情報処理Ⅱ 2007年12月10日(月) 授業の進め方 構造体 プリプロセッサ 指令 その他の型 ライブラリ関数 自分の思う通りに,適切な形で,プ ログラムとして表現する. 識別子 算術型 制御文 演算子 2年以降で さらに学習・習熟 ファイル入出力 配列・文字列 ポインタ 関数 変数の 有効範囲 再帰呼び出し プログラムの作成・ コンパイル・実行 2 本日学ぶこと いくつかの型 なぜ「型」にこだわるか? typedef 列挙型(enum型) 構造体 プログラムを書きやすく 読みやすくする…定性的 なメリット 実行時のコスト(メモリ使用量な ど)を見積もることができ,そこか らプログラムの改善が期待できる …定量的なメリット 処理対象のデータを効果的・効率的に取り扱える 既存の機能をもとに,便利な機能を創れる 以下を読む上での注意 この色とこの色は型名を表す. この色は変数名を表す. リpp.108-109 3 typedef 独自に型(type)を定義(define)する. 例 ただし,メモリに割り当てるわけでないので,「宣言」である. typedef signed char schar; schar c; ⇒ signed char c; と同じ typedef unsigned char uchar; uchar c, *p; ⇒ unsigned char c, *p; と同じ typedef char *String; String s, t; ⇒ char *s, *t; と同じ typedef char c5[5]; c5 x, y, z; ⇒ char x[5], y[5], z[5]; と同じ 構造体の型名定義によく用いられる. リp.107, pp.142-145 4 typedefの考え方 変数の定義 char c5[5]; は,変数c5を定義し,その型はchar [5]型 とする. 型の定義 typedef char c5[5]; は,c5型を定義し,その型は char [5]型と同一とみなす. 5 列挙型(enumeration)とは 「ラベル」を格納・参照・比較したいときに使う. 変数に格納される具体的な値には関心がない. 実際には,ラベルに整数値が割り当てられる.これを積極的に 活用することもある. 構文: enum タグ名 { 列挙子並び }; 「enum タグ名」型が定義される. 列挙子は「,」で区切る. リpp.65-66, p.138 6 列挙型の使用例 例 0 1 enum Boolean {FALSE, TRUE}; enum Boolean p = TRUE, q = FALSE, r = p||q; 13 enum month { Jan = 1, Feb, Mar, ..., Dec, MONTH_END } mloop; 型と変数を同時に定義 int rain[100][MONTH_END]; for (mloop = Jan; mloop < MONTH_END; mloop++) { rain[7][mloop] = ...; } 年月単位の降水量を格納する 7 汎整数型 汎整数型(integral type)に含まれるもの 列挙型は,計算時にはint型とみなされる. リp.64 整数型(char,int,long など) 列挙型 size_t型(sizeof演算子の評価値など.unsigned int またはunsigned longと同一のことが多い.) ただし,利用は代入,比較,範囲内の増分・減分にとどめておく. 8 構造体(structure) 複数のオブジェクトを取りまとめて一つのオブジェクトとして 扱うための機構 構造体で表現するとよいもの (x,y) 入p.242 リp.366 (2次元,3次元などの)座標上の点 複素数 行列(行数と列数と各成分) 所持金 学生情報 500 100 100 100 50 10 学生番号:0001 氏名:和大太郎 情報処理Ⅰの成績:80 情報処理Ⅱの成績:75 修得単位数: 52 9 構造体宣言の例(1) 構文: struct タグ名 { メンバ宣言子並び }; 「struct タグ名」型が定義される. 例 struct point { double x; double y; }; struct point p = {1, -1}; セミコロンを忘れない ように この x と y を, point構造体の メンバという. p: x=1 y = -1 配列と同じ書式で 初期化可能 リpp.366-367, pp.205-206 10 構造体宣言の例(2) 構造体宣言と変数定義を一つの文で struct point { double x; double y; } p; 構造体宣言と型定義を一つの文で typedef struct Point { double x, y; } point; point p; 「,」を用いて メンバを一括 宣言してよい struct Point型と point型が定義される 入p.242 リpp.367-368 11 構造体宣言の例(3) 無名構造体 struct { double x; double y; } p; typedef struct { double x, y; } point; point p; 12 構造体宣言の例(4) 行列(行数,列数とも10まで) struct matrix { int row, column; double element[10][10]; }; • • row column element … 行列(成分はポインタ) struct matrix { int row, column; double **element; }; row • column • element 13 構造体宣言の例(5) 自己参照構造体 struct node { graph char label; struct node *next; label = 'A' }; next struct node graph[100]; graph[0].label = 'A'; graph[0].next = graph + 1; graph[1].label = 'Z'; graph[1].next = NULL; • • リp.69, p.143, p.372, p.376 label = 'Z' … next = NULL 14 構造体の参照と代入(1) 前提 struct point { double x, y; }; struct point p, *pp = &p; p: pp x y メンバへのアクセス方法 構造体オブジェクトpのメンバxは p.x と書いて 参照・代入ができる. 構造体オブジェクトを指し示すポインタppについては, (*pp).x もしくは pp->x と書けばよい. × *pp.x • . と -> は演算子であり,最上位の優先順位を持つ. 入p.243 リp.157, pp.367-368 15 構造体の参照と代入(2) 構造体オブジェクトの代入 struct matrix a, b; (aを初期化) b = a; とすると, bにはaのコピーが格納される. 構造体の中に配列があっても,コピーされる. 構造体の中のポインタは,ポインタ値がコピーされる. 構造体渡し 関数の引数や戻り値の授受でも,構造体オブジェクトが代入 (コピー)される. しかし,構造体はしばしばポインタで渡される(参照渡し). • 関数処理で,構造体オブジェクトの中の値を変えたいとき • 大きなサイズの構造体オブジェクトをスタックに置きたくない とき リp.163, p.358, pp.97-98 16 三角形の面積:仕様 2次元座標上の三角形の面積を求める. 構造体を用いる. 三点P(a, b), Q(c, d), O(0,0)からなる⊿PQOの面積 は,|ad-bc|/2 で求められることを利用する. y O x 17 三角形の面積:構造体 2次元座標の点 struct point { double x, y; }; 三角形の3点 struct triangle { struct point p1, p2, p3; }; リp.103 メンバと変数は,識別子が重複していてもよい. 18 三角形の面積:関数 struct triangle transform_triangle(struct triangle t); 三角形の3点を,メンバp3が原点になるように平行移動する. double calc_area(struct triangle t); 三角形の面積を求める. y y p1(1,3) p1(-3,1) p3(4,2) p3(0,0) O O p2(5,0) x x p2(1,-2) 19 構造体利用時の注意 構造体と配列の使い分け sizeof(構造体) 構造体とプログラミング してはいけないこと 20 構造体と配列の使い分け 配列 構造体 入p.244 同一の型の集まり 各要素に番号がついている ループなどを使って順番に処理する 様々な型の集まり(ただし,同一の型の集まりでもよい) 各要素に付けられた名前を使ってアクセスする 「配列を含む構造体」や「構造体の配列」もよく利用される. 21 sizeof(構造体) sizeof(構造体) は,構造体の各メンバのサイズの合計 以上になる. 構造体オブジェクトの中で使用されない領域もあり得る.「パ ディング」または「穴」と呼ばれる. s: c struct s { char c; int i; }; リp.373 パディング i sizeof(char) == 1 sizeof(int) == 4 でも sizeof(struct s) != 5 22 構造体とプログラミング さまざまな種類の情報を持つ「実体」を一つのオブジェクトと して処理したいとき, まず,「何に処理をしたいか?」を考える. • 保持すべき情報を細分化し,それぞれをメンバとするような 構造体を宣言する. 次に,「何の処理をしたいか?」を考える. • 構造体を引数にとって処理する関数を定義する. • 引数・戻り値ともに,型は構造体そのものにすべきか, 構造体のポインタにすべきか,そのつど検討する. • 動作確認用に,構造体の中身を出力する関数も. 23 してはいけないこと × 関数内のauto変数を指し示すポインタを,戻り値とする. struct point *create_point(int x, int y) { struct point p = {x, y}; return &p; } コンパイルエラーにはならないが,実行時に支障をきたす. 関数処理が終わると,pの領域が破棄される ⇒ *(&p)が不定! pをstatic変数とするか,mallocで実行時に領域を確保し てそのポインタを返せば,問題を回避できる. リpp.118-119 24 独自の型はどこで定義する? 一般には,グローバル区間で定義し,複数の関数間で利用 できるようにする. #include文の後ろ,関数プロトタイプの前に書く. ブロックの中で定義してもよい. 有効範囲は,そのブロックの終わりまで. 25 まとめ 独自の型(typedef,列挙型,構造体)を定義することで, 変数に持たせる意味がより明確になる. 構造体により,複数のデータからなるオブジェクトを創ること ができる. 構造体を対象とする関数を定義するとき,(引数・戻り値の) 型は構造体そのものにすべきか,構造体のポインタにすべ きか,そのつど検討する. 26 今後の予定 2007年12月17日(月):第11回授業 次回授業終了後すぐ,授業Webページにて,第2回レポート課 題を掲示します. 2008年1月10日(木):休講 2008年1月17日(木):第2回レポート提出期限 2008年1月21日(月):第12回授業 2008年1月28日(月):第13回授業 2008年1月30日(水):第14回授業 27
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