パレスチナ住民の 政治意識研究の動向

パレスチナ住民の
政治意識研究の動向
浜中 新吾(山形大学)
イスラーム地域研究
東京大学拠点グループ2
パレスチナ研究班 研究会
本報告の目的
 研究プロジェクトの情報発信にどうやった
ら貢献できるのか?
 有用なコンテンツとは何か?
 パレスチナの世論調査はコンテンツになる?
 集計データではなく、生データが大事
 生データは調査機関が管理している
 ではどうすればよいか?
コンテンツ造りのアプローチ①
 新規の世論調査プロジェクトを立ち上げる
 オリジナルの情報発信ができる
 質的フィールドワークでは集められない情報を
集められる
 コストが高いので、収集した情報に見合う価値
があるかどうか疑問
コンテンツ造りのアプローチ②
 2次分析のための情報を提供する
 既に集められた生データのうち、アクセスが容
易なものにリンクを貼る
 生データを使った学術研究論文を紹介する
 レプリケーション(統計分析の追試)用データ
のうち、パレスチナ世論調査を使ったものにア
クセスを絞る
先行研究の分類
 記述的推論
 観察された事実から、観察されない事実に関
する情報を推論すること
 観察可能な事実(情報)としての世論調査
 観察されない事実としての国民性、世論、政
治文化
先行研究の分類
 因果的推論
 観察された事実から、一定の規則性(パター
ン)を発見すること
 中東和平に対する態度を説明する要因は何か
 民主化を促す政治文化は存在するのか
記述的推論の研究
 Shikaki (2002) 「分断されるパレスチナ」
 第二次インティファーダに到るまでのパレスチ
ナ民衆の政治意識を記述
 Shamir & Shikaki (2005)「和平交渉にお
ける世論の影響」
 2レベル・ゲームの枠組みで外交交渉過程を
説明
記述的推論の研究
 『アラブ市街への再訪』
 西洋と自らの政治と社会に対するアラブの認
識と態度を描く
 パレスチナ政治意識の特徴
英米に対する否定的態度
 認識を形成する情報の乏しさ
 アルカーイダを「解放運動」とみなす傾向
 破壊活動をテロとはみなさない傾向がある

因果的推論の研究
 「中東和平に対する態度」の決定要因とは
 Shamir & Shikaki (2002) 「和解と妥協の
決定要因」
 「将来に対する期待」が決定要因
 Nachtwey & Tessler (2002) 「平和に対す
る態度の政治経済学」
 「将来の経済状態改善の期待」と「政治指導
者への信任」が決定要因
因果的推論の研究
 Friedman (2005) 「通商的平和主義と引き
伸ばされる紛争」
 和平に経済的利益を見出す人々は和平を支
持する
 和平に経済的利益があるという意見と武装闘
争への支持は無関係
 インティファーダは経済的損害⇒(責任はイス
ラエルにある)⇒武装闘争を支持
因果的推論の研究
 民主化の政治文化
 Jamal (2007) 『民主制への障壁』
 社会関係資本(social
capital)の理論を援用
 パレスチナでは相互信頼の高さが民主的制
度への不支持につながっている<パズル>
 パレスチナにおける信頼は、クライエンティリ
ズムに浸る団体のヒエラルキー構造を再生産
しているだけ
相互信頼の回帰分析
Jamal (2007)の分析:相互信頼 市民団体メンバー
0.126 ***
1995年データ:相互信頼 市民団体メンバー
0.011
就労
0.051
就労
-0.061
性別
0.036
性別
-0.328 ***
教育
0.181 ***
年齢
0.011
教育
年齢
定数
-0.068 ***
0.001
3.25 **
定数
4.03 ***
決定係数
0.025
決定係数
0.028
N
1,022
N
1,167
サーベイデータを使う研究の留意点
 同一の研究テーマを継続的にサーベイす
る必要がある
 生データへのアクセスが容易でなければ
ならない
 レプリケーション・データを公開している研
究があり、その一部は未加工の生データ
である(SPSSファイル)
 具体的にはNachtwey
& Tessler (2002)、
Shamir & Shikaki (2002)、Miari (1999)