妊婦の高層居住における出産年齢と 流産との関連性について ○逢坂文夫 相川浩幸 木ノ上高章 (東海大学医学部公衆衛生学) 渡邉一平 (広島国際大学) 池見好昭 (横浜市環境科学研究所) [目的] 妊婦の高層居住における出産年齢 と流産との関連性について検討した。 [対象と方法] 調査は、A市の3福祉保健センター 管内における4ケ月検診を受けた母 親(第1子出生をした者)を対象に 質問票を配布し、記入の上、投函してもらっ た。 配布数は、4100部、回収数は2344部(回収 率:57.2%)であった。 なお、解析対象者は、集合住宅に居住する 1957名(83.5%)、その内訳は、1-2階:51.7%、 3-5階:25.4%、6-9階:4.6%、10階以上:1.8% であった。 検討項目は、流産、結婚年齢および出産年 齢とした。 [結果] 各検討項目 流産:9.8% 結婚年齢:25.9歳±3.3 出産年齢:28.1歳±3.8 出産年齢と流産 妊婦における集合住宅および出産年 齢別にみた流産割合 30 26.5 25 (%) 20 15.7 15 9.8 10 6.6 5 4.5 0 24歳以下 25-29歳 30-34歳 35歳以上 合計 P<0.001 生理的因子の影響 出産年齢別 相対危険度(RR) 流産率 RR 24歳以下: 4.5% 25-29歳: 6.6% 30-34歳: 15.7% 1.0 1.5 35歳以上:26.5% 5.9 3.5 P<0.001 妊婦における出産年齢別にみた流産の相対危険度 7 5.9 6 5 4 RR 3.5 3 2 1.5 1 1 0 24歳以下 25-29歳 30-34歳 35歳以上 P<0.001 居住階別にみた 結婚年齢 平均:25.9±3.3(年齢±SD) 1-2階: 3-5階: 6-9階: 25.7±3.3*** 26.4±3.4*** 26.4±3.0 10階以上: 25.4±2.6 ***P<0.001 妊婦における居住階別にみた流産割合 25 21.4 20 17.8 (%) 15 10 8.9 9.2 1-2階 3-5階 9.8 5 0 6-9階 10階以上 合計 P<0.002 妊婦における居住階別にみた 流産割合 (9.8%) 集合住宅 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合 計 108/1212 (8.9%) 55/596 (9.2%) 19/107 (17.8%) 9/42 (21.4%) 191/1957(P<0.002) 居住階別全体 相対危険度(RR) 流産率 RR 1-2階: 8.9% 3-5階: 9.2% (1.0) (1.0) 6-9階: 17.8% (2.0) 10階以上:21.4% (2.4) P<0.002 妊婦における居住階別にみた流産の相対危険度 3 2.5 2.4 2 RR 2 1.5 1 1 1 1-2階 3-5階 0.5 0 6-9階 10階以上 P<0.002 比較年齢(設定) 出産年齢の平均28.1歳±3.8(SD) ①27歳以下 ②28-32歳28歳+標準偏差(4歳) ③33歳以上 妊婦における居住階および出産年齢 の27歳以下による流産割合 7 6 5.5 5.9 5.3 4.9 5 (%) 5.7 4 3 2 1 0 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合計 妊婦における居住階別にみた 流産割合(27歳以下) (5.3%) 集合住宅 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合 計 32/582 11/228 2/35 1/17 46/862 (5.5%) (4.9%) (5.7%) (5.9%) 妊婦における居住階および出産年齢 の28-32歳群による流産割合 25 21.1 20 17.6 (%) 15 10.5 10.2 10 9 5 0 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合計 妊婦における居住階別にみた 流産割合(28-32歳) (10.5%) 集合住宅 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合 計 54/532 (10.2%) 25/278 (9.0%) 9/51 (17.6%) 4/19 (21.1%) 92/880 妊婦における居住階および出産年齢 の33歳以上による流産割合 80 70 66.7 60 (%) 50 38.1 40 30 24.7 22.4 21.1 1-2階 3-5階 20 10 0 6-9階 10階以上 合計 P<0.04 妊婦における居住階別にみた 流産割合(33歳以上) (24.7%) 集合住宅 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合 計 22/98 (22.4%) 19/90 (21.1%) 8/21 (38.1%) 4/6 (66.7%) 53/215(P<0.04) 妊婦における居住階および 出産年齢別にみた流産割合 80 70 66.7 60 (%) 50 38.1 40 30 21.4 24.7 17.6 9.8 8.9 9.2 22.4 21.1 21.1 17.8 20 10 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 合計 5.5 4.9 5.7 5.9 5.3 10.2 9 10.5 0 全体 P<0.002 27歳以下 28-32歳 33歳以上 P<0.04 居住階および出産年齢 相対危険度(RR) 妊婦における居住階および 出産年齢別にみた 相対危険度(RR) 流産 27歳以下 28-32歳 33歳以上 集合住宅 1-2階 1.0 1.9(1.0) 4.1(1.0) 3-5階 0.9 1.6(0.9) 3.8(0.9) 1.0 3.2(1.7) 6.9(1.7) 10階以上 1.1 3.8(2.1) 12.1(3.0) 6-9階 妊婦における居住階および出産年齢別にみた流産の相対危険度 14 12.1 12 10 RR 8 6.9 6 3.8 4 4.1 3.8 3.2 1.9 2 1 0.9 1 1.6 1.1 0 27歳以下 28-32歳 33歳以上 1-2階 3-5階 6-9階 10階以上 一戸建て住宅と集合住宅 合計 240/ 2344(10.2%) 一戸建て住宅 49/ 387(12.7%) 集合住宅 191/ 1957 (9.8%) 結婚年齢 平均:26.0歳±3.4 一戸建て住宅: 26.2歳±3.8 集合住宅: 出産年齢 一戸建て住宅: 集合住宅: 25.9歳±3.3 平均:28.2歳±3.9 28.6歳±4.3 28.1歳±3.8 (P<0.008) 考 察 したがって、本成績からみる限り、 居住階の上昇に伴い流産が増加し、 生理的因子である出産年齢の増 加に伴い、さらに流産が増大した。
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