よ い 眠 り で 日 本 を 元 気 に - 滋賀医科大学 睡眠学講座

 今やわが国の3人に1人が睡眠に関わる問題を抱えていると言わ
れています。睡眠不足は仕事や勉強の能率を低下させるだけでなく、
労働災害や交通事故のリスクを高めます。さらに、生活習慣病やメ
タボリックシンドロームとの因果関係が指摘されています。
昔から「寝る子は育つ」と言われたように、睡眠中に成長ホルモン
が分泌され、子どもの筋肉や骨が成長し身体の傷んだ組織の修復
も行われます。また、睡眠は疲れた脳を休ませるだけでなく、記憶を整
理し、固定・消去を行うので、勉強した後に十分な睡眠をとることが
運動技能や語学の習得を促します。
「寝る子は育つ」だけでなく、
「寝
る子は伸びる」ようになります。
こんなに大切な睡眠について、
そのメカニズムを研究し、広く正し
い知識を普及すること、
そして「眠りで日本を元気にする」ために、
滋賀医科大学睡眠学講座はさまざまな
滋賀医科大学 睡眠学講座
取り組みを行っています。
教授 宮崎 総一郎
よ
い
眠
り
で
日
本
を
元
気
に
Ⅰ
睡眠学教育への取り組み
1 医学教育
平成21年度から、滋賀医科大学生を対象に2単位の「睡眠学概論」
の授業を行っています。医学部では1年生後期の選択科目、看護学部で
は2年生前期の選択科目としています。
平成22年度以降は「睡眠学各論」の授業を設けて、
4単位の睡眠学
教育を構築し、睡眠障害を担うエキスパートの育成に取り組みます。
睡眠学概論授業内容
1 睡眠学の歴史、生物の睡眠
9 睡眠と労働
2 睡眠の社会学
10 睡眠と睡眠環境
3 睡眠と覚醒のメカニズム
11 今日的睡眠の課題(演習)
4 睡眠・覚醒物質と時計遺伝子
12 睡眠と生活習慣病から睡眠呼吸障害
5 睡眠の役割
13 睡眠と夢、記憶
6 ヒトの正常睡眠
14 睡眠の障害
(実習)
7 睡眠検査1
15 総合討論(演習)
(実習)
8 睡眠検査2
2 人材育成
睡眠指導士養成講座
睡眠知識を身につけて仕事に生かしたい人、睡眠に関する問題を抱え
ている人などを対象に、睡眠を改善できる知識の習得を目的として開催し
ています。
<初級>
第1回2005年9月5日
大津市 受講者 20名 認定者 18名
第2回2005年11月5日
大津市 受講者 22名 認定者 22名
第3回2005年12月2日
大津市 受講者 26名 認定者 26名
第4回2006年3月14日
川崎市 受講者 42名 認定者 37名
第5回2006年10月21日
仙台市 受講者 48名 認定者 39名
第6回2007年5月26日
札幌市 受講者 31名 認定者 30名
第7回2007年5月27日
神戸市 受講者146名 認定者136名
第2回中級講座受講生
<中級>
1
第1回2006年1月7∼8日
大津市 受講者 38名 認定者 33名
第2回2007年11月24∼25日
大津市 受講者 78名 認定者 73名
市民講座での睡眠相談
<上級>
第1回2008年9月∼11月
草津市 42名受講
「睡眠学教育ー基礎講座」
睡眠に関する正しい知識の習得を目的とした、
4日間の集中講義形式の睡眠教育講座を開講しています。
大学生、大学院生、専門学校生、社会人大学生のほか睡眠に関心のある人はだれでも受講できます。
大学教育に準じ、90分(講義、演習、実習、試験)
を1コマとして、
2単位15コマで構成しています。
講義内容
睡眠脳波実習
1 睡眠学の歴史と展望
7 記憶と夢
2 睡眠のメカニズム
8 睡眠と労働
3 睡眠の役割
9 睡眠環境と改善法
4 睡眠呼吸障害
10 眠気の測定と評価
5 睡眠障害
11 睡眠と脳波
6 正常睡眠と個体差
12 睡眠の問題
※詳細についてはhttp://sasjp.net/を参照してください。
3 学外教育
中学生の睡眠状況調査 (N=274)
医学部や大学院、保健学科、放送大学などでの医学教
育のほかに、小中高等学校や教育センターなどに出向いて、
市民や児童・学生を対象とした教育講演活動を行ってきま
した。
また、市民公開講座を開催するほか、学校保健委員会、
医師会、歯科医師会主催による睡眠に関する講座や、病
院を訪問しての睡眠呼吸ワークショップなど、幅広い活動
を行っています。
ねむたい
84%
あくびが出る
76%
横になって休みたい
72%
37%
肩こり
ちょっとしたことが
思い出せない
熱心になれない
34%
41%
45%
いらいら
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
%
睡眠に満足していない 84%
「睡眠教育テキスト」で学ぶ
2
4 講演活動の実績
伊香郡
滋賀県
長浜市
S H IGA
市民講座での眠りのストレッチ
高島市
米原市
旭川
大津市(58)
彦根市
釧路
札幌
近江八幡市
守山市
東近江市
野洲市
蒲生郡
青森
草津市(15)栗東市 湖南市
秋田(17)
岩手
甲賀市
宮城
京都(25)
新潟
石川
群馬
栃木
茨城
福井
鳥取
兵庫(11)
長野
岐阜 山梨
埼玉
岡山
茨木市公開講座
山口
香川
福岡
愛媛
佐賀
徳島
千葉
愛知
東京(24)
静岡
神奈川
大阪(21)
大分
長崎
全 国
熊本 宮崎
JAPAN
鹿児島
3
沖縄
Ⅱ
睡眠障害の治療
滋賀医科大学睡眠障害センター
滋賀医科大学睡眠障害センターの「睡眠呼吸障害」
「睡眠障害」の専門外来では、睡眠時無呼吸症候
群のほか、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症、概日リズム睡眠障害などの検査や治療を行っています。
特定不能の睡眠異常 3%
診療体制
その他
9%
その他の睡眠障害 2%
<外来担当医>
過眠症 5%
宮崎総一郎、大川匡子、田中俊彦、角谷寛
山田尚登、今井眞、村上純一
睡眠呼吸障害
49%
リズム障害
10%
<病棟担当医>
今井眞、杉田尚子、栗本尚樹、青木崇
不眠症
22%
<診察>
※診察は予約制
077−548−2550 滋賀医大附属病院 脳神経センター
睡眠外来での疾患割合
診断のための検査入院
睡眠時無呼吸症候群のほか、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症、
概日リズム睡眠障害に対して以下の入院検査を実施しています。
¡終夜睡眠脳波検査(PSG) ¡認知機能テスト(WCST)
¡脳波検査
¡深部体温測定・睡眠日誌
¡多回睡眠潜時検査(MSLT) ¡睡眠ポリグラフ検査
¡アクチグラフ
入院治療
睡眠ポリグラフ検査
診療実績
概日リズム睡眠障害、不眠症、過眠症などに
対する入院治療を行っています。
¡高照度光療法
¡精神療法(個人・集団)
¡生活・睡眠衛生指導、薬物療法
高照度入院病室
通常の明るさ
睡眠障害新患 年間:400∼500名 睡眠呼吸障害患者の紹介状況(2007年度)
耳鼻咽喉科 他診療科
合計人数
大津地域
3施設
7施設
14名
南部地域
6施設
8施設
20名
東近江地域
1施設
7施設
10名
甲賀地域
1施設
2施設
4名
湖東地域
1施設
1施設
2名
高島地域
1施設
0施設
1名
2施設
1施設
4名
湖北地域
他に8事業所の産業医の先生から23名の紹介あり
サテライト睡眠外来
■近江草津徳洲会病院の耳鼻咽喉科内に、第1サテライト睡眠専門外来を開設、
PSGなどの検査や治療を行っています。 http://www.oumi-kusatsu-hp.jp/
<サテライト睡眠外来診察日> ※予約制
第1・3月曜
第2・3・4火曜日
第1・3水曜日
第4水曜日
9:00∼11:00
17:30∼19:30
15:00∼20:00
18:00∼20:00
■京都市に第2サテライト睡眠センター(京都四条 たなか睡眠クリニック)
を
http://www.kyotosleep.net/
開設しています。
栄養運動プログラム
滋賀睡眠呼吸ネットワーク
地域の診療所から、PSGなどの検査や専門医による診断にスムーズにアクセスできる
よう、睡眠障害センターとサテライト睡眠外来、県内の病院や診療所との連携体制
「滋賀睡眠呼吸ネットワーク」の構築に取り組んでいます。
4
Ⅲ
睡眠に関する研究
1 主な研究活動
「日中の過眠の実態とその対策に関する研究」
厚生労働科学研究費 平成16∼18年度
「びわ湖健康・福祉コンソーシアム『眠りの森』事業」
経済産業省 電源地域活性化先導モデル事業 平成17年度
「F-MRIによる閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の高次脳機能検討」
文部科学省 科学研究費 平成17∼19年度
「睡眠障害医療における医療機関連携ガイドライン作成に関する研究」
厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 平成17∼19年度
「閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する新規治療デバイスの研究」
JST 産学協同シーズイノベーション化事業 平成19年度
「スリープレコーダーSD-101の睡眠学領域における有用性に関する研究」
受託研究 平成20∼21年度
「睡眠医療における医療連携ガイドラインの有効性検証に関する研究」
厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費 平成20∼22年度
「睡眠障害とメタボリックシンドロームに関する疫学研究」
医科学応用研究財団 2国間学術交流助成 平成21年度
「新しい睡眠教育システムの開発」
文部科学省 特別教育研究経費 平成21∼23年度
2
その他の研究・調査活動
¡トラック運転手の睡眠障害調査
滋賀県トラック協会の協力で、
トラック運転手の睡眠障害の実態
を明らかにするとともに、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング調
査を実施しています。
他にもタクシー運転手の睡眠障害調査や、公務員のメタボリック
症候群と睡眠呼吸障害との合併調査などを実施しました。
¡自己免疫疾患における睡眠障害調査
¡睡眠教育による睡眠の質改善効果研究
¡睡眠呼吸障害スクリーニングに対する非拘束マットの有用性
¡睡眠呼吸障害診断用の非侵襲的記録装置開発
3
海外との共同研究
韓国高麗大学 Chol Shin教授との
睡眠時無呼吸症候群と鼻閉に関する共同研究
「Ansan Genomic Health Study」
(平成18年∼)
台湾・韓国との共同研究(平成19年∼)
5
鼻腔通気度測定
4
睡眠とリスクマネジメント ∼交替勤務支援プログラム∼
高度に産業化された24時間社会では、交替勤務や深夜勤務の増加によって、労働者の健康に与える影響や、
睡眠不足による労働災害の増加が指摘されています。
睡眠とサーカディアンリズム(約1日ごとのリズムで繰り返される生物学的リズム=体内時計)
を正しく理解し、
改善することで、安全性・生産性の向上はもとより、
だれもが健康な生活を過ごせるよう、睡眠学講座ではサーカディ
アン・テクノロジーズ・ジャパンと協力し、交替勤務者の実態調査や提言を行っています。
ある製薬会社(4班交替勤務)へのコンサルティング例
勤務ローテーションの工夫で
疲労度が40%減!
5 『眠りの森』事業
科学的根拠に基づいた睡眠の改善を目的に、睡眠ドックの提供、睡眠健康プログラムの開発・提供、人材育成・
教育事業の支援、産業創出の支援という4つの柱を中心に、2005年7月から2006年2月まで「眠りの森事業」を
実施しました。
滋賀医科大学睡眠学講座を中心に、立命館大学、滋賀大学、龍谷大学、関連企業からなるびわ湖健康・福祉
コンソーシアムが推進母体となって産学連携で事業が進められ、睡眠コンサルタント養成講座などその多くの事
業は現在も継続して行われています。
主な取り組み
¡睡眠ドックの提供
ホテルドックの実施
¡睡眠健康プログラムの開発・提供
運動療法・栄養指導プログラム
森林浴・里山体験を活用した運動療法
¡人材育成・教育事業の支援
睡眠相談
睡眠講習会
睡眠コンサルタント養成講座
¡産業創出の支援
6
今後の活動方針
教 育
研 究
¡睡眠学教育
医学科、看護学科、大学院
基礎講座/専門講座
¡眠りの森プロジェクト
¡睡眠と生活習慣病
¡睡眠とリスクマネジメント
¡産学連携
睡眠関連機器の開発
睡眠関連薬剤の評価
睡眠指導士養成
¡啓発活動
臨 床
¡睡眠障害診療
¡患者さんの教育コース
減量・運動指導、CPAP、不眠相談
¡滋賀睡眠呼吸
ネットワーク構築
寄付講座について
滋賀医科大学睡眠学講座は2004年4月に、
日本学術会議から提言された「睡眠学」の国家
的プロジェクトに賛同した企業や個人の皆様からのご寄付により発足しました。
寄付講座は民間等からの寄付を活用して、国立大学等の教育研究の豊富化、活発化を図る
ことを目的としています。
睡眠学講座では発足以来、睡眠研究、教育活動に加えて、市民講座や医師会研究会、全国
医学会等で、睡眠の重要性や睡眠知識の普及と応用に関して貢献しています。
今後、
さらに睡眠学を発展させるため、
引き続き力強いご支援をお願い申しあげます。
連絡先
国立大学法人 滋賀医科大学
睡眠学講座
〒520-2192 滋賀県大津市瀬田月輪町
TEL 077-548-2915 FAX 077-548-2916
e-mail [email protected]
ホームページ http://www.sasjp.net/
※この冊子は再生紙を使用しています。