要介護認定調査に期待すること

要介護認定調査に期待すること
ー支援のための状況把握の第一歩ー
社会福祉法人 伊賀市社会福祉協議会
福祉サービス利用支援部
平井俊圭
要介護認定調査の位置づけと意義
短い時間で全体を把握し、まとめ、短い文章
で状況がイメージできるような表現→高い専
門性が求められる
 認定調査は支援を開始するための状況把握
の第一歩(初めて福祉サービスを利用する場
合もある=インテークの役割)
 ケアマネジメントのアセスメントやモニタリング
の一翼を担っている
 調査情報は介護度の決定を左右する→使う
サービスの上限に影響する
 権利侵害を発見する場合がある

アセスメントと認定調査
アセスメント
認定調査
目的 ケアマネジメントの生 認定のための介護の手間
活のニーズ把握
の把握
様式 ケアマネジャーごとに 全国統一の定型様式
異なる様式
対象 本人を中心にしつつ、 本人
家族や周辺関係者
回数 何回でも必要に応じ
て実施
原則1回
審査員として調査員に期待すること
審査員は可能な限り適正な審査を行おうと努
力している。
 審査は書類審査(本人を直接見ない)→状況
を正しく把握していただきたい。特に認知症
の状況。
 できるだけ多くの情報を得た上で調査用紙に
記入を。たとえば、ケアマネジャーやヘル
パー、家族などの情報(矛盾した情報で判断
できない場合はそのまま記入)
 自立度の把握を適正に

特記事項に状況がわかる記入を
具体的な頻度(3日に1回程度など)
 変更申請の場合の理由
 安全が確保できる場合は試行していただく
 コミュニケーションに障がいがある場合、意思
伝達の方法や手段の工夫を
 介護の手間のかかり具合や家族の負担がわ
かるエピソードの記入を
 何が背景となって、どのようなことに手間がか
かっているかを具体的に記入

特記事項の記入例
上腕を動かすと痛がる
 →上腕を動かすと痛がるため、介護者が着
替えの介助の際に時間を要する
 膝関節に痛みがあり、正座ができない
 →膝関節に痛みがあり、正座ができないため、
和室での生活で布団に横になりたがり、筋力
低下に拍車がかかっている。家族は声かけ
などを行い、横にならないよう働きかけている

認知症者の認定調査
認知症者は判定ソフトで十分反映されないと
いう課題を持っている→特記事項の記載が
重要
 質問方法の工夫や観察によって把握できるこ
とが多い(話しが繰り返されるとか、ちぐはぐ
な服装など)
 認知症に関する基本的知識は知っておく

認知症者への質問ー金銭の管理ー
買い物をご自身でされますか
 小遣いはどのように管理されていますか
 銀行の預貯金の出し入れはどのようにされま
すか
 年金の管理をどのようにしておられますか
※必ず家族等の介護者から補足調査を行う

認知症者への質問
ー日常の意思決定ー
何か困ったことが起こったときにどのように対
処されていますか
 レストランなどでメニューを自分でお選びにな
りますか
 毎朝着る服をご自身でお選びになりますか
 いつもは何時頃起きて、お休みになるのは何
時頃ですか
※必ず家族等の介護者から補足調査を行う

認知症者への質問ー記憶・理解ー
息子さんは何時頃出勤されますか
 1日をどのようにお過ごしですか
 朝ご飯は何を食べましたか(午前中の場合)
 ご家族の名前を教えてください
 いつからここにお住まいですか
 いつもいる部屋はどこですか
 ここの住所をお教え下さい
※必ず家族等の介護者から補足調査を行う

認知症者への質問ー行動障害ー
物がなくなったり、取られたりすることがありますか
 貴方の話を周りの人が貴方の言うことを否定したり、
嘘だと言うことがありますか
 無性に腹が立って他人や物にあたってしまうような
ことがありますか
 じっとしていられなくて動いてしまい、止められるよう
なことはありますか
※本人がこれらのことを既に忘れてしまっていることも
あるので、別途必ず家族等からの情報を得る

ケアマネジャーや審査員が困ること
長すぎる文章で主語述語がはっきりしない
 文章から状況がイメージできない
 なぜそのように判断したかなど、必要な記述
が抜けている
 サービス利用についての正しい理解をした上
で助言願いたい(サービス利用を勧める場合
は、必ずそのことを本人等に伝える前にケア
マネジャーに連絡してほしい)
 各種制度についての学習を深めてほしい

調査結果と主治医意見書の相違
自立度:全体の記述からどちらが正しく状況
を反映しているか、記入期日が近い方はどち
らかで判断
 身体機能:医学面は主治医意見書を重視、
生活面は調査書を重視
 認知症:各種認知症スケール、ひどい物忘れ
や意思決定の特記事項を重視
 矛盾点をどちらかの資料で合理的に説明で
きず、推測がつかなければ再調査

権利侵害を発見ー虐待ー
高齢者虐待は死に直結する
 子どもの虐待より発見が困難(学校などの社
会的接点が少ないため)
 虐待は、家族間で行われることが多く、被害
者側も加害者側も支援が必要な場合が多い
 施設内の虐待は深刻で、施設を出されれば
行くところがないと、泣き寝入りしやすい
 早期に発見すれば比較的簡単に解決できる
 市への通報義務(高齢者虐待防止法第7条)

虐待の種類
1. 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれの
ある暴行を加えること(身体的虐待)
2. 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間
の放置(無視または放置という虐待)
3. 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対
応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える
言動を行うこと(心理的虐待)。
4. 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者を
してわいせつな行為をさせること(性的虐待)
5. 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高
齢者から不当に財産上の利益を得ること(経済的
虐待)。
6. 支援や治療が必要な状態であるにもかかわらず、
それを拒否すること(自己放任)。
虐待のサインー身体面、行動面ー
説明のつかない転倒や小さな傷が頻繁に見られる
 腿の内側や上腕部の内側、背中などに痣やみみず
ばれがある
 頭、顔、背中などに傷がある
 臀部や手のひら、背中などにやけどの跡がある
 「家にいたくない」「蹴られる」などの訴えがある
 医師や福祉・保健の関係者に話すこと、援助を受け
ることをためらう
 傷や痣に関する説明のつじつまが合わない
虐待のサインー身体面、行動面ー
安定した生活を送ってきていたのに、急にお
金がないと訴えたり、費用負担のかかるサー
ビスは止めたいとの訴えがある
 サービスの費用負担や生活費の支払い(家
賃、公共料金など)が突然できなくなる
 知らない間に預貯金が引き出されたといった
訴えがある

虐待のサインー身体面、環境面ー
居住する部屋、住居が極端に非衛生的、ある
いは異臭がする
 濡れたままの下着を身につけている
 かなりの程度の潰瘍や褥瘡ができている
 部屋の中に衣類やおむつが散乱している
 寝具や衣類が汚れたままであることが多い
 栄養失調の状態にある
 疾患の症状が明白にあるにもかかわらず、医
師の診断を受けていない

家族のサイン









明白なアルコール依存、薬物依存である
高齢者に対する質問に介護者が全て答えてしまう
高齢者に面会させない
相談員やサービス提供者に非協力的である
高齢者に対して冷淡な態度、無関心さがみられる
高齢者に対し暴言を吐く
高齢者の所有物(金銭)に異常な興味を示す
高齢者の健康に関心が低く、受診や入院のすすめ
を拒否する
介護疲れの著しい様子がうかがえる
心理虐待のサインー身体面、行動面ー
食欲の変化、摂食障害(過食、拒食)がみられる
 不規則な睡眠(悪夢、眠ることへの恐怖、過度の睡
眠など)の訴えがある
 過度の恐怖心、怯えを示す
 強い無力感、あきらめ、なげやりな態度がみられる
性的虐待を受けている高齢者の身体面、行動面にみ
られるサイン
 肛門や女性性器に出血や傷が見られたり、性器に
痛みやかゆみがあるなど普段と違った訴えがある
高齢者が虐待者をかばう場合がある
疑わしきは疑う

権利侵害を発見ー悪徳商法ー
訪問販売などによって多額の負債を抱え、自
宅を手放した人もある
 負債は生活を圧迫し、租税や公共料金の支
払いも滞る
 被害に遭っていても気づかなかったり、自分
が悪いと思ってしまっている場合が多い
 貴重な市民の財産が市外へ流出
 マルチ商法などは友人関係など信頼関係を
崩してしまう。
 早期発見は有効な解決の手段

布団
無水鍋
NHKほっとイブニング(’06.06.30)
悪徳商法対策も ご近所の協力大切
悪徳商法相談実績
相談件数



過去訪問販売などに引っ
かかった方は次々と様々
なものを売りつけられる
可能性がある。
ねらわれているのは高齢
者(昼間)や知的障がい
者。
悪質な訪問販売や電話
勧誘があった場合は、近
所へも連絡。隣近所で閉
め出せば、2度とやってこ
ない。
35
30
25
件 20
数 15
10
5
0
相談金額
30
30
4,000
3,486
1,427
7
310
16年度
3,000 相
談
2,000
金
1,000 額
0
17年度
18年8月末
万円
こんな形で発見
こんな形で発見
悪徳商法撃退ブログ
http://blog.livedoor.jp/akutokugekitai/
おわりに
正しい入力情報は正しい結果につながる
 イメージしやすい簡潔な文章に心がける
 情報収集は多様に行う
 権利擁護の視点でも調査を行う

ご静聴ありがとうございました
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