日本のメディア 取材者と取材源の距離 1096562c 佐々木梨恵 目次 • 日本のメディアの現状 • 記者クラブ ―できた背景 ―メリットデメリット • 取材源の秘匿 ―定義 ―取材源の秘匿に関する判例 • 取材源と報道の自由 • まとめ • 考察 • 論点 日本のメディアの現状 • 新聞 1997年の5377万部をピークに減少 現在では5000万部ほどを発行 →「新聞大国」の中でもトップの普及率 インターネットのウェブページへの情報発信 • 放送 公共放送 →日本放送協会(NHK) 受信料に支えられたネットワーク 経営事業収入 6699億円(前年度比54億円増) 民間放送(民放) →東京をキー局とする5大ネットワークによって系列化 広告収入=景気の影響を受けやすい 2009年度決算概況 2兆2443億円(前年度 比7.8%減) しかし、近年こういったマス・メ ディアに対して「取材源に近すぎ る」といった批判 →メディア不信へ 記者クラブとは • 公的機関などを継続的に取材するジャーナリス トたちによって構成される「取材・報道のため の自主的な組織」 • 新聞協会を構成する新聞社や通信社、放送局の 記者が加盟 • 英語圏では「kisya kurabu」と呼ばれる 記者クラブができた背景 • 1890年、帝国議会開会の際に傍聴取材を要 求する記者たちが集結し、「議会出入記者団」 (のちの同盟記者クラブ)を結成 • 「議会へのアクセス権を求める記者たちによっ て組織された」 • 「機械活動を正確に迅速に逐一報告するために は、常設のアクセスが必要だと主張した」 (「記者クラブ発達史〔ノート〕―取材源との関係 はどう変わったか」) 記者クラブのメリット・デメリット メリット • 的確な報道が迅速になしうる • 報道発表側のコストが少なく 済む らのデメリットの為、記者 • 集団的過激取材を抑える ブは取材源とあまりにも近 関係であると批判される 報接待」「発表ジャーナリ ズム」 デメリット • 閉鎖性・排他性 →記者クラブ以外の者には記 者会見を開放しない • 便宜供与 →市が記者らとの会食を伴う 懇談会費を負担 • 報道協定 →報道機関が報道を自制し合 う 取材源の秘匿 • 取材対象者の特定につながる情報を漏らさないこと。 (朝日新聞掲載「キーワード」より) • 仮に、取材源を明らかにしてしまうと、情報提供者 との信頼関係が壊れ、将来の自由な取材活動、報道 の自由、国民の知る権利を損なうことになる。 • 日本では、刑事訴訟法と民事訴訟法に、報道関係者 が取材源の証言を拒絶できる趣旨の規定がない。 →報道関係者による取材源秘匿権は憲法21条の権 利として認められるのかが問題 取材源の秘匿に関する判例 • 石井記者事件(昭和27年) 憲法21条は、新聞記者に対し、その取材源に関す る証言を拒絶しえる特別の権利を保障したものでは ない。 • 島田記者事件(昭和54年) 取材源の秘匿を「職業の秘密」としたうえで、証言 拒絶を認めた。 • NHK記者事件(平成18年) 取材源についての証言が必要不可欠などの例外的事 情がない限り、原則として証言拒絶が認められると した。 NHK番組改編事件(平成19年) • NHKは、番組「ETV2001」で、NGO「戦争と 女性への暴力」日本ネットワークが中心となっ て2000年12月に開催された「日本軍性奴隷制を 裁く女性国際戦犯法廷」(民衆法廷)を取り上げ た。 その放送内容に対して、NGOと その代表者は番組制作会社の担当者の 説明から期待できる内容では なかったとして損害賠償を求めた。 東京高裁 最高裁 • NHKの責任を認める 取材源の期待権侵害と説明義 務違反を理由 ①取材者の説明により、期待 を抱くのがやむを得ない時は 期待・信頼が保護される。 ②政治家の意図を推し量って 番組を改編した。 ③制作者・取材者は番組内 容・変更を説明する義務を負 う。 • NGO等の請求を退ける ①放送法では、放送が国民の 知る権利に奉仕すること、番 組編集の自律性について規定 →このことは国民一般に認識 されているため、取材源の期 待・信頼を保障するのではな い。 ②取材源の期待・信頼が保障 されない以上編集段階での番 組内容・変更を説明する義務 はない。 まとめ • 記者クラブは日本独自の制度で、日本のメディアを 支えてきたともいえるが、「取材源との距離が近す ぎる」として、近年の批判の対象となっている。 • 取材源の秘匿もより多くの情報を手に入れるために 必要だがどこまで認められるかが法的にも決まって いない。 • 取材の段階だけでなく、報道する段階でも取材源と の関係をかんがえなくてはならない。 考察 • 記者クラブの公権力、政治へのなれあいを無くすた めには記者への供与を禁止し、罰する必要があるの ではないか。 • 取材源の秘匿は記者が情報を得るためには必要だと 思うが、この権利があまりにも強すぎては国民が知 りたいことまでもがうやむやになってしまうのでは ないだろうか。 →裁判では一律に取材源の秘匿を認めないと決めて しまってはどうか。 • 取材源に対しては報道する内容について事前に十分 な説明を行い、編集の段階での変更の説明はいらな いのではないか。 論点 • 記者クラブは日本にとって存在するべきか • 取材源の秘匿はどの程度まで守られるべきか →裁判でもこの権利は主張できるのか否か • 取材者は取材源に対して、報道する内容をすべ て説明するべきか • 記者たちはどのようにして取材源と距離をとっ ていくべきか 参考資料 • 浅野健一 『記者クラブ解体新書』 現代人分 社、2011 • 鈴木秀美・山田健太編著 『よくわかるメディ ア法』 ミネルヴァ書房、2011 • マーティン・ファクラー 『「本当のこと」を 伝えない日本の新聞』 双葉社、2012 • http://www.kisha-club.jp/
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