ドライアイ診療のパラダイムシフト 眼表面の層別 - 京都府立医科大学

京府医大誌
122
(8),549~558,2013. 眼表面の層別診断・層別治療
<特集「コモンディジーズの診療・最近の話題」
>
ドライアイ診療のパラダイムシフト
眼表面の層別診断・層別治療
横井 則彦*,加藤 弘明
京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学
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抄
録
ドライアイは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を
伴う」と定義される疾患であり,我が国では,これまで水分補充を中心とした治療が行われてきた.し
かし 2010年末以来,我が国では,世界に先駆けて,涙液層に水分や分泌型ムチンを供給し,角膜上皮
細胞に膜型ムチンの発現を促進し,杯細胞を増加させることができる可能性を持つ 2種類の点眼液が登
場し,我が国のドライアイ診療は,今まさに,パラダイムシフトを迎えている.
我が国では,これまで,涙液層の安定性低下をドライアイのコア・メカニズムに求め,それを改善す
ることでドライアイを治療するというコンセプトが重視されてきたが,新しい点眼液の登場は,このコ
ンセプトを踏襲しつつも,眼表面(涙液層および表層上皮)の異常を層別に診断(t
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;TFOT)という新しいドライアイ診
療の考え方を生む契機となった.TFODと TFOTは理想的かつ日本発の世界のドライアイ診療の方向
と筆者らは位置付けている.
TFOD
・TFOTの考え方は,現在,緒に就いたばかりであるが,今後,新知見の蓄積とともに,日常診
療で誰もが使える形に整理されてゆくことだろう.
キーワード:ドライアイ,涙液層安定性,眼表面,層別診断,層別治療.
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平成25年 7月22日受付
*連絡先
横井則彦 〒602
‐8566京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465番地
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我が国において,ドライアイは,
「様々な要因
による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であ
り,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義され
ている1).本邦におけるドライアイの患者数は
2000万人以上とも言われ,空調の普及,VDT
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)作業従事者およびコ
ンタクトレンズ装用者の増加,高齢化により,
その患者数は,急増している.そのため,眼科
を訪れるドライアイ患者数も増加し,近年,そ
の診断と治療の重要性が高まっている.
定義と同時に,我が国では,ドライアイ研究
会により,ドライアイの診断基準1)が作成され
ており, 1)自覚症状(眼不快感,視機能異
常)
,2)涙液異常, 3)眼表面の上皮障害を評
価した上で, 1), 2), 3)の全てを満たす場
合はドライアイ確定,2つ満たす場合はドライア
イ疑いと診断される.一方,我が国では, 2)の
うち BUT(t
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)の異常と 1)
を満たすが,上皮障害のほとんど見られないド
ライアイ疑い例(BUT短縮型ドライアイ2‐4))
(図 1
)が注目を集め,その症状の強さゆえに,
ドライアイのサブタイプとして重要視され,ド
ライアイ治療が行われている.
ここでは,涙液層の動態に基づく,日本発の
新しいドライアイ診療のコンセプトについて紹
介する.
眼表面の構造と機能
眼表面は,涙液層と表層上皮細胞からなる
図 1 BUT短縮型ドライアイの典型例における角膜上
の涙液層の破壊像.角膜中央に涙液層の破壊像(蛍
光強度の低下した暗い領域)を多数認める.
が,涙液層の構造は,膜型ムチンの発見5)に
よって,油層,水層,ムチン層の三層構造から,
油層と液層の二層構造として認識されるように
なり(図 2
)
,かつて考えられていたムチン層は,
膜型ムチンを含む糖衣層として,表層上皮の構
造として理解されるようになった.ここに涙液
油層は,直下の液層の水分の蒸発抑制に働くと
ともに,開瞼直後に生じた表面圧勾配に基づい
て直下の液層を引き連れながら上方伸展(Gi
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効果)
することで,安定した涙液層を
角膜上に形成する役割を持つ6)7).一方,液層に
は,水分だけでなく糖タンパク質である分泌型
ムチンが濃度勾配を持ちながら分布しており,
液層の水分をゲル状に保つと共に,開瞼維持時
の水分蒸発による液層の菲薄化に抵抗して,涙
液層を安定に保つ働きを持つ.さらに,分泌型
ムチンは潤滑油として,瞬目に伴う眼瞼結膜と
角膜との間の摩擦の亢進を軽減させる働きを持
眼表面の層別診断・層別治療
551
図 2 眼表面の構造
涙液層は油層と液層の 2層からなり,油層はさらに非極性脂質
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)と極性脂質(po
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)の 2層からなる.液層は
水分と分泌型ムチンが混合したゲル層を形成し,角結膜上皮の表面
には,上皮細胞に属する構造として膜型ムチンを含む糖衣層が分布
している.
つ.一方,先に述べた眼表面上皮の膜型ムチン
は上皮の最表層細胞の表面に存在する微絨毛の
先端から涙液層に向けてつき出るように分布
し,上皮表面の水濡れ性を保つ働きを持つ.
ドライアイのコア・メカニズム
8)
日本と主に米国の考え方の違い(図 3)
ドライアイはその定義にあるように涙液層と
図 3 我が国(左図)と米国および諸外国(右図)におけるドライアイのコア・メカニズ
ムの考え方の違い
我が国と米国および諸外国とでは,炎症の捉え方が大きく異なり,我が国では,炎
症は悪循環の結果として,米国および諸外国では,炎症は悪循環の構成要素として捉
えている.また,我が国では,涙液層の安定性の低下を診断においても治療において
も重視しているのに対し,米国および諸外国では,治療において炎症を重視してい
る.
552
横
井
則
表層上皮(一方が他方の健常性を維持する関係)
の相互作用の慢性的な障害をそのコア・メカニ
ズムとする.そして,このコア・メカニズムの
目に見える特徴的な表現は涙液層の安定性の低
下[涙液を可視化する色素―フルオレセインの
破壊像として認められる(図 1
,6
)
]である.我
が国では,これまで,この悪循環の眼に見える
表現である涙液層の安定性の低下をドライアイ
のコア・メカニズムとして,目に見えない炎症
(ドライアイは通常,充血を伴わない)は悪循環
の結果として生じるものとして捉えて,ドライ
アイを診断し,治療してきた.一方,米国およ
び諸外国では,涙液層の安定性の結果として生
じる涙液の浸透圧の上昇9),あるいは,それに続
発しうる炎症10)をドライアイのコア・メカニズ
ムの構成要素として捉え,診断には涙液の浸透
圧上昇を,治療には炎症を重視して診療を行っ
てきている.日本と米国および諸外国の考え方
がこれほどまでに異なる領域は,少ないであろ
うが,浸透圧測定が米国にルーツを持つことや
免疫抑制剤であるシクロスポリン点眼10)が米国
におけるドライアイの唯一の処方薬であると
いった国事情が色濃く作用していると思えてな
らない.
日本における新しい
ドライアイ治療用点眼液の誕生
我が国におけるドライアイの治療と言えば,
これまで,人工涙液やヒアルロン酸の頻回点眼
を中心とした水分補充が主体であったが,2010
年末以来,世界に先駆けて,水分や分泌型ムチ
ンを涙液層に補充でき,表層上皮細胞に膜型ム
チンの発現を促すことが可能で,分泌型ムチン
を分泌する結膜の杯細胞を増加させうる 2種類
の点眼液が処方薬として登場し11),ドライアイ
患者の急増と相まってドライアイ診療が大きく
取り上げられるようになってきている.そし
て,この新しい点眼液が,涙液層と表層上皮か
らなる眼表面の異常を層別に診断し,層別の成
分補充で涙液層の安定性を可及的に高めてドラ
イアイを治療するという新しいドライアイ診療
のコンセプトを生みだす原動力となっている12)13).
彦
ほか
現在,この眼表面の層別診断・層別治療の考え
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(TFOT)
と名付けられ,ドライアイ研究会によって
TFOTの概念図やロゴが作られ,まず,国内に
向けて発信されている(図 4
)
.そして,筆者ら
は,現在,TFOTを日本発の世界をリードする
理想的なドライアイの治療の方向と考えてい
る.また,この新しい考え方は,涙液層の安定
性低下をドライアイのコア・メカニズムとして
捉えてきた我が国のドライアイの考え方の延長
線上にあるものであり,新しい点眼液の登場に
よってさらにそれが発展したものと考えること
ができるだろう.その一方で,TFOTの実践の
ためには,眼表面のどの層に異常があるのかを
診断する TFODが必要であり,この鍵を握るの
はフルオレセインを最大活用した涙液層の動態
の見方や,上皮障害の見方にあると思われる.
TFOD・TFOTの考え方は,現在,緒につい
たばかりであり,今後,新しい知見の蓄積とと
もに,日常診療により使いやすい形に整理され
て行くものと予想される.
ドライアイの階層構造と
12)
13)
全体像(図 5)
ドライアイの定義のポイントは,ドライアイ
では 1)涙液層と表層上皮の間に悪循環(コア・
メカニズム)が生じること, 2)その悪循環に
は,様々な要因(リスクファクター)が関与す
ること, 3)症状(眼不快感,視機能異常)が
あることであり,この定義において,ドライア
イとは様々なリスクファクターがコア・メカニ
ズムを引き起こし,眼不定愁訴に総称される
様々な症状を生じる疾患と言える.そして,コ
ア・メカニズムとリスクファクターをつなぐ「橋
渡しのメカニズム」として, 1)涙液(水分量)
減少, 2)
(涙液層の水分の)
蒸発亢進, 3)
(表
層)上皮の水濡れ性の低下, 4)瞬目時の摩擦
の亢進の 4つを考えることができる(図 5
)
.こ
こに,理想的なドライアイ治療とは,個々の眼
において,橋渡しのメカニズムを想定しなが
ら,コア・メカニズムに至るあらゆるリスク
眼表面の層別診断・層別治療
ファクターを看破し,そのそれぞれを治療する
ことである.しかし,限られた時間内ですべて
のリスクファクターを視野に入れて治療を行う
のは困難であること,および,多くのリスク
ファクターが加齢と結びつくことのために,そ
の治療には限界があり,日常診療ではドライア
イのコア・メカニズムを効果的に治療すること
に主眼がおかれる.
涙液層の安定性低下(涙液層の破壊)
涙液層と表層上皮は,一方が他方の健常性を
維持する関係にあるため,どちらに異常が生じ
ても悪循環が生じうる.しかし,眼表面に悪循
環が生じ始めると,神経系と涙腺からなる
Re
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p-涙腺システムが働いて悪循環は修
復される方向に向かう(図 5
)
.従って,ドライ
アイの他覚的な重症度は,悪循環と Re
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p涙腺システムとの力比べによって決定される.
しかし,加齢は,眼表面の知覚低下や涙腺機能
f
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xl
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p-涙腺システム
の低下をもたらし14),Re
の機能を低下させるため,加齢単独の要因に
よってもドライアイが生じやすくなる.一方,
眼表面の知覚低下により,自覚症状が生じにく
くなるため,ドライアイではしばしば他覚所見
と自覚症状の間に乖離が見られる.
ドライアイのコア・メカニズムは,涙液層の
安定性の低下,すなわち BUTの低値として評価
しうる.そして BUTが低値になる原因として,
少なくとも, 1)油層の量的・質的異常, 2)涙
液層の水分減少, 3)分泌型ムチンの減少ある
いは閉瞼障害に基づく涙液層の水分の蒸発亢
進, 4)膜型ムチンの障害を挙げることができ
る.従って,眼表面の層別治療を考える場合に
は,BUTの異常を示す眼から,これらの原因を
推測する必要がある.
BUTの異常を的確に捉えることは,TFOD/
TFOTの第一歩と言えるが,BUTの値が,個々
の眼に最適な点眼液の選択を教えてくれるわけ
ではない.つまり,点眼液の選択のためには涙
液層の動態を詳細に観察して眼表面の異常を層
別に看破する必要がある.
553
涙液層の破壊パターンと
12)
1
3)
TFOD(図 6)
涙液層は開瞼後に眼表面に形成されるが,そ
の過程は,大きく 2つに分けられる.まず 1つ
目は,開瞼時の角膜表面への涙液の水分の塗り
付け過程であり,2つ目は,開瞼後の油層の上
方伸展によってもたらされる角膜上方への水分
移動に基づく涙液層の形成過程である6)7).この
2つの過程は,BUT検査においては全く重視さ
れていないが,これらの過程を考えながら,涙
液層の破壊を観察することで,眼表面に不足す
る成分を看破することが可能である.筆者ら
は,涙液層の破壊パターンが少なくとも 4つの
パターン(図 6
)に分けられることを見出し,
TFODを行う上での 1つの指標として紹介して
tb
r
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k
(図 6左上)と
いる12)13).すなわち,Spo
は,開瞼直後に見られる特徴的な類円形の涙液
破壊であり,角膜上皮の水濡れ性低下がそのメ
カニズムとして考えられるものである.Ar
e
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b
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k
(図 6右上)は,涙液の水分が極端に少な
いために油層の上方伸展が得られない場合に,
油層の上方伸展でもたらされるはずの水分の上
方移動が得られず,角膜の広い範囲にわたって
開瞼直後から涙液層の形成が得られないもので
ある.角結膜に高度の上皮障害を伴い,高度の
涙液減少がそのメカニズムとして推察される.
一方 Li
neb
r
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a
kは,油層の上方伸展によっても
たらされる水分の上方移動の途中で,角膜下方
に見られる線状の涙液層の破壊像であり,通
常,角膜下方に上皮障害を伴う.軽症~中等症
の涙液の水分減少がそのメカニズムとして考え
られる.また,Ra
nd
o
mb
r
e
a
kは油層の上方伸
展の終了後,すなわち角膜上に涙液層が完全に
形成されてから涙液層の破壊が見られるもの
で,涙液の水分の蒸発亢進がそのメカニズムと
して考えられる.以上の涙液層の破壊パターン
の分類は,ドライアイの分類を可能にするのみ
ならず,眼表面に欠けている成分を層別に診断
する上での重要な情報を提供してくれる.
554
横
井
則
彦
ほか
図 4 TFOTの概念図(ドライアイ研究会ホームページ ht
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www.
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眼表面(涙液層と表層上皮)の各層に対して有効性が期待でき,かつ我が国で利用できるドライアイの
眼局所治療が並べられている.これらを効果的に用いて眼表面を層別に治療することにより涙液層の安
定性低下(涙液層破壊)を改善し,ドライアイを治療するというコンセプトが TFOTである.
図 5 ドライアイの階層構造と全体像
ドライアイでは,涙液層と表層上皮の間に悪循環(コア・メカニズム)が生じており,それを解
消する自己修復システムとして Re
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p-涙腺システムが存在する.悪循環の上流には様々なリ
スクファクターが関与し,涙液減少,
(涙液層の水分の)蒸発亢進,上皮の水濡れ性低下,瞬目時
の摩擦の亢進の 4つの橋渡しのメカニズムを通ってリスクファクターが悪循環に流れ込む.
眼表面の層別診断・層別治療
図 6 TFODを考える上で基本となる 4つの Br
e
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kパターン
Spo
tb
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k(左 上)
,Ar
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k
(右 上)
,Li
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(左 下)
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(右 下)
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図 7 シェーグレン症候群の角膜上皮障害に対する 3%ジクアホソルナトリウム点眼液の効果
点眼前(左)および点眼三カ月後(右)
.人工涙液の頻回点眼では,改善のない角膜上皮
障害(左)が著明に改善しているのが分かる(右)
.この例では,この後もジクアホソルの
継続投与により,角膜上皮障害の改善が同様に維持されている.
図 8 難治性の糸状角膜炎に対する 2%レバミピド点眼液の効果
点眼前(左)および点眼一カ月後(右)
.人工涙液の頻回点眼および低力価ステロイド点
眼液では,全く改善の得られなかった角膜糸状物(左)が,レバミピド点眼により消失し
ているのが分かる(右)
.この例では,この後もレバミピドの継続投与により,糸状角膜炎
の再発を見ていない.
555
横
556
井
則
涙液層の破壊パターンから見た
眼局所治療の選択肢
TFOD/
TFOTのコンセプトは,涙液層と表層
上皮からなる眼表面のどの層に異常があるかを
看破して最適の眼局所治療を選択し,涙液層の
安定性改善を介してドライアイを治療すること
にある(図 4
)
.先に述べたメカニズムに基づい
て,Spo
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kは角膜上皮に膜型ムチンの発現
を促しうるムチン/水分分泌促進薬(ジクアホ
ソルナトリウム)やムチン産生促進薬(レバミ
ピド)に効果が期待される.一方,Li
neb
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は,中等症までの水分減少がその病態と考えら
れ,ジクアホソルナトリウムに効果が期待され
る.実際,従来の人工涙液の頻回点眼では十分
な治療効果の得られなかった例にも驚くべき効
果を経験している(図 7
)
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kは重症の
水分減少がその病態として考えられ,点眼のみ
での治療は困難であり,上下の涙点プラグ挿入
術の適応がある.Ra
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kは軽症の蒸発
亢進型ドライアイであるため,いずれの点眼液
でも,回数を少なくして良好に治療できると思
われる.
なお,我が国においても,ドライアイと炎症
の関係を無視しているわけではない.米国で
は,炎症はドライアイのコア・メカニズムの構
文
1)島崎 潤(ドライアイ研究会)
.2006年ドライアイ
診断基準.あたらしい眼科 2007;24:181184.
彦
ほか
成要素としてとらえ,我が国では,炎症はむし
ろドライアイの結果として捉えている.しか
し,いずれにせよ,抗炎症治療はドライアイ治
療のベースラインになり得るため,現在の低力
価ステロイド点眼の併用を,レバミピドの抗炎
症作用に置き換えられるかもしれない.また,
レバミピドが最近,点眼治療では,全く効果の
ない難治性の糸状角膜炎に著効することが明ら
かになってきており(図 8
)
,同じ分泌型ムチン
を増加させるジクアホソルとレバミピドであっ
ても,病態による使い分けがありうるのではな
いかと考えている.今後のさらなる点眼液の使
い分けの発展に期待したい.
お
わ
り
に
ドライアイのコア・メカニズムが,涙液層と
表層上皮の悪循環にある限り,涙液層の安定性
低下を的確に診断し,その改善をめざす TFOD
と TFOTは,日本発の世界の方向であると共
に,ドライアイ診療の 1つの理想像と考えられ,
そこからドライアイの理解がさらに深まるもの
と期待される.
著者は,参天製薬株式会社,大塚製薬株式会社より講
演料,その他報酬を受けている.
献
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関係.特集 マイボーム腺機能不全の考え方.眼科
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マイボーム腺の臨床的機能
評価.特集 マイボーム腺研究,臨床の最前線.あた
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8)横井則彦,坪田一男.ドライアイのコア・メカニズ
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ム―涙液安定性仮説の考え方―.あたらしい眼科
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有紀子,小室 青,木下 茂.BUT(b
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短縮型ドライアイの臨床的特徴.日眼会誌 2012;116:
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558
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ほか
著者プロフィール
横井 則彦 No
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所属・職:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学・准教授
略
歴:1984年 3月 京都府立医科大学医学部卒業
1984年 5月 京都府立医科大学眼科入局
1985年 4月~1986年 3月 京都第一赤十字病院眼科
1986年 4月~1986年 6月 京都府立医科大学眼科修練医
1986年 7月~1987年 3月 京都府立医科大学眼科学教室助手
1987年 4月~1988年 3月 京都府立与謝の海病院眼科
1988年 4月~1989年 3月 京都府立医科大学眼科学教室助手
1989年 4月~1993年 3月 京都府立医科大学大学院医学研究科(博士課程)
(医学博士甲第 531号)
1993年 4月~1994年 6月 京都府立医科大学学内講師
1995年 7月 京都府立医科大学講師
1996年1
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月~1997年 9月 英国 Ox
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d大学 Nuf
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d眼研究所留学
1999年 5月 京都府立医科大学助教授
2007年 4月~現職
専門分野:ドライアイ,涙液疾患,眼表面疾患,角結膜疾患
最近興味のあること等:筆者は現在,英国 Ox
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博士との共同研究で,涙液,眼表面,ドライアイの謎に迫っています.涙液,ドライアイを
含む,一般的な加齢性の眼のコモンディジーズについては,拙書の『先端技術が応える! 中
高年の眼の悩み(集英社新書,2011年 12月上梓)
』をご参照いただけましたら幸いです.
業績(最近 10年間の涙液に関する主なもの)
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