甲南大学『ミクロ経済学』 特殊講義 新旧産業組織論と ネットワーク・エコノミックス http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~ida/ 2Kyouikukatudou/3Hijyoukin/2000/Konan2000.html 依田高典 1 伝統的産業組織論 • ハーバード学派 – 1930年代、チェンバリン・メイスンから – 50、60年代のベイン・ケイブスを経て – 最近のケイセン・ターナー・シェーラーまで • シカゴ学派 – ノーベル賞学者スティグラー総帥 – デムゼッツ・ブローゼンを含め – 法と経済学のディレクター・ポズナーまで 2 ハーバード学派 • SCPパラダイム・集中度-利潤率仮説 – S→C→Pという因果関係 – 寡占・独占下の共謀と協調 – 高い参入障壁・競争制限的行為 • 厳格な独占禁止政策 – カルテル・反競争的行動の厳格な規制 – 市場集中度と合併を厳格に制限 – 構造的措置・企業分割 • 理論的根拠 – 市場閉鎖の危険性 – 潜在的競争の消滅 • 1968年合併ガイドラインと分割訴訟 3 シカゴ学派 • 強固な事前均衡(市場メカニズム信奉) – 自然淘汰と適者生存 • 価格理論のレンズ(ミクロ経済学信奉) – 原則自由放任主義 • ハーバード・パラダイム批判 – 一時的不均衡・大企業の効率性 • 反トラストのシカゴ革命(1982) – – – – 分割訴訟の早期解決 合併規制の緩和 カルテル規制の厳格化 合併ガイドライン改正 4 新しい産業組織論 • 第三の潮流の台頭 – 伝統的IOの内在的非整合 • ハーバード:市場行動論の欠落 • シカゴ:寡占理論の欠如 – ゲーム理論の静かな革命 • 戦略的相互依存性の分析 • 理論的産業組織論の黄金時代 • コンテスタビリティ理論 – 市場の失敗としての自然独占規制批判 – 参入退出の完全性・ヒットエンドラン・クリームスキミング • 戦略的参入阻止価格理論 – 埋没費用の参入阻止効果・脅迫の信憑性・過剰生産設備 5 新しい産業組織論と独占禁止政策 • クリントン時代のポスト・シカゴ学派の動き – ハーバード:原則違法・市場構造主義 – シカゴ:原則合法・市場行動主義 – ゲーム:条理原則・市場行動主義 • 実証的分析の長所 – 説明的側面:違法性と損害額の分析 – ハーバードの寡占論とシカゴのミクロ重視 • 規範的分析の短所 – 予測的側面:解決策とルールの分析 – モデル一覧の選択基準の欠如 6 ネットエコンの問題提起 • ネットワーク産業とは – 公益事業・インフラ・コモンキャリアを発展的に再定義 • ネットワーク外部性と標準化 – 需要側の規模の経済性 – 加入者(n)と可能通信種類数(nP2) – 互換性の欠如と過剰慣性・過剰転移 • ボトルネック独占とアクセス・チャージ – 公正競争条件とイコール・フッティング – 命運はアクセス・チャージの設定 • ユニバーサル・サービス/インセンティブ規制/複雑系 7 試金石としてのネットエコン • スティグラーの楽観 「産業組織論という科目は存在しない。⋯まさにミクロ経済学 そのもの」。 • 伊東光晴の悲観 「ミクロとマクロの中間、産業の論理はまだない」。 • ネットエコンは産業組織論という鼎の軽重を問う 8
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