北海道米麦改良第38号

第
38
号
2007. 8
良質米麦の出荷目標
●一等米 100%
●整粒歩合80%以上確保
●精米蛋白質含有率6.5%以下
●仕上がり水分14.5∼15.0%
●入れ目1%以上確保
●全量種子更新
●一等麦 100%
●低アミロ麦皆無
●DON暫定基準値1.1ppm
以下でできるだけ低いこと
●赤かび粒混入限度 0.0%
●異臭麦皆無
●十分な入れ目の確保
●全量種子更新
麦作
道央・道北における秋播小麦栽培のポイント
道東における秋播小麦栽培のポイント
小麦収穫後の圃場管理について
北海道麦作共励会参加のお願い
稲作
品質重視!適期収穫で高品質米を生産しよう
米の乾燥・調製のポイント
発行所
社団法人 北海道米麦改良協会
〒060−0004 札幌市中央区北4条西1丁目 共済ビル5階 TEL 011−232−6495 FAX 011−232−3673
【業務部】E-mail [email protected]
【検査部】E-mail [email protected]
北海道米分析センター
〒069−0365 岩見沢市上幌向町216の2 TEL 0126−26−1264 FAX 0126−26−5872
E-mail [email protected]
http://www.beibaku.net/
会報誌「北海道米麦改良」はホームページでもご覧になれます。
http://www.beibaku.net/
社団法人 北海道米麦改良協会
古紙配合率100%再生紙を使用しています
通巻 No.549
売れる米を
めざそう
低コストで
小麦の
も く
麦 作
安定生産
品質向上
じ
道央・道北における秋播小麦栽培のポイント…………………………………1
道東における秋播小麦栽培のポイント…………………………………………5
小麦収穫後の圃場管理について…………………………………………………9
稲 作
品質重視!適期収穫で高品質米を生産しよう…………………………………1
4
米の乾燥・調製のポイント………………………………………………………2
0
麦 作
北海道麦作共励会参加のお願い…………………………………………………2
2
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
麦 作
道央・道北における秋播小麦栽培のポイント
上川農業試験場
技術普及部
主査
高 松
聡
平成1
7年産よりランク区分の品質評価基準が導入されて2ヵ年が経過しました。さらに平成1
9
年産より品質評価基準が見直され、日本めん用小麦の基準値と許容値がより厳しくなりました。
これは、品質の良い小麦粉を作るため、製粉業界が用途に応じた均一な小麦を求めている証で
す。麦の流通においては、個人の収穫物がそのまま流通し消費されることはほとんどありません。
地域全体として評価されますので、品質向上に向けた取り組みを進め、用途別の品質目標を達成
することが重要となります。
また平成1
9年産より、品目横断的経営安定対策へ移行したことにより、道央・道北の収量の低
い地域では高品質と高収量を両立させる栽培技術を確立することが急務となっています。
このためには、目標収量を設定しそれに合わせた穂数を確保する栽培技術を組み立てる必要が
あります。これからの秋播小麦栽培のポイントは、その地帯に合わせた「穂数コントロール」技
術をいかに確立できるかにかかっています。
1
穂数コントロールは適期適
量播種から
目標収量の設定
道央・道北地域の秋播小麦の収量推移をみ
晩播等で越冬前の生育量が不足すると、越冬
性が悪くなるばかりでなく、十分な収量や品
質を確保するのは難しくなります。
ア 早播は適期播種ではない!
ると全道平均より大きく下回っていることが
過繁茂となりやすく、生育のコントロール
わかります(図1)
。まずは北海道の収量が
ができない。
最も多収であった平成1
5年の5
0
0 /1
0a を
生育が軟弱になり、耐倒伏性・耐病性・越
目標としましょう。
冬性が低下する。
イ 晩播は品質低下も招く!
成熟期が遅れ、雨害に遭遇する危険が高まる。
遅れ穂の発生が多くなり、登熟ムラや、粒
の充実不足等が起きやすい。
穂数不足等により、子実蛋白が高まりやす
くなる。
目標穂数の設定
目標収量を5
0
0 /1
0a に設定した場合,
上川管内で必要な穂数は5
0
0本/ 以上とな
図1
道央における秋播小麦の収量推移
りますし、更に多収を目指す場合は6
0
0本/
前後必要になります(図2)
。当面の目標
適期適量播種の推進
目標の穂数を確保するためには、適期適量
穂数は5
5
0本/ が適切でしょう。
適期播種
播種の推進が最も重要です。越冬前に過繁茂
目標穂数5
5
0本/ を確保できる上川地域
にしてしまっては、穂数をコントロールする
の播種期は9月中旬が晩限となります(図3)
。
どころか、生育もコントロールできませんし、
また、過去2
8年間の秋期の積算気温から本葉
1
2
2
0
0
7.
8
北海道
図2
米 麦 改 良
図3
収量と穂数
穂数と播種日
(平成4∼17年、上川管内試験成績より)
(平成4∼17年、上川管内試験成績より)
表1
第3
8号
主茎葉数6葉を確保するための播種日(各地のアメダスデータより)
年
代
昭和5
4∼6
3年
平成元年∼1
0年
平成1
1∼1
8年
b−a
名 寄 市
9月1
0日
9月1
4日
9月1
4日
4日
士 別 市
9月1
1日
9月1
5日
9月1
5日
4日
比 布 町
9月1
1日
9月1
5日
9月1
6日
5日
美 瑛 町
9月9日
9月1
4日
9月1
4日
5日
富良野市
9月1
3日
9月1
7日
9月1
7日
4日
※6葉になる日は積算気温から判断し、y=−0.
00001x2+0.
02x−1.
91から算出(平成1
0年、
十勝農試)
表2
気象変動からみた播種期晩限の比較(平成11年、中央・上川農試)
年
代
小麦地帯別栽培指針
昭和5
4∼6
2年
昭和6
3∼平成9年
b−a
深 川 市
9月1
3日
9月1
3日
9月1
6日
3日
長 沼 町
9月1
5日
9月1
7日
9月1
9日
2日
千 歳 市
9月1
5日
9月1
5日
9月1
8日
3日
厚 真 町
9月1
4日
9月1
5日
9月1
8日
3日
真 狩 村
9月8日
9月9日
9月1
2日
3日
※播種から11月15日までの積算気温から算出
6葉を確保できる播種日を計算すると過去と
現在では播種期が大きく異なっているので注
意が必要です(表1)
。この他の地域におい
ても過繁茂にならないよう確認が必要です
(表2)
。
適量播種
生育をコントロールするため播種量の低減
に努めましょう。播種量を少なくしても、最
終的な穂数はほとんど変わりませんし(図4)
、
越冬前の茎数は1,
2
0
0本/ 程度とすること
によって無駄な茎数を増やすことなく、効率
的な小麦の栽培ができます(図5)
。越冬前
の茎数が1,
6
0
0本/ を越えると倒伏の発生
図4
播種量別の茎数推移
(平成8∼10年、上川農試)
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
が多くなりますので注意が必要です(図6)
。
適期播きの場合は1
7
0粒/ (6∼7 /
1
0a)まで播種量を減らすことが可能です。
播種量を減らすことによって「追肥の打てる
小麦づくり」を目指しましょう。
播種量低減のメリット
図5
種苗費の低下
株当たりの生育量が増加(表3・写真1)
生育競合の軽減
耐倒伏性の向上
千粒重・1穂粒数の増加(表4)
有効茎歩合の向上(図5)
高温年でも過繁茂の危険が少ない
播種量別の有効茎歩合
(平成8∼10年、上川農試)
2
適正な分追肥で高品質・高
収量を実現
小麦は、窒素吸収量の約7
0∼8
0%が子実に
配分されることから、収量向上には窒素吸収
量の向上が欠かせません(図7)
。
最も手軽に窒素吸収量を増加させる方法は
図6
越冬前茎数と穂数
(平成11年、中央農試)
表3 播種量別の越冬前生育量と収穫調査
区
名
5.
7 /10a
8.
0 /10a
草 丈
( )
18.
8
19.
6
葉 数 茎 数 乾物重
(枚) (本/株) ( /株)
7.
0
12.
2
0.
98
6.
5
10.
8
0.
85
穂 数 1穂粒数 収 量 蛋 白 千粒重
(本/ ) (粒) ( /10a) (%) ( )
5.
7 /10a 694
25.
8
762
10.
0 42.
6
8.
0 /10a 757
23.
0
730
11.
2 42.
0
(平成16年 清里地区普及センター)
区
名
分追肥を行うことですが、播種量を減じるこ
となくやみくもに追肥を行うと倒伏を助長す
る場合があります。みなさんは「追肥を打て
ば倒す、打たなければ穫れない」という経験
を繰り返していませんか?追肥量を更に増加
させるためには、播種量を低減することが必
要です。これによって耐倒伏性が向上し、安
心して追肥が打てるようになるのです。
図7
写真1 播種量別の越冬前の様子(11月26日)
窒素吸収量と収量
(平成4∼17年、上川管内試験成績より)
※窒素吸収量は推定値
3
4
2
0
0
7.
8
北海道
起生期以降の施肥管理
基本的な施肥対応は以下の通りですが、地
米 麦 改 良
第3
8号
さらに蛋白が不足する場合は葉面散布を行
います。
域性や生育に合わせて施肥量を増減していく
必要があります。
道央・道北地域では、低収な地域の特徴と
して製品歩留まりが7
0∼8
0%と低いことがあ
げられます(図8)
。これらの主な原因は、
「早播・厚播・起生期のみの追肥」により生
育後半に窒素の吸収量が劣っていることが考
えられます(図9)
。
図1
0 蛋白と穂数
(平成4∼17年、上川管内試験成績より)
「ホクシン」の道央・道北地域の窒素
施肥対応 (平成11年、中央・上川農試)
基 肥
起生期
幼形期
止葉期
( /10a)( /10a)( /10a)( /10a)
図8
製品歩留まり
(平成18年、上川管内)
図9
追肥回数
(平成17年、F 地区、規格内率65.
8%)
A
4
6
0
3
B
4
3
3
3
C
4
6
0
0
《A》基本的なパターン
茎数が不足している場合や、圃場ムラがある場
合は幼形期に窒素量で3 /10a 程度の追肥を加
える。
《B》越冬後の茎数が多い場合
生育が旺盛で倒伏が懸念される場合は、幼形期
に起生期施肥の半量を施用する。
《C》止葉期追肥を控えなければならない圃場
泥炭土や野菜作後、腐植の多い土壌
過去の実績で倒伏が多発した圃場、子実蛋白が
11%以上の場合(図9の領域 A・C)
止葉期の茎数が800∼900本/ を越えるとき
3
おわりに
これからの小麦栽培は、品質をコントロー
また、上川管内では図1
0の領域 B(穂数不
ルする技術が求められます。品質をコント
足・低蛋白)の事例が多くみられることから
ロールするということは生育をコントロール
も生育後半の窒素吸収量が劣っていることが
できるということです。小麦栽培の場合、生
伺えます。これらの対策としては、過去の実
育をコントロールするということは、茎数・
績に基づいて増肥を行います。
穂数をコントロールすることです。そのため
穂数を増加させるため起生期施肥を増量し
ます。
止葉期追肥により穂数確保と蛋白を上昇さ
せます。
には、まず適期・適量播種で越冬前茎数を
1,
2
0
0本/ 程度に抑え、生育と地力に合わ
せた施肥をすることが重要です。
「お天気ま
かせの小麦栽培」から脱却しましょう!
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
麦 作
道東における秋播小麦栽培のポイント
十勝農業試験場
技術普及部
主査
佐 藤
仁
平成1
9年産小麦より品目横断的経営安定対策政策が施行された。今まで以上に、収量を追い求
める栽培技術から高品質で安定した収量を確保しながらコストを考える栽培が求められる。そこ
で今一度基本に立ち返った栽培法のおさらいをしてみたい。
近年、道東では、生育期間全般を通して、極端な気象条件に見舞われ、さまざまな障害にさら
される小麦作りとなっている。風雨による倒伏の発生をはじめ、大雨、暖冬、大雪、土壌凍結、
開花期の低温や登熟後期の天候不良などによる障害が発生している。その中で安定的な品質と収
量を得ることは簡単ではないが、これまでの知見から播種時の注意点や越冬後の肥培管理などに
ついて栽培のポイントを解説する。
1.適期播種と播種量
/ から1
7
0粒/ と減らした場合でも、子
道東地域における播種適期は、越冬時に主
実重の減少が見られた事例は少なかった(図
茎葉数が5.
0∼5.
5葉程度を確保できるような
1)
。播種量を減じた場合、生育期間のどこ
時期に定められている。これは3葉前後の小
かで生育停滞や障害があると穂数が足りなく
麦は胚乳の栄養から自根による栄養摂取に変
なることがあるが、起生期以降安心して施肥
わった直後の時期で、最も越冬に弱いとされ
を行なえる体制をつくる選択肢の一つとして
ているからである。また、6.
0葉以上では急
播種量を少なくすることも考えられる。一方、
速に分げつが進み、過繁茂となりやすい。そ
何かの理由で播種適期から遅れてしまった場
のため安定して越冬を行なうことができ、か
合、播種量を多くする必要がある。道東では
つ起生期以降過繁茂にならないような適期播
播種適期はおおよそ9月2
0∼2
5日とされると
種が肝心となる。
ころが多い(表1)が、1
0月上旬の播種では
一方、道東における播種適期での播種量は、
播種量を1.
5倍程度にして播種を行なう。
基本的には2
5
5粒/ とされている。これは
実際の播種量を決める際には、播種粒数が
越冬前に主茎葉数が5.
0葉∼5.
5葉となったと
種子の大きさによりどの程度の播種重量とな
きに茎数が1,
0
0
0∼1,
2
0
0本/ となるように
るか確かめる必要がある。小麦の種子は採種
設定されており、起生期以降の施肥により収
年次により大きさが異なる。そのため種子購
量を安定して確保しやすい播種量になってい
入時に千粒重を確認し、面積あたりの播種重
る。しかし、近年適期に播種しても越冬前の
量を計算する必要がある。また、播種量を決
気温が高いことがあり、葉数が展開し分げつ
める際には種子の出芽率も考慮する必要があ
が多くなり、茎数が過多になることがある。
る。
播種時期を遅くすると、越冬前の気温が低
かった場合、葉数が確保できず、冬損が増え
2.基肥と土壌の化学性管理
る危険性がある。そこで対策として播種量を
秋播小麦における基肥窒素施肥量は4 /
少なくすることが考えられる。どの程度まで
1
0a で良いとされている。これは越冬前に秋
播種量を減らせるかは一概には決められない
播小麦に吸収される窒素吸収量が4 /1
0a
が、越冬前の生育が比較的良好であった1
9
9
4
程度であり、さらに土壌中から供給される窒
∼1
9
9
6年における試験では、播種量を2
5
5粒
素があるため、それ以上は必要ないとされて
5
6
2
0
0
7.
8
北海道
図1
米 麦 改 良
第3
8号
各播種期における低播種量の子実重
(十勝・網走農業改良普及センター39試験、’
94∼96年)
表1
道東における葉数確保のための播種時期
地 域
滝 上
湧 別
遠 軽
北 見
美 幌
網 走
小清水
斜 里
5.
0葉
9月18日
9月24日
9月21日
9月22日
9月21日
9月27日
9月25日
9月25日
6.
0葉
9月11日
9月17日
9月14日
9月15日
9月15日
9月21日
9月17日
9月18日
地 域
大 樹
更 別
池 田
本 別
上士幌
新 得
芽 室
帯 広
5.
0葉
9月24日
9月23日
9月23日
9月22日
9月2
0日
9月24日
9月24日
9月26日
6.
0葉
9月17日
9月16日
9月16日
9月16日
9月13日
9月17日
9月17日
9月17日
※滝上は葉数6.
0葉、他の地域は5.
0∼5.
5葉を確保する。
いる。実際には6∼8 /1
0a 施用している
用すべきである。
場合も見られるが、施肥窒素量が多い場合、
ることになり、天候が悪ければ作物に吸収さ
3.起生期以降の窒素施肥量の
設定
れず、一部は流亡をし、一部は翌年起生期以
秋播小麦で安定した収量と品質を維持させ
播種後天候が良好であれば、過繁茂を助長す
降に残ることとなる。
るには起生期以降の肥培管理が重要である。
また、りん酸、カリウム、苦土については
そのため圃場の肥沃度にあった窒素施肥が望
土壌中の移動、流亡が少ないので、基肥とし
ましい。2
0
0
5年に道東向け「ホクシン」の窒
て施用することで十分である。施用量は施肥
素施肥法として「秋播小麦の起生期無機態窒
標準を参考とし、土壌分析を行い、土壌の養
素診断による窒素追肥量」がまとめられた。
分状態や有機物の施用状況に応じて調整する。
この中で、
「起生期における土壌深6
0 まで
近年、道東においても低 pH 対策が必要な
の硝酸態窒素量を分析すれば、収量レベル別
場合がある。低 pH 土壌では施肥が効きづら
に起生期以降に施用すべき窒素追肥量が決ま
く、生育が抑制され、収量性や品質を低下さ
る」としている。例えば、ある圃場の収量レ
せる。播種後低 pH に気づいても根本的な対
ベルが粗原収量で6
0
0 /1
0a 程度の場合、
策はない。播種前の簡単な調査でわかること
目標たんぱくを1
0.
0%とすると、起生期以降
から、播種床造成前に土壌 pH を測定し、低
必要な総窒素量は1
2 /1
0a 程度となる(表
い場合は pH6.
0程度を目安に石灰資材を施
2)
。そこで起生期における土壌深6
0 の硝
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
酸態窒素量を調べ、その値を必要な総窒素量
収量を大きく超えた場合、たんぱくが低くな
から差し引いた値が起生期以降施用すべき窒
る。しかし、この技術の大きな点は土壌中の
素追肥量となる。これにより自分の圃場に適
有効成分(硝酸態窒素)を測定することによ
合した施肥量を決められるばかりではなく、
り施用すべき窒素量を簡易に判断することが
適正なたんぱくレベルに近づけることも可能
でき、土壌のタイプや年次により必要な施肥
となる。ここで注意すべき点として、収量レ
量を把握できることにある。ただし、有機物
ベルを決定する場合、目標とする収量レベル
が多投入された圃場や下層にレキ層がある場
ではなく、これまでのその圃場の実績収量レ
合などでは適合度が低くなることがある。
ベルとすべきである。また、気象変動により
起生期における硝酸態窒素量の分析は通常、
当該年の収量は変動することから、気象変動
塩化カリウムを用いて抽出する方法をとるが、
に合わせて、加減できるように加味する必要
簡便ではない。一方、近年野菜などの土壌診
がある。例えば高い収量レベルに設定して施
断に用いられる小型反射式光度計(RQ フ
肥量を決定すると、設定した収量に達しない
レックス)を用いて分析できる簡易法も開発
場合、たんぱくが高くなる。一方、低い収量
された(図2)
。簡易法は、砕土管等で土壌
レベルに設定して施肥量を決定すると、設定
深6
0 までの土壌を採取し、採取土壌を風乾
表2 収量水準と起生期における硝酸態窒素分析値による起生期以降の窒素追肥量
圃
圃
図2
RQ フレックスを用いた土壌硝酸態窒素量測定値の換算式
7
8
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
第3
8号
(4
0℃、2
4時間)し、その後細かく砕き、2.
5
う。しかし、8 /1
0a 以上の場合、起生期
倍の水で撹拌する。その後濾液採取装置で抽
は8 /1
0a を上限とし、残りは幼穂形成期
出し、RQ フレックス試験紙(硝酸テスト3
に分施する。止葉期以降に分施する場合、た
−9
0 /1)で測定し、読み取った値を単位
んぱくが高くなることに留意する。一方、た
面積あたりの硝酸態窒素量( /1
0a)に換
んぱくが低くなりやすい圃場では、止葉期以
算する。この場合、通常法への読み替えとし
降に窒素分施することによりたんぱくを高く
て、簡易法の値×1.
4
4−2.
2
1として土壌硝酸
することができる。起生期に茎数が多く、倒
態窒素量( /1
0a)を通常法へ読み替える。
伏が懸念される場合は、設定粗原収量を下げ
決定された起生期以降の窒素施肥量を実際
たり、起生期の追肥量を減らすなどして倒伏
に施用する時期は、基本的には起生期に行な
図2
を回避する。
RQ フレックスを用いた土壌硝酸態窒素の簡易分析法
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
麦 作
小麦収穫後の圃場管理について
北見農業試験場
技術普及部
主査
江 部 成 彦
麦類の収穫残さ物である麦稈は、貴重な有機物資源であり、土壌物理性の改善など土づくり資
材として有効である。また、麦類は他の作物に比べて比較的早く収穫するので、緑肥を栽培した
り、圃場の排水対策を実施する時間的余裕がある。機能的な緑肥を選ぶことは地力の維持増進を
図るとともに、土壌病害虫の抑制や有用微生物の増加など多面的な効果が期待できる。小麦収穫
後をいかに管理するかは、圃場の有機物管理、土壌の物理性、化学性および生物性改善の重要な
ポイントといえる。
1.麦稈の性質と有効利用
値が小さいほど分解は早く窒素が速やかに放
麦稈をすき込んだ場合には、土壌通気性の
出されるが、C/N 比が高いと分解に時間が
改善や団粒構造の生成が期待できる(図1)
。
かかる。C/N 比が高い麦稈では土壌微生物
土壌中の有機物である腐植を作る効果もある。
の成長に必要な栄養源のうち、炭素源が多く
また、C/N 比が5
0∼1
0
0と他作物の収穫残さ
窒素源が少ないため、微生物は不足する窒素
に比べて高く分解が遅い(表1)
。C/N 比と
を土壌中に求め、作物と微生物の間で争奪が
は、収穫残さや緑肥など有機物体内の全炭素
生じ、一時的ではあるが作物にとって窒素欠
量(C)を全窒素量(N)で割った値であり、
乏の状態(窒素飢餓)になる場合がある。
すき込む場合
後作物への窒素飢餓の回避や土壌病害の拡
大防止などから、麦稈は可能な限り持ち出し
て堆肥化するのが望ましい。しかし、搬出す
るのが困難な場合や搬出されずに残った麦稈
をすき込む場合は、早期に分解させるためス
トローチョッパ等で細断し、ロータリ等で浅
く(5 程度)土壌と混和後、プラウ等によ
り反転耕起する。
図1 圃場副産物が団粒形成に及ぼす影響
(北海道農業試験場研究資料 p121、1973年)
表1
すき込みに際して、従来は早期腐熟化と後
作物の窒素飢餓を避けるために速効性の窒素
圃場副産物の分解特性と施肥効果
(北海道緑肥作物等栽培利用指針(改訂版)、道農政部、2004年、一部変更)
すき込み効果
窒素供給
通気性
通水性
改 善
砕土性
易耕性
改 善
保水性
保肥性
増 強
有機物
蓄 積
圃場副産物
C/N 比
野菜類の収穫残さ
2
0以下
◎
−
○
−
−
とうもろこしの茎葉
20∼30
○
○
○
○
○
豆類の茎莢
30∼50
−
○
◎
○
○
稲わら、麦稈
5
0∼100
−
◎
◎
◎
◎
注1)◎:大きな効果が期待できる、○:効果が期待できる、−:効果が期待できない、又は不明。
9
10
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
第3
8号
肥料が利用されていた。ただし、すき込み当
麦稈に糞尿が加わることで分解が促進するが、
年の麦稈分解率は最大でも3
0%程度で、施肥
家畜糞尿の入手が難しい場合は麦稈1
0
0 当
窒素のかなりの部分は取り込まれずに流亡し
たり1 程度の窒素(石灰窒素、硫安で約5
ていると想定される。流亡窒素による環境負
)を添加すると効果的である。また、堆肥
荷を低減するためにも、麦稈すき込み時の窒
化の主役となるのは好気性の微生物であるの
素施用は後作緑肥を栽培するとき以外は行わ
で、堆積中はできるだけ通気性の良い条件を
ず、翌年の作物作付け時に考慮する。すき込
確保するとともに約1ヶ月ごとに切り返しを
み圃場の翌年の窒素施肥は、麦稈1
0
0 当た
行う。水分含量は6
0∼7
0%が好適で、乾いて
り0.
6 (秋播小麦)又は0.
4 (春播小麦)
いる場合は水分を補給する(糞尿を加えない
程度を目安に増肥を基本とするが、後作物の
場合は麦稈乾物重の2倍程度の水が必要)
。
種類によって施用量を増減する(表2)
。
なお、小麦収穫後に堆肥を施用する場合は、
なお、小麦に条斑病、立枯病、眼紋病など
硝酸態窒素の地下水汚染低減のため、年内に
の土壌病害が多発した圃場では、麦稈を可能
作付けする場合を除き1
0月中旬以降に行い、
な限り圃場から搬出し、完熟堆肥化してから
散布後耕起する。畑作専業地帯では、後作に
利用する。
てん菜、豆類を作付けする事例が多いが、両
堆肥化する場合
作物とも堆肥による増収効果が高い。した
圃場外に持ち出した麦稈は、家畜糞尿と混
和して堆肥化するか家畜の敷き料として利用
がって、秋播小麦後は堆肥を施用する良い時
期である。
した後に堆肥化する。完熟堆肥になる過程で
C/N 比の低下、土壌病原菌の死滅などによ
り、麦稈をそのまますき込んだ場合に懸念さ
れる窒素飢餓などの障害が解消される。
2.後作緑肥の活用
緑肥には有機物を補給し、地力を維持増強
するだけでなく、寄生性線虫の抑制や菌根菌
堆肥化にあたっては、微生物の活動を活発
の増加など生物性の改善、雑草の抑制や環境
にする適正な環境条件を整える必要がある。
保全など多面的な効果が期待できる。一方、
表2
麦稈すき込みに伴う後作物の施肥対応
(北海道緑肥作物等栽培利用指針(改訂版)、道農政部、2004年、一部変更)
作
区
分
物
処理法
秋播小麦
春播小麦
子実収量
麦稈乾物重 すき込み時
( /10a) ( /10a)
全量
すき込み
450∼600
搬出残さ
すき込み
450∼600
3
00∼450
全量
すき込み
350∼450
500∼700
搬出残さ
すき込み
350∼450
250∼400
窒素放出
C/N 比
時 期
80∼100
すき込み
2年後
5
00∼900
60∼80
すき込み
2年後
後作の減肥可能量( /10a)
窒 素
カ リ
−3∼−5
7∼10
−2∼−3
4∼5
−2∼−3
10∼12
−1∼−2
5∼6
注1)麦稈のすき込み方法は、 全量すき込み、 搬出残さすき込みとに区分した。 は生産された全て
の麦稈量、 はコンバインで刈り取られた部分はすべて搬出されたものとし、刈り残した部分(約
40 高)を指す。
2)減肥可能量のマイナス値は、窒素の取り込みが起こるため増肥が必要であることを示す。窒素増肥
に際して、馬鈴しょでは5
0%程度を目安とし、豆類では基肥を増肥せず、必要に応じて追肥で対応
する。
3)カリの減肥は土壌の交換性カリが土壌診断基準値以上の際に実施する。てん菜、馬鈴しょを作付け
するときは、基準値以内でも減肥する。
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
緑肥の種類によっては特定の病害を助長する
菌根菌感染が促進されるえん麦が好適であり、
可能性もあるので、後作物との組み合わせが
小豆の場合はえん麦野生種が落葉病の発病軽
重要である。緑肥の導入にあたっては、後作
減に効果がある。
播種、施肥とすき込み
物、栽培目的、生育期間、土壌条件などを総
後作緑肥の場合は、生育期間が限られてお
合的に検討して種類を決める(表3)
。
緑肥の種類、導入効果と後作物
り、また気温が低下していく時期の栽培とな
秋播小麦の後作緑肥としては、えん麦、え
る。緑肥の効果を発揮させるには十分な生育
ん麦野生種、シロカラシ、ヘアリーベッチ、
量の確保が必要であり、そのためには適切な
ひまわりなどが、間作緑肥として小麦の栽培
栽培法が重要である(表4)
。
中にアカクローバが導入されている。
播種は小麦収穫後できるだけ速やかに行う。
後作が窒素要求量の多いてん菜の場合は、
ひまわりは低温下での生育が緩慢なため、播
マメ科やアブラナ科など C/N 比が低く、窒
種が遅れると開花まで至らず、景観形成とし
素の放出が早い緑肥が適している。馬鈴しょ
ての効果や菌根菌を増やす効果が発揮されな
の場合も C/N 比が低い緑肥が適しているが、
い場合がある。ヘアリーベッチは播種から出
ジャガイモそうか病の発生軽減にはえん麦野
芽までの日数が長いので、覆土、鎮圧を行い
生種が有効である。とうもろこしやたまねぎ
出芽促進を図る。間作緑肥でアカクローバを
では、後作物のリン酸吸収を高める働きをす
栽培する場合は、麦稈を早期に圃場外へ搬出
る菌根菌の感染促進に効果的なひまわりやマ
するか列状に集め、日光が十分当たるように
メ科緑肥が適している。大豆では根粒着生や
し、生育を旺盛にする。このことは雑草の生
表3
主な緑肥の効果と後作物との関係
(北海道緑肥作物等栽培利用指針(改訂版)、道農政部、2004年、一部変更)
農村景観保持
養分流亡防止
雑草抑制
病害
土壌浸食防止
果
菌根菌
透水性改善
物理性改善
窒素効果
作 物 名
有機物供給
科 名
センチュウ
キタネコブ
センチュウ
キタネグサレ
効
適する後作物
えん麦
◎
○
○
×
◎
○
注2 ○
○
○
大豆
えん麦野生種
◎
○
○
◎
◎
○
注2 ○
○
○
根菜類、豆類、
てん菜、馬鈴しょ
アカクローバ
○
◎
○
×
×
◎
注2
◎
てん菜、野菜、
秋播小麦
×
×
◎
○
てん菜、馬鈴しょ、
とうもろこし、
小麦、たまねぎ
×
×
×
×
イネ科
○
マメ科
ヘアリーベッチ
◎
アブラナ科
シロカラシ
○
キク科
ひまわり
◎
○
○
◎
○
◎
注2
◎
○
○
◎
てん菜、小麦、
菜豆
○
○
◎
とうもろこし、
小麦、たまねぎ
注1)◎:非常に効果がある、○:効果がある、×:線虫を増やす、△:効果は品種や栽培条件によって
異なる。
2)えん麦はジャガイモそうか病に効果がある。えん麦野生種はジャガイモそうか病、小豆落葉病に効
果がある。アカクローバはダイズシストセンチュウに効果がある。シロカラシはジャガイモそうか
病、根こぶ病を助長する。
3)雑草抑制効果は十分な生育量が前提となる。
4)ひまわりは半身萎凋病の抵抗性品種が望ましい。
5)品種の詳細な特性等は種苗会社のカタログ等を参照する。
11
12
2
0
0
7.
8
表4
米 麦 改 良
北海道
第3
8号
小麦跡地の緑肥栽培および後作物の減肥可能量
(北海道緑肥作物等栽培利用指針(改訂版)、道農政部、2004年、一部変更)
施肥量( /1
0a)
作 物 名
地 域
播種量
( /10a)
えん麦
全道
1
5∼2
0
えん麦野生種
全道
1
0∼2
0
アカクローバ*
全道
3
0∼2 0∼5
ヘアリーベッチ
全道
5
2∼5
シロカラシ
全道
2
ひまわり
道央・道南
道東・道北
窒素
リン酸
カリ
4∼6 5∼1
0 0∼5
緑肥乾物重
C/N 比
0a)
( /1
後作の減肥可能量( /10a)
窒素
カリ(土壌診断
で基準値以上)
4
0
0∼8
0
0
1
5∼2
5 0∼4
1
0∼2
0
0∼5
4
0
0∼6
0
0
1
5∼2
5 0∼4
1
0∼2
0
0
1
2
0∼3
0
0
1
0∼1
3 2∼4
4∼8
0∼5
1
5
0∼3
0
0
1
0∼1
5 3∼5
6∼1
0
5∼8 5∼1
0 0∼7
3
5
0∼5
5
0
1
2∼2
0 4∼6
1
0∼2
0
1
5∼2
0 2∼4
6∼1
4
5
5
5
1.
5∼2.
0 4∼6 8∼1
0 0∼1
0
2
0
0∼5
0
0
1
0
0∼4
0
0
* 間作栽培の場合。
注1)後作の基肥窒素施用量は、減肥により計算上ゼロとなる場合でも、初期生育量を確保するために、
秋播小麦、てん菜では4 /10a、馬鈴しょでは2∼3 /10a、豆類では2 /10a 程度以下にし
ない。
2)後作のカリ減肥量は、土壌診断の交換性カリが基準値内又はカリ分析値がない場合では、緑肥への
カリ施肥量の8
0%を減肥する。基準値以上又は後作がてん菜、馬鈴しょの場合は減肥量を多くする。
育を抑えることにもなる。
すき込み方法は、生育量が少ない場合や C/
窒素施用は、麦稈のすき込みに伴う窒素飢
N 比が低い緑肥では、プラウで直接すき込
餓を回避し、緑肥の生育量を十分確保するた
むこともできるが、C/N 比が高く生育量が
めに1
0a 当たり5 程度を目安とする。窒素
大きい緑肥では、分解促進を図るためスト
が不足するとイネ科緑肥では C/N 比が高ま
ローチョッパで細断するか、ディスクハロー
り、後作物の生育に悪影響を及ぼすことがあ
等で表層土と混和してからプラウですき込む。
る。アブラナ科緑肥の場合は極端に生育が劣
り、生育量の確保が難しくなることがある。
後作物の減肥対応
緑肥は、一般に窒素やカリ含量が高いため、
一方、短期間での生育量確保が比較的難しい
後作物の栽培にあたっては適切な減肥を実施
ひまわりやヘアリーベッチではリン酸の施肥
しないとこれらの養分が過剰になり、品質低
効果が高いが、いずれも標準施用量の範囲内
下や地下水の硝酸態窒素汚染を助長する場合
とする。なお施肥は、可能な限り堆肥などの
がある。
有機物を利用し、化学肥料の使用は最小限に
とどめるのが望ましい。
翌年の窒素減肥量は、栽培した緑肥の種類
(C/N 比)と生育量を考慮して決める(表
緑肥のすき込みは、当年秋の1
0月中旬から
4)
。緑肥窒素は化学肥料より緩効的である
1
1月上旬頃までが適期となる。ただし、土が
ため、生育期間の短い作物に対してはこれよ
過湿条件で練り返しの起こる可能性がある場
りも減肥量は少なくなる。カリは、土壌の交
合には、翌年春に、土壌の乾燥を待ってすき
換性カリが土壌診断基準値未満の場合は減肥
込むことも考慮する。春すき込みの場合は、
せず、基準値内又はカリ分析値がない場合で
すき込み後直ちに後作物の播種や苗の移植を
は緑肥に施用したカリ肥料の8
0%を減肥する。
行うと、ピシウム菌の急激な繁殖により出芽
基準値以上の場合又は後作がてん菜や馬鈴
や初期生育に障害が生じる危険があるので、
しょの場合では減肥量を多くする。なおリン
後作物を導入する2週間前にすき込む必要が
酸は、緑肥すき込みにおける有効態リン酸の
ある。
増加量がわずかであるため、減肥の対象とは
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
しない。
3.土壌物理性の改善
麦類は他の作物に比べて比較的早く収穫す
るので、土壌が乾燥した好条件で圃場の排水
対策を実施する時間的余裕がある。粘質土壌
や耕盤層が発達し透水性の劣る圃場では、根
の伸張が阻害され、生育不良や収量の低下に
つながる。こうした圃場では、心土破砕や無
材暗渠などにより、土壌の透排水性を改善す
ると効果的である。
心土破砕は、土壌が乾いた時に施工するこ
とが望ましい。水分が高いと練り返しや土壌
構造の破壊などによって改善効果が得られず、
逆に透排水性を悪化させる場合もある。また、
施工時の走行速度は低速でおこなう。速度が
速いと溝の切断に伴う細かな亀裂が生じず、
十分な透排水効果が得られないことがある。
心土破砕などの排水対策が不十分な場合は、
明渠、暗渠が機能しているか点検し、必要で
あれば施工も検討する。
近年は、短期間に大量の雨が降る気象条件
が目立ち、圃場が長期間滞水するような事例
も見られる。表面水の排水促進には、心土破
砕とともに、圃場に微傾斜をつけたり、明渠
の整備や溝切りを施すなども有効である。こ
れらを実施するために小麦後の期間を活用す
る。
2
0
0
7.
8
13
14
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
第3
8号
稲 作
品質重視!適期収穫で高品質米を生産しよう
北海道農政部農業経営局技術普及課
1
主査
田 川 洋 一
本年の水稲生育状況
(8月1
5日現在までの北海道農作物生育状況調査より、品種:きらら3
9
7)
例年より遅れ穂が少なく、
当たり穂数は平年よりやや多くなる見込み。
移植後の活着ならびに分げ
つ始めは平年並みでしたが、
6月の高温と多照により、6
月1
5日現在調査の 当たり茎
数 は、全 道 平 均 で 平 年 対 比
1
3
8%に達しました。その後
も分げつ発生が旺盛となり、
茎数は平年よりやや多く推移
しました。
(図1)
初期に茎数が確保されたこ
とから、弱勢の茎が少なく、
一部の地域を除いて、 当た
り穂数も平年よりやや多くな
図1
全道の
当たり茎数の推移
(農作物生育状況調査より)
ることが見込まれます。
6月の高温により、幼穂形成期は平年より5日早い6月2
7日(平年7月2日)でした。
7月は一転して気温が平年を下回ったことで出穂がやや停滞しました。全道の出穂始は平年よ
り4日早い7月2
3日(平年7月2
7日)でしたが、出穂揃は7月3
1日(平年8月2日)で、平年よ
り2日早に縮まり、穂揃い期間が拡大しました。
(図2)
8月上旬は日照不足により、初期登熟が緩慢となりました。出穂期が8月にずれ込んだ地域で
は、開花の遅れやばらつきが目立ちました。
今年は、1穂ごと、籾ごとの登熟のばらつきが大きくなる。
第3
8号
北海道
図2
米 麦 改 良
生育期節ごとの遅速日数
(農作物生育状況調査より)
図3
図4
出穂期以降の気象経過(比布)
出穂期以降の気象経過(岩見沢)
2
0
0
7.
8
15
16
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
第3
8号
8月1
2日以降は日照が回復しましたが、全道各地で猛暑日を記録するなど高温で経過したこと
から、登熟は順調ながらも腹白粒、乳白粒の発生が懸念されます。また、このまま高温登熟で経
過すると、成熟を過ぎた玄米の品質が低下し、茶米の増加も懸念されます。
高温登熟による腹白粒、乳白粒の発生、また、茶米の増加も懸念される。
2
収穫適期の判定
収穫適期とは、収穫量が最大となる時期ではなく、品質が最も良い時期としています。
確実に収穫適期の判定を行い、刈り遅れによる品質低下を防ぎましょう。
籾の外観上の収穫適期と言える「成熟期」は、出穂期からおおよそ4
0∼5
0日で達しますが、品
種や栽培条件、籾数や気温、日照時間で変動します。
籾の外観では、玄米の状況を正確に判断できないので、積算気温や黄化籾割合による予測を目
安に、実際の玄米品質を観察して収穫適期を判定することが確実です。
収穫適期は、品種毎、ほ場毎に判定し収穫作業計画を立てるとともに、ライスセンター等への
搬入も考慮して、地域全体での収穫時期を整理する必要があります。
収穫適期判定から収穫までの手順(模式図)
等
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
登熟期間の平均気温積算による成熟期の予測
出穂期から毎日の平均気温を積算して、おおよその成熟期を予測することができます。
出穂期から現在までの毎日の平均気温を積算し、以降は毎日の平均気温の平年値を加算し、
9
5
0℃に到達する日が成熟期と予測されます。
最寄りのアメダス地点の毎日の平均気温や平年値は、気象庁のホームページ(*参照)で調べ
ることができます。
表1に、主な地点の8月1
5日現在の成熟期予測を示しました。品種は「きらら3
9
7」を想定し
ています。8月前半の高温で、平年より成熟期が早まることが予測されます。
表1
登熟積算気温による成熟期予測(8月1
5日現在)
平 成1
9年
支庁
地点
出 穂 期
成 熟 期
(予測)
平
出 穂 期
年
成 熟 期
石狩 新篠津
7月3
1日
9月1
5日
8月3日 9月2
0日
渡島 北 斗
7月3
1日
9月1
4日
8月4日 9月1
8日
檜山 今 金
8月3日 9月1
8日
8月5日 9月2
2日
後志 蘭 越
7月3
0日
9月1
4日
7月3
1日
9月1
5日
空知 岩見沢
7月2
7日
9月9日 7月3
1日
9月1
7日
上川 比 布
7月2
4日
9月8日 7月2
6日
9月1
4日
留萌 留 萌
7月2
7日
9月1
1日
9月1
5日
網走 北 見
8月2日 9月1
9日
8月2日 9月2
3日
胆振 鵡 川
8月1日 9月1
7日
8月6日 9月2
1日
日高 静 内
8月2日 9月1
7日
8月6日 9月2
4日
7月3
0日
注)成熟期(予測):出穂期から平均気温積算9
5
0℃に到達
する日。8月1
6日以降は平年値を使用。
地点:生育状況調査ほ、各アメダス
この成熟期予測は一応の目安です。8月1
6日以降も平年より平均気温が高かったり、日照時間
が多いと、さらに成熟期が早まることが予測されます。籾数は3∼3.
2万粒/ の中庸な稲を想定
しています。よって、穂揃いが悪かったり、籾数が多く1穂内の籾の登熟ムラが多い場合は、成
熟期が遅れることがあります。
*気象庁のホームページアドレス http : //www.jma.go.jp/jma/index.html
(気象統計情報→過去の気象データ検索)
黄化籾割合による成熟期の判定方法
籾を観察し、黄化籾の割合から成熟期を判定する方法です。完熟籾の割合が9
0%を占めた日が
成熟期と判定されます。
上記の平均気温積算値から予測した成熟期を目安に、調査を行います。
籾の熟色は、葉鞘褐変病や褐変穂が発生すると判断が難しくなります。また、籾中の玄米品質
がわからないので確実な方法ではありません。
17
18
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
↑黄化籾
図5
籾の各部名称と熟色の変化
第3
8号
↑完熟籾
「北海道の米づくり」より
圃場の平均的な場所で、太陽を背にして株の穂全体を手に取って、黄化籾の割合を観察します。
その際、不稔籾や遅れ穂の青さに惑わされないようにしましょう。また、穂を採取して籾を手
で脱穀し、カルトンに取って観察すると、より確実に調査できます。
成熟期に近い稲の場合、平年並の気温と日照時間が続くと、未熟籾は1日当たり約2∼3%の
割合で、黄化籾ないし完熟籾に変化していきます。これを想定して、何日後に完熟籾の割合が
9
0%=成熟期に達するかを判定することができます。
判定した成熟期から、おおよそ1週間以内が収穫適期と予測されます。
例)9月5日に籾を採取して調査した。
完熟籾の割合 8
0%→9
0%−8
0%=1
0%÷1日当たり約2%=約5日
平年並の気温と日照が続くと、5日後の9月1
0日が収穫適期(予測)
玄米の観察による収穫適期の判定方法
平均気温積算値や黄化籾の割合で予測した成熟期に近づいたら、以下の手順で試し刈りした玄
米により収穫適期を判定します。収穫適期を判定する最も確実な方法です。
図6
試し刈りによる収穫適期判定の手順
水田内で平均的な生育をしている場所から、5株程度をサンプルとして採取します。その際に
水口や畦ぎわの稲が入らないようにします。ただし、褐変穂が広く発生している場合は、それ
らも平均的に入るように採取します。
採取したサンプル株は、生脱穀してから籾を乾燥させます。青未熟籾を押しつぶしても汁が出
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
ない程度に乾燥させます。
乾燥させた籾は小型籾摺機(ミニダップなど)で籾摺りします。
品種や玄米水分に対応した篩(ふるい)目にかけて、屑米を除去します。
篩目の例)玄米水分1
5%前後の場
合、き ら ら3
9
7 2.
0
0 、他 の 品
種1.
9
5
篩(ふるい)に残った玄米につい
て、収穫適期を判定します。収穫
適期は、整粒が7
0%または8
0%を
超え、着色粒や被害粒が検査基準
限度内の時期です。JA の農産物
検査員、普及センターと相談して
適期を判定しましょう。
早過ぎた場合は、3∼4日後に再
調査して判断しましょう。
通常、収穫適期の幅は、おおよそ
1週間以内です。
3
写真1
収穫適期1
0日前の「ほしのゆめ」
適期に収穫しよう
成熟期を過ぎると、時間の経過とともに茶米や紅変米などが増加したり、玄米の光沢が失
われて、いわゆる刈り遅れとなります。逆に早刈りにも注意しましょう。
遅れ穂や二段穂などの収量は極くわずかです。これらの青い弱勢穂の登熟を待つと主稈な
どの優勢穂が収穫適期を過ぎてしまいます。
品種毎、ほ場毎に収穫適期を判定し、品質を重視し、収穫から二段乾燥、調製までの作業
計画を立てて、刈り遅れにならないように収穫しましょう。
褐変穂やいもち病がまとまって発生した場所、倒伏したり水口で登熟が遅れている場所は
別刈りにして、乾燥調製も別に行い、良品との混合を防ぎましょう。
4
異品種の混入(コンタミ)を防止しよう
異品種の混入は厳しく検査されます。ほ場での異品種の抜き取りと、機械の清掃を万全に
しましょう。また、種子更新は毎年行うとともに、農作業中の混入がないように注意するこ
とも重要です。
異品種がまとまって混植されたほ場や誤って移植した箇所を発見した場合は、事前に手刈
りを行い、混入しないようにしましょう。
19
20
2
0
0
7.
8
北海道
米 麦 改 良
第3
8号
稲 作
米の乾燥・調製のポイント
中央農業試験場
1.乾燥機を適正に使用しましょう!
生産研究部機械科
木 村 義 彰
科長
水分過多粒、乾燥直後の殻温の高い籾など
は肌ずれの原因になります。肌ずれの多い玄
●おいしさを保つため、籾の水分が高い
米は、貯蔵中に虫がつきやすく、吸湿しやす
乾燥初期では高温乾燥にならないよう
いため、カビの被害も受けやすく、品質劣化
に注意しましょう。特に、籾の水分が
を招きます。肌ずれを防ぐには、乾燥終了後、
2
5%以上の場合、4
0℃以内で乾燥させ
二昼夜程度の調湿時間をとり、玄米全体が適
て、2
5%以内になってから通常の熱風
正な水分になるようにしましょう。
温度で乾燥することが重要です。
●玄米水分1
4.
5∼1
5.
0%になるように均
一に仕上げましょう。また、過乾燥に
ならないように留意しましょう。
○胴割れ米の対策
急激な加熱乾燥を行うと胴割れ米などが発
生します。胴割れ米は検査等級格下げの要因
となるだけでなく、精米時には砕米の発生要
因となって、食味にも悪影響を及ぼします。
○乾燥機に搬入されるまで
このことから、急激な加熱乾燥は行わないこ
穀物の乾燥は、収穫物の品質を落とさずに
とが重要です。特に、過乾燥米(1
3%以下)
貯蔵可能な水分まで低下させることが目的で
は食味の低下、胴割米の発生等の恐れがあり
す。収穫後の籾は高水分であればあるほど、
ます。以上のことを防ぐためには、まず、毎
貯蔵中の異臭の発生や発芽率低下による品質
時平均乾減率を0.
8∼1.
0%とし、二段階乾燥
の劣化を起こしやすいため、速やかに乾燥す
などを用いて、急激な乾燥を避けることが最
る必要があります。収穫した籾は速やかに乾
も重要です。また、収穫時の機械的衝撃の軽
燥して、安全な水分まで低下させることが大
減(こぎ胴回転数を高くしない)にも留意が
切です。
必要です。
生産者独自で乾燥させる場合、納屋や倉庫
に設置した乾燥機に投入して、速やかに乾燥
しなければなりません。乾燥調製施設で乾燥
する場合は、トラックにコンバインで収穫し
た籾が満載となったら速やかに乾燥調製施設
に運搬しなければなりません。
○適正水分
籾の水分条件によって乾燥方法を以下のよ
うに使い分けしましょう。
籾の水分
乾 燥 方
法
4
0℃以下で乾燥処理し、2
5%以下になった
2
5%以上
後、通常の熱風温度で乾燥させる。
2
5%以下 通常の熱風温度で乾燥させる。
2.高品質米を調製しましょう!
出荷時の玄米水分は1
4.
0∼1
6.
0%ですが、
一般的に食味等考慮した場合、1
4.
5∼1
5.
0%
●粒厚選別に頼らず、色彩選別を活用し
が適正です。乾燥が不十分な米は、貯蔵中の
て高品質米を調製しましょう。
呼吸作用により、養分が消耗し、品質が劣化
(篩による粒厚選別では腹白米や着色
したり、カビなどによる変質が進む上、籾摺
粒の除去は難しいです。
)
りがしにくく、肌ずれ米等が発生します。
第3
8号
北海道
米 麦 改 良
○籾の精選別
乾燥が終了した籾は貯留ビンあるいはサイ
2
0
0
7.
8
3.異品種混入(コンタミ)を
防止しましょう!
ロに貯蔵されます。乾燥を終了した籾の中に
は稲わら、石れき、金属片などの異物や、未
●品種の切替時には、異品種が混入する
熟粒、被害粒、脱ぷ粒、しいな、砕粒なども
おそれがあるので、それぞれの工程で
混入しています。これらの異物などの除去を
用いる機械の清掃を徹底してください
行うため、長期間の籾貯蔵前に籾の精選別が
行われます。
最初に大量の籾をインデントシリンダ型選
別機に流して、脱ぷ粒、や砕粒、石れきの除
○安全作業を心がけましょう。
掃除をする時は、回転部や昇降機など大変
去を行っても、その選別精度が低いことから、
危険ですので、必ず、電源を切ってからおこ
比重選別機による選別を先に行うのが望まし
ないましょう。バーナーの周りの掃除は、
バー
いです。
ナーが完全に冷え切ってから行いましょう。
昇降機の掃除はベルトに手を挟まないように
○籾摺り後の調製
留意しましょう。
近年、北海道では米の乾燥調製貯蔵工程の
合理化と高品質で均質な大ロットの北海道産
○掃除のポイント
銘柄米の確立を目的に、カントリーエレベー
乾燥機の構造は比較的単純となっており、
タの建設が進んでいます。このような大規模
掃除のポイントは、 下部スクリューコンベ
施設では、玄米から異物や着色流の除去を行
ア、 ロータリーバルブ、 昇降機、 上部
うため、粒厚選別の後に色彩選別を行う例が
スクリューコンベア、 自動水分測定器等で
増えてきています。
す。
北大と中央農試でおこなった試験(2
0
0
2
雑穀を取り除く機構や掃除口を多く配置す
年)では、現行粒厚選別機の篩の目幅を0.
1
るなど工夫されており、掃除は簡単にできる
小 さ く し て、
「き ら ら3
9
7」で は1.
9
0 、
ようになってます。しかし、乾燥機は籾の滞
「ほしのゆめ」では1.
8
5 で選別した後、色
留時間が一番長い機械なので、隙間や隅に
彩選別機による選別試験を実施しました。そ
残ってしまうことがあります。このため、
隅々
の結果、 歩留が4∼1
1%増加、 検査等級
まで、エアーなどで残穀を発生させない様に
が向上した、 整粒割合が0.
1∼3.
0%増加し
しっかりと掃除する必要があります。
た、 搗精歩留が0.
2∼0.
3%増加したなどの
良好な結果を得ています。この結果より、粒
厚選別と色彩選別を組合せた新しい選別技術
を用いることで、さらに歩留、整粒割合が向
上すると考えられます。
21
22
2
0
0
7.
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北海道
米 麦 改 良
第3
8号
麦 作
第2
8回(平成19年度)
北海道麦作共励会参加のお願い
今年度で北海道麦作共励会は、第2
8回を迎えます。今年もふるって参加いただきますよう御案
内致します。
この麦作共励会は、創意・工夫を持ち先進的で他の模範となる麦作農家及び麦作集団を表彰し、
その業績を広く紹介するものです。
●主催及び後援団体
主 催:社団法人 北海道米麦改良協会
後 援:北海道、農林水産省北海道農政事務所、北海道農業協同組合中央会、
ホクレン農業協同組合連合会、北海道製粉連絡協議会、北海道農産物集荷協同組合
●部
門
共励会は、個人及び集団別に以下の部門毎に行う。
第1部:畑地における秋播小麦。
第2部:水田転換畑における秋播小麦。
第3部:全道における春播小麦。
※各部門の最優秀賞には、北海道知事賞並びに北海道米麦改良協会会長賞が授与されます。
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8号
北海道
米 麦 改 良
2
0
0
7.
8
●参加資格
[1]個人(次の要件を満たす農家であること。)
当該年産を含む、3カ年の平均作付面積がおおむね2
ただし、春播小麦については、当分の間1
以上であること。
以上とする。
当該年産小麦の1
0a 当たり収量が当該市町村の平均収量以上であること。
省力的な麦作を行っており、品質もすぐれた麦生産技術の向上が顕著であること。
作付品種が北海道の優良品種であること。
[2]集団(次の要件を満たす集団であること。)
生計を異にする5戸以上で、栽培技術の取り組みが一致性を有し、圃場管理技術の実施
等において、省力化・品質向上面で共同的作業で効率化を図っている集団であること。該当
する農業法人も含むものとする。
当該年産を含む、3カ年の平均作付面積がおおむね2
0 以上であること。
ただし、春播小麦については、当分の間1
0 以上とする。
当該年産小麦の1
0a 当たり収量が当該市町村の平均収量以上であること。
省力的な麦作を行っており、品質もすぐれた麦生産技術の向上が顕著であること。
作付品種が北海道の優良品種であること。
●参加手続と全国麦作共励会への推薦
この共励会への参加は、市町村米麦改良協会により地区米麦改良協会へ推薦し、地区協
会は選考の上、全道共励会へ推薦するものとする。
全道共励会において、各部1位の個人・集団の中から各1点を、全国麦作共励会の参加
資格基準に基づき推薦するものとする。
●全国麦作共励会参加基準
(個人)当該年産の平均作付面積が2 以上であること。
(集団)当該年産の平均作付面積が1
0 以上であること。
また、麦作共励会において原則として、過去3カ年以内に農林水産大臣賞を授与されたことが
ないこと。
※参加申込期日につきましては、各地区米麦改良協会へ問い合わせをお願い致します。
全国麦作共励会で農林水産大臣賞を受賞された方達(過去3年)
□平成1
6年度
集団の部 斜 里 町:朱円麦作集団
□平成1
7年度
農家の部 小清水町:竹内 峰夫 氏
□平成1
8年度
農家の部 清 里 町:三上 博由 氏
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