東京電力福島第一原子力発電所 原子力災害復旧に係わる衛生担当者会議 (健康管理担当者意見交換会) 平成26年7月24日(木) 1Fの状況を踏まえた 健康診断の効率的運用に向けて 産業医科大学 対応のために • 視点①:(過去の発生)事例の教訓共有 – 元請の産業医/担当者に連絡、協力が得られる範囲で、 職務適性判断の実施状況確認 • 視点②:(発生させない)発生予防の取り組み – 各社に健診事後措置として、期待される判断の手続きを 説明し、理解と協力の継続を依頼 • 視点③:(将来の発生)発生時の急患対応 – 関連連絡会議でルール整理・共有 基本的な課題認識 1. 20キロ圏内の医療提供体制には制限(予防の重要性) 2. 予防対応に関する情報共有の仕組み強化が必要 本日のねらい 基本的な課題認識 1. 20キロ圏内の医療提供体制には制限(予防の重要性) 2. 予防対応に関する情報共有の仕組み強化が必要 • 課題①:健康診断について基礎的事項確認 – 職務適性判断、健診事後措置の場として • 課題②:関係各社の情報共有 健康診断 健康診断とは、診察および各種検査で健康状態を評価することで 健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるもの 実施の場:学校、職場、地方公共団体、個人として 職域における健康診断 1. 法律で義務づけられているもの 一般健康診断 特殊健康診断 2. 行政指導としてその実施を要請しているもの 3. 企業等の判断で実施しているもの (健診追加項目や人間ドックなど) 4 法律に基づく健康診断 一般健康診断:すべての労働者(定期) (労働安全衛生法66条) 第1項:事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診 断を行なわなければならない。 第5項:労働者は、前各項により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。 相互義務 特殊健康診断:有害な業務に従事する者 (労働安全衛生法66条第2,3項、じん肺法) ~ 業務列挙方式 ~ 5 法律に基づく健康診断 一般健康診断:すべての労働者(定期) • • • • • • 雇入時健康診断 定期健康診断 特定業務従事者健康診断 海外派遣労働者健康診断 給食従事者の検便 自発的健康診断 ( H12.4 ) 6 一般健康診断 1)雇入れ時(安衛則43条) 既往歴及び業務歴の調査 自覚症状及び他覚的症状の有無 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 胸部エックス線検査 血圧の測定 尿検査(糖、蛋白) 貧血検査(赤血球数、血色素量) 肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP) 血中脂質検査(トリグリセリド、HDL、LDL) 血糖検査 心電図検査 採用決定後に実施 省略不可 結果は定期健診結果として取り扱い可 7 一般健康診断 2)定期健康診断(安衛則第44条) 既往歴および業務歴の調査 自覚症状および他覚的症状の有無 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 胸部エックス線検査 および喀痰検査 血圧の測定 尿検査(糖、蛋白) 貧血検査(赤血球数、血色素量) 肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP) 血中脂質検査(トリグリセリド、HDL、LDL) 血糖検査 心電図検査 1年以内毎に1回 年齢等に応じ省略できる項目有り 8 一般健康診断 2)特定業務従事者健康診断(安衛則第45条) 既往歴および業務歴の調査 自覚症状および他覚的症状の有無 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 胸部エックス線検査 および喀痰検査 血圧の測定 尿検査(糖、蛋白) 貧血検査(赤血球数、血色素量) 肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP) 血中脂質検査(トリグリセリド、HDL、LDL) 血糖検査 心電図検査 当該業務への配置換えの際、 6か月以内毎に1回 省略できる項目有り 9 特定業務従事者健康診断 ● 安衛則第45条: 事業者は、第十三条第一項第二号に掲げる業務に常時従事 する労働者に対し、当該業務へ の配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期 に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師に よる健康診断を行わな ければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ご とに一回、定期に、行えば足りるものとする。 特定業務: 労働安産衛生規則第13条第1項第2号 常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の 労働者を従事させる事業場にあっては、その事業場に専属の者を選任すること。 イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務 ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務 ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務 ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務 ホ 異常気圧下における業務 ヘ さく岩機、鋲(びよう)打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務 ト 重量物の取扱い等重激な業務 チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務 リ 坑内における業務 ヌ 深夜業を含む業務 ル 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸 その他これらに準ずる有害物を取り 扱う業務 ヲ 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一 酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼ ン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は 粉じんを発散する場所における業務 ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務 カ その他厚生労働大臣が定める業務 10 一般健康診断 2)特定業務従事者健康診断(安衛則第45条) ● 安衛則第45条: 当該業務へ の配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期 に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師に よる健康診断を行わな ければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごと に一回、定期に、行えば足りるものとする。 第四十四条第一項各号に掲げる項目 一 既往歴及び業務歴の調査 二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 一般定期健診でオージオメーターで実施した場合 三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 は45歳未満(除35、40)は医師が認める方法 四 胸部エックス線検査及び喀痰検査 でよい(会話法) 五 血圧の測定 六 貧血検査 医師が必要ないと認める場合省略可 七 肝機能検査 八 血中脂質検査 九 血糖検査 (必須)問診・診察 十 尿検査 身体測定、検尿、聴力 十一 心電図検査 11 基本:定期健康診断と同様の内容(胸部エックス線写真は省略可)を年に2回健診実施 職域での法律に基づく健康診断 一般健康診断:すべての労働者(定期) • 雇入時健康診断 • 定期健康診断 • 特定業務従事者健康診断 主旨 注意が必要な有所見者を早期発見しよう 特に危険な現場・現場では積極的に (医療が限られ難易度の高い作業もある1Fにおいても) 12 健康診断の事後措置(1) (健康診断の結果についての医師等からの意見聴取) 第六十六条の四 事業者は、(中略) 健康診断の結果( 当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労 働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を 保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定 めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなけれ ばならない。 13 健康診断の事後措置(2) (健康診断実施後の措置) 第六十六条の五 事業者は、前条の規定による医師又は 歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは 、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業 の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置 を講ずるほか(中略)適切な措置を講じなければならない。 2 厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべ き措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公 表するものとする。 3 (略) 14 健康診断の事後措置(3) ~健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針より~ □ 就業上の措置の決定・実施の手順と留意事項 (1)健康診断の実施 事業者は、(中略)、労働者に対し医師等による健康診断を実施し、 当該労働者ごとに診断区分(異常なし、要観察、要医療等の区分を いう)に関する医師等の判定を受けるものとする。 (2)二次健康診断の受診勧奨等 事業者は、一次健康診断における医師の診断の結果に基づき、 二次健康診断の対象となる労働者を把握し、当該労働者に対して、 二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の 判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働 きかけることが適当である。 15 健康診断の事後措置(4) ~健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針より~ (3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取 事業者は、労働安全衛生法第66条の4の規定に基づき、健康診 断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された 労働者に係るものに限る。)について、医師等の意見を聴かなけれ ばならない。 *意見の内容:就業区分及びその内容、作業環境管理及び作業管 理についての意見 (4)就業上の措置の決定等 事業者は、(3)の医師等の意見に基づいて、就業区分に応じた就業 上の措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴 き、十分な話合いを通じてその労働者の了解が得られるよう努める ことが適当である。 16 就業区分 就 業 区 分 就業上の措置の内容 区 分 内 容 通常勤務 通常の勤務でよ いもの 就業制限 勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、 勤務に制限を加 出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、 える必要あり 作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減 少、昼間勤務への転換などの措置を講じる。 要休業 勤務を休む 必要あり 療養のため、休暇、休職などにより一定期間勤務さ せない措置を講じる。 「現場を回せるのか!?」 17 法的根拠 • 労働安全衛生法第68条(病者の就業禁止) – 事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定め るものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるとこ ろにより、その就業を禁止しなければならない。 • 労働安全衛生規則第61条(病者の就業禁止) – 1 事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、そ の就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者に ついて伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。 – 一 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者 – 二 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するお それのあるものにかかった者 – 三 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者 (鉛則57、四アルキル鉛則26、高圧則41) – 2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あ らかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。 18 健康診断後の保健指導 (保健指導等) 第六十六条の七 事業者は、第六十六条第一項 の規定による健康診断(中略)の結果、特に健康の 保持に努める必要があると認める労働者に対し、 医師又は保健師による保健指導を行うように努め なければならない。 2 労働者は、前条の規定により通知された健康 診断の結果及び前項の規定による保健指導を利 用して、その健康の保持に努めるものとする。 19 まとめ • 健診の実施(法的義務) • 就業判定(法的義務) – 通常勤務、就業制限、就業禁止 • 保健指導(努力義務←必要に応じて対応) – – – – 日常生活の注意 運動指導 食事指導 受診勧奨 明確な判断基準はなし 医師の判断 就業判定が必要な人は必ず面談 すべての検査項目異常に関して「会社」や「産業医」が責任を持って対応 することを求められているわけではない 保健指導に関しては周辺状況(保健師の有無、契約時間、ほかの仕事と の優先順位)による 20 医師が就業措置の対象とする 健診項目 健診項目 ②収縮期血圧 ③拡張期血圧 ⑭HbA1c(JDS) ⑫空腹時血糖値 ⑮ヘモグロビン ④クレアチニン ⑨AST ⑩ALT ⑬随時血糖値 ⑪γGTP ⑥LDLコレステロール ⑧中性脂肪 ⑤尿酸値 ⑦HDLコレステロール ①BMI 就業項目の対象とみなす医師の割合 99% 94% 94% 82% 81% 74% 72% 72% 63% 33% 30% 22% 7% 7% 5% 健康診断後の事後措置 デルファイ法を用いた コンセンサス調査 (2013) 渡瀬真梨子、立石清一郎、藤野善久、森晃爾 日本産業衛生学会口演より 医師が就業措置を検討する目安 健診項目 ②収縮期血圧 ③拡張期血圧 ④クレアチニン ⑥LDLコレステロール ⑩ALT ⑫空腹時血糖値 ⑬随時血糖値 ⑭HbA1c(JDS) ⑮ヘモグロビン 就業措置を検討する数値 同値を基準にしている医師の割合 180mmHg 110 mmHg 2.0mg/dl 200mg/dl 200IU/L 200mg/dl 300mg/dl 10% 8.0g/dl 87% 86% 67% 56% 62% 69% 77% 62% 59% 健康診断後の事後措置 デルファイ法を用いた コンセンサス調査 (2013) 渡瀬真梨子、立石清一郎、藤野善久、森晃爾 日本産業衛生学会口演より 医師の 判断 就業措置の類型化 類型1:就業が持病の疾病経過に悪影響を与える恐れ 例)腰痛保持者の重量物運搬の禁止、心不全や貧血を持つ労働 者の重筋作業 類型2:健康状態が原因で事故につながる恐れ 例)一過性意識障害をきたす恐れのある就業者の危険業務禁止 (運転業務や危険作業場な ど) 類型3:就業制限をかけることによって、受診行動を促した り、労働者の自己健康管理を啓発する必要性 例)高血圧を放置している労働者に対して、運転作業の禁止や、 残業禁止⇒受診行動を促す場合など 産業医が実施する就業措置の文脈に関する質的調査 藤野善久 立石清一郎 森晃爾ら 産衛誌 2012; 54 (6): 267–275 医師の思考回路 いいえ 有所見 はい 意見なし はい はい 健診有所見者に対する 就業判定ストラテジー コントロール良好 分岐点! 主治医 定期受診 いいえ いいえ チェック 働き続けて持病が悪化する恐れ 持病が重大事故を引き起こす恐れ 夜勤や残業で生活習慣が乱れている →類型1 →類型2 →類型3 必要に応じて 主治医とコミュニケーション 経過観察 (要管理) 低 問題の程度 高 就業配慮を検 討する まとめ 本年5月以降、急患発生事例が連続 20キロ圏内の医療提供体制には制限 対策の急所は健診事後措置 健診事後措置は法令に基づく事業者義務 就業措置、医師の頭のなかには3つのパタン 医師判断の分岐点に「主治医受診有無」がある 対策推進の鍵は現場を知る各社の情報共有の仕組 み強化(⇒グループワークへ)
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