I2TAのこれまでとこれから

「テクノロジーアセスメント」セミナー@東大駒場
2010年5月28日(金)
I2TAのこれまでとこれから
東京大学公共政策大学院
吉澤 剛・古屋 絢子
テクノロジーアセスメントとは
• テクノロジーアセスメント(TA)とは、従来の枠組みで
は扱うことが困難な技術に対し、将来のさまざまな
社会的影響を独立不偏の立場から予見・評価する
ことにより、新たな課題や対応の方向性を提示して、
社会意思決定を支援していく活動を指す
• 技術評価、研究開発評価、環境影響評価、リスク評
価、政策評価ではなく、「技術の社会的影響評価」で
ある
• 本質的に《開放系》であり、《ゆるやかな》もの
TAの三世代モデル
第一世代
第二世代
第三世代
時代的区分
1970年代〜
1990年代〜
2000年代〜
制度
議会中心型
(ガバメント)
議会関与型
(ガバナンス)
連携型
(分散型ガバナンス)
焦点となる
関与者
専門家
関心ある市民・
ステークホルダー
中間的アクター・
一般市民
正統性・信頼性 専門性
の担保
民主的プロセス
社会的検証
アプローチ
早期警報~
戦略的
事前警戒~
構築的
リアルタイム~コミュ
ニケーション的
手法
技術的・分析的 社会的・熟議的
混合(情報ネット
ワーク技術の活用)
資源
専門的
既存
ローカル
アセスメント(影響評価)と意思決定の関係の変化
多様な見方による複数の開いた
システムについての情報が与えられる
一つの閉じたシステムに
ついて様々な情報が与え
られる
影響評価
評価
情報を一つの結果
にまとめて閉じた
評価とする
社会技術
システム
意思決定
評価の結果を受けた特定の意思
決定に従って一意に介入する
見方(3)
見方(2)
いろいろな見方や
対象の社会的影
響を含めて評価を
開いたものにする
「システム」の
見方(1)
意思決定
介入の幅広いポートフォリオが形作られ、
政治的に優先順位をつけることで意思決定
が戦略的なものとなる
Stirling(2007)を改変
戦略と評価の切り分け
科学技術評価局
影響評価
見方(3)
見方(2)
「システム」の
見方(1)
意思決定
科学技術戦略本部
I2TAの概要
• 科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発セン
ター(RISTEX)「科学技術と社会の相互作用」研究開
発プログラム「先進技術の社会影響評価(テクノロ
ジーアセスメント)手法の開発と社会への定着」研究
開発プロジェクト(平成19~22年度)
• 参画者26名(内部諮問委員4名)、海外パネル4名、
外部諮問委員2名
– 制度分析グループ
– ナノテクTA実践グループ
• 医療・食品・エネルギー
– アウトリーチ・ユニット
I2TAの組織体制
企画戦略ユニット
研究代表者(城山)
実践Gリーダー
顧問
(竹村)
(鈴木)
サブリーダー
(吉澤)
海外アドバイザー
(C.Hill, A.Rip, D.Cope,
M.Rogers)
外部諮問委員
(武部・唐木)
内部諮問委員
(黒田・土屋)
アウトリーチ・ユニット
(吉澤・古屋)
ミニTA
(吉澤)
ナノテクTA実践G
(竹村)
医療T
(松浦・畑中)
食品T
(上田・松尾)
制度分析G(城山)
エネルギーT
(吉澤・山口)
TAの制度化に向けて
• 各種媒体へのTAの記載の働きかけ
– 日本学術会議『第4期科学技術基本計画への日
本学術会議の提言』(2009年11月26日)
– 文部科学省科学技術・学術審議会基本計画特別
委員会『わが国の中長期を展望した科学技術の
総合戦略に向けて(中間報告案)』(2009年12月
15日)
– 原子力委員会『成長に向けての原子力戦略』
(2010年5月25日)
– 総合科学技術会議基本政策専門調査会『科学技
術基本政策策定の基本方針(案)』(2010年5月
27日)
TA制度化選択肢(案)
1. 政府レベルでのTA機関の制度化
•
国会、行政機関、自治体
2. 政府によるTA活動のための資金枠の設定
•
Ex. 21世紀ナノテクノロジー研究開発法
3. 個別研究開発機関等のイニシアティブによ
る制度化
•
公的機関による一定の資金提供、資金源の多
様化による自律性の確保
4. 国際的制度化
•
アジアTAセンター構想、ICON(International
Council on Nanotechnology)
TAの実践
1. 医療(ナノメディシン)チーム
• がん治療に向けたナノドラッグデリバリーシステム
2. 食品(フードナノテク)チーム
• 食品分野へのナノテクの応用
3. エネルギー(ナノグリーン)チーム
• 将来住宅におけるエネルギー利用とナノテク
4. ミニTA
•
•
•
•
多層カーボンナノチューブ(CNT)
HPVワクチン
合成生物学
TAチャレンジ
TAチャレンジ
• 「文系チーム」の限界:
技術的特性の軽視、制
度論・社会論への傾斜
• TAの実践者、支援者、
理解者として若手理系
研究者を巻き込みたい
• 競争形態にすることで、
費用効果を最大にする
意図
TAの進め方
テクノロジーアセスメントには特定の手法はない
TA自体のプロセスより、その前後が重要となりうる
議題設定
TA
アウトリーチ
TAは議題設定やアウトリーチと往復しながら進める
一般的なアウトリーチ
• 成果報告書『TA Note』
• ニュースレター『i2TAYORI』
• ホームページ(http://i2ta.org/)
– I2TA、TA・ナノテク関連イベントのニュース
– 総合科学技術会議基本政策専門調査会、研究
開発システムWGの議事要旨
• Twitter(http://twitter.com/i2ta)
• サイエンスアゴラ2009「最新技術から社会を
考えるロールプレイ」
制度化に向けたアウトリーチ
• I2TA公開シンポジウム
– 「科学技術プロセスのオープン化--テクノロジーアセスメン
ト(TA)の新たな潮流とわが国での制度化」(3/9) :鈴木寛
副大臣、林芳正議員、有本建男RISTEXセンター長、海外
パネルが参加
– 「テクノロジーアセスメントの実践とわが国における制度
化の課題(仮)」(8/30予定):実践成果発表と制度化に向
けた議論
• 科学技術ガバナンス研究会(4-6月)
– 科学技術の現場における社会との関係について、横断
的・俯瞰的に論点整理
• 科学コミュニケーター/ジャーナリストとのネット
ワーク
– 大学(東大、早稲田)、研究機関
科学コミュニケーション:分野・領域の近さ
食育
リスク
医療福祉
科学コミュニケーターに多い→
科学コミュニケーション:活動形態・手法の近さ
←
場
に
向
け
て
場づくり
ç
見せる
言葉の発信
社
会
に
向
け
て
ç
ç
問題解決
→
←人を動かす
自分で動く→
科学コミュニケーターとは何か
 科学コミュニケーターはどちらかといえば場づくりや見せる活
動に多く携わっている
 その「場」のための活動で、必ずしも社会に向けられていないため、参
加者の非固定化・拡大や活動の継続性に問題を抱えているのでは
 活動を社会に向けると目的を持ったコミュニケーションが必要であり、
何のために「つなぐ」「伝える」のかが明確に求められる
 ただし、社会に目を向けようとするとジャーナリストや政策研究者など
既存のアクターと競合するというジレンマ
 場づくりや見せる活動を通した経験が、洗練した方法論や体
系化された知識となっていないため、科学コミュニケーションと
は何かという悩みに直面する
 食と農や医療福祉の問題を「科学」として捉えられていない
 自身の活動を客体化する機会がないため、リスクとベネフィット、批判
と共感のバランスの取り方が分からない
科学と社会をめぐるコミュニケーションの現状
政治
産業界
メディア
科学
X
Y
社会
Z
A
制度
一般市民
B
おわりに
• 新ASIMO実演に学ぶ
– 人間(社会)-機械(技術)の関係性の転覆と予定
不調和
– コミュニケーションの文脈性
– 科学技術にできないことを知る