Cosmic Ray from the Sun

宇宙線とその起源
名古屋大学太陽地球環境研究所
松原豊
2006年6月4日
名大祭
太陽地球環境研究所宇宙線研究室一般公開
話の内容
1. 宇宙線研究室の簡単な紹介
2. 宇宙線とは?
3. 宇宙線の起源探索
4. 本研究室における研究
5. まとめ
1. 宇宙線研究室の簡単な紹介
太陽地球環境研究所
太陽地球環境の構造とそのダイナミックな
変動を研究する全国でただ一つの共同利
用研究所
大気圏環境部門
電磁気圏環境部門
太陽圏環境部門
総合解析部門
ジオスペース研究センター
太陽圏環境部門
学問の内容で、以下の二つに分かれる。
太陽圏プラズマ物理学
太陽圏高エネルギー物理学
宇宙線研究室
2. 宇宙線とは?
宇宙線の
発見
1912年オーストリアのヘスによる
上に行くほど放射線強度が強くなる!
宇宙線=
宇宙から飛んでくる高エネルギー粒子
(ほとんどが電気を帯びている)
特徴:
・一つの粒子がとても大きな
エネルギーを持っている。
・その起源、不明な点が多い。
宇宙線の
エネルギーご
との頻度
頻度
12桁以上にわたって、
ほぼ同じエネルギー
分布で地球にやって
くる。
12桁
Compilation by S. Swordy
エネル
最高エネル
ギー宇宙線
頻度
最高エネルギーは
とても大きい
どうやって加速する?
大きな謎 !
Compilation by S. Swordy
100km2に
年間1個
エネルギー
4cal
最高エネルギー宇宙線の場合
=
この球の
エネルギー
http://www.atptennis.com
宇宙線1個のエネルギー
水1グラム中に宇宙線粒子は
何個ある?
水1グラム
=
宇宙線粒子
1兆×1兆個
最高エネルギー宇宙線は10カロリー!
宇宙線はエネルギーフロンティア
1.
加速器のない時代は、宇宙線中に
新粒子が発見された。
→ 新しい物理学の確立に寄与
2. 加速器のある時代でも、
→ 最高エネルギー宇宙線は
まだ地上で生成できない。
3. 宇宙を見るときの、一つの窓と
なっている。
→ 宇宙線天文学?
異なる電磁波で
見た銀河
可視光(thanks to lund obs.)
電波(thanks to mpifr)
X線(thanks to
Yohkoh)
赤外線(thanks to
NASA)
ガンマ線(thanks to EGRET)
同じ場所を違うエネルギーのX線で見
てやると?
超新星残骸の発見
100-2400電子ボルト
1300電子ボルト以上
Aschenbach, Nature 1998
宇宙を観測的に理解するためには
1. さまざまな観測情報(窓)を
用いる必要がある。
2. 宇宙線は、現在、そのような窓の
一つとなっている。
我々の生活との関わりは?
宇宙線は危険
?
地球が宇宙線から我々を守る。
我々を守るもの:
・地球大気(分厚い壁)
・地球磁場(進路変更)
物質密度: 宇宙空間と地球
宇宙空間
宇宙空間で60万年に
出会う物質量
地上
=
地上で1cm 走って
出会う物質量
宇宙線の地球近傍での運動
電気を帯びた
粒子
中性粒子
From U. Leeds
homepage
宇宙線の進入しやすさ: 場所による
進入しやすい
進入しにくい
数字が小さいほど進入しやすい
0.2
5
10
15
日本
15
10
5
0.2
自然放射線から受ける線量
(年間平均)
吸入による
食物などから
大地から
宇宙線から
52.1%
12.0%
19.8%
16.1%
資料: http://www.fepc-atomic.jp
3. 宇宙線の起源探索
観測される宇宙線の到来方向
宇宙線
望遠鏡
必ずしも宇宙線の起源ではない!
中性粒子を観測するのが有効
電気を帯びた
粒子
(ほとんどの
宇宙線)
中性粒子
From U. Leeds
homepage
中性粒子を宇宙線の起源の
情報源として使う
粒子が加速された場所で生成された
中性粒子を用いる。
中性粒子は宇宙空間中の磁場で
曲げられない。
中性粒子は加速場所での情報を
保持してやってくる。
中性粒子には何があるか?
ガンマ線(エネルギーの高い光)
ニュートリノ
中性子
それぞれが重要な観測対象
ガンマ線を放出する天体
271個
1990年代に活躍したEGRET検出器による
ガンマ線を放出する天体
EGRETのガンマ線より3桁高いエネルギーのガンマ線
を出す天体。1995年当時。(図: R. Ong)
ガンマ線を放出する天体
EGRETのガンマ線より3桁高いエネルギーのガンマ線
を出す天体。2005年。(図: R. Ong)
宇宙線の起源の例
超新星残骸
かに星雲(M1)
活動銀河核
M87
最高エネルギーガンマ線の検出器
4. 宇宙線研究室における研究
-太陽中性子の観測-
宇宙線研究室の研究
太陽中性子を用いた粒子加速の研究
世界7箇所
宇宙線ニュートリノによる陽子加速機構
の研究
岐阜県神岡町
加速器を用いた宇宙線相互作用の検証
ヨーロッパの加速器
宇宙線研究室の研究
大型望遠鏡による暗天体の探索
ニュージーランド
本研究所の1.8m望遠鏡を使用。
放射性炭素による過去の太陽活動の研究
国内
等
太陽フレア現象
太陽表面における
爆発的な
エネルギー開放
地球の大きさ
NASA homepage
太陽高エネルギー粒子による宇宙線増加
9000
/秒
60倍に!
2005年1月20日
8:20
150
Bartol homepage
過去10年の地上での宇宙線増加
1997年11月 6日
大規模太陽フレア
1998年 5月 2日 大規模太陽フレア
1998年 8月24日
大規模太陽フレア
2000年 7月14日
大規模太陽フレア
2001年 4月15日
大規模太陽フレア
2001年 4月18日 (対応フレアがない)
2001年11月 4日
大規模太陽フレア
2001年12月26日
中規模太陽フレア
2002年 8月24日
大規模太陽フレア
2003年10月28日
超大規模太陽フレア
2003年10月29日
大規模太陽フレア
2005年 1月20日
大規模太陽フレア
黒点数の年変動: 1800-
~11年周期
solar influences data analysis center
過去19年の毎月の大フレア数
第22
太陽活動期
1987.5月
第23
太陽活動期
2006.5月
太陽活動が活発なほど、
太陽高エネルギー粒子は増加。
ところが
太陽活動が活発なほど、
太陽系外からの宇宙線は減少。
複雑な関係
太陽が宇宙線から我々を守る???
太陽活動と宇宙線強度は反相関
黒点数
(月平均)
宇宙線
強度
Bartol homepage
(太陽)宇宙線に関わること
1. 太陽宇宙線が地球環境に及ぼす影響
2. 過去の太陽活動を知る。
3. どうして高エネルギーまで粒子が
加速されるのか?
太陽宇宙線の理解
宇宙線の謎解き
電気を帯びた粒子
太陽
地球
中性粒子
磁場
太陽
M. A. Lee 1991
太陽圏における高エネルギー粒子
太陽中性子の観測
中性子は大気中で減衰する
1. 太陽中性子の検出器は
高山、赤道付近、に設置。
2. 24時間太陽を観測するために、
世界の異なる経度、に設置。
太陽中性子24時間観測網
ハワイ
スイス
アルメニア
1992より
展開
メキシコ
ボリビア
チベット
乗鞍
共同研究している人々
(国内)
名古屋大学太陽地球環境研究所
中部大学、日本大学、山梨学院大学、
信州大学
(海外)
スイス・ベルン大学
アルメニア・エレバン物理研究所
ボリビア・サンアンドレス大学
メキシコ・メキシコ国立自治大学
中国・チベット宇宙線観測グループ
米国・ハワイ国立天文台すばるグループ
東京大学乗鞍
宇宙線観測所
(2,770m)
64m^2
太陽中性子
検出器
自然エネルギーによる発電
2005年1月18日
自然エネルギーによる発電
風力発電機は、無傷で
越冬するのが難しい。
チャカルタヤ(ボ
リビア)
(5,250m)
4m^2
太陽中性子
検出器
太陽中性子検出器の本体
シンチレーション検
出器
中性子
シンチレーション光
(500万個くらい
出る)
正の電気の粒子
この個数が中性子の
(陽子)
エネルギーに比例
シンチレーション検出器(外観)
光が電気信号に変換される
光電子
増倍管
電気信号の大きさは
シンチレーション光
の数に比例
太陽中性子望遠鏡で測ること
1. 中性子のエネルギー
2. 中性子の到来方向
太陽からやってくる中性子の
エネルギーごとの数を測定している。
太陽中性子望遠鏡でわかること
正の電気を持つ粒子(イオン)が加速され
るのに要する時間。実は負の電気を持つ
粒子(電子)の加速はわかっている。
(少しだけ)
太陽表面爆発のエネルギーがどれだけ効
率的に加速に用いられるか。
粒子が加速される方向。
イオン加速と直接結びついている。
最近の太陽中性子イベント
050907-050916: 大規模フレア10回
GOES
NORH
大フレア
X線
17:39
粒子:>10MeV
>50MeV
>100MeV
9月 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15 16
太陽活動の違い
GOESのX線モニター
大フレア
2005年9月7-9日
2006年3月8-10日
開始: 17:17
最大: 17:40
X17
南緯06東経89
17:42
GOES
大フレア
X線
任意(対数)
050907
粒子
(>10MeV)
(>50MeV)
(>100MeV)
9月7日 9月8日
2005年9月7日
太陽の位置
21:04
メキシコとボリビアが好条件
X17
050907: ボリビア対メキシコ (1)
ボリビアの太陽中性子検出器
メキシコの太陽中性子検出器
>40MeV
>30MeV
>240MeV
ボリビアの中性子モニター
>120MeV
(UT)
(UT)
予備的な結果
注) 中性子検出器と
中性子モニターは
違うもの。
(UT)
050907: ボリビア対メキシコ (2)
preliminary
ボリビア: 中性子検出器 X 2
メキシコ: 中性子検出器
ボリビア: 中性子モニター X 0.5
050907: ボリビア
中性子モニター
太陽中性子検出器
(UT)
preliminary
10秒値でも時間変動がわかる!
ここ10年でわかってきたこと
1. 太陽中性子の検出は難しいが、
観測例5例
10例以上に(倍増)
2. 太陽表面では、同じような仕組み
で粒子が加速されている。
3. 宇宙空間でも近い天体では太陽と
同様の加速が起こっている。
5. まとめ
きょう伝えたかったこと
1. 宇宙から飛んでくるとてつもなく
エネルギーの高い粒子がある。
2. その加速の仕組みを知るために、
中性粒子の観測が有効である。
3. 我々は太陽中性子を観測している。
4. 赤道付近の高山に装置を展開した。
5. この研究により基本的な加速の原理
はわかってきた。