第1回輪講 2011.5.10 (火)

慶應義塾大学 理工学部
管理工学科4年 曹研究室
60803571
遠藤 健司
 論文「鋼材加熱炉の装入スケジューリン
グと燃焼制御同時最適化」

鉄と鋼 Vol.96 (2010) No.7

藤井奨、裏山晃史、加嶋健司、今村順一、黒
川哲明、足立修一
1.
2.
3.
4.
5.
はじめに
鋼材加熱炉モデリング
提案モデリング:炉帯ベースモデリング
連続加熱炉3基のコフィン型装入計画・
燃焼制御の同時最適化
おわりに

燃焼制御系
炉帯温度、鋼材温度、投入燃料
 連続値


スラブ装入スケジューリング
スラブの装入順
 離散値


「Hybrid System」モデル予測制御

混合論理動的(MLD)モデル→混合整数計画問題

連続式加熱炉
スラブ
・・・・
1帯(1ゾーン) 2帯(2ゾーン)

M帯(Mゾーン)
仮定
1.
2.
3.
鋼材の材質特性は同一とする。
初期温度、抽出目標温度、板幅等が同じ複数のスラ
ブを一つにまとめた、L個の鋼材を対象にする。
各帯への燃料投入量によって、各帯の炉温温度が一
次遅れ系を介して制御され、鋼材は各帯を移動しな
がら、その鋼材が存在する帯の炉温によって加熱さ
れる。
4.
5.
6.
7.


各帯内の鋼材は高々一個とする。
加熱炉の鋼材は同期して移動する。(ベルトコンベ
ア方式)
加熱炉内への鋼材装入は、加熱炉内の鋼材が移動す
るときのみ可能となる。
最終炉(M)帯内の鋼材が抽出温度に達する。or 最
終炉(M)帯内に鋼材がない場合のみ炉帯内鋼材が移
動する。
鋼材:上付き添え字
j帯:下付き添え字
i  {1, 2 ,..., L }
j  {1, 2 ,..., M }
j帯への燃焼投入量(連続値入力の決定変数)
k : ある時刻
 T : 制御周期
T : 鋼材温度時定数
T : 燃料投入量時定数
K : 燃料投入量から炉帯温度へのプロセスゲイン
K : 炉帯温度から鋼材温度までのプロセスゲイン
fj   :
f
SL
f
SL

仮定3:

各帯への燃料投入量によって、各帯の炉温温度が一次遅れ系を介し
て制御され、鋼材は各帯を移動しながら、その鋼材が存在する帯の
炉温によって加熱される。
 j帯の炉帯温度: T j  
T j ( k  1)  T j ( k )  ( K f f j ( k )  T j ( k ))
Tf
燃料投入量
→炉帯温度
 T j(k ) 
T
一次遅れ系の制御
T j(k )  K f
T
Tf
 (1 
T
)T j ( k )  ( K f
Tf
 aT j ( k )  bf j ( k )
T
fj ( k )
Tf
T
Tf
) fj ( k )
 鋼材iの鋼材温度: y i  
y ( k  1)  y ( k )  ( K SL T j ( k )  y ( k ))
i
i
i
T SL
炉帯温度
→鋼材温度
 y (k ) 
i
T
T SL
 (1 
T
) y ( k )  ( K SL
i
T SL
 cy ( k )  dT j ( k )
i
一次遅れ系の制御
y ( k )  K SL
i
T
T
T j(k )
T SL
T
T SL
) fj ( k )
 j (k ) :
i
i
v (k ) :
 (k ) :
鋼材iがj帯に存在する場合のみ1となる0-1変数
加熱炉に新たに鋼材iを装入する場合のみ1となる0-1
変数
加熱炉内の鋼材が次の帯or炉外に移動する場合のみ1
となる0-1変数
v (k )   (k ) :
i
L

仮定6:加熱炉内への鋼材装入は、加熱炉内の鋼材が移
動するときのみ可能となる。
v (k )  1 :
i
i 1
仮定4:各帯内の鋼材は高々一個とする。
L
  j (k )  1 :
i
i 1
L
i
i
i
i
が鋼材iに対する変数である。

(
k
)

v
(
k
)

1
:

,
v
 j
j
i 1
・ T j ( k  1)  aT j ( k )  bf j ( k )
M
・ y ( k  1) 
i
  j ( k ){ cy ( k )  dT j ( k )}  y ( k ) v ( k )
i
i
0
i
i 1
・  j ( k  1)  ( I M   ( k ) F 0 )  j ( k )  G 0 v ( k )
i
i
1
0
 {
0
0
0
0
1
0
0


0

 1

   (k ) 1
0


1
0
0
  M
i
i
  1 ( k )   1 
i
}   2 ( k )    0  v i ( k )
  i    
1    M ( k ) 
0
0




1
M M
   B
M
M
→仮定5:加熱炉の鋼材は同期して移動する。(ベルトコンベア方式)
・ [  ( k )  1]  [  M ( k ) y ( k )  y
i
i
ref , i
,  i ]  [ M ( k )  0 ,  i ]
i
→仮定7:最終炉(M)帯内の鋼材が抽出温度に達する。or 最終炉(M)帯内
に鋼材がない場合のみ炉帯内鋼材が移動する。
i
:鋼材iが時刻kまで未装入だった場合の鋼材温度であり、
所与の場合、外気温によって、y ( k  1)  cy ( k )  dT ( k ) から一
意に与えられる時変係数として扱う。
( k ):抽出目標温度
y0 (k )
i
0
y
ref , i

例えば…
 (k )  1
i
0
のとき、
・ j 1
 ( k  1)  (1  (  1))  ( k )  v ( k )  v ( k )
i
1
i
i
j
・ M  j2
 j ( k  1)  (1  (  1))  j ( k )  
i
i
i
j 1
(k )  
i
j 1
(k )
0
補助変数: z j ( k )   j ( k ){ cy i ( k )  dT j ( k )}
i
i
 j ( k )   ( k ) j ( k )
i
i
として、鋼材ベースモデリングをMLDモデルで書き表すと、
x ( k  1)  Ax ( k )  Bv ( k )
差分方程式
混合0-1不等式
Cx ( k )  Dv ( k )  H
で与えられる。
n n
x(k )  
: 状態変数
c
d
T v ( k )  [u ( k ) z ( k ) q ( k ) ]
u (k )  
z (k )  
q (k )  B
T
B
n1c
m2
T
:
m3
:
n1d
T
T
入力集合(決定変数)
入力変数
連続値における補助変数
離散値における補助変数
:
ここの離散値入力の次元が計
算量に大きく関与している。
つまり、m1d+m3 の次元
 入力集合中の0-1変数(決定変数)の次元数
:m 1 d  m 3  1 
L  LM

入力変数の次元:
(
m 1d  1
 補助変数の次元:
m 3  L  LM
当)

に相当)
i
i
(
に相
v , j
→0-1決定変数の次元数が炉帯数Mと鋼材数L
の積に比例して増加する。
→鋼材数Lが多い場合を想定するスケジュー
リングを扱う場合、多くの0-1変数を要す
る。




装入順はわかっている
移動はコンベア式
各炉帯には高々一つの鋼材しか存在しない
ベルトコンベアが動いたか否かで、鋼材がどの炉帯にいるかを判断
することができる。
 j ( k ) : 時刻kで炉帯jに鋼材(鋼材は区別せず)が存在するか否かの0-1変数
y j ( k ) : 炉帯jにおける時刻kでのある鋼材の温度
L
j(k ) 
  j (k )
i
i 1
L
yj(k ) 

i 1
 j (k ) y (k )
i
i
 v i (k )   (k )  0 


  v i (k )  0



・ T j ( k  1)  aT j ( k )  bf j ( k )
L
・ y 1( k  1)  (1   ( k ))  1( k )( cy 1( k )  dT 1( k )) 

i
i
y0 (k )v (k )
i 1
・ y j ( k  1)   ( k )  j
1
( k )( cy j
1
( k )  dT j
1
( k ))
 (1   ( k ))  j ( k )( cy j ( k )  dT j ( k )), j  2
 ( k )  0 ,  1( k )  1 : y 1( k  1)  cy 1( k )  dT 1( k ), y 2 ( k  1)  cy 2 ( k )  dT 2 ( k )
ex.)
 ( k )  1,  1( k )  1 L
: y 1 ( k  1) 

i 1
y 0 ( k ) v ( k ) , y 2 ( k  1)  cy 1( k )  dT 1( k )
i
i
L
・ y 1 ( k  1)  (1   ( k ))  1( k ) y 1 ( k ) 
ref
ref

y
ref , i
i
(k )v (k )
i 1
・ y j ( k  1)   ( k ) j  1( k ) y j 1 ( k )  (1   ( k ))  j ( k ) y j ( k ), j  2
ref
ref
ref
 ( k )  0 ,  1( k )  1 : y 1( k  1)  cy 1( k )  dT 1( k ), y 2 ( k  1)  cy 2 ( k )  dT 2 ( k )
ex.)
 ( k )  1,  1( k )  1
L
: y 1 ( k  1) 

y 0 ( k ) v ( k ) , y 2 ( k  1)  cy 1( k )  dT 1( k )
i
i
i 1
L
・  1( k  1)  (1   ( k ))  1( k ) 

i
v (k )
i 1
・  j ( k  1)  (1   ( k ))  j ( k )   ( k ) j  1( k ), j  2
 ( k )  0 ,  1( k )  1
:  1( k  1)   1( k ),  2 ( k  1)   2 ( k )
ex.)
 ( k )  1,  1( k )  1
L
:  1 ( k  1) 

v ( k ) ,  2 ( k  1)   1 ( k )
i
i 1
ref
・ [  ( k )  1]  [ y M ( k )  y M ( k )]  [ M ( k )  0 ]
補助変数: z 1 j ( k )   j ( k )( cy i ( k )  dT j ( k )), z 2 j ( k )   ( k ) z 1 j ( k )
z 1 j ( k )   j ( k ) y j ( k ), z 2 j ( k )   ( k ) z 1 j ( k ),  j ( k )   ( k ) j ( k )
ref
ref
ref
ref
として、鋼材ベースモデリングをMLDモデルで書き表すと、
x ( k  1)  Ax ( k )  Bv ( k )
Cx ( k )  Dv ( k )  H
で与えられる。
入力集合中の0-1変数(決定変数)の次元数
: m 1d  m 3  1  L  M
→計算時間の低減が期待できる!




入力変数の次元: m 1 d  1 (  に相当)
補助変数の次元: m 3  L  M ( v i ,  j に相当)
比較:
0-1変数の次元
鋼材ベースモデリング
炉帯ベースモデリング
1+L+LM
1+L+M

鋼材L個、炉帯(M)3台

( a , b , c , d )  ( 0 . 9048 , 1 . 4274 , 0 . 8187 , 0 . 1813 )

T ( 0 )  [800 1100 1300 ]


初期時刻で炉帯内に鋼材はない
各鋼材の初期温度は[600,800]内の一様分布に従って与えられる
拘束条件 0  Tj ( k )  1300 , 0  y i ( k )  1250

y ( k  1)(  cy ( k )  dyT 3 ( k ))  1200   ( k )  1

制限時間内に少なくとも3つ鋼材を抽出する

i
T
i
0-1変数の次元
鋼材ベースモデリング
炉帯ベースモデリング
4L+1 (=1+L+LM)
L+4 (=1+L+M)
 3基の並列した連続式加熱炉
1号炉
2号炉
スラブ
ヤード
3号炉
1帯
2帯
i  {1, 2 ,..., L } : (まとまった)鋼材数
j  {1, 2 ,3} : ゾーン
p  {1, 2 ,3} : 加熱炉p号炉
3帯
x p , j ( k ) : [ y p , j ( k ) y p , j ( k ) w p , j ( k )]  
p号炉のj帯にある鋼材の状態
ref
y p , j ( k )(   ) : 鋼材温度
3
ref
y p , j ( k ) : 鋼材抽出目標温度
w p , j ( k ) : 鋼材板幅
T p , j ( k )(   ) : p号炉j帯の炉帯温度
f p , j ( k )(   ) : p号炉j帯への燃料投入量
p号炉j帯の炉帯温度、及びp号炉の鋼材iが移動しない場合の鋼材の状態式
・ T p , j ( k  1)  aT p , j ( k )  bf p , j ( k )
連続値のみを考慮した場合のモデル
・ x p , j ( k  1)  A 0 x p , j ( k )  B 0 T p , j ( k )
 diag ( c ,1,1) x p , j ( k )  [ d 0 0] T p, j(k )
T
c

  0
0

0
1
0
0  yp , j ( k )   d 
  ref
  
0   y p , j ( k )    0 T p , j ( k )
1   w p , j ( k )   0 
 y p , j ( k  1)  cy p , j ( k )  dT p , j ( k )

ref
ref
 
y p , j ( k  1)  y p , j ( k )

w p , j ( k  1)  w p , j ( k )

i
v p ( k ) : 鋼材iをp号炉1帯に装入する場合のみ1となる0-1変数
 p , j ( k ) : p号炉j帯内に鋼材が存在する場合のみ1となる0-1変数
 p ( k ) : p号炉内にある鋼材が次の帯に移動する場合のみ1となる0-1変数
・ T ( k  1)  aT ( k )  bf ( k )
~
・ x ( k  1)  ( I 27  diag (  ( k ))  F )  ( k ){ Ax ( k )  BT ( k )}  ~
x 0(k )v (k )
~
・  ( k  1)  ( I 9  diag (  ( k )  F ) ( k )  Gv ( k )
L
・ v ( k )   ( k ), ・
※
i
p
v
3
i
p
v
( k )  1, ・
i 1
i
p
(k )  1
p 1
・ [  p ( k )  1]  [ y p , 3 ( k )  y p , 3 ]  [  p , 3  0 ]
ref
x  [ x 1 x 2 x 3 ] x p  [ x p ,1 x p , 2 x p , 3 ]
T
T
T  [ T 1 T 2 T 3 ] T p  [ T p ,1 T p , 2 T p , 3 ]
T
f [f
1 f 2 f 3 ] f p  [ f p ,1 f p , 2 f p , 3 ]
T
T
  [  1  2  3 ]  p  [  p ,1  p , 2  p , 3 ]
T
T
T
連続値、離散値を考慮した
場合のモデル

~
x 0(k )  I 3  

x0 (k ) 
1
06 
x0 (k )
27  3 L


L
L
 y 0i ( k ) 
 v1 (k ) 
 v 1p ( k ) 
 ref , i

 2



i
3
L
x0 (k )   y
(k )   , v (k )  v (k ) , vp(k )      B
 w i (k ) 
v 3 (k )
v L (k )




 p

A  block  diag ( A 0 ,  , A 0 )  
27  27
B  block  diag ( B 0 ,  , B 0 )  
27  9
 1 (k ) 
~


 ( k )   2 ( k )   3 ,   diag ( ( k ))  I 3 , F  F  I 3


  3 ( k ) 
 1

F 
1

 0
0
1
1
0 
1TL 

0 , G  I3   

0 
 1 
※:混合0-1不等式として
表現できる
補助変数
z 1 ( k )   ( k ){ Ax ( k )  BT ( k )}  
27
z 2 ( k )  { diag (  ( k ))  I 9 } z 1 ( k )  
※
27
,  ( k )  { diag (  ( k ))  I 3 } 1 ( k )  
・ T ( k  1)  aT ( k )  bf ( k )
~
・ x ( k  1)  z 1 ( k )  ( I 3  F ) z 2 ( k )  ~
x0v (k )
・  ( k  1)   ( k )  ( I 3  F ) ( k )  Gv ( k )
9
差分方程式で表現できる

圧延機のロール組み替え後、最初の10本程度はサーマルクラウン
(熱膨張量差)を安定化させるために、圧延材は幅狭材から徐々に
幅広材に移行し、以降約90本は圧延ロール摩耗による圧延材の品質
不良を避けるため、スラブの抽出順に対して、徐々にスラブの板幅
が狭くなる制約を課す。
→簡易化:鋼材の加熱炉抽出順が板幅単調減少とする制約
→時刻k=kcに抽出される鋼材の板幅と、時刻k=0,…,kc-1に抽出された鋼
材の板幅をすべて比較すると、不等式の数が膨大になる。
→補助的な変数; h M ( k )  
[  p ( k  1)  1]  [ p , 3 ( k  1)  1]  [ h M ( k )  w p , 3 ( k  1)] p  {1, 2 ,3}
h M ( k )  h M ( k  1)
→hM(k)は時刻k=0,…,kc-1に抽出された鋼の板幅以下の値である。
[  p ( k )  1]  [ p , 3 ( k )  1]  [ w p , 3 ( k )  h M ( k )] p  {1, 2 , 3}
→加熱炉p号炉から鋼材が抽出されるならば、その板幅wp,3はhM(k)以下である。
鋼材の加熱炉からの抽出順が板幅単調減少となる。


鋼材加熱炉の燃焼制御周期は通常1~2分程度
鋼材加熱炉の抽出周期は通常3分程度

今回は複数(10本程度)の鋼材をi鋼材として扱っているので、実際
の分解能より粗くできる。

燃焼制御周期を10分、抽出周期は30分
装入スケジュール制御周期を燃焼周期系の3倍として扱う。

 ( 3 k )   ( 3 k  1)   ( 3 k  2 )
 ( 3 k )   ( 3 k  1)   ( 3 k  2 )
 MLDモデルの計算量は、0-1変数の次元に
対して指数関数的に増加するため、離散
入力値を小さくすればよい。
 今回の提案モデリングは、鋼材iを装入段
階で識別し、移動中は識別しないことで、
鋼材の位置を表す0-1変数の次元を減らし
た。
→連続式、ベルトコンベア式の特徴を有する
さまざまなプロセスにも適応できる。
 ラグランジェ緩和の続きを読む。