東日本大震災 宮城県からの現場報告 ~災害廃棄物の現状と問題点~ 東京都市大学 環境情報学部 環境情報学科 中原研究室 0831194 三浦 琢馬 1 発表内容 研究背景・動機 研究目的 調査方法 調査結果 ・Ⅰ 災害廃棄物処理 ・Ⅱ 阪神淡路大震災との比較 ・Ⅲ 被災地の人々が抱く想い 考察 提言 2 研究背景 2011年3月11日、東日本大震災発生。 宮城県、岩手県、福島県、茨城県、千葉県など三陸沿岸か ら関東地方沿岸の集落では壊滅的な被害が発生した。 図:震度階の分布図 図:津波警報の発令地域 (1)出典:東北地理学会 東日本大震災報告集 3 研究動機 私の生まれ育った塩釜市。宮城県を中心とする 大震災後、現地を訪れると変わり果てた街並み。 最大の被害は、津波による幾つもの倒壊家屋・ 損傷した船・自動車、木くず・コンクリート等 の廃棄物によるもの。 地元の宮城県塩釜市が被災した事で、早く復興 してほしいという願いと、被災地を覆うガレキの 山、ゴミの山の実態はどのようになっているのか という疑問からこの研究に着手。 4 • ゴミの山 • 地震の爪痕 • 津波による被害 問題 影響 • 人体に・・・ • 産業に・・・ • 被災地に・・・ • 元の街へどう再 生しよう? • 問題に対しての 対策・改善は? 対策 研究目的 被災地の人々の生の声を伝えると共に、そこにあった事実を 残し、現状と、抱えている問題を洗い出す事を目的とする。 5 調査方法 調査範囲 気仙沼市 調査地 ・塩釜市 ・気仙沼市 ・石巻市 ・南三陸町 ・多賀城市 石巻市 南三陸町 調査期間 2011年3月11日~ 多賀城市 2012年1月17日 塩釜市 6 調査内容 1.災害廃棄物処理 2.阪神淡路大震災との比較 3.被災地の人々が抱く想い 現状と問題を洗い出す 7 調査Ⅰ 災害廃棄物処理 災害廃棄物とは? 地震廃棄物 津波廃棄物 家財ごみ 津波浸水ごみ(家財中心) 家屋ごみ 津波倒壊ごみ(家屋中心) その他 避難ごみ 水産物 ヘドロ 船・自動車 コンがら 草木 堆積物 ※写真はすべて現地撮影 8 排出量はどのくらいか? 宮城県1569万t (宮城県・福島県・岩手県3県では、2250万t) ※福島県の一部の災害廃棄物は計上していない 宮城県内で排出する 一般廃棄物の23年分。 環境省 災害廃棄物処理の進捗状況資料より、2012年 1月17日現在で撤去状況(撤去率)は99%に達したと公表。 9 基本的なフロー 出典:環境省 災害廃棄物分別・処理戦略マニュアル 10 問題点 1.放射線によって汚染された放射性災害廃棄物 2.ゴミの山からメタンガスによる自然発火の恐れ 3.二次置き場の設置・確保 4.ゴミの山は害虫の発生源となり、周辺の衛生環境の 悪化を招く恐れ。 5.仮置場において汚染水が土壌に浸透し、土壌汚染や 地下水汚染を引き起こす可能性。 迅速な対策と改善が必要である 11 対策 ○放射線によって汚染された放射性災害廃棄物 ・環境省によると、宮城県の災害 廃棄物の放射能濃度は低く、 管理型処分場での埋め立てが可能。 図:除染廃棄物用フレコンバック 図:低レベル放射性廃棄物埋設図 (2)出典:メディアインター ナショナル株式会社 (3)出典:原子力教育支援情報提供サイト 12 対策 ○メタンガスによる自然発火対策 ・撤去されたゴミの山にガス抜き管を設置し、火災発生の防止 →ガス抜き管は、ガレキの中から回収した塩ビ管を有効利用。 ガス抜き管からは、メタンガスの排出が確認され火災発生の抑制に効果を得た。 図:撤去されたゴミ山における自然発火対策図(東松島市) (4)出典:環境省 災害廃棄物処理優良取組事例集 13 調査Ⅱ 東日本大震災と阪神淡路大震災の比較 ・被害の大きさ・問題点・被害状況を把握する。 阪神淡路大震災では建物倒壊被害の他、火災の影響、圧死者多数の被害 東日本大震災では建物倒壊被害の他、津波の被害、福島原子力発電所事 故による被害 図:阪神淡路大震災 イメージ図 図:東日本大震災 イメージ図 単独県型巨大災害ほぼ兵庫県だけ被災 複数県型巨大災害周辺も大規模被災 (5)出典:関西大学社会安全学部・社会安全研究科 人と防災未来センター ※右図は筆者撮影 14 スケール比較 阪神淡路大震災 被害スケール図 出典: 「気象庁 震度分布図」を基に筆者作成 東日本大震災 被害スケール図 出典: 「気象庁 震度分布図」を基に筆者作成 15 人的被害の比較 (7)出典:警察庁 rescuenow.net 過去の震災と東日本大震災の人的被害を比較 16 災害廃棄物量比較 災害廃棄物量比較表 図:大阪府のフェニックス最終処分場 (8)出典:大阪府 フェニックス処理計画 東日本大震災(宮城県のみ) 阪神淡路大震災 災害廃棄物量 1569 万t 1450 万t 東京ドーム 43 個分 40 個分 処理年数 一般廃棄物の 23 年分の量 3 年間で処理完了 出典:環境省 宮城県沿岸部災害廃棄物処理の進捗状況を基に筆者作成 17 比較結果 ・津波による被害の大きさ ・東北地方には、行政によって運営される広域的な廃棄物 処分場が存在しない。 阪神淡路大震災により、事前に防災計画 や廃棄物処理方法が決定されていた。 撤去されただけであって、現場では、処理まで完了されていない現状。 →教訓が活かされていない 18 調査Ⅲ 被災地の人々が抱く想い 1.インタビュー調査 調査概要 ・調査対象 漁業の従事者(男性15名 計15名) 農業の従事者(男性4名 女性5名 計9名) 仮設住宅に避難している人々(男性18名 女性12名 計30名) 気仙沼市役場 東日本大震災課(3名) ・調査期間 7月21日~23日、1月2日~3日 ・調査地 気仙沼市、塩釜市 2.新聞調査 ・避難者アンケート(宮城県 河北新報社の調査の基) ・新聞記事(宮城県 河北新報社、宮城県 三陸新聞) 19 インタビュー調査 漁業の従事者 ・仮置き場から流出した汚染水等により、汚染魚に なってしまう。 ・船・漁具が失われ、漁ができない ・宮城県はかまぼこの名産地→経営する業者に影響 農業の従事者 ・田畑が失われた ・塩水により作物が台無し ・放射性廃棄物の風評被害 ・衛生上問題はないと判断された作物でも、汚染され ている作物を出荷しているのではないかという懸念 仮設住宅 に住む人々 ・居住性の問題 (暑さ寒さ対策が施されている家と、そうでない家) (室内の間取り・建設場所) ・今まで漁業や農業を営んでいた方々が、新しい 仕事へとシフトする難しさ ・騒音や隣接しすぎる家々によるプライバシー問題 20 新聞調査 グラフⅠ被害を受けた宮城県沿岸部の避難者にアンケート 出典:河北新報社 3月11日~4月11日の記憶(新聞記事)を参考に筆者が作成 21 考察 ♦災害廃棄物を撤去しなければ何も始まらない。 ・現場では、撤去されているが、処分までには至っていない。 ♦各調査で洗い出された現状と問題点についてのまとめ。 1.災害廃棄物問題 →(放射性問題・メタンガスによる自然発火問題等。) 2.阪神淡路大震災との比較で浮き彫りになった現状 →(阪神淡路大震災の教訓が活かされてない事実) 3.被災地の人々が嘆く想いから読み取れる課題 →(被災地の人々が嘆いた不満や想い) ♦被災地で生活している人々に耳を傾けてほしい。 仮設住宅(避難者)の人々は未だ抜け出せない状況、それぞれが不満や想い を抱いている。震災から1年近くの時が経ち、被災地は未だ元には戻ってい ない。それらを風化させないでほしい。 22 提言 環境省は、災害廃棄物が99%撤去されたと公表している。 →まだまだ多くの災害廃棄物が処理されていない事実を 公表すべき。 調査で発覚した人体・産業・コミュニティ等に与える各問 題・課題を迅速に解決する必要がある。 →それらの対策や解決策を、コミュニティ(各市町村) 同士が共有すべき。 被害が甚大な地域では、今もなお、ボランティアの方々の 支援が必要である。 23 参考・引用文献 参考新聞・・河北新報、三陸新聞 資料提供・・気仙沼市役場(本吉町) 参考論文・・阪神・淡路大震災における中間処理施設の被害状況 京都大学工学部教授 武田信生 関西大学社会安全学部・社会安全研究科 阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター河田惠昭 参考文献・・東日本大震災における災害廃棄物の概況と課題 http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2011pdf/20110501065.pdf 復興だより 東日本大震災復興対策本部 宮城現地対策本部事務局 http://www.reconstruction.go.jp/topics/miyagi_report01.pdf 引用文献・・(1)東北地理学会 東日本大震災報告集 http://wwwsoc.nii.ac.jp/tga/disaster/articles/j-contents1.html (2)メディアインターナショナル株式会社 http://mediaint.co.jp/product/ (3)原子力教育支援情報提供サイト http://www.atomin.go.jp/reference/atomic/reiect/index04.html (4)環境省 災害廃棄物処理優良取組事例集 http://tohoku.env.go.jp/to_2011/0720a.pdf (5)関西大学社会安全学部・社会安全研究科 人と防災未来センター http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou2/siryou5.pdf (6)警察庁 rescuenow.net 過去の震災と東日本大震災の人的被害比較 http://www.rescuenow.net/2011/05/post-1572.html 24 ボランティアへの参加を お願いします。 ご清聴ありがとうございました。 25
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