Residual Stresses and Fatigue Strength in

疲労強度Ⅰ

疲労き裂の発生と進展
一.
二.
三.

疲労き裂発生メカニズム
進展過程の分類とその説明
ストライエーションの形成機構
S-N曲線と諸因子の影響
一.
二.
三.
四.
S-N曲線とは…
応力集中係数と切欠き効果
寸法効果
平均応力の影響
Numazu National Collage of Technology
疲労とは...?
疲 労
人間

仕事を続けたり、外的環境の変化
(温度、湿度)などにより疲労感を感
じ、眼や筋肉の機能に変化が現れる.
構造材料 ?
構造材料の疲労の発生原因
応力腐食割れ

繰返し負荷

長期使用による組織変化
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
一.疲労き裂発生メカニズム


き裂発生源
材料内の潜在欠陥
結晶粒界の介在物
・・・材料の製造過程でやむを得
ず混入される酸化物など.もしく
は生成される不純物.

空孔(ボイド)

結晶内析出物

第2相粒子
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
一.疲労き裂発生メカニズム

き裂発生源

材料の表面
加工傷
すべり変形による凹凸形成
金属材料の典型的なき裂発生源

き裂発生メカニズム
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
疲労き裂発生モデル
表
面
突出
し
入込み
主すべり
面
引張応力
圧縮応力
すべり量が
同一でない
非可逆的な
すべり
Numazu National Collage of Technology
繰返しすべ
りの蓄積
疲労き裂の発生と進展
一.疲労き裂発生メカニズム

き裂発生メカニズム (典型的なき裂発生源)
固執すべり帯;多結晶体では、同時に多
数の結晶粒内ですべり帯が形成される。
その中で、最大せん断応力面の最大せ
ん断応力方向に生じているすべり帯
入込み
突出し
表面
断面
銅のすべり帯とき裂発生
繰返し応力によって繰返しすべり変形を生じて形成する.
固執すべり帯
このすべり帯に沿ってき裂が進展する段階であり,すべり面と
方位に支配される.
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
二.進展過程の分類とその説明
進展過程の分類
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
二.進展過程の分類とその説明

第Ⅰ段階
き裂発生から初期進展領域
入込み
固執すべり
帯
突出し
繰返し応力によって繰返しすべり変
形を生じて形成する.
このすべり帯に沿ってき裂が進展する
段階であり,すべり面と方位に支配さ
れる.
固執すべり領域
多結晶の場合 → 結晶粒を貫く形で発達
単結晶の場合 → 結晶の全断面を貫く形で発達
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
二.進展過程の分類とその説明

第Ⅱa段階
き裂はすべり面に沿って進展
き裂は徐々に応力軸に垂直方向
に向きを変える
Numazu National Collage of Technology
すべり帯
疲労き裂の発生と進展
二.進展過程の分類とその説明

第Ⅱb段階
安定き裂進展
き裂は応力軸に垂直方向に進展する
破面形態
疲労破壊特有の縞模様
ストライエーション
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
ストライエーションの形成機構

ストライエーション
安定き裂進展に見られる疲労破面特有の模様
き
裂
進
展
方
向
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
二.進展過程の分類とその説明

第Ⅱc段階 不安定き裂進展
き裂の進展は加速される
不安定破壊に至る
破面形態
ディンプル破面
へき開破面
(特定の格子面に沿って生じる
分離破壊)
•粒界割れ破面
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂の発生と進展
三.ストライエーションの形成機構

ディンプル破面
ディンプル
Numazu National Collage of Technology
S-N曲線と諸因子の影響
一. S-N曲線とは…
疲労強度
規則的な繰返し応力を加えられたときに破壊を
生ずるまでの応力繰返し数によって表される.
繰り返し応力
応
力
σa
Δσ
σm
時間
応力振幅; a 
平均応力; m
応力比;R 
Numazu National Collage of Technology
 max   min
2

  min
 max
2
 min
 max
S-N曲線と諸因子の影響
一. S-N曲線とは…
S-N曲線
応力振幅と繰返し数の関係
疲労寿命
依存
破壊までの繰返し数
応力振幅
平均応力
疲労限度(耐久限度)
通常,106~107回の繰返し数で発生する.
なお,アルミニウム合金や銅合金のような非鉄金属
では疲労限度が存在しない.また,鉄鋼材料でも高
温や腐食環境では存在しない.
104回程度より短い寿命→低サイクル疲労 ひずみと寿命の関係
S-N曲線と諸因子の影響
二.応力集中係数と切欠き効果
σmax
応力集中
σn
切り欠き底近傍に局部的に高い応
力が発生すること.
P
P
応力集中係数α
 
D
d
 max 切欠き底の最大応力

n
公称応力
応力拡大係数K
ρ
σ
σy
K   a F
a
σ
Numazu National Collage of Technology
K→大
x
S-N曲線と諸因子の影響
二.応力集中係数と切欠き効果
切欠き係数β
応力集中係数αが大きい→ 疲労強度は小さい
 

平滑材の疲労強度
 w0
切欠き材の疲労強度  wk
切欠き係数は大きい
切欠き感度係数η

 1
 1
η=1: 切欠きに対して敏感(疲労限が低下)
η=0: 切欠きに対して鈍感(疲労限が変化なし)
Numazu National Collage of Technology
S-N曲線と諸因子の影響
三.寸法効果
寸法効果の原因
寸法効果と疲労限度
・応力勾配
・試験片表面積
・試験片加工法
・試験片採取位置
・応力勾配
最大応力 大←応力勾配→小
σmax
公称応力
σ0
小←寸法→大
疲労限度→低下
Numazu National Collage of Technology
S-N曲線と諸因子の影響
三.寸法効果
寸法効果の原因
・試験片表面積
寸法→大
表面積→大
破壊起点の増加
疲労限度→低下
確率・統計学的な原因
・試験片加工法
表面加工層 → 表面焼入,ショットピーニングなどの表面硬化層
表面引張残留応力
表面粗さ
Numazu National Collage of Technology
S-N曲線と諸因子の影響
四.平均応力の影響
 m1   m 2   m3
疲労限度線図(耐久限度線図)
平均応力 引張側→疲労限度の低下
圧縮側→疲労限度の増大
・疲労限度線図の作図法
 m1
 m2
 m3
a
応
力
振
幅
N
引張側完全片振り疲労限度
圧縮側完全片振り疲労限度
A
-σy
圧縮側
B
疲労限度線の式
塑性変形範囲
σy
両振疲労限度
C
45°
非疲労領
域
0
D
E
Gerber線
Goodman線
Gerber線
修正Goodman線
Soderberg線
Soderberg線
45°
σy
修正Goodman線
Numazu National Collage of Technology
:  a   w 1   m  T 

:  a   w 1  m  B 
:  a   w 1   m  B 
:  a   w 1   m  y 
平均応力
σB
T(=σT) 引張側
2

S-N曲線と諸因子の影響
四.平均応力の影響
演習問題
黄銅(引っ張り強さσB=310MPa,真破断応力σT=1110MPa)
の引張圧縮疲労において,直径d=10mmの平滑材の両振り
疲労限度σwo=115MPaのとき,平均応力σm=50MPaが作用す
るときの疲労限度をGoodman線,修正Goodman線およびゲ
ルバー線よりそれぞれ推定せよ.
Numazu National Collage of Technology
疲労強度Ⅱ

塑性疲労
一.
二.

変動荷重下の疲労強度
一.
二.

定応力試験と定ひずみ試験
寿命式
実働荷重と疲労強度への影響因子
累積疲労損傷則
疲労き裂進展速度
Numazu National Collage of Technology
塑性疲労
一.定応力試験と定ひずみ試験
塑性疲労
巨視的に大きな塑性ひずみを伴う疲労
破断までの繰返し数が小さい疲労(103回以下)→低サイクル
疲労
σm:平均応力
εm:平均ひずみ
σa:応力振幅
εa:ひずみ振幅
εpa:塑性ひずみ振幅
εea:弾性ひずみ振幅
Δσ=2σa:応力幅
Δεp=2 εpa:塑性ひずみ幅
Δεt=2 εa:全ひずみ幅
応力-ひずみヒステリシスループ
Numazu National Collage of Technology
塑性疲労
一.定応力試験と定ひずみ試験
繰返し応力-ひずみ曲線
  p

 K 
2
 2
;応力幅
 p;塑性ひずみ幅
K ;繰返し強度係数
n;繰返し硬化指数
n  0.15
Numazu National Collage of Technology




n
塑性疲労
一.定応力試験と定ひずみ試験
繰返し硬化
繰返し軟化
Numazu National Collage of Technology
塑性疲労
一.定応力試験と定ひずみ試験
応力振幅の変化
Numazu National Collage of Technology
塑性疲労
二.寿命式
Manson-Coffin則
応力-ひずみヒステリシスループ
S10C鋼のManson-Coffin図

 p  N f  C
C:材料定数
  0.5~0.6
C  0.5~1.0 f
A 
 100 

  f  ln  o   ln 
 Af 
100






; 破断延性(破断時の対数ひずみ)
絞り 
Ao  A f
Ao
 100
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
一.実働荷重と疲労強度への影響因子
一般の疲労試験
一定振幅の
繰返し荷重
基本的な疲労
特性を知る
実際の構造物に作用する荷重は一定振幅ではない
ランダム荷重,変動荷重
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
一.実働荷重と疲労強度への影響因子
実働荷重の典型的な例
狭帯域ランダム応力
Ground-air-ground
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
一.実働荷重と疲労強度への影響因子
実働荷重下の疲労強度試験
実働応力の再現は難し
い
適当な変動応力試験に置き換え
る
Ehime University
変動荷重下の疲労強度
一.実働荷重と疲労強度への影響因子
・変動荷重状態
低い荷重→高い荷重へ
き裂進展速度を速める
寿命は短い
高い荷重→低い荷重へ
き裂進展速度を遅らす
寿命は長い
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
破壊形態
1. 進展中のき裂先端の輪郭を示す模様が破面上に現れたもの.
2. き裂は模様に垂直な方向に進展する.
3. き裂が除々に進展している過程でき裂先端の応力状態や破壊様式が変化し
た場合に出現.
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
二.累積疲労損傷則
疲労寿命推定
一定の繰返し応力振幅
変動応力振幅
線形累積損傷則
S-N曲線
一定繰返し応力振幅のS-N曲線
から求める方法
応力レベルが σ1, σ2, ・・・,σi, ・・・ とし
て単独で繰り返されるとき,
疲労寿命を N1, N2, ・・・,Ni, ・・・ 回とす
る.
σmax
σ
応 σ1
2
力 σi
一定振幅試験
のS-N曲線
マイナー
各レベルの応力がn1, n2, ・・・,ni, ・・・
回繰り返されたとき,
疲労損傷はn1/N1, n2 /N2, ・・・,ni /Ni, ・・・ と考え
る.
N 1 N2
破断繰返し数
n
n
n
n
線形累積損傷則 D  1  2      i       i  1
N1 N 2
Ni
Ni
or マイナー則
Numazu National Collage of Technology
Ni
変動荷重下の疲労強度
三.累積疲労損傷則
ただし,損傷値Dが比較的1に近くなる条件
・応力レベルが疲労限度以上であること
・各応力レベルの繰返し数が比較的小さいこと
・応力変動範囲も小さく,周期的に繰返し変動が起こる場合
応力変動 高→低 Dは1より小さい
低→高 Dは1より大きい
実働応力では疲労限度以下の応力も含ん
でおり,損傷を与えることが知られている.
修正マイナー則
条件により,D=0.1~20程度
σmax
σ
応 σ1
2
一定振幅試験の
S-N曲線
マイナー
修正マイナー
力 σi
σj
N1 N2
Ni
Nj’
破断繰返し数
Numazu National Collage of Technology
変動荷重下の疲労強度
三.累積疲労損傷則
塑性ひずみ因子を考えた累積損傷則
材料の応答挙動が変化する
線形累積損傷則が成り立たない場合
応力-塑性ひずみ関係
(ひずみ硬化,軟化)
塑性疲労領域
塑性ひずみ幅pが疲労寿命
を決める第一因子である.
Manson-coffin則

 p  N f  C
1
  p 


 C 
 N 1
  pi
D   
 C
1



塑性ひずみ幅pの1回の繰返し当たりの
1
疲労損傷は
1
1   p 


塑性疲労領域でのD=07~1.4程度で
N  C 
あり,線形領域より遙かに1に近く良い
推定値となっている.
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂進展速度
疲労き裂進展
第I段階 き裂発生
進展(組織学的条件に依存)
第II段階 安定き裂成長
(負荷条件に依存)
線形破壊力学パラメータ, K で表される
.
第Ⅱ段階のき裂進展速度を応力拡大係数で表す σmax
Kmax
.
Kmax   max  a  F Kmin   min  a  F
σ
一方,小規模降伏条件
or
K
K  Kmax  Kmin    a  F
σmin
Numazu National Collage of Technology
Δσ
Kmin
時間
疲労き裂進展速度
第IIa段階 (不安定成長領域)
ΔKの減少→da/dNは急激に低下.
下限界応力拡大係数範囲(ΔKth)
第IIc段階 (不安定成長領域)
ΔKの増加→da/dNは急激に増大.
疲労破壊靭性(Kfc):静的な破壊靭性値よりも低
い
ΔK→Kmax支配へ
第IIb段階 (安定成長領域)
パリス則が成り立つ領域
Paris 則:
da
m
 C K  C:材料定数
dN
m:速度進展指数(材料定数)
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂進展速度
き裂進展速度に影響する因子と特
徴
第IIa段階
伝ぱ速度に対して,材料微視組織,平均
応力,環境の影響が大きい.板厚は影
響なし.
破面:粒界破壊(微視組織に対応)
第IIb段階
材料微視組織,平均応力,環境,板厚の
影響は少ない.
破面:主としてストライエーション
第IIc段階
材料微視組織,平均応力,板厚の影響が大きい
.環境の影響は少ない.
破面:へき開,ディンプル(静的破壊様式に対応)
Numazu National Collage of Technology
疲労き裂進展速度とき裂開閉口挙動
一.疲労き裂進展速度
き裂進展寿命評価
パリスの式を用いて評価する.
第IIa段階 安全側の寿命評価
寿命を短く見積もる
第IIc段階 非安全側の寿命評価
寿命を短く見積もる
全体の寿命に占める割合は
小さいので,無視する
Paris 則:
非安全側評価
安全側評価
da
m
 C K 
dN
初期き裂長さa0, 最終破断き裂長さafとして,
Nf
N=0からN=Nfまで積分して算出する.
Nf
af
N0
a0
  dN  
Numazu National Collage of Technology
1
da
m
C K 
疲労強度Ⅲ

高温クリープ
一.
二.
高温クリープの特徴
クリープ破断
Numazu National Collage of Technology
高温クリープ
一.高温クリープの特徴
クリープ
一定負荷応力のもとで時間の経過とともに生じる変形の一つ.
高温で顕著に生じる
クリープ曲線
ひずみ量を時間に対して示すと3つの
段階に区分される.

一次(遷移)クリープ


二次(定常)クリープ
三次(加速)クリープ
構造材料では二次クリープ
が寿命の大半を占める
Numazu National Collage of Technology
高温クリープ
一.高温クリープの特徴
その他のクリープ曲線
③
①;温度が低く,応力が小さいとき.
②
②;①と③の中間.
ひずみ
③;温度or/and応力が大きい
①
時
高温で使用される材料は,クリープひ
ずみを生じさせる応力を知る必要があ
る.この応力をクリープ限度(Creep
limit)という.
間
Numazu National Collage of Technology
高温クリープ
一.高温クリープの特徴
クリープ速度の温度依存性曲
線
二次(定常)クリープ速度s
 Q 

 RT 
s  exp 
R:ガス定数,Q:見かけのcreepの活性化エネルギ
自己拡散の活性化エネルギとほぼ一致
クリープ変形過程は
拡散過程である.
工学的なひずみ速度式
Q 

s  A exp 
 : steady creep
 RT 
n
Numazu National Collage of Technology
高温クリープ
二.クリープ破断
Larson-Miller パラメータ
: 温度補正時間パラメータ
P  T C  logtr 
種々の温度および応力におけるクリープ破断
データをLarson-Millerパラメータで整理すると,
σ-P曲線が1本で表される.
これはクリープ速度の式を変形していくと
Q
 T (C  log t r )
R
として表され,Pは活性化エネルギを表すこと
を示している.
Numazu National Collage of Technology
高温クリープ
一.高温クリープの特徴
Numazu National Collage of Technology