Document

経済学入門
(12)景気とデフレーション
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2013年6月27日
復習1

マクロ経済学は経済全体の動きを分析する

その目的:高い経済成長,低い失業率,低い
インフレ率
国内総生産 GDP
Gross domestic product

2013/6/27
経済学入門 12
2
復習2







ある国内での一定期間に市場向けに生産され
たすべての最終的な財とサービスの総額
消費 consumption
C
投資 investment
I
政府購入 government
G
輸出 export
X
輸入 import
M
GDP=C + I + G + X – M
2013/6/27
経済学入門 12
3
宿題の答え:中島君の利子率
中島君は山田君から100万円を借りた.翌年に借り
たお金100万円を返し,利息20万円を支払った.借
り入れ利子率は何%か?
 貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利息
利子率=
×100
借入金
 100万円を借金して利息が20万円
 200,000/1,000,000 × 100=20 (%)

2013/6/20
経済学入門 11
4
前回の講義内容でニュースが読める
実質概念は解説が付く.一般には難しいことを意味
1~3月期GDP改定値、年率換算で4・1%増
ヨミウリ・オンライン 2013年6月10日10時20分 掲出
http://www.yomiuri.co.jp/
内閣府は10日、2013年1~3月期国内総生産(GDP)の改
定値を発表した。
物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は12年10~1
2月期と比べて1・0%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換
算で4・1%増となり、速報値の0・9%増(年率3・5%増)から上
方修正された。
設備投資の減少率が速報段階の0・7%から0・3%へと縮小したた
めだ。プラントや産業機械向け投資が速報値より大きかった。(以下省
略)
2013/6/27
経済学入門 12
5
実質国内総生産(支出側):
出所 内閣府経済社会総合研究所
10億円
523,685.8
530,000.0
520,000.0
510,000.0
500,000.0
490,000.0
480,000.0
470,000.0
2009年のリー
マンショック
はかなり大きな
影響
519,277.3
512,364.2
512,451.9
497,440.7
518,230.9
509,369.4
503,921.0
489,588.4
485,968.3
460,000.0
年
2013/6/27
経済学入門 12
6
経済成長率(実質)



前回の復習.
小数点第2位を
四捨五入せよ
2011年の実質GDPは 509兆円
2012年の実質GDPは519兆円
2012年の日本の実質GDPの成長率は? 2.0%
519 - 509
× 100
2012年のGDP成長率=
509
10
=
× 100 = 1000 ÷ 509
509
= 1.964 ≒ 2.0
2013/6/27
経済学入門 12
7
名目国内総生産(支出側) :
出所 内閣府 経済社会総合研究所
10億円
520,000
510,000
500,000
490,000
480,000
503,725
512,975
503,903
506,687
498,855
470,000
名目GDPを見る
途中からのグラフが
見やすい
一見あまり成長して
いない
501,209
482,384
475,529
471,139
460,000
470,560
450,000
年
440,000
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
2013/6/27
経済学入門 12
8
今年のGDP-去年のGDP
経済成長率



今年のGDP成長率=
× 100
去年のGDP
2011年の名目GDPは 471兆円
2012年の名目GDPは476兆円
2012年の日本の名目GDPの成長率は?
476 - 471
× 100
2012年のGDP成長率=
471
5
=
× 100 = 500 ÷ 471
471
= 1.06 ≒ 1.1
2013/6/27
経済学入門 12
9
実質と名目経済成長率



2012年の日本の実質GDPの成長率は 約2.0%
2012年の日本の名目GDPの成長率は約1.1%
なぜ違いが出るのだろうか?名目GDPが低い意
味はなんだろうか?
名目国内総生産(支出側)成長率 :
%
出所 内閣府 経済社会総合研究所
4.00
0.98
2.00
-0.06
0.00
-2.00
2003
-4.00
0.55
2.39
1.24
1.06
0.04
2004
2005
2006
2007
2008
2010
-2.29
-6.00
2011
2012
-2.45
-6.00
-8.00
2013/6/27
2009
年
経済学入門 12
10
実質GDP成長率
%
4.7
4.0
2.0
1.7
2.4
1.3 1.7
2.2
1.9
-0.6
0.0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
-2.0
年
-4.0
-1.0
-6.0
2013/6/27
経済学入門 12
-5.5
11
三面等価

イチローがうまい棒を作る 【生産】

うまい棒を真央が購入→代金支払い 【支出】

イチローの収入 【所得】

GDPはこの三つの側面が常に等しくなることを
三面等価という
1.
生産(付加価値)
2.
所得
3.
支出

この三つの内支出が一番把握しやすい
2013/6/27
経済学入門 12
12
支出アプローチ,2012年名目GDP(兆円)
日本における財の供給=需要
 GDP+輸入=消費+投資+政府購入+輸出
 GDP=消費+投資+政府購入+輸出-輸入
 GDP=消費+投資+政府購入+純輸出

消費
283
75
121
-9
470
投資
政府購入
純輸出
名目GDP
2013/6/27
経済学入門 12
13
付加価値アプローチ,生産面



生産された物は多くの段階を経て最終的な購入主体
へ到達する
原材料・部品供給企業,メーカー,流通業者
各生産段階の付加価値を財の流れに沿って合計
企業の付加価値=収入-中間財費用




支出と生産は同じになることを確かめる
【例】パナソニックは20000円の費用でデジカメ
を作った
流通業者のヨドバシカメラに25000円で販売
ヨドバシカメラは山田君に30000円で売る
2013/6/27
経済学入門 12
14
中間にヨドバシカメラから三面等価
部品供給企
業の利益
2013/6/27
パナソニック
の利益
経済学入門 12
ヨドバシの利益
15
付加価値アプローチ

付加価値=部品供給企業の利益+パナソニックの
利益+ヨドバシカメラの利益

付加価値=20000+5000+5000=30000

3万円の付加価値は消費者の支出額3万円に等しい

パナソニックの付加価値=25000-2000
GDP=全企業の付加価値の合計
2013/6/27
経済学入門 12
16
2011年 経済活動別(産業別)GDPの構成比(名目) :
出所 内閣府
農林水産業
1.2
2.3
0.1
9.4
鉱業
18.6
19.4
5.6
1.8
14.3
5.5
4.9
2013/6/27
生産面か
建設業
ら見た
電気・ガス・水道
GDP:
卸売・小売業
産業別
金融・保険業
GDP構成
不動産業
比
運輸業
製造業
情報通信業
サービス業
12.1
4.9
経済学入門 12
政府サービス生産者
17
対家計民間非営利サービス生産者
所得アプローチ







生産された物の売上は誰かの所得になる
付加価値は貢献度に応じて各経済主体に分配
労働者への支払は【賃金】
企業に資金を貸している人には【利子支払】
政府には【間接税】
企業のオーナーの元には【利潤】が残る
生産のために機械を使用すると摩耗や故障する分
は【減価償却】という
企業の付加価値=賃金+利子支払い+間接税
+利潤+減価償却
2013/6/27
経済学入門 12
18
国民所得
日本にいる人の生産の貢献が国内総生産


イチローの所得は含まない,外国人選手は含む

所得は国民で表示したい

GDPに海外からの所得の純受取を加える

イチローの年俸(プラス),外人の年俸(マイナス)

機械や建物は摩耗する.故障する.陳腐化する

そのストックの損失(固定資本減耗)を差し引く

政府への支払と受取である間接税と補助金を引く

労働者,資金提供者,企業の所得である国民所得計算
2013/6/27
経済学入門 12
19
2011年国民所得:
出所 内閣府 (単位:10億円)
244,934
雇用者報酬
2013/6/27
財産所得
20,139
企業所得
81,451
国民所得
346,524
経済学入門 12
20
景気の善し悪し
経済は波打ちながら成長していく
 景気の山や谷の判断は成長率
 好況(A)→後退(B)→不況(C)→回復(D)→好況(E)
E
 景気とデフレの関係

山
A
B
谷
2013/6/27
経済学入門 12
D
C
21
実質GDP成長率
%
景気拡大の山は2008年2月
4.0
2.0
1.7
2.4
1.3 1.7
リーマンの反動
4.7
2.2
1.9
-0.6
0.0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
-2.0
大震災
-4.0
-1.0
-6.0
2013/6/27
年
経済学入門 12
-5.5
リーマンショック
22
インフレーションとデフレーション

正しくはデフレは不況を意味しない

先生が小学校の時の遠足のおやつは100円でし
た.皆さんの予算は幾ら?

世の中の財・サービスの物価の動向

インフレーションは複数の財の全般的な上昇を意
味する

反対に諸価格の全般的な下落はデフレーションと
呼ばれる
2013/6/27
経済学入門 12
23
物価の測定

デフレ
 ○物価の下落
 ×物価の下落+不景気

全ての財の価格が10%上昇すれば無問題

うまい棒価格が10%,ブラックサンダー価格が20%
上昇した場合にインフレ率はいくら?

複数の財の価格の平均を取る.ただの平均ではない

財の重要度によってウエートを変える

鉛筆価格の小さいウエート,住宅価格は大
2013/6/27
経済学入門 12
24
おやつの価格が変化した




ブラックサンダーとうまい棒しかない世界
【例1】当初,ブラックサンダー価格は30円,うまい棒
価格は10円であった
例2へ価格変化すると物価は上昇したことが明か
例3に変化した時は物価は上がったかどうか不明
価格(円)
価格(円)
ブラックサン
例2
ダー
うまい棒
2013/6/27
33
11
ブラックサン
例3
ダー
うまい棒
経済学入門 12
36
9
25
おやつのバスケット
価格ではなくて支出額を比較する
 バスケットを考える

 ブラックサンダー何個,うまい棒は何本
 ピクニックに行くときのカゴの中身
購入量が多い財ほどバスケットには大きな比重
 バスケットの中身を買うにはいくらかかる
 例えば次のバスケットを考えよう
ブラックサンダー2個,うまい棒は1本
 例1の支出額を計算しよう

2013/6/27
経済学入門 12
26
おやつの予算は70円
価格(円) 数量(個数) 支出額(円)
ブラックサ
例1
ンダー
うまい棒
30
2
60
10
1
合計金額(円)
10
70

例1の合計支出額は70円

この金額を基準にして比較

例2や例3に価格が変化した時にこのバスケットの中身
を買う時に何%支出額が変化したか?
2013/6/27
経済学入門 12
27
支出額の変化が物価上昇率
ある年の支出-前年の支出
物価上昇率=
× 100
前年の支出
価格(円)
ブラックサン
例2
ダー
うまい棒
77-70
数量(個数) 支出額(円)
33
2
66
11
1
合計金額(円)
11
77
700
× 100 =
70
2013/6/27
= 10 (%)
70
経済学入門 12
支出額は
10%増えた
28
例3の物価上昇率は16%
価格(円)
ブラックサン
ダー
例3 うまい棒
数量(個数) 支出額(円)
36
2
72
9
1
合計金額(円)
9
81
例3の価格でバスケットを買うと合計金額は81円
例2の物価上昇率(%)=
(81-70)/70×100=15.7(%)
物価は約16%上昇した
2013/6/27
経済学入門 12
29
物価指数の作り方のまとめ
1.
2.
3.

バスケットを固定する
バスケット費用を計算する
基準年を選び計算する
例1の年を基準年とする.基準年の指数を100とする
基準年の支出
70
× 100 =
× 100 =100
基準年の支出
70
4. 他の年の物価指数を計算する
5. 100よりも大ならば基準年よりも物価は上昇
2013/6/27
経済学入門 12
30
物価の作り方
例2の支出
77
× 100 =
基準年の支出


× 100 =110
70
例2の物価指数は110である
同様に例3の物価指数は以下のように約116
例3の支出
81
× 100 =
基準年の支出
2013/6/27
× 100 =115.7
70
経済学入門 12
31
物価上昇率
ある年の物価指数-前年の物価指数
物価上昇率=
× 100
前年の物価指数
例2の年の次が例3の年としよう
例3の年のインフレ率(物価上昇率)はいくらか?
例3の年の物価指数は116とする
116-110
× 100 =
110
2013/6/27
600
= 5.45 (%)
110
経済学入門 12
インフレ率
は約5.5%
32
消費者物価指数

基準年である例1は100.例2は110,例3は約116

消費者は新幹線や下水道管は買わない

消費者物価指数とは
家計にとって重要な物価の動向を見るための指
数

消費者の生計費を測る

平均的な家計が購入する財の組合せを考える

家計が直面する価格の動きを知る

重要な財ほどウエートが大きくなる
2013/6/27
経済学入門 12
33
4月全国消費者物価-0.4%、5月都区
また
部は4年2カ月ぶりプラス
ニュース
が読め
(2013年 05月 31日 10:29 JST Reuters.co.jp)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE94T0A820130531 た!
[東京 31日 ロイター] - 総務省が31日
発表した4月の全国消費者物価指数(生鮮食品
を除く)は、前年比0.4%の低下だった。ロ
イターがまとめた民間予測は0.4%の低下だ
った。
一方、5月の東京都区部消費者物価指数(生
鮮食品を除く)は、前年比0.1%の上昇とな
り、生鮮食品を除く総合で2009年3月以来
4年2カ月ぶりにプラスに転じた。(以下省略)
2013/6/27
経済学入門 12
34
消費者物価指数:出所 総務省 統計局
103
102.1
102
100.7
101
100
100.7
100.7
100.7
100.7
100
100.4
99
99.7 99.7
98
年
2013/6/27
経済学入門 12
35
消費者物価指数上昇率:
出所 総務省 統計局
%
2.00
1.39
1.00
0.00
0.30
-0.30
0.00
0.00
年
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
-1.00
-0.30
0.00
-0.30
-1.37
-2.00
2013/6/27
経済学入門 12
-0.70
36
今はデフレか

デフレは全般的な物価の下落を意味する

少なくとも二年間継続的に物価が下落する状態
岩田規久男『デフレの経済学』東洋経済新報社

現在はデフレではない :0% (2012),-0.3%(2011)

しかし,2009年から2011年はデフレである

2005年から2008年はデフレではない

デフレの何が悪いのだろうか?
2013/6/27
経済学入門 12
37
実質GDP

国内総生産 GDP はある年の総付加価値を意味した

生産量は変わらなくても物価の上昇で支出アプロー
チの金額が上昇してしまう

支出額=価格 × 生産量

うまい棒やブラックサンダーが同じだけ生産されても
物価が2倍ならばGDPも2倍

物価が上がって見せかけのGDPが上昇してしまう場
合.これは困る!

物価を調整したGDPが実質GDPだった
2013/6/27
経済学入門 12
38
GDPデフレータ
物価調整のないGDPを名目GDP
 インフレを調整した実質的な生産量を測る実質GDP
はどうやって作られるのだろうか?
 実質GDPは名目GDPから物価上昇の影響を控除し
て作られる
 GDPデフレータとは
国内で生産された財(GDP)の物価指数
である.アイディアは物価で割る.
 支出=価格×数量
 数量=支出/価格

2013/6/27
経済学入門 12
39
実質GDPの作り方

数量を求めたい
名目GDP
実質GDP=

GDPデフレ-タ
以前見せた実質GDPのグラフはこのように作ら
れた
2013/6/27
経済学入門 12
40
GDPデフレータ:出所 内閣府
105
102.7
100
101.3
100
98.9
98
96.7 96.2
94.1
95
92.4 91.6
90
85
年
2013/6/27
経済学入門 12
41
実質GDPとGDPデフレータ

名目GDPはあまり増えていない

しかし,GDPデフレータが大きく下落している

そのため実質GDPは高くなっている

GDPデフレターは消費者物価指数よりも下落して
いる傾向にある

GDPデフレータは生産者が直面する物価であるの
で,消費者よりも生産者の方がデフレの影響が大
きいと考えられる.これは良いことなのだろうか?
2013/6/27
経済学入門 12
42
復習1
 付加価値=企業収入-中間財の費用
 GDP=全企業の付加価値の合計

生産された物の売上は誰かの所得になる

GDP=賃金+利子支払い+間接税+利潤+減価
償却

総生産は総所得に等しい
2013/6/27
経済学入門 12
43
復習2
経済は波打ちながら成長していく
 好況→後退→不況→回復→好況


消費者物価指数は家計にとって重要な物価の
動向を見るための指数

GDPデフレータは国内で生産される財の物価
指数
名目GDP
実質GDP=
GDPデフレ-タ
2013/6/27
経済学入門 12
44
アンケート,宿題(締め切り火曜日)

テキスト第9章p.253~p.272を読む

ポータルの宿題とアンケートに答える
1.
テキストp.272復習問題1.鶏肉の値段が10%上昇
するのとキャビアの値段が10%上昇するのではど
ちらが消費者物価指数に大きな影響を及ぼすか
2.
ここには書きませんが計算問題を出します

このアンケートに答えた人はプラス2点を与えます
2013/6/27
経済学入門 12
45