記者懇談会 重力の謎に迫る

超弦理論の数値シミュレーション
西村 淳 (KEK理論センター、総研大)
日本物理学会2009年秋季大会、素核合同シンポジウム
「数値的手法による場の理論研究の発展」、甲南大, 2009年9月10日
Ref.) Hanada-J.N.-Takeuchi,
Anagnostopoulos-Hanada- J.N.-Takeuchi,
Hanada-Miwa-J.N.-Takeuchi,
Hanada-Hyakutake-J.N.-Takeuchi,
Ishiki-Kim-J.N.-Tsuchiya,
PRL 99 (’07) 161602
PRL 100 (’08) 021601
PRL 102 (’09) 181602
PRL 102 (’09) 191602
PRL 102 (’09) 111601
0. 序
ゲージ/重力対応
(超弦理論からの予想)
Maldacena (’97)
SPIRESでの引用:6225件
U(N) 超対称 Yang-Mills 理論 (SYM)
16 (32) 個の超電荷
トホーフト極限
(
強結合領域
(
を固定して
)
の大きい領域 )
10d 超重力理論 (SUGRA)における古典解
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予想の根拠
D ブレーン
超弦理論における“ソリトン解”
(Dirichlet)
ゲージ粒子の伝播
次元 U(N) SYM 低エネルギー極限
N
トホーフト極限
を固定して
の大きい領域
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グラビトンの放出
10dの曲がった 時空
ストリングのループ補正は
で抑制
補正は
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で抑制
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どこがおもしろいのか?

トホーフト (’73)のアイディアの実現
ラージ N ゲージ理論

弦理論
emergent space-timeというアイディア
反ドジッター時空
ブラックホール幾何学(有限温度)

応用:
曲がった時空を用いたハドロンや物性理論の研究
ゲージ理論を用いたブラックホールの性質の理解

最終目標:
背景に依存しない、非摂動的な弦理論の定式化

強弱双対性
強結合ゲージ理論の研究が重要!
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モンテカルロ計算
超対称性
格子ゲージ理論
⇒ 並進対称性
超対称性は連続極限で回復できるが、
典型的には, パラメタの微調整が必要!
“lattice SUSY”における最近の発展
杉野氏の企画講演、9/10午前
 様々な対称性を持った格子作用の構成
例)
トポロジカル・ツイストを用いて、超電荷を一つ保つ格子作用
32
 16個の超電荷を持つ一次元SYMの非格子シミュレーション
3d, 4dのゲージ理論への拡張
超共形場の理論
ラージ N リダクションの考えを応用
(AdS/CFT)
微調整は不要!
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c.f.) Kaplan-Unsal (’05), Elliott-Giedt-Moore (’08)
Catterall (’08)
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目次
0. 序
1. 16個の超電荷を持った1d SYMの非格子シミュレーション
ブラックホール熱力学の再現
ウィルソン・ループによるシュバルツシルド半径の同定
2. 高次元への拡張 (ラージ-N リダクションの考えを応用)
上の
のトホーフト極限
ウィルソン・ループ、2点関数
3. まとめと展望
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1. 16個の超電荷を持った1d SYM
の非格子シミュレーション
16個の超電荷を持った1d SYM
1次元 ゲージ理論
周期的境界条件
反周期的境界条件
温度
トホーフト結合定数
(一般性を失わない)
低温
高温
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強結合
弱結合
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双対な超重力解を用いた記述
高温展開
Kawahara-J.N.-Takeuchi (’07)
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非格子シミュレーション
Hanada-J.N.-Takeuchi, PRL 99 (07) 161602 [arXiv:0706.1647]
注: 1次元の場合 ゲージ対称性は非摂動的に固定できる
 static diagonal gauge :
 residual gauge symmetry :
は、
という条件を課すことにより固定
RHMC アルゴリズムを用いて、効率的なシミュレーションが可能
(Fourier accelerationが余計なコストなしに行える etc.)
c.f.) 格子を用いた方法 : Catterall-Wiseman, JHEP 0712:104,2007
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結果: ポリャコフ・ライン
Anagnostopoulos-Hanada- J.N.-Takeuchi,
PRL 100 (’08) 021601 [arXiv:0707.4454]
高温展開
(next-leadingの補正を含む)
非閉じ込め相における典型的振舞
ボゾニックのときと違い、相転移はなし
重力側からの予想と一致 (Barbon et al., Aharony et al.)
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ゲージ/重力対応からの予言(I)
 双対な超重力解
ホーキングの理論
ブラックホールの熱力学
7.41
Klebanov-Tseytlin (’96)
ゲージ/重力対応の予言:
このブラックホール熱力学が、 1d SYMから再現
(但し、ラージN、低温)
ブラックホール熱力学の微視的起源
ブラックホール内部の状態の量子論的記述を与えている!!!
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結果: 内部エネルギー
Anagnostopoulos-Hanada- J.N.-Takeuchi,
100 (’08) 021601 [arXiv:0707.4454]
PRL
自由エネルギー
高温展開
(next-leadingの補正を含む)
10d BHから
得られた結果
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高次補正を含めた、より精密な検証
Hanada-Hyakutake-J.N.-Takeuchi,
PRL 102 (’09) 191602 [arXiv:0811.3102]
補正
slope = 4.6
有限カットオフ(Λ)効果
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ゲージ/重力対応からの予言(II)
SYM
プローブ D-ブレーン
Maldacena (’98)
Rey-Yee (’98)
string
ウィルソン・ループ
最小曲面
 ウィルソン・ループによるシュバルツシルト半径の同定 (1dSYM)
1.89
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結果: ウィルソン・ループ
Hanada-Miwa-J.N.-Takeuchi,
PRL 102 (’09) 181602 [arXiv:0811.2081]
ウィルソン・ループによる
シュバルツシルト半径の同定
high T exp.
(next-leading)
高次項
(摂動論的補正として解釈可能)
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ゲージ/重力対応からの予言(III)
e.g.)
双対な超重力解からの予言
Sekino-Yoneya (’99)
(Gubser-Klebanov-Polyakov-Witten関係式 (’98)に基づく計算)
ベキ則を1d SYMが再現
Hanada-J.N.-Sekino-Yoneya
論文執筆中
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2. 高次元への拡張
(ラージNリダクションの考え方を応
用)
ラージN リダクション
Eguchi-Kawai (’81)
Bhanot-Heller-Neuberger (’82)
Gonzalez-Arroyo & Okawa (’82)
D次元トーラス上の U(N) ゲージ理論
1点に潰す
large-N reduced model
c.f.) QCD at
Narayanan-Neuberger (’03)
Bringoltz-Sharpe (’09)
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新しいラージNリダクション
SYM on
Ishiki-Ishii-Shimasaki
-Tsuchiya (’08)
1点に潰す
1d SYM + mass deformation
(16個のSUSYを保つ)
無数の古典的真空
(16個のSUSYを保つ)
すべて縮退
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新しいラージNリダクション
SYM on
Ishiki-Ishii-Shimasaki
-Tsuchiya (’08)
: SU(2)代数のn次元既約表現
SYM on
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弱結合極限での検証
Ishiki-Kim-J.N.-Tsuchicya
Phys.Rev.Lett.102 (09) 111601[arXiv:0810.2884]
有限温度での非閉じ込め相転移
上の
SYMに対して
知られている結果
(Aharony et al. ’03)
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円形ウィルソン・ループ
共形写像
大円
Erickson-Semenoff-Zarembo (’00),
Drukker-Gross (’00),
Pestun (’07)
(双対な超重力解から得られた結果と一致)
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結果: 円形ウィルソン・ループ
1
(暫定的な結果)
Honda-Ishiki-J.N.-Tsuchiya
進行中
2
c.f.) 本多正純氏の講演
9/10午前
強結合からの展開
弱結合からの展開
all orderの結果
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カイラル・プライマリ演算子
e.g.)
2点関数
(任意のλに対して)
ラージN リダクション
SUSY 非くりこみ定理
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結果: カイラル・プライマリ演算子の2点関数
(暫定的な結果)
Honda-Ishiki-Kim-J.N.-Tsuchiya 進行中
reduced model (N=14) に対する free theory の結果
SYM に対する結果
SUSY 非くりこみ定理が
有限の
に対しても成立(?!)
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さらに興味深い物理量
 四角形ウィルソン・ループ, 多点相関関数
上の
SYM
c.f.) Berenstein-Cotta-Leonardi (’08)
large-N reduced model を用いて計算可能
AdS/CFT の極めて非自明な検証
共形対称性のため
i.e.,
ゲージ/重力対応の予言:
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3.まとめと展望
まとめと展望
超対称ラージ N ゲージ理論の非格子シミュレーション
重力との直接的な関係が明らかになってきた
ゲージ/重力対応の検証
 最大の超対称性を持つ理論
16 個の超電荷
(1d SYM)
32 個の超電荷
(
SYM on
)
超共形不変性
新しいラージN リダクション
(16個のSUSYを保つ)
ラージ N 極限で32個のSUSYが回復すると期待 : 要検証(特に強結合領域)
SYM on
, SUSYの少ない理論
(シミュレーションは比較的簡単)
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