど う で し ょ う か。 一 九 九 七
必要性があることを訴えてきました。
ま し た。 そ こ に は E P A・
年に交わされた京都議定書以降、
品 目 の 関 税 維 持、 そ し て T P P 参 加 に よ
国 内 農 業・ 農 村 の 振 興 等 を 損 な
日本は国を挙げて二酸化炭素削
政府が何らかの結論を出すとされてい
る 本 年 六 月 に 向 け て、 再 度 決 起 大 会 の 開
すると予測されています。
うことは行なわないことを基本
減に取り組んできました。「エコ」
催 や、 新 聞 等 へ の 意 見 広 告 の 掲 載 を 行 な
FTAについて、「食の安全安心・
に取り組む」という方針が定め
と い う 言 葉 が、 至 る と こ ろ で 使
い、 皆 さ ま に ご 賛 同 い た だ け る よ う 取 り
ず日常生活や、営農を続けることにも危機感を覚えます。
今のままでは農家は減り、食糧自給率も低下してしまいます
ので、農業を守るためには国の対策が必要です。TPP参加への対
応として、農家への所得補償も検討されていますが、財源確保
の問題など、充分とはいえない内容です。今回のTPP参加だけの
話ではなく、農業政策がコロコ
り 起 こ り う る、 様 々 な 問 題 点 を 発 信 し た
られています。
わ れ る よ う に な り、 例 え ば レ ジ
組んでいきたいと考えています。
いますが、物を売ってくれなくなった場合を考えると、食に限ら
安 定 供 給、 食 料 自 給 率 の 向 上、
食料自給率については、現在の
四十%から、十年間で五十%にま
袋 の 配 布 が 廃 止 さ れ、 マ イ バ ッ
部長 で引き上げることを目標に掲げ
る間は物の値段が下がり、消費者にとってはメリットがあると思
クを持参するようになった
なども自由に輸入されることになります。外国が物を売ってくれ
り、 使 っ て い な い 電 気 を こ
うに考えますか?
まめに消すことを心がける
JAさっぽろ青年部
な ど、 一 人 ひ と り が 温 暖 化
日本がTPPに参加すると、農産物だけでなく生産資材や労働力
▲JAさっぽろでは 3 月 9 日(水)、ホクレンショップ新発寒
店において、青年部長と役職員が TPP 参加反対を訴える署
名活動を行ない、多くの方にご賛同いただきました。
木田 和良さん
皆さんは、この問題をどのよ
の 防 止 に 向 け て、 で き る こ
とから取り組んできたので
は な い で し ょ う か。 す で に
たくさんの食料を輸入に
頼 っ て い る 日 本 の フ ー ド・
マ イ レ ー ジ は、 現 在、 世 界
で ダ ン ト ツ の 上 位 で す。 例
関 税 が ゼ ロ に な る と、 そ れ
えばTPP参加により米の
だけ輸送の際に二酸化炭素
が 排 出 さ れ、 そ の 数 字 は 現
在の十倍にも膨れ上がるだ
ろうと予測されているので
す。
皆さんにはこれからも、
安全安心な日本の農産物を食べてもらいたい!
ロ変わることも問題だと感じて
いますが…。
我々青年部には、農業を守り、
そして未来へ引き継ぎ、消費者
に安全安心な農産物を提供する
責務がありますし、消費者の皆
さんには、生産者の顔が見える、
安全安心な国産の野菜を食べて
いただきたいと考えています。
TPP参加により日本の農業が変
わると、皆さんの「食」も変わ
ります。
JA SAPPORO NIJI — NO TAIJYU ● 5
どうなる?わたしたちの暮らし
TPPを考える
10%
約400億匹
国全体の農畜産物が4兆1千億円減って、今の約半分の規
農業のもつ役割は食べ物を作るだけではありません。さ
模になることが予想されています。これは国が農林水産業
まざまな種類の生き物が住める環境をつくり、洪水や土砂
に毎年費やしているお金の約1.7倍に当たります。
災害を防ぐという、多面的な機能を持っています。
なかでも、主食であるお米は1兆9千7百億円も減ってし
例えば水田がなくなると、オタマジャクシが約400億匹
まい、新潟コシヒカリや有機米といった付加価値の高いお
も減ってしまうと予測されています。それにより生態系が
米を除く90%が、輸入品に代わるといわれています。つま
崩れると、わたしたちの暮らしに思いもよらぬ影響が現れ
り、自家用を除けば日本の米で残るのは10%ほど。日本の
るかもしれません。
水田の90パーセントが荒れ地になりかねない状況です。
そして増水時に水を貯めてくれる水田がなくなること
子孫代々受け継がれてきた稲作の文化…一度荒らしてし
で、それに比例して洪水や土砂災害の危険性も高まります。
まうと、元の姿に戻ることは不可能でしょう。
数字で見る
TPP参加による影響
すべての関税をゼロにするTPPに参加すると、
日本の農業と農村はどのような影響を受けるのでしょうか?
農林水産省などの試算を参考に、その影響を数字で考えてみます。
80%以上
340万人
関税の廃止により日本の農作物の価格が下がっても、農
農業生産が大きく減ると、農産加工業や流通業など、地
家の所得を補填する「戸別所得補償制度」があるから大丈
域全体に影響が及びます。それにより、農林水産省の試算
夫ではないかという意見も聞かれます。しかし、最近の国
では340万人が職を失うとされており、その数字は、静岡
際価格で計算した場合、米だけでも最低1.7兆円程度、そ
県の人口と同等です。
れ以外の作物を含めると約3兆円が必要だと言われていま
特に農業が盛んな地域では、地域そのものの存続に関わ
す。国の財政が厳しい中、どのようにしてその予算を確保
る問題です。北海道では、農業の算出額は5,563億円の減
するのか、あいまいな議論では済まされません。
少、地域経済全体では2兆1,254億円の減少が予想されて
結果的に日本の食料自給率は40%から14%にまで下がる
います。さらに雇用では17万3千人、農家は3万3千戸が減
と予測されており、つまり、80%を海外に頼らなくてはな
り、地域経済の崩壊が懸念されています。
らない計算です。内閣府の世論調査でも、国民の90%が国
産の食料を望んでおり、食料の供給に不安を感じています。
JA北海道中央会監修
6 ● JA SAPPORO NIJI — NO TAIJYU