慶應義塾大学 理工学部 管理工学科4年 曹研究室 60803571 遠藤 健司 論文「鋼材加熱炉の装入スケジューリン グと燃焼制御同時最適化」 鉄と鋼 Vol.96 (2010) No.7 藤井奨、裏山晃史、加嶋健司、今村順一、黒 川哲明、足立修一 1. 2. 3. 4. 5. はじめに 鋼材加熱炉モデリング 提案モデリング:炉帯ベースモデリング 連続加熱炉3基のコフィン型装入計画・ 燃焼制御の同時最適化 おわりに 燃焼制御系 炉帯温度、鋼材温度、投入燃料 連続値 スラブ装入スケジューリング スラブの装入順 離散値 「Hybrid System」モデル予測制御 混合論理動的(MLD)モデル→混合整数計画問題 連続式加熱炉 スラブ ・・・・ 1帯(1ゾーン) 2帯(2ゾーン) M帯(Mゾーン) 仮定 1. 2. 3. 鋼材の材質特性は同一とする。 初期温度、抽出目標温度、板幅等が同じ複数のスラ ブを一つにまとめた、L個の鋼材を対象にする。 各帯への燃料投入量によって、各帯の炉温温度が一 次遅れ系を介して制御され、鋼材は各帯を移動しな がら、その鋼材が存在する帯の炉温によって加熱さ れる。 4. 5. 6. 7. 各帯内の鋼材は高々一個とする。 加熱炉の鋼材は同期して移動する。(ベルトコンベ ア方式) 加熱炉内への鋼材装入は、加熱炉内の鋼材が移動す るときのみ可能となる。 最終炉(M)帯内の鋼材が抽出温度に達する。or 最 終炉(M)帯内に鋼材がない場合のみ炉帯内鋼材が移 動する。 鋼材:上付き添え字 j帯:下付き添え字 i {1, 2 ,..., L } j {1, 2 ,..., M } j帯への燃焼投入量(連続値入力の決定変数) k : ある時刻 T : 制御周期 T : 鋼材温度時定数 T : 燃料投入量時定数 K : 燃料投入量から炉帯温度へのプロセスゲイン K : 炉帯温度から鋼材温度までのプロセスゲイン fj : f SL f SL 仮定3: 各帯への燃料投入量によって、各帯の炉温温度が一次遅れ系を介し て制御され、鋼材は各帯を移動しながら、その鋼材が存在する帯の 炉温によって加熱される。 j帯の炉帯温度: T j T j ( k 1) T j ( k ) ( K f f j ( k ) T j ( k )) Tf 燃料投入量 →炉帯温度 T j(k ) T 一次遅れ系の制御 T j(k ) K f T Tf (1 T )T j ( k ) ( K f Tf aT j ( k ) bf j ( k ) T fj ( k ) Tf T Tf ) fj ( k ) 鋼材iの鋼材温度: y i y ( k 1) y ( k ) ( K SL T j ( k ) y ( k )) i i i T SL 炉帯温度 →鋼材温度 y (k ) i T T SL (1 T ) y ( k ) ( K SL i T SL cy ( k ) dT j ( k ) i 一次遅れ系の制御 y ( k ) K SL i T T T j(k ) T SL T T SL ) fj ( k ) j (k ) : i i v (k ) : (k ) : 鋼材iがj帯に存在する場合のみ1となる0-1変数 加熱炉に新たに鋼材iを装入する場合のみ1となる0-1 変数 加熱炉内の鋼材が次の帯or炉外に移動する場合のみ1 となる0-1変数 v (k ) (k ) : i L 仮定6:加熱炉内への鋼材装入は、加熱炉内の鋼材が移 動するときのみ可能となる。 v (k ) 1 : i i 1 仮定4:各帯内の鋼材は高々一個とする。 L j (k ) 1 : i i 1 L i i i i が鋼材iに対する変数である。 ( k ) v ( k ) 1 : , v j j i 1 ・ T j ( k 1) aT j ( k ) bf j ( k ) M ・ y ( k 1) i j ( k ){ cy ( k ) dT j ( k )} y ( k ) v ( k ) i i 0 i i 1 ・ j ( k 1) ( I M ( k ) F 0 ) j ( k ) G 0 v ( k ) i i 1 0 { 0 0 0 0 1 0 0 0 1 (k ) 1 0 1 0 0 M i i 1 ( k ) 1 i } 2 ( k ) 0 v i ( k ) i 1 M ( k ) 0 0 1 M M B M M →仮定5:加熱炉の鋼材は同期して移動する。(ベルトコンベア方式) ・ [ ( k ) 1] [ M ( k ) y ( k ) y i i ref , i , i ] [ M ( k ) 0 , i ] i →仮定7:最終炉(M)帯内の鋼材が抽出温度に達する。or 最終炉(M)帯内 に鋼材がない場合のみ炉帯内鋼材が移動する。 i :鋼材iが時刻kまで未装入だった場合の鋼材温度であり、 所与の場合、外気温によって、y ( k 1) cy ( k ) dT ( k ) から一 意に与えられる時変係数として扱う。 ( k ):抽出目標温度 y0 (k ) i 0 y ref , i 例えば… (k ) 1 i 0 のとき、 ・ j 1 ( k 1) (1 ( 1)) ( k ) v ( k ) v ( k ) i 1 i i j ・ M j2 j ( k 1) (1 ( 1)) j ( k ) i i i j 1 (k ) i j 1 (k ) 0 補助変数: z j ( k ) j ( k ){ cy i ( k ) dT j ( k )} i i j ( k ) ( k ) j ( k ) i i として、鋼材ベースモデリングをMLDモデルで書き表すと、 x ( k 1) Ax ( k ) Bv ( k ) 差分方程式 混合0-1不等式 Cx ( k ) Dv ( k ) H で与えられる。 n n x(k ) : 状態変数 c d T v ( k ) [u ( k ) z ( k ) q ( k ) ] u (k ) z (k ) q (k ) B T B n1c m2 T : m3 : n1d T T 入力集合(決定変数) 入力変数 連続値における補助変数 離散値における補助変数 : ここの離散値入力の次元が計 算量に大きく関与している。 つまり、m1d+m3 の次元 入力集合中の0-1変数(決定変数)の次元数 :m 1 d m 3 1 L LM 入力変数の次元: ( m 1d 1 補助変数の次元: m 3 L LM 当) に相当) i i ( に相 v , j →0-1決定変数の次元数が炉帯数Mと鋼材数L の積に比例して増加する。 →鋼材数Lが多い場合を想定するスケジュー リングを扱う場合、多くの0-1変数を要す る。 装入順はわかっている 移動はコンベア式 各炉帯には高々一つの鋼材しか存在しない ベルトコンベアが動いたか否かで、鋼材がどの炉帯にいるかを判断 することができる。 j ( k ) : 時刻kで炉帯jに鋼材(鋼材は区別せず)が存在するか否かの0-1変数 y j ( k ) : 炉帯jにおける時刻kでのある鋼材の温度 L j(k ) j (k ) i i 1 L yj(k ) i 1 j (k ) y (k ) i i v i (k ) (k ) 0 v i (k ) 0 ・ T j ( k 1) aT j ( k ) bf j ( k ) L ・ y 1( k 1) (1 ( k )) 1( k )( cy 1( k ) dT 1( k )) i i y0 (k )v (k ) i 1 ・ y j ( k 1) ( k ) j 1 ( k )( cy j 1 ( k ) dT j 1 ( k )) (1 ( k )) j ( k )( cy j ( k ) dT j ( k )), j 2 ( k ) 0 , 1( k ) 1 : y 1( k 1) cy 1( k ) dT 1( k ), y 2 ( k 1) cy 2 ( k ) dT 2 ( k ) ex.) ( k ) 1, 1( k ) 1 L : y 1 ( k 1) i 1 y 0 ( k ) v ( k ) , y 2 ( k 1) cy 1( k ) dT 1( k ) i i L ・ y 1 ( k 1) (1 ( k )) 1( k ) y 1 ( k ) ref ref y ref , i i (k )v (k ) i 1 ・ y j ( k 1) ( k ) j 1( k ) y j 1 ( k ) (1 ( k )) j ( k ) y j ( k ), j 2 ref ref ref ( k ) 0 , 1( k ) 1 : y 1( k 1) cy 1( k ) dT 1( k ), y 2 ( k 1) cy 2 ( k ) dT 2 ( k ) ex.) ( k ) 1, 1( k ) 1 L : y 1 ( k 1) y 0 ( k ) v ( k ) , y 2 ( k 1) cy 1( k ) dT 1( k ) i i i 1 L ・ 1( k 1) (1 ( k )) 1( k ) i v (k ) i 1 ・ j ( k 1) (1 ( k )) j ( k ) ( k ) j 1( k ), j 2 ( k ) 0 , 1( k ) 1 : 1( k 1) 1( k ), 2 ( k 1) 2 ( k ) ex.) ( k ) 1, 1( k ) 1 L : 1 ( k 1) v ( k ) , 2 ( k 1) 1 ( k ) i i 1 ref ・ [ ( k ) 1] [ y M ( k ) y M ( k )] [ M ( k ) 0 ] 補助変数: z 1 j ( k ) j ( k )( cy i ( k ) dT j ( k )), z 2 j ( k ) ( k ) z 1 j ( k ) z 1 j ( k ) j ( k ) y j ( k ), z 2 j ( k ) ( k ) z 1 j ( k ), j ( k ) ( k ) j ( k ) ref ref ref ref として、鋼材ベースモデリングをMLDモデルで書き表すと、 x ( k 1) Ax ( k ) Bv ( k ) Cx ( k ) Dv ( k ) H で与えられる。 入力集合中の0-1変数(決定変数)の次元数 : m 1d m 3 1 L M →計算時間の低減が期待できる! 入力変数の次元: m 1 d 1 ( に相当) 補助変数の次元: m 3 L M ( v i , j に相当) 比較: 0-1変数の次元 鋼材ベースモデリング 炉帯ベースモデリング 1+L+LM 1+L+M 鋼材L個、炉帯(M)3台 ( a , b , c , d ) ( 0 . 9048 , 1 . 4274 , 0 . 8187 , 0 . 1813 ) T ( 0 ) [800 1100 1300 ] 初期時刻で炉帯内に鋼材はない 各鋼材の初期温度は[600,800]内の一様分布に従って与えられる 拘束条件 0 Tj ( k ) 1300 , 0 y i ( k ) 1250 y ( k 1)( cy ( k ) dyT 3 ( k )) 1200 ( k ) 1 制限時間内に少なくとも3つ鋼材を抽出する i T i 0-1変数の次元 鋼材ベースモデリング 炉帯ベースモデリング 4L+1 (=1+L+LM) L+4 (=1+L+M) 3基の並列した連続式加熱炉 1号炉 2号炉 スラブ ヤード 3号炉 1帯 2帯 i {1, 2 ,..., L } : (まとまった)鋼材数 j {1, 2 ,3} : ゾーン p {1, 2 ,3} : 加熱炉p号炉 3帯 x p , j ( k ) : [ y p , j ( k ) y p , j ( k ) w p , j ( k )] p号炉のj帯にある鋼材の状態 ref y p , j ( k )( ) : 鋼材温度 3 ref y p , j ( k ) : 鋼材抽出目標温度 w p , j ( k ) : 鋼材板幅 T p , j ( k )( ) : p号炉j帯の炉帯温度 f p , j ( k )( ) : p号炉j帯への燃料投入量 p号炉j帯の炉帯温度、及びp号炉の鋼材iが移動しない場合の鋼材の状態式 ・ T p , j ( k 1) aT p , j ( k ) bf p , j ( k ) 連続値のみを考慮した場合のモデル ・ x p , j ( k 1) A 0 x p , j ( k ) B 0 T p , j ( k ) diag ( c ,1,1) x p , j ( k ) [ d 0 0] T p, j(k ) T c 0 0 0 1 0 0 yp , j ( k ) d ref 0 y p , j ( k ) 0 T p , j ( k ) 1 w p , j ( k ) 0 y p , j ( k 1) cy p , j ( k ) dT p , j ( k ) ref ref y p , j ( k 1) y p , j ( k ) w p , j ( k 1) w p , j ( k ) i v p ( k ) : 鋼材iをp号炉1帯に装入する場合のみ1となる0-1変数 p , j ( k ) : p号炉j帯内に鋼材が存在する場合のみ1となる0-1変数 p ( k ) : p号炉内にある鋼材が次の帯に移動する場合のみ1となる0-1変数 ・ T ( k 1) aT ( k ) bf ( k ) ~ ・ x ( k 1) ( I 27 diag ( ( k )) F ) ( k ){ Ax ( k ) BT ( k )} ~ x 0(k )v (k ) ~ ・ ( k 1) ( I 9 diag ( ( k ) F ) ( k ) Gv ( k ) L ・ v ( k ) ( k ), ・ ※ i p v 3 i p v ( k ) 1, ・ i 1 i p (k ) 1 p 1 ・ [ p ( k ) 1] [ y p , 3 ( k ) y p , 3 ] [ p , 3 0 ] ref x [ x 1 x 2 x 3 ] x p [ x p ,1 x p , 2 x p , 3 ] T T T [ T 1 T 2 T 3 ] T p [ T p ,1 T p , 2 T p , 3 ] T f [f 1 f 2 f 3 ] f p [ f p ,1 f p , 2 f p , 3 ] T T [ 1 2 3 ] p [ p ,1 p , 2 p , 3 ] T T T 連続値、離散値を考慮した 場合のモデル ~ x 0(k ) I 3 x0 (k ) 1 06 x0 (k ) 27 3 L L L y 0i ( k ) v1 (k ) v 1p ( k ) ref , i 2 i 3 L x0 (k ) y (k ) , v (k ) v (k ) , vp(k ) B w i (k ) v 3 (k ) v L (k ) p A block diag ( A 0 , , A 0 ) 27 27 B block diag ( B 0 , , B 0 ) 27 9 1 (k ) ~ ( k ) 2 ( k ) 3 , diag ( ( k )) I 3 , F F I 3 3 ( k ) 1 F 1 0 0 1 1 0 1TL 0 , G I3 0 1 ※:混合0-1不等式として 表現できる 補助変数 z 1 ( k ) ( k ){ Ax ( k ) BT ( k )} 27 z 2 ( k ) { diag ( ( k )) I 9 } z 1 ( k ) ※ 27 , ( k ) { diag ( ( k )) I 3 } 1 ( k ) ・ T ( k 1) aT ( k ) bf ( k ) ~ ・ x ( k 1) z 1 ( k ) ( I 3 F ) z 2 ( k ) ~ x0v (k ) ・ ( k 1) ( k ) ( I 3 F ) ( k ) Gv ( k ) 9 差分方程式で表現できる 圧延機のロール組み替え後、最初の10本程度はサーマルクラウン (熱膨張量差)を安定化させるために、圧延材は幅狭材から徐々に 幅広材に移行し、以降約90本は圧延ロール摩耗による圧延材の品質 不良を避けるため、スラブの抽出順に対して、徐々にスラブの板幅 が狭くなる制約を課す。 →簡易化:鋼材の加熱炉抽出順が板幅単調減少とする制約 →時刻k=kcに抽出される鋼材の板幅と、時刻k=0,…,kc-1に抽出された鋼 材の板幅をすべて比較すると、不等式の数が膨大になる。 →補助的な変数; h M ( k ) [ p ( k 1) 1] [ p , 3 ( k 1) 1] [ h M ( k ) w p , 3 ( k 1)] p {1, 2 ,3} h M ( k ) h M ( k 1) →hM(k)は時刻k=0,…,kc-1に抽出された鋼の板幅以下の値である。 [ p ( k ) 1] [ p , 3 ( k ) 1] [ w p , 3 ( k ) h M ( k )] p {1, 2 , 3} →加熱炉p号炉から鋼材が抽出されるならば、その板幅wp,3はhM(k)以下である。 鋼材の加熱炉からの抽出順が板幅単調減少となる。 鋼材加熱炉の燃焼制御周期は通常1~2分程度 鋼材加熱炉の抽出周期は通常3分程度 今回は複数(10本程度)の鋼材をi鋼材として扱っているので、実際 の分解能より粗くできる。 燃焼制御周期を10分、抽出周期は30分 装入スケジュール制御周期を燃焼周期系の3倍として扱う。 ( 3 k ) ( 3 k 1) ( 3 k 2 ) ( 3 k ) ( 3 k 1) ( 3 k 2 ) MLDモデルの計算量は、0-1変数の次元に 対して指数関数的に増加するため、離散 入力値を小さくすればよい。 今回の提案モデリングは、鋼材iを装入段 階で識別し、移動中は識別しないことで、 鋼材の位置を表す0-1変数の次元を減らし た。 →連続式、ベルトコンベア式の特徴を有する さまざまなプロセスにも適応できる。 ラグランジェ緩和の続きを読む。
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