会計学基礎

会計学基礎
4月27日
財務会計のシステムと基本原則
アウトライン
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決算書
当座企業・継続企業
期間損益計算
収益・費用の認識と測定
現金主義会計と発生主義会計
実現基準
費用収益対応の原則
複式簿記の構造(簿記一巡の手続き)
利益計算と財務諸表
決算書
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決算書
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主な決算書は貸借対照表と損益計算書
以下で、損益計算書・貸借対照表の各項目がど
ういう情報を伝えようとしているのかについての
概要を示す
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詳しい内容については今後授業が進むに従って説明
する
損益計算書
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売上高~営業利益(損失):主に営業活動の結果を
あらわす
営業外収益~税引前当期利益(損失):主に営業活
動以外の結果をあらわす
法人税・住民税・事業税・法人税等調整額:税金に
関連する情報をあらわす
当期純利益(損失):1年間の企業活動の結果をあら
わす
貸借対照表
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流動資産:主に営業活動で取得した資産
固定資産:主に投資活動で取得した資産
繰延資産:(ややこしい。財務会計論で)
流動負債・固定負債:主に第三者から調達した
資金
資本純資産:主に株主から調達した資金
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流動負債・固定負債・純資産は主に財務活動による
そのほかの会計情報
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決算書以外にも企業は多くの会計情報を発信し
ている
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有価証券報告書(図書館のeolサービスが便利)
アニュアル・レポート(年次報告書)、などなど
インターネット上で多くの情報を入手することが出
来る
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企業のウエブサイト(投資家向け情報、IR情報など)
EDINET(金融庁)
EDGER(SEC 米国)
会計のルーツ:当座企業の会計
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当座企業とは、一回限りの事業を行う企業である
有名な例は、中世イタリアの商人による貿易
一回の航海ごとに、商人たちはチームを組んで資
金を出し合い、航海終了後に残ったもうけを分け
合っていた
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ここでの会計の役割は、船長(経営者)から、商人(所
有者)への結果報告
一回限りの企業活動の計算=>口別計算
継続企業の会計
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継続企業とは、その名の通り継続的に事業を営
む企業である
現代の企業のほとんどは継続企業(ゴーイング・
コンサーン)であり、会計は継続企業を前提とし
て行われる
継続企業の会計
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そのために、ある一定期間にどれだけの儲け
(損)があったのかを計算する必要がでてきた
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企業の解散まで待てない!
これが期間損益計算であり、財務会計の基本と
なる考え方である
期間損益計算
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継続する企業活動を人為的に区切って一定期間を設定し、
この期間を単位として会計の計算を行うことが企業会計の前
提となった
 会計期間の公準
 継続企業のための会計を行うには、当座企業の会計とは
異なる仕組みが必要になる
 「航海終了後に清算」することは出来ない!
会計の歴史は、いかにしてより良い期間損益計算を行うかを
追究してきた歴史であると言っても過言ではない
期間損益計算
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期間損益計算とは、時間を区切って、ある時点
からある時点までのもうけ(・損)を計算すること
である
そのために、いろいろな工夫が必要となる
例えば
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去年買った品物を今年売ったらどうする?
20年間使える建物を買ったらどうする?
雑誌の定期購読料を1年分前払いで支払ったらどう
する?などなど
期間損益計算
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去年買った品物を今年売ったら?
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20年間使える建物を買ったら?
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品物が売れたときに、買ったときの代金と売れたとき
の金額の差をもうけと考える
建物の代金は20年かけて「分割」で払ったかのように
考える
定期購読料の前払いは?
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雑誌を受け取るたびに、1冊分の代金を支払ったと考
える
期間損益計算
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これから学ぶ会計の色々な約束事は、期間損益
計算を行うための約束事である
いろいろな会計の約束事に出会うごとに、「どう
してこうやれば期間損益計算がうまくいくのだろ
う?」と考えてみると、納得がいく(ことが多い)
収益・費用の認識・測定
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収益:商品の販売やサービスの提供などによっ
て企業に流入した価値(+)
費用:収益を獲得する過程で消費されて企業か
ら流出した価値(-)
収益・費用の認識・測定
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収益・費用の認識の問題
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それぞれの収益・費用をどの会計期間に計上すべき
か?
収益・費用の測定の問題
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認識された収益・費用のそれぞれの項目についてそ
の金額はいくらか?
収益・費用の認識・測定
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認識され、測定された収益・費用から利益が計
算される
収益ー費用=利益(または損失)
現金主義会計と発生主義会計
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収益と費用をいつ認識するのか、という問題に
ついて大きく分けて二通りの考え方がある
収益・費用を現金による収入・支出のタイミング
で認識する=>現金主義会計
収益・費用を現金による収入・支出に加え、債
権・債務の発生のタイミングで認識する=>発
生主義会計
現金主義会計
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収益:現金収入の時点で認識する
費用:現金支出の時点で認識する
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
要は、「お小遣い帳」の世界
したがって、掛け売り(後払い)による売上や仕入は
収益・費用として認識されないことになる
現金主義会計の問題点
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会計期間中の経営活動における成果と努力が
対応していない
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当期中の活動がすべて当期中の現金の収入・支出
に反映されるとは限らない
 前払い・後払いのケース(当期中の現金収入はない)
現金主義会計の問題点

収益の計上時点が(現金売上でない場合)不必
要に早められたり、遅らされたりする
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前払い(早め)・後払い(遅め)
(前払い)成果が上がっていないのに、収益を認識し
てしまう
(後払い)実質的に成果が上がっていても、現金化す
るまで収益にならない
発生主義会計の基本原則
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収益:経営活動の成果と関連する重要な事実が
生じた時点で認識する
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
具体的には、商品の引渡しやサービスの提供がこれ
にあたる
費用:収益の獲得のために財貨やサービスを消
費した時点で認識する
発生主義会計の基本原則
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収益や費用が生じたことを意味する経済的な事
実の発生時点で収益・費用を認識する
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現金による収入があったかどうかを問題としない
収益と費用の対応を重視する
企業におけるキャッシュ(カネ)の
流れ
土地・建物・工場
原材料
証券投資
仕掛品
現金
完成品
銀行借入
株主
売上債権
営業活動
投資活動(資金投下)
財務活動(資本調達)
発生主義会計の基本的な約束事
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実現基準
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発生(消費)基準
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収益の認識
(主として)費用の認識に適用する
費用収益対応の原則
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収益と費用の対応づけ=>利益の計算
実現基準
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財貨やサービスが実際に市場で取引された時
点で収益を認識する
次に説明する発生基準よりも「厳しい」

発生基準を満たしていても、実現基準を満たさない場
合がある

例:製造業における生産過程
実現基準
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具体的には、次の二つの要件によって実現の有
無が判断される

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財貨やサービスが相手に引渡されること
対価として、現金・売掛金などの貨幣性資産が受け
取られたこと
上記の要件は、通常は販売によって満たされる
(販売基準)
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例外もある
実現基準
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なぜ実現基準か?
(1)「販売」が企業活動にとって最も大事な事象
である
(2a)実現(販売)より前では、いくらで売れるの
かが不確実である
(2b)実現(販売)より後では、収益と費用の合
理的な対応ができなくなる(後述)
発生(消費)基準
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収益と費用の計上はそれらの「発生の事実」に
基づいて行われなければならない
発生の事実
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企業活動に伴う経済的価値の生成や消費をあらわす
事実
適用例
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減価償却
費用収益対応の原則
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経営活動の(1)成果である収益、と(2)それを
売るために費やされた犠牲である費用、を厳密
に対応づけることによって、各会計期間の経営
成績が適切に測定される
まず収益を決定し、それに対応する費用を決定
する
費用収益対応の原則
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個別的対応
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個別の財貨ごとに収益・費用を認識する
期間的対応
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同一期間に発生した収益・費用はその期間内で対応
していると考える
発生主義会計のまとめ
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収益の認識:実現基準による
費用の認識:発生基準によるが、費用収益対応
の原則により収益に対応させる
その結果、収益-費用=利益が適切に測定され
る
真実性の原則
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企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に
関して、真実な報告を提供するものでなければ
ならない
ひらたく言えば、「うそをついてはいけない」
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うそをつくこと=>粉飾
ここでの真実とは、「会計のルールに従ってい
る」という意味=>相対的真実性
ルールが複数あり得る以上、「絶対的に正しい
数値」も存在しない
継続性の原則
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企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期
継続して適用しみだりにこれを変更してはならな
い
会計手続を企業が選べるときに、その選択を都
合に合わせて変更すれば…


会計情報の利用者にとって業績の比較が難しくなる
(ある程度)都合に合わせた利益を報告することがで
きてしまう=>利益操作
複式簿記の構造(簿記一巡の手
続き)
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開始記入>取引>仕訳帳>元帳>試算表>決
算整理>帳簿決算>財務諸表の作成>開始記
入
複式簿記が用いられる
開始記入・取引
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開始記入:前期から当期へ繰り越された金額の
仕訳帳への記入
取引
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
企業の経済活動や事象のうち、企業の資産・負債・資
本に影響を及ぼす出来事
日常用語の「取引」よりも狭い範囲の出来事が簿記
上の「取引」
常に二面的に記録される=>仕訳
仕訳帳・元帳


仕訳帳:仕訳を記入する帳簿
元帳:仕訳帳に記録された取引を勘定ごとに分
類集計(=転記)されたものを収容する帳簿
試算表


1期間のすべての取引が元帳へ転記された後で、
すべての勘定の金額を集めたもの
転記の手続きが正確に行われたことを確認する
ことができる(複式簿記の自己検証機能)


試算表自体がバランスするか
仕訳帳との間に矛盾はないか
決算整理



元帳の各勘定の残高が決算時点での経済的事
実を正しく反映していない場合がある
決算整理において必要な調整を行う
例:借入金に対する利息のうち未払いのもの
帳簿決算
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仕訳帳や元帳に決算に関連する記入を行う
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

収益・費用の各残高=>損益勘定
損益勘定の差額(当期純利益)=>資本金勘定
残り=>残高勘定(資産・純資産・負債)
財務諸表の作成


貸借対照表(B/S),損益計算書(P/L)の作成
それぞれの法令、規則などによって財務諸表の
用語や様式は決められている

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金融商品取引法:財務諸表等規則、企業会計基準、
(企業会計原則)、
会社法:会社法施行規則、会社計算規則
法人税法:法人税法施行令、法人税法施行規則、各
種の通達
B/SとP/Lの関係
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
テキスト図2-2
期首B/S=>P/L=>
期末B/S
利益計算と財務諸表
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利益計算の方法に損益法と財産法の二通りが
ある
損益法
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資本を増加させる原因(収益)から、資本の減少
をもたらす原因(費用)を差し引いたものを損益
とする
損益法等式
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収益ー費用=損益
利点:利益の発生の源泉があきらかになる
欠点:利益の裏付けとなる財産の状況が示され
ない
財産法
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損益を純資産の増減によって計算する
財産法等式
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

期末純資産ー期首純資産=損益
利点:損益は財産の裏付けを持った数値となる
欠点:利益の発生の源泉があきらかでない
損益法と財産法
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B/S重視=>財産法
P/L重視=>損益法
現実には、B/S(ストック)の情報もP/L(フロー)
の情報もそれぞれ異なる目的に役立つ情報であ
り、B/S,P/Lは補完的な関係にある
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両者の目的から求められる会計ルールが噛み合わ
ないことがある
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たとえば、有価証券の評価(テキスト7章3節)
誘導法と棚卸法
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誘導法
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棚卸法
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帳簿記録からB/S,P/Lを作成し、損益を計算する方法
財産法・損益法のどちらも可能
期初(=前期末)と期末の資産・負債を実際に調査し、そ
の差額の増減を損益とする方法
通常、誘導法による損益とは一致しない
P/Lを作成することは出来ない!
実務では誘導法を基本とし、棚卸によって必要な調
整をおこなう
次回への準備
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次回は企業の設立と資金調達を取り扱う。テキ
スト3章を予習すること