LCAを用いたパレット運用における CO2排出量に関する研究 流通情報工学課程四年次 学籍番号:2002729 氏名:野崎 大道 1 研究の背景 運輸部門のCO2排出量削減策 世界規模での地球温暖化に対する懸念 モーダルシフト 京都議定書の発効に伴う各国の排出量削減目標 エコドライブ 日本における運輸部門での排出量の増加 旅客全体 貨物全体 低公害車の導入 物流機器の効率的利用 運輸部門全体 CO2排出量増減率 30% 25% 20% 15% 10% 5% 物流機器のひとつであるパレットを、 削減の必要性 0% ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment,LCA) -5% 1990 を用いて評価する。 1995 2000 2005 2 発表内容 研究内容 発表 プラスチックと木製 ○ パレット LCA 自社所有と プラスチック 利用者視点 比較考察 レンタル 木製 ○ パレットレンタル 環境負荷 パレットの紛失を防止する 事業者視点 低減策検討 パレットを補修する 視点 3 研究内容:LCA比較考察 パレットを利用する事業者の視点 環境負荷低減 パレットをどのように 運用するか どんな材質のパレットを 用いるか プラスチック パレット 木製 パレット どちらが環境にやさしいか レンタル する 自社で 所有 どちらが環境にやさしいか LCAによる比較考察 CO2排出量が小さい方が環境にやさしい 4 LCA比較考察の手順 計算 比較・考察 ライフサイクルフローを作成 運用年数による CO2排出量推移をみる CO2排出工程を決定 各工程の CO2排出量を計算 比較 差の要因を見出す CO2排出工程の内訳から 差の主要因を見出す パレット1枚の CO2排出量を計算 結論から提言を行う 5 プラスチックパレットと木製パレットの LCA比較考察 ☆プラスチックパレットと木製パレットの相違点 プラスチック 主な相違点 24kg 重量 10年 耐用年数 ポリプロピレン 原材料 なし 補修 木製 40kg 5年 木材 鉄釘 あり 6 (P4)再生 (P1)調達 (P1-1)原油採掘 :作業工程 (P4-4) 再生プラ原料 (P3-3)陸上輸送 (P1-2)海上輸送 :輸送工程 (P4-3)洗浄 Y C D Q (P1-3)陸上輸送 (P4-2)粗粉砕・破砕 (P1-4)ペレット化 (P4-1)陸上輸送 (P2)生産 Y:工程におけるパレッ (P3)使用 :ライフサイクル外 :施設 ト1枚あたりの CO 2排出量(kg CO 2 / 枚) (P2-1)陸上輸送 :工程の流れ (P3-2) 陸上輸送 JPRデポ C: CO 2排出原単位((P3-1)JPRデポ内作業 kg CO 2 / km) (P2-2)原料溶解 D:輸送距離 (km) 入出庫・運搬・選別・清掃 (P2-3)射出成型 (P3-3)陸上輸送 (P3-6)陸上輸送 Q:トラック1台に (P2-4)組立 工場 積載するパレット (P2-5)陸上輸送 (P2-6)陸上輸送 (P3-4) 陸上輸送 配送センター の枚数(枚) (P3-5) 陸上輸送 得意先 7 (P4)再生 (P1)調達 (P1-1)原油採掘 (P1-2)海上輸送 (P1-3)陸上輸送 (P2-2)原料溶解 (P4-4) :作業工程 再生プラ原料 :輸送工程 (P2-3)射出成型 (P4-3)洗浄 :工程の流れ (P2-4)組立 :ライフサイクル外 (P4-2)粗粉砕・破砕 Y C E Q (P1-4)ペレット化 (P2)生産 (P4-1)陸上輸送 (P3)使用 (P2-1)陸上輸送 Y:工程におけるパレッ :施設 (P3-2) 陸上輸送 ト1枚あたりの JPRデポ (P3-1)JPRデポ内作業 入出庫・運搬・選別・清掃 CO 2排出量(kg CO 2 / 枚) (P2-2)原料溶解 (P2-3)射出成型 (P3-3)陸上輸送 C: CO 2排出原単位 (kg CO 2 / kWh )(P3-6)陸上輸送 (P2-4)組立 E:施設全体の消費電力 (kWh ) 工場 配送センター (P2-5)陸上輸送 Q:パレットの生産枚数 (P3-4) (P2-6)陸上輸送 陸上輸送 得意先 (枚(P3-5) ) 陸上輸送 8 各パレット運用時のCO2排出量経年推移 プラスチック CO2排出量(kg-CO2) 70 木製 2枚目 60 調達・生産 50 再生 40 30 使用 20 耐用年数 10 調達・生産 0 0 1 2 3 4 運用年数(年) 5 6 9 各パレットの運用10年目のCO2排出量内訳 CO2排出量(kg-CO2) 調達 生産 120 100 80 60 40 20 合計 77.532 使用 再生 合計 98.978 木製の方が 使用ブロックによる CO2排出量が大きい。 0 プラスチック 耐用年数10年 木製×2 耐用年数5年 10 CO2排出量(kg-CO2/枚) 各パレット使用1回のCO2排出量内訳 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 プラスチック デ 作 ポ 業 内 横 持 ち 木製 レ ン タ ル 商 品 輸 送 1 商 品 輸 送 2 返 却 11 商品輸送時の貨物の重量内訳 プラスチックパレット 木製パレット パレット パレット 商品 商品 重量占有率が高く、 CO2排出量の 負担が大きい。 ※パレットは同じ枚数積載し、商品は満載する。 12 各パレット使用1回のCO2排出量内訳 CO2排出量(kg-CO2/枚) 使用分 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 補修材調達分 補修材調達により さらにCO2を排出する。 0.26 1.43 1.05 プラスチック 木製 13 プラスチックパレットと木製パレットの LCA比較・まとめ ○結果 CO2排出量は運用5年目から 提言 プラスチック<木製 環境負荷低減のためには 木製パレットより ○要因 プラスチックパレットを 1.木製パレットの方が重い 使うべきである。 2.木製は補修材調達による CO2排出量が加わる 14 レンタルパレットの使用&返却ルート JPRデポ 工場 配送センター 得意先 得意先 最寄りのJPRデポ 配送センター 得意先 得意先 その他のJPRデポ 15 自社パレットの使用&返却ルート 工場 配送センター 得意先 得意先 配送センター 得意先 得意先 返却時は 積載率が低い 16 レンタル木製パレットと 自社所有木製パレットの相違点 自社所有は補修を行わないので、 耐用年数が短い。 レンタル 木製 5年 0.26 相違点 耐用年数 使用1回あたり 補修材調達による CO2排出量 自社所有 木製 3年 0 17 レンタルと自社所有パレット(木製)の CO2排出量経年推移 レンタル木 CO2排出量(kg-CO2) 400 自社木(積載効率低) 自社は 3枚必要。 傾き=使用の CO2排出量が 大きい。 350 300 250 200 レンタルは 2枚で済む。 150 100 50 0 0 5 運用年数(年) 10 18 レンタルと自社所有パレット(木製)の CO2排出量経年推移 レンタル木 自社木(積載効率高) CO2排出量(kg-CO2) 140 自社は 3枚。 120 100 80 60 レンタルは 2枚で済む。 40 20 0 0 5 運用年数(年) 10 19 各木製パレットの使用1回の内訳 0.9 CO2排出量(kg-CO2)/枚 0.8 0.7 0.6 各施設間の返却は、 各施設間で返却するよりも、 得意先から最寄りのデポへの 得意先から最寄のデポに 返却よりも距離が長い。 返却するほうが距離が短い。 補修 0.5 0.4 返却 0.3 0.2 レンタル 横持ち 0.1 デポ内作業 返却 0 レンタル木 自社所有木 積載効率高 20 レンタルパレットと自社所有パレットの LCA比較・まとめ ○結果 CO2排出量は、返却時の積載率が同等なら 提言 レンタル<自社所有 環境負荷低減のためには 自社で所有するより ○要因 レンタルして使うべきである。 1.自社は返却に要する輸送距離が長い 2.自社は耐用年数が短い(木製のみ) 21 本研究のまとめ LCAを用いて検討を行った結果、以下のことを定量的に 示すことができた。 LCAを用いることで、 (1)ライフサイクルの中で環境負荷の大きい工程とその パレットを利用する事業者は、環境負荷低減のために 要因を明らかにでき、改善策がより具体的になった。 ●木製パレットよりプラスチックパレットを使うべきである。 ⇒パレットは軽いものを利用する。 ⇒返却はまとめて、最短距離で行う。 ●自社で所有するよりもレンタルするべきである。 ※(発表割愛した検討によって)パレットレンタル事業者は、 (2)部分最適ではなく全体最適の視点からの改善が 可能になった。 ●パレットの紛失を防止することでCO2排出量を ⇒リサイクルだけに注目するのではなく、1枚を長く 最大20%削減できる。 使ってパレットを生産するまでの負荷を減らす。 ●パレットを補修することで、CO2排出量を50%削減できる。 22 ご清聴ありがとうございました。 流通情報工学課程四年次 学籍番号:2002729 氏名:野崎 大道 23 3Rの観点 Reduce Reuse Recycle 廃棄物の削減 製品の再使用 再原料化 生産 使用 再生 製品の一生=ライフサイクル ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment,LCA) という環境評価手法 24 レンタルと自社所有パレット(プラスチック)の CO2排出量経年推移 レンタルプラ 自社プラ(積載効率低) CO2排出量(kg-CO2) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 0 5 運用年数(年) 10 25 レンタルと自社所有パレット(プラスチック)の CO2排出量経年推移 レンタルプラ 自社プラ(積載効率高) CO2排出量(kg-CO2) 140 120 100 80 60 40 20 0 0 5 運用年数(年) 10 26 研究内容:環境負荷低減策検討 パレットレンタル事業者の視点 環境負荷低減 現状をどのように改善するか パレットの紛失を防止する パレットの補修を行う 1枚のパレットをより長く使える LCAを用いた環境負荷低減策検討 どの程度CO2排出量が減らせるか 27 LCAを用いた環境負荷低減策の検討 LCA比較で作ったモデル パラメータを変化させて 耐用年数を変える CO2排出量を計算 結論から提言を行う 28 パレット紛失防止による環境負荷低減 ☆用いるモデル (レンタル)プラスチックパレット ☆紛失による投入数の変化式 (new) (new) (lost) (new:紛失削減後の新規投 ) 入枚数(枚) (new:従来の新規投入枚数 ) (枚 ) (lost:削減した紛失枚数 ) (枚 ) 29 紛失削減による耐用年数の変化 ☆従来の耐用年数 ☆紛失防止後の耐用年数 ((stock stock)) (new)(new ()lost) 分母が小さくなり、 耐用年数が長くなる。 ((stock :保有枚数 ) ( 枚 ) (枚) ) stock:保有枚数 (new:従来の新規投入枚数 ) (枚 ) (枚) ) (new:新規投入枚数 (lost:削減した紛失枚数 ) (枚 ) 30 紛失削減による耐用年数の推移 17 耐用年数(年) 16 15 紛失がなくなると耐用年数は 従来の1.6倍まで延びる。 14 13 12 11 10 0% 20% 40% 60% 紛失枚数削減率 80% 100% 31 紛失削減率別のCO2排出量経年推移 0% 350 100% 従来は4枚必要。 300 CO2排出量(Kg-CO2) 50% 250 投入枚数の差の分、 調達・生産・再生による CO2排出量を削減できる。 200 150 100 紛失防止すれば 2枚で済む。 50 0 0 10 20 30 運用年数(年) 40 32 単年度のCO2排出量 延べCO2排出量比率 使用 再生 調達 生産 100% 80% 提言 紛失を防止すれば、 60% 環境負荷低減のためには 40% CO2排出量は プラスチックパレットの 従来の80%になる。 紛失を防止するべきである。 20% 0% 0% 50% 100% 紛失枚数削減率 33 パレット補修による環境負荷低減 ☆用いるモデル (レンタル)木製パレット ☆補修を行わないことによる投入数の変化式 (new) (new) (repair) (new:補修しない場合の新 ) 規投入枚数(枚) (new:補修する場合の新規 ) 投入枚数(枚) (repair:補修する場合の補修 ) 枚数(枚) 34 補修を行わないことによる耐用年数の変化 ☆補修しない場合の耐用年数 ( stock) (new) (repair) 分母が大きくなり、 耐用年数が短くなる。 ( stock:保有枚数 ) (枚 ) (new:従来の新規投入枚数 ) (枚 ) (repair:従来の補修枚数 ) (枚 ) 35 補修有無による使用1回のCO2排出量の違い CO2排出量(kg-CO2/枚) 使用分 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 補修材調達分 0.26 補修材調達がない分 CO2排出量が小さい。 1.43 1.43 補修あり 補修なし 36 延べCO2排出量(kg-CO2) 補修有無別のCO2排出量経年推移 補修あり 120 補修なし 使用によるCO2排出は 補修しないと 補修なしの方が 4枚必要。 わずかに小さい。 補修すれば投入枚数の差の分、 調達・生産・再生による CO2排出量を削減できる。 100 80 60 40 20 補修すれば 1枚で済む。 0 0 1 2 3 4 運用年数(年) 5 6 37 補修ありパレットのCO2排出量比率経年推移 CO2排出量比率 110% 100% 90% 補修すれば 提言 CO2排出量は 50%まで減る。 環境負荷低減のためには 80% 70% 木製パレットを補修すべきである。 60% 50% 40% 0 10 運用年数(年) 20 38 今後の課題 ●データが不明、省略した箇所を調査し、 検討に反映させる ●運用モデルの制約条件を緩和し、より現実的な パレット運用モデルで検討し直す 39
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