プログラミング入門2 第11回 情報工学科 篠埜 功 今日の内容 • callocによる動的な領域確保について • mallocという、callocに似たライブラリ関数もあ るが、この演習ではcallocのみ紹介する。 動的な記憶域確保 静的(static)な記憶域確保 • これまでの方法 – 配列の要素数は固定。 – あらかじめ十分な大きさの配列を確保しておく必 要があった。 • 今回紹介する方法 動的(dynamic)な記憶域確保 – 問題に応じて、適切なサイズの配列を確保する には、プログラムの実行時に確保を行う必要が ある。 – 余分なメモリの使用を避けることができる。 静的(static) --- プログラムのコンパイル時 動的(dynamic) --- プログラムの実行時 ヒープ領域(heap) • プログラムからはヒープ領域(heap)を用いることがで きる。 • ヒープ領域を使うには、mallocあるいはcallocという ライブラリ関数を呼び出すことにより領域を確保する。 使い終わったら、freeというライブラリ関数を呼び出 すことにより解放する。解放することにより、それ以 降のmallocあるいはcallocの呼び出し時に再利用可 能になる。 (注意)ここでいうヒープ領域は、データ構造の授 業で習う木構造のヒープとは関係がない。 calloc関数 • ヒープ領域から実行時に記憶域を確保する。 • 引数として、データ型のサイズsize(第2引数)と、その個数 n(第1引数)を受け取り、1つの要素の大きさがsizeで長さ nの配列の領域を確保する。確保した領域のすべてのビッ トが0で初期化される。領域確保に成功した場合は、その 領域の先頭へのポインタを返し、失敗した場合は、ヌルポ インタを返す。返り値の型はvoid *型である。返り値は、ポ インタ型の変数に代入するときはキャストする必要はない (キャストしてもよいが)。 • データ型のサイズは、sizeof (型式) で取得できる。 • calloc関数を使うためにはstdlib.hをインクルードする必要 がある。 ヌルポインタ ヌルポインタ(null pointer)は、どこも指さないポインタであり、 何かを指しているポインタとは異なることが保証されている。 整数値0は、任意のポインタ型へ変換でき、その結果がヌル ポインタである。 ヌルポインタを表すため、ヌルポインタ定数(0か、あるいは (void *) 0)がマクロNULLとしてstddef.hに定義されている。 (stdlib.hなどのいくつかの他のヘッダーファイルにも定義され ている。) ヌルポインタは、キャスト無しで任意のポインタ型の変数に代 入したり、任意のポインタ型の値と比較してよい。自動的に型 変換される(暗黙の型変換)。 例(打ち込んで確認) #include <stdio.h> #include <stdlib.h> int main(void) { int型1個分の記憶域をヒープ callocの返り値はキャスト int *p; 領域から割り当てる 無しでpに代入してよい p = calloc (1, sizeof (int)); NULLはキャスト無しでpと比較してよい if( p == NULL ) printf ("記憶域の確保に失敗しました。\n"); else { *p = 15; printf ("*p = %d\n", *p ); } return 0; } 解説 • calloc関数による記憶域の動的な確保 int * p; p = calloc (1, sizeof (int) ); int型ポインタ変数を宣言 int * p; calloc関数呼び出し時に領域が確保され、 その先頭へのポインタがpに代入される。 p = calloc (1, sizeof (int) ); 500番地 p p sizeof演算子 sizeof演算子は、型式を引数にとる。評価結果は、その型 のサイズである。 構文 sizeof (型式) 意味 sizeof (t) の評価結果はtのサイズである 型式は、int, double, char等の基本型、int [3]等の配列 型、struct {int px; int py;} 等の構造体型、int *等のポ インタ型、 typedefで定義した型名、あるいはこれらの 組み合わせなどである。詳しくは教科書あるいは規格 書を参照。 例(打ち込んで確認) #include <stdio.h> typedef struct { int x; int y; } point; int main (void) { printf ("int: %d\n", sizeof(int)); printf ("int[3] : %d\n", sizeof(int[3])); printf ("struct {int x; int y;} : %d\n", sizeof(struct {int x; int y;})); printf ("point: %d\n", sizeof(point)); printf ("point *: %d\n", sizeof(point *)); return 0; } void へのポインタ型 calloc関数の返り値はvoid *型(voidへのポインタ型)である。 void *型のポインタを他のポインタ型変数に代入したり、他の ポインタ型のポインタをvoid *型の変数に代入したりできる(暗 黙の型変換が行われるのでキャストは不要)。 int, char, double, 構造体 など、さまざまな型のための領域を確保する 際にcalloc関数が用いられるので、void *型で返している。 (キャストしない例) int *p; p = calloc (1, sizeof (int) ); キャストしても構わない。 (キャストする例) int *p; p = (int *) calloc (1, sizeof (int) ); (補足)C++では、void*型のポインタを他のポインタ型の変数に代入す るときにはキャストが必要。 free関数 : 記憶域の解放 • 動的に確保した記憶域は、不要になった時点でfree関数を呼 び出して解放する。それによって、それ以降のcallocあるいは mallocの呼び出しで再利用可能な状態になる。 • stdlib.hというヘッダーファイルを読み込んで使う。 • 引数にポインタpを受け取り、pが指す先の領域を解放する。 返り値はない。ただし、pがヌルポインタのときは何も行わな い。pはcalloc, malloc, あるいはreallocによって以前に割り当 てられた記憶域へのポインタでなければならない(もしそうで ない場合は動作は未定義)。pが、freeやreallocによって既に 解放された領域を指している場合も動作は未定義。 (注意)reallocは、解放と割り当ての両方を行うライブラリ関 数である。この演習では、malloc, reallocの説明はしない。 例(打ち込んで確認) #include <stdio.h> #include <stdlib.h> int main(void) { int *p; p = calloc( 1, sizeof(int) ); if (p == NULL) printf ("記憶域の確保に失敗しました。\n"); else { *p = 15; printf("*p = %d\n", *p ); free(p); } return 0; } 記憶域解放 free(p); p = calloc( 1, sizeof(int) ); 記憶域確保 確保した領域へ値を書き込む例(打ち込んで確認) #include <stdio.h> #include <stdlib.h> int main(void) { int * p; p = calloc (1, sizeof(int)); if(p == NULL) printf ("記憶域の確保に失敗しました。\n"); else { printf ("整数を入力して下さい:"); scanf ("%d", p); printf ("*p = %d\n", *p); } return 0; } 1次元配列の動的確保 • 配列宣言の例 int x[10]; 配列の要素数は定数式でなければならない。 要素数を変数とすることは1990年のISO規格では 許されていない。 (注)1999年のISO規格(C99)では許されているが。 実行時に領域を確保することにより、適切な長 さの配列を用いることができる。 例(打ち込んで確認) #include <stdio.h> #include <stdlib.h> int main (void) { int no, i=0; int * p; printf("確保する配列の要素数:"); scanf("%d", &no); p = calloc (no, sizeof (int)); if (p == NULL) printf ("記憶域の確保に失敗しました。\n"); else { while (i < no) { p[i] = i; i=i+1; } i = 0; while ( i < no ) { printf("p[%d] = %d\n", i, p[i] ); i = i + 1; } /* 続き */ free (p); } return 0; } p[0] sizeof(int) * 5 p[1] p[2] p[3] p[4] p 基本課題1 文字列(アルファベットのみ)をキーボードから受け取り、 それを逆順に表示するプログラムを作成せよ。文字列 を格納する領域は、キーボードから文字数(の上限)N を受け取り、callocで確保せよ。 (注意)文字列の形で格納する場合、最後にヌル文字 が必要である。ただ、この問題では逆順に表示できさえ すればよく、ヌル文字を追加で格納するかどうかは自 由とする。 基本課題2 受験者N人(Nは実行時にキーボードから入力)の氏名およ び数学、英語の2科目の試験の点数をキーボードから受け 取り、氏名、各科目の点数、合計点を一覧表にして表示し たい。これを行うプログラムを、callocを用いて書け。 各受験者の氏名と点数を入力する部分、合計点を計算す る部分、一覧表示をする部分は、別々の関数として定義し、 それらをmain関数から呼び出す形でプログラムを記述せよ。 (実行例) 人数を入力してください: 2 氏名: 芝浦太郎 数学: 90 英語: 90 氏名: 芝浦次郎 数学: 100 英語: 100 氏名 数学 英語 合計 芝浦太郎 90 90 180 芝浦次郎 100 100 200 一覧表示で縦をそろえるには、 printfの変換指定を、文字列 の場合は%-8s, 整数の場合 は%4dのようにすればよい。 詳しくは教科書p.318を参照。 あるいはmanコマンドで $ man –S 3 printf で調べればよい。 構造体配列の動的確保(pointでの例) (0) point構造体を定義 (1) point構造体へのポインタ型の変数pを宣言しておく。 point *p; (2) 配列の要素数をキーボードから受け取り、Nに格納する。 (3) p = calloc (N, sizeof (point)); で必要な領域を確保し、その先頭アドレスをp に代入 (4) pを使って、確保した領域内の各要素にアクセス。 p[0], p[1] などが領域内の各構造体を表す。(*p, *(p + 1), 等でもよい) p[0].x, p[0].y, p[1].x, …などが、領域の中に確保された各構造体のメン バーを表すことになる。 p -> x, p -> y, (p+1)-> x 等、アローを使った表記でもよい。 typedef struct { double x; double y; } point; 発展課題1 基本課題2の表示を、合計点の高い順に表 示するように変更せよ。
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