IIb 型超新星 SN 2010gi の 可視 光

2012-03-08 かなたミニ WS @広島大学
IIb 型超新星 SN 2010gi の
可視測光分光観測
広島大学 奥嶋 貴子
超新星
夜空に突如あらわれる→「新」しい星?
重い星が進化の最期に起こす爆発現象
爆発時のエネルギー(1051erg~)は鉄以上
の重い元素を作るのに重要
M81 に現れた SN 1993J
光度曲線
明
超新星の様子を
より詳しく見ていく
ためには、極大
前からの様子を
追うことが肝心
極大
太陽の 1 億
~ 100 億倍
の極大光度
爆発
熱源
56Ni → 56Co
暗
爆発日
極大日
数~十数日
→ 56Fe
数ヶ月~数年
超新星の分類
H
He
C+O
赤色巨星
水素型(II 型)
軽
*水素の層が初期から
ずっと見えている
なぜ 水素型 / ヘリウム型の
低温、明るい
ふたつに分かれるのか?
Hなし
He
C+O
ヘリウム型(Ib型)
→両者をつなぐ
青色巨星(WR星)
爆発描像の存在
*水素の層は全く見えず、
ヘリウムの層のみ見える
重
高温、明るい
超新星の分類
水素…初期で見られるが後期では弱まる・消える
ヘリウム…初期から、もしくは後期で見える
わずかなH
He
C+O
遷移型
(IIb 型)
何らかのメカニズムで水素が
はぎ取られた?
水素型とヘリウム型の
中間的存在
サンプル数の問題
…詳細に観測された超新星の例があまりない
親星や進化の描像へ制限を与えるデータの必要性
目的
:モチベーション:
水素のはぎとりによる超新星の爆発描像を
明らかにしたい
:本研究の目的:
希少な遷移型超新星の観測的特徴から
他の超新星との位置づけを明らかにする
(測光観測) 光度曲線 → 光度変化、色、質量
(分光観測) スペクトル → 成分分布・速度
⇒親星の物理状態をさぐる
*ニッケル質量MNiやEjecta mass Mejで比べる
*水素の質量についての考察
観測天体
SN 2010gi
*広島のアマチュア天文家・
坪井氏によって発見された
超新星
発見日
2010/07/18.51 (UT)
距離
~ 6500 万光年
→ 非常に近い
初期観測より
遷移型超新星と推測
希少な遷移型超新星のサンプルとして
継続観測を行った
観測機器
ハワイ観測所
広島大学
すばる
かなた
8.2m
FOCAS
R~1000(~5500A)
1.5m
HOWPol
京都産業大学
荒木
1.3m
LOSA/F2
R~550 (4000-8000A)
測光 7/19-10/6
分光 7/19-8/31
分光 9/30(+60日)
分光結果
スペクトル
~ -10日
Heなし
初期では超新星成分
が卓越している
← Hα(母銀河)
Hα
Heなし
~ +0日
時
間
変
化
He
Hα
He
Hαなし
~ +60日
He
He
波長(Å)
初期で水素が見られた→極大 +30 日に消えた
徐々にヘリウムが見られるようになった
遷移型と同定
CBET 2384 で報告
光度曲線
明
極大前からの
観測に成功
測光結果
●10gi +93J(遷移型):極大を合わせプロット
I – 2.4(長波長側)
崩壊による
緩やかな減光が
見られない
56Co
絶対等級
R -1.2
極大
V~ -15.8 等
→ 暗い
V
B + 1.2(短波長側)
暗
V バンド極大日からの日数
短波長と長波長
の等級差が大
→色が赤い
議論 – Ni 質量 MNi
全輻射光度
Lmax = ENi ( tr )
tr について
tr
(rising time; 極大までの時間)
絶対等級
-15.5
■08D : tr ~ 18 days
■93J : tr ~12 days
-15.0
爆発日
極大日
理論モデルでは、極大(t = tr )
での全輻射光度 Lmax はエネ
ルギー生成率に一致
観測値
・Lmax~4.1x1041erg/s
・t r
極大をあわせプロット
-10
0
10
V バンド極大日からの日数
SN 2010gi では tr が得られない
→似たような型で、爆発日が精度
よく求められている二つの超新星
から tr を推定
MNi ~ 0.014 – 0.021 M
◎
議論 – Ejecta mass Mej
v について
観測値
v :ヘリウム膨張速度
tr
爆発日
極大日
速度 [103km/s]
全輻射光度
20
15
v ~ 8 – 10×103km/s
10
tr は Mej と v ( Ek ) に依存する
tr∝Mej3/4・Ek-1/4
v∝Ek1/2・Mej-1/2
必要な観測値
・tr~12-18 days
・v
5
-10
0
10
20
V バンド極大日からの日数
Mej~1.2-2.6M
◎
議論 – 親星
求めた Ni 質量、Ejecta mass について SN 1993J と比較
MNi
SN 1993J
0.08
(M◎)
(Shigeyama et al. 1994)
Mej
1.9-3.5
(M◎)
SN 2010gi
0.014-0.021
(Young et al. 1995)
SN 1993J よりも軽い親星の爆発
ただし、連星系による水素はぎとりの
説もあり、単独星か連星系かの議論
は本研究では言及できない。
1.2-2.6
議論 – 水素
IIL
・直線的な減光+緩やかな増光
…厚めの水素層の存在を示唆
・赤い・ニッケル質量小…IIL型と類似
・SN 1979C(IIL型プロトタイプ)より
スペクトル上で水素が早く消えた
ヘリウム型 遷移型
Ib 型
少
IIb 型
Blue magnitude
・初期の水素消滅…遷移型
IIP
Ib
Filippenko (1997)
0
100
Days after maximum light
水素型
IIL 型
10gi 水素量
0 M◎
IIP 型
多
~10 M◎
各型の超新星における典型的な水素量との比較
まとめ
SN 2010gi の特徴
・初期スペクトル…初期に見られた水素が消え、ヘリウムが
徐々に見えてきた → 遷移型
・少ないニッケル質量MNi 、Ejecta mass Mej
→遷移型 SN 1993J に比べ軽い親星の爆発
・水素層…通常の遷移型の中でも厚め
SN 2010gi は、水素量をパラメータとした
従来の水素型 / ヘリウム型をつなぐ新たな超新星であった
→ 連続的な超新星の分布の可能性
遷移型超新星の詳細…早期・長期にわたる観測
恒星の進化の話へつなげることができる
おわり