はじめに 臨床工学技士が直接操作に関わる機器の多く は、患者の生体機能を代行する重要な機器が多 い。中でも、人工心肺装置は患者の循環を代行 している為、少しの調整ミスや装置のトラブルが 患者の生命を左右しかねない。 今回は、当院での人工心肺のヒヤリ・ハット事例 をもとに、事例の分析、今後の対応を検討したの で紹介する。 Tohoku Kosai Hospital 事 例 脳分離体外循環を行なう症例で、普段使用して いるポンプにチューブ径の異なる回路を用いた。 この時、適切な流量を得る為オクルージョン調 整を行なった。調整後、ポンプヘッドを固定する 為のロックを掛け忘れたまま体外循環施行直前 まで気が付かなかった。オクルージョン調整の 正確性が疑われた為、再調整を行なった。 Tohoku Kosai Hospital 回路図 脱血回路 脳分離回路無し 送血回路 静脈リザーバー メインポンプ チューブ径:10㎜ 人工肺 使用せず ④ ③ 脳循環 脳分離回路有り 脱血回路 ① ② 静脈リザーバー 脳循環 送血回路 遠心ポンプ 人工肺 ⑤ ④ ③ ② ① 脳循環ポンプ チューブ径:6㎜ Tohoku Kosai Hospital 考えられた患者への影響 オクルージョン調整の不完全 不正確な流量での脳灌流施行 灌流量の低下・灌流圧の低下 脳障害を来たす恐れ ポンプの高速回転による溶血の恐れ Tohoku Kosai Hospital 事例の分析 ① オクルージョン調整の重要性は重分認識 し、回路組み立て途中で調整を行なって いが、ロックを掛けて終了という、一連 の流れでの作業が身に付いていない。 ② 回路の組み立て終了後、それらを点検す る作業そのものが完全な形で行なわれて いない。 Tohoku Kosai Hospital 具体案 ① 作業行程を繰り返し練習し完全なものにする。 ② 使用するチューブ径を全て同サイズとする。 ③ 各作業段階においてのチェックリストを 作成し、各項目にしたがってチェックを 行なう。 しかし・・・ ①に関してはトレーニングを重ねてもミスを犯 す可能性はゼロではなく、また、②のチューブ 径を統一しても、各症例ごとにオクルージョン 調整は必要と考えているため、同様なトラブル が起こる可能性がある。 Tohoku Kosai Hospital 具体策 検討の結果・・・ 具体案③のチェックリストを作成し、各作業段階に 応じて各項目をチェックしながら作業を進めていく 方法をとることにした。 リストに従いチェックをしていけば、経験年 数に関わらず一定条件を満たした人工心肺回 路が完成すると考えられた。 Tohoku Kosai Hospital おわりに 確実な作業行程を心がけていてもミスは起こり かねない。今回、この事を身をもって体験した ことで作業手順の見直しを行なう良い切っ掛け となった。今回の事例を良い経験とし、今後も 安全な業務の遂行を心がけたいと思う。 Tohoku Kosai Hospital
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