キャッピング層における浸透流解析

2006.5.25
ジオシンセティクスを用いた埋立地キャッピング層
における水分移動数値シミュレーション
九州大学大学院
島岡隆行
小宮哲平
石橋俊将
1
内
容
1.キャッピングの構造とジオコンポジット型
排水層
2.ジオコンポジット型排水層における水移動
モデルの構築およびシミュレーション
3.浸透流解析による
キャッピング構造の雨水排除効果の評価
2
キャッピングの構造
各層の代表的な物性値
侵食防止層
キャッピ
ング
透水係数
[cm/s]
侵食防止層 10-2~10-4
層厚
[cm]
≧50~150
排水層
浸透防止層
ガス排除層
-2
≧30
-5
≧50
排水層
10
浸透防止層
10
ガス排除層
-
-
廃棄物層
3
キャッピングにおける水分移動
降雨
表面流出、蒸発
侵食防止層
排水層
雨水排除
浸透防止層
ガス排除層
廃棄物層への浸入
4
ジオコンポジット型排水層の構造
(ジオフローWP322)
芯材 (高密度ポリエチレン)
保護材 (不織
布)
2mm
20mm
2mm
断面模式図
・高密度ポリエチレンをエンボス加工
・芯材厚20mm、芯材間隔25mm
・規則的に、直径数ミリの孔あり
芯材(上面図)
5
芯材の断面図
芯材厚さ
20mm
通水穴
φ6mm
芯材間隔
25mm
6
芯材の上面図
75mm間隔
通水穴
通水穴
7
ジオコンポジット型排水層における水移動
侵食防止層からの雨水浸入
上部排水
通水穴から流出
下部排水
浸透防止層への雨水浸入
8
2.ジオコンポジット型排水層における
水移動モデルの構築およびシミュレーション

目的


ジオコンポジット型排水層の水移動特性を
数式として把握し、数値計算によって排水
層による雨水排除効果を評価すること
内容
実証実験の結果
 水移動モデルの構築
 数値シミュレーション

9
人工散水実験①
~浸透量及び排水量の把握~
散水強度10~45mm/h
侵食防止層
排水層
浸透防止層
ガス排除層
勾配3%
基盤層
浸透水集水
側方排水集水
層名
材料
厚さ(cm)
透水係数(cm/sec)
侵食防止層
山砂
50
1×10-3
排水層
エンボス型排水材
2
―
浸透防止層
雨水制御シート
0.1
1×10-5
ガス排除層
砕砂
10
1×10-2
10
人工散水実験②
~排水層上部排水量及び下部排水量の把握~
散水強度40mm/h
排水層
上部排水集水
浸透防止層
ガス排除層
勾配3%
基盤層
浸透水集水 下部排水集水
層名
使用材料
厚さ(mm)
透水係数(cm/sec)
排水層
エンボス型排水材
20
-
浸透防止層
雨水制御シート
1
1×10-5
ガス排除層
ジオコンポジット材
20
-
11
モデル実験土槽
12
計測風景
散水量の計測
ガス排除層まで浸透した
水量の計測
13
実験結果
実験①
浸透率及び排水率(%)
100
排水率
80
下部排水率
60
実験②
40
上部排水率
20
浸透率
0
0
10
20
30
40
散水強度(mm/h)
50
14
水移動モデルの構築
侵食防止層
QD
QU ,1
QU , 2
QL,1
浸透防止層
QH
QW
QD :侵食防止層からの浸入
QU :排水層上部での側方流
QL,2
θ
QL :排水層下部での側方流
QW :浸透防止層への浸入流
QH :通水穴から排水層下部への流出
15
設定条件
・定常状態
・側方流れは不等流 (昨年は等流)
・侵食防止層からの浸透流速 = 降雨強度
・浸透防止層は飽和状態
16
侵食防止層からの雨水浸入流量 QD
QD  I  A
I
:降雨強度
A
:単位領域の面積
QD
θ
17
排水層上部の側方流量 QU
~ 開水路流れ ~
QU  CU  AU hU  vU
CU :上部流量係数 AU :上部側方流断面積 hU :上部水深
vU :上部流速
g :重力加速度  :傾斜角
2
 vU ,12
  vU , 2 2

v

 hU ,1 cos  zU ,1   
 hU , 2 cos  zU , 2    U U  x
 2g
  2g

2g

 

上流側全水頭
下流側全水頭
損失水頭
zU :標高
 U :上部損失係数
x :単位領域の長さ
添字1:上流側境界
添字2:下流側境界
QU ,1
QU , 2
θ
18
排水層下部の側方流量 QL
~ 開水路流れ ~
QL  CL  AL hL  vL
CL :下部流量係数 AL :下部側方流断面積 hL :下部水深
vL :下部流速
g :重力加速度  :傾斜角
2
 vL,12
  vL , 2 2

v

 hL,1 cos  z L ,1   
 hL , 2 cos  z L, 2    L L  x
 2g
  2g

2g

 

上流側全水頭
下流側全水頭
損失水頭
zL :標高
 L :下部損失係数
x :単位領域の長さ
添字1:上流側境界
添字2:下流側境界
QL,1
QL,2
θ
19
上部の側方流れにおける流動域と非流動域
上部の側方流れ
流動域
上部排水
非流動域
20
下部の側方流れにおける流動域と非流動域
下部排水
下部の側方流れ
流動域
21
下部の側方流れにおける流動域と非流動域
非流動域
下部排水
下部の側方流れ
流動域
22
上部および下部での流動域の側方流
開水路
流れ
 v12
  v2 2

v2

 

 2 g  h1 cos  z1    2 g  h2 cos  z 2    2 g  x

 

上流側の全水頭
側方流下
方向
芯材の突起
x
下流側の全水頭
v1
損失水頭
断面1(上流側)
h1

v2
断面2(下流側)
h2
z2
z1
基準面
23
通水穴からの流出量 QH
~ ベルヌイの定理 ~
A :通水穴セル面積 I :降雨強度
C H :流量係数 g :重力加速度  :傾斜角
QH  CH  AH hU  vH  I  A
AH :排水層上部からの流下断面積
vH  vU  ghU cos
2
vH
:排水層上部からの流下流速
vU :排水層上部流速 hU :排水層上部水深
QH
θ
24
浸透防止層への浸入流量 QW
~ ダルシー則 ~
QW  CW  A  vW
 hL 
vW  k  1    cos
L

QW
CW :流量係数 A :単位領域の面積
vW :浸透流速 k :浸透防止層の透水係数
 :傾斜角
L :浸透防止層の厚さ
hL :排水層下部水深
θ
25
水収支式
QD
QU ,1
QU , 2
QL,1
QH
QW
QL,2
θ
上部: QD  QU ,1  QU , 2  QH  0
下部: QH  QL,1  QL, 2  QW  0
26
係数の決定
実験値と計算値の誤差が最小と
なるよう係数を与えた。
流量係数
損失係数
 計算値i  実験値i 

誤差= 
実験値i
i 

上部側方流:
CU  0.8
[-]
通水穴への流下:
CH  0.2
[-]
下部側方流:
CL  0.1
[-]
浸透防止層への浸透流:
CW  2.0
[-]
上部側方流:
U  0.01 [mm-
下部側方流:
 L  0.01
2
1]
[mm1]
27
実験1の再現計算結果
降雨量に対する割合[%]
100
80
排水率(実験)
浸透率(実験)
排水率(計算)
浸透率(計算)
60
40
20
0
0
10
20
30
降雨強度[mm/h]
40
50
28
実験2の再現計算結果
降雨量に対する割合[%]
100
排水率(実験)
浸透率(実験)
上部排水率(実験)
下部排水率(実験)
排水率(計算)
浸透率(計算)
上部排水率(計算)
下部排水率(計算)
80
60
40
20
0
0
10
20
30
40
降雨強度[mm/h]
50
29
数値シミュレーション
ジオコンポジット型排水層に関する諸条件を変動
させた場合の雨水排除効果の変化を見る。
芯材厚さ
排水層
の形状
通水穴
ピッチ
k
1
k
1
勾配
1
k
施工条件
施工長さ
1
k
30
標準ケース
施工長さ(排水長さ)
6m
θ
勾配=tanθ
=0.03
通水穴ピッチ
75mm
芯材厚さ
20mm
31
芯材厚さの影響
100
100
排水率
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
60
50
40
30
90
降雨量に対する割合[%]
90
降雨量に対する割合[%]
下部排水率
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
60
50
40
30
上部排水率
20
20
浸透率
10
10
0
0
0
20
40
芯材厚さ[mm]
60
0
20
40
60
芯材厚さ[mm]
32
通水穴ピッチの影響
100
90
90
排水率
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
60
50
40
30
20
浸透率
10
降雨量に対する割合[%]
降雨量に対する割合[%]
下部排水率
100
80
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
70
60
50
40
30
20
上部排水率
10
0
0
50
150
250
通水穴ピッチ[mm]
350
50
150
250
350
通水穴ピッチ[mm]
33
勾配の影響
100
排水率
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
60
50
40
30
20
浸透率
10
90
降雨量に対する割合[%]
90
降雨量に対する割合[%]
下部排水率
100
80
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
70
60
50
40
30
上部排水率
20
10
0
0
0
0.02
0.04
勾配[-]
0.06
0
0.02
0.04
0.06
勾配[-]
34
施工長さの影響
100
排水率
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
60
50
40
30
20
浸透率
10
0
90
降雨量に対する割合[%]
90
降雨量に対する割合[%]
上部排水率
100
80
70
5mm/h
10mm/h
20mm/h
30mm/h
40mm/h
60
50
40
30
下部排水率
20
10
0
0
2.5
5
7.5
施工長さ[m]
10
0
2.5
5
7.5
10
施工長さ[m]
35
内容2のまとめ

実験結果を再現可能なジオコンポジット型排
水層の水移動モデルを構築した。

ジオコンポジット型排水層に関連する諸条件
を変動させた結果、排水率および浸透率の変
動が最も大きかったのは施工長さであった。

ジオコンポジット型排水層を埋立地規模で施
工した場合、実験規模とは異なる排水および
浸透特性を示す可能性がある。
36
3.浸透流解析による
キャッピング構造の雨水排除効果の評価
検討したキャッピング構造
侵食防止層
(2パターン)
排水層
(3パターン)
浸透防止層
(3パターン)
土質(1)
土質(2)
-2
1×10 cm/s
1,000 mm
-3
1×10 cm/s
1,000 mm
ジオコンポジット型
不織布
1×10 cm/s
10 mm
-0
2.82×10 cm/s
10 mm
1×10 cm/s
300 mm
雨水制御シート(1)
土質
雨水制御シート(2)
-5
1×10 cm/s
500 mm
-5
1×10 cm/s
1 mm
1×10 cm/s
1 mm
礫材
-1
-2
組み合わせは18パターン
-6
37
設定条件
・埋立面積2haの埋立地
・年間降雨量 1,854mm/h (福岡市,2004)
・蒸発および表面流出は考慮しない。
√2×50 m
キャッピング
埋立廃棄物
想定した埋立地
38
計算方法:HYDRUS-2Dによる浸透流解析
39
年間降雨の与え方
・降雨強度別の発生頻度データを使用
・1回の雨の降雨継続時間は降雨強度式で与えた。
250
降雨継続時間 [min]
2000
降雨時間 (hour)
200
150
100
50
5440
I
t  32
1600
1200
I : 降雨強度[mm/h]
800
t : 降雨継続時間[min]
400
0
0
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
降雨強度 (mm/hour)
降雨強度別の発生頻度データ
10
20
30
40
降雨強度 [mm/h]
50
降雨強度式(タルボット式) 40
排水量および浸透量 (万m3)
浸透防止層:土質
(k=10-5cm/s, t=50mm)
侵食防止層
排水層
浸透防止層
5
5
5
4
4
4
3
3
3
2
2
2
1
1
1
0
0
0
土質(1)
土質(2)
ジオコンポジット型
土質(2)
土質(1)
不織布
排水量
浸透量
土質(2)
土質(1)
礫材
土質
41
排水量および浸透量 (万m3)
浸透防止層:雨水制御シート(1)
(k=10-5cm/s, t=1mm)
5
5
5
4
4
4
3
3
3
2
2
2
1
1
1
0
0
0
侵食防止層
排水層
浸透防止層
土質(1)
土質(2)
ジオコンポジット型
土質(1)
土質(2)
不織布
排水量
浸透量
土質(2)
土質(1)
礫材
雨水制御シート
(1)
42
浸透防止層:雨水制御シート(2)
(k=10-6cm/s, t=1mm)
5
5
4
4
4
3
3
3
2
2
2
1
1
1
0
0
0
排水量および浸透量 (万
m3)
5
侵食防止層
排水層
浸透防止層
土質(1)
土質(2)
ジオコンポジット型
土質(1)
土質(2)
不織布
排水量
浸透量
土質(2)
土質(1)
礫材
雨水制御シート
(2)
43
内容3のまとめ

浸透防止層が土質の場合、排水層がジオコンポ
ジット型および不織布の場合は雨水排除効果が高
いが、礫材の場合は8割以上が排除されずに浸透
する結果となった。

浸透防止層が雨水制御シート(1)の場合、約6~8
割が排除されなかったが、シート(2)の場合では浸
透した量は約2~4割と(1)の約1/3程度に抑え
られた。
44