第8回 論理ゲートの中身と性質 論理ゲートについて,以下を理解する 内部構成 遅延時間,消費エネルギー 電圧・電流特性 瀬戸 1 論理ゲートは,トランジスタで実現される 論理ゲートの回路方式 CMOS方式 CMOS MOSトランジスタ 低消費電力のため よく用いられる (構造も簡単) NOTゲート TTL TTL方式 バイポーラトランジスタ ダイオード 2 MOSトランジスタ - 電圧でon/off可能なスイッチ MOSとは? Metal (金属),Oxcide(酸化膜),Semiconductor (半導体) NMOS, PMOSの2種類 ゲートと基板の間に電界 (電圧)をかけると,ONになる G (ゲート) S (ソース) 金属 ++ ++ ++++ ++ D (ドレイン) 酸化膜(ガラス) 3V n型半導体 - - - - - - - - - - n型半導体 nMOS p型半導体 B (基板) 3 MOSトランジスタのまとめ (重要) NMOS G G = 1 (H) ( 3V ) G = 0 (L) ( 0V ) ON OFF OFF ON 基板 0(0V) PMOS G 基板 1(3V) NMOS, PMOSを両方使う回路方式を,CMOSと呼ぶ (Complementary (相補的) MOS) 4 MOSトランジスタは,回路素子として表せる (重要) MOSトランジスタは、スイッチであると同時に 抵抗 そして コンデンサ である それぞれ オン抵抗 、 ゲート容量 と呼ぶ G (ゲート) S (ソース) 金属板 ガラス n型 半導体 D (ドレイン) n型 半導体 p型半導体 B (基板) 5 電源: ゲート回路で省略してきたが必要なもの デジタル回路の動作には 電池 (直流電源) が必要 ゲートレベルの回路図では、電池の配線は省略 トランジスタレベルの回路図で出現 3V x 0 x 入力 出力 1 ゲートレベルの 回路図 (NOTゲート) トランジスタレベルの回路図 6 ディジタル回路に出てくる電圧(0, 1)(復習) 高い電圧(Hレベル)と低い電圧(Lレベル)の2つ もちろん、変化の途中で、その中間の電圧になる 電圧 高い電圧って、何ボルト? 使用する 電源 電圧のこと ICによって、異なる H L H L L 時間 5V, 3.3V, …, 1.8V (だんだん低くなっている) VDD , VCC などと書かれる 低い電圧って、何ボルト? 0 V GND (グラウンド), VSS などと書かれる 7 電源線、GND線の省略記法 VDD : 電源電圧(3V) すべてのゲートに 書くのは大変! 水が上から下に 流れるイメージ 上に書く VDD 3V 通常、省略する (慣れて下さい) GND GND: 電位の基準(0V) 下に書く 8 CMOS NOTゲートの動作 (1) 入力=1のとき,出力=0となることを確認しよう 電源電圧(3V) VDD 電源電圧(3V) 3V OFF 入力 3V(1) 電位の基準(0V) ON 電源回路を 省略 出力 0V(0) 入力 3V(1) OFF 出力 ON 0V(0) GND 電位の基準(0V) 9 CMOS NOTゲートの動作 (2) 入力=0のとき,出力=1となることを確認しよう 電源回路を 省略 電源電圧(3V) 3V 入力 0V(0) ON 出力 3V OFF 電位の基準(0V) 入力 0V(0) 電源電圧(3V) VDD ON 出力 3V OFF GND 電位の基準(0V) 10 CMOSの特徴 = 低消費エネルギー 常に一方のトランジスタ(スイッチ)が オフ 電流がゼロ ⇒ 低消費エネルギー(エコ) VDD(3V) VDD(3V) 入力 0V(0) ON 出力 3V(1) OFF GND(0V) 入力 3V(1) OFF 出力 0V(0) ON GND(0V) 11 NOTゲート以外の論理ゲートのCMOSによる実 現 VDD(3V) プルアップ(pull up) 出力をVDD(1)に引き上げる PMOSを使用(電気的な理由) … プルアップ 接続 入力n 出力f … 入力1 プルダウン(pull down) … プルダウン 接続 出力をGND(0)に引き下げる NMOSを使用(電気的な理由) プルアップとプルダウンを同時に 出力と接続してはならない 出力が,3Vと0Vの間の中途 半端な電圧値になる GND(0V) 12 CMOS NANDゲートの実現方法 x y プルアップ VDD(3V) 接続 f x y プルダウン 接続 GND(0V) f 左図の回路の真理値表 x y プルアップ プルダウン 0 0 ON OFF 0 1 ON OFF 1 0 ON OFF 1 1 OFF ON f 1 1 1 0 トランジスタ数は 4 個 面積はNOTゲートの 2 倍 13 現実のゲートでは, 伝搬遅延 が発生する ゲートGの入力xが変化してから,出力fが変化するまでに, 一瞬だけ,遅れること ゲートG x 入力x 出力f f=x H 入力x L H 出力f L 理想 (伝搬遅延 = 0) H L H L 現実 (伝搬遅延 ≠ 0) なぜ? 14 ゲートに伝搬遅延が発生する理由は? 答: 過渡( かと )現象 (RとCに起因) ゲートG x f=x オン抵抗R x f=x ゲート容量C (コンデンサ) 15 出力fが0から,1に変化するときの遅延時間 f=0 ⇒ “ゲート容量が 空 ” の状態 f=1 ⇒ “ゲート容量が 満杯 ” の状態 ゲート容量を 充電 する時間がかかる VDD(3V) オン抵抗 ON 電流 0 OFF GND(0V) ff ゲート容量 16 出力が1から,0に変化するときの遅延時間 f=1 ⇒ “ゲート容量が 満杯 ” の状態 f=0 ⇒ “ゲート容量が 空 ” の状態 ゲート容量を 放電 する時間がかかる VDD(3V) OFF 1 電流 ON GND(0V) f ゲート容量 17 ファンアウト (fanout) ゲートの 出力 に接続可能な ゲート数 のこと 現実には、ファンアウトが増えると 遅延時間が増える キャパシタンスが増えるため(ゲート容量) ファンアウト 1 ファンアウト 4 扇(fan)状に 広がる 18 ファンイン(fanin) ゲートへ入ってくる 入力 の数 ファンイン 2 プルアップ VDD(3V) 接続 ファンイン 5 ファンインが増すとゲート面積増加 トランジスタ数が増加するため プルダウン 接続 GND(0V) 19 ジュール熱によるCMOSの消費電力 充放電時に、一瞬,わずかな電流が流れる ⇒ ジュール熱 が発生 VDD(3V) VDD(3V) ON 0 OFF 電流( 充電 ) OFF GND(0V) 3億個の トランジスタ 100W(ワット) コンデンサC (ゲート容量) 1 ON コンデンサC (ゲート容量) 電流( 放電 ) GND(0V) 20 TTL方式 (7404) のNOTゲート 詳細はここで理解不要 (教科書: P108-112) CMOSと異なり,TTLでは, 常に入出力に電流が流れる しかも,向きは逆転する 流出 入力A 吸い込み 流出 電流の向き 出力Y 出力Y 吸い込み H: 流出 L: 吸い込み 入力A H: 吸い込み L: 流出 Texas Instrument 社データシートより 21 TTLゲートの電流特性と,ファンアウトの計算 項目 電流値 備考 Hレベル入力電流 IIH 20μA 入力Hのとき吸い込む最大電流 Lレベル入力電流 IIL -0.4mA 入力Lのとき流出する最大電流 Hレベル出力電流 IOH -0.4mA 出力Hのとき流出できる最大電流 Lレベル出力電流 IOL 8mA 出力Lのとき吸い込める最大電流 1(H)のとき、最大 H IOH IIH =20μA IOH =0.4mA 20μA = 20個 0(H)のとき、最大 L IOL=8mA IIH = 0.4mA IOL IIL=-0.4mA IIL = 8mA 0.4mA = 20個 結局このTTLゲートは、ファンアウト20まで付けられる ( ドライブ (駆動)できる) 22 論理ゲートの直流入出力電圧特性 Hレベル入力電圧 VIH 入力をHとして認識する場合の最小電圧 Lレベル入力電圧VIL 入力をLとして認識する場合の最大電圧 Hレベル出力電圧VOH 出力がHのときの、出力電圧の最小値 Lレベル出力電圧VOL 出力がLのときの、出力電圧の最大値 5V 入力 5 Vout VOH VOL 0 入力 出力 Vin VIL Vt VIH 5 出力 VOH=4.9 VIH=3.5 VIH =2.0 VIL =0.8 0V VOH=2.7 VIL=1.5 VOL=0.4 TTL VOL=0.1 CMOS 23 まとめ 論理ゲートの2種類の実現方式: CMOS, TTL CMOSに重点を置いて説明 論理ゲートの電気的特徴 遅延時間,消費電力,電圧・電流特性 24
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