鹿児島大学/愛媛大学 宇宙電波天文学特論 第10回 超新星残骸と連鎖的星形成 半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻 Mellinger 第1部 超新星爆発と超新星残骸 Mellinger 超新星爆発 ▶ 重い主系列星=OB型星 ■ 重力崩壊型超新星爆発 Ib型、Ic型、II型←スペクトルや変光曲線で区別 ■ ■ 鉄のコアが光分解・電子捕獲で重力崩壊 主系列時での対応する恒星質量は不明確 質量放出の程度が不確定なため ▶ 白色矮星と巨星との連星 ■ 連星型超新星爆発 Ia型 ■ 白色矮星の質量限界を越えると爆発する Mellinger 超新星残骸 supernova remnant ▶ 超新星爆発→1点で爆発が発生 ▶ 衝撃波が周囲の星間空間を伝播 ▶ 2重構造 ■ ■ ■ 爆発した恒星外層部 衝撃波後面のガス=衝撃波通過後のガス 衝撃波面 Mellinger 超新星残骸(SNR)の構造 Mellinger 超新星残骸(カシオペアA) ▶ 電波画像、X線画像、可視光画像 ■ 球殻状 Mellinger 超新星残骸(かに星雲) ▶ 電波画像、X線画像、可視光画像 ■ 線状構造、内部充填的 Mellinger 超新星残骸の分類 ▶ 球殻型 ■ 電波での形態がshell状(見かけは環状) ▶ プレリオン型(かに星雲型) ■ ■ 内部まで電波で明るい形態 内部に中性子星がある? ▶ 混合型 ■ 球殻型とプレリオン型の中間の形態 Mellinger SNRの電波スペクトル ▶ 電子のエネルギー分布 ■ ベキ乗(経験的に、近似的に…) N(E)dE = CE-p dE, p:ベキ指数 ▶ 電子集団からのスペクトルもベキ乗 ▶ Pn,全電子∝n -bと書けば、 b = (p-1)/2 Mellinger 磁場の圧縮 ▶ ガスの圧縮=磁場の圧縮 ■ 電離ガスと磁力線は凍り付いている ▶ 高エネルギー電子も豊富 ■ 爆発時には高エネルギー反応 ▶ 強磁場+高エネルギー電子 ■ →シンクロトロン放射 Mellinger 衝撃波面 ▶ 星間ガスへの超音速膨張 ■ ■ HII領域の膨張に伴う衝撃波面 超新星残骸の衝撃波面 ▶ 衝撃波によるガスの圧縮 ▶ ガスの流れを考える ■ ■ 簡単のため「1次元定常流」とする その前提として… Mellinger 第2部 流体力学と衝撃波 Mellinger 流体力学:オイラー的見方 ■ オイラーEuler的見方 物理量を場所と時間の関数で見る 速度場v(x,t)、密度場r(x,t)、圧力場p(x,t)、… ■ ここでは、1次元定常流で考える ▶ 体積素片についての運動方程式 ラグランジュLagrange的に考える ► 着目する物体と共に移動する立場 r dv/dt=-∂p/∂x オイラー的見方に換算するには dv/dt =∂v/∂t+v ∂v/∂x=v ∂v/∂x ←定常より∂/∂t=0 Mellinger 流体力学の初歩:オイラーの式 ▶ オイラー的な運動方程式=オイラーの式 ■ ■ v ∂v/∂x =-(1/r) ∂p/∂x ただし、定常1次元流の場合 このとき、流れに沿った変化は v dv =-dp/r Mellinger 断熱ガス流 ▶ 断熱、すなわちエントロピー一定 dS=0 ▶ このとき、エンタルピー変化は ■ ■ ■ dw=T dS+Vdp=dp/r よって、この場合 ∂w/ ∂x=(1/r) ∂p/ ∂x オイラーの式は v ∂v/∂x=-∂w/∂x ここから、 (∂/∂x) (w+v2/2)=0が得られる。つまり、 w+v2/2=一定 ←ベルヌーイの方程式 Mellinger 超音速とガスの最大速度 ▶ ベルヌーイの方程式 ■ ■ w+v2/2=一定 T=0Kで、圧力とエンタルピーは最小p=0, w=0 j=rv したがって、v<vmax=(2w0)1/2 真空中に吹き出すガスの速度 ■ 音速の関係式 c=(∂p/∂r)s1/2 から dp=c2 drv 0 オイラーの式vdv ■ =-dp/c rより、dr/dv=-(r√2w v)/c02だから dj/dv=d(rv)/dv=1+dr/dv=r (1-v2/c2) 超音速(v>c)では速度vが増すほど流量jが減る Mellinger 流体の基礎方程式 ▶ 質量保存則(連続の式) ■ r v=一定 ▶ エネルギー保存則 ■ (r v2)/2+re =一定 dp=r dw-r Tdsと組み合わせると以下の式を得る (∂/∂t)(r v2/2+re)=-(∂/∂x)(r v(w+v2/2)) ■ r v(w+v2/2)=一定 ←ベルヌーイ+連続の式 ▶ 運動量保存則←運動方程式 ■ p+rv2=一定 (←オイラーの式 vdv =-dp/r) Mellinger 気体の1次元定常流(1) ▶ 1次元定常流を考える ▶ 質量当たりの基礎方程式(w:エンタルピー) r1v1= r2v2=j 連続の式 p1+r1v12= p2+r2v22 運動量保存則 r1v1(w1+v12/2)=r2v2 (w2+v22/2) エネルギー保存則 ▶ 第3式は第1式を使うと w1+v12/2=w2+v22/2 w1, r1 p1 v1 p2 v2 ベルヌーイの定理 w2, r2 Mellinger 気体の1次元定常流(2) ▶ 単位体積当たりだったので、V=1/r ■ ここから j2=(p2-p1)/(V1-V2) pの増減とVの増減は常に逆 ■ これとベルヌーイの定理とe=w+pVから e1-e2+(p1+p2)(V2-V1)/2=0 1での量から2での量に制限が加わる ■ ランキン・ユゴニオの断熱曲線・衝撃波断熱曲線 Rankine-Hugoniot Mellinger 衝撃波圧縮 ▶ 理想気体なら、e=pV/(g -1) ■ ランキンユゴニオの式に代入 V2/V1=[(g +1)p1+(g -1)p2]/ [(g -1)p1+(g +1)p2] ランキン・ユゴニオの式 ■ ■ 圧力比が決まれば密度比が決まる! p2≫ p1の極限では V2/V1=r1/r2=(g -1)/(g +1) 単原子気体ならg =5/3より、V2/V1=1/4, r2/r1=4 ► 一般に1<g ≦5/3なので、r2/r1≧4 どんなに強い衝撃波でも密度の増加に上限がある ► ガスの種類にも依るが、せいぜい数倍 Mellinger 衝撃波加熱 ▶ 理想気体なら、T∝pV ■ したがって、先の結果を利用して T2/T1=(p2V2)/(p1V1) =(p2/p1) [(g +1)p1+(g -1)p2] / [(g -1)p1+(g +1)p2] ランキン・ユゴニオの式 ■ ■ 圧力比が決まれば温度比が決まる! p2≫ p1の極限では T2/T1=[(g -1) p2]/[(g +1) p1] 衝撃波面が強ければ温度はいくらでも上昇する Mellinger 等温衝撃波 ▶ 加熱直後に放射冷却するとしたら… ■ ■ 元の温度まで冷却したとする T2=T1 圧力は境界条件なので不変(given) ▶ 理想気体なら、 T∝pV=p/r ▶ したがって、十分に強い衝撃波の場合には ■ ■ 直後の温度は無限に高くなりうる 冷却後の密度は無限に高くなりうる ▶ 衝撃波によるガス密度の急上昇が可能! Mellinger 衝撃波面の速度 ▶ 媒質1が静止している=波面v1がで移動 w1, r1 p1 -v1 p2 v2-v1 w2, r2 ▶ マッハ数M=v/c ■ 理想気体の音速c=(r/p)1/2 ▶ V2/V1などはMで表現可:衝撃波の強さはMで V2/V1=[(g -1)M12+2]/[(g +1)M12] T2/T1=[2gM12-(g -1)] [(g -1)M12+2 ]/[(g +1)M12] p2/p1=(2gM12-g +1)/(g +1) Mellinger 第3部 連鎖的星形成と渦状腕 Mellinger 誘発的星形成 ▶ HII領域やSNRの膨張 ■ 衝撃波による星間ガスの圧縮 “臨界密度”を越える 力学的平衡が崩れる ▶ 星形成を誘発 triggered star formation ■ 星形成領域ではまとまって星ができている Mellinger 連鎖的星形成 ▶ できた星が元の星に匹敵する早期型ならば ■ ■ 1つ星ができれば、次世代の星ができる →連鎖反応に星が形成される ▶ 本当にそうなのか? ■ きれいに年代順に並んでいる例はあまりない Mellinger 銀河の渦巻腕 ▶ 多数の恒星が集中している ▶ 星間ガスも集中している ■ 暗黒星雲が並んでいる ▶ 星形成領域が集中 ■ HII領域が並んでいる Mellinger ▶ この構造はどうやってできたのか? 腕の巻き込み問題 ▶ 平坦回転曲線ならば… ▶ 渦巻きはきつく巻きついてしまう ■ 観測される形と数の関係と合わない Mellinger 密度波理論 ▶ 恒星の粗密で作るパターンと考える ■ パターンの速度と物質速度とを切り離す ▶ self consistentな解があるか ■ ■ ■ 恒星分布の濃淡 局所的な重力場 恒星の速度場 Mellinger 銀河衝撃波モデル(1) ▶ 渦状腕=重力ポテンシャル極小 ■ ■ ■ 加速+急減速 速度変化は超音速→星間ガスに衝撃波 衝撃波による星形成の促進 ▶ 渦状腕で星間ガスの圧縮と活発な星形成 ■ ■ ■ 渦状腕の構造と一致 渦状腕には早期型星やHII領域が集中 恒星による渦状腕に沿って星間ガスが集中 Mellinger 銀河衝撃波モデル(2) ▶ 予想される渦状腕の内部構造 ■ ■ 概略の分布は一致 細かく見ると不一致 恒星は世代順にない 切れ切れの渦状腕 Mellinger SSPSF(1) ▶ もう1つのモデル ▶ 確率過程的星形成伝播モデル ■ 渦巻腕とは星形成領域の模様である Mellinger SSPSF(2) ▶ 確率過程的星形成伝播モデル ■ ■ 星形成が起こると隣接領域の星形成が活性化 一度星ができると、しばらくは星形成が抑制 ▶ 星形成伝播に異方性←差動回転 ■ q方向:隣接cellが常に同じ=星形成伝播は遅い ■ r方向:隣接cellが変わる=星形成伝播が容易 r方向に伸びた星形成領域が差動回転でたなびく Mellinger
© Copyright 2025 ExpyDoc