統計学の基礎

調査法B
(心理カウンセリング学科・カウンセリング研究コース)
第1講
2008年10月3日
担当:岡田佳子
1
授業のねらい
質問紙調査の方法を体験を通して学ぶ。
テーマの設定、調査の実施方法、データ
の集計、分析、報告についても、実習を
通して身につけることを目指す。
2
授業の進め方
最初の3回は講義のみ。
4回目から5名~6名程度の班に分かれての
実習を取り入れる。毎回最初の30分は講義。
残りは実習(予定)。
班毎に、実際に質問紙を作成し、データを集
めて、分析してもらいます。
最後に、各自で実習の結果をレポートにまと
めてもらいます(実習は班ですが、レポートは
各自で作成して下さい。)
3
授業のスケジュール(予定)
調査法B 授業スケジュール(予定)
ガイダンス
第1講
10月3日
第2講
10月10日 講義1:質問紙法とは(質問紙法の特徴、他の研究法との比較)、質問紙作成の流れ
第3講
10月17日 講義2:記述統計と推測統計の復習、母集団と標本、サンプリングの方法
第4講
10月31日 講義3:調査の実施方法(実施方法の種類、依頼状、結果のフィードバック)
第5講
11月7日
第6講
11月14日 調査票の作成2:質問項目の決定
第7講
11月21日 調査票の作成3:質問紙の作成
第8講
11月28日 調査の処理:調査票の点検、コーディング、データ入力、SPSSファイルの作成、チェック
第9講
12月5日
第10講
12月12日 調査の分析2:項目の精選(因子分析1)
第11講
12月19日 調査の分析3:項目の精選(因子分析2)
調査票の作成1:テーマの決定・項目候補の収集・自由記述の収集
調査の分析1:項目の精選(基本統計量の算出、G-P分析、I-T相関)
第12講
1月9日
調査の分析4:信頼性の検討、尺度得点の算出
第13講
1月16日
調査の分析5:t検定、(分散分析)
第14講
1月23日
報告書のまとめ方
第15講
1月30日
予備日(レポート質問受付日)
レポートの提出は2月6日頃を予定しています
4
注意点
班の他のメンバーに迷惑がかかるので、
欠席しないこと(特別な事情をのぞく)。
授業時間外にも実習を行う必要があることが
あります。
テーマを決めるための文献探し
調査の実施(1人あたり10名~20名分集める)
班によっては、授業内に終わらない場合、空き時間
に集ったり、各自自宅で作業したりする必要が出る
可能性もあります。
5
評価・その他について
 毎回、出席をとります。
 実習の内容を各自レポートにまとめてもらいます。
 授業のスライドはHPで公開します(1回休むと分か
らなくなる可能性があるので、必ず次週までに自習
しておいて下さいね)
 教科書はありません。毎回プリントを配布します。
成績評価の方法と基準
出席を含めた平常点+レポートの得点
6
今日はガイダンス
今日はガイダンスをかねて、この授業でどん
なことをやるのか・・・を、ざっと概観してみた
いと思います。
実習では、今から紹介するような流れで、実
際に班ごとに質問紙を作成し、データを収集
して、分析し、報告してもらいます。
7
質問紙調査の実例
(うん年前の私の修士論文より)
8
調査票の作成1:テーマの決定
中学生の「ストレス」
について、
調べてたいなぁ・・・・
9
調査票の作成1:項目候補の収集
既に他の誰かが作成した大人向けのストレス
尺度を参考にする。
既に他の誰かが作成した子ども向けのストレ
ス尺度はないか、探す。
心理測定尺度集
なんて便利な本もあるんだぁ。
教育心理学研究や心理学研究なんかの
雑誌論文も参考になるわぁ。
10
役立つ本や雑誌がたくさんあります。
11
調査票の作成1:自由記述の収集
実際に中学生に「ストレスを感じたとき、どん
な気持ちになるか?」インタビューする。
スクールカウンセラーに自由記述を求める。
(大人なら、文章で記述してもらえる)
どんな気持ちになる?
なんかねー、誰とも会いた
くなくなる・・・
なーんにもしたくない感じ
中学生
12
調査票の作成2:質問項目の決定
既にあるストレス尺度の項目を改訂する。
既存の尺度に含まれていない、自由記述の
項目を追加する。
この表現は、中学生には難し
すぎるから、もっと易しくしよう。
○○さんが作った尺度には、
「人と会いたくない」という項目
がないから、追加しよう。
13
調査票の作成3:質問紙の作成
フェイスシート(表紙)をつける
タイトルはどうする?
アン ケート 調査のお願い
みなさ ん、 こ んにちは。 今日はみなさ んに、 中学生の学校生活について、 アンケート 調査に
答えていただき たいと 思います。 こ のアン ケート は、 中学生の生活やみなさ んの置かれた
全体の教示
じ ょ う きょ う
状 況 、 心や身体の健康状態を調べるためのも のです。
と ちゅう
調査の目的、
データ処理の方
法、プライバシー
の保護を明示
次のページから いく つかの質問が並んでいます。 途中をと ばし たり し ないで、 質問項目のす
べてに答えてく ださ い。 感じ たと おり 、 思っ たと おり 、 あまり 迷わずに答えてく ださ い。
む き め い
アンケート は無記名( 名前を書かない) で行い、 みなさ んの回答は、 まと めてコ ンピュ ータ
で処理し ますので、 だれがどのよう に答えたのかはわから ないよう になっ ています。 周り の人
調査者の氏名、連絡
先などを明記
などと 相談し ないで自分が思っ たと おり に答えてく ださ い。 も ちろ ん、 学校の成績などと は
いっ さ い
一切関係あり ませんので、 ご安心く ださ い。
て すう
それでは、 まこ と にお手数ですが、 ご協力お願いし ます。
早稲田大学大学院 岡田 佳子
記名式?
無記名式?
はじ めに、 以下の質問に答えてく ださ い。
学年 〔
性別
〕 年
1.男
2.女
どのような人口統計的
変数(属性)をたずね
ればよいか?
14
調査票の作成3:質問紙の作成
回答方法を選択する
きぶん
じょうたい
1.現時の気分の状 態 についてお聞きし ます。
教示文は?
けいけん
こ の 1 週間の間に、 次にあげた状態をどのく ら い 経 験 し まし たか。 1 . まっ たく なかっ た、 2 . た
まにあっ た、 3 . し ばし ばあっ た、 4 . だいたいいつも あっ た、 の中から ひとつだけ選んで数字に○
程度?頻度?
をつけてく ださ い。
ま
なっ
かた
っく
た
中学生でも回答しや
すい回答欄かな?
た
ま
あに
っ
た
し
ば
あし
っば
た
大
体
あい
っつ
たも
1 9 . ひと り きり になり たいと 思う
1
2
3
4
2 0 . なにごと も 自信がない
1
2
3
4
2 1 . も のをけと ばし たり 、 こ わし たり し たく なる
1
2
3
4
2 2 . はつら つと し た気分である
1
2
3
4
2 3 . 自分で自分がいやになる
1
2
3
4
2 4 . 人と 話すこ と がいやだ
1
2
3
4
2 5 . 生き生きし ている
1
2
3
4
2 6 . 他の人に 暴 力 をふるいたく なる
ぼうりょく
1
2
3
4
2 7 . だれかにさ さ えてほし いと 思う
1
2
3
4
・
・
・
・
・
何段階にしよ
うかな?
15
調査の実施
依頼状を持参し、担任、校長に協力を依頼する。
中学生にアンケートを配布して回答してもらう。
16
調査の処理
調査票の点検・データ入力
真面目に答えてくれているかな?
まずは、Excelに入力します。
チェックしながら
全ての調査票に通し番号を打ちます。
17
調査の処理
データの入力⇒SPSSファイルの作成
18
調査の分析2:項目の精選
極端に回答が偏った項目はないかな?
7.泣きたい気分だ
4.はらがたつ
400
300
300
200
200
100
度
数
(
人
)
平均 = 2.1
有効数 = 535.00
0
1.0
2.0
4.はらがたつ
3.0
標準偏差 = .85
100
標準偏差 = .96
平均 = 1.5
度
数
有効数 = 538.00
0
1.0
2.0
3.0
4.0
4.0
7.泣きたい気分だ
19
回答が極端に偏っているのでこの項目は削除した方がいいかな?
調査の分析2:項目の精選(因子分析)
 ストレス反応に関する調査項目はどのように分類される
のか?
表4-1 情動反応の因子分析の結果(最尤法・プロマックス回転)
項目
F1
F2
F3
共通性
⇒因子分析
F1.怒り
なま
かっ
った
たく
あた
っま
たに
し
あば
っし
た
ば
も大
あ体
っい
たつ
1.ゆううつだ
1
2
3
4
2.気分が沈む
1
2
3
4
3.不安を感じる
1
2
3
4
4.いらいらする
1
2
3
4
5.はらがたつ
1
2
3
4
6.泣きたい気分だ
1
2
3
4
7.気がめいる
1
2
3
4
8.むなしい感じがする
1
2
3
4
・
・
・
・
・
α=.867
13 いらいらする
16 むしゃくしゃする
4 はらがたつ
F2.悲哀
-.048
.075
-.008
.007
-.044
.073
.837
.700
.536
.049
-.003
-.038
.857
.814
.745
-.076
.022
.129
.686
.686
.677
-.039
.072
.011
.090
-.016
-.008
.783
.760
.466
.686
.621
.218
α=.863
7 泣きたい気分だ
11 かなしい
14 さみしい気持ちになる
F3.不安
.931
.825
.695
α=.723
15 心配な気持ちになっている
9 不安を感じる
8 どきどきしている
累積因子寄与率(%)
そのほかの例) 国語、数学、英語、物理の成績⇒文系、理系
62.739
因子間相関行列
因子
F1
F1
1.000
F2
.434
F3
.518
F2
1.000
.690
F3
1.000
20
調査の分析5:t検定
 母集団(日本の全中学生)においても、男子よりも女子
の方がストレスが高いといえるか?
⇒t検定(2群の平均値差に関する検定)
グルー プ統計量
怒り
性別
男子
女子
N
273
260
平均値
5.62
6.13
標準偏差
2.544
2.650
平均値の
標準誤差
.154
.164
独立サンプルの検定
等分散性のための
Levene の検定
怒り
等分散を仮定する。
等分散を仮定しない。
F値
.831
有意確率
.362
2 つの母平均の差の検定
t値
-2.274
-2.271
自由度
531
526.775
有意確率
(両側)
.023
.024
平均値の差 差の標準誤差
-.51
.225
-.51
.225
差の 95% 信頼区間
下限
上限
-.954
-.070
-.954
-.069
⇒いえる(詳しい方法は授業で)
21
調査の分析5:分散分析
 母集団(日本の全中学生)においても、1,2年生より
も3年生の方がストレスが高いといえるか?
分散分析
⇒1要因の分散分析 怒り
グループ間
グループ内
合計
平方和
69.446
3544.828
3614.274
自由度
2
530
532
平均平方
34.723
6.688
F値
5.192
有意確率
.006
多重比較
従属変数: 怒り
Tukey HSD
平均値の
差 (I-J)
標準誤差
.01
.285
-.74*
.275
2年生
-.01
.285
-.75*
.268
3年生
.74*
.275
.75*
.268
*. 平均の差は .05 で有意
(I) 学年
1年生
(J) 学年
2年生
3年生
1年生
3年生
1年生
2年生
有意確率
1.000
.020
1.000
.015
.020
.015
95% 信頼区間
下限
上限
-.66
.68
-1.39
-.09
-.68
.66
-1.38
-.12
.09
1.39
.12
1.38
⇒いえる(詳しい方法は授業で)
22
報告書のまとめ方:表の作成
表4-2 情動反応の学年別、男女別の平均得点と分散分析の結果
1年生
2年生
3年生
学年差
性差
F値
男子
女子
男子
女子
男子
女子
F値
怒り
5.45
5.72
5.43
5.75
5.90
6.77
5.31
【3-12】
(2.71)
(2.63)
(2.36)
(2.61)
(2.58)
(2.60)
1,2<3
悲哀
3.76
4.96
4.04
4.75
4.00
5.19
.67
【3-12】
(1.56)
(2.61)
(1.80)
(2.25)
(1.74)
(2.51)
不安
4.73
5.03
4.65
5.38
4.97
6.18
5.60
【3-12】
(2.05)
(2.12)
(1.92)
(2.05)
(2.26)
(2.27)
1,2<3
【 】内は得点範囲・( )内は標準偏差
**
4.64
交互作用
F値
*
.77
n.s.
.78
n.s.
2.08
n.s.
男<女
n.s.
31.73 ***
男<女
**
16.15 ***
男<女
†p<.10 * p<.05 ** p<.01 ***p<.001
SPSSの出力をそのまま報告書に載せてはいけません。
このような表を作成するのがルールです。
23
報告書のまとめ方:結果の書き方
◇ 結果の書き方 ◇
「男子と女子のストレス反応の平均値を両側
検定のt検定により検討した。その結果、
t=2.40(df=18)となり,これらの平均値差は
5%水準で有意であった。」
分析結果の書き方には、ある程度決まりがあります。
決まりを覚えて、正しい書き方でレポートを書きましょう。
24
以上、ざっとですが、実習を通して学ぶことを
概観しました。
なんとなくイメージがつかめましたか?
25
本日の授業はこれでおしまいです。
おつかれさまでした。
後期の半年間、どうぞよろしく!
岡田佳子
26