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経済学入門
(11)マクロ経済学とGDP
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2013年6月20日
前回の復習

今得たお金を将来のために取っておく行為を貯蓄と
いう

複利は前の期の元利合計に利子が付く

利子率の上昇は来年の消費は今年の消費に比べ有利
になる

利子率が上昇すると借り入れによる消費は難しくな
る.
2013/6/20
経済学入門 11
2
宿題の答え:翔の利子率
貯蓄の有利さは利子率(%)で測る
利子
利子率=
×100
元本
 100万円預けて利子が100円

2013/6/20
経済学入門 11
3
来年の消費(万円) 今年と来年の所得と貯蓄
100(1+r) C
100
今年の所得を
すべて貯蓄(C)
B
100(1+r)-0
傾き=
0-100
100(1+r)
= -100
=- (1+r)
消費可
能領域
が増え
ている
利子のない
時の予算線
A
今年100万円の所
得,来年は0
2013/6/20
点 A から点 C
に移動した時の
傾き
経済学入門 11
今年の消費(万円)
100
4
以前の講義の復習
経済学とは個人や企業の
選択
に関する学問


経済問題の発生は次から来る:利用可能な
モノやサービス,機械設備,時間の
希少性
ある物を食べるには他の何かを犠牲にしな
ければならない.
 経済学とは英語で
economics

2013/6/20
経済学入門 11
5
復習/2
利己的な行動

消費者は賢く買い物する
企業が儲けようとする
アルバイトで時給を含めた良い待遇を求める




利己的だから経済は上手くいく

あることに資源を多く使えば他の物に使え
る資源は少なくなることはトレードオフが
あるから
2013/6/20
経済学入門 11
6
復習/4

機会費用は真の費用

ある選択の機会費用とはそれをすることに
よって諦めなければならないもの

サンクコストはもう既に支出してしまった
金額であり現在のどんな選択によっても取
り戻すことができない支出

ある活動を増やしたときに追加的にかかる
費用を限界費用という

ある活動を増やしたときに追加的に発生す
る便益を限界便益という
2013/6/20
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7
復習/5

現在の利益を我慢して将来の利益を獲得す
る活動を投資という
将来何が起こるか分からないことをリスク
があるという
 将来起こるリスクは出来るだけ避けたい
 トレードオフは他人との交換を促す
 経済学の4つの問題
1.何をどれだけ作る,2.どうやって作るか,
3.誰に与えるか,4.誰が決めるのか

2013/6/20
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8
ミクロとマクロ
1.
ミクロは虫眼鏡
2.
マクロは望遠鏡

正しくは
1.
ミクロ経済学 (microeconomics)-企業や消費者
に焦点を当てる,経済の小さい単位で考える
2.
マクロ経済学(macroeconomics)-経済全体の動
きを分析する.日本経済やアメリカ経済全体

経済全体の動きをどう捕らえるか?
2013/6/20
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9
マクロ経済学の目的

個人ではなく全体を見る時のカギは?
 誰かの支出は誰かの所得
 誰かの借金は誰かの貯金
1.
日本経済全体をどう診断するか
2.
経済全体の状態を良くする

マクロ経済学の目的
1.
多くの消費を行いたい=高い経済成長
2.
働き口を確保したい=低い失業率
3.
安く買いたい=低いインフレ率
2013/6/20
経済学入門 11
10
国の豊かさを測る

生産された財・サービスは誰かの消費につながる

生産できれば豊かになる .どっちが豊か?
1.
うまい棒1000個生産
2.
うまい棒500個生産

イチローがうまい棒を作る.【生産】
↓

真央ちゃんが食べる,美味しい 【付加価値】

全体でみると生産と付加価値は表裏一体
2013/6/20
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11
生産と付加価値

一定期間の国の生産=国内総生産 GDP

一年間である国がうまい棒を何本生産できたか
=一年間でうまい棒を何個食べられるか

国内総生は一定期間の付加価値の創出に等しい

国全体の生産物をどう集計するか?

世の中には様々な財・サービスが存在:うまい棒 1万
本,クルマ800万台,米 900万トン,かき氷 1万杯
2013/6/20
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国内総生産

様々な財の生産をどう測る?

最終的な財の金額を合計すればよい

国内総生産 GDPとは
ある国内での一定期間に市場向けに生産されたす
べての最終的な財とサービスの総額

英語でGross domestic productというのでGDPで省略

自動車部品やうまい棒のコーンは最終的な財ではな
く中間財なのでGDPには入らない
2013/6/20
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生産と支出・所得

イチローがうまい棒を作る.【生産】
↓
【所得】=10円
↑

真央ちゃんが食べる →代金の支払い【支出】=10円

つまり,生産,支出,所得は等しくなる

このGDPの3つの側面が等しくなることを三面等価という

総産出量を測るには最終支出を見るのが便利

生産例:うまい棒 100万円,クルマ10兆円,米 100億円

経済全体の総産出量=100万円+10兆円+100億円=
10兆100億100万円
2013/6/20
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国内総生産(支出側) :
出所 内閣府 経済社会総合研究所
10億円
500,000
400,000
498,855
300,000
503,903
503,725
512,975
506,687
471,139
501,209
470,560
482,384
475,529
200,000
100,000
0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
2013/6/20
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15
年
なぜ最終的な財とサービスなのか?
–
–
–
–
中間財を入れない理由を考えよう
パナソニックは20000円の費用でデジカメを作った
流通業者のヨドバシカメラに25000円で販売
それをヨドバシカメラは山田君に30000円で売る
2013/6/20
経済主体
金額
パナソニック
20,000
ヨドバシカメラ
25,000
山田君
30,000
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16
中間にヨドバシカメラ
2013/6/20
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17
パナソニックが消費者に直販
– パナソニックは流通経路を省いた
– パナソニックは20000円の費用で作ったデジカメを
山田君に30000円で直接販売する
2013/6/20
経済主体
金額
パナソニック
20,000
山田君
30,000
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18
パナソニックが消費者に直販/2
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
パナソニック
2013/6/20
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消費者
19
最終的な財やサービスの意味






どちらも一台のデジカメを生産=付加価値は同じ
どちらも山田君は30000円を支払っている
→最終支出で測ったGDPは30000円
もし仮に中間業者の売り上げを入れると
25000+30000=55000
同じ一台のデジカメなのにGDPは大きくなる
中間業者の売り上げはカウントしない
最終的な消費や投資だけをGDPに組み入れる
2013/6/20
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ボーカロイドを作っている会社
AH-Software (株式会社AHS)
 尾形友秀社長
 ボーカロイドとは
 ヤマハ株式会社 とポンペウ・ファブラ大学(ス
ペイン)の共同研究から出発
 初音ミクの特許出願について
 楽しいソフトにも様々な技術や人々が係わる
 会社概要

2013/6/20
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名目と実質
本当は生産物の数量を量る.簡便な金額を考えた
 うまい棒を100個生産して価格10円で売れた
名目GDP=10 × 100 =1000円
 値段が11円に上昇した
名目GDP=11 × 100 =1100円
 生産量は変化なし.しかし,名目GDPは増加した
 名目=金額で考える,実質=数量で考える
 実質GDPは価格変化の影響を取り除いたGDP
 うまい棒100個が実質GDPに対応している
 名目GDPは価格変化があるGDP

2013/6/20
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実質国内総生産(支出側):
出所 内閣府 経済社会総合研究所
10億円
600,000.0
500,000.0
400,000.0
523,685.8
503,921.0
489,588.4 509,369.4
485,968.3
300,000.0
497,440.7
512,451.9 518,230.9 512,364.2
519,277.3
200,000.0
100,000.0
0.0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年
2013/6/20
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国の豊かさを測る

ある国でたくさん生産できれば豊かになる

人が多すぎると困る.どっちが豊か?
1.
うまい棒500個生産,人口が12人
2.
うまい棒500個生産,人口が134人

1人当たりの生産力=国の人口1人当たりの実質GDP

1人当たりの平均的に利用可能な財とサービスに注目

国民1人当たりうまい棒が何個もらえるか
2013/6/20
経済学入門 11
24
人口:総務省統計局 日本の統計 人口・世帯
2008年から日本の人口は減っている
千人
120,000
127,694 127,767
100,000
127,787
128,032
128,031
127,900 128,083
127,798
128,057
127,515
80,000
60,000
40,000
20,000
0
2013/6/20
年
経済学入門 11
25
1人当たり実質GDP
円
4,500,000
4,000,000
3,500,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
だいたい400万円くらい
4,090,249
3,944,032
4,006,645
3,805,725
3,892,733
3,823,968
4,046,025
3,985,716
4,001,053
4,072,280
年
2013/6/20
経済学入門 11
26
1人当たりのGDP,グラフの工夫

1人当たりの実質GDPで見ると下落は大きい

大震災の影響

実質で測ると回復は早い,2006年レベル回復

サラリーマンの平均年収は400万円だった

0から始まると違いが良く分からない

様々な工夫が必要
 途中からグラフを書く.例:人口1億人から
 増加率を表示する
2013/6/20
経済学入門 11
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国内総生産(支出側):出所 内閣府 経済社
会総合研究所 2009年のリーマンショック
10億円
530,000.0
520,000.0
510,000.0
500,000.0
490,000.0
480,000.0
470,000.0
はかなり大きな影響
523,685.8
519,277.3
512,364.2
512,451.9
497,440.7
518,230.9
509,369.4
503,921.0
489,588.4
485,968.3
460,000.0
年
2013/6/20
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28
経済成長

前の年より豊かになったかが重要だ

普通,国の人口は僅かでも増えていく

経済全体の産出量よりもその増加率が重要

成長率=増加率

毎年2%の増加率は2倍は35年かかる

毎年1%だと70年かかる
今年のGDP-去年のGDP
今年のGDP成長率=
× 100
去年のGDP
2013/6/20
経済学入門 11
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経済成長率



小数点第2
位を四捨五
入せよ
2011年の実質GDPは 509兆円
2012年の実質GDPは519兆円
2012年の日本の実質GDPの成長率は? 2.0%
519 - 509
× 100
2012年のGDP成長率=
509
10
=
× 100 = 1000 ÷ 509
509
= 1.964 ≒ 2.0
2013/6/20
経済学入門 11
30
実質GDP成長率
%
4.7
4.0
2.0
1.7
2.4
1.3 1.7
2.2
1.9
-0.6
0.0
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
-2.0
年
-4.0
-1.0
-6.0
2013/6/20
経済学入門 11
-5.5
31
支出アプローチ

最終財に対する需要を金額で表示して合計

モデルで簡単化
1.
日本の住民,外国の住民
 国内需要,外国需要 → 内需と外需
2.
民間と政府
 民間需要,公的需要 → 民需,公需
3.
消費と投資
 今満足を得て無くなる財(うまい棒)
 将来の生産に役立つ財(うまい棒用焼き機=パフマシ
ーン)
2013/6/20
経済学入門 11
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生産=供給は需要に等しい
日本国における財の供給=需要
 国内総生産+輸入(海外生産)=民需+公需+外需
 民需=消費+投資
 公需=政府購入
 外需=輸出 (外国人が日本の財を需要)
 消費等には外国の財も含まれる e.g.ルイヴィトン

国内総生産+輸入=消費+投資+政府購入+輸出
2013/6/20
経済学入門 11
33
最終財アプローチ
国内総生産=消費+投資+政府購入+輸出-輸入



1.
2.
3.
4.
前の式の輸入を右辺に移項した
ルイヴィトンのバックの購入は消費と輸入で相殺
主体を考える
消費者
民間部門
企業
日本
公的部門
政府
世界
外国
2013/6/20
経済学入門 11
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重要な公式
1.
2.
3.
4.
5.
6.
消費(consumption)
C
投資(investment)
I
政府購入(government)
G
輸出(export)
X
輸入(import)
M
純輸出:X-M
国内総生産=消費+投資+政府購入+純輸出
GDP=C+I+G+X-M
2013/6/20
経済学入門 11
35
復習1

マクロ経済学は経済全体の動きを分析する

その目的:高い経済成長,低い失業率,低い
インフレ率
国内総生産 GDP
Gross domestic product

2013/6/20
経済学入門 11
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復習2







ある国内での一定期間に市場向けに生産され
たすべての最終的な財とサービスの総額
消費 consumption
C
投資 investment
I
政府購入 government
G
輸出 export
X
輸入 import
M
GDP=C + I + G + X – M
2013/6/20
経済学入門 11
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アンケート,宿題(締切火曜夜)

テキスト第8章p.223~p.248を読む

ポータルの宿題とアンケートに答える
1.
テキストp.249復習問題1.なぜ一国の経済の所得
と支出が等しくなければならないのか?
2.
名目GDPと実質GDPの違いは何だろうか?
3.
中島君は山田君から100万円を借りた.翌年に借りた
お金100万円を返し,利息20万円を支払った.借り入
れ利子率は何%か?
経済学入門 11
2013/6/20
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